説明

強い金属相互作用を有する多金属触媒

本発明は、少なくとも1種の第VIII族金属Mと、スズと、リンプロモータと、ハロゲン化合物と、多孔質担体と、ガリウム、インジウム、タリウム、ヒ素、アンチモンおよびビスマスを含む群から選択される少なくとも1種のプロモータX1とを含む触媒に関する。119Snメスバウアー分光法を用いて、触媒の還元型は、0〜0.45mm/秒の四重極分裂値およびCaSnOに対して1.5〜2.4mm/秒のアイソマーシフトISを有するシグナルを示し、前記シグナルは、シグナルの全面積の1〜30%を表す。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、炭化水素の転化の分野に関し、より具体的には、ガソリン留分の製造のための、触媒の存在下での炭化水素供給原料の改質に関する。本発明はまた、前記転化に使用される白金族からの少なくとも1種の金属をベースとする、向上した触媒の配合、並びに、それらの調製様式に関する。
【背景技術】
【0002】
プロモータを、白金ベースの触媒に添加して、炭化水素供給原料の改質に関し触媒性能を向上させることが数多くの特許に記載されている。それ故に、特許文献1には、プロモータ、例えば、ガリウム、インジウム、スカンジウム、イットリウム、ランタン、タリウム、またはアクチニウムを、白金またはパラジウムをベースとする触媒に添加することが記載されている。
【0003】
特許文献2には、白金と、スズと、インジウムと、ハロゲン化化合物とを担体上に担持して含み、インジウム/白金の原子比は、1.14超である、改質触媒が記載されている。
【0004】
特許文献3には、粒子の均質な床の形態の触媒であって、無定形マトリクスと、少なくとも1種の貴金属と、少なくとも1種のハロゲンと、少なくとも1種の追加金属とを含む触媒が記載されている。前記追加金属は、好ましくは、スズ、ゲルマニウム、鉛、ガリウム、インジウム、タリウム、レニウム、マンガン、クロム、モリブデン、およびタングステンによって構成される群より選択される。
【0005】
リンも、厳密に4個超の炭素原子を含有する炭化水素化合物(C5+)、特に芳香族生成物の収率を向上させることが知られている。この特性は、特許文献4〜9において特許請求されている。近年、特許文献10には、希釈された量(1重量%未満)のリンを添加することで、触媒改質方法において触媒を使用する間、比表面積および塩素がより良好に保持されることにより、担体を安定化させることが記載されている。
【0006】
特許文献11〜12には、均質に分布したビスマスおよびリンを含有し、水素化処理されたナフサの接触改質用の触媒の調製のために用いられる担体が記載されている。これらの特許によると、ビスマスのみを担体に添加することにより、コークスの形成および活性の低下を減速させることが可能であるが、同時にC5+収率が低減してしまう一方で、リンのみを添加することにより、触媒の安定性を向上させることなしに、この収率が増加する。これら2つの元素を組み合わせることにより、コークスの形成をさらに減速させることが可能であると同時に、0.10〜0.06重量%の範囲のBi含有量および0.3重量%のP含有量であれば、より良好な選択性を有する。これら2つの特許は、他の元素について特許請求していない。
【0007】
さらに、特許文献13では、白金と、スズと、アルミナおよびリン酸塩を含む少なくとも1種の無機酸化物からなる高密度の担体と、場合による、ゲルマニウム、ガリウム、レニウム、リン、インジウムから選択される他の元素またはこれらの元素の混合物とを含む触媒が、少なくとも33重量%のスズの白金との結合がメスバウアー(Moessbauer)分光法を用いて観察される特定のPt−Snクラスターの形態でなされている点で特徴付けられている。このような触媒の重要性は、当該技術分野における公知の触媒に対して、安定性が増加しかつコークスの生成が最小限になる点にある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】米国特許第2814599号明細書
【特許文献2】米国特許第4522935号明細書
【特許文献3】仏国特許発明第2840548号明細書
【特許文献4】米国特許第2890167号明細書
【特許文献5】米国特許第3706815号明細書
【特許文献6】米国特許第4367137号明細書
【特許文献7】米国特許第4416804号明細書
【特許文献8】米国特許第4426279号明細書
【特許文献9】米国特許第4463104号明細書
【特許文献10】米国特許出願公開第2007/0215523号明細書
【特許文献11】米国特許第6864212号明細書
【特許文献12】米国特許第6667270号明細書
【特許文献13】欧州特許第1656991号明細書
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0009】
(発明の要約)
本発明は、第VIII族からの少なくとも1種の金属Mと、スズと、リンプロモータと、ハロゲン化化合物と、多孔質担体と、ガリウム、インジウム、タリウム、ヒ素、アンチモン、およびビスマスによって構成される群より選択される少なくとも1種のプロモータX1とを含む触媒に関する。119Snメスバウアー分光法において、還元された形態の触媒は、0〜0.45mm/秒の範囲の四重極分裂値およびCaSnOに対して1.5〜2.4mm/秒の範囲のアイソマーシフト(isomer shift:IS)を有するシグナルを有し、前記シグナルはシグナルの全面積の1〜30%の範囲を表す。
【発明を実施するための形態】
【0010】
(発明の詳細な説明)
本発明は、白金族からの少なくとも1種の金属Mと、スズと、リンプロモータと、ハロゲン化化合物と、多孔質担体と、ガリウム、インジウム、タリウム、ヒ素、アンチモン、およびビスマスによって構成される群より選択される、好ましくはガリウム、タリウム、インジウム、およびビスマスによって構成される群より選択される、一層好ましくはガリウムおよびインジウムによって構成される群より選択される、より一層好ましくはインジウムである、少なくとも1種のプロモータX1とを含む触媒であって、還元された形態の前記触媒は、119Snメスバウアー分光法において、0〜0.45mm/秒の範囲の四重極分裂値およびCaSnOに対して1.5〜2.4mm/秒の範囲のアイソマーシフト(IS)を有するシグナルを有し、前記シグナルがシグナルの全面積の1〜30%の範囲、好ましくは4〜20%の範囲を表す、触媒に関する。
【0011】
本発明の触媒により、向上した触媒性能が得られる。特に、前記触媒の選択性がC5+化合物(すなわち、少なくとも5個の炭素原子を含む化合物)の形成に向けて増加し、同時にコークスの形成が相当低減する。
【0012】
触媒調製方法は、担体調製工程の間に、リンおよび単数または複数のプロモータX1を導入する工程を含む。
【0013】
原子比Sn/Mは、一般的に0.5〜4.0の範囲、より好ましくは1.0〜3.5の範囲、一層好ましくは1.3〜3.2の範囲である。比X1/Mは、一般的に0.1〜5.0の範囲、より好ましくは0.2〜3.0の範囲、一層好ましくは0.4〜2.2の範囲である。比P/Mは、一般的に0.2〜30.0の範囲、より好ましくは0.5〜20.0の範囲、一層好ましくは1.0〜15.0の範囲である。金属Mの量は、一般的に0.01〜5重量%の範囲、より好ましくは0.01〜2重量%の範囲、より一層好ましくは0.1〜1重量%の範囲である。
【0014】
金属Mは、一般的に白金またはパラジウム、一層好ましくは白金である。ハロゲン化化合物は、一般的にフッ素、塩素、臭素、およびヨウ素によって構成される群より選択される。ハロゲン化化合物の量は、一般的に0.1〜15.0重量%の範囲、より好ましくは0.1〜8.0重量%の範囲、より一層好ましくは0.2〜5重量%の範囲である。ハロゲン化化合物が塩素である場合、塩素の量は、一般的に0.0〜5.0重量%の範囲、好ましくは0.5〜2.0重量%の範囲である。
【0015】
スズの局所電子構造を決定するために用いられ得る分析は、10mCiの名目上の活性を有するγ放射線のBa119mSnO源を活用する従来のメスバウアー分光法を用いて行われた。分光計は、マイクロプロセッサによって制御された512チャンネルアナライザによる三角形モード(triangular mode)で機能する定常加速運動生成器(constant acceleration motion generator)による送信モード(transmission mode)で作動した。検出器は、0.1mm厚のNaI結晶(T1)であった。スケールは、57Co(Rh)源で得られるα鉄の標準型6ラインスペクトルを用いて較正された。全てのアイソマーシフトがCaSnOに対して与えられた。実験スペクトルをローレンツ型輪郭(Lorentzian profiles)へとデコンヴォルーション(deconvolute)して、種々のパラメータを決定するために、ISOソフトウェアが用いられた(W. Kuending, Nucl Instrum Method, 75, 336 (1969))。
【0016】
119Snメスバウアー分光法において、本発明の還元された形態の触媒は一般的に、0〜0.45mm/秒の範囲の四重極分裂値およびCaSnOに対して1.5〜2.4mm/秒の範囲のアイソマーシフト(IS)を示すシグナルを有し、前記シグナルがシグナルの全面積の1〜30%の範囲、好ましくは4〜20%の範囲を表す。
【0017】
J Olivier FourcadeらによってChemPhysChem 2004, 5, 1734において出版された属性によると、調製方法は、従って、還元触媒について、スズSnの種を形成し、これを白金族からの金属原子の一部との合金にすることを含む。このように観察された合金MSnは、白金族からの金属とスズの原子間で非常に強い相互作用を示す。
【0018】
担体は、一般的に、マグネシウム、チタン、ジルコニウム、アルミニウム、およびケイ素の酸化物によって構成される群より選択される少なくとも1種の酸化物を含む。好ましくは、それは、シリカ、アルミナ、またはシリカ−アルミナであり、一層好ましくはアルミナである。本発明によると、前記多孔質担体は、有利には、ビーズ、押出物、ペレット、または粉体の形態である。一層有利には、前記担体はビーズまたは押出物の形態である。担体の細孔容積は、好ましくは0.1〜1.5cm/gの範囲、より好ましくは0.4〜0.8cm/gの範囲である。さらに、前記多孔質担体の比表面積は、有利には50〜600m/gの範囲、好ましくは100〜400m/gの範囲、さらに好ましくは150〜300m/gの範囲である。
【0019】
本発明の触媒の調製方法は、一般的に以下の工程を含む:
a) サブ工程a1)またはa2)の一方の間に、単数または複数のプロモータX1およびリンを導入する工程、ここで、前記サブ工程a1)は、主要酸化物の前駆体の合成に相当し、前記サブ工程a2)は担体の成形に相当する;
b) サブ工程a1)およびa2)のうち少なくとも一方の間にスズを導入する工程、ここで、工程a)およびb)は場合により連続的にあるいは同時に行われる;
c) 工程b))の終わりに得られた生成物を乾燥させる工程;
d) 工程c)で得られた生成物を、350〜650℃の範囲の温度で焼成する工程;
e) 白金族からの少なくとも1種の金属Mを沈着させる工程;
f) 中性ガス流または酸素含有ガス流中で、150℃を越えない中程度の温度で乾燥させる工程;
g) 工程f)で得られた生成物を、350〜650℃の範囲の温度で焼成する工程。
【0020】
スズは、担体を成形する時に一部のみ導入され得、その時には、この方法は、スズの補完部分を担体上に沈着させるための補足工程を、工程d)と工程e)の間、または工程e)と工程f)の間または工程g)の後のいずれかに含み、工程d)と工程e)の間に補足工程を行う場合には、それに続いて乾燥および焼成を行ってもよいしまたは行わなくてもよく、または工程e)と工程f)の間または工程g)の後に補足工程を行う場合には、それに続いて乾燥および焼成を行う。
【0021】
工程g)の焼成は、一般的に空気の存在下で行われ、この空気は、場合により酸素または窒素を豊富に富む。
【0022】
プロモータX1、P、およびSnは、当業者に公知のあらゆる技術を用いて導入され得る。担体へのこれらの導入の間、プロモータX1、P、およびSnは、混合、共沈、または溶解によって加えられ得るが、これらの方法に制限されるわけではない。
【0023】
従って、スズの導入は、前駆体X1およびPの導入と同時に行われてもよく、または、前駆体X1およびPの導入の前または後に別個に行われてもよい。
【0024】
単数または複数のプロモータX1およびリンを、すなわち、酸化物の前駆体の合成の間に導入する場合、本発明による調製のための好ましい方法によると、スズ、リン、および単数または複数の前駆体X1は、主要酸化物の前駆体の合成の間に、ゾル−ゲルタイプの技術を用いて導入される。
【0025】
別の好ましい方法によると、前駆体は、主要酸化物の前駆体の調製されたゾルに添加される。担体は、従来の担体の成形技術、例えば、押出または油滴凝固(oil drop coagulation)を含む成形手順を用いて成形される。
【0026】
X1前駆体は、X1の性質に応じた複数のタイプのものであり、単体または混合物として用いられてよい。インジウムの場合、インジウムのハロゲン化物、硝酸塩、硫酸塩、過塩素酸塩、シアニド、または水酸化物が適している。ガリウムのハロゲン化物、硝酸塩、硫酸塩、シアニド、水酸化物、およびオキシハロゲン化物タイプの前駆体が用いられてよい。タリウムは、タリウムの硝酸塩、硫酸塩、および水酸化物の形態で導入されてもよい。アンチモンの場合、アンチモンの硝酸塩、硫酸塩、および水酸化物が適している。ヒ素のハロゲン化物およびオキシハロゲン化物の前駆体が用いられてよい。ビスマスは、ビスマスのハロゲン化物、硝酸塩、水酸化物、オキシハロゲン化物、または炭酸塩の形態で、あるいはビスマス酸として導入されてよい。
【0027】
スズ前駆体は、無機タイプのものであってよく、あるいは有機金属タイプのものであってよく、場合により水溶性の有機金属タイプのものである。種々の前駆体が、単独でまたは混合物として用いられてよい。特に、スズが選択されてよい。限定されない方法で、スズは、ハロゲン化物、水酸化物、炭酸塩、カルボン酸塩、硫酸塩、酒石酸塩、および硝酸塩の化合物によって形成される群から選択されてよい。これらの形態のスズは、触媒調製媒体に導入されてよい。それらは、(例えば、スズおよびカルボン酸を導入することにより)現場で(in situ)発生させられるかあるいは発生させられ得るからである。スズをベースとするタイプの有機金属前駆体の例は、SnR(式中Rは、アルキル基(例えば、ブチル)である)、MeSnCl、MeSnCl、EtSnCl、EtSnCl、EtSnCl、iPrSnClの群、および水酸化物MeSnOH、MeSn(OH)、EtSnOH、EtSn(OH)、酸化物(BuSn)O、アセタートBuSnOC(O)Meを表す。好ましくは、ハロゲン化された種、特にスズの塩素化種が用いられる。特に、SnClまたはSnClが有利に用いられる。
【0028】
スズの場合にすでに成形された担体中または担体上に、プロモータSn、X1、およびPを導入すれば、本発明の触媒の調製手順は、白金族からの金属Mの沈着前に焼成(工程d))を必要とする。好ましくは、前記焼成は、350〜650℃の範囲、好ましくは400〜600℃の範囲、より好ましくは400〜550℃の範囲の温度で行われる。昇温は、規則正しくてよく、あるいは、中間の一定の温度段階を含んでよく、固定または可変の温度プロファイルで前記段階に到達する。したがって、これらの昇温は、それらの速度(分当たりまたは時間当たりの度)が同一であっても異なってもよい。焼成の間に用いられるガスの雰囲気は、酸素を含有し、好ましくは2〜50体積%の範囲、より好ましくは5〜25%の範囲である。従って、空気もまた、この焼成工程の間に用いられてよい。
【0029】
担体を得た後、白金族からの少なくとも1種の金属Mが沈着させられる(工程e))。この工程において、金属Mは、乾式含浸または過剰溶液含浸(excess solution impregnation)によって、白金族からの金属Mを含有する1つの前駆体または前駆体混合物を用いて導入されてよい。含浸は、金属Mの前駆体と担体との間の相互作用により作用する種の存在下で行われてよい。限定しない方法で、前記種は、無機酸(HCl、HNO)または有機酸(カルボン酸またはポリカルボン酸のタイプ)、および有機錯体タイプの化合物であってよい。好ましくは、含浸は、触媒内に金属Mの均質な分布を得るために、当業者に公知のあらゆる技術を用いて行われる。
【0030】
金属Mの前駆体は、以下の群の一部を形成するが、このリストは限定されるものではない:ヘキサクロロ白金酸、ブロモ白金酸、クロロ白金酸アンモニウム、塩化白金、白金ジクロロカルボニルジクロリド、および白金テトラミンクロリド。
【0031】
この段階で、X1、Sn、P、および白金を含有する触媒は、中性雰囲気中または酸素を含有する雰囲気(空気が用いられてもよい)中で250℃を越えない中程度の温度で乾燥させられる(工程f))。好ましくは、乾燥は、200℃以下の温度で数分から数時間の期間にわたり行われる。
【0032】
この工程の後、工程f)で得られた生成物の焼成が行われる。前記焼成は、好ましくは、空気の存在下で行われる。この空気は、酸素または窒素を豊富に含んでよい。好ましくは、前記ガス中の酸素含有量は、0.5〜30.0体積%、より好ましくは2〜25%の範囲に達する。
【0033】
前記焼成は、350〜650℃の範囲、好ましくは400〜650℃の範囲、より好ましくは450〜550℃の範囲の温度で行われる。温度プロファイルは、場合により、一定の温度段階を含んでよい。
【0034】
本発明の触媒の調製において用いられる種々の前駆体がハロゲンを含有しないかあるいは充分な量のハロゲンを含有しない場合、調製の間にハロゲン化化合物を添加する必要があり得る。当業者に公知のあらゆる化合物が用いられ、本発明の触媒の調製のための工程のうちのいずれかに組み入れられてよい。特に、フリーデル・クラフトタイプの化合物、例えば、塩化アルミニウムまたは臭化アルミニウムを用いることが可能である。有機化合物、例えば、メチルまたはエチルのハロゲン化物、例えば、ジクロロメタン、クロロホルム、ジクロロエタン、メチルクロロホルムまたは四塩化炭素を用いることも可能である。
【0035】
塩素は、オキシ塩素化処理を用いて本発明の触媒に加えられ得る。前記処理は、例えば、500℃で4時間にわたって、所望量の塩素を沈着させるのに必要な量のガス状塩素および例えばHO/Clモル比が20に近い量の水を含有する空気流中で行われ得る。
【0036】
塩素は、塩酸水溶液の含浸によって添加されてよい。典型的な手順は、所望の量の塩素を導入するように固体物に含浸させることからなる。触媒は、この量の塩素を沈着させるのに充分な長さの期間にわたり、水溶液と接触させたまま保持される。次いで触媒は水分を排出され、80〜150℃の範囲の温度で乾燥させられ、最終的に、空気中、450〜650℃の範囲の温度で焼成される。
【0037】
典型的には、触媒は、還元処理を経る。この還元工程は、一般的に、希釈または高純度の水素の雰囲気中で、有利には400〜600℃の範囲、好ましくは450〜550℃の範囲の温度で行われる。
【0038】
(実施例)
以下の実施例は本発明を例証するものである。
【0039】
(実施例1(比較例):触媒A:Pt/(Al−Sn)−Clの調製)
0.3重量%のスズを含有しかつ平均径が1.2mmであるアルミナビーズの形態の担体の調製を、二塩化スズと、塩化アルミニウムの加水分解により得られたアルミナヒドロゾルとを接触させることにより行った。これにより得られたアルミナヒドロゾルを、次いで、添加油(additive oil)で満たされた垂直カラム中に通過させた。このようにして得られた球体を600℃までの温度で熱処理し、良好な機械的強度を有するビーズを得た。これにより得られた担体のBET比表面積は205m/gであった。
【0040】
この担体上への触媒Aの調製は、0.3重量%の白金と1重量%の塩素を最終触媒上に沈着させることにより行った。ヘキサクロロ白金酸および塩酸の水溶液400cmを、スズ含有アルミナ担体100gに添加した。この水溶液を、4時間にわたり接触させたまま放置し、その後排水した。それを、120℃で乾燥させ、次いで2時間にわたり500℃で毎時100リットルの空気流中、分当たり7℃の昇温で焼成した。焼成後に得られた触媒Aは、0.29重量%の白金、0.30重量%のスズ、および1.02重量%の塩素を含有していた。
【0041】
(実施例2(比較例):触媒B:Pt/(Al−Sn−In)−Clの調製)
0.3重量%のスズおよび0.3重量%のインジウムを含有しかつ平均径が1.2mmであるアルミナビーズの形態の担体の調製を、二塩化スズおよび硝酸インジウムと、塩化アルミニウムの加水分解により得られたアルミナヒドロゾルとを接触させることにより行った。これにより得られたアルミナヒドロゾルを、次いで、添加油で満たされた垂直カラム中に通過させた。このようにして得られた球体を600℃までの温度で熱処理し、良好な機械的強度を有するビーズを得た。これにより得られた担体のBET比表面積は201m/gであった。
【0042】
触媒Bをこの担体上に調製し、実施例1と同量の白金および塩素の含有量を目標とした。焼成後に得られた触媒Bは、0.29重量%の白金、0.29重量%のスズ、0.30重量%のインジウム、および1.05重量%の塩素を含有していた。
【0043】
(実施例3(比較例):触媒C:Pt/(Al−Sn−P)−Clの調製)
実施例1に記載された方法と同様の方法で、二塩化スズおよびリン酸をアルミナヒドロゾルと接触させることにより、0.3重量%のスズおよび0.4重量%のリンを含有しかつ平均径が1.2mmであるアルミナビーズの形態の担体を得た。これにより得られた担体のBET比表面積は198m/gであった。
【0044】
この担体上に触媒Cを調製し、実施例1と同量の白金および塩素の含有量を目標とした。焼成後に得られた触媒Cは、0.30重量%の白金、0.31重量%のスズ、0.39重量%のリン、および1.00重量%の塩素を含有していた。
【0045】
(実施例4(本発明に合致する):触媒D:Pt/(Al−Sn−In−P)−Clの調製)
実施例1に記載された方法と同様の方法で、二塩化スズ、硝酸インジウムおよびリン酸をアルミナヒドロゾルと接触させることにより、0.3重量%のスズ、0.3重量%のインジウムおよび0.4重量%のリンを含有しかつ平均径が1.2mmであるアルミナビーズの形態の担体を得た。これにより得られた担体のBET比表面積は196m/gであった。
【0046】
この担体上に触媒Dを調製し、実施例1と同量の白金および塩素の含有量を目標とした。焼成後に得られた触媒Dは、0.30重量%の白金、0.31重量%のスズ、0.32重量%のインジウム、0.38重量%のリン、および1.00重量%の塩素を含有していた。
【0047】
(実施例5(本発明に合致する):触媒E:Pt/(Al−Sn−In−P)−Clの調製)
実施例4と同様の方法で、アルミナビーズの形態の担体を調製した。但し、本実施例においては、スズとリンは実施例4と同量であるが、インジウムは0.2重量%しか導入しなかった。これにより得られた担体のBET比表面積は210m/gであった。
【0048】
この担体上に触媒Eを調製し、実施例1と同量の白金および塩素の含有量を目標とした。焼成後に得られた触媒Eは、0.31重量%の白金、0.31重量%のスズ、0.22重量%のインジウム、0.40重量%のリン、および1.02重量%の塩素を含有していた。
【0049】
(実施例6(比較例):触媒F:Pt−In/(Al−Sn−P)−Clの調製)
担体を調製し、実施例3と同量のスズとリンを目標とした。これにより得られた担体のBET比表面積は180m/gであった。
【0050】
触媒Fをこの担体上に調製し、最終触媒上に0.3重量%の白金、0.3重量%のインジウム、および1重量%の塩素を目標とした。
【0051】
ヘキサクロロ白金酸および塩酸の水溶液400cmを、スズとリンを含有するアルミナ担体100gに添加した。それを、接触させたまま4時間にわたり放置し、次いで排水した。それを、90℃で乾燥させ、次いで塩酸の存在下硝酸インジウムの水溶液200cmと接触させた。それを、接触させたまま4時間にわたり放置し、排水し、120℃で乾燥させ、次いで2時間にわたり500℃で毎時100リットルの空気の流れ中で焼成した。焼成中、分当たり7℃の昇温を行った。焼成後に得られた触媒Fは、0.30重量%の白金、0.32重量%のスズ、0.29重量%のインジウム、0.41重量%のリン、および1.04重量%の塩素を含有していた。
【0052】
(実施例7(比較例):触媒G:Pt−In−P/(Al−Sn)−Clの調製)
担体を調製し、実施例1と同量のスズを目標とした。
【0053】
この担体上に触媒Gを調製し、最終触媒上に0.3重量%の白金、0.3重量%のインジウム、0.4重量%のリン、および1重量%の塩素を目標とした。このようにして得られた担体のBET比表面積は209m/gであった。
【0054】
ヘキサクロロ白金酸および塩酸の水溶液400cmを、スズとリンを含有するアルミナ担体100gに加えた。それを、接触させたまま4時間にわたり放置した後、排水した。それを、90℃で乾燥させ、次いで塩酸の存在下に硝酸インジウムとリン酸の水溶液200cmと接触させた。それを、接触させたまま4時間にわたり放置し、排水し、120℃で乾燥させた後、2時間にわたり500℃で毎時100リットルの空気流中、分当たり7℃の昇温で焼成した。焼成後に得られた触媒Gは、0.30重量%の白金、0.31重量%のスズ、0.33重量%のインジウム、0.38重量%のリン、および1.05重量%の塩素を含有していた。
【0055】
(実施例8(本発明に合致する):触媒H:Pt−Sn/(Al−Sn−In−P)−Clの調製)
担体を調製し、実施例4と同量のインジウムおよびリン、ならびに0.2重量%のスズを目標とした。このようにして得られた担体のBET比表面積は182m/gであった。
【0056】
この担体上への触媒Hの調製は、0.35重量%の白金および補足的な0.2重量%のスズを沈着させることによって行い、最終触媒上に0.4重量%のスズと1重量%の塩素を得た。
【0057】
ヘキサクロロ白金酸および塩酸の水溶液400cmを、スズおよびインジウムを含有するアルミナ担体100gに添加した。それを、接触させたまま4時間にわたり放置した後、排水した。それを、90℃で乾燥させた後、塩酸の存在下四塩化スズの水溶液200cmと接触させた。それを、接触させたまま4時間にわたり放置し、排水し、120℃で乾燥させた後、2時間にわたり500℃で毎時100リットルの空気流中、分当たり7℃の昇温で焼成した。焼成後に得られた触媒Hは、0.36重量%の白金、0.41重量%のスズ、0.29重量%のインジウム、0.41重量%のリン、および0.99重量%の塩素を含有していた。
【0058】
(実施例9(本発明に合致する):触媒I:Pt−Sn/(Al−Sn−Sb−P)−Clの調製)
0.1重量%のスズ、0.4重量%のアンチモン、および0.4重量%のリンを含有し、かつ平均径が1.2mmであるアルミナビーズ担体の調製を、二塩化スズ、硝酸ガリウム、およびリン酸を用いる実施例4に記載の方法と類似の方法で行った。このようにして得られた担体のBET比表面積は191m/gであった。
【0059】
前記担体から、実施例7と同量の白金、スズ、および塩素を有する触媒Iを調製した。焼成後に得られた触媒Gは、0.29重量%の白金、0.30重量%のスズ、0.32重量%のインジウム、0.42重量%のリン、および1.10重量%の塩素を含有していた。
【0060】
(実施例10:触媒A〜Iのメスバウアー特徴付け)
触媒A〜Iを、水素流中450℃で2時間にわたり還元して、空気を侵入させることなく、メスバウアー装置に適応した密閉されたガラスセルに移した。実施例1〜9の触媒A〜Iについて、アイソマーシフト値および四重極分裂値を、本明細書に説明されかつ表1に示された方法を用いて求めた。
【0061】
【表1】

【0062】
(実施例11:接触改質における触媒A〜Iの性能評価)
実施例1〜9に記載したように調製された触媒のサンプルを、石油の蒸留に由来するナフサタイプの炭化水素供給原料の転化に適応した反応床中に置いた。
【0063】
このナフサは、
・パラフィン化合物 52.6%;
・ナフテン 31.6%;
・芳香族分子 15.8%;
の組成(重量による)を有し、全体密度は0.759g/cmであった。
【0064】
供給原料のリサーチオクタン価は、55前後であった。
【0065】
反応器内に装填した後、触媒を、高純度の水素の雰囲気中2時間の期間にわたる490℃での熱処理により活性化した。
【0066】
改質反応条件下、水素および上記のナフサの存在下、触媒性能を評価した。特に、使用条件および触媒の比較条件は以下の通りであった:
・反応器の圧力は、8bar g(0.8MPa g)に維持された;
・供給原料の流量:触媒の重量(kg)当たり2.0kg/h;
・供給原料の水素/炭化水素モル比:4
供給原料の接触転化に由来する液体流出物(リフォメートとも称される)のリサーチオクタン価の等質(iso-quality)比較を行った。104のリサーチオクタン価に対して比較を行った。
【0067】
【表2】

【0068】
本発明の触媒(触媒D、E、H、およびI)は、向上した選択性(より高いC5+収率)および向上した安定性(より少量のコークス)を有していた。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
白金族からの少なくとも1種の金属Mと、スズと、リンプロモータと、ハロゲン化化合物と、多孔質担体と、ガリウム、インジウム、タリウム、ヒ素、アンチモン、およびビスマスによって構成される群より選択される少なくとも1種のプロモータX1とを含む触媒であって、還元された形態の前記触媒は、119Snメスバウアー分光法において、0〜0.45mm/秒の範囲の四重極分裂値およびCaSnOに対して1.5〜2.4mm/秒の範囲のアイソマーシフト(IS)を有するシグナルを有し、前記シグナルがシグナルの全面積の1〜30%の範囲を表す、触媒。
【請求項2】
原子比Sn/Mは0.5〜4.0の範囲である、請求項1に記載の触媒。
【請求項3】
比X1/Mは0.1〜5.0の範囲である、請求項1または2に記載の触媒。
【請求項4】
比P/Mは0.2〜30.0の範囲である、請求項1〜3のいずれか1つに記載の触媒。
【請求項5】
金属Mの量は0.01〜5重量%の範囲である、請求項1〜4のいずれか1つに記載の触媒。
【請求項6】
金属Mは白金またはパラジウムである、請求項1〜5のいずれか1つに記載の触媒。
【請求項7】
ハロゲン化化合物はフッ素、塩素、臭素、およびヨウ素によって構成される群より選択される、請求項1〜6のいずれか1つに記載の触媒。
【請求項8】
ハロゲン化化合物の量は0.1〜15.0重量%の範囲である、請求項1〜7のいずれか1つに記載の触媒。
【請求項9】
ハロゲン化化合物は塩素であり、塩素含有量は0.1〜5.0重量%の範囲である、請求項1〜8のいずれか1つに記載の触媒。
【請求項10】
担体は、マグネシウム、チタン、ジルコニウム、アルミニウム、およびケイ素の酸化物によって構成される群より選択される少なくとも1種の酸化物を含む、請求項1〜9のいずれか1つに記載の触媒。

【公表番号】特表2012−531307(P2012−531307A)
【公表日】平成24年12月10日(2012.12.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−518104(P2012−518104)
【出願日】平成22年6月15日(2010.6.15)
【国際出願番号】PCT/FR2010/000444
【国際公開番号】WO2011/001042
【国際公開日】平成23年1月6日(2011.1.6)
【出願人】(591007826)イエフペ エネルジ ヌヴェル (261)
【氏名又は名称原語表記】IFP ENERGIES NOUVELLES
【Fターム(参考)】