説明

引裂帯付き段ボール箱

【課題】箱の成形時に、引裂帯の部分で折れることなく箱成形が可能で、引裂帯部で容易に開封可能な段ボールを提供する。
【解決手段】稜部罫線を介して立面板と平面板とを連設し、その立面板に稜部罫線と並行する開封用の引裂帯及びその切始部を設け、前記立面板と平面板とを稜部罫線沿いに折り曲げて製箱する段ボール箱において、
前記引裂帯は、ポイント・ウェイブ・ナイフ刃を段ボールの裏側から厚さ方向に突き刺すことにより形成した、波状でかつ細かいピッチのミシン目状切目線より形成されている。
前記ミシン目状切目線は切断部と非切断部とが断続した形態となっており、切断部の切り込み深さは、前記ポイント・ウェイブ・ナイフ刃の突き刺し深さに対応した深さに形成されている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、開封用の引裂帯を有する段ボール箱に関するものである。
【背景技術】
【0002】
一般に、飲料缶を包装するラップラウンド式段ボール箱として、図9に示すように、稜部罫線50を介して連設した各一対の立面板51と平面板52とを折り曲げ、集積した缶Cを包み込んで、継代片53での接合により周壁を形成し、立面板51及び平面板52からそれぞれ延びる端板54,55を貼り合わせて封緘するものが使用されている。
【0003】
この段ボール箱の立面板51には、稜部罫線50に並行する開封用引裂帯56が設けられ、これに連続して、端板54にも引裂帯56が設けられている。また、立面板51の中央部には、開封時に引裂帯56の端部を摘む切始部57が設けられている。
【0004】
ここで、引裂帯56は、対向する2本の直線状切目線56aにより形成され、この切目線56aは、材料の段ボールをコルゲータで製造する際、裏側のライナを切断するライナカットにより入れられる。
【0005】
また、切始部57を形成する切目57aは、段ボールを抜型で打ち抜いてブランクを製造する際、抜型に設けた全切刃により、段ボールを表裏に貫通するように入れられる。
【0006】
この段ボール箱を開封する際には、切始部57を押し込んで摘み、引裂帯56を引っ張って立面板51及び端板54の段ボールを切断し、段ボール箱の上部を除去して、トレー状となった段ボール箱の下部から缶Cを露出させる。
【0007】
しかしながら、上記のような段ボール箱では、製造時に引裂帯56の切目線56aと切始部57の切目57aとの位置関係がずれて、開封に支障を来たすことがあり、また、切込が浅いライナカットの切目線56aに沿って段ボールを切断できないことがある。
【0008】
その対策として、切目線56aを、抜型に設けた半切刃によりブランクの打抜時に入れて、半切線とすることが考えられるが、この場合、製箱時に段ボールが稜部罫線50ではなく、切目線56aで折れ曲がってしまい、製箱不良が発生するおそれがある。
【0009】
また、包装状態で複数個積み上げて、下段側の段ボール箱に上段側の段ボール箱の荷重が作用すると、立面板51に胴膨れが生じ、陳列販売時の美観が損なわれることがある。
【0010】
この改善策として、特許文献1(特開2008−247476号公報)の方法が提案されている。この特許文献1の方法は、引裂帯を波状切目線より形成し、この切目線を段ボールの表裏に貫通する全切部と、段ボールの裏側から厚さの途中まで切り込まれた半切部が交互に断続するリード罫とするというものであった。また、全切部と半切部の間に、切り込みのない繋部を設けるというものであった。
しかしながらこの従来方法は、波状切目線を、抜型により段ボールの厚さ方向の切込深さの異なる全切部と半切部という2態様に切り込まなければならないので、その切り込み作業は面倒で手間がかかり、また半切部の管理が極めて難しい。
段ボールは表ライナ・中芯・裏ライナの3種類の原紙を貼合した構造であり、かつその原紙の材質や厚みが常に一定ではないから、段ボールの厚さの途中まで切り込む半切部の切込み深さの設定が極めて難しい。すなわち段ボールの原紙の厚みによって、半切部の切込み深さが浅かったりして、謂わばファジーであるから常に一定の切込み深さにすることが至難であってその管理が難しく、段ボール箱の開封用引裂帯として安定よく使用することができないというという問題があった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0011】
【特許文献1】特開2008−247476号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0012】
そこで、この発明は、製箱時に引裂帯の切目線で折れ曲がる現象を防止でき、引裂帯による開封が容易で、また、積み上げ時に胴膨れしにくい段ボール箱を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0013】
上記課題を解決するため、この発明は、
稜部罫線を介して立面板と平面板とを連設し、その立面板に稜部罫線と並行する開封用の引裂帯及びその切始部を設け、前記立面板と平面板とを稜部罫線沿いに折り曲げて製箱する段ボール箱において、
前記引裂帯は、ポイント・ウェイブ・ナイフ刃を段ボールの裏側から厚さ方向に突き刺すことにより形成した、波状でかつ細かいピッチのミシン目状切目線より形成したことを特徴としたものである。
前記ミシン目状切目線は切断部と非切断部とが断続した形態となっており、切断部の切り込み深さは、前記ポイント・ウェイブ・ナイフ刃の突き刺し深さに対応した深さに形成されている。
前記ミシン目状切目線は、2本1組で並行して延びるように形成されている
【0014】
前記立面板に設けた引裂帯の外側に、稜部罫線に対して斜めに交差する方向のクロス筋によりなる凹凸部が形成されている。
【0015】
前記引裂帯の中にも、稜部罫線に垂直なる方向に向いた筋よりなる凹凸部が形成されている
【発明の効果】
【0016】
このような段ボール箱では、引裂帯は、ポイント・ウェイブ・ナイフ刃を段ボールの裏側から厚さ方向に突き刺すことにより形成した、波状でかつ細かいピッチのミシン目状切目線より形成したことから、製箱に際し、切目線はヒンジとして作用せず、段ボールが引裂帯の切目線で内側へ折れ曲がりにくくなり、立面板と平面板の稜部罫線に沿って正確に折れ曲がり、製箱不良の発生が生じにくくなる。
【0017】
また、製造時に、引裂帯の切目線と切始部の切目を同一の抜型で入れることから、引裂帯の切目線と切始部の切目の位置関係がずれることがなく、開封に際して、引裂帯を切始部から引っ張ると、細かいピッチのミシン目状切目線に沿って段ボールが切断され、容易に開封することができる。
【0018】
そして特許文献1の方法に較べて、切目線の切り込み作業が極めて簡単になり、段ボールブランクの打ち抜きの加工管理が容易になる。
【0019】
さらに、立面板に入れた引裂帯の外側と稜部罫線との間に押筋を設けたことにより、包装箱を組み立てる際の引裂帯から折れ曲がりを防ぎ、また陳列時の美観が保たれ、さらに箱積み上げ時の胴膨れが防止される。
【図面の簡単な説明】
【0020】
【図1】この発明の第1実施形態に係る段ボール箱のブランクを示す裏面図である。
【図2】同上の段ボール箱の組立封緘状態を示す斜視図である。
【図3】同上の製箱過程を示す斜視図である。
【図4】ポイント・ウェイブ・ナイフ刃の諸形態(a〜c)を示す斜視図である。
【図5】ポイント・ウェイブ・ナイフ刃の刃先形状を示した側面図である。
【図6】ポイント・ウェイブ・ナイフ刃を2本並べて使用したときの箱のブランクに突き刺さった痕跡を示す説明図である。
【図7】この発明の第2実施形態に係る段ボール箱のブランクの部分裏面図であって、引裂帯の切目線にかかる引裂き力の方向を併せ示したものである。
【図8】この発明の第3実施形態に係る段ボール箱のブランクの部分裏面図である。
【図9】従来の段ボール箱の組立封緘状態を示す斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0021】
以下、この発明の実施形態を添付図面に基づいて説明する。
この段ボール箱は、24本の飲料缶を6本ずつ4列に並べて包装するラップラウンド式のものであり、図1に示すブランクから形成される。このブランクでは、稜部罫線1を介して各一対の立面板2及び平面板3が交互に連設され、一方の立面板2に稜部罫線1を介して継代片4が連設されている。立面板2及び平面板3の両端には端板5,6がそれぞれ連設されている。
【0022】
立面板2には、稜部罫線1に並行する開封用の引裂帯7が設けられ、引裂帯7は、端板5の端縁まで達している。立面板2の中央部には、開封時に引裂帯7の端部を摘む切始部8が設けられている。
【0023】
立面板2における引裂帯7は、並行で2列に設けられた波状でかつ対称形状なミシン目状切目線7aにより形成されている。このミシン目状切目線7aは、少なくとも1本のポイント・ウェイブ・ナイフ刃13を用いて段ボールの裏側から厚さ方向に突き刺すことにより形成する。またこのミシン目状切目線7aは、段ボールの裏側のライナのみを直線的に切断する半切部ではなく、段ボールの裏側からポイント・ウェイブ・ナイフ刃13を突き刺すことより、特に段ボールの中芯を潰すことなく、また段ボールの切込深さを刃のくいこみ深さに応じて異なるように調節して切れ目を形成するのである。各切目線7aは、切断部7bと、非切断部7cとが交互に断続した形態となっている。
【0024】
ここで本発明で使用するポイント・ウェイブ・ナイフ刃13の形状について簡単に説明しておく。ポイント・ウェイブ・ナイフ刃には、図4(A)に示す刃先の山部の先端から谷部の形状が丸みを帯びたU型と、丸みを帯びていない図4(B)に示すV型とがある。U型とV型いずれのタイプも、刃付けが前後両面になされた両刃タイプと、図示を省略した刃付けが前後いずれか一方の面にのみなされた片刃タイプとがある。
【0025】
ポイント・ウェイブ・ナイフ刃13は、図5のように、山部10と谷部11とを有したウェイブ(波)形状になっていて、山部10の先端から谷部11の底辺まで刃付け12がなされている。これを、本発明のミシン目状切目線7aを形成する刃物として使用する場合、図4(A)(B)のように刃物を1本ずつ単独で使用する場合と、図4(C)のように、刃物を2本密着するように並べて1本の刃物として使用する場合とがある。図6は、ポイント・ウェイブ・ナイフ刃13を2本並べて使用したときのブランクのシートに突き刺さった痕跡を示す説明図である。
【0026】
図6のようにポイント・ウェイブ・ナイフ刃13は、山部10の先端であるポイントから谷部11の底辺に向かって刺すような刺し方でブランクのシートに食い込ませるように形態で使用する。そのため、ポイント・ウェイブ・ナイフ刃の先端のポイントがシートに食い込み、その食い込み状態によって切断幅と食い込み深さが異なる。即ちシートの切断幅と切り込み深さは、ポイント・ウェイブ・ナイフ刃のブランクに対する突き刺し深さに対応し形成されることとなる。
【0027】
ポイント・ウェイブ・ナイフ刃13を、図4(c)ように、2本密着して並べて1本の刃物として使用したときは、図7と図8のように、左右にそれぞれ2列のミシン目状切目線7aによって引裂帯7が形成できる。
【0028】
引裂帯7の形状は,図7に示すように、引裂力によって引裂方向で切れ残りが出ないように、切始部8の幅より引裂帯7の幅を最初に広くし、引裂力を外側にリードするように形成する。すなわち最初はミシン目状切目線7aが稜部罫線1に接近するようにする。また、その切目線7aの外側の頂点から次に切目線7aを稜部罫線1から離れるように湾曲させて引裂力を内側に絞りこむことができるように形成する。そして、今度は切目線7aの内側の頂点よりなだらかに広がるように曲線状に切目線7aを設ける。
【0029】
このように、引裂帯7を形成するミシン目状切目線7aは、稜部罫線1に接近する外側の頂点も、稜部罫線1から離れる内側の頂点も、その罫線と並行にならぬように全て波形の曲線とし、引裂帯7を切始部8から引っ張るときに、引裂力の直線的進行を防ぎ、引裂帯7をその末端まで切れ残りがないように引裂力を導いて切離すことができるようにしている。
なお、図8に示すように、ミシン目状切目線7aが稜部罫線1に最も接近した頂点と、引裂帯7の幅が狭く切目線7aが稜部罫線1から最も離れる頂点は、それぞれ緩やかな曲率をもってシートの表裏を貫通する全切刃により全切部20とすることができる。
【0030】
図7、図8にも示すように、上記ミシン目状切目線7aは引裂帯7を引張り方向に波の頂部が若干傾いている。しかし、このように波頂を傾かせる必要はなく、正弦波のように波の形状が揃ったものとしてもよい。
なお、切目線7aのミシン目のピッチは1.5mm程度、2mm〜1mmの範囲とするのを可とする。切目のピッチが1mm未満とする場合は刃物の加工がし難いものとなり、ピッチを2mm以上とすると、切目線7aが切り難くなるからである。
【0031】
引裂帯7の切始部8は、段ボールの表裏に貫通する全切の切目8aを波形にほぼ対応する変形H字状に入れることにより形成されている。
【0032】
さらに、シートの打ち抜きに際して、図7、図8に示すように、シートSの引裂帯7の外側には、押圧部材をシートの裏側から押し付けて、稜部罫線1に対し斜めに傾斜する凹凸部からなるクロス筋21を形成すると良い。そのほか、ミシン目状切目線7aが稜部罫線1に最も接近する頂部に対応して、引裂帯7の中にも間隔をあけて稜部罫線に垂直なる方向に向いた凹凸部からなる垂直筋22を設けてもよい。このように凹凸部となる筋21または22を入れたシートSは、段ボールの特性上、筋が谷となる方向へは折れ曲がりやすいが、その逆方向、すなわち表側で押筋が山となる方向へは折れ曲がりにくいものとなる。
【0033】
上記のように打ち抜いたブランクを組み立てて飲料缶を包装する際には、ラップラウンドケーサーを用いて、図3に示すよう、稜部罫線1に沿って各一対の立面板2を立ち上げるときに引裂帯7からの折れを防ぎながら、集積した缶Cを包み込んで、継代片4での接合により周壁を形成し、端板5,6を貼り合わせて封緘する。
【0034】
この製箱に際して、上記段ボール箱では、図1に示すように、引裂帯7は、ポイント・ウェイブ・ナイフ刃を段ボールの裏側から厚さ方向に突き刺すことにより形成した、波状でかつ細かいピッチのミシン目状切目線より形成されていることから、このミシン目状切目線7aはヒンジとして作用せず、段ボールが引裂帯7の切目線7aで内側へ折れにくくなり、立面板2と平面板3の稜部罫線1に沿って正確に折れ曲がるので、製箱不良の発生を防止することができる。
【0035】
また、上記段ボール箱の製造時には、引裂帯7の切目線7aと切始部8の切目8aとを同一の抜型で入れることから、これらの位置関係がずれることがなく、従来のコルゲータでのライナカット後にダイカッタで切目を入れる製造方法に比べて、不良率を大幅に低下させることができる。
【0036】
そして、開封に際し、引裂帯7を切始部8から引っ張ると、ライナカットで切目線を入れたもののように千切れて開封不能となることなく、段ボールが切断され、容易に開封することができる。
【0037】
このように開封した状態では、立面板2が切目線7aに沿って不規則に破れることなく切断されて、波状の切断縁が視覚的に優美な印象を与え、美観に優れたものとなる。
【符号の説明】
【0038】
1 稜部罫線
2 立面板
3 平面板
4 継代片
5,6 端板
7 引裂帯
7a ミシン目状切目線
8 切始部
8a 切目
11山部 12刃付け
13ポイント・ウェイブ・ナイフ刃
20全切部
21クロス筋
22垂直筋
S シート

【特許請求の範囲】
【請求項1】
稜部罫線を介して立面板と平面板とを連設し、その立面板に稜部罫線と並行する開封用の引裂帯及びその切始部を設け、前記立面板と平面板とを稜部罫線沿いに折り曲げて製箱する段ボール箱において、
前記引裂帯は、ポイント・ウェイブ・ナイフ刃を段ボールの裏側から厚さ方向に突き刺すことにより形成した、波状でかつ細かいピッチのミシン目状切目線より形成されていることを特徴とする引裂帯付段ボール箱。
【請求項2】
前記ミシン目状切目線は切断部と非切断部とが断続した形態となっており、切断部の切り込み深さは、前記ポイント・ウェイブ・ナイフ刃の突き刺し深さに対応した深さに形成されていることを特徴とする請求項1に記載の引裂帯付段ボール箱。
【請求項3】
前記ミシン目状切目線は、2本1組で並行して延びるように形成されていることを特徴とする請求項1または2に記載の引裂帯付段ボール箱。
【請求項4】
前記立面板に設けた引裂帯の外側に、稜部罫線と斜めに交差する方向に向いた凹凸からなるクロス筋が配設されていることを特徴とする請求項1乃至3のいずれか1項に記載の引裂帯付段ボール箱。
【請求項5】
前記引裂帯の中に、稜部罫線と直交する方向に向いた凹凸からなる押筋が配設されていることを特徴とする請求項1乃至4のいずれか1項に記載の引裂帯付段ボール箱。
【請求項6】
前記波状に延びるミシン目状切目線の頂部に、段ボールの表裏を貫通する全切部を設けていることを特徴とする請求項1乃至5のいずれか1項に記載の引裂帯付段ボール箱。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate

【図7】
image rotate

【図8】
image rotate

【図9】
image rotate


【公開番号】特開2011−235908(P2011−235908A)
【公開日】平成23年11月24日(2011.11.24)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−106627(P2010−106627)
【出願日】平成22年5月6日(2010.5.6)
【出願人】(502356517)王子チヨダコンテナー株式会社 (66)
【出願人】(000122298)王子製紙株式会社 (2,055)
【Fターム(参考)】