説明

引裂き強さを向上させたコポリエステル

本発明は、改良された引裂き強さおよび改良された生分解速度を示すことができる脂肪族−芳香族コポリエステルに関する。具体的にはジカルボン酸成分およびグリコール成分を有する脂肪族−芳香族コポリエステルに関する。本発明はまた、それらコポリエステルを用いた物品およびブレンド物に関する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、改良された引裂き強さおよび改良された生分解性を示すことができる脂肪族−芳香族コポリエステルに関する。本発明はまた、それらコポリエステルを用いた物品およびブレンド物に関する。
【背景技術】
【0002】
人口の増加につれて資源が不足するようになり、また社会習慣が我々の環境に大きな影響を与えている。これらの事実を認識することが持続可能性の活動につながっており、そこではエネルギー源、カーボンフットプリント、および土地利用がすべて役割を演じる。あるべき世界では我々が使用する材料は、再生可能なエネルギーを使用して再生可能な材料から作られ、またそれらがその目的を果たした直後に無害に分解してそれらの元の形に戻る。本発明の目的は、そのような材料開発の取組みをこれまで悩ませてきた欠点の幾つかを克服することによってこの方向に一歩踏み出すことである。
【0003】
そのようなこれまでの取組みは、2つの広範な分野、すなわち脂肪族ポリエステルおよびコポリエステル、ならびに脂肪族−芳香族コポリエステルに焦点を合わせてきた。脂肪族ポリエステルは、一般には単鎖(single)ジオールを1種類または複数種類の線状脂肪族ジカルボン酸と反応させることによって合成される。顕著な生分解可能性を示すにもかかわらずそれらの熱的性質が現実世界で利用するには不十分なことが多い。具体的にはそれらホモポリマーは多くの場合、溶融温度が低く、またコポリマーは多くの場合、結晶化度が低いか、またはアモルファスである。
【0004】
これらの欠点のために努力の主体は、脂肪族−芳香族コポリエステルにより多く集中している。一般にこれらは、単鎖ジオールを線状脂肪族ジカルボン酸および芳香族ジカルボン酸、一般にはテレフタル酸と反応させることによって合成される。例えば、Witt,Uら、J.Environ.Polym.Degr.1995,3(4),pp215〜223を参照されたい。
【0005】
4種類あるいはそれ以上のモノマーを含む脂肪族−芳香族コポリエステルは、それほど頻繁に検討されることがない。米国特許出願公開第20080081898号明細書中でArmstrong World Industries,Inc.は、このような混合物からなる繊維を開示している。具体的にはジオールの混合物、6種類以上のモノマーの混合物、かなりの分率の三官能性分子、および脂環式分子の使用がその出願中に例示されている。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本明細書中では、より限定されたモノマーの混合物を含む脂肪族−芳香族コポリエステルを開示する。これらの組成物は、脂肪族−芳香族コポリエステルに関するより広範な一連の著述中に記載されているものと比べて引裂き強さの向上を示すフィルムを提供する。同時にこれらの組成物は、それらを可撓性フィルムの用途に特に有用にする熱的および生分解特性を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明は、
I.全酸成分100モル%を基準にして、
a)約80から40モル%のテレフタル酸成分、
b)約10から60モル%の線状脂肪族ジカルボン酸成分、および
c)約0から30モル%の脂環式ジカルボン酸成分
から本質的になるジカルボン酸成分と、
II.全グリコール成分100モル%を基準にして、
a)約100から60モル%の線状脂肪族グリコール成分、
b)約0から4モル%のジアルキレングリコール成分、および
c)約0から40モル%の脂環式グリコール成分
から本質的になるグリコール成分と
から本質的になり、Ic+IIc>2モル%である、
脂肪族−芳香族コポリエステルに関する。
【0008】
本発明はさらに、上記脂肪族−芳香族コポリエステルと、天然物質を含めた他の高分子材料のブレンド物に関する。本発明はまた、上記脂肪族−芳香族コポリエステルおよびそれらのブレンド物を含む造形品に関する。
【発明を実施するための形態】
【0009】
本明細書中では引裂き強さを向上させたフィルムに加工することができる脂肪族−芳香族コポリエステルについて述べる。これらコポリエステルは一般に半結晶性かつ生分解性であり、それらのフィルムは一般に堆肥にできる。これらコポリエステルは、コモノマーとして線状脂肪族グリコールと、テレフタル酸と、線状脂肪族ジカルボン酸と、脂環式グリコールまたは脂環式ジカルボン酸のいずれかとを重合させることによって調製される。これら酸のエステル形成性誘導体を使用することができることに注目されたい。用語「ジオール」および「グリコール」は、2個のヒドロキシル基を含有する第一、第二、または第三アルコールの全般的な組成物を区別なく指すために使用される。用語「半結晶性」は、芳香族−脂肪族コポリエステルのポリマー鎖の一部分が結晶相中に存在し、ポリマー鎖の残りの部分が非配向ガラス質アモルファス相中に存在することを指すことを意図している。この結晶相は融解温度Tmによって、またアモルファス相はガラス転移温度Tgによって特徴づけられ、これらは示差走査熱量測定法(DSC)によって測定することができる。
【0010】
用語脂環式グリコールは、単結合によって連結した炭素原子の環を含有するすべての非線状脂肪族グリコールを含むことを意図している。用語脂環式ジカルボン酸は、単結合によって連結した炭素原子の環を含有するすべての非線状脂肪族ジカルボン酸を含むことを意図している。
【0011】
一般にジカルボン酸成分は、約80と40モル%の間のテレフタル酸成分、約10と60モル%の間の線状脂肪族ジカルボン酸成分、および約0と30モル%の間の脂環式ジカルボン酸成分(これらはすべて全ジカルボン酸成分100モル%を基準とする)から本質的になる。さらにグリコール成分は、約100と60モル%の間の線状脂肪族グリコール成分、約0と4モル%の間のジアルキレングリコール成分、および約0と40モル%の間の脂環式グリコール成分(これらはすべて全グリコール成分100モル%を基準とする)から本質的になる。高いフィルム引裂き強さを得るには上記で定義した脂環式ジカルボン酸成分と脂環式グリコール成分のモル%の和が少なくとも2モル%でなければならない。
【0012】
この脂肪族−芳香族コポリエステルに有用なテレフタル酸には、テレフタル酸、テレフタル酸のビス(グリコール酸エステル)、および炭素原子8個から20個を有するテレフタル酸の低級アルキルエステルが挙げられる。望ましいテレフタル酸成分の特定の例には、テレフタル酸、テレフタル酸ジメチル、ビス(2−ヒドロキシエチル)テレフタラート、ビス(3−ヒドロキシプロピル)テレフタラート、ビス(4−ヒドロキシブチル)テレフタラートが挙げられる。
【0013】
脂肪族−芳香族コポリエステルに有用な線状脂肪族ジカルボン酸成分には、非置換およびメチル置換脂肪族ジカルボン酸、およびそれらの炭素原子2個から36個を有する低級アルキルエステルが挙げられる。望ましい線状脂肪族ジカルボン酸成分の特定の例には、シュウ酸、シュウ酸ジメチル、マロン酸、マロン酸ジメチル、コハク酸、コハク酸ジメチル、グルタル酸、グルタル酸ジメチル、3,3−ジメチルグルタル酸、アジピン酸、アジピン酸ジメチル、ピメリン酸、スベリン酸、アゼライン酸、アゼライン酸ジメチル、セバシン酸、セバシン酸ジメチル、ウンデカン二酸、1,10−デカンジカルボン酸、1,11−ウンデカンジカルボン酸(ブラシル酸)、1,12−ドデカンジカルボン酸、ヘキサデカン二酸、ドコサン二酸、テトラコサン二酸、およびこれらから得られる混合物が挙げられる。好ましくは線状脂肪族ジカルボン酸成分は、再生可能な生物源、具体的にはアゼライン酸、セバシン酸、およびブラシル酸から誘導される。しかし本質的には既知の任意の線状脂肪族ジカルボン酸または誘導体を使用することができ、それにはこれらの混合物も含まれる。
【0014】
これら脂肪族−芳香族コポリエステルに有用な脂環式ジカルボン酸成分には、脂環式ジカルボン酸および炭素原子5個から36個を有するそれらの低級アルキルエステルが挙げられる。特定の例には、1,4−シクロヘキサンジカルボン酸、1,2−シクロヘキサンジカルボン酸、1,3−シクロペンタンジカルボン酸、および(±)−1,8,8−トリメチル−3−オキサビシクロ[3.2.1]オクタン−2,4−ジオンが挙げられる。しかし本質的には任意の脂環式ジカルボン酸または炭素原子5個から36個を有する誘導体を使用することができ、これにはそれらの混合物も含まれる。
【0015】
本明細書中で開示する実施形態中で一般に使用される線状グリコール成分には、2個から10個の炭素原子を有する非置換およびメチル置換脂肪族ジオールが挙げられる。例には、1,2−エタンジオール、1,2−プロパンジオール、1,3−プロパンジオール、2,2−ジメチル−1,3−プロパンジオール、および1,4−ブタンジオールが挙げられる。好ましくは線状グリコール成分は、再生可能な生物源、具体的には1,3−プロパンジオールおよび1,4−ブタンジオールから誘導される。
【0016】
本明細書中で開示する実施形態中で一般に使用される脂環式グリコールには、2個から12個の炭素原子を有する脂環式グリコールが挙げられる。例には、シクロヘキサンジオールの異性体、すなわち1,2−シクロヘキサンジメタノール、1,4−シクロヘキサンジメタノール、トリシクロ[5.2.1.02,6]デカン−4,8−ジメタノール、2,2,4,4−テトラメチル−1,3−シクロブタンジオール、およびそれらから得られる混合物が挙げられる。
【0017】
本明細書中で開示する実施形態中に見出されるジアルキレングリコール成分は、モノマーとして重合に加えることもできるが、一般には重合に必要な条件下での線状グリコール成分の二量体化によってin situで生成される。線状グリコールの二量体化を制御する方法には、ジカルボン酸およびそれらの誘導体のどちらか、またはスルホン化モノマーを含めるかの選択などのモノマーの選択、触媒の選択、触媒量、強ブレンステッド酸を加えること、水酸化テトラメチルアンモニウムまたは酢酸ナトリウムなどの塩基性成分の添加、および他の工程条件、例えば温度および滞留時間が挙げられる。一般にはジアルキレングリコール成分は、全グリコール成分100モル%を基準にして約0から4モル%存在する。一般にはジアルキレングリコール成分は、全グリコール成分100モル%を基準にして少なくとも約0.1モル%存在する。
【0018】
脂肪族−芳香族コポリエステルの典型的な実施形態ではジカルボン酸成分は、約70から50モル%のテレフタル酸成分、約20から50モル%の線状脂肪族ジカルボン酸成分、および約0から30モル%の脂環式ジカルボン酸成分から実質上なる。これに加えてグリコール成分は、約100から70モル%の線状グリコール成分、約0から4モル%のジアルキレングリコール成分、および約0から30モル%の脂環式グリコール成分から実質上なる。脂環式ジカルボン酸成分または脂環式グリコール成分のどちらかだけが、少なくとも約6モル%存在する。
【0019】
脂肪族−芳香族コポリエステルのより典型的な実施形態では、ジカルボン酸成分は、約60から55モル%のテレフタル酸成分、約30から40モル%の線状脂肪族ジカルボン酸成分、および約0から20モル%の脂環式ジカルボン酸成分から実質上なる。これに加えてグリコール成分は、約100から85モル%の線状グリコール成分、約0から4モル%のジアルキレングリコール成分、および約0から15モル%の脂環式グリコール成分から実質上なる。脂環式ジカルボン酸成分または脂環式グリコール成分のどちらかだけが、少なくとも約6モル%存在する。
【0020】
本明細書中で開示する実施形態で使用される1,3−プロパンジオールは、好ましくは再生可能な供給源から生化学的に得られる(「生物学的に誘導される」1,3−プロパンジオール)。1,3−プロパンジオールの特に好ましい供給源は、再生可能な生物源を用いた発酵法によるものである。再生可能な供給源由来の出発原料の具体例としては、トウモロコシ原料などの生物学的かつ再生可能な供給源から生産される原料を利用する1,3−プロパンジオール(PDO)への生化学的ルートが記述されている。例えば、グリセロールを1,3−プロパンジオールに変換することができる細菌株が、クレブシエラ属(Klebsiella)、シトロバクター属(Citrobacter)、クロストリジウム属(Clostridium)、およびラクトバシラス属(Lactobacillus)の種の中に発見されている。この技術は、米国特許第5633362号、第5686276号、および第5821092号明細書を含めて幾つかの刊行物中に開示されている。とりわけ米国特許第5821092号明細書は、組換え生物を用いてグリセロールから1,3−プロパンジオールを生物学的に産生する方法を開示している。この方法は、1,2−プロパンジオールに対して特異性を有する異種pduジオール脱水酵素遺伝子を用いて形質転換した病原性大腸菌(E.coli bacteria)を組み込む。この形質転換した大腸菌(E.coli)は、炭素源としてのグリセロールの存在下で増殖し、1,3−プロパンジオールがその増殖培地から単離される。細菌も酵母菌もグルコース(例えばコーンシュガー)または他の炭水化物をグリセロールに変換することができるので、これらの刊行物中で開示されている方法は1,3−プロパンジオールモノマーの速やかな、安価な、かつ環境責任を果たす供給源を提供する。
【0021】
上記で記述しまた参照した方法によって生産されるものなどの生物学的に誘導される1,3−プロパンジオールは、その1,3−プロパンジオールの生産用原料を構成する植物によって取り込まれる大気中の二酸化炭素由来の炭素を含有する。このように、本発明の脈絡で用いられる好ましい生物学的に誘導される1,3−プロパンジオールは再生可能な炭素のみを含有し、化石燃料系または石油系の炭素を含有しない。したがって、生物学的に誘導される1,3−プロパンジオールを利用したものから作られるポリトリメチレンテレフタラートは、使用される1,3−プロパンジオールが、減少しつつある化石燃料を枯渇させず、かつ分解時に炭素を放出して大気中に戻し、再度植物によって使用されるので環境に与える影響がより少ない。したがって本発明の組成物は、石油系ジオールを含む類似の組成物よりも自然のままであり、環境に与える影響が少ないと特徴付けることができる。
【0022】
この生物学的に誘導される1,3−プロパンジオールおよびそれから作られるポリトリメチレンテレフタラートを、二重炭素同位体フィンガープリント法(dual carbon−isotopic finger printing)によって、石油化学供給源から、または化石燃料炭素から生産された類似の化合物と区別することができる。この方法は、化学的にまったく同じ材料を実用的に区別し、炭素材料をその生物圏(植物)成分の成長の起点(または、場合によっては歴年)によって振り分ける。同位体14Cおよび13Cは、この問題に相補的情報をもたらす。その核半減期が5730年である放射性炭素年代測定用同位体(14C)は、試験片炭素を化石(「死んでいる」)原料と生物圏(「生きている」)原料の間で明確に振り分けることを可能にする(Currie,L.A.“Source Apportionment of Atmospheric Particles”,Characterization of Environmental Particles,J.Buffle and H.P.van Leeuwen,Eds.,1 of Vol.I of the IUPAC Environmental Analytical Chemistry Series(Lewis Publishers,Inc)(1992)3〜74)。放射性炭素年代測定における基本的前提は、大気中の14C濃度の恒常性が生物中の14Cの恒常性をもたらすということである。単離された試料を扱う場合、試料の経年数は関係式
t=(−5730/0.693)ln(A/A0
によりおおよそ推定することができる。ただし、t=経年数であり、5730年は放射性炭素の半減期であり、AおよびA0は、それぞれ試料および現代標準の14Cの比放射能である(Hsieh,Y.,Soil Sci.Soc.Am J.,56,460(1992))。しかしながら、1950年以降の大気圏核実験および1850年以降の化石燃料の燃焼のために14Cは第二の地球化学的時間特性を獲得した。大気中のCO2の、したがって現存する生物圏中のその濃度は、1960年代中盤の核実験のピーク時にはおおよそ2倍になった。以後、おおよそ7〜10年の緩和「半減期」で、定常状態の宇宙線起源の(大気中の)基線である約1.2×10-12の同位体比(14C/12C)に徐々に戻ってきた。この近頃の半減期は文字通りに解釈してはならず、むしろ核時代の幕開け以降の大気中および生物圏の14Cの変動を追跡するためには、詳細な大気中の核の投入/崩壊関数を使用しなければならない。最近の生物圏炭素の毎年の年代測定の裏付けを与えるのが、この後者の生物圏14C時間特性である。14Cは、加速器質量分析法(AMS)によって測定することができ、その結果は「現代炭素の分率」の単位(fM)で与えられる。fMは、National Institute of Standards and Technology(NIST)の標準参照物質(SRM)4990Bおよび4990Cによって規定され、それぞれシュウ酸標準HOxIおよびHOxIIとして知られる。この基本定義は、HOxIの14C/12C同位体比の0.95倍(AD1950を基準とした)と関係がある。これは、崩壊補正した産業革命前の木材に概略で相当する。最新の現存する生物圏(植物材料)の場合、fM≒1.1である。
【0023】
安定な炭素同位体比(13C/12C)は、供給源の識別および振り分けに対する補完的ルートを提供する。所与の生物起源の材料中の13C/12C比は、大気中の二酸化炭素が固定された時点におけるその二酸化炭素中の13C/12C比の結果であり、その正確な代謝経路もまた反映している。地域的な変動もまた起こる。石油、C3植物(広葉タバコ)、C4植物(イネ科の草木)、および海成炭酸塩はすべて、13C/12Cとその対応するδ13Cの値の顕著な違いを示す。さらに、C3およびC4植物の脂質物質は、その代謝経路の結果として、その同一植物の炭水化物成分から得られる材料とは異なる分析結果を示す。その測定精度の範囲内で13Cは、同位体分画の影響のせいで大きな変動を示し、本発明にとって最も重要な影響は光合成機構である。植物中の炭素同位体比の違いの主な原因は、それら植物中の光合成炭素代謝経路の違い、具体的には一次カルボキシル化、すなわち大気中CO2の最初の固定の間に起こる反応の違いと密接に関連している。植物成長の2つの大分類は、「C3」(すなわちカルビン−ベンソン)光合成回路を組み込むもの、および「C4」(すなわちハッチ−スラック)光合成回路を組み込むものである。広葉樹および針葉樹などのC3植物は、温暖な気候の地帯が大勢を占める。C3植物では、その一次CO2固定化またはカルボキシル化反応は、リブロース−1,5−二リン酸カルボキシラーゼ酵素を伴い、その最初の安定な産物が炭素3個の化合物である。一方、C4植物には熱帯のイネ科の草木、トウモロコシ、およびサトウキビのような植物が含まれる。C4植物では、別の酵素であるホスフェノール−ピルビン酸カルボキシラーゼを伴う追加のカルボキシル化反応がその一次カルボキシル化反応である。その最初の安定な炭素化合物は炭素4個の酸であり、それは続いて脱カルボキシル化される。こうして放出されるCO2は、そのC3回路により再び固定される。
【0024】
4およびC3植物は両方とも様々な13C/12C同位体比を示すが、典型的な値は1ミル当たり約−10から−14(C4)および1ミル当たり−21から−26(C3)である(Weber等、J.Agric.Food Chem.,45,2042(1997))。石炭および石油は、一般にこの後者の範囲に入る。13C測定の尺度は、当初pee deeベレムナイト(PDB)石灰石をゼロに設定することによって定められ、その値は、この物質からの1000分の1偏差で与えられる。「δ13C」値は、単位1000分の1部(ミル当たり)であり、oooと略記され、
【数1】

に従って計算される。PDB基準物質(RM)を使い果たしてしまったために、IAEA、USGS、NIST、および他の選ばれた国際同位体研究機関の協力のもとに一連の代替RMが開発された。PDBからのミル当たり偏差の表記法がδ13Cである。測定は、CO2に関して、質量44、45、および46の分子イオンに対する高精度安定同位体比質量分析法(IRMS)によって行われる。
【0025】
したがって生物学的に誘導される1,3−プロパンジオールおよび生物学的に誘導される1,3−プロパンジオールを含む組成物を、14C(fM)および二重炭素同位体フィンガープリント法に基づいて、今までにない物質組成を示すそれらの石油化学的に誘導される対応物と完全に区別することができる。これらの製品を区別する能力は、商業目的のためにそれらの材料を追跡するのに有益である。例えば、「新しい」および「古い」炭素同位体プロフィールの両方を含む製品を、「古い」材料だけで作られた製品と区別することができる。したがって対象とする材料を、それらの独特のプロフィールに基づいて商業目的で、また競争相手を明らかにする目的で、貯蔵寿命を決めるために、また特に環境に与える影響を評価するために追跡調査することができる。
【0026】
本明細書中で開示するコポリエステルを製造する際に反応物として、または反応物の成分として使用される1,3−プロパンジオールは、好ましくは、ガスクロマトグラフ分析によって測定される約99重量%を超える、より好ましくは約99.9重量%を超える純度を有する。米国特許第7038092号、米国特許第7098368号、米国特許第7084311号、および米国特許第20050069997A1号明細書に開示されている精製された1,3−プロパンジオールが特に好ましい。
【0027】
精製された1,3−プロパンジオールは、好ましくは下記の特徴を有する。
(1)紫外吸収が、220nmにおいて約0.200未満、250nmにおいて約0.075未満、275nmにおいて約0.075未満であり、かつ/または
(2)組成物が、約0.15未満のCIELAB「b*」色値(ASTM D6290)、および270nmにおいて約0.075未満の吸光度を有し、かつ/または
(3)過酸化物の組成が約10ppm未満であり、かつ/または
(4)ガスクロマトグラフィーで測定した全有機不純物(1,3−プロパンジオール以外の有機化合物)の濃度が、約400ppm未満、より好ましくは約300ppm未満、さらに一層好ましくは約150ppm未満である。
【0028】
一般に脂肪族−芳香族コポリエステルは、開示したモノマーからポリエステルの調製に関して知られている任意の方法によって重合することができる。そのような方法は、適切な反応器の構成を用いてバッチ、セミバッチのいずれかで、または連続方式で働かせることができる。本明細書の実施形態中で開示したコポリエステルを調製するために使用される特定のバッチ反応工程は、260℃に反応物を加熱する手段、揮発性液体を蒸留除去するための分別カラム、高粘度溶融物を撹拌することができる効率のよい撹拌機、反応器の内容物を窒素で覆うための手段、および1トル未満の真空を達成することができる真空システムを備える。
【0029】
このバッチ工程は、一般には2段階で行われる。第一ステップにおいてエステル交換触媒の存在下でジカルボン酸モノマーまたはそれらのジエステル誘導体をジオールと反応させた。この結果、アルコールおよび/または水(これらは反応容器から蒸留除去される)、およびジカルボン酸のジオールアダクトが形成された。反応器に装入されるモノマーの正確な量は、所望のポリマー量およびその組成に応じて熟練者によって容易に決められた。このエステル交換のステップでは、過剰のジオールを使用し、その過剰分を第二の重縮合のステップの間に蒸留除去するのが有利である。10から100%のジオール過剰量が一般に使用された。これら触媒は当業界で一般に知られており、この工程のための好ましい触媒はチタンアルコキシドであった。使用される触媒の量は、一般にはポリマー100万部当たりチタン20から200部である。一緒にしたモノマーを撹拌しながら200から250℃の範囲の温度まで徐々に加熱する。使用される反応器およびモノマーによっては反応器を直接250℃まで加熱することもでき、また200から230℃の範囲の温度に留めてエステル交換を起こさせ、過度のジオールの損失なしに揮発性生成物を蒸留除去することもできる。エステル交換のステップは、通常は240から260℃の範囲の温度で完了した。交換のステップの完了は、回収されたアルコールおよび/または水の量から、また分別カラムの上部での下降温度により確かめられた。
【0030】
第二ステップ、すなわち重縮合を真空下で240から260℃で行って過剰のジオールを蒸留除去した。真空は、反応器の内容物の突沸を避けるために徐々に加えるのが好ましかった。所望の溶融体粘度に達するまで、完全真空下(1トル未満)で撹拌を続けた。反応器の経験のある熟練者は、撹拌機のモーターに掛かるトルクからポリマーが所望の溶融体粘度に達したかどうかを判定することができた。
【0031】
脂肪族−芳香族コポリエステルは、造形品に加工するのに適した溶融体粘度および上記物品に有用なレベルの機械的性質を与えるのに十分な高い分子量を有することが一般に好ましい。一般に約20,000g/モルから約150,000g/モルの重量平均分子量(Mw)が有用である。約50,000g/モルから約130,000g/モルのMwがより一般的である。約80,000g/モルから約110,000g/モルのMwが最も一般的である。実際面では分子量は、固有または内部粘度などの溶液粘度と相関関係がある場合が多い。正確な相関性は所与のコポリマーの組成によって決まるが、上記分子量は一般には約0.5dl/gから約2.0dl/gの固有粘度(IV)値に相当する。約1.0dl/gから約1.8dl/gのIVがより典型的である。約1.3dl/gから約1.6dl/gのIVが最も典型的である。本明細書中で開示する方法によって調製されるコポリエステルは満足のいくような分子量に達するが、交換および重縮合のステップの温度および接触時間を低減させると同時に、上記分子量を迅速に増大させ、かつそれらの熱履歴をできるだけ少なくするために連鎖延長剤を使用するのが得策なこともある。好適な連鎖延長剤には、ジイソシアナート、ポリイソシアナート、酸二無水物、ジエポキシド、ポリエポキシド、ビスオキサゾリン、カルボジイミド、およびジビニルエーテルが挙げられ、これらは重縮合のステップの終わりに、または機械的押出設備による加工の間に、またはそのコポリエステルを所望の造形品に加工する間に加えることができる。望ましい連鎖延長剤の特定の例には、ヘキサメチレンジイソシアナート、メチレンビス(4−フェニルイソシアナート)、およびピロメリト酸二無水物が挙げられる。このような連鎖延長剤は、一般にはコポリエステルを基準にして0.1から2重量%で使用される。
【0032】
脂肪族−芳香族コポリエステルの分子量はまた、固相重合および真空押出などの後重合工程によって増加させることもでき、これらは両方とも重縮合によって生ずるどのような揮発性物質の効率的な除去も温度および時間のそれぞれの規模で可能にする。これらの工程の利点は、コポリエステルがその工程条件によってかき乱されずに残存することである。固相重合ではポリエステルまたはコポリエステルをその融点より低い、より一般的にはポリマー粒子が粘着し始める温度より低い温度に保ち、真空または乾燥空気流にさらす。この方法は、ポリエチレンテレフタラート、ポリトリメチレンテレフタラート、およびポリブチレンテレフタラートなどのポリエステル、すなわち一般には200℃を超えるそれらの融点を実質的に低下させるコモノマーをほとんどまたは全く含有しないものにとって最も有利である。真空押出ではポリエステルまたはコポリエステルを、それらを溶融するのに適した温度で機械的押出機に送り込み、次いで高真空に掛ける。この方法は、その調製について本明細書中で述べるすべての組成物を含めたコポリエステルにとっては、一般に200℃未満のそれらの低融点のせいで最も有利である。それぞれの方法において重縮合による必要な分子量の増加を獲得するために必要な温度および時間は、試料を採取することによって、または工程の出力、例えば機械的押出機のトルク示数を監視することによって決めることができる。
【0033】
これらコポリエステルを加工するのに適した機械的押出機は当業界でよく知られており、営利的供給業者から購入することができる。例えば、有利には一軸、二軸、共回転、または反転ユニットを含む押出機およびニーダ反応器を真空押出に使用することができる。二軸スクリュー押出機はCoperion Werner & Pfleiderer(Stuttgart,Germany)から入手でき、また連続式ニーダ反応器はBUSS AG(LR series,Pratteln,Switzerland)およびLIST AG(Arisdorf,Switzerland)から入手できる。これらのユニットは、高転化率までの粘性相での重縮合用の連続プラグ流反応器として設計され、したがって約5から約40までの大きなL/D比を有する。
【0034】
別法では、重合の間にコポリエステル中に分岐剤を取り込んで長鎖分岐を導入することによって溶融体粘度を増大させることもできる。好適な分岐剤には、カルボン酸官能基、ヒドロキシ官能基、またはこれらの混合物を含有する三官能性および多官能性化合物が挙げられる。望ましい分岐剤の特定の例には、1,2,4−ベンゼントリカルボン酸(トリメリト酸)、トリメチル−1,2,4−ベンゼントリカルボキシラート、1,2,4−ベンゼントリカルボン酸無水物(トリメリト酸無水物)、1,3,5−ベンゼントリカルボン酸(トリメシン酸)、1,2,4,5−ベンゼンテトラカルボン酸(ピロメリト酸)、1,2,4,5−ベンゼンテトラカルボン酸二無水物(ピロメリト酸二無水物)、3,3’,4,4’−ベンゾフェノンテトラカルボン酸二無水物、1,4,5,8−ナフタレンテトラカルボン酸二無水物、1,3,5−シクロヘキサントリカルボン酸、ペンタエリトリトール、グリセロール、2−(ヒドロキシメチル)−1,3−プロパンジオール、1,1,1−トリス(ヒドロキシメチル)プロパン、2,2−ビス(ヒドロキシメチル)プロピオン酸、およびこれらから得られる混合物が挙げられる。一般にはこのような分岐剤は、ジカルボン酸成分またはグリコール成分(その分岐剤の多数官能基によって決まる)に対して0.01から0.5モル%で使用される。
【0035】
さらに、コポリエステルの重合または加工の間に核剤を取り込んでそれらの結晶化速度を加速し、かつポリマー全体にわたってクリスタライトのより均一な分布を実現することによって、コポリエステルの熱的挙動を或る程度まで調整することができる。このような方法で融解ポリマーのより均一でむらのない熱クエンチングを保つことによってコポリエステルの加工を改善することができ、これはもしかすると造形品の機械的性質の改良にもつながる。特に好ましい核剤には、カルボン酸のナトリウム塩、およびナトリウム陽イオンで部分的または完全に中和した高分子量アイオノマーが挙げられる。重合の間に取り込む場合、一般にはより低分子量のナトリウム塩が使用され、モノマーと一緒に、あるいは工程の後期、例えば交換のステップの完了後、重縮合のステップの前または間に加えることができる。完成したコポリエステルに配合する場合は、より高分子量のナトリウム塩および高分子量アイオノマーが一般に使用され、十分な混合を伴う機械的押出の間に加えることができる。望ましい核剤の特定の例には、酢酸ナトリウム、酢酸ナトリウム三水和物、ギ酸ナトリウム、重炭酸ナトリウム、安息香酸ナトリウム、テレフタル酸一ナトリウム、ステアリン酸ナトリウム、エルカ酸ナトリウム、モンタン酸ナトリウム(Licomont(登録商標)NaV 101、Clariant)、Surlyn(登録商標)ナトリウムアイオノマー(エチレン−メタクリル酸ナトリウムアイオノマー、DuPontTM)、およびAClyn(登録商標)285(低分子量エチレン−アクリル酸ナトリウムアイオノマー、Honeywell International,Inc.)が挙げられる。一般にこのような核剤は、コポリエステルに対して10から1000ppmのナトリウムを与えるレベルで使用される。
【0036】
この脂肪族−芳香族コポリエステルは、他の高分子材料とブレンドすることができる。そのような高分子材料は生分解性であってもなくてもよく、また天然由来のもの、それを変性したもの、または合成したものであることができる。
【0037】
脂肪族−芳香族コポリエステルとブレンドするのに適した生分解性高分子材料には、ポリ(ヒドロキシアルカノアート)、ポリカーボナート、ポリ(カプロラクトン)、脂肪族ポリエステル、脂肪族−芳香族コポリエステル、脂肪族−芳香族コポリエーテルエステル、脂肪族−芳香族コポリアミドエステル、スルホン化脂肪族−芳香族コポリエステル、スルホン化脂肪族−芳香族コポリエーテルエステル、スルホン化脂肪族−芳香族コポリアミドエステル、およびそれらから誘導されるコポリマーおよび混合物が挙げられる。ブレンド可能な生分解性材料の特定の例には、DuPont CompanyのBiomax(登録商標)スルホン化脂肪族−芳香族コポリエステル、Eastman Chemical CompanyのEastar Bio(登録商標)脂肪族−芳香族コポリエステル、BASF corporationのEcoflex(登録商標)脂肪族−芳香族コポリエステル、ポリ(1,4−ブチレンテレフタラート−co−アジパート)(50:50モル)、IRe Chemical CompanyのEnPol(登録商標)ポリエステル、ポリ(1,4−ブチレンスクシナート)、Showa High Polymer CompanyのBionolle(登録商標)ポリエステル、ポリ(エチレンスクシナート)、ポリ(1,4−ブチレンアジパート−co−スクシナート)、ポリ(1,4−ブチレンアジパート)、ポリ(アミドエステル)、Bayer CompanyのBak(登録商標)ポリ(アミドエステル)、ポリ(エチレンカーボナート)、ポリ(ヒドロキシブチラート)、ポリ(ヒドロキシバレラート)、ポリ(ヒドロキシブチラート−co−ヒドロキシバレラート)、Monsanto CompanyのBiopol(登録商標)ポリ(ヒドロキシアルカノアート)、ポリ(ラクチド−co−グリコリド−co−カプロラクトン)、Union Carbide CompanyのTone(R)ポリ(カプロラクトン)、Cargill Dow CompanyのEcoPLA(登録商標)ポリ(ラクチド)、およびこれらから得られる混合物が挙げられる。基本的には任意の生分解性材料をこの脂肪族−芳香族コポリエステルとブレンドすることができる。
【0038】
この脂肪族−芳香族コポリエステルとブレンドするのに適した非生分解性高分子材料の例には、ポリエチレン、高密度ポリエチレン、低密度ポリエチレン、線状低密度ポリエチレン、超低密度ポリエチレン、ポリオレフィン、ポリ(エチレン−co−グリシジルメタクリラート)、ポリ(エチレン−co−メチル(メタ)アクリラート−co−グリシジルアクリラート)、ポリ(エチレン−co−n−ブチルアクリラート−co−グリシジルアクリラート)、ポリ(エチレン−co−メチルアクリラート)、ポリ(エチレン−co−エチルアクリラート)、ポリ(エチレン−co−ブチルアクリラート)、ポリ(エチレン−co−(メタ)アクリル酸)、ポリ(エチレン−co−(メタ)アクリル酸)の金属塩、ポリ(メチルメタクリラート)およびポリ(エチルメタクリラート)などのポリ((メタ)アクリラート)、ポリ(エチレン−co−一酸化炭素)、ポリ(酢酸ビニル)、ポリ(エチレン−co−酢酸ビニル)、ポリ(ビニルアルコール)、ポリ(エチレン−co−ビニルアルコール)、ポリプロピレン、ポリブチレン、ポリエステル、ポリ(エチレンテレフタラート)、ポリ(1,3−プロピルテレフタラート)、ポリ(1,4−ブチレンテレフタラート)、ポリ(エチレン−co−1,4−シクロヘキサンジメタノールテレフタラート)、ポリ(塩化ビニル)、ポリ(塩化ビニリデン)、ポリスチレン、シンジオタクチックポリスチレン、ポリ(4−ヒドロキシスチレン)、ノバラック、ポリ(クレゾール)、ポリアミド、ナイロン、ナイロン6、ナイロン46、ナイロン66、ナイロン612、ポリカーボナート、ポリ(ビスフェノールAカーボナート)、ポリスルフィド、ポリ(フェニレンスルフィド)、ポリエーテル、ポリ(2,6−ジメチルフェニレンオキシド)、ポリスルホン、およびこれらのコポリマー、およびこれらから得られる混合物が挙げられる。
【0039】
この脂肪族−芳香族コポリエステルとブレンドするのに適した天然高分子材料の例には、デンプン、デンプン誘導体、加工デンプン、熱可塑性デンプン、カチオン性デンプン、アニオン性デンプン、デンプンエステル類、例えば酢酸デンプン、デンプンヒドロキシエチルエーテル、アルキルデンプン類、デキストリン類、アミンデンプン類、リン酸デンプン類、ジアルデヒドデンプン類、セルロース、セルロース誘導体、変性セルロース、セルロースエステル類、例えば酢酸セルロース、二酢酸セルロース、プロピオン酸セルロース、酪酸セルロース、吉草酸セルロース、三酢酸セルロース、トリプロピオン酸セルロース、三酪酸セルロース、およびセルロース混合エステル類、例えば酢酸プロピオン酸セルロースおよび酢酸酪酸セルロース、セルロースエーテル類、例えばメチルヒドロキシエチルセルロース、ヒドロキシメチルエチルセルロース、カルボキシメチルセルロース、メチルセルロース、エチルセルロース、ヒドロキシエチルセルロース、およびヒドロキシエチルプロピルセルロース、多糖類、アルギン酸、アルギン酸エステル、藻類コロイド、寒天(agar)、アラビアガム、グアールガム、アカシアガム、カラゲニンガム、ファーセレランガム、ガティガム、サイリウムガム、マルメロガム、タマリンドガム、イナゴマメガム、カラヤガム、キサンタンガム、トラガカントガム、タンパク質、プロラミン、コラーゲンおよびその誘導体、例えばゼラチンおよびグルー、カゼイン、ヒマワリタンパク質、タマゴタンパク質、ダイズタンパク質、寒天(vegetable gelatin)、グルテン、およびこれらから得られる混合物が挙げられる。熱可塑性デンプンは、例えば米国特許第5,362,777号明細書に記載のように生産することができる。基本的には既知の任意の天然高分子材料を、所望のブレンド組成を得るのに必要な工程条件および相溶化剤によってこの脂肪族−芳香族コポリエステルとブレンドすることができる。
【0040】
この脂肪族−芳香族コポリエステルおよびそれから形成されるブレンド物を用いて種々様々な造形品を製造することができる。脂肪族−芳香族コポリエステルから製造することができる造形品には、フィルム、シート、繊維、フィラメント、袋、メルトブローン容器、刃物類などの成形品、塗装品、基体上へのポリマー溶融押出塗装品、基体上へのポリマー溶液塗装品、積層品、およびこのような造形品の複合、多層、および発泡集合体が挙げられる。この脂肪族−芳香族コポリエステルは、ポリマーから作ることができる任意の造形品の製造に有用である。この脂肪族−芳香族コポリエステルは、熱可塑性樹脂用の方法、例えば圧縮成形、熱成形、押出、同時押出、射出成形、ブロー成形、溶融紡糸、フィルムキャスティング、フィルムブローイング、ラミネーション、ガスまたは化学発泡剤を用いた発泡成形を含めた任意の既知の方法を用いてこのような造形品にするか、あるいはこれらの任意の適切な組合せを用いてその所望の造形品を調製することができる。
【0041】
造形品、具体的にはとりわけフィルム、袋、容器、カップ、および皿に使用されるものは、一般に堆肥にできることが望ましい。堆肥にできる包装および包装材料に対する現在の基準は、ASTM D6400−04およびEN 13432:2000に記載されている。より厳しい基準としてEN 13432は、新しい堆肥性包装材料の資格にとってより適切である。堆肥性としての資格を得るためには、その包装は、堆肥化過程に及ぼす、または得られた堆肥を用いた場合の植物の成長に及ぼす毒性が原因の負の影響なしに工業的堆肥化施設の条件下で3ヶ月以内に崩壊し、かつ6ヶ月以内に二酸化炭素に90%のレベルで生分解しなければならない。この点で本明細書中で開示する脂肪族−芳香族コポリエステルは、フィルムなどの包装材料として使用されるそれらの造形品が堆肥化可能なことを示す場合に生分解性であるということができる。本発明の典型的な実施形態では造形品は、20ミクロンまで、より典型的には70ミクロンまで、幾つかの実施形態では120ミクロンまで、さらに他の実施形態では120ミクロンを超える厚さで堆肥化可能なフィルムを含む。
【0042】
これら脂肪族−芳香族コポリエステルおよびそれらから形成されるブレンド物は、高い引裂き強さを有する堆肥化可能なフィルムの押出成形およびブロー成形に特に適している。これらフィルムの引裂き強さは、一般にASTM D1922−09に記載のエルメンドルフ法に従って試験される。袋などのこれらフィルムの一般的な用途では、引裂き強さが少なくとも1000g/mmでなければならないが、より高い値、例えば5000g/mmを超えるものは、それらがより薄いゲージの使用を可能にするので望ましい。8000g/mmを超える、12000g/mmを超える、または16000g/mmを超える値さえも、所与の用途にとって望ましい他の特性とバランスをとる場合、追加の利点をもたらすこともある。本発明の脂肪族−芳香族コポリエステルは、これらのレベルの引裂き強さを達成することができ、かつ似たテレフタル酸含有率を有する従来技術のコポリエステルと比較した場合、引裂き強さを向上させたフィルムを提供する。その向上は、線状グリコールが1,4−ブタンジオールである場合に明白であり、特に線状グリコールが1,3−プロパンジオールである場合に明白である。したがって引裂き強さの向上は、他の線状グリコールを使用する場合にも明白であると無理なく予想できる。さらに引裂き強さの向上は、これら脂肪族−芳香族コポリエステルを他の材料、具体的にはデンプンなどの高分子材料とブレンドすることによって10000g/mmを超える、15000g/mmを超える、または20000g/mmさえも超える値を得ることも可能である。
【0043】
これら脂肪族−芳香族コポリエステル、それらのブレンド物、およびそれらから形成される造形品は、加工助剤としてこれらポリエステル中で使用される、または最終用途の性能のための任意の既知の添加剤を含むことができる。これら添加剤は、好ましくは非毒性であり、生分解性であり、かつ再生可能な生物源から誘導される。このような添加剤には、ポリマーブレンド成分用の相溶化剤、熱およびUV安定剤、難燃剤、可塑剤、流動性向上剤、スリップ剤、レオロジー調整剤、滑沢剤、強化剤、顔料、粘着防止剤、無機および有機充填剤、例えばシリカ、クレイ、タルク、チョーク、二酸化チタン、カーボンブラック、木粉、ケラチン、精製羽毛、および補強繊維、例えばガラス繊維、および天然繊維、例えば紙、ジュート、および麻が挙げられる。
【0044】
試験法
脂肪族−芳香族コポリエステルの固有粘度(IV)は、Viscotek Forced Flow Viscometer(FFV)Model Y−900を用いて測定した。試料を、50/50重量%のトリフルオロ酢酸/塩化メチレン(TFA/CH2Cl2)中に19℃で0.4%(wt/vol)の濃度で溶解した。この方法によって記録された固有粘度値は、Goodyear Method R−103b「Determination of Intrinsic Viscosity in 50/50(by weight)Trifluoroacetic Acid/Dichloromethane」を用いて求めた値と同値であった。この方法は、TFA/CH2Cl2の50/50重量%溶媒混合物中に完全に可溶な任意のポリエステル(すなわち、PET、3GT、PBT、PEN)に適用することができる。一般には25mlのポリマー溶液を調製するために試料サイズ0.1000gのポリエステルを使用した。通常、ポリマーの完全な溶解は、室温で8時間以内に起こった。溶解時間は、ポリエステルの分子量、結晶化度、化学構造、および形態(すなわち繊維、フィルム、摩砕粉(ground)、およびペレット)に左右された。
【0045】
コポリエステルの組成は、核磁気共鳴分光法(NMR)によって測定した。各試料について数個のペレットまたはフレークを、室温(試料はまた、溶解速度を増すために構造変化を示さずに50℃まで加熱することができる)でトリフルオロ酢酸−d1中に溶解した。この溶液を5mm NMR管に移し、Varian S 400MHz分光計により30℃でスペクトルを得た。スペクトルの適切な面積の積分から試料のモル%組成を計算した。
【0046】
窒素雰囲気下でTA Instruments(New Castle,DE)Model Number 2920により示差走査熱量測定(DSC)を行った。試料を20℃/分で20℃から270℃まで加熱し、270℃で5分間保ち、液体N2中で急冷し、10℃/分で−100℃から270℃まで加熱し(Tg)、270℃で3分間保ち、10℃/分で−100℃まで冷却し(Tc)、−100℃に2分間保ち、10℃/分で−100℃から270℃まで加熱した(TcおよびTm)。
【0047】
試験用のコポリエステルのプレス成形フィルムを下記のように調製した。Teflon(登録商標)でコーティングし、3から5ミルのスペーサーによって分離されたアルミニウム箔シート間に、各ポリマー試料約1.7gを置いた。この複合体を金属板の間に置き、そのポリマーの溶融温度よりも約50℃高い温度に設定したプレス中に挿入した。約3000psiおよび15000psiの圧力を連続してこの複合体に加え、それぞれ約3分間保った。次いでこの複合体をプレスおよび金属板から取出し、放置して室温まで冷却した。複合体を分離することにより厚さ約5ミルの束縛なしのフィルムが生成された。これらプレス成形フィルムを、ASTM D1922−09に準拠してエルメンドルフ引裂き強さを試験した。表2中で各例について報告された値は、少なくとも5回の反復試験の平均値である。
【0048】
これらプレス成形フィルムはまた、下記のように酵素消化試験での消化による生分解可能性をスクリーニングするためにも使用した。フィルムを正確に3インチ×1インチのストリップに打ち抜き、正確な表面積を求めることができるように厚さを3ヶ所で測定した。次いで脱イオン水中での一続きの水洗および3分間の穏やかな音波処理によりストリップを清浄にし、清浄な乾燥バイアル中に入れた。これらを真空オーブン中でゆるやかな窒素抽気により約65℃および約150トルで24時間乾燥し、次いで取り出して直ちに計量した。次いでそれらを清浄な乾燥バイアル中に戻し、滅菌のために紫外線(15ワット、320nm)に室温で30分間曝した。バイアルのキャップを同様に紫外線に曝した。それぞれの条件について5回の反復試験ストリップを上記と同様に調製した。
【0049】
1Mリン酸カリウム二塩基性溶液(EM Science、cat#PX1570−1)9.4mLおよび1Mリン酸カリウム一塩基性溶液(EM Science、cat#PX1565−1)0.6mLを、molecular grade water(蒸留、脱イオン化したもの、Cellgro Cat#46−000−cm)と混ぜ合わせることによって、pH=8.0の10mMリン酸カリウム緩衝液を作り、それぞれ1リットルの溶液を生成した。サーモマイセス・ラヌギノーサス(Thermomyces lanuginosus)由来のリパーゼ(0.49mL)、リゾムコール・ミーハイ(Rhizomucor miehei)由来のリパーゼ(0.22mL)、クロモバクテリウム・ビスコスム(Chromobacterium viscosum)由来のリパーゼ(0.75mL)、ムコール・ミーハイ(Mucor miehei)由来のリパーゼ(0.50mL)、およびシュードモナス種(Pseudomonas sp.)由来のリパーゼ(99mg)を緩衝液に加えて酵素溶液500mLを作った。次いで0.45ミクロンフィルターを通すことによって酵素溶液を滅菌した。この酵素溶液約15mLをそれぞれ調製した試料バイアルに加え、続いてキャップをかぶせ、37℃に設定したインキュベーター中の300rpmに設定した回転軌道振動型プラットフォーム上に置いた。1週間後、インキュベーター温度を50℃に上げた。さらに2週間後、ポリマーストリップをバイアルから取出し、脱イオン水中での一続きの水洗および3分間の穏やかな音波処理により清浄にし、新しい清浄な乾燥バイアル中に入れた。これらを真空オーブン中でゆるやかな窒素抽気により約70℃および約150トルで24時間乾燥し、次いで取り出して直ちに計量した。各試料の5回の反復試験についての平均減量を表2に記録する。
【0050】
堆肥化適性に関するスクリーニングを下記のように行った。30rpmに設定したL/D 27を有する1.5インチDavis式一軸スクリュー押出機にポリマーを送り込んだ。粘着防止剤としてポリ(エチレンメチルアクリラート)中にタルクを50/50で混ぜたブレンド物をポリマーに対して1.5%の割合で含ませた。加熱ゾーンを、入口で約140℃、またバレルの残部については約155℃に設定した。出口における溶融温度は約170℃であった。フィルムを、10ミルのギャップを有する14インチダイから、約12℃に設定した冷却ロール上に押出した。これらのフィルムを、真のまた完全な堆肥化過程をできるだけ綿密に模倣したパイロット規模の堆肥化実験用のOrganic Waste Systems(Gent,Belgium)に送り込んだ。具体的にはフィルム試料を小さな断片に切断し、両面を露出に利用できるようにスライドフレーム中に固定した。これらを新鮮な予熱した地方自治体の固形廃棄物の有機画分と混合し、断熱堆肥化容器(200L)中に導入した後、堆肥化を自然に開始させた。本格的規模の堆肥化の場合と同様に、接種および温度上昇が自然に起こった。自然堆肥化を空気の流れおよび含水率により調整した。温度および排気ガス組成を定期的に監視した。この堆肥化過程は、完全に安定化した堆肥が得られるまで続けられた(3ヶ月)。試験が妥当とみなされるためには最低温度条件を満たさなければならない。このために堆肥化容器を、予め固定した45℃の温度のインキュベーション室内に入れた。各分岐点の間隔(最初の6週間は1週間ごと、その後は2週間ごと)においてスライドを視覚的に注意深く検査し、代表例を取り出し保管した。これによってこのスクリーニング法は、所与の試料がEN 13432の崩壊の部分に合格する可能性についての目安を提供した。
【0051】
引張試験用の押出成形フィルムを下記のように調製した。ポリマー試料は、押出機中を流す前に、まず70〜100℃で16時間乾燥した。ペレットを二軸スクリュー押出機、すなわちDSM Micro 15 Twin Screw Compounder(200〜245V,50〜56Hz,2500W,11.5A,DSM Research,Netherlands)中に装填した。装填管は、分解をできるだけ少なくするために乾燥窒素でパージされた。溶融ゾーン温度は、ポリマーの融点よりも30℃高い温度に設定した。ポリマーを200rpmで3〜4分間混合した。押出機は、以前の試料の痕跡を除去するために特にその試料で4回パージされた。試料の第五番目の装填量は分析用に残した。融解ポリマーを0.4mmフィルムダイに送った。次いでフィルムをキャスティング用チルドローラーに移し、次いで巻取ロールに巻き付けた。ダイとチルドローラーの間にエアナイフを配置してフィルムの冷却を助けた。フィルムは厚さ8〜12ミル(0.20〜0.30mm)、幅約3cm、少なくとも長さ3フィート(0.91m)であった。これらのフィルムから、ASTM D882に従って試料を調製し、引張特性を試験した。
【0052】
1,3−プロパンジオールは、DuPont/Tate & Lyle,Loudon,TN,USAから得た。すべての他の化学薬品、試薬、および材料は、別段の指定がない限り、Aldrich Chemical Company,Milwaukee,WI,USAから得た。
【実施例】
【0053】
実施例1〜22、比較例(CE)1〜13、および比較例16〜19のコポリエステルは、下記の一般的手順(その列挙された時間および温度には小さな変更があるに過ぎない)により実験室規模で合成した。250mLまたは1Lガラス製フラスコに、下記の表1に列挙したモノマーの塊を加えた。容器を100トルまでの真空によって排気し、窒素中で3回大気圧まで戻しながら、その反応混合物を撹拌した。連続的な撹拌および窒素雰囲気を与えたままの状態で、反応容器を160℃に設定した液状金属バッチ中に浸漬した。その反応混合物中にジメチルエステルが存在する場合は、温度は約45分の間に約210℃まで上げられた。約30分間連続的に撹拌しながら反応混合物を窒素雰囲気下でこの温度に保ち、その時点で留出物の生成は顕著に遅くなった。次いで反応混合物を250℃まで30分かけて加熱し、この温度に約1.5時間保ち、その終りに留出物の生成はほぼ終わっていた。反応混合物中にジメチルエステルが存在しない場合は、温度は約45分の間に250℃まで直ちに上げられ、この温度に約2時間保ち、その終りに留出物の生成はほぼ終わっていた。次いで反応容器を、250℃で連続的に撹拌しながら約30分の間に完全真空(一般に<100ミリトル)の段階まで上げた。追加の留出物を回収している間、その容器をこれらの条件下にさらに3時間以上保った。次いで真空を窒素で解き放ち、放置して反応混合物を室温に戻した。
【0054】
比較例14〜15のコポリエステルは、下記の一般的手順(その列挙された時間および温度には小さな変更があるに過ぎない)により合成した。100ガロン反応器に、下記の表1に列挙したモノマーの塊を加えた。反応器を、窒素でゲージ圧50psiの圧力まで3回パージし、連続的に低流量の窒素掃引を行いながら大気圧まで戻した。反応混合物を撹拌しながら、温度を約75分の間に約180℃まで上昇させた。ほぼこの温度で留出物の回収が始まり、温度を追加の約3時間の間に約230℃まで上昇させた。この時間の後に留出物の生成はほぼ終わっていた。反応混合物を約230℃の60ガロン反応器に移した。移動が完了したら、そのバッチを、約1時間の間に圧力を約0.3トルまで下げながら混合し、温度は約2時間の間に約255℃まで上げられた。追加の留出物を回収している間、その容器をこれらの条件下でさらに約4.5時間保った。次いで真空を窒素で解き放ち、正圧を加えて反応容器の底から強制的にポリマーを引き出した。このポリマーを注型してリボンにし、続いてフレークに細断した。
【0055】
表1には各例の合成の詳細が含まれ、それにはそれぞれの特定の合成において酸が使用されたか、またはメチルエステルが使用されたかが含まれる。実験室の分析により各例は、下記の表2に列挙した特性を有することが確かめられた。
【0056】
下記の表中で使用される略語は次の通りである。3G(1,3−プロパンジオール)、4G(1,4−ブタンジオール)、TPA(テレフタル酸)、DMT(テレフタル酸ジメチル)、DMsuc(コハク酸ジメチル)、Adi(アジピン酸)、DMAdi(アジピン酸ジメチル)、Seb(セバシン酸)、DMSeb(セバシン酸ジメチル)、1,2−CHDCAnh(1,2−シクロヘキサンジカルボン酸無水物)、1,4−CHDAcid(1,4−シクロヘキサンジカルボン酸)、1,4−CHDM(1,4−シクロヘキサンジメタノール)、TCDDM(トリシクロ[5.2.1.02,6]デカン−4,8−ジメタノール)、TMCBD(2,2,4,4−テトラメチル−シクロブタンジオール)、TPT(Tyzor(登録商標)TPT)、DAG(ジアルキレングリコール)、Elm Tear(エルメンドルフ引裂き強さ)、PTMEG(ポリ(テトラメチレンエーテル)グリコール)、NaOAc−3H2O(酢酸ナトリウム三水和物)、およびNaO2CH(ギ酸ナトリウム)。
【0057】
比較例1〜7
一連のこれらコポリエステルを、1,3−プロパンジオール、テレフタル酸ジメチルまたはテレフタル酸、およびセバシン酸から合成した。これらの脂肪族−芳香族コポリエステルのテレフタル酸含有率の変更は、引裂き強さに小幅な影響を与えるに過ぎなかった。ASTM D882に従って500%/分のひずみ速度で試験した場合、比較例3は、77MPaの弾性率、35MPaの引張強さ、および770%の極限伸びを有することが確かめられた。
【0058】
比較例8〜9
これらコポリエステルを、1,3−プロパンジオール、テレフタル酸ジメチル、セバシン酸、およびアジピン酸またはグルタル酸のいずれかから合成した。これらの脂肪族−芳香族コポリエステルへの第二の線状脂肪族ジカルボン酸の添加は、類似のテレフタル酸含有率を有する比較例1〜7と比べて引裂き強さに与える影響はほとんどなかった。
【0059】
比較例10〜11
これらコポリエステルを、1,3−プロパンジオール、テレフタル酸、セバシン酸、および2種類の異なる分子量のポリ(テトラメチレンエーテル)グリコールから合成した。これらの脂肪族−芳香族コポリエステルへのポリ(アルキレンエーテル)グリコールの添加は、類似のテレフタル酸含有率を有する比較例1〜7と比べて引裂き強さに与える影響はほとんどなかった。ASTM D882に従って500%/分のひずみ速度で試験した場合、比較例10は、49MPaの弾性率、13MPaの引張強さ、および885%の極限伸びを有することが確かめられた。これらの脂肪族−芳香族コポリエステルへのポリ(アルキレンエーテル)グリコールの添加は、引張特性には悪影響を与え、引裂き強さにはほとんど影響を与えなかった。
【0060】
実施例1〜5
これらコポリエステルを、1,3−プロパンジオール、テレフタル酸ジメチルまたはテレフタル酸、セバシン酸、および1,2−シクロヘキサンジカルボン酸無水物から合成した。これらの脂肪族−芳香族コポリエステルへの1,2−シクロヘキサンジカルボン酸無水物の添加は、類似のテレフタル酸含有率を有する比較例1〜7と比べて引裂き強さを劇的に増大させた。ASTM D882に従って500%/分のひずみ速度で試験した場合、実施例1は、70MPaの弾性率、28MPaの引張強さ、および760%の極限伸びを有することが確かめられた。これらの脂肪族−芳香族コポリエステルへの1,2−シクロヘキサンジカルボン酸無水物の添加は、引張特性に小幅な影響を与え、引裂き強さを劇的に増大させた。
【0061】
実施例6〜7
これらコポリエステルを、1,3−プロパンジオール、テレフタル酸ジメチル、セバシン酸、および1,4−シクロヘキサンジカルボン酸から合成した。これらの脂肪族−芳香族コポリエステルへの1,4−シクロヘキサンジカルボン酸の添加は、類似のテレフタル酸含有率を有する比較例1〜7と比べて引裂き強さを劇的に増大させた。ASTM D882に従って500%/分のひずみ速度で試験した場合、実施例6は、85MPaの弾性率、27MPaの引張強さ、および690%の極限伸びを有することが確かめられた。これらの脂肪族−芳香族コポリエステルへの1,4−シクロヘキサンジカルボン酸の添加は、引張特性に小幅な影響を与え、引裂き強さを劇的に増大させた。
【0062】
実施例8〜11
これらコポリエステルを、1,3−プロパンジオール、1,4−シクロヘキサンジメタノール、テレフタル酸ジメチル、およびセバシン酸から合成した。これらの脂肪族−芳香族コポリエステルへの1,4−シクロヘキサンジメタノールの添加は、類似のテレフタル酸含有率を有する比較例1〜7と比べて引裂き強さを劇的に増大させた。ASTM D882に従って500%/分のひずみ速度で試験した場合、実施例5は、106MPaの弾性率、32MPaの引張強さ、および700%の極限伸びを有することが確かめられた。これらの脂肪族−芳香族コポリエステルへの1,4−シクロヘキサンジメタノールの添加は、引張特性に小幅な影響を与え、引裂き強さを劇的に増大させた。
【0063】
実施例12〜15
これらコポリエステルを、1,3−プロパンジオール、テレフタル酸ジメチル、セバシン酸、および2,2,4,4−テトラメチル−シクロブタンジオールまたはトリシクロ[5.2.1.02,6]デカン−4,8−ジメタノールのいずれかから合成した。各事例で引裂き強さは、類似のテレフタル酸含有率を有する比較例1〜7と比べて劇的に増大した。ASTM D882に従って500%/分のひずみ速度で試験した場合、実施例12は、76MPaの弾性率、30MPaの引張強さ、および720%の極限伸びを有することが確かめられた。同様に実施例14は、62MPaの弾性率、27MPaの引張強さ、および780%の極限伸びを有することが分かった。これらの脂肪族−芳香族コポリエステルへの2,2,4,4−テトラメチル−シクロブタンジオールの添加は、引張特性に小幅な影響を与え、引裂き強さを劇的に増大させた。
【0064】
実施例16〜19
これらコポリエステルを、1,4−ブタンジオールと、テレフタル酸ジメチルと、セバシン酸ジメチルまたはアジピン酸ジメチルと、1,2−シクロヘキサンジカルボン酸無水物、1,4−シクロヘキサンジカルボン酸または1,4−シクロヘキサンジメタノールのそれぞれとから合成した。これらの脂肪族−芳香族コポリエステルへの1,2−シクロヘキサンジカルボン酸無水物、1,4−シクロヘキサンジカルボン酸、または1,4−シクロヘキサンジメタノールの添加は、類似のテレフタル酸含有率を有する比較例12〜13と比べて引裂き強さを劇的に増大させた。
【0065】
比較例12〜13
これらコポリエステルを、1,4−ブタンジオール、テレフタル酸ジメチル、およびセバシン酸ジメチルまたはアジピン酸ジメチルのいずれかから合成した。1,4−ブタンジオールに基づくこれらの脂肪族−芳香族コポリエステルは、類似のテレフタル酸含有率を有する比較例1〜9の1,3−プロパンジオールに基づく脂肪族−芳香族コポリエステルよりも高い引裂き強さを有する。
【0066】
比較例14および15
これらコポリエステルを、1,3−プロパンジオール、テレフタル酸ジメチル、およびセバシン酸から合成した。それらを注型して厚さ120ミクロンを有するフィルムにした。パイロット規模の堆肥化試験にかけた場合、それらは12週間より前に崩壊した。比較例14の酵素による消化の間の減量は2.0%であり、これは酵素消化試験中のこの減量度が、パイロット規模の堆肥化試験における12週間より前の完全な崩壊と相関関係があることを示す。酵素による消化の間の比較例15の減量は2.3%であり、これは酵素消化試験中のこの減量度が、パイロット規模の堆肥化試験における12週間より前の完全な崩壊と相関関係があることを示す。
【0067】
比較例16
コポリエステルを、1,3−プロパンジオール、テレフタル酸ジメチル、およびセバシン酸から合成して、比較例14とほぼ同じモノマー含有率を有するコポリエステルを生成した。酵素による消化の間の減量は3.1%であり、これは酵素消化試験中のこの減量度が、パイロット規模の堆肥化試験における12週間より前の完全な崩壊と相関関係があることを示す。
【0068】
比較例17
比較例2のコポリエステルは、比較例15とほぼ同じモノマー含有率を有する。酵素による消化の間の減量は1.8%であり、これは酵素消化試験中のこの減量度が、パイロット規模の堆肥化試験における12週間より前の完全な崩壊と相関関係があることを示す。
【0069】
比較例18
コポリエステルを、1,3−プロパンジオール、テレフタル酸ジメチル、およびセバシン酸から合成した。酵素による消化の間の減量は2.3%であった。これは一般に、それらのジカルボン酸成分の64モル%を芳香族モノマーに由来する脂肪族−芳香族コポリエステルが、パイロット規模の堆肥化試験において崩壊する可能性が高いことを例示する。
【0070】
比較例19
コポリエステルを、1,3−プロパンジオール、テレフタル酸ジメチル、およびセバシン酸から合成した。ジカルボン酸成分の72モル%が芳香族モノマー由来のものであった。酵素による消化の間の減量は1.8%であり、これはそれらのジカルボン酸成分の72モル%を芳香族モノマーに由来する脂肪族−芳香族コポリエステルでさえ、パイロット規模の堆肥化試験において崩壊することができることを例示する。
【0071】
実施例20
実施例2のコポリエステルを酵素消化試験にかけた。減量は2.2%であり、これは本発明の脂肪族−芳香族コポリエステルは、パイロット規模の堆肥化試験において崩壊するであろうことを例示する。
【0072】
実施例21
実施例3のコポリエステルを酵素消化試験にかけた。減量は6.2%であり、これは本発明の脂肪族−芳香族コポリエステルがパイロット規模の堆肥化試験において崩壊するであろうことを例示する。同じモル%の脂肪族ジカルボン酸を含有する比較例19と比べてこの実施例はかなりの分率の1,2−シクロヘキサンジカルボン酸無水物を含んでおり、それは酵素消化試験においてより迅速な分解をもたらし、またそれは生分解性および堆肥化適性の向上をもたらすと無理なく予想できる。
【0073】
実施例22
実施例4のコポリエステルを酵素消化試験にかけた。減量は6.0%であり、これは本発明の脂肪族−芳香族コポリエステルがパイロット規模の堆肥化試験において崩壊するであろうことを例示する。同じモル%の脂肪族ジカルボン酸を含有する比較例18と比べてこの実施例はかなりの分率の1,2−シクロヘキサンジカルボン酸無水物を含んでおり、それは酵素消化試験においてより迅速な分解をもたらし、またそれは生分解性および堆肥化適性の向上をもたらすと無理なく予想できる。
【0074】
実施例23〜28は、それらのコポリエステルのブレンド物中での使用可能性を例示する。
【0075】
実施例23
60℃から185℃の範囲にわたる温度プロフィールを有する二軸スクリュー押出機に、実施例2の脂肪族−芳香族コポリエステル(61.6重量%)、コーンスターチ(28.4重量%)、グリセロール(5.7重量%)、および水(4.3重量%)の混合物を送り込む。押出された材料をペレット化し、続いてプレス成形してフィルムにした。フィルムは均質であり、良好な機械的性質を有する。
【0076】
実施例24
60℃から185℃の範囲にわたる温度プロフィールを有する二軸スクリュー押出機に、実施例9の脂肪族−芳香族コポリエステル(61.6重量%)、コーンスターチ(28.4重量%)、グリセロール(5.7重量%)、および水(4.3重量%)の混合物を送り込む。押出された材料をペレット化し、続いてプレス成形してフィルムにした。フィルムは均質であり、良好な機械的性質を有する。
【0077】
実施例25
60℃から185℃の範囲にわたる温度プロフィールを有する二軸スクリュー押出機に、実施例16の脂肪族−芳香族コポリエステル(61.6重量%)、コーンスターチ(28.4重量%)、グリセロール(5.7重量%)、および水(4.3重量%)の混合物を送り込む。押出された材料をペレット化し、続いてプレス成形してフィルムにした。フィルムは均質であり、良好な機械的性質を有する。
【0078】
実施例26
60℃から200℃の範囲にわたる温度プロフィールを有する二軸スクリュー押出機に、実施例2の脂肪族−芳香族コポリエステル(70重量%)およびポリ(乳酸)(30重量%)の混合物を送り込む。押出された材料をペレット化し、続いてプレス成形してフィルムにした。フィルムは均質であり、良好な機械的性質を有する。
【0079】
実施例27
60℃から200℃の範囲にわたる温度プロフィールを有する二軸スクリュー押出機に、実施例9の脂肪族−芳香族コポリエステル(70重量%)およびポリ(乳酸)(30重量%)の混合物を送り込む。押出された材料をペレット化し、続いてプレス成形してフィルムにした。フィルムは均質であり、良好な機械的性質を有する。
【0080】
実施例28
60℃から200℃の範囲にわたる温度プロフィールを有する二軸スクリュー押出機に、実施例16の脂肪族−芳香族コポリエステル(70重量%)およびポリ(乳酸)(30重量%)の混合物を送り込む。押出された材料をペレット化し、続いてプレス成形してフィルムにした。フィルムは均質であり、良好な機械的性質を有する。
【0081】
実施例29〜37は、これらのコポリエステルの造形品中での使用可能性を例示する。
【0082】
実施例29
実施例2の脂肪族−芳香族コポリエステルを、165℃で環状ダイ中に押出し、ブロー成形してフィルムにした。フィルムは均質であり、良好な機械的性質を有する。
【0083】
実施例30
実施例9の脂肪族−芳香族コポリエステルを、165℃で環状ダイ中に押出し、ブロー成形してフィルムにした。フィルムは均質であり、良好な機械的性質を有する。
【0084】
実施例31
実施例16の脂肪族−芳香族コポリエステルを、165℃で環状ダイ中に押出し、ブロー成形してフィルムにした。フィルムは均質であり、良好な機械的性質を有する。
【0085】
実施例32
実施例23のブレンド物を、165℃で環状ダイ中に押出し、ブロー成形してフィルムにした。フィルムは均質であり、良好な機械的性質を有する。
【0086】
実施例33
実施例24のブレンド物を、165℃で環状ダイ中に押出し、ブロー成形してフィルムにした。フィルムは均質であり、良好な機械的性質を有する。
【0087】
実施例34
実施例25のブレンド物を、165℃で環状ダイ中に押出し、ブロー成形してフィルムにした。フィルムは均質であり、良好な機械的性質を有する。
【0088】
実施例35
実施例26のブレンド物を、200℃で環状ダイ中に押出し、ブロー成形してフィルムにした。フィルムは均質であり、良好な機械的性質を有する。
【0089】
実施例36
実施例27のブレンド物を、200℃で環状ダイ中に押出し、ブロー成形してフィルムにした。フィルムは均質であり、良好な機械的性質を有する。
【0090】
実施例37
実施例28のブレンド物を、200℃で環状ダイ中に押出し、ブロー成形してフィルムにした。フィルムは均質であり、良好な機械的性質を有する。
【0091】
【表1】



【0092】
【表2】


【特許請求の範囲】
【請求項1】
I、全酸成分100モル%を基準にして、
a)約95から40モル%のテレフタル酸成分、
b)約5から60モル%の線状脂肪族ジカルボン酸成分、および
c)約0から30モル%の脂環式ジカルボン酸成分
から本質的になるジカルボン酸成分と、
II、全グリコール成分100モル%を基準にして、
a)約100から76モル%の線状脂肪族グリコール成分、
b)約0から4モル%のジアルキレングリコール成分、および
c)約0から30モル%の脂環式グリコール成分
から本質的になるグリコール成分と
から本質的になり、Ic+IIc>2モル%である、脂肪族−芳香族コポリエステル。
【請求項2】
前記コポリエステルが半結晶性である、請求項1に記載の脂肪族−芳香族コポリエステル。
【請求項3】
前記コポリエステルが、EN 13432により生分解性であると定義される、請求項1に記載の脂肪族−芳香族コポリエステル。
【請求項4】
前記線状脂肪族グリコール成分が、1,2−エタンジオール、1,3−プロパンジオール、および1,4−ブタンジオールからなる群から選択される、請求項1に記載の脂肪族−芳香族コポリエステル。
【請求項5】
前記線状ジカルボン酸成分が、アゼライン酸、セバシン酸、およびブラシル酸からなる群から選択される、請求項1に記載の脂肪族−芳香族コポリエステル。
【請求項6】
前記脂環式ジカルボン酸成分が、1,4−シクロヘキサンジカルボン酸、1,2−シクロヘキサンジカルボン酸、および1,3−シクロペンタンジカルボン酸からなる群から選択される、請求項1に記載の脂肪族−芳香族コポリエステル。
【請求項7】
前記脂環式グリコールが、1,2−シクロヘキサンジメタノール、1,4−シクロヘキサンジメタノール、トリシクロ[5.2.1.02,6]デカン−4,8−ジメタノール、および2,2,4,4−テトラメチル−1,3−シクロブタンジオールからなる群から選択される、請求項1に記載の脂肪族−芳香族コポリエステル。
【請求項8】
前記ジカルボン酸成分が、全酸成分100モル%を基準にして、
a)約70から50モル%のテレフタル酸成分、
b)約20から50モル%の線状脂肪族ジカルボン酸成分、および
c)約0から20モル%の脂環式ジカルボン酸成分
から本質的になり、かつ
前記グリコール成分が、全グリコール成分100モル%を基準にして、
a)約100から75モル%の単鎖グリコール成分、
b)約0から4モル%のジアルキレングリコール成分、および
c)約0から20モル%の脂環式グリコール成分
から本質的になり、
Ic+IIc>2モル%である、請求項1に記載の脂肪族−芳香族コポリエステル。
【請求項9】
前記全芳香族含有率が、全酸成分100モル%を基準にして60モル%を超える、請求項1に記載の脂肪族−芳香族コポリエステル。
【請求項10】
請求項1に記載の脂肪族−芳香族コポリエステルと少なくも1種類の他の高分子材料とを含むブレンド物。
【請求項11】
前記他の高分子材料が天然ポリマーである、請求項10に記載のブレンド物。
【請求項12】
前記他の高分子材料が、天然ポリマー、デンプン、およびポリ(乳酸)からなる群から選択される、請求項11に記載のブレンド物。
【請求項13】
請求項1に記載の脂肪族−芳香族コポリエステルを含む造形品。
【請求項14】
請求項12に記載のブレンド物を含む造形品。
【請求項15】
請求項1に記載の脂肪族−芳香族コポリエステルを含むフィルム。
【請求項16】
請求項12に記載のブレンド物を含むフィルム。
【請求項17】
ASTM D1922に準拠して約5000g/mmを超える引裂き強さを有する請求項15に記載のフィルム。
【請求項18】
ASTM D1922に準拠して約8000g/mmを超える引裂き強さを有する請求項15に記載のフィルム。
【請求項19】
ASTM D1922に準拠して約16000g/mmを超える引裂き強さを有する請求項15に記載のフィルム。

【公表番号】特表2012−512278(P2012−512278A)
【公表日】平成24年5月31日(2012.5.31)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−540950(P2011−540950)
【出願日】平成21年12月14日(2009.12.14)
【国際出願番号】PCT/US2009/067850
【国際公開番号】WO2010/077809
【国際公開日】平成22年7月8日(2010.7.8)
【出願人】(390023674)イー・アイ・デュポン・ドウ・ヌムール・アンド・カンパニー (2,692)
【氏名又は名称原語表記】E.I.DU PONT DE NEMOURS AND COMPANY
【Fターム(参考)】