説明

強化ガラス製造装置及び方法

【課題】ガラス基板の内外部の温度差を最大に大きくして、急冷却を通じて強化がより完全になされるようにする強化ガラスの製造装置を提供する。
【解決手段】本発明は、強化ガラス製造装置であって、強化させようとするガラス基板を移送する移送部と、移送部によって移送されるガラス基板にエネルギーを放射してガラス基板のアルカリ酸化物をイオン化させるイオナイザー(ionizer)と、イオナイザー(ionizer)によってアルカリ酸化物がイオン化されたガラス基板の内部温度を上昇させる誘電加熱部とを含む。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、強化ガラス製造装置及び方法に関し、より詳細には、ガラス基板の内外部の温度差を最大に大きくして、急冷却を通じて強化がより完全になされるようにする強化ガラス製造装置及び方法に関する。
【背景技術】
【0002】
一般的に、強化ガラスは、通常のガラス基板に比べて圧力及び温度の変化に対する強度が格段に高く、小さな粒の形に割れて破片による危険性が少ないことにより、太陽電池やディスプレイ装置、自動車、建築物等に広く使用されている。
【0003】
強化ガラスは、ガラス基板をヒーティングチャンバで600〜900℃前後に加熱した後、移送手段を介して冷却チャンバへ移動させた後、加熱されたガラス基板の上下部から空冷装置のエアーノズルを介して空気を噴射させることにより、加熱されたガラスの表面温度を200〜400℃程度まで急速に冷却させる。これによって加熱されたガラスの表面層に圧縮応力を残留させることにより、強度が通常のガラス基板に比べて格段に強化された強化ガラスが製造される。
【0004】
しかし、従来の強化ガラス製造装置においては、大気の空気を直接吸引してガラスに噴射させる空冷装置を介して冷却させるために、強化ガラスの強度を高めるのにその限界がある。強化ガラスの強度は、加熱されたガラスを急速度で冷却させるほど高くなるが、従来は、常温の空気を介して冷却が行われるため、加熱されたガラスが徐々に冷却される。これにより、強化が不完全になされ、また製品の不良率が高くなるが、このような現象は、大気の温度が高くなる夏の季節により深刻に発生するという問題点があった。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明は、前記のような問題点を解決しようとするために提案されたものであり、本発明の目的は、ガラス基板の内外部の温度差を最大に大きくして、急冷却を通じて強化がより完全になされるようにする強化ガラスの製造装置及び方法を提供することである。
【0006】
本発明の他の目的は、強化ガラスの製造時間と生産効率を高めることができる強化ガラスの製造装置及び方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
前記のような目的を達成するために、本発明の一様相に係る強化ガラス製造装置は、強化させようとするガラス基板を移送する移送部と、移送部によって移送されるガラス基板にエネルギーを放射してガラス基板のアルカリ酸化物をイオン化させるイオナイザー(ionizer)と、イオナイザー(ionizer)によってアルカリ酸化物がイオン化されたガラス基板の内部温度を上昇させる誘電加熱部とを含む。
【0008】
本発明の付加的な様相に係る強化ガラス製造装置は、移送部が空気を利用してガラス基板を空中浮揚させる基板浮揚部を含むことを特徴とする。
【発明の効果】
【0009】
前記のような構成によれば、本発明の強化ガラス製造装置は、ガラス基板にエネルギーを放射してガラス基板のアルカリ酸化物をイオン化させるイオナイザー(ionizer)と、イオナイザー(ionizer)によってアルカリ酸化物がイオン化されたガラス基板の内部温度を上昇させる誘電加熱部とを含んで具現されることにより、ガラス基板に一定波長のエネルギーを照射してガラス基板内に非架橋酸素(Non Bridging Oxygen)と自由電子を生成し、こうした自由電子がガラス基板内の高周波吸収率を増加させてガラス基板の内外部の温度差を最大に大きくすることができる有用な効果がある。
【0010】
また、本発明に係る強化ガラス製造装置は、イオナイザー(ionizer)と誘電加熱部を含んで具現されることにより、ガラスの高周波吸収度向上を通じたガラスの昇温時間を短縮させることで、強化ガラスの製造時間と生産効率を高めることができる有用な効果がある。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【図1】本発明に使用される強化ガラス製造装置を説明するための例示図である。
【図2】本発明に使用される強化ガラス製造装置において、一定の波長のエネルギーを照射して、ガラス基板内に非架橋酸素(Non Bridging Oxygen)と自由電子を生成するメカニズムを説明するための例示図である。
【図3】本発明に係る強化ガラス製造方法に関するフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、添付された図面を参照しつつ前述した、そして追加的な様相について、後述する好適な実施例を通じて、本発明を当業者が容易に理解し、再現することができるよう、詳細に説明することとする。
【0013】
図1は、本発明に使用される強化ガラス製造装置を説明するための例示図である。
【0014】
図示したところのように、本発明に係る強化ガラス製造装置100は、大きく、移送部110と、イオナイザー(ionizer)120(121、122)と、誘電加熱部130(131、132)と、冷却部140とを含んで具現される。
【0015】
移送部110は、強化させようとするガラス基板1を移送する。図1には、移送部110がローラーを含むものを例示しているが、本発明はこれに限定されず、本発明に係る強化ガラス製造装置100は、非接触方式でガラス基板1を移送するように具現することができる。
【0016】
ローラーを使用したガラス基板移送装置の場合、ガラス基板1の表面とローラー面とが接触する過程において、ガラス基板1の表面が損傷するという問題点があった。たとえば、ヒーティングチャンバのように、高温環境でガラス基板1を移送する際にローラーを利用する場合、ガラス基板1の撓みや弛み、スクラッチ、波模様の溝(別名、ローラーウェーブ)等、外形の変形が生じ得る。
【0017】
移送部110は、空気を利用してガラス基板1を空中浮揚させる基板浮揚部を含んで具現することができる。基板浮揚部は、ガラス基板1に空気を供給する空気供給部を含んで具現することができる。
【0018】
イオナイザー(ionizer)120は、移送部110によって移送されるガラス基板1にエネルギーを放射して、ガラス基板1のアルカリ酸化物をイオン化させる。イオナイザー(ionizer)120は、たとえば、UV、x−ray、γ−rayなどの電磁気波を短時間放出し、ガラス基板1内に非架橋酸素(Nonbridging oxygen)と自由電子を生成させて、ガラス基板1の導電性を増加させる。イオナイザー(ionizer)120は、ガラス基板1のアルカリ酸化物をイオン化させて、ガラス基板1に高周波誘電加熱をする場合、ガラス基板1の高周波吸収度を高める役割をする。
【0019】
誘電加熱部130は、高周波電極131,132を具備する。誘電加熱部は、マイクロ波、ラジオ波等を利用してガラス基板を誘電加熱することができる。
【0020】
誘電加熱部130は、イオナイザー(ionizer)120によってアルカリ酸化物がイオン化されたガラス基板1の相対的に外表面の温度よりも内部温度を上昇させる。誘電加熱の前に、ガラス基板を通常の方法で加熱するステップを有することもできる。また、ガラス基板のイオナイジングは、こうした通常の加熱ステップの最後の時点で行うことができる。
【0021】
冷却部140は、イオナイザー(ionizer)120と誘電加熱部130を順に通過したガラス基板1を急冷却させる(500 ~ 800 w/m2K)。冷却部140は、一例として、冷却された圧縮空気を供給する空気圧縮部と、空気圧縮部から供給される圧縮空気を噴射ノズルへ案内する空気供給管と、微噴霧(water−mist)を発生させる微噴霧(water−mist)発生部と、微噴霧(water−mist)発生部で発生した微噴霧(water−mist)を噴霧ノズルへ案内する微噴霧供給管を含んで具現することができる。ここで、微噴霧(water−mist)発生部は、水槽から水を略1.69MHzの超音波で振動分離して微噴霧(water−mist)を発生させる。
【0022】
図2は、本発明に使用される強化ガラス製造装置において、一定の波長のエネルギーを照射して、ガラス基板内に非架橋酸素(Non Bridging Oxygen)と自由電子を生成するメカニズムを説明するための例示図である。
【0023】
本来、高周波誘電加熱をガラス基板の熱強化に適用するためには、ガラス基板の高周波吸収度が活性化し得る温度雰囲気を形成及び維持しなければならない。雰囲気温度は、約350℃〜500℃が要求される。絶縁体の誘電率は、大体において高温であるほど誘電損失が増加(抵抗減少)して、高周波を加える際、内部から昇温し始める。このように、高周波吸収度を活性化するための温度雰囲気を造成するためには、別途の熱供給と時間を必要とする。
【0024】
しかし、本発明に使用される強化ガラス製造装置は、高周波誘電加熱前にイオナイザー(ionizer)を利用してガラス基板の誘電損失を引き起こさせて、高周波誘電加熱が効果的に行われるように具現される。
【0025】
図2に図示したところのように、イオナイザー(ionizer)から、たとえば、UV、x−ray、γ−ray等の電磁気波を短時間放出して、ガラス基板内のアルカリ酸化物から非架橋酸素(Nonbridging oxygen,NB0)と自由電子(e−)を生成させる。ここで、自由電子(e−)は、電子キャリア(Charge Carrier)として作用して、ガラス基板の導電率を増加させる。電子キャリア(Charge Carrier)が増加したガラス基板に高周波誘電加熱をする場合、ガラス基板1の高周波吸収度が向上して誘電加熱効果が大きく発生することになる。イオン化されたガラス基板は、イオン化されていないガラス基板に比べ、ガラス内部の温度が高く形成されて、冷却時にガラス基板の内部と表面の温度差(ΔT)が増加し、雰囲気温度(約350℃〜500℃)を形成及び維持させなくとも、十分に誘電加熱の効率を向上させることができる。
【0026】
図3は、本発明に係る強化ガラス製造方法に関するフローチャートである。
【0027】
図示したところのように、本発明に係る強化ガラス製造方法は、まず、ローディングされたガラス基板を移送する(S301)。ガラス基板は、移送ローラー、コンベヤーベルトのような接触方式により具現することもでき、空気を利用してガラス基板を空中浮揚させて移送する非接触方式により具現することもできる。
【0028】
その後、移送されたガラス基板にエネルギーを放射して、ガラス基板のアルカリ酸化物をイオン化させる(S302)。一例として、UV、x−ray又はγ−rayのいずれか一つによりガラス基板にエネルギーを放射して、ガラス基板のアルカリ酸化物をイオン化させることができる。
【0029】
その後、高周波誘電加熱を通じて、アルカリ酸化物がイオン化されたガラス基板の内部温度を上昇させる(S303)。
【0030】
その後、ガラス基板をクエンチング(quenching)させる(S304)。
【0031】
これまで、本明細書においては、本発明が属する技術分野における通常の知識を有する者が本発明を容易に理解し、再現することができるよう、図面に示した実施例を参考に説明してきたが、これは、例示的なものに過ぎず、当該技術分野における通常の知識を有する者であれば、本発明の実施例から多様な変形及び均等な他の実施例が可能であるという点を理解することができよう。したがって、本発明の真の技術的保護範囲は、添付された特許請求の範囲によってのみ定められるべきであろう。
【符号の説明】
【0032】
100 強化ガラス製造装置
110 移送部
120 イオナイザー(ionizer)
130 誘電加熱部
140 冷却部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ガラス基板をイオン化させる第1ステップ;
イオン化された前記ガラス基板を誘電加熱する第2ステップ;及び、
前記ガラス基板を冷却させる第3ステップ;
を含むことを特徴とする強化ガラス製造方法。
【請求項2】
前記第1ステップでは、前記ガラス基板内のアルカリ酸化物をイオン化させることを特徴とする、請求項1記載の強化ガラス製造方法。
【請求項3】
前記第1ステップでは、前記ガラス基板にイオナイジングラディエーション(Ionizing Radiation)を照射して前記ガラス基板をイオン化させることを特徴とする、請求項1記載の強化ガラス製造方法。
【請求項4】
前記イオナイジングラディエーションは、UV、x−ray及びγ−rayのうち少なくとも一つであることを特徴とする、請求項3記載の強化ガラス製造方法。
【請求項5】
前記誘電加熱は、前記ガラス基板の内部温度を表面温度よりも上昇させるために前記ガラス基板を高周波誘電加熱することを特徴とする、請求項1記載の強化ガラス製造方法。
【請求項6】
前記ガラス基板を空中浮揚した状態で移送しつつ、前記第1ステップないし第3ステップのうちの少なくとも一つのステップを行うことを特徴とする、請求項1記載の強化ガラス製造方法。
【請求項7】
ガラス基板をイオン化させるイオナイザー(ionizer);
前記イオナイザー(ionizer)によってイオン化された前記ガラス基板を誘電加熱する誘電加熱部;及び、
前記ガラス基板を冷却させる冷却部;
を含むことを特徴とする強化ガラス製造装置。
【請求項8】
前記イオナイザーは、前記ガラス基板のアルカリ酸化物をイオン化させることを特徴とする、請求項7記載の強化ガラス製造装置。
【請求項9】
前記イオナイザーは、イオナイジングラディエーション(Ioninzing Radiation)を前記ガラス基板に照射して前記ガラス基板をイオン化させることを特徴とする、請求項7記載の強化ガラス製造装置。
【請求項10】
前記イオナイジングラディエーションは、UV、x−ray及びγ−rayのうち少なくともいずれか一つであることを特徴とする、請求項9記載のガラス製造装置。
【請求項11】
前記誘電加熱部は、前記ガラス基板の内部温度を表面温度よりも上昇させるために前記ガラス基板を高周波誘電加熱することを特徴とする、請求項7記載の強化ガラス製造装置。
【請求項12】
前記強化ガラス製造装置は、前記ガラス基板を移送する移送部をさらに含み、
前記移送部は、前記ガラス基板を空中浮揚させる基板浮揚部;
を含むことを特徴とする、請求項7記載の強化ガラス製造装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2012−140320(P2012−140320A)
【公開日】平成24年7月26日(2012.7.26)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−288944(P2011−288944)
【出願日】平成23年12月28日(2011.12.28)
【出願人】(502411241)サムスンコーニング精密素材株式会社 (80)
【氏名又は名称原語表記】Samsung Corning Precision Materials Co.,Ltd.
【住所又は居所原語表記】644−1 Jinpyeong−dong, Gumi−si,Gyeongsangbuk−do 730−360,Korea
【Fターム(参考)】