弦楽器
【課題】 弦の張力によるベース部材の曲がり変形を軽減して、演奏中に楽音に効果を良好に付加することができる弦楽器を提供する。
【解決手段】 表裏両面側に弦4が張られたベース部材3と、このベース部材3に張られた弦4のうち、演奏操作をする表面側の弦4と反対側に位置する裏面側の弦4の張力を変化させる弦張制御部材21とを備えている。従って、ベース部材3の表裏両面側に張られた弦4によって、そのベース部材3に対する弦4の張力による曲げモーメントを相殺することができ、これにより弦4の張力によるベース部材3の曲がり変形を軽減することができると共に、演奏中に弦張制御部材21を操作することにより、楽音の音高を変化させて楽音に効果を良好に付加することができる。
【解決手段】 表裏両面側に弦4が張られたベース部材3と、このベース部材3に張られた弦4のうち、演奏操作をする表面側の弦4と反対側に位置する裏面側の弦4の張力を変化させる弦張制御部材21とを備えている。従って、ベース部材3の表裏両面側に張られた弦4によって、そのベース部材3に対する弦4の張力による曲げモーメントを相殺することができ、これにより弦4の張力によるベース部材3の曲がり変形を軽減することができると共に、演奏中に弦張制御部材21を操作することにより、楽音の音高を変化させて楽音に効果を良好に付加することができる。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、ギターやバイオリン、三味線などの弦楽器に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、ギターなどの弦楽器においては、特許文献1に記載されているように、楽器ケースに設けられたネックと称する棹状部材の表面側に弦を張り、この弦を爪弾いて振動させることにより、演奏するように構成されている。このような弦楽器では、演奏中に音高を高くしたり低くしたりして、楽音に効果を付加するベンディング演奏をするために、棹状部材に弦の張力を変化させるためのトレモロなどの弦張制御部材が設けられている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2004−361975号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、このような従来の弦楽器では、弦が棹状部材の表面側のみに張られているため、弦の張力による曲げモーメントによって棹状部材がその長手方向に曲がり変形する。このため、棹状部材の剛性を高くして、弦の張力による棹状部材の曲がり変形を防ぐ必要があり、棹状部材の構造が複雑になるばかり、剛性の高い材料を使用する必要があるため、製作コストが高くなるという問題がある。
【0005】
また、このような従来の弦楽器では、演奏中に音高を高くしたり低くしたりして、楽音に効果を付加するベンディング演奏をする際に、棹状部材に設けられたトレモロなどの弦張制御部材を操作することにより、棹状部材の表面側のみに張られた弦の張力を変化させているため、その弦の張力変化に伴う曲げモーメントによっても、棹状部材が曲がり変形しないように、棹状部材の剛性を更に高くする必要があり、このため、より一層、製作コストが高くなるという問題が生じる。
【0006】
この発明が解決しようとする課題は、弦の張力による棹状部材などのベース部材の曲がり変形を軽減することができると共に、演奏中に楽音に効果を良好に付加することができる弦楽器を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
この発明は、表裏両面側に弦が張られたベース部材と、このベース部材に張られた前記弦のうち、演奏操作をする表面側の弦と反対側に位置する裏面側の弦の張力を変化させる弦張制御部材とを備えていることを特徴とする弦楽器である。
【発明の効果】
【0008】
この発明によれば、ベース部材の表裏両面側に張られた弦によって、そのベース部材に対する弦の張力による曲げモーメントを相殺することができ、これにより弦の張力によるベース部材の曲がり変形を軽減することができる。このため、演奏中に弦張制御部材を操作することにより、弦の張力を変化させて楽音に効果を良好に付加することができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【図1】この発明を適用した弦楽器の実施形態1を示した正面図である。
【図2】図1に示された弦楽器のA−A矢視における断面図である。
【図3】図2に示された弦楽器の各断面を示し、(a)はそのB−B矢視における拡大断面図、(b)はそのC−C矢視における拡大断面図である。
【図4】図1に示された弦楽器の弦モジュールを示した正面図である。
【図5】図2に示された弦楽器の弦モジュールを示した断面図である。
【図6】図5に示された弦モジュールの弦引張装置を示した要部の拡大斜視図である。
【図7】図1に示された弦楽器において楽器ケースの一部を破断して弦張制御部材を下面側から見た状態を示した要部の拡大裏面図である。
【図8】図7に示された弦楽器の弦張制御部材のD−D矢視における拡大断面図である。
【図9】図7に示された弦張制御部材の操作部が操作されて回転体が反時計回りに回転した状態を示した拡大裏面図である。
【図10】図9に示された弦張制御部材の操作部が反対側に操作されて回転体が時計回りに回転した状態を示した拡大裏面図である。
【図11】この発明を適用した弦楽器の実施形態2における弦モジュールを示した正面図である。
【図12】図11に示された弦モジュールのE−E矢視における断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
(実施形態1)
以下、図1〜図10を参照して、この発明を適用した弦楽器の実施形態1について説明する。
この弦楽器は、図1〜図3に示すように、楽器ケース1と、この楽器ケース1に組み付けられる弦モジュール2とを備えている。楽器ケース1は、上面が開放されたほぼ半筒状で、一端部側(図1では左端部側)の幅(長手方向と直交する方向の長さ)が短く、他端部側(図1では右端部側)に向かうに従ってその幅が徐々に長くなるように形成されている。
【0011】
弦モジュール2は、図1および図2に示すように、ベース部材3と、このベース部材の表裏両面側(図2では上下両面側)に張り渡された複数の弦4と、この複数の弦4の引張力をそれぞれ調整する複数の弦引張調整装置5とを備えている。ベース部材3は、ステンレスなどの金属やセラミックなどの耐摩耗性および耐圧縮性に強い材料からなり、全体がほぼ帯板状に形成されている。
【0012】
すなわち、このベース部材3は、図1および図2に示すように、その一端部側(図2では左端部側)の幅(長手方向と直交する方向の長さ)が短く、他端部側(図2では右端部側)に向かうに従ってその幅が徐々に長くなるように形成され、楽器ケース1内の上部に配置されるように構成されている。
【0013】
また、このベース部材3は、図4および図5に示すように、その一端部(図4では左端部)に上下に突出して設けられた第1弦支持部6、7と、他端部側付近(図4では右端部側付近)に上下に突出して設けられた第2弦支持部8、9と、この第2弦支持部8、9の更に他端部側(図4では右端部側)に設けられた調整装置取付部10とを備え、第1、第2の各弦支持部6〜9によって複数の弦4がベース部材3の表裏両面側(図5では上下両面側)に張り渡されるように構成されている。
【0014】
すなわち、第1弦支持部6、7のうち、表面側の第1弦支持部6は、図5に示すように、ベース部材3の一端部から上方に向けて突出して形成されており、裏面側の第1弦支持部7は、ベース部材3の一端部から下方に向けて表面側の第1弦支持部6とほぼ同じ高さで突出して形成されている。また、第2弦支持部8、9のうち、表面側の第2弦支持部8は、ベース部材3の他端部側付近から上方に向けて突出して形成されており、裏面側の第2弦支持部9は、ベース部材3の他端部付近から下方に向けて表面側の第2弦支持部8とほぼ同じ高さで突出して形成されている。
【0015】
この場合、第1、第2の各弦支持部6〜9の各先端部(図5では各上下端部)は、それぞれ平坦に形成されていても良いが、図3(b)に示すように、弦4が張り渡される方向と直交する方向、つまり複数の弦4の配列方向における各弦4の位置をそれぞれ規制するための位置規制溝6a、7aが複数の弦4にそれぞれ対応して設けられていても良い。この位置規制溝6a、7aは、弦4の直径よりも浅く形成されていることが望ましい。
【0016】
また、第1弦支持部6、7が位置するベース部材3の一端部には、図4および図5に示すように、弦押え部材11が設けられている。この弦押え部材11は、押え板11aと、2本のビス11bとからなり、この2本のビス11bをベース部材3の一端部にねじ込んで押え板11aをベース部材3に向けて押え付けることにより、この押え板11aで複数の弦4を押え付けるように構成されている。
【0017】
また、ベース部材3の表裏両面(図5では上下両面)には、図4および図5に示すように、指板部12、13がそれぞれ設けられている。この指板部12、13は、ベース部材3の長手方向における中間部から第1弦支持部6、7に亘って設けられている。この指板部12、13には、それぞれ複数のフレット12a、13aがベース部材3の長手方向に沿って所定間隔で設けられている。この複数のフレット12a、13aは、その高さが第1、第2の各弦支持部6〜7の高さよりも低く形成されている。
【0018】
さらに、ベース部材3の調整装置取付部10は、図4および図5に示すように、ベース部材3の第2弦支持部8、9に隣接する他端部(図4では右端部)に設けられた枠状の部分であり、複数の弦引張調整装置5が複数の弦4の配列方向に沿って配置される開口部10aと、この開口部10aの他端部(図4では右端部)に位置して複数の弦引張調整装置5がベース部材3の長手方向に沿ってそれぞれ移動可能に取り付けられる取付梁部10bとを備えている。
【0019】
一方、複数の弦4は、図4および図5に示すように、第1弦支持部6、7でそれぞれ折り返されて第1、第2の各弦支持部6〜9にそれぞれ支持されることにより、ベース部材3の表裏両面側(図5では上下両面側)に連続して張り渡されるように構成されている。この場合、複数の弦4は、第1弦支持部6、7で折り返された部分が弦押え部材11の押え板11aによってベース部材3の一端部に押し付けられることにより、演奏時に弦4の折り返し部分がその張り渡し方向に位置ずれしないように構成されている。
【0020】
この複数の弦4は、図5に示すように、その各両端部がそれぞれ複数の弦引張装置5に取り付けられている。この弦引張装置5は、図4および図5に示すように、弦4の両端部が取り付けられる弦取付駒14と、この弦取付駒14をベース部材3の長手方向に沿って移動させるための弦調整部材15とを備えている。
【0021】
弦取付駒14は、図6に示すように、ほぼ長方形の角棒状に形成され、弦4の一端部に設けられたボールエンドである固定部4aを係止するための弦係止孔14aと、弦4の他端部を固定する弦固定ビス14bとを備えていている。この弦取付駒14は、図4〜図6に示すように、ベース部材3の調整装置取付部10の開口部10a内に配置された状態で、弦4を弦係止孔14aに挿入させて、弦4の一端部のボールエンドである固定部4aを弦係止孔14aに係止させるように構成されている。
【0022】
また、この弦取付駒14は、図4〜図6に示すように、弦4の一端部のボールエンドである固定部4aが弦係止孔14aに係止された状態で、弦4が第1、第2の各弦支持部6〜9上に張り渡され、この張り渡された弦4の他端部が弦固定ビス14bによって固定されることにより、弦4をベース部材3の表裏両面側に連続させた状態で張り渡すように構成されている。
【0023】
また、弦引張装置5の弦調整部材15は、図4〜図6に示すように、弦取付駒14の端部に一端部が取り付けられたねじ軸15aと、このねじ軸15aに螺合する2つのナット15bとを備えている。ねじ軸15aは、弦取付駒14を挟んで第2弦支持部8、9と反対側に位置する端部が、ベース部材3の他端部(図5では右端部)に設けられた張調整装置取付部10の取付梁部10bに設けられた貫通孔10c内に、ベース部材3の長手方向に沿って移動可能に挿入されるように構成されている。
【0024】
この場合、ねじ軸15aは、図4および図5に示すように、その軸中心が複数の弦4の各延長上で、且つ複数の弦4にそれぞれ対応する箇所のベース部材3における上下方向の厚みの中間点をベース部材3の長手方向に沿って通るベース部材3の各中心線Mの延長上に位置し、この中心線Mの延長線上に沿って移動するように構成されている。
【0025】
また、2つのナット15bは、図4〜図6に示すように、張調整装置取付部10の取付梁部10bにおける弦取付駒14側に位置する内側と弦取付駒14の反対側に位置する外側との両側にそれぞれ位置した状態で、ねじ軸15aに螺合して取付梁部10bを挟み付けることにより、弦取付駒14を張調整装置取付部10の開口部10a内に固定するように構成されている。
【0026】
すなわち、この弦調整部材15は、予め1つのナット15bをねじ軸15aに螺合させ、この状態でねじ軸15aを張調整装置取付部10の取付梁部10bの貫通孔10cに挿入させ、この挿入したねじ軸15aに取付梁部10bの外側から他のナット15bを螺合させて締め付けることにより、弦取付駒14を第2弦支持部8、9から離れる方向に移動させて弦4を引っ張るように構成されている。
【0027】
また、この弦調整部材15は、取付梁部10bの外側に位置するナット15bを締め付けて、弦4を所定の張力で第1、第2の各弦支持部6〜9上に張り渡した状態で、取付梁部10bの内側に位置するナット15bを締め付けて、2つのナット15bで取付梁部10bを挟み付けることにより、弦取付駒14を張調整装置取付部10の開口部10a内に固定し、弦4の張力を一定に保つように構成されている。
【0028】
これにより、弦引張装置5は、弦取付駒14が張調整装置取付部10の開口部10a内に固定され、弦4の張力が一定に保たれた状態で、張調整装置取付部10の取付梁部10bの外側に位置するナット15bを緩めると、ねじ軸15aおよび弦取付駒14が第2弦支持部8、9側に向けて移動し、弦4の張力が緩んで低下し、逆に外側に位置するナット15bを締め付けると、ねじ軸15aおよび弦取付駒14が第2弦支持部8、9から離れる方向に移動し、弦4の張力が高くなることにより、弦4の張力を調整する所謂チューニングを行うように構成されている。
【0029】
ここで、弦4の張力によりベース部材3に加わる曲げモーメントについて説明する。
このベース部材3は、その一端部に第1弦支持部6、7が表裏(図5では上下)にほぼ同じ高さで突出して設けられ、他端部側に第2弦支持部8、9が表裏にほぼ同じ高さで突出して設けられ、表面側(図5では上面側)の第1、第2の各弦支持部6、8の各先端間および裏面側(図5では下面側)の第1、第2の各弦支持部7、9の各先端間に弦4が張り渡されていることにより、弦4の張力によってベース部材3に加わる曲げモーメントが相殺され、弦4の張力による圧縮力のみがベース部材3に加わっている。
【0030】
この場合、弦4は、第1弦支持部6、7で折り返されて、その両端部が第2弦支持部8、9側に位置することにより、第1、第2の各弦支持部6〜9に連続して張り渡され、この状態で弦4の両端部が弦引張装置5によって引っ張られることにより、表面側の第1、第2の各弦支持部6、8の各先端間および裏面側の第1、第2の各弦支持部7、9の各先端間に張り渡されている弦4の張力が同じになり、これによっても弦4の張力によってベース部材3に加わる曲げモーメントが相殺されている。
【0031】
また、弦4の張力を調整する弦引張装置5は、弦4の両端部が取り付けられる弦取付駒14を弦4の張り渡し方向に沿って移動させるための弦調整部材15のねじ軸15aが、複数の弦4の各延長上で、且つ複数の弦4にそれぞれ対応する箇所のベース部材3における上下方向の厚みの中間点をベース部材3の長手方向に沿って通るベース部材3の各中心線Mの延長上に位置し、この中心線Mの延長線上に沿って移動することにより、ベース部材3に加わる曲げモーメントによるベース部材3の曲がり変形が阻止されている。
【0032】
そして、このような弦モジュール2は、図1および図2に示すように、そのベース部材3が楽器ケース1内にビス止めされている。すなわち、楽器ケース1の底部には、図2に示すように、複数の取付ボス16が楽器ケース1の下側に開放された状態で、楽器ケース1の長手方向に沿って設けられている。弦モジュール2は、複数の弦4がそれぞれ張り渡されたベース部材3が楽器ケース1の複数の取付ボス16上に配置され、この状態で楽器ケース1の下側から各取付ボス16に挿入されたビス17がベース部材3にねじ込まれることにより、楽器ケース1内に取り付けられている。
【0033】
これにより、この弦モジュール2は、図1および図2に示すように、ベース部材3の表面側に位置する弦4が楽器ケース1の上面側に突出して露出し、ベース部材3における第1弦支持部6、7が位置する一端部が楽器ケース1の先端面で覆われ、ベース部材3の他端部に位置する調整装置取付部10および弦引張調整装置5が楽器ケース1の上面側およびその他端部側に露出し、この状態で楽器ケース1に取り付けられている。このため、この弦楽器は、楽器ケース1に弦モジュール2が取り付けられた状態で、弦引張調整装置5によって弦4の張力が調整できるように構成されている。
【0034】
また、楽器ケース1には、図1および図2に示すように、弦モジュール2における複数の弦4の振動を検出するための弦振動検出ユニット18が、ベース部材3の第2弦支持部8、9に隣接する箇所に位置する複数の弦4の下側を横切った状態で、ビス18aによって取り付けられている。この弦振動検出ユニット18は、ベース部材3に張り渡された複数の弦4の振動をそれぞれ検出する複数のピックアップ20を備えている。
【0035】
この複数のピックアップ20は、弦4の振動を磁力によって検出する磁気センサーや、弦4の振動を光学的に検出する光センサーなどであり、複数の弦4にそれぞれ対応して配置されている。また、弦振動検出ユニット18は、外部接続端子19を備え、この外部接続端子19に接続ケーブル19aを介して外部スピーカユニット(図示せず)と電気的に接続され、各ピックアップ20で検出された電気信号に基づいて外部スピーカユニットで各弦4の振動に応じた楽音を放音させるように構成されている。
【0036】
ところで、この楽器ケース1に組み込まれた弦モジュール2には、図2に示すように、ベース部材3の裏面側(図2では下面側)に位置する複数の弦4の各張力を変化させるための弦張制御部材21が設けられている。この弦張制御部材21は、図7および図8に示すように、ベース部材3の裏面に回転可能に取り付けられて複数の弦4をそれぞれ摺動可能に保持する回転体22と、この回転体22を回転操作するための操作部23とを備えている。
【0037】
回転体22は、図2に示すように、ベース部材3の裏面側(図2では下面側)における弦振動検出ユニット18と指板部13との間に位置する箇所にねじ軸24によって回転可能に取り付けられ、ベース部材3の裏面と平行に回転するように構成されている。この場合、ベース部材3には、図8に示すように、ねじ軸24が螺着するねじ孔3aがベース部材3の表裏面(図8では上下面)に貫通して形成されている。また、この回転体22の下面には、図7および図8に示すように、ベース部材3の裏面側に張られた複数の弦4がそれぞれ摺動可能に挿入する弦挿入溝22aが、各弦4と平行な状態でそれぞれ設けられている。
【0038】
操作部23は、図7および図8に示すように、その一端部が回転体22の側面に設けられ、他端部が楽器ケース1の側面部に設けられた切欠き部1bを通して楽器ケース1の外部に突出し、この突出した部分を操作することにより、回転体22を回転させるように構成されている。この場合、楽器ケース1から外部に突出した操作部23の先端は、図7に示すように、2つの押圧部23a、23bが二股に分かれて設けられ、これにより全体がほぼY字形状に形成されている。
【0039】
これにより、弦張制御部材21は、図7および図8に示すように、回転体22の複数の弦挿入溝22a内にそれぞれ各弦4が挿入した状態で、楽器ケース1から外部に突出した操作部23における2つの押圧部23a、23bのうち、一方の押圧部23aが楽器ケース1の側面に向けて押圧されると、図9に示すように、回転体22が反時計回りに回転して、複数の弦4をそれぞれ屈曲させ、各弦4の張力をそれぞれ変化させるように構成されている。
【0040】
また、この弦張制御部材21は、図7および図8に示すように、楽器ケース1から外部に突出した操作部23における2つの押圧部23a、23bのうち、他方の押圧部23bが楽器ケース1の側面に向けて押圧されると、図10に示すように、回転体22が時計回りに回転して、複数の弦4をそれぞれ屈曲させ、各弦4の張力をそれぞれ変化させるように構成されている。
【0041】
次に、このような弦楽器で演奏する場合について説明する。
このときには、まず、複数の弦引張装置5によって各弦4の張力をそれぞれ調整する。すなわち、弦引張装置5の弦取付駒14側に位置する内側のナット15bを緩め、ベース部材3における調整装置取付部10の取付梁部10bの外側に位置するナット15bを締め付けるか、緩めるかして、弦4の張力を調整し、弦4のチューニングを行う。
【0042】
このとき、ベース部材3の裏面(図2では下面)に取り付けられた弦張制御部材21は、ニュートラル状態(中立状態)になる。すなわち、弦張制御部材21は、その回転体22に設けられた複数の弦挿入溝22a内にそれぞれ各弦4が挿入されているので、各弦4の張力によって各弦挿入溝22aが各弦4の張り渡し方向と平行になるように、回転体22がねじ軸24を中心に回転する。これにより、弦張制御部材21は、ニュートラル状態(中立状態)になる。
【0043】
この状態で、演奏者が楽器ケース1を抱えて演奏する際には、一方の手(例えば左手)で指板部12、13に対応する楽器ケース1の箇所を持って、楽器ケース1から露出した指板部12のいずれのフレット12aに各弦4のいずれかを押えながら、他方の手(例えば右手)で楽器ケース1から露出した複数の弦4を爪弾く。これにより、各弦4が振動し、その弦4の振動が弦振動検出ユニット18の各ピックアップ20によって検出され、この検出された信号に基づいてスピーカユニット(図示せず)で楽音が放音される。
【0044】
このとき、楽音の音高を変化させて楽音に効果を付加するベンディング演奏をする場合には、楽器ケース1の外部に突出した弦張制御部材21の操作部23における二股に分かれた2つの押圧部23a、23bを演奏者の太腿や脇腹などの身体の一部に押し当て、この状態で身体を揺するなどして操作部23を操作し、弦張制御部材21の回転体22を回転させる。すると、回転体22の弦挿入溝22aによって複数の弦4が屈曲して、各弦4の張力が変化する。これにより、楽音の音高を変化させて楽音に効果を付加することができる。
【0045】
例えば、楽器ケース1から外部に突出した操作部23における2つの押圧部23a、23bのうち、一方の押圧部23aが楽器ケース1の側面に向けて押圧されると、図9に示すように、回転体22が反時計回りに回転して、複数の弦4をそれぞれ屈曲させ、各弦4の張力をそれぞれ変化させる。これにより、楽音の音高を変化させて楽音に効果を付加することができる。
【0046】
また、楽器ケース1から外部に突出した操作部23における2つの押圧部23a、23bのうち、他方の押圧部23bが楽器ケース1の側面に向けて押圧されると、図10に示すように、回転体22が時計回りに回転して、複数の弦4をそれぞれ屈曲させ、各弦4の張力をそれぞれ変化させる。これにより、楽音の音高を変化させて楽音に効果を付加することができる。
【0047】
これにより、この弦楽器では、一方の手(例えば左手)で指板部12、13に対応する楽器ケース1の箇所を持って、楽器ケース1から露出した指板部12のいずれのフレット12aに各弦4のいずれかを押えながら、他方の手(例えば右手)で楽器ケース1から露出した複数の弦4を爪弾いて演奏をしている状態で、いずれの手も使わずに、弦張制御部材21の操作部23を演奏者の太腿や脇腹などの身体の一部で操作して、楽音の音高を変化させて楽音に効果を付加することができる。
【0048】
ところで、この弦楽器においては、ベース部材3の表裏両面側に張り渡された複数の弦4を表裏反転させて使用することができる。このときには、楽器ケース1から弦モジュール2を取り外し、この取り外した弦モジュール2のベース部材3の裏面(図5では下面)に取り付けられた弦張制御部材21を取り外し、この取り外した弦張制御部材21をベース部材3の表面(図5では上面)に取り付ける。
【0049】
すなわち、弦張制御部材21のねじ軸24を緩めて回転体22をねじ軸24と共にベース部材3の下面から取り外し、この取り外した回転体22をベース部材3の上面とこの上面に対面する複数の弦4との間に挿入させて、回転体22に設けられた複数の弦挿入溝22aにベース部材3の表面側の各弦4を挿入させ、この状態でねじ軸24をベース部材3のねじ孔3a(図8参照)に上方から螺入させて、回転体22をねじ軸24によってベース部材3の上面に回転可能に取り付ける。
【0050】
このように弦張制御部材21が取り付けられた弦モジュール2を上下反転させて楽器ケース1に組み付けることにより、簡単にベース部材3の表裏両面側に張り渡された複数の弦4を表裏反転させることができる。このように弦モジュール2を表裏反転させても、良好に演奏することができると共に、演奏中に弦張制御部材21の操作部23を演奏者の太腿や脇腹などの身体の一部で操作して、楽音の音高を変化させて楽音に効果を付加することができる。
【0051】
このように、この弦楽器によれば、表裏両面側に弦4が張られたベース部材3と、このベース部材3に張られた弦4のうち、演奏操作をする表面側の弦4と反対側に位置する裏面側の弦4の張力を変化させる弦張制御部材21とを備えているので、弦4の張力によるベース部材3の曲がり変形を軽減することができると共に、演奏中に弦張制御部材21を操作することにより、楽音の音高を変化させて楽音に効果を良好に付加することができ、これにより良好にベンディング演奏をすることができる。
【0052】
すなわち、この弦楽器では、ベース部材3の表裏両面側に張られた弦4によって、ベース部材3に対する弦4の張力による曲げモーメントを相殺することができ、これにより弦4の張力によるベース部材3の曲がり変形を軽減することができるので、良好に演奏することができると共に、演奏中に弦張制御部材21を操作することにより、弦4の張力を変化させて楽音に効果を良好に付加することができ、これにより良好にベンディング演奏をすることができる。
【0053】
この場合、弦張制御部材21は、ベース部材3に回転可能に取り付けられて弦4を保持する回転体22と、この回転体22を回転操作するための操作部23とを備えていることにより、操作部23を操作するだけで、回転体22を回転させることができ、この回転体22の回転に応じて弦4を屈曲させることができるので、弦4の張力を簡単に変化させて、音高を良好に変化させることができ、これにより楽音に効果を付加することができる。
【0054】
また、回転体22は、ベース部材3の裏面側に張られた弦4が摺動可能に挿入する弦挿入溝22aを有し、弦4が張り渡された箇所におけるベース部材3の裏面側に対して平行に回転する構成であるから、回転体22が操作部23の操作によって回転すると、この回転体22の回転に応じて弦挿入溝22aを弦4が張り渡し方向と交差する方向に回転させることができ、この弦挿入溝22aの回転に応じて弦4を確実に屈曲させることができるので、弦4の張力を簡単に且つ良好に変化させることができる。
【0055】
さらに、この弦楽器では、弦4がベース部材3の表裏両面側に連続して張られていることにより、ベース部材3の表裏両面側に弦4を張り渡す際に、ベース部材3の表裏両面側において弦4の張力を均一にすることができる。このため、ベース部材3の表裏両面側にそれぞれ張られた弦4の張力によってベース部材3に生じる曲げモーメントを確実に相殺することができ、これにより弦4の張力によるベース部材3の曲がり変形を、より一層、軽減することができる。
【0056】
(実施形態2)
次に、図11および図12を参照して、この発明を適用した弦楽器の実施形態2について説明する。なお、図1〜図10に示された実施形態1と同一部分には同一符号を付して説明する。
この弦楽器は、図11および図12に示すように、弦モジュール2のベース部材3の表裏両面側にそれぞれ複数の弦30を独立させて張り渡すと共に、ベース部材3の表裏両面にそれぞれ設けられた指板部31、32のうち、一方の指板部31が実施形態1と異なる構成であり、これ以外は実施形態1とほぼ同じ構成になっている。
【0057】
この場合、ベース部材3の第1弦支持部6、7側に位置する一端部(図12では左端部)には、図12に示すように、一対の弦係止部33、34が複数の弦30にそれぞれ対応した状態で、上下に設けられている。また、複数の弦30のうち、ベース部材3の表面側(図12では上面側)に張り渡される各弦30の一端部(図12では左端部)には、係合部30aがそれぞれ設けられており、ベース部材3の裏面側(図12では下面側)に張り渡される各弦30の一端部(図12では左端部)には、係合部30bがそれぞれ設けられている。
【0058】
これにより、ベース部材3の表面側(図12では上面側)に張り渡される各弦30は、図12に示すように、その各一端部(図12では左端部)の各係合部30aがベース部材3の一端部(図12では左端部)における上側の各弦係止部33にそれぞれ係止され、この状態でベース部材3の表面側に位置する第1、第2の各弦支持部6、8上に配置された後、その各他端部(図12では右端部)が実施形態1と同様に各弦引張装置5の各弦取付駒14に弦固定ビス14bによってそれぞれ固定されることにより、ベース部材3の表面側(図12では上面側)にそれぞれ張り渡されるように構成されている。
【0059】
また、ベース部材3の裏面側(図12では下面側)に張り渡される各弦30は、図12に示すように、その各一端部(図12では左端部)の各係合部30aを各弦引張装置5の各弦取付駒14の弦係止孔14aにそれぞれ挿入させて、各他端部(図12では右端部)のボールエンドである各固定部4aが各弦取付駒14の各弦係止孔14aにそれぞれ係止され、この状態でベース部材3の裏面側に位置する第1、第2の各弦支持部7、9に配置された後、各一端部(図12では左端部)の各係合部30bがベース部材3の一端部(図12では左端部)における下側の各弦係止部34にそれぞれ係止されることにより、ベース部材3の裏面側(図12では下面側)にそれぞれ張り渡されるように構成されている。
【0060】
このように、ベース部材3の表裏両面側にそれぞれ独立して配置された複数の弦30は、実施形態1と同様、各弦引張装置5の各ナット15bを締め付けることにより、各弦取付駒14を第2弦支持部8、9から離れる方向にそれぞれ移動させて、ベース部材3の表裏両面側の各弦30を引っ張ることにより、図12に示すように、各弦30の張力が一定に保たれた状態で、ベース部材3の表裏両面側にそれぞれ張り渡されるように構成されている。
【0061】
このため、この実施形態2の弦モジュール2においても、ベース部材3の表裏両面側に張り渡された複数の弦30の張力が同じになり、この複数の弦30の張力によってベース部材3に加わる曲げモーメントが相殺され、複数の弦30の張力による圧縮力のみがベース部材3に加わるだけで、複数の弦30の張力によるベース部材3の曲がり変形が阻止されるように構成されている。
【0062】
一方、ベース部材3の表裏両面にそれぞれ設けられた指板部31、32は、実施形態1と同様、ベース部材3の長手方向における中間部から第1弦支持部6、7に亘って設けられている。この指板部31、32のうち、ベース部材3の裏面側(図12では下面側)に位置する指板部32には、実施形態1と同様、各弦30に対応する複数のフレット32aが、ベース部材3の長手方向に沿って所定間隔で設けられている。この複数のフレット32aは、その高さが第1、第2の各弦支持部6〜7の高さよりも低く形成されている。
【0063】
また、ベース部材3の表面側(図12では上面側)に位置する指板部31は、図12に示すように、その上方に張り渡された複数の弦30のうち、いずれかの弦30に対応する箇所のみに複数のフレット31aがベース部材3の長手方向に沿って所定間隔で設けられているが、これ以外の弦30に対応する箇所がフレット31aと同じ高さの平坦部31bに形成されている。すなわち、この指板部31は、複数のフレット31aが設けられている箇所と、フレット31aが設けられていない箇所とが、混在された構成になっている。
【0064】
次に、このような弦楽器で演奏する場合について説明する。
この場合にも、まず、複数の弦引張装置5によって各弦30の張力をそれぞれ調整する。すなわち、弦引張装置5の弦取付駒14側に位置する内側のナット15bを緩め、ベース部材3における調整装置取付部10の取付梁部10bの外側に位置するナット15bを締め付けるか、緩めるかして、弦30の張力を調整し、弦30のチューニングを行う。
【0065】
このときにも、ベース部材3の裏面(図12では下面)に取り付けられた弦張制御部材21は、その回転体22に設けられた複数の弦挿入溝22a内にそれぞれ各弦4が挿入されているので、実施形態1と同様、各弦30の張力によって各弦挿入溝22aが各弦30の張り渡し方向と平行になるように、回転体22がねじ軸24を中心に回転する。これにより、弦張制御部材21は、ニュートラル状態(中立状態)になる。
【0066】
この状態で、演奏者が楽器ケース1を抱えて演奏する際には、実施形態1と同様、一方の手(例えば左手)で指板部31、32に対応する楽器ケース1の箇所を持って、楽器ケース1から露出した指板部31に各弦30のいずれかを押えながら、他方の手(例えば右手)で楽器ケース1から露出した複数の弦30を爪弾く。
【0067】
この場合、楽器ケース1から露出した弦30に対応するベース部材3の指板部31は、複数のフレット31aが設けられている箇所と、フレット31aが設けられていない箇所とが、混在された構成であるから、演奏者がフレット31aのある箇所とフレット31aのない箇所とを使い分けて演奏する。このようにして、各弦30が振動し、その弦30の振動が弦振動検出ユニット18の各ピックアップ20によって検出され、この検出された信号に基づいてスピーカユニット(図示せず)で楽音が放音される。
【0068】
また、このときに、楽音の音高を変化させて楽音に効果を付加するベンディング演奏をする場合には、実施形態1と同様、楽器ケース1の外部に突出した弦張制御部材21の操作部23における二股に分かれた2つの押圧部23a、23bを演奏者の太腿や脇腹などの身体の一部に押し当て、この状態で身体を揺するなどして操作部23を操作し、弦張制御部材21の回転体22を回転させる。すると、回転体22の弦挿入溝22aによって複数の弦30が屈曲して、各弦30の張力が変化する。これにより、楽音の音高を変化させて楽音に効果を付加することができる。
【0069】
ところで、この弦楽器においても、実施形態1と同様、ベース部材3の表裏両面側に張り渡された複数の弦30を表裏反転させて使用することができる。このときにも、楽器ケース1から弦モジュール2を取り外し、この取り外した弦モジュール2のベース部材3の裏面(図12では下面)に取り付けられた弦張制御部材21を取り外し、この取り外した弦張制御部材21をベース部材3の表面(図12では上面)に取り付ける。
【0070】
このように弦張制御部材21が取り付けられた弦モジュール2を上下反転させて楽器ケース1に組み付けることにより、簡単にベース部材3の表裏両面側に張り渡された複数の弦30を表裏反転させることができる。このように弦モジュール2を表裏反転させた際には、ベース部材3の表裏面に設けられた指板部31、32が表裏反転し、各弦30にそれぞれ対応する複数のフレット32aがベース部材3の長手方向に沿って所定間隔で設けられた通常の指板部32が楽器ケース1の表面側に位置する。
【0071】
このため、この実施形態2の弦モジュール2を上下反転させて楽器ケース1に組み付けた場合には、通常の指板部32のいずれのフレット12aに各弦4のいずれかを押えながら、通常の演奏ができる。このように弦モジュール2を表裏反転させても、実施形態1と同様、良好に演奏することができると共に、演奏中に弦張制御部材21の操作部23を演奏者の太腿や脇腹などの身体の一部で操作して、楽音の音高を変化させて楽音に効果を付加することができる。
【0072】
このように、この弦楽器によれば、実施形態1と同様の作用効果があるほか、複数の弦30がベース部材3の表裏両面側にそれぞれ独立して張られていることにより、ベース部材3の表裏両面側にそれぞれ張られた各弦30の張力によってベース部材3に生じる曲げモーメントを確実に相殺することができる。このため、実施形態1と同様、弦30の張力によるベース部材3の曲がり変形を軽減することができると共に、ベース部材3の表裏両面側に張り渡された弦30の張力を均一にすることができる。
【0073】
また、この弦楽器によれば、ベース部材3の表裏面に設けられた指板部31、32が異なり、裏面側の指板部32が各弦30に対応する複数のフレット32aを有する通常の構成で、表面側の指板部31が特定の弦30に対応するフレット31aを有する箇所とフレットのない箇所とを、混在させた構成であるから、ベース部材3を表裏反転させることにより、演奏者の好みや演奏形態に応じて指板部31、32を選択することができ、これにより演奏の幅を広げることができる。
【0074】
なお、上述した実施形態1、2では、弦張制御部材21の回転体22がねじ軸24によってベース部材3に回転自在に取り付けられ、複数の弦4、30の張力によってニュートラル状態(中立状態)になるように構成されている場合について述べたが、これに限らず、例えば回転体22をばね部材などの付勢部材によって予め負荷を付与して所定角度だけ回転させた状態で設置し、ベンディング演奏をする際に、回転体22を回転させて複数の弦4、30の張力を下げることにより、音高を下げるように変化させて楽音に効果を付加するように構成しても良い。
【0075】
また、上述した実施形態1、2では、ベース部材3の表裏両面側にそれぞれ6本ずつ弦4、30を張り渡したギター形式の弦楽器に適用した場合について述べたが、これに限らず、弦4、30を1本張り渡しただけでも良く、また3本張り渡しただけでも良く、更に6本以上張り渡しても良い。このため、この発明の弦楽器は、ギターに限らず、ウクレレ、マンドリン、バイオリン、チェロなどの弦楽器に適用することができるほか、三味線や琵琶、琴などの弦楽器などにも広く適用することができる。
【0076】
以上、この発明のいくつかの実施形態について説明したが、この発明は、これらに限られるものではなく、特許請求の範囲に記載された発明とその均等の範囲を含むものである。
以下に、本願の特許請求の範囲に記載された発明を付記する。
【0077】
(付記)
請求項1に記載の発明は、表裏両面側に弦が張られたベース部材と、このベース部材に張られた前記弦のうち、演奏操作をする表面側の弦と反対側に位置する裏面側の弦の張力を変化させる弦張制御部材とを備えていることを特徴とする弦楽器である。
【0078】
請求項2に記載の発明は、請求項1に記載の弦楽器において、前記弦張制御部材は、前記ベース部材に回転可能に取り付けられて前記弦を保持する回転体と、この回転体を回転操作する操作部とを備えていることを特徴とする弦楽器である。
【0079】
請求項3に記載の発明は、請求項2に記載の弦楽器において、前記回転体は、前記ベース部材の前記裏面側に張られた前記弦が摺動可能に挿入する弦挿入溝を有し、前記弦が張り渡された箇所における前記ベース部材の前記裏面に対して平行に回転することを特徴とする弦楽器である。
【0080】
請求項4に記載の発明は、請求項1〜請求項3のいずれかに記載の弦楽器において、前記弦は、前記ベース部材の表裏両面側に連続して張られていることを特徴とする弦楽器である。
【0081】
請求項5に記載の発明は、請求項1〜請求項3のいずれかに記載の弦楽器において、前記弦は、前記ベース部材の表裏両面側にそれぞれ独立して張られていることを特徴とする弦楽器である。
【符号の説明】
【0082】
1 楽器ケース
2 弦モジュール
3 ベース部材
4、30 弦
5 弦引張装置
6、7 第1弦支持部
8、9 第2弦支持部
12、13、31、32 指板部
14 弦取付駒
15 調整部材
18 弦振動検出ユニット
21 弦張制御部材
22 回転体
22a 弦挿入溝
23 操作部
24 ねじ軸
【技術分野】
【0001】
この発明は、ギターやバイオリン、三味線などの弦楽器に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、ギターなどの弦楽器においては、特許文献1に記載されているように、楽器ケースに設けられたネックと称する棹状部材の表面側に弦を張り、この弦を爪弾いて振動させることにより、演奏するように構成されている。このような弦楽器では、演奏中に音高を高くしたり低くしたりして、楽音に効果を付加するベンディング演奏をするために、棹状部材に弦の張力を変化させるためのトレモロなどの弦張制御部材が設けられている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2004−361975号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、このような従来の弦楽器では、弦が棹状部材の表面側のみに張られているため、弦の張力による曲げモーメントによって棹状部材がその長手方向に曲がり変形する。このため、棹状部材の剛性を高くして、弦の張力による棹状部材の曲がり変形を防ぐ必要があり、棹状部材の構造が複雑になるばかり、剛性の高い材料を使用する必要があるため、製作コストが高くなるという問題がある。
【0005】
また、このような従来の弦楽器では、演奏中に音高を高くしたり低くしたりして、楽音に効果を付加するベンディング演奏をする際に、棹状部材に設けられたトレモロなどの弦張制御部材を操作することにより、棹状部材の表面側のみに張られた弦の張力を変化させているため、その弦の張力変化に伴う曲げモーメントによっても、棹状部材が曲がり変形しないように、棹状部材の剛性を更に高くする必要があり、このため、より一層、製作コストが高くなるという問題が生じる。
【0006】
この発明が解決しようとする課題は、弦の張力による棹状部材などのベース部材の曲がり変形を軽減することができると共に、演奏中に楽音に効果を良好に付加することができる弦楽器を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
この発明は、表裏両面側に弦が張られたベース部材と、このベース部材に張られた前記弦のうち、演奏操作をする表面側の弦と反対側に位置する裏面側の弦の張力を変化させる弦張制御部材とを備えていることを特徴とする弦楽器である。
【発明の効果】
【0008】
この発明によれば、ベース部材の表裏両面側に張られた弦によって、そのベース部材に対する弦の張力による曲げモーメントを相殺することができ、これにより弦の張力によるベース部材の曲がり変形を軽減することができる。このため、演奏中に弦張制御部材を操作することにより、弦の張力を変化させて楽音に効果を良好に付加することができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【図1】この発明を適用した弦楽器の実施形態1を示した正面図である。
【図2】図1に示された弦楽器のA−A矢視における断面図である。
【図3】図2に示された弦楽器の各断面を示し、(a)はそのB−B矢視における拡大断面図、(b)はそのC−C矢視における拡大断面図である。
【図4】図1に示された弦楽器の弦モジュールを示した正面図である。
【図5】図2に示された弦楽器の弦モジュールを示した断面図である。
【図6】図5に示された弦モジュールの弦引張装置を示した要部の拡大斜視図である。
【図7】図1に示された弦楽器において楽器ケースの一部を破断して弦張制御部材を下面側から見た状態を示した要部の拡大裏面図である。
【図8】図7に示された弦楽器の弦張制御部材のD−D矢視における拡大断面図である。
【図9】図7に示された弦張制御部材の操作部が操作されて回転体が反時計回りに回転した状態を示した拡大裏面図である。
【図10】図9に示された弦張制御部材の操作部が反対側に操作されて回転体が時計回りに回転した状態を示した拡大裏面図である。
【図11】この発明を適用した弦楽器の実施形態2における弦モジュールを示した正面図である。
【図12】図11に示された弦モジュールのE−E矢視における断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
(実施形態1)
以下、図1〜図10を参照して、この発明を適用した弦楽器の実施形態1について説明する。
この弦楽器は、図1〜図3に示すように、楽器ケース1と、この楽器ケース1に組み付けられる弦モジュール2とを備えている。楽器ケース1は、上面が開放されたほぼ半筒状で、一端部側(図1では左端部側)の幅(長手方向と直交する方向の長さ)が短く、他端部側(図1では右端部側)に向かうに従ってその幅が徐々に長くなるように形成されている。
【0011】
弦モジュール2は、図1および図2に示すように、ベース部材3と、このベース部材の表裏両面側(図2では上下両面側)に張り渡された複数の弦4と、この複数の弦4の引張力をそれぞれ調整する複数の弦引張調整装置5とを備えている。ベース部材3は、ステンレスなどの金属やセラミックなどの耐摩耗性および耐圧縮性に強い材料からなり、全体がほぼ帯板状に形成されている。
【0012】
すなわち、このベース部材3は、図1および図2に示すように、その一端部側(図2では左端部側)の幅(長手方向と直交する方向の長さ)が短く、他端部側(図2では右端部側)に向かうに従ってその幅が徐々に長くなるように形成され、楽器ケース1内の上部に配置されるように構成されている。
【0013】
また、このベース部材3は、図4および図5に示すように、その一端部(図4では左端部)に上下に突出して設けられた第1弦支持部6、7と、他端部側付近(図4では右端部側付近)に上下に突出して設けられた第2弦支持部8、9と、この第2弦支持部8、9の更に他端部側(図4では右端部側)に設けられた調整装置取付部10とを備え、第1、第2の各弦支持部6〜9によって複数の弦4がベース部材3の表裏両面側(図5では上下両面側)に張り渡されるように構成されている。
【0014】
すなわち、第1弦支持部6、7のうち、表面側の第1弦支持部6は、図5に示すように、ベース部材3の一端部から上方に向けて突出して形成されており、裏面側の第1弦支持部7は、ベース部材3の一端部から下方に向けて表面側の第1弦支持部6とほぼ同じ高さで突出して形成されている。また、第2弦支持部8、9のうち、表面側の第2弦支持部8は、ベース部材3の他端部側付近から上方に向けて突出して形成されており、裏面側の第2弦支持部9は、ベース部材3の他端部付近から下方に向けて表面側の第2弦支持部8とほぼ同じ高さで突出して形成されている。
【0015】
この場合、第1、第2の各弦支持部6〜9の各先端部(図5では各上下端部)は、それぞれ平坦に形成されていても良いが、図3(b)に示すように、弦4が張り渡される方向と直交する方向、つまり複数の弦4の配列方向における各弦4の位置をそれぞれ規制するための位置規制溝6a、7aが複数の弦4にそれぞれ対応して設けられていても良い。この位置規制溝6a、7aは、弦4の直径よりも浅く形成されていることが望ましい。
【0016】
また、第1弦支持部6、7が位置するベース部材3の一端部には、図4および図5に示すように、弦押え部材11が設けられている。この弦押え部材11は、押え板11aと、2本のビス11bとからなり、この2本のビス11bをベース部材3の一端部にねじ込んで押え板11aをベース部材3に向けて押え付けることにより、この押え板11aで複数の弦4を押え付けるように構成されている。
【0017】
また、ベース部材3の表裏両面(図5では上下両面)には、図4および図5に示すように、指板部12、13がそれぞれ設けられている。この指板部12、13は、ベース部材3の長手方向における中間部から第1弦支持部6、7に亘って設けられている。この指板部12、13には、それぞれ複数のフレット12a、13aがベース部材3の長手方向に沿って所定間隔で設けられている。この複数のフレット12a、13aは、その高さが第1、第2の各弦支持部6〜7の高さよりも低く形成されている。
【0018】
さらに、ベース部材3の調整装置取付部10は、図4および図5に示すように、ベース部材3の第2弦支持部8、9に隣接する他端部(図4では右端部)に設けられた枠状の部分であり、複数の弦引張調整装置5が複数の弦4の配列方向に沿って配置される開口部10aと、この開口部10aの他端部(図4では右端部)に位置して複数の弦引張調整装置5がベース部材3の長手方向に沿ってそれぞれ移動可能に取り付けられる取付梁部10bとを備えている。
【0019】
一方、複数の弦4は、図4および図5に示すように、第1弦支持部6、7でそれぞれ折り返されて第1、第2の各弦支持部6〜9にそれぞれ支持されることにより、ベース部材3の表裏両面側(図5では上下両面側)に連続して張り渡されるように構成されている。この場合、複数の弦4は、第1弦支持部6、7で折り返された部分が弦押え部材11の押え板11aによってベース部材3の一端部に押し付けられることにより、演奏時に弦4の折り返し部分がその張り渡し方向に位置ずれしないように構成されている。
【0020】
この複数の弦4は、図5に示すように、その各両端部がそれぞれ複数の弦引張装置5に取り付けられている。この弦引張装置5は、図4および図5に示すように、弦4の両端部が取り付けられる弦取付駒14と、この弦取付駒14をベース部材3の長手方向に沿って移動させるための弦調整部材15とを備えている。
【0021】
弦取付駒14は、図6に示すように、ほぼ長方形の角棒状に形成され、弦4の一端部に設けられたボールエンドである固定部4aを係止するための弦係止孔14aと、弦4の他端部を固定する弦固定ビス14bとを備えていている。この弦取付駒14は、図4〜図6に示すように、ベース部材3の調整装置取付部10の開口部10a内に配置された状態で、弦4を弦係止孔14aに挿入させて、弦4の一端部のボールエンドである固定部4aを弦係止孔14aに係止させるように構成されている。
【0022】
また、この弦取付駒14は、図4〜図6に示すように、弦4の一端部のボールエンドである固定部4aが弦係止孔14aに係止された状態で、弦4が第1、第2の各弦支持部6〜9上に張り渡され、この張り渡された弦4の他端部が弦固定ビス14bによって固定されることにより、弦4をベース部材3の表裏両面側に連続させた状態で張り渡すように構成されている。
【0023】
また、弦引張装置5の弦調整部材15は、図4〜図6に示すように、弦取付駒14の端部に一端部が取り付けられたねじ軸15aと、このねじ軸15aに螺合する2つのナット15bとを備えている。ねじ軸15aは、弦取付駒14を挟んで第2弦支持部8、9と反対側に位置する端部が、ベース部材3の他端部(図5では右端部)に設けられた張調整装置取付部10の取付梁部10bに設けられた貫通孔10c内に、ベース部材3の長手方向に沿って移動可能に挿入されるように構成されている。
【0024】
この場合、ねじ軸15aは、図4および図5に示すように、その軸中心が複数の弦4の各延長上で、且つ複数の弦4にそれぞれ対応する箇所のベース部材3における上下方向の厚みの中間点をベース部材3の長手方向に沿って通るベース部材3の各中心線Mの延長上に位置し、この中心線Mの延長線上に沿って移動するように構成されている。
【0025】
また、2つのナット15bは、図4〜図6に示すように、張調整装置取付部10の取付梁部10bにおける弦取付駒14側に位置する内側と弦取付駒14の反対側に位置する外側との両側にそれぞれ位置した状態で、ねじ軸15aに螺合して取付梁部10bを挟み付けることにより、弦取付駒14を張調整装置取付部10の開口部10a内に固定するように構成されている。
【0026】
すなわち、この弦調整部材15は、予め1つのナット15bをねじ軸15aに螺合させ、この状態でねじ軸15aを張調整装置取付部10の取付梁部10bの貫通孔10cに挿入させ、この挿入したねじ軸15aに取付梁部10bの外側から他のナット15bを螺合させて締め付けることにより、弦取付駒14を第2弦支持部8、9から離れる方向に移動させて弦4を引っ張るように構成されている。
【0027】
また、この弦調整部材15は、取付梁部10bの外側に位置するナット15bを締め付けて、弦4を所定の張力で第1、第2の各弦支持部6〜9上に張り渡した状態で、取付梁部10bの内側に位置するナット15bを締め付けて、2つのナット15bで取付梁部10bを挟み付けることにより、弦取付駒14を張調整装置取付部10の開口部10a内に固定し、弦4の張力を一定に保つように構成されている。
【0028】
これにより、弦引張装置5は、弦取付駒14が張調整装置取付部10の開口部10a内に固定され、弦4の張力が一定に保たれた状態で、張調整装置取付部10の取付梁部10bの外側に位置するナット15bを緩めると、ねじ軸15aおよび弦取付駒14が第2弦支持部8、9側に向けて移動し、弦4の張力が緩んで低下し、逆に外側に位置するナット15bを締め付けると、ねじ軸15aおよび弦取付駒14が第2弦支持部8、9から離れる方向に移動し、弦4の張力が高くなることにより、弦4の張力を調整する所謂チューニングを行うように構成されている。
【0029】
ここで、弦4の張力によりベース部材3に加わる曲げモーメントについて説明する。
このベース部材3は、その一端部に第1弦支持部6、7が表裏(図5では上下)にほぼ同じ高さで突出して設けられ、他端部側に第2弦支持部8、9が表裏にほぼ同じ高さで突出して設けられ、表面側(図5では上面側)の第1、第2の各弦支持部6、8の各先端間および裏面側(図5では下面側)の第1、第2の各弦支持部7、9の各先端間に弦4が張り渡されていることにより、弦4の張力によってベース部材3に加わる曲げモーメントが相殺され、弦4の張力による圧縮力のみがベース部材3に加わっている。
【0030】
この場合、弦4は、第1弦支持部6、7で折り返されて、その両端部が第2弦支持部8、9側に位置することにより、第1、第2の各弦支持部6〜9に連続して張り渡され、この状態で弦4の両端部が弦引張装置5によって引っ張られることにより、表面側の第1、第2の各弦支持部6、8の各先端間および裏面側の第1、第2の各弦支持部7、9の各先端間に張り渡されている弦4の張力が同じになり、これによっても弦4の張力によってベース部材3に加わる曲げモーメントが相殺されている。
【0031】
また、弦4の張力を調整する弦引張装置5は、弦4の両端部が取り付けられる弦取付駒14を弦4の張り渡し方向に沿って移動させるための弦調整部材15のねじ軸15aが、複数の弦4の各延長上で、且つ複数の弦4にそれぞれ対応する箇所のベース部材3における上下方向の厚みの中間点をベース部材3の長手方向に沿って通るベース部材3の各中心線Mの延長上に位置し、この中心線Mの延長線上に沿って移動することにより、ベース部材3に加わる曲げモーメントによるベース部材3の曲がり変形が阻止されている。
【0032】
そして、このような弦モジュール2は、図1および図2に示すように、そのベース部材3が楽器ケース1内にビス止めされている。すなわち、楽器ケース1の底部には、図2に示すように、複数の取付ボス16が楽器ケース1の下側に開放された状態で、楽器ケース1の長手方向に沿って設けられている。弦モジュール2は、複数の弦4がそれぞれ張り渡されたベース部材3が楽器ケース1の複数の取付ボス16上に配置され、この状態で楽器ケース1の下側から各取付ボス16に挿入されたビス17がベース部材3にねじ込まれることにより、楽器ケース1内に取り付けられている。
【0033】
これにより、この弦モジュール2は、図1および図2に示すように、ベース部材3の表面側に位置する弦4が楽器ケース1の上面側に突出して露出し、ベース部材3における第1弦支持部6、7が位置する一端部が楽器ケース1の先端面で覆われ、ベース部材3の他端部に位置する調整装置取付部10および弦引張調整装置5が楽器ケース1の上面側およびその他端部側に露出し、この状態で楽器ケース1に取り付けられている。このため、この弦楽器は、楽器ケース1に弦モジュール2が取り付けられた状態で、弦引張調整装置5によって弦4の張力が調整できるように構成されている。
【0034】
また、楽器ケース1には、図1および図2に示すように、弦モジュール2における複数の弦4の振動を検出するための弦振動検出ユニット18が、ベース部材3の第2弦支持部8、9に隣接する箇所に位置する複数の弦4の下側を横切った状態で、ビス18aによって取り付けられている。この弦振動検出ユニット18は、ベース部材3に張り渡された複数の弦4の振動をそれぞれ検出する複数のピックアップ20を備えている。
【0035】
この複数のピックアップ20は、弦4の振動を磁力によって検出する磁気センサーや、弦4の振動を光学的に検出する光センサーなどであり、複数の弦4にそれぞれ対応して配置されている。また、弦振動検出ユニット18は、外部接続端子19を備え、この外部接続端子19に接続ケーブル19aを介して外部スピーカユニット(図示せず)と電気的に接続され、各ピックアップ20で検出された電気信号に基づいて外部スピーカユニットで各弦4の振動に応じた楽音を放音させるように構成されている。
【0036】
ところで、この楽器ケース1に組み込まれた弦モジュール2には、図2に示すように、ベース部材3の裏面側(図2では下面側)に位置する複数の弦4の各張力を変化させるための弦張制御部材21が設けられている。この弦張制御部材21は、図7および図8に示すように、ベース部材3の裏面に回転可能に取り付けられて複数の弦4をそれぞれ摺動可能に保持する回転体22と、この回転体22を回転操作するための操作部23とを備えている。
【0037】
回転体22は、図2に示すように、ベース部材3の裏面側(図2では下面側)における弦振動検出ユニット18と指板部13との間に位置する箇所にねじ軸24によって回転可能に取り付けられ、ベース部材3の裏面と平行に回転するように構成されている。この場合、ベース部材3には、図8に示すように、ねじ軸24が螺着するねじ孔3aがベース部材3の表裏面(図8では上下面)に貫通して形成されている。また、この回転体22の下面には、図7および図8に示すように、ベース部材3の裏面側に張られた複数の弦4がそれぞれ摺動可能に挿入する弦挿入溝22aが、各弦4と平行な状態でそれぞれ設けられている。
【0038】
操作部23は、図7および図8に示すように、その一端部が回転体22の側面に設けられ、他端部が楽器ケース1の側面部に設けられた切欠き部1bを通して楽器ケース1の外部に突出し、この突出した部分を操作することにより、回転体22を回転させるように構成されている。この場合、楽器ケース1から外部に突出した操作部23の先端は、図7に示すように、2つの押圧部23a、23bが二股に分かれて設けられ、これにより全体がほぼY字形状に形成されている。
【0039】
これにより、弦張制御部材21は、図7および図8に示すように、回転体22の複数の弦挿入溝22a内にそれぞれ各弦4が挿入した状態で、楽器ケース1から外部に突出した操作部23における2つの押圧部23a、23bのうち、一方の押圧部23aが楽器ケース1の側面に向けて押圧されると、図9に示すように、回転体22が反時計回りに回転して、複数の弦4をそれぞれ屈曲させ、各弦4の張力をそれぞれ変化させるように構成されている。
【0040】
また、この弦張制御部材21は、図7および図8に示すように、楽器ケース1から外部に突出した操作部23における2つの押圧部23a、23bのうち、他方の押圧部23bが楽器ケース1の側面に向けて押圧されると、図10に示すように、回転体22が時計回りに回転して、複数の弦4をそれぞれ屈曲させ、各弦4の張力をそれぞれ変化させるように構成されている。
【0041】
次に、このような弦楽器で演奏する場合について説明する。
このときには、まず、複数の弦引張装置5によって各弦4の張力をそれぞれ調整する。すなわち、弦引張装置5の弦取付駒14側に位置する内側のナット15bを緩め、ベース部材3における調整装置取付部10の取付梁部10bの外側に位置するナット15bを締め付けるか、緩めるかして、弦4の張力を調整し、弦4のチューニングを行う。
【0042】
このとき、ベース部材3の裏面(図2では下面)に取り付けられた弦張制御部材21は、ニュートラル状態(中立状態)になる。すなわち、弦張制御部材21は、その回転体22に設けられた複数の弦挿入溝22a内にそれぞれ各弦4が挿入されているので、各弦4の張力によって各弦挿入溝22aが各弦4の張り渡し方向と平行になるように、回転体22がねじ軸24を中心に回転する。これにより、弦張制御部材21は、ニュートラル状態(中立状態)になる。
【0043】
この状態で、演奏者が楽器ケース1を抱えて演奏する際には、一方の手(例えば左手)で指板部12、13に対応する楽器ケース1の箇所を持って、楽器ケース1から露出した指板部12のいずれのフレット12aに各弦4のいずれかを押えながら、他方の手(例えば右手)で楽器ケース1から露出した複数の弦4を爪弾く。これにより、各弦4が振動し、その弦4の振動が弦振動検出ユニット18の各ピックアップ20によって検出され、この検出された信号に基づいてスピーカユニット(図示せず)で楽音が放音される。
【0044】
このとき、楽音の音高を変化させて楽音に効果を付加するベンディング演奏をする場合には、楽器ケース1の外部に突出した弦張制御部材21の操作部23における二股に分かれた2つの押圧部23a、23bを演奏者の太腿や脇腹などの身体の一部に押し当て、この状態で身体を揺するなどして操作部23を操作し、弦張制御部材21の回転体22を回転させる。すると、回転体22の弦挿入溝22aによって複数の弦4が屈曲して、各弦4の張力が変化する。これにより、楽音の音高を変化させて楽音に効果を付加することができる。
【0045】
例えば、楽器ケース1から外部に突出した操作部23における2つの押圧部23a、23bのうち、一方の押圧部23aが楽器ケース1の側面に向けて押圧されると、図9に示すように、回転体22が反時計回りに回転して、複数の弦4をそれぞれ屈曲させ、各弦4の張力をそれぞれ変化させる。これにより、楽音の音高を変化させて楽音に効果を付加することができる。
【0046】
また、楽器ケース1から外部に突出した操作部23における2つの押圧部23a、23bのうち、他方の押圧部23bが楽器ケース1の側面に向けて押圧されると、図10に示すように、回転体22が時計回りに回転して、複数の弦4をそれぞれ屈曲させ、各弦4の張力をそれぞれ変化させる。これにより、楽音の音高を変化させて楽音に効果を付加することができる。
【0047】
これにより、この弦楽器では、一方の手(例えば左手)で指板部12、13に対応する楽器ケース1の箇所を持って、楽器ケース1から露出した指板部12のいずれのフレット12aに各弦4のいずれかを押えながら、他方の手(例えば右手)で楽器ケース1から露出した複数の弦4を爪弾いて演奏をしている状態で、いずれの手も使わずに、弦張制御部材21の操作部23を演奏者の太腿や脇腹などの身体の一部で操作して、楽音の音高を変化させて楽音に効果を付加することができる。
【0048】
ところで、この弦楽器においては、ベース部材3の表裏両面側に張り渡された複数の弦4を表裏反転させて使用することができる。このときには、楽器ケース1から弦モジュール2を取り外し、この取り外した弦モジュール2のベース部材3の裏面(図5では下面)に取り付けられた弦張制御部材21を取り外し、この取り外した弦張制御部材21をベース部材3の表面(図5では上面)に取り付ける。
【0049】
すなわち、弦張制御部材21のねじ軸24を緩めて回転体22をねじ軸24と共にベース部材3の下面から取り外し、この取り外した回転体22をベース部材3の上面とこの上面に対面する複数の弦4との間に挿入させて、回転体22に設けられた複数の弦挿入溝22aにベース部材3の表面側の各弦4を挿入させ、この状態でねじ軸24をベース部材3のねじ孔3a(図8参照)に上方から螺入させて、回転体22をねじ軸24によってベース部材3の上面に回転可能に取り付ける。
【0050】
このように弦張制御部材21が取り付けられた弦モジュール2を上下反転させて楽器ケース1に組み付けることにより、簡単にベース部材3の表裏両面側に張り渡された複数の弦4を表裏反転させることができる。このように弦モジュール2を表裏反転させても、良好に演奏することができると共に、演奏中に弦張制御部材21の操作部23を演奏者の太腿や脇腹などの身体の一部で操作して、楽音の音高を変化させて楽音に効果を付加することができる。
【0051】
このように、この弦楽器によれば、表裏両面側に弦4が張られたベース部材3と、このベース部材3に張られた弦4のうち、演奏操作をする表面側の弦4と反対側に位置する裏面側の弦4の張力を変化させる弦張制御部材21とを備えているので、弦4の張力によるベース部材3の曲がり変形を軽減することができると共に、演奏中に弦張制御部材21を操作することにより、楽音の音高を変化させて楽音に効果を良好に付加することができ、これにより良好にベンディング演奏をすることができる。
【0052】
すなわち、この弦楽器では、ベース部材3の表裏両面側に張られた弦4によって、ベース部材3に対する弦4の張力による曲げモーメントを相殺することができ、これにより弦4の張力によるベース部材3の曲がり変形を軽減することができるので、良好に演奏することができると共に、演奏中に弦張制御部材21を操作することにより、弦4の張力を変化させて楽音に効果を良好に付加することができ、これにより良好にベンディング演奏をすることができる。
【0053】
この場合、弦張制御部材21は、ベース部材3に回転可能に取り付けられて弦4を保持する回転体22と、この回転体22を回転操作するための操作部23とを備えていることにより、操作部23を操作するだけで、回転体22を回転させることができ、この回転体22の回転に応じて弦4を屈曲させることができるので、弦4の張力を簡単に変化させて、音高を良好に変化させることができ、これにより楽音に効果を付加することができる。
【0054】
また、回転体22は、ベース部材3の裏面側に張られた弦4が摺動可能に挿入する弦挿入溝22aを有し、弦4が張り渡された箇所におけるベース部材3の裏面側に対して平行に回転する構成であるから、回転体22が操作部23の操作によって回転すると、この回転体22の回転に応じて弦挿入溝22aを弦4が張り渡し方向と交差する方向に回転させることができ、この弦挿入溝22aの回転に応じて弦4を確実に屈曲させることができるので、弦4の張力を簡単に且つ良好に変化させることができる。
【0055】
さらに、この弦楽器では、弦4がベース部材3の表裏両面側に連続して張られていることにより、ベース部材3の表裏両面側に弦4を張り渡す際に、ベース部材3の表裏両面側において弦4の張力を均一にすることができる。このため、ベース部材3の表裏両面側にそれぞれ張られた弦4の張力によってベース部材3に生じる曲げモーメントを確実に相殺することができ、これにより弦4の張力によるベース部材3の曲がり変形を、より一層、軽減することができる。
【0056】
(実施形態2)
次に、図11および図12を参照して、この発明を適用した弦楽器の実施形態2について説明する。なお、図1〜図10に示された実施形態1と同一部分には同一符号を付して説明する。
この弦楽器は、図11および図12に示すように、弦モジュール2のベース部材3の表裏両面側にそれぞれ複数の弦30を独立させて張り渡すと共に、ベース部材3の表裏両面にそれぞれ設けられた指板部31、32のうち、一方の指板部31が実施形態1と異なる構成であり、これ以外は実施形態1とほぼ同じ構成になっている。
【0057】
この場合、ベース部材3の第1弦支持部6、7側に位置する一端部(図12では左端部)には、図12に示すように、一対の弦係止部33、34が複数の弦30にそれぞれ対応した状態で、上下に設けられている。また、複数の弦30のうち、ベース部材3の表面側(図12では上面側)に張り渡される各弦30の一端部(図12では左端部)には、係合部30aがそれぞれ設けられており、ベース部材3の裏面側(図12では下面側)に張り渡される各弦30の一端部(図12では左端部)には、係合部30bがそれぞれ設けられている。
【0058】
これにより、ベース部材3の表面側(図12では上面側)に張り渡される各弦30は、図12に示すように、その各一端部(図12では左端部)の各係合部30aがベース部材3の一端部(図12では左端部)における上側の各弦係止部33にそれぞれ係止され、この状態でベース部材3の表面側に位置する第1、第2の各弦支持部6、8上に配置された後、その各他端部(図12では右端部)が実施形態1と同様に各弦引張装置5の各弦取付駒14に弦固定ビス14bによってそれぞれ固定されることにより、ベース部材3の表面側(図12では上面側)にそれぞれ張り渡されるように構成されている。
【0059】
また、ベース部材3の裏面側(図12では下面側)に張り渡される各弦30は、図12に示すように、その各一端部(図12では左端部)の各係合部30aを各弦引張装置5の各弦取付駒14の弦係止孔14aにそれぞれ挿入させて、各他端部(図12では右端部)のボールエンドである各固定部4aが各弦取付駒14の各弦係止孔14aにそれぞれ係止され、この状態でベース部材3の裏面側に位置する第1、第2の各弦支持部7、9に配置された後、各一端部(図12では左端部)の各係合部30bがベース部材3の一端部(図12では左端部)における下側の各弦係止部34にそれぞれ係止されることにより、ベース部材3の裏面側(図12では下面側)にそれぞれ張り渡されるように構成されている。
【0060】
このように、ベース部材3の表裏両面側にそれぞれ独立して配置された複数の弦30は、実施形態1と同様、各弦引張装置5の各ナット15bを締め付けることにより、各弦取付駒14を第2弦支持部8、9から離れる方向にそれぞれ移動させて、ベース部材3の表裏両面側の各弦30を引っ張ることにより、図12に示すように、各弦30の張力が一定に保たれた状態で、ベース部材3の表裏両面側にそれぞれ張り渡されるように構成されている。
【0061】
このため、この実施形態2の弦モジュール2においても、ベース部材3の表裏両面側に張り渡された複数の弦30の張力が同じになり、この複数の弦30の張力によってベース部材3に加わる曲げモーメントが相殺され、複数の弦30の張力による圧縮力のみがベース部材3に加わるだけで、複数の弦30の張力によるベース部材3の曲がり変形が阻止されるように構成されている。
【0062】
一方、ベース部材3の表裏両面にそれぞれ設けられた指板部31、32は、実施形態1と同様、ベース部材3の長手方向における中間部から第1弦支持部6、7に亘って設けられている。この指板部31、32のうち、ベース部材3の裏面側(図12では下面側)に位置する指板部32には、実施形態1と同様、各弦30に対応する複数のフレット32aが、ベース部材3の長手方向に沿って所定間隔で設けられている。この複数のフレット32aは、その高さが第1、第2の各弦支持部6〜7の高さよりも低く形成されている。
【0063】
また、ベース部材3の表面側(図12では上面側)に位置する指板部31は、図12に示すように、その上方に張り渡された複数の弦30のうち、いずれかの弦30に対応する箇所のみに複数のフレット31aがベース部材3の長手方向に沿って所定間隔で設けられているが、これ以外の弦30に対応する箇所がフレット31aと同じ高さの平坦部31bに形成されている。すなわち、この指板部31は、複数のフレット31aが設けられている箇所と、フレット31aが設けられていない箇所とが、混在された構成になっている。
【0064】
次に、このような弦楽器で演奏する場合について説明する。
この場合にも、まず、複数の弦引張装置5によって各弦30の張力をそれぞれ調整する。すなわち、弦引張装置5の弦取付駒14側に位置する内側のナット15bを緩め、ベース部材3における調整装置取付部10の取付梁部10bの外側に位置するナット15bを締め付けるか、緩めるかして、弦30の張力を調整し、弦30のチューニングを行う。
【0065】
このときにも、ベース部材3の裏面(図12では下面)に取り付けられた弦張制御部材21は、その回転体22に設けられた複数の弦挿入溝22a内にそれぞれ各弦4が挿入されているので、実施形態1と同様、各弦30の張力によって各弦挿入溝22aが各弦30の張り渡し方向と平行になるように、回転体22がねじ軸24を中心に回転する。これにより、弦張制御部材21は、ニュートラル状態(中立状態)になる。
【0066】
この状態で、演奏者が楽器ケース1を抱えて演奏する際には、実施形態1と同様、一方の手(例えば左手)で指板部31、32に対応する楽器ケース1の箇所を持って、楽器ケース1から露出した指板部31に各弦30のいずれかを押えながら、他方の手(例えば右手)で楽器ケース1から露出した複数の弦30を爪弾く。
【0067】
この場合、楽器ケース1から露出した弦30に対応するベース部材3の指板部31は、複数のフレット31aが設けられている箇所と、フレット31aが設けられていない箇所とが、混在された構成であるから、演奏者がフレット31aのある箇所とフレット31aのない箇所とを使い分けて演奏する。このようにして、各弦30が振動し、その弦30の振動が弦振動検出ユニット18の各ピックアップ20によって検出され、この検出された信号に基づいてスピーカユニット(図示せず)で楽音が放音される。
【0068】
また、このときに、楽音の音高を変化させて楽音に効果を付加するベンディング演奏をする場合には、実施形態1と同様、楽器ケース1の外部に突出した弦張制御部材21の操作部23における二股に分かれた2つの押圧部23a、23bを演奏者の太腿や脇腹などの身体の一部に押し当て、この状態で身体を揺するなどして操作部23を操作し、弦張制御部材21の回転体22を回転させる。すると、回転体22の弦挿入溝22aによって複数の弦30が屈曲して、各弦30の張力が変化する。これにより、楽音の音高を変化させて楽音に効果を付加することができる。
【0069】
ところで、この弦楽器においても、実施形態1と同様、ベース部材3の表裏両面側に張り渡された複数の弦30を表裏反転させて使用することができる。このときにも、楽器ケース1から弦モジュール2を取り外し、この取り外した弦モジュール2のベース部材3の裏面(図12では下面)に取り付けられた弦張制御部材21を取り外し、この取り外した弦張制御部材21をベース部材3の表面(図12では上面)に取り付ける。
【0070】
このように弦張制御部材21が取り付けられた弦モジュール2を上下反転させて楽器ケース1に組み付けることにより、簡単にベース部材3の表裏両面側に張り渡された複数の弦30を表裏反転させることができる。このように弦モジュール2を表裏反転させた際には、ベース部材3の表裏面に設けられた指板部31、32が表裏反転し、各弦30にそれぞれ対応する複数のフレット32aがベース部材3の長手方向に沿って所定間隔で設けられた通常の指板部32が楽器ケース1の表面側に位置する。
【0071】
このため、この実施形態2の弦モジュール2を上下反転させて楽器ケース1に組み付けた場合には、通常の指板部32のいずれのフレット12aに各弦4のいずれかを押えながら、通常の演奏ができる。このように弦モジュール2を表裏反転させても、実施形態1と同様、良好に演奏することができると共に、演奏中に弦張制御部材21の操作部23を演奏者の太腿や脇腹などの身体の一部で操作して、楽音の音高を変化させて楽音に効果を付加することができる。
【0072】
このように、この弦楽器によれば、実施形態1と同様の作用効果があるほか、複数の弦30がベース部材3の表裏両面側にそれぞれ独立して張られていることにより、ベース部材3の表裏両面側にそれぞれ張られた各弦30の張力によってベース部材3に生じる曲げモーメントを確実に相殺することができる。このため、実施形態1と同様、弦30の張力によるベース部材3の曲がり変形を軽減することができると共に、ベース部材3の表裏両面側に張り渡された弦30の張力を均一にすることができる。
【0073】
また、この弦楽器によれば、ベース部材3の表裏面に設けられた指板部31、32が異なり、裏面側の指板部32が各弦30に対応する複数のフレット32aを有する通常の構成で、表面側の指板部31が特定の弦30に対応するフレット31aを有する箇所とフレットのない箇所とを、混在させた構成であるから、ベース部材3を表裏反転させることにより、演奏者の好みや演奏形態に応じて指板部31、32を選択することができ、これにより演奏の幅を広げることができる。
【0074】
なお、上述した実施形態1、2では、弦張制御部材21の回転体22がねじ軸24によってベース部材3に回転自在に取り付けられ、複数の弦4、30の張力によってニュートラル状態(中立状態)になるように構成されている場合について述べたが、これに限らず、例えば回転体22をばね部材などの付勢部材によって予め負荷を付与して所定角度だけ回転させた状態で設置し、ベンディング演奏をする際に、回転体22を回転させて複数の弦4、30の張力を下げることにより、音高を下げるように変化させて楽音に効果を付加するように構成しても良い。
【0075】
また、上述した実施形態1、2では、ベース部材3の表裏両面側にそれぞれ6本ずつ弦4、30を張り渡したギター形式の弦楽器に適用した場合について述べたが、これに限らず、弦4、30を1本張り渡しただけでも良く、また3本張り渡しただけでも良く、更に6本以上張り渡しても良い。このため、この発明の弦楽器は、ギターに限らず、ウクレレ、マンドリン、バイオリン、チェロなどの弦楽器に適用することができるほか、三味線や琵琶、琴などの弦楽器などにも広く適用することができる。
【0076】
以上、この発明のいくつかの実施形態について説明したが、この発明は、これらに限られるものではなく、特許請求の範囲に記載された発明とその均等の範囲を含むものである。
以下に、本願の特許請求の範囲に記載された発明を付記する。
【0077】
(付記)
請求項1に記載の発明は、表裏両面側に弦が張られたベース部材と、このベース部材に張られた前記弦のうち、演奏操作をする表面側の弦と反対側に位置する裏面側の弦の張力を変化させる弦張制御部材とを備えていることを特徴とする弦楽器である。
【0078】
請求項2に記載の発明は、請求項1に記載の弦楽器において、前記弦張制御部材は、前記ベース部材に回転可能に取り付けられて前記弦を保持する回転体と、この回転体を回転操作する操作部とを備えていることを特徴とする弦楽器である。
【0079】
請求項3に記載の発明は、請求項2に記載の弦楽器において、前記回転体は、前記ベース部材の前記裏面側に張られた前記弦が摺動可能に挿入する弦挿入溝を有し、前記弦が張り渡された箇所における前記ベース部材の前記裏面に対して平行に回転することを特徴とする弦楽器である。
【0080】
請求項4に記載の発明は、請求項1〜請求項3のいずれかに記載の弦楽器において、前記弦は、前記ベース部材の表裏両面側に連続して張られていることを特徴とする弦楽器である。
【0081】
請求項5に記載の発明は、請求項1〜請求項3のいずれかに記載の弦楽器において、前記弦は、前記ベース部材の表裏両面側にそれぞれ独立して張られていることを特徴とする弦楽器である。
【符号の説明】
【0082】
1 楽器ケース
2 弦モジュール
3 ベース部材
4、30 弦
5 弦引張装置
6、7 第1弦支持部
8、9 第2弦支持部
12、13、31、32 指板部
14 弦取付駒
15 調整部材
18 弦振動検出ユニット
21 弦張制御部材
22 回転体
22a 弦挿入溝
23 操作部
24 ねじ軸
【特許請求の範囲】
【請求項1】
表裏両面側に弦が張られたベース部材と、
このベース部材に張られた前記弦のうち、演奏操作をする表面側の弦と反対側に位置する裏面側の弦の張力を変化させる弦張制御部材と
を備えていることを特徴とする弦楽器。
【請求項2】
請求項1に記載の弦楽器において、前記弦張制御部材は、前記ベース部材に回転可能に取り付けられて前記弦を保持する回転体と、この回転体を回転操作する操作部とを備えていることを特徴とする弦楽器。
【請求項3】
請求項2に記載の弦楽器において、前記回転体は、前記ベース部材の前記裏面側に張られた前記弦が摺動可能に挿入する弦挿入溝を有し、前記弦が張り渡された箇所における前記ベース部材の前記裏面に対して平行に回転することを特徴とする弦楽器。
【請求項4】
請求項1〜請求項3のいずれかに記載の弦楽器において、前記弦は、前記ベース部材の表裏両面側に連続して張られていることを特徴とする弦楽器。
【請求項5】
請求項1〜請求項3のいずれかに記載の弦楽器において、前記弦は、前記ベース部材の表裏両面側にそれぞれ独立して張られていることを特徴とする弦楽器。
【請求項1】
表裏両面側に弦が張られたベース部材と、
このベース部材に張られた前記弦のうち、演奏操作をする表面側の弦と反対側に位置する裏面側の弦の張力を変化させる弦張制御部材と
を備えていることを特徴とする弦楽器。
【請求項2】
請求項1に記載の弦楽器において、前記弦張制御部材は、前記ベース部材に回転可能に取り付けられて前記弦を保持する回転体と、この回転体を回転操作する操作部とを備えていることを特徴とする弦楽器。
【請求項3】
請求項2に記載の弦楽器において、前記回転体は、前記ベース部材の前記裏面側に張られた前記弦が摺動可能に挿入する弦挿入溝を有し、前記弦が張り渡された箇所における前記ベース部材の前記裏面に対して平行に回転することを特徴とする弦楽器。
【請求項4】
請求項1〜請求項3のいずれかに記載の弦楽器において、前記弦は、前記ベース部材の表裏両面側に連続して張られていることを特徴とする弦楽器。
【請求項5】
請求項1〜請求項3のいずれかに記載の弦楽器において、前記弦は、前記ベース部材の表裏両面側にそれぞれ独立して張られていることを特徴とする弦楽器。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【公開番号】特開2012−168236(P2012−168236A)
【公開日】平成24年9月6日(2012.9.6)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−26953(P2011−26953)
【出願日】平成23年2月10日(2011.2.10)
【出願人】(000001443)カシオ計算機株式会社 (8,748)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成24年9月6日(2012.9.6)
【国際特許分類】
【出願日】平成23年2月10日(2011.2.10)
【出願人】(000001443)カシオ計算機株式会社 (8,748)
【Fターム(参考)】
[ Back to top ]