説明

強制対流式EGR冷却システム

【課題】エンジンの排気ガス再循環システムにおいて、再循環排気ガスの温度を減少させる。
【解決手段】吸気マニホルド(29)の上流側に位置したエンジン(16)の排気マニホルド(27)からの再循環排気ガスを冷却する方法であって、排気マニホルドからの再循環排気ガスを熱交換器(36)に通すステップと、周囲空気流を少なくとも1つのファン(58)が熱交換器に取り付けられた状態の熱交換器に対流により強制的に通すステップとを有する。この方法は、冷却された再循環排気ガスを吸気マニホルド(29)に通すステップを更に有する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本明細書において説明する実施形態は、概略的には、車両の排気ガス運搬システムに関する。詳細には、本明細書において説明する実施形態は、再循環排気ガスの温度を減少させる車両の排気ガス再循環(EGR)システム用の強制対流式熱交換器に関する。
【背景技術】
【0002】
車両に搭載されている排気ガス運搬システムは、日常的なエンジン作動で生じうる極めて高温度の排気ガスを放出する場合がある。エンジン冷却システムが、排気ガスをエンジンに再循環させる前に排気ガスを冷却するために用いられる。エンジン冷却システムは、典型的には、エンジン冷却システムから水又は他の冷却剤を循環させ、熱を排気ガスから奪う。排気ガスエミッションを制御するために車両に課される規則により、排気ガスを冷却し、それにより窒素酸化物NOx排気ガスエミッションを減少させるエンジン冷却システムに対する要求がますます厳しくなっている。
【0003】
排気ガス冷却器は、エンジン又は排気ガス通路に設けられている。排気ガス通路は、排気ガスを車両のエンジンから外気に引き回す。排気ガスの一部分は、排気ガス再循環(EGR)システムによりエンジン排気マニホルドから再循環させられてエンジンの吸気マニホルドに戻される。大抵のEGRシステムは、エンジンの排気マニホルドと吸気マニホルドとの間に設けられた少なくとも1つのEGRクーラを有する。
【0004】
NOxは、主として、窒素と酸素の混合物が高い温度になると発生する。新気と再循環排気ガスの相互混合により、混合物が希釈され、それにより火炎温度が低下すると共に過剰酸素の量が減少する。排気ガスは又、空気と排気ガスの比熱容量を増大させ、それによりピーク燃焼温度が低下する。NOxは、高温で容易に生じるので、EGRシステムは、温度を低く保つことによりNOxの発生を制限する。一般に、再循環排気ガスの温度が低ければ低いほど、エンジンで生じるNOxの量がそれだけ一層少なくなる。
【0005】
NOxエミッションを減少させるためにEGRを用いるエンジンは、再循環排気ガスを冷却することによりエミッションの減少を達成することができる。EGRクーラは、排気ガスを冷却して排気ガスの潜熱含有量が少なくなるようにする。冷却された排気ガスと空気の混合物は、燃焼室での燃焼温度を低下させ、その結果、エンジンで生じるNOxが少なくなる。
【0006】
排気ガス運搬システムは、排気ガスの流れ方向に後処理装置、例えばプレディーゼル酸化触媒部材(PDOC)及びディーゼル酸化触媒(DOC)又はディーゼルパティキュレートフィルタ(DPF)を有する場合が多い。DOCは、化学プロセスを用いて排気ガス流中の汚染物質を有害性の低い成分に分解する装置である。DOCは、汚染を減少させるための化学反応を触媒する材料で被覆された多孔質セラミックハニカム状構造を有する。DPFは、排気ガスから粒子状物質を除去する。
【発明の概要】
【0007】
吸気マニホルドの上流側に位置したエンジンの排気マニホルドからの再循環排気ガスを冷却する方法であって、排気マニホルドからの再循環排気ガスを熱交換器に通すステップと、周囲空気流を少なくとも1つのファンが熱交換器に取り付けられた状態の熱交換器に対流により強制的に通すステップとを有する。この方法は、冷却された再循環排気ガスを吸気マニホルドに通すステップを更に有する。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【図1】強制対流式熱交換器を有する排気ガス再循環システムの略図である。
【図2】ファンを備えた熱交換器の正面側斜視図である。
【図3】ファンを備えた熱交換器の背面側斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
図1を参照すると、排気ガス再循環(EGR)冷却システムが全体を符号10で示されており、このEGR冷却システムは、全体が符号12で示された排気ガス再循環システムに設けられている。EGR冷却システム10は、排気ガスを冷却し、排気ガスからの回収廃熱を有用な目的のために使用するよう構成されている。EGR冷却システム10をトラック、バス及び任意他の車両に使用できることが想定される。
【0010】
排気ガス再循環システム12は、エンジン16から放出されたガスを外気に移送する排気ガス通路14を形成している。通路14は、入口20を備えエンジン16の排気ガス出口22に連結された排気ガス入口管18と、出口26を備え排気ガスを外気に逃がす排気ガス出口管24とを備えている。EGR冷却システム10は、排気ガス再循環システム12からの排気ガスを冷却し、その後、排気ガスをエンジン16の吸気マニホルド29中に再循環させ、ここで、排気ガスは、燃焼室(図示せず)に流れることになる。
【0011】
排気ガス再循環システム12は、好ましくは、従来型取り付け構造体(図示せず)を用いてシャーシ部材(図示せず)に取り付けられる。排気ガス再循環システム12は、一般に、車両の長さに沿って長手方向に延びている。
【0012】
排気ガス再循環システム12は、排気ガスの流れ方向に、後処理装置を有し、具体的に言えば、プレディーゼル酸化触媒部材32及びプレディーゼル酸化触媒部材の下流側で排気ガス通路14に設けられたディーゼル酸化触媒/ディーゼルパティキュレートフィルタ(DOC/DPF)34を有する。プレディーゼル酸化触媒部材32から見て上流側で排気ガス通路に炭化水素ドージング装置(doser)30も又設けられるのが良い。排気ガスは、再循環ライン28でエンジン16に設けられている排気ガスマニホルド27からエンジンの吸気マニホルド29に再循環させられて燃焼のために空気と相互混合する。再循環ライン28は、排気ガスマニホルド27及び吸気マニホルド29と流体連通状態にある。
【0013】
従来から知られているように、エンジン冷却システム38は、鋳造によりエンジンブロック及びシリンダヘッド(図示せず)内に設けられ、燃焼室(図示せず)を包囲した一連のチャネルを通って水又は他の冷却剤を循環させて車体を通ってエンジン16から熱を運び去る。従来構成では、エンジン冷却システムからの水又は他の冷却剤は、エンジン16、又は排気ガス通路14に設置された排気ガス‐冷却剤熱交換器を通って循環する。これにより、エンジン冷却システム38に対する追加の負荷が生じる。
【0014】
EGR冷却システム10は、従来型排気ガス‐冷却剤熱交換器に取って代わるようになっており、或いは、変形例として、エンジン冷却システム38に対する負荷を軽減するのを助けるために従来型排気ガス‐冷却剤熱交換器に加えて用いられるようになっている。伝熱流体としてエンジンの冷却システム38からの水又は冷却剤を用いる代わりに、現行のEGRクーラは、排気ガス通路からの排気ガスを冷却するために強制対流方式を用いている。具体的に説明すると、EGR冷却システム10は、周囲空気流を用いて排気ガス通路14からの排気ガスを冷却する。
【0015】
EGR冷却システム10は、エンジン16と流体連通状態にある強制対流式排気ガス‐空気熱交換器36を有する。熱交換器36は、再循環ライン28とエンジン16の吸気マニホルド29との間に設けられると共にこれらと流体連通状態にある。一実施形態では、熱交換器36は、エンジン16の吸気マニホルド29に直接取り付けられると共に再循環ライン28と流体連通状態にある。
【0016】
熱交換器36は、実質的に熱交換器の長さ全体にわたって延びる複数本の管及びフィンを備えたコア組立体40を有する強制対流式冷却器である。コア組立体40の周囲と境を接してヘッダ部材42が設けられ、これらヘッダ部材は、複数本の管及びフィンと平行にコア組立体の長さにわたって延びている。2つの端キャップ44がコア組立体40の側を包囲するようヘッダ部材42に全体として垂直に取り付けられている。
【0017】
排気ガス入口46が強制対流式熱交換器36の第1の端キャップ44に設けられ、排気ガス出口48がこれと反対側の端キャップ44に設けられている。再循環ライン28から出て排気ガス入口46に流入した排気ガスは、端キャップ44中に流れ、そしてコア組立体の管を通過する。管内に熱を効果的に伝達するために管を通る排気ガスの乱流を生じさせるよう構成された乱流発生装置(図示せず)が設けられることが想定される。排気ガスが管の長さにわたって流れると、排気ガスは、反対側の端キャップ44から流出し、排気ガス出口48から出る。排気ガスが排気ガス出口48から出ると、排気ガスは、排気ガス入口46で到来排気ガスの温度に対して冷却される。これら冷却された排気ガスは、熱交換器36から吸気マニホルド29中に流れ又は移り、そして吸気マニホルドからエンジン16の燃焼室(図示せず)に流れる。一実施形態では、約50kWの熱が吸気マニホルド29に達する前に排気ガスから除去される。
【0018】
強制対流式熱交換器36は、空気流入口面52を備えた第1の側面50及び第2の側面54を有し、ダクト56が第2の側面を包囲している。空気は、図2において矢印により指示された方向で熱交換器36を通って流れ、この方向は、熱交換器36の平面に対して横方向である。空気が管及びフィンに対して横方向に熱交換器36を通って流れているときに、空気は、管及びフィン並びに管内に入っている排気ガスを冷却する。
【0019】
少なくとも1つのファン58が空気を空気流入口面52中に引き込むために第1の側面50に取り付けられている。強制対流式熱交換器36の一実施形態では、3つのファン58が熱交換器の第2の側面54を実質的に包囲するよう空気流入口面52に取り付けられている。熱を一層効果的に引き込むため、ファン58は、熱交換器36に対し密封された流体連通状態にある。
【0020】
ファン58は、加熱空気を対流により熱交換器36上でこれに沿って強制的に流して、この加熱空気をダクト56によって集めてDOC/DPF34に導く。一実施形態では、ファン58を作動させるのに必要なエネルギーは、650〜1000ワットであるが、他の量が想定される。
【0021】
ダクト56は、熱交換器36から放出された加熱空気流を集めてこれをダクト出口60から流出させるよう熱交換器36の第2の側面54に設けられている。ダクト出口60は、ダクト56の第1の端部に設けられ、この第1の端部は、ダクトの第2の端部よりも断面積が大きい。この断面積は、ダクト56の第2の端部までのダクト56の長さに沿うほぼ一定の量を減少させる。この形態では、熱の大部分は、廃熱ライン62に送られてDOC/DPF34に差し向けられる。
【0022】
熱交換器36は、排気ガスから熱を取り出し、この廃熱を他の有用な目的のために使用する。廃熱ライン62は、熱交換器36の空気流出口56とDOC/DPF34を互いに流体連通させ、空気の流れをDOC/DPFに差し向ける。DOC/DPF34は、定期的に、堆積物を燃やして除去する再生サイクルを行い、これには相当な熱エネルギーが必要である。熱交換器36からの廃熱は、DOC/DPF34への追加の熱を提供することができ、それにより、堆積物の増大を減少させることができ、しかも必要な再生サイクルの数を減少させることができる。さらに、強制対流式熱交換器36からの廃熱は、温度のランプアップ(ramp up)を減少させるよう熱(エネルギー)を提供することができる。
【0023】
強制対流式熱交換器36を含むEGRクーラ10は、エンジン冷却システムへの負荷を軽減する。一実施形態では、熱交換器36は、触媒の作用させるために酸化触媒32に廃熱を提供することができる。さらに、強制対流式熱交換器36を備えたEGRクーラ10は、シャーシ28に取り付けられ、それによりエンジンの効率的なパッケージングが可能になる。さらに、強制対流式熱交換器36からの廃熱は、温度のランプアップのためにより多くのエネルギーを提供することができる。さらに、強制対流式熱交換器36は、後処理のドージング(dosing)を減少させることができ、しかも潜在的にDOC/DPF34を小型化することができる。
【符号の説明】
【0024】
10 排気ガス再循環(EGR)冷却システム
12 排気ガス再循環システム
14 排気ガス通路
16 エンジン
18 排気ガス入口管
24 排気ガス出口管
27 排気マニホルド
29 吸気マニホルド
32 プレディーゼル酸化触媒部材
34 ディーゼル酸化触媒/ディーゼルパティキュレートフィルタ
36 熱交換器
40 コア組立体
42 ヘッダ組立体
58 ファン

【特許請求の範囲】
【請求項1】
車両に搭載され、エンジンからの排気ガスを出口に放出する排気ガス通路を備えた排気ガス冷却システムであって、
前記エンジンの排気マニホルド及び前記エンジンの吸気マニホルドと流体連通状態にある再循環ラインと、
前記再循環ラインと前記吸気マニホルドとの間に配置されると共に前記再循環ライン及び前記吸気マニホルドと流体連通状態にある熱交換器とを有し、前記熱交換器は、前記熱交換器を通って排気ガスを循環させる排気ガス入口及び排気ガス出口と、前記熱交換器を通る空気流を可能にすると共に前記排気ガスを冷却する第1の側面及び第2の側面と、前記空気を前記熱交換器中に引き込む少なくとも1つのファンとを有し、前記排気ガス出口からの冷却された出口排気ガスは、前記エンジンの前記吸気マニホルドに流れる、
ことを特徴とする排気ガス冷却システム。
【請求項2】
前記排気ガス通路に設けられたディーゼル酸化触媒部材を更に有し、前記熱交換器を通る前記空気流は、加熱されて前記熱交換器から流出し、そして廃熱ラインで前記ディーゼル酸化触媒部材に差し向けられる、
請求項1記載の排気ガス冷却システム。
【請求項3】
前記排気ガス通路に設けられたディーゼルパティキュレートフィルタを更に有し、前記熱交換器を通る前記空気流は、加熱されて前記第2の側面から流出し、そして廃熱ラインで前記ディーゼルパティキュレートフィルタに差し向けられる、
請求項1記載の排気ガス冷却システム。
【請求項4】
前記熱交換器は、実質的に前記熱交換器の長さ全体にわたって延びる複数本の管及びフィンを備えたコア組立体を更に有する、
請求項1記載の排気ガス冷却システム。
【請求項5】
前記コア組立体の長さにわたって延びると共に前記複数本の管及びフィンと平行なヘッダ部材を更に有する、
請求項4記載の排気ガス冷却システム。
【請求項6】
前記コア組立体の側面で前記ヘッダ部材に全体として垂直に取り付けられた2つの端キャップを更に有する、
請求項5記載の排気ガス冷却システム。
【請求項7】
前記エンジンの下流側で前記排気ガス通路に設けられたプレディーゼルパティキュレートフィルタを更に有する、
請求項1記載の排気ガス冷却システム。
【請求項8】
前記エンジンの下流側で前記排気ガス通路に設けられたドージング部材を更に有する、
請求項1記載の排気ガス冷却システム。
【請求項9】
前記熱交換器の前記第2の側面に設けられたダクトを更に有し、前記空気流は、前記ダクト内に集められ、前記ダクトは、第1の断面積を備えた第1の端部及び第2の断面積を備えた第2の端部を有する、
請求項1記載の排気ガス冷却システム。
【請求項10】
前記少なくとも1つのファンは、前記第2の側面を実質的に包囲する3つのファンから成る、
請求項6記載の排気ガス冷却システム。
【請求項11】
前記ファンは、電気ファンである、
請求項1記載の排気ガス冷却システム。
【請求項12】
排気ガスをエンジンから出口に放出する排気ガス通路及び前記エンジンの排気ガスマニホルド及び吸気マニホルドと流体連通状態にある排気ガス再循環ラインを有する排気ガス再循環システム用の熱交換器であって、
前記排気ガス再循環ラインから排気ガスを受け入れる排気ガス入口と、
排気ガスを前記吸気マニホルドに放出する排気ガス出口と、
空気の流れを受け入れる第1の側面と、
空気の流れを放出する第2の側面と、
前記空気の流れを前記第1の側面中に引き込む少なくとも1つのファンとを有し、前記空気の流れは、前記排気ガスの熱量を減少させることにより加熱される、
ことを特徴とする熱交換器。
【請求項13】
前記排気ガス入口は、第1の端キャップに設けられ、前記排気ガス出口は、第2の端キャップに設けられている、
請求項12記載の熱交換器。
【請求項14】
前記第2の側面に取り付けられ、前記第2の側面で放出された前記空気の流れを受け入れるダクトを更に有し、前記ダクトは、ダクト出口を有する、
請求項12記載の熱交換器。
【請求項15】
前記ダクト出口から延びる廃熱ラインを更に有する、
請求項12記載の熱交換器。
【請求項16】
前記少なくとも1つのファンは、3つのファンから成る、
請求項15記載の熱交換器。
【請求項17】
前記3つのファンは、前記第2の側面を実質的に包囲している、
請求項16記載の熱交換器。
【請求項18】
吸気マニホルドの上流側に位置したエンジンの排気マニホルドからの再循環排気ガスを冷却する方法であって、
前記排気マニホルドからの前記再循環排気ガスを熱交換器に通すステップと、
空気が少なくとも1つのファンを取り付けた前記熱交換器を通って対流により流れるようにするステップと、
冷却された前記再循環排気ガスを前記吸気マニホルドに通すステップとを有する、
ことを特徴とする再循環排気ガスの冷却方法。
【請求項19】
加熱された前記空気を前記熱交換器の側に設けられたダクト内に集めるステップを有する、
請求項18記載の再循環排気ガスの冷却方法。
【請求項20】
前記ダクトからの加熱された空気の流れを排気ガス通路に設けられたディーゼル酸化触媒に差し向けるステップを有する、
請求項19記載の再循環排気ガスの冷却方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2011−94627(P2011−94627A)
【公開日】平成23年5月12日(2011.5.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−243344(P2010−243344)
【出願日】平成22年10月29日(2010.10.29)
【出願人】(501402947)インターナショナル エンジン インテレクチュアル プロパティー カンパニー リミテッド ライアビリティ カンパニー (69)
【Fターム(参考)】