説明

引込戸

【課題】通常は手の届かない引込戸の収納部の内側を掃除できるようにして、メンテナンスを容易にし、長期的にスムーズな開閉を維持する。
【解決手段】本発明の引込戸10は、建物の壁体に設けられて戸体20を収納する戸袋30の奥部近傍に面した壁体に、戸袋30内と壁体の外側とを連通する吸引経路40が設けられたものである。この吸引経路40の先端41は戸袋30の奥部下面に向けて開口しており、後端42には掃除機の吸引ホース44が接続されるように形成されて、壁体の外側から戸袋30の奥部に溜まったた埃やゴミを吸引できるように構成される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、出入口等に設けられて、開扉時には戸袋内に引込み収納される引込戸に関し、特に戸袋内を容易に掃除しうるように構成された引込戸に関する。
【背景技術】
【0002】
従来より、例えば建物の勝手口など比較的スペースの狭い場所に設けられる開口部用の建具として、片引き式の引込戸がよく利用されている(例えば、特許文献1等)。この種の引込戸は、建物の壁体と一体に設けた戸袋の内側に戸体をスライドさせて収納できるように構成されているので、開口幅を有効に利用することができ、開放時に戸体が邪魔にならないという利点がある。
【特許文献1】特開平10−184170号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
上記のような引込戸においては、長期間使用するうちに、戸袋内の奥のほうに埃やゴミが溜まってしまうという問題が生じる。しかし、片引き式の引込戸の場合、戸体の横幅は開口幅よりもやや大きく形成されるのが通常で、戸体を戸袋から完全には抜き出せないようになっている。そのため、戸袋の内側に箒や掃除機などの掃除用具を差し入れることができず、奥のほうに溜まった埃やゴミを取り除くことが難しい。また、敷居上にたまったゴミや埃は、戸体の開閉に伴って戸袋の奥へと押し込まれてしまったり、戸車に絡み付いたりして、戸体の開閉に支障をきたすおそれもある。
【0004】
本発明は、上記のような問題点に鑑みてなされたもので、通常は手の届かない引込戸の戸袋内を掃除できるようにしてメンテナンスを容易にし、長期的にスムーズな開閉を維持し得るような引込戸を提供するものである。
【課題を解決するための手段】
【0005】
上記課題を解決するため、本発明の引込戸は、レールに沿って走行する戸体が、建物の壁体に設けられた戸袋内に収納される引込戸において、戸袋の奥部近傍に面した壁体に、戸袋内と壁体の外側とを連通する吸引経路が設けられ、この吸引経路の先端が戸袋の奥部下面に向けて開口し、後端が掃除機の吸引ホースを接続しうるように形成されたことを特徴とする。これにより、吸引経路の後端に掃除機の吸引ホースを接続して、吸引経路の先端から戸袋の奥部に溜まった埃やゴミを簡単に吸い取ることができる。
【0006】
この発明においては、戸体の引込側の見込面に、戸袋下面を清掃するためのブラシが取り付けられるのが好ましい。このブラシは、戸体を開閉するたびに戸体とともに移動し、下レールを含む戸袋下面の埃やゴミを戸袋の奥部に集めて吸引しやすくする作用をなす。
【0007】
また、この発明においては、吸引経路の後端に、着脱可能な蓋体が取り付けられるのが好ましい。これにより、吸引経路を設けた壁面の美観が向上するとともに、引込戸の気密性も良好に保持される。
【0008】
また、この発明においては、戸袋の奥部下面にゴミ溜めピットが形成されていてもよい。これにより、戸体の開閉移動に伴って戸袋の奥部に押し込まれた埃やゴミが、このゴミ溜めピットに集まりやすくなる。
【0009】
また、この発明においては、戸袋の開口縁部と、戸体の引込側の縦框の縁部に、それぞれ横断面略L字形の気密係合片が設けられて、戸体を閉じたときに上記気密係合片同士が互いに係合し合うように形成されていてもよい。このような気密手段を設ければ、引込戸を屋外に面した開口部に設置する場合でも、屋外側と屋内側との間で空気の流出入や湿気、煙等の流入を防ぐことができるとともに、戸袋内に虫や枯葉等が入り込むのを防ぐこともできる。
【発明の効果】
【0010】
上述のように構成される本発明の引込戸は、戸袋の奥部に連通する吸引経路を通じて、戸袋の奥部に溜まった埃やゴミを、壁体の外側から市販の家庭用掃除機で吸い取ることができるように構成されているから、通常は手の届きにくい戸袋内の掃除が簡単になる。また、この吸引経路を利用して戸袋内に殺虫剤を散布することも可能である。これらによって、衛生的な建物環境と、戸体のスムーズな開閉操作とを長期間にわたって維持することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0011】
以下、本発明の実施の形態について図を参照して説明する。
【0012】
図1〜図3は本発明の一実施形態に係る引込戸を示す。例示の引込戸10は、建物の外壁部分に勝手口として設けられたもので、図1は引込戸10の屋内側正面図、図2は引込戸10の横断面図、図3は引込戸10の戸体下部を示す部分正面図(a)と戸体下部の見込面を示す部分側面図(b)である。
【0013】
壁体に設けられた開口部の屋外側の四周には屋外側開口枠11が取り付けられており、屋内側の四周には屋内側開口枠12や造作枠13が取り付けられている。戸体20は、これら枠材11、12等の内側に建て込まれて開口部を開閉可能とする。
【0014】
上下の開口枠11にはレールが設けられ、そのレールに沿って戸体20が走行可能に建て込まれている。例示の形態では図1及び図2中に下レール14のみを図示しているが、上レールの有無は本発明において特に限定されない。戸体20を収納する戸袋30は、外壁材31と内壁材32とによって挟まれた壁体内に設けられている。戸袋30の内面及び奥面には、戸袋内張り材33、34、35がそれぞれ張設されている。
【0015】
戸体20はその四周に、上框21、下框22、戸先側の縦框23及び引込側の縦框24を備え、これらの框材の内側にガラス板等からなる面材25が嵌め込まれている。戸先側の縦框23には開閉操作用の取手26も取り付けられている。なお、例示形態では図示していないが、下框22には下レール14上を走行する戸車が取り付けられていても良い。
【0016】
本発明の要部は、戸袋30の奥部近傍に面した壁体に、戸袋30内と壁体の外側(屋内側の空間)とを連通する吸引経路40が設けられた点にある。この吸引経路40は、例えば合成樹脂等からなる中空パイプを屈曲形成してなるもので、内壁材32と、戸袋30の奥面の内張り材35または屋内側の内張り材34とを貫通し、先端41が戸袋30内の奥部下面に向けて開口するとともに、後端42が内壁材32の表面で屋内側に開口している。後端42の開口には略円板状の蓋体43が着脱可能に取り付けられ、この蓋体43を取り外すと、開口内に市販の掃除機の吸引ホース44を接続しうるように形成されている。
【0017】
戸袋30の奥部下面には、下レール14を一部カットしてゴミ溜めピット15が形成されており、戸体20の開閉移動に伴って戸袋30の奥部に押し込まれたゴミが、このゴミ溜めピット15に集まるようになっている。吸引経路40の先端41は、このゴミ溜めピット15に近接して下向きに開口しており、後端42に接続した掃除機で、ゴミ溜めピット15に溜まったゴミを吸引することができる。
【0018】
また、図3に示すように、戸体20の引込側の縦框24には、戸袋30の下面を清掃するためのブラシ27が取り付けられている。ブラシ27は、縦框24の見込面の下端位置に取り付けられて、戸体20を開閉するたびに、毛先が下レール14及びその周辺の戸袋下面を掃く。これにより、戸袋下面のゴミが定常的にゴミ溜めピット15に集められることとなる。
【0019】
また、図2に示すように、例示の引込戸10においては、気密性を高めるために、戸袋30の屋外側の開口縁部と、戸体20の引込側の縦框24の屋外側縁部に、それぞれ横断面略L字形の気密係合片51、52が設けられて、戸体20を閉じたときに、これらの気密係合片51、52が互いに係合し合うようになっている。これにより、屋外側と屋内側との間で空気の流出入や湿気、煙等の流入を防ぐことができる。また、戸袋30内に蚊、ハエその他の昆虫類が飛び込んだり、枯葉等の異物が入り込んだりするのも防ぐことができる。
【0020】
なお、上記の実施形態は一例であって、開口枠や框材等の断面形状は本発明の趣旨を逸脱しない範囲で適宜変更可能である。上記実施形態では、吸引経路40の後端42が内壁材32を貫通して屋内側に開口しているが、吸引経路40の後端42が外壁材31を貫通して屋外側に開口しても差し支えない。
【0021】
さらに、本発明は、例示形態のような片引き式の引込戸だけでなく、開口部の両側部に戸袋が設けられた引き分け式の引込戸であっても、好適に実施することができる。また、屋外に面した開口部だけでなく、屋内の開口部に設けられる引込戸にも適用することができる。
【図面の簡単な説明】
【0022】
【図1】本発明の実施形態に係る引込戸の屋内側正面図である。
【図2】上記引込戸の横断面図である。
【図3】上記引込戸の戸体下部を示す部分正面図(a)、及び戸体下部の見込面を示す部分側面図(b)である。
【符号の説明】
【0023】
10 引込戸
14 下レール
15 ゴミ溜めピット
20 戸体
24 引込側の縦框
27 ブラシ
30 戸袋
35 奥面の内張り材
40 吸引経路
43 蓋体
44 吸引ホース
51 気密係合片
52 気密係合片

【特許請求の範囲】
【請求項1】
レールに沿って走行する戸体が、建物の壁体に設けられた戸袋内に収納される引込戸において、戸袋の奥部近傍に面した壁体に、戸袋内と壁体の外側とを連通する吸引経路が設けられ、この吸引経路の先端が戸袋の奥部下面に向けて開口し、後端が掃除機の吸引ホースを接続しうるように形成されたことを特徴とする引込戸。
【請求項2】
戸体の引込側の見込面に、戸袋下面を清掃するためのブラシが取り付けられたことを特徴とする請求項1に記載の引込戸。
【請求項3】
吸引経路の後端に、着脱可能な蓋体が取り付けられたことを特徴とする請求項1に記載の引込戸。
【請求項4】
戸袋の奥部下面にゴミ溜めピットが形成されたことを特徴とする請求項1に記載の引込戸。
【請求項5】
戸袋の開口縁部と、戸体の引込側の縦框の縁部に、それぞれ横断面略L字形の気密係合片が設けられて、戸体を閉じたときに上記気密係合片同士が互いに係合し合うように形成されたことを特徴とする請求項1記載の引込戸。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2007−46380(P2007−46380A)
【公開日】平成19年2月22日(2007.2.22)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−233283(P2005−233283)
【出願日】平成17年8月11日(2005.8.11)
【出願人】(000101776)アルメタックス株式会社 (22)
【Fターム(参考)】