説明

強化繊維織物の製造方法およびたて糸供給装置

【課題】
たて糸の糸長差による織物ぼこつきやよこ糸蛇行が発生しにくい強化繊維織物の製造方法。
【解決手段】
複数枚のヘルドにたて糸となる強化繊維束を1本ずつ通し、たて糸を開口させて、杼口によこ糸を打ち込む織成工程を有する強化繊維織物の製造方法であって、次の(A)〜(C)の工程を経て強化繊維束を織成工程に送出す方法。(A)強化繊維ボビンから解舒された複数の強化繊維束を、織物のたて糸として幅方向に等間隔に引き揃え位置決めする、位置決め工程(B)前記位置決め工程で、位置決めした間隔を超えない幅に強化繊維束の糸幅を規制する、第1の糸幅規制工程(C)前記引き揃えられた複数の強化繊維束を送出ローラを用いてシート状のたて糸シートとして、織成部工程に送り出す、送出工程

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、強化繊維をたて糸に有する強化繊維織物の製造方法およびその製造装置に関するものである。より詳しくは、本発明は、織物のぼこつきやよこ糸蛇行が顕著に発生しやすい一方向性織物を製造するにあたって好適な強化繊維束からなるたて糸の供給手段を改良してなる強化繊維織物の製造方法とたて糸供給装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
航空機構造部材などの高品質が要求される繊維強化ブラスチックス(FRP)の製造においては、強化繊維を中間基材の形態にして用いられることが一般的であり、その中間基材としては強化繊維を織物の形態にしたものが多用されている。織物の中でも、強化繊維束をたて糸として一方向にのみ配列して細繊度のよこ糸で織成した、いわゆる一方向性織物が土木・建築分野の補修・補強などで多く用いられている(特許文献1参照)。
【0003】
しかしながら、この一方向性織物は、強化繊維束であるたて糸がほとんど屈曲していないことから織物織成時のたて糸供給時の送り量のばらつきや、たて糸シートの開閉口時の張力変動によって生じる各たて糸の僅かな糸長差により、部分的なたて糸の盛り上がりによる織物ぼこつき(たて糸長の不揃いにより形成される不規則な凹凸状の表面状態)やよこ糸蛇行が顕在化しやすくなるという問題があり、解決が求められていた。
【0004】
上記問題に対して、織物たて糸供給方法として、強化繊維束からなるたて糸を開繊した後、ニップローラでニップしながら供給する方法が提案されている(特許文献2参照)。この方法では、たて糸を開繊しながら供給することから糸幅が拡がり、目隙きの小さい織物が得ることができる。しかしながら、特に一方向性織物を織成した際には、ぼこつきやよこ糸蛇行が顕著に発生しやすくなってしまうという問題がある。 また、強化繊維ボビンから解舒された強化繊維束からなるたて糸を、コームによりたて糸の配列位置を規制した後、2本の水平ガイドバーにS字に巻回しながら揺動させてたて糸を開繊する方法が提案されている(特許文献3参照)。この方法では、たて糸を開繊させることから、上記の特許文献2と同様に目隙の小さい強化繊維織物を得ることができる。しかしながら、この方法では、特に細繊度のよこ糸を用いた一方向性織物を織成した際には、ぼこつきやよこ糸蛇行が顕著に発生しやすくなってしまう。
【0005】
上述した従来技術では、たて糸の開繊により織物における目隙を小さくできる効果を得られるものの、織物にした場合にぼこつきやよこ糸蛇行生じやすいとともに、FRPに成形した場合、高い力学的特性が発揮できないばかりか、表面平滑性に優れた成形品を得ることができなかった。
【特許文献1】特開平10−121345号公報(図2)
【特許文献2】特開2000−226754号公報(図1)
【特許文献3】特開平7−300738号公報(図1)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明の目的は、上記従来技術の問題点を解決し、強化繊維をたて糸に有する強化繊維織物を織成するにあたって、たて糸の糸長差による織物ぼこつきやよこ糸蛇行が発生しにくい強化繊維織物の製造方法およびたて糸供給装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明者らは、強化繊維をたて糸に有する強化繊維織物の織物ぼこつきやよこ糸蛇行は、たて糸の糸長差により生じているものであろうとの仮説をたて、かかるたて糸の糸長差はたて糸の糸厚みが異なることによりガイドロール中心からの糸束中心までの半径に相違が生じ送り出し量に差が生じるために起こっているのではないかとの考えの下、たて糸の幅を制御することにより、間接的にたて糸の糸厚みを一定としたところ、解決できることを見出したものである。すなわち、本発明の強化繊維織物の製造方法は、
複数枚のヘルドフレームに組み付けられたヘルドにたて糸となる強化繊維束を1本ずつ通し、前記ヘルドフレームを上下運動することにより、たて糸を開口させて、杼口によこ糸を打ち込む織成工程を有する強化繊維織物の製造方法であって、次の(A)〜(C)の工程を経て強化繊維束を織成工程に送出することを特徴とする、強化繊維をたて糸に有する強化繊維織物の製造方法である。
(A)強化繊維ボビンから解舒された複数の強化繊維束を、織物のたて糸として幅方向に等間隔に位置決めし引き揃える、位置決め工程
(B)前記位置決め工程で、位置決めした間隔を超えない幅に強化繊維束の糸幅を規制する、第1の糸幅規制工程
(C)前記引き揃えられた複数の強化繊維束を送出ローラを用いてシート状のたて糸シートとして、織成工程に送り出す、送出工程
また、強化繊維織物の製造方法に適用する本発明のたて糸供給装置は、
強化繊維をたて糸に有する強化繊維織物を製造する装置の強化繊維ボビンを搭載するクリールと織成手段の間に設置するたて糸供給装置であって、次の(a)〜(c)の手段を有することを特徴とする、たて糸供給装置である。
(a)複数のバーもしくはワイヤがたて糸の搬送面に垂直に配置されてなる強化繊維束の位置決め手段
(b)前記(a)の位置決め手段の下流に設置された、たて糸の搬送面に垂直に配置された複数のバーもしくはワイヤと、少なくとも1本のたて糸の搬送面に平行に配置されたローラからなる強化繊維束の第1の糸幅規制手段
(c)(b)の第1の糸幅規制手段の下流に設置された、少なくとも1つのローラが駆動ローラである一対のニップローラからなる強化繊維束の送出手段
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、たて糸が重ならないように糸幅を規制しながらたて糸を織成工程に送り出すことができることから、たて糸供給量を均一化することができ、強化繊維織物におけるぼこつきやよこ糸の蛇行を抑えることができる。
【0009】
本発明の強化繊維織物の製造方法およびたて糸供給装置で得られた強化繊維織物は、強化繊維からなるたて糸の糸長差がほとんどないことから強化繊維が真直に配向されているので、FRPに成形した場合、高い強度および弾性率などの力学的特性を発現するだけでなく、織物のぼこつきのない優れた外観品位を達成することができる強化繊維織物を提供することができる。上記の効果は、一方向性織物において最大限に発揮される。
【発明を実施するための最良の形態】
【0010】
本発明の強化繊維をたて糸に有する強化繊維織物の製造方法は、複数枚のヘルドフレームに組み付けられたヘルドにたて糸となる強化繊維束を1本ずつ通し、前記ヘルドフレームを上下運動することにより、たて糸を開口させて、杼口によこ糸を打ち込む織成工程を有する強化繊維織物の製造方法であって、次の(A)〜(C)の工程を経て強化繊維束を織成工程に送出することを特徴とするものである。
(A)強化繊維ボビンから解舒された複数の強化繊維束を、織物のたて糸として幅方向に等間隔に位置決めし引き揃える、位置決め工程
(B)前記位置決め工程で、位置決めした間隔を越えない幅に強化繊維束の糸幅を規制する、第1の糸幅規制工程
(C)前記引き揃えられた複数の強化繊維束を送出ローラを用いてシート状のたて糸シートとして、織成工程に送り出す、送出工程
ここで(A)の工程はたて糸の配列位置を決めるためのものであり、たて糸を等間隔に位置決めしなければ、後工程である(B)の工程での糸幅規制工程での糸幅規制が困難となる。さらに(B)の工程により糸幅を規制することで糸幅を揃えた後、(C)の工程により、たて糸をニップしながら送り出すことで、たて糸供給量を均一化することができ、強化繊維織物におけるぼこつきやよこ糸の蛇行を抑えることができるものである。このため、これらの構成要件の一つでもかけると本発明の効果を得ることができない。
【0011】
また、本発明のたて糸供給装置は、強化繊維をたて糸に有する強化繊維織物を製造する装置の強化繊維ボビンを搭載するクリールと織成手段の間に設置するたて糸供給装置であって、次の(a)〜(c)の手段を有することを特徴とする。
(a)強化繊維ボビンを搭載するクリール装置と(b)の第1の糸幅規制手段の間に設置された、複数のバーもしくはワイヤがたて糸の搬送面に垂直に配置されてなる強化繊維束の位置決め手段
(b)前記(a)の位置決め手段と強化繊維束を次工程の張力調整工程へ送り出す送出手段の間に設置された、たて糸の搬送面に垂直に配置された複数のバーもしくはワイヤと、少なくとも1本のたて糸の搬送面に平行に配置されたローラからなる強化繊維束の第1の糸幅規制手段
(c)少なくとも1つのローラが駆動ローラである一対のニップローラからなる強化繊維束の送出手段
各手段中のたて糸の搬送面とは、前記第1の糸幅規制手段の前後のガイドローラ間において引き揃えられたたて糸が通る平面をいうものとする。
【0012】
ここで(a)の手段はたて糸の配列位置を決めるためのものであり、たて糸を等間隔に位置決めしなければ、後工程である(B)の工程において(b)の手段での糸幅規制手段での糸幅規制が困難となる。さらに(b)の手段により糸幅を規制することで糸幅を揃えた後、(c)の手段により、たて糸をニップしながら送り出すことで、たて糸供給量を均一化することができ、強化繊維織物におけるぼこつきやよこ糸の蛇行を抑えることができるものである。このため、これらの構成要件の一つでもかけると本発明の効果を得ることができない。
【0013】
以下、本発明の望ましい実施の形態について、図面を参照しながら詳細に説明する。
【0014】
図1は、本発明の強化繊維をたて糸に有する強化繊維織物の製造方法に用いるたて糸供給装置を含む製造装置の一例を示す概略側面図である。
【0015】
本発明の強化繊維織物の製造方法においては、複数の強化繊維ボビン1から解舒された複数の強化繊維束を、強化繊維織物13のたて糸2とし幅方向に等間隔に位置決めして引き揃え、ニップローラ7a,7b上で隣接するたて糸が重ならないように糸幅を規制し、たて糸シートとして、織成工程に送り出し、よこ糸11を織成工程において杼口に挿入することにより、ぼこつきやよこ糸蛇行がない強化繊維織物を得ることができるものである。
【0016】
以下、本発明の強化繊維織物の製造方法にかかる(A)位置決め工程、(B)第1の糸幅規制工程、(C)強化繊維束の送出工程、および、本発明のたて糸供給装置にかかる(a)強化繊維束の位置決め手段、(b)強化繊維束の第1の糸幅規制手段、(c)強化繊維束の送出手段について、詳細に説明する。
【0017】
(A)強化繊維束の位置決め工程と(a)強化繊維束の位置決め手段
強化繊維束の位置決め工程においては、強化繊維織物のたて糸2として、複数の強化繊維ボビン1から解舒された複数の強化繊維束を位置決め手段(図1の例では、コーム3)により幅方向に等間隔に位置決めし引き揃えることが必要である。ここで、強化繊維織物のたて糸2として幅方向に等間隔に位置決めし引き揃えるとは、たて糸2を幅方向に等間隔となる位置に平行に配列させることをさすものとし、平行および、等間隔とはその位置に対して、たて糸の間隔の±10%以内のずれは許容するものとする。
【0018】
強化繊維束(たて糸2)の位置決め手段とは、たて糸2を所定の間隔に配列させるために用いられるものであり、クリール装置と強化繊維束の第1の糸幅規制手段の間に配置される。かかる位置決め手段としては、たとえば、複数のバー(略円や矩形などの断面形状を有するもの)もしくはワイヤをたて糸の搬送面に垂直に配置した位置決め手段(所謂コーム)、溝つきローラ等が挙げられるが、コームを用いることが好ましい。コームとは、強化繊維織物のたて糸2を配列しようとする間隔と同じ間隔に複数のバーもしくはワイヤをたて糸の搬送面に垂直に配置したもので、このバー間もしくはワイヤ間にたて糸を1本ずつ通すことによって多数本のたて糸2を強化繊維織物の幅方向に対する配列位置の位置決めを行うものであり、これ用いることによりたて糸2を所望の配列密度に引き揃えることができる。ここで、配列密度とは単位長さ当たりに存在する繊維束の本数をいい、強化繊維織物のたて糸の本数から1を減じた数を、強化繊維織物の両端のたて糸の繊維束の中心の間の距離で除した値と定義する。
【0019】
なお、たて糸2が、糸厚みに対して糸幅が大きい扁平糸の場合においては、たて糸2の糸幅や糸厚みがコーム3のワイヤへの接触により、変動しやすいことから、後述する強化繊維束の第1の糸幅規制工程において糸幅を規制しやすいように、たて糸2の扁平面がコーム3のワイヤのみに接触するようにすれば、たて糸2の断面形状を保持することができる。すなわち、クリール装置から水平に引き出したたて糸の向きを位置決め工程において90°ねじることにより、コーム3のワイヤに扁平面が接触するようにし、さらに第1の糸幅規制手段においてねじれを元に戻すことにより、たて糸の扁平面がワイヤのみに接触するようにできる。
【0020】
(B)強化繊維束の第1の糸幅規制工程と(b)強化繊維束の第1の糸幅規制手段
強化繊維束の第1の糸幅規制工程においては、強化繊維織物のたて糸2として幅方向に対して等間隔になるように位置決めされ引き揃えられた複数の強化繊維束からなるたて糸2の糸幅を、前記位置決め工程で位置決めした間隔を越えない幅に規制する工程である。本工程で糸幅を規制されたたて糸2は、次工程の強化繊維束の送出工程へと導かれる。なお、ここでいう糸幅とは、強化繊維の送出工程に至るまでの最終ローラ上での糸幅のことであり、非接触のレーザ変位計などで測定時に糸幅が変化しない計測方法で測定したものである。また、本工程において、糸幅を規制するとは、幅方向に配列したたて糸2の糸幅を配列密度を超えない範囲でその幅を揃えることをさすものであり、糸幅の平均値から±10%以内の変動は許容するものとする。なお平均値とは、最終ローラ上で幅方向の同一位置における各たて糸の糸幅を、長さ方向に一定間隔で測定した値とする。このように、前記位置決め工程で位置決めした間隔を越えない幅に糸幅を規制することにより、次工程のたて糸の送出工程におけるニップローラないしテンションローラ上でたて糸が重ならずに織成工程へと送出することができるようになるのである。この強化繊維束の本工程における第1の糸幅規制手段とは、幅方向に配列したたて糸2の糸幅を配列密度を超えない範囲でその幅を揃えるための手段をさすものであり、糸幅規制工程より上流において不揃いであったたて糸の糸幅を少なくとも2本のバーの間を通過させ、所定の糸幅以上の糸幅を有するたて糸の糸幅を狭めることで各たて糸の糸幅を揃える機能を有するものである。かかる機能を有するものであれば、構造等は特に限定されないが、好ましい例として、複数のバー(好ましくは略円断面のもの)5もしくはワイヤ(図示せず)がたて糸の搬送面に垂直に配置されて、かつ、少なくとも1本のガイドローラ6が水平に配置されてなる強化繊維束の糸幅規制手段が挙げられる。図2に本発明に係る糸幅規制手段を用いて糸幅を規制する糸幅規制ガイド部分の一例を示す。この糸幅規制手段を用い、複数のバー5もしくはワイヤにたて糸を接触させながら水平なガイドローラ6に導くことにより、たて糸の糸幅を規制することができる。
【0021】
なお糸幅を規制するにあたって、用いる複数のバー5もしくはワイヤが略円断面であればバーの直径(矩形断面であればその外寸法)もしくはワイヤの直径を調整することにより、隣接するバーとバーとの間もしくはワイヤとワイヤとの間を通過するたて糸幅を規制することができる。
【0022】
またこの第1の糸幅規制手段の代表的なものとしては、コームがある。コームは、強化繊維織物のたて糸2の配列間隔と同じ間隔に複数のバーもしくはワイヤをたて糸の搬送面に垂直に配置したもので、このバー間もしくはワイヤ間にたて糸を1本ずつ通すことによって多数本のたて糸2を強化繊維織物の幅方向に対する配列位置の位置決めを行うことができ、たて糸2を所望の配列密度にすることができる。さらに、バーの直径もしくはワイヤ直径を調整することで所定の糸幅にコントロールすることができる。
【0023】
さらに本発明における好ましい態様としては、前記位置決め工程と第1の糸幅規制工程の間に、たて糸の糸幅が第1の糸幅規制工程で規制する糸幅以上になるように糸幅を拡げる開繊・拡幅工程を有することが好ましい。
【0024】
すなわち位置決めされて導かれたたて糸2を、いったん次工程の第1の糸幅規制工程で規制する糸幅以上に拡げてから、次工程の第1の糸幅規制工程に導くことができることから、より精度良くたて糸を規制する糸幅に揃えることができるため好ましい。
【0025】
この強化繊維束の開繊・拡幅工程における開繊・拡幅手段としては、中心軸が平行かつ同一水平面上にはない少なくとも2つ以上の水平ローラまたは水平バーを有する開繊・拡幅手段が挙げられる(詳細は、後述する)。そして、この少なくとも2本の水平ローラや水平ガイドバーローラにS字状にたて糸2を接触させながら通過させることにより、位置決めされて導かれたたて糸2の糸幅を拡げることができる。
【0026】
ここで、少なくとも一対のガイドローラと左右に揺動する揺動ローラについて図3を用いて説明する。図3は本発明に係る強化繊維織物を製造する装置の一例を示す部分概略側面図である。図3においては、30aと30cを一対のガイドローラとし、30bを左右に揺動する揺動ローラとすることにより、2つのガイドローラ間に位置する揺動ローラの揺動によるたて糸の糸幅を拡げることができる。さらにたて糸の開繊・拡幅が不十分であれば30a、30c、30eをガイドローラとし、30b、30dを左右に揺動する揺動ローラとするとより糸幅を調整しやすくなり、必要に応じてさらにガイドローラや揺動ローラの数を増やしていけばさらに糸幅を拡げやすくなる。
【0027】
また、たて糸2を強化繊維束の第1の糸幅規制工程に導く前に、あらかじめ50〜100℃の温度に予熱してサイジング剤を軟化させることが好ましい。このようにすることにより、たて糸2の巻き癖を取り除きことができ、後工程における仮撚りにより糸幅が小さくなることを防止することができる。
【0028】
本発明は、かかる第1の糸幅規制工程を経ることにより、たて糸2の送り出し量を揃えることができ、これによりたて糸2の糸長差発生をなくせ、従来の問題であった織物ぼこつきやよこ糸蛇行の発生を解決できることを見い出したことに大きな意義がある。背景技術に記載したように従来のたて糸の供給方法、すなわち、たて糸の開繊・拡幅処理、あるいは、このたて糸の開繊・拡幅処理とたて糸の配列ピッチを規制する方法の組み合わせのみでは、前記問題を解決することはできなかった。この理由として、従来技術の方法では、たて糸の糸幅や糸厚みを規制する手段を有していないことから各たて糸の断面形状が不揃いとなり、たて糸毎に糸幅および糸厚みに違いが生じていたものと考えられ、この糸厚みに違いが生じていたことにより、次の送出工程においてたて糸2の送り出し量をすべて揃えることができなかったものと考えられる。
【0029】
(C)強化繊維束の送出工程と(c)強化繊維束の送出手段
本発明の強化繊維束の送出工程は、第1の糸幅規制工程で隣接するたて糸同士が重ならないように糸幅を規制されて、引き揃えられた複数の強化繊維束をシート状のたて糸シートとし、織成工程に送り出す工程である。
【0030】
ここで、たて糸2の送り出し方法として、たて糸2をローラによりニップしながら送り出す方法やローラ表面にたて糸を接触させて送り出す方法がある。
【0031】
たて糸2をニップしながら送り出す方法においては、たて糸の重なりがあると糸厚みが揃わず、送り出し時にニップされる糸とニップされない糸が生じ、ニップされている糸の送り出し量は揃えることができるが、ニップされない糸はすべってしまうことから複数のたて糸2の送り出し量すべてを揃えることができない。また、ローラに接触させながらたて糸2の送り出す方法においては、たて糸の重なりによるたて糸厚みの違いによりローラに接触させた際の周長差が生じることから複数のたて糸2の送り出し量をすべて揃えることができない。
【0032】
これに対し、本発明においては、強化繊維束の位置決め工程および本強化繊維束の送出工程の間に、この第1の糸幅規制工程を有することにより、たて糸の幅を均一にし、たて糸の重なりを防止することから複数のたて糸2の糸長差発生をなくすことができるものである。
【0033】
すなわち、本発明においては、強化繊維束の位置決め工程で、強化繊維織物のたて糸2として幅方向の配列位置を規制するとともに、強化繊維束の第1の糸幅規制工程でその配列位置を保持しながら糸幅を規制することにより、強化繊維束の糸幅を揃えることができる。そして、糸幅が揃った複数のたて糸2を次工程の強化繊維束の送出工程に導くとともに、この強化繊維束の送出工程を経て複数のたて糸糸長が揃った状態でたて糸2をたて糸シートとして織成工程に導くことができることにより、たて糸2の糸長差発生をなくすことができる様になったものである。
【0034】
この強化繊維束の送出工程の好ましい態様としては、送出ローラを複数本用い、隣接するたて糸をそれぞれ異なる送出ローラに順に配置するか、または、強化繊維束が通過しているヘルドフレーム毎に順に配置することが好ましい。
このようにすることで、隣接するたて糸をそれぞれ異なる送出ローラに順に配置する場合においては、送出ロール上でのたて糸の重なりによる送り出し量の不揃いを防止することができる。また強化繊維束が通過しているヘルドフレーム毎にたて糸を配置することで、ヘルドフレーム毎にたて糸の送出量を揃えることができ、ヘルドフレームを昇降させた際に生じる張力変動を小さくすることができるからである。
【0035】
また本発明は、平織り、綾織り、繻子織りの三原組織のみならず畝織りなどの変化組織においても適用可能であり、本発明においては、畝織りとして1本のたて糸が2〜4本の強化繊維束を引き揃えたものにも適用することも可能である。ここで、2〜4本の強化繊維束を引き揃えたものを1本のたて糸とした場合の1本のたて糸とは、2〜4本の強化繊維束を同じ状態に並べたものである。
【0036】
前述のように、送出ローラを複数本用い、隣接するたて糸をそれぞれ異なる送出ローラに順に配置するか、または、強化繊維束が通過しているヘルドフレーム毎に順に配置することにより、隣接するたて糸同士がそれぞれ異なる送出ローラに導かれることから、たて糸の第1の糸幅規制工程以降でたとえ糸幅が拡がったとしても送出ローラ上でたて糸の重なり合うことを防止することができることから、1本のたて糸が2〜4本の強化繊維束を引き揃えたものである場合においてもヘルドフレームを昇降させた際に生じる張力変動を小さくすることができ、安定して本発明のたて糸長差に起因するぼこつきやよこ糸蛇行の改善効果を発揮することができる。
【0037】
この強化繊維束の送出工程の別の好ましい態様としては、たて糸シートをニップ機構を有し織機主軸の回転に連動するニップローラ7aに、90°未満の角度で接触させ、かつ、他方のニップローラ7bによりニップしながら織機主軸の回転に連動させてニップローラ7a、7bを回転させることにより、たて糸シートを織成工程に送り出す強化繊維束の送り出す態様が挙げられる。かかる態様において、織機主軸の回転に連動するニップローラ7aに、90°未満の角度で接触させ、かつ、ニップローラ7bによりニップすると、ニップローラ7aへのたて糸シートの接触角度が小さいことから、織成開始時にたて糸2の配列位置がずれていて補正が必要な場合に、たて糸2のニップを一時解放させた状態で送り出した後再度ニップすることにより、織成開始時のたて糸2のゆるみを防止するとともに、強化繊維織物の幅方向への位置のずれの修正を速やかに行うことができることから好ましい。
【0038】
本発明における送出工程のさらに、別の好ましい態様を図4を用いて説明する。図4は、本発明に係る強化繊維織物を製造するのに適用するたて糸供給装置の送出手段の他の好ましい一例を示す部分概略側面図である。図4に示す強化繊維束の送出手段を適用する場合、ローラ群41、42を用い、たて糸2との摩擦によりたて糸2の送り出し量を揃えるテンションローラ40を有し、ガイドローラ41を介して導かれたたて糸2はテンションローラ40に接触させつつガイドローラ42を経て織成工程へと導くことが好ましい。かかる態様の送出手段を適用する場合、このテンションローラ40は直径が200〜500mmで、かつ、接触角度が90〜270°の範囲であることが好ましく、かかる送り出し手段を用いた送出工程においては、たて糸2にスリップが生じないようにテンションローラ40にたて糸2を接触させるとともに、織機主軸の回転に連動させてテンションローラ40を回転させることによりたて糸シートを織成工程に送り出すことが好ましい。
【0039】
このように図4に示す送出手段を用いる場合には、テンションローラ40の直径を200mm以上と大径にすることにより、万一何らかの理由で隣接するたて糸同士で重なりが生じた場合でもテンションローラ中心からの強化繊維糸束中心までの曲率半径の相違による糸長差を小さくすることができることから好ましい。かかる観点からはテンションローラ40の直径が大きい方がより好ましいが、直径が500mmを超えるとテンションローラ40の取り扱いなど作業性の問題が生じることから、テンションローラ40の直径を200〜500mmの範囲とすることが好ましい。
【0040】
また、テンションローラ40への接触角度が90°未満であるとテンションローラ滑りを生じやすく、また接触角度が270°を超えるとテンションローラにおける滑りの問題はないものの、糸道を規制するのが困難となる場合があることから、接触角度は90°〜270°の範囲であることが好ましい。
【0041】
さらに、織機主軸の回転に合わせてテンションローラ40を回転させることにより、たて糸2に作用する張力を低減させ、過張力による毛羽発生を防止することができることから好ましい。このようなことから、ここでは、たて糸2との摩擦によりたて糸2の送り出し量を揃えるテンションローラ40を有し、このテンションローラ40の直径が200〜500mmで、かつ、接触角度が90〜270°の範囲で、たて糸2がスリップが生じないようにテンションローラ40にたて糸2を接触させるとともに、織機主軸の回転に連動させてテンションローラ40を回転させることにより、たて糸シートを織成工程に送り出す手段を有する態様とすることが好ましい。このように、強化繊維束の送出工程における強化繊維束の送出手段としては、少なくとも1つのローラが駆動ローラである機構を有していると駆動ローラの回転により強化繊維束が送り出されることからたて糸2の作用する張力を低減させ、過張力による毛羽発生を防止することができる。
【0042】
本発明における強化繊維束の送出手段としては、前記(b)強化繊維束の第1の糸幅規制手段の最下流のガイドローラの軸中心とニップローラのニップ部との成す角度、および織成手段の最上流のガイドローラの軸中心とニップローラのニップとの成す角度が、いずれも90°未満の角度となる位置に、織機主軸の回転に連動して回転するニップローラ7a、7bが配置された構成であることが好ましい。このように前記(b)強化繊維束の第1の糸幅規制手段の最下流のガイドローラの軸中心とニップローラのニップ部との成す角度、および織成手段の最上流のガイドローラの軸中心とニップローラのニップとの成す角度が、いずれも90°未満の角度となる位置に、織機主軸の回転に連動して回転するニップローラが配置された、強化繊維束を送り出す機構を有することにより、強化繊維束とローラの摩擦抵抗を小さくすることができ、また、織成開始時にニップを一時解放することにより、ローラとたて糸に滑りを生じさせることによりたて糸2の配列位置決めやたて糸張力の調整を容易にすることができることから好ましい。
【0043】
また、強化繊維束の送出手段の別の好ましい構成としては、強化繊維束の送出手段が、直径が200〜500mmのテンションローラ40を、(b)強化繊維束の糸幅規制手段a最下流のガイドローラの軸中心と前記テンションローラ40の軸中心との成す角度、および、織成手段の最上流のガイドローラの軸中心と前記テンションローラ40の軸中心との成す角度が、いずれも90〜270°の範囲となる位置に、織機主軸の回転に連動して回転するテンションローラ40が配置された強化繊維束の送り出す手段を有する構成が挙げられる。
【0044】
前述したようにテンションローラ径は200mm以上と大径にすることにより、万一何らかの理由で各強化繊維束の重なりによる糸厚みのばらつきがあったとしても、テンションローラ中心からの強化繊維糸束中心までの曲率半径の相違による糸長差を小さくすることができる。かかる理由から、テンションローラ径は大きい方が好ましいが、径が500mmを超えるとテンションローラの取り扱いなど作業性の問題が生じることから、テンションローラ径は200〜500mmの範囲であることが好ましい。
【0045】
また、テンションローラ40への接触角度は90°未満であると、テンションローラ滑りを生じやすく、270°を超えるとテンションローラ40における滑りの問題はないものの糸道を規制するのに困難であることから、その接触角度は90°〜270°の範囲であることが好ましい。
【0046】
さらに、織機主軸の回転に合わせてテンションローラ40を回転させることによりたて糸2の作用する張力を低減させ、過張力による毛羽発生を防止することができることから好ましい。
【0047】
このようなことから、たて糸シートを織機主軸の回転に連動する直径が200〜500mmの送出ローラに接触角度が90〜270°の範囲で、該送出ローラを回転させることにより織成工程に送り出す構成であることが好ましい。本発明においては(C)の送出工程と織成工程の間に、次の(D)第2の糸幅規制工程を有することが好ましい。
【0048】
(D)接触ローラ上で強化繊維束同士がその厚み方向に重ならない糸幅に規制する、第2の糸幅規制工程
本発明においては、強化繊維束の送出工程と織成工程の間に、さらに第2の糸幅規制工程を有することにより、送出工程から織成工程までの間においてもたて糸の重なりを防止することができ、より安定して複数のたて糸2の糸長差発生をなくすことができる。
【0049】
すなわち、本発明においては、強化繊維束の第1の糸幅規制工程で、その配列位置を保持しながら糸幅を規制し、さらに強化繊維束の送出工程を挟んだ次工程の第2の糸幅規制工程でその配列位置を保持しながら糸幅を規制することにより、強化繊維束の糸幅をよりいっそう安定して揃えることができる。このため、糸幅が揃った複数のたて糸2を強化繊維束の送出工程に導くとともに、この第2の強化繊維束の送出工程を経て複数のたて糸長が揃った状態でたて糸2をたて糸シートとして織成工程に導くことができる。
【0050】
この強化繊維束の第2の糸幅規制工程における第2の糸幅規制手段としては、第1の糸幅規制手段と同様に、複数のバーもしくはワイヤがたて糸の搬送面に垂直に配置されて、かつ、少なくとも1本のローラが水平に配置されてなる強化繊維束の第2の糸幅規制手段が挙げられる。そして、複数のバーもしくはワイヤにたて糸を接触させながら水平ガイドバーに導くことにより、たて糸幅を規制することができる。
【0051】
糸幅を規制する第2の糸幅規制手段においては、複数のバーもしくはワイヤをたて糸の搬送面に垂直に等間隔に配置するとともに、略円断面のバーであればバーの直径を、矩形断面のバーであればその外寸法を調整することにより、隣接するバーとバーとの間もしくはワイヤとワイヤとの間を通過するたて糸幅を規制することができる。
【0052】
またこの第2の糸幅規制手段の代表的なものとしては、前述のコームが挙げられる。
【0053】
なお、ここでいう接触ローラとは、後述するイージングによる張力調整機構を有さない場合においては織成工程に至るまでの最終水平ローラのことであり、イージングによる張力調整工程を有する場合においては、張力調整工程の最初の水平ローラのことである。
【0054】
織成工程においては、強化繊維束の送出工程から導かれたたて糸2(2a、2b)を開口し、よこ糸ボビン10から解舒されたよこ糸11を杼口に打ち込んで強化繊維織物13を織成する。そして、強化繊維織物13は、引取ガイドローラ15、16、18と、引取ローラ17に接触しながら引き取られ、巻芯19に巻き取られ巻物20となる。
【0055】
杼口によこ糸11を挿入する方法としては、シャトル、レピア、グリッパ、エアージェットあるいはウォータジェットなどの手段によって、よこ糸ボビン10から解舒されたよこ糸11が打ち込まれる。そして、よこ糸11は、次いで筬12によって筬打されて、ヘルドフレーム(9a、9b)が再び上下運動して閉口し、強化繊維織物13が織成される。 また、一般に織成工程においては、よこ糸挿入のためこれら複数のたて糸2をヘルドフレーム(9a、9b)毎に開閉口運動させることから張力の変動が生じ、この開閉口運動時にたて糸2の糸長差があれば糸長が短い糸に極端に張力が付与されるが、過大な張力が付与されたたて糸2は送り出し量が多くなり糸長差の拡大が顕著となる。本発明では、第1の糸幅規制工程を有することにより、前述したように、たて糸2の糸長差が抑制されているため本織成工程においてこの糸長差が拡大することが押さえられる。本発明の強化繊維織物の製造方法において、この織成工程に、たて糸シートの開閉口部にたて糸シートの横方向全幅にわたってたて糸2を押さえる押さえガイド14を設けることも好ましい。かかる押さえガイド14を用いることにより、細繊度で曲げ剛性の小さいよこ糸11を用いた場合においてたて糸2の開閉口時の張力が勝る場合に、よこ糸11が屈曲し蛇行することを防止することができることから好ましい。
【0056】
ここで、織成手段としては、たて糸2を開口する開口手段と、杼口によこ糸11を打ち込むよこ糸打ち込み手段とを有するものである。本発明は、強化繊維織物のぼこつきやよこ糸蛇行の発生を抑え、FRPにした場合に優れた力学的特性を発揮できる強化繊維織物の製造方法およびその製造装置を提供することにあり、少なくとも、たて糸2に強化繊維を用いるものである。
【0057】
また、本発明における好ましい実施態様としては、前記(C)の送出工程と織成工程の間に、次の(E)の工程を有する。((D)の第2の糸幅規制工程を有する場合は、(D)の前後いずれでも良い)
(E)引き揃えられた強化繊維束への後述のヘルドフレームの開閉口による張力変動を、強化繊維束が通過する接触ローラとそのローラ軸を平行移動させる機構を有する、イージングによる張力調整工程
この強化繊維束の張力調整工程においては、強化繊維束の送出工程から導かれたたて糸シートに関して、ヘルドフレーム(9a、9b)の開閉口による前記強化繊維束の張力変動を接触ローラ(イージングローラ)がローラ軸と平行移動するイージング機構により緩和し、ガイドローラ8を経て次工程である織成工程に導くことで強化繊維束に作用する張力を調整することができるためさらに好ましい。
【0058】
イージング機構による張力調整工程を有することにより、次工程の織成工程でよこ糸11が挿入される際のたて糸2への過剰な張力作用による局所的なたて糸2の突っ張りを抑制することができ、これに伴ってよこ糸蛇行やたて糸毛羽発生を防ぐことができる。
【0059】
また、本発明における別の好ましい態様としては、たて糸2のヘルドフレーム(9a、9b)毎に異なるイージングローラに接触させ、これらのローラのそれぞれが独立してローラ軸と平行移動によるイージング機構により張力調整を行う手段が含まれる。このようにすることにより、上下動するヘルドフレーム毎に張力調整ができることから、いずれの織組織においても安定して張力変動を緩和することができることから好ましい。
【0060】
本発明で用いられるこの強化繊維としては、例えば、炭素繊維、ガラス繊維およびアラミド繊維などを用いることができる。強化繊維としては、比強度・比弾性率に優れている炭素繊維が好ましく、なかでも、繊維直径が5〜10μのポリアクリルニトリル系の炭素繊維で、引張強度が3〜7GPaであり、引張弾性率が200〜500GPaのマルチフィラメント(繊維束)とすることにより、より高い力学的特性を発揮するFRPが得られる。
【0061】
本発明で好ましく用いられる炭素繊維束のたて糸またはよこ糸としての総繊度は、400〜5,000テックスの範囲であることが好ましい。総繊度がこの範囲であると、400テックスを超える繊度の大きい炭素繊維束の場合、たて糸の重なりを防止した効果が顕著に発揮され、本発明の効果が十分に発揮される。また、炭素繊維束は、一般に総繊度が大きくなるほど製造コストを安価にすることができるため、低コストの強化繊維織物基材を提供できるという利点もある。
【0062】
炭素繊維束の総繊度が400テックスより小さいと、たて糸の重なりによる影響が顕著に出にくく、かつ、たて糸の屈曲箇所が多くなり、各たて糸の糸長差が発生してもこの屈曲により糸長差の影響が緩和され、ぼこつきやよこ糸蛇行が発生しにくくなり、本発明の意義が希薄となる傾向がある。また、総繊度が5,000テックスを超えると、糸幅を均一に規制することができなくはないが、繊維分散が均一な強化繊維織物が得られ難く、力学的特性を十分に発揮させる強化繊維織物を得ることが難しい場合があり、好ましくない。
マルチフィラメントの本数は、好ましくは6,000本〜75,000本程度である。
【0063】
本発明で製造される強化繊維織物は、強化繊維糸条が二方向に配列された、いわゆる二方向性織物であってもよいが、よこ糸に補助糸を用いた、いわゆる一方向性織物で、かつ、よこ糸の総繊度がたて糸の総繊度の1/10以下である強化繊維織物であることが好ましい。その理由は、補助糸はたて方向に配列した強化繊維束がばらけないように一体化するためのものであることから、ばらけない範囲でできるだけ細いことが好ましく、このような強化繊維織物においては、よこ糸の総繊度が小さいことから曲げ剛性が小さく、たて糸長差による強化繊維織物のぼこつきが顕著に発生しやすく、本発明の効果が効果的に発現されるからである。
また、補助糸の材料としては、ポリエステル繊維、ナイロン繊維、ポリアラミド繊維、ビニロン繊維、ガラス繊維、および炭素繊維などから選択することができ、ガラス繊維に低融点ナイロン繊維を引き揃えやカバリングするなどした複合糸であってもよい。
【0064】
また、よこ糸に強化繊維を用いる場合は、前述のものの中でも、たて糸の1/5以下の総繊度である糸を用いた一方向性織物の形態であることが好ましい。たて糸よりもよこ糸が細い場合、特によこ糸の蛇行や目曲がりが顕著に発現するため、本発明の効果が最大限に発現することができることから好ましい。
【0065】
本発明で用いられる織物組織は特に限定されないが、少なくとも強化繊維からなる糸条をたて糸とした平織、綾織、朱子織、あるいはノンクリンプ組織(強化繊維糸が真っ直ぐに配向し、たて糸とよこ糸の補助糸が互いに交錯して一体化された組織)などが好ましく用いられる。
【0066】
本発明で得られる強化繊維織物は、構造物の補修・補強、輸送機器(自動車、船舶、航空機および自転車など)、スポーツ用品およびFRP型をはじめ、その他の一般産業に用いられるFRPの強化材として好適に用いられる。
【実施例】
【0067】
(実施例1)
たて糸(強化繊維束)として、引張強度が4,900MPa、引張弾性率が230GPa、フィラメント数が12,000本のポリアクリロニトリル(PAN)系炭素繊維束からなる糸条(総繊度:800テックス)を用い、よこ糸として、ガラス繊維糸ECE225 1/0(総繊度:22.5テックス)を用いた。図1に示した装置を用いて、以下の手順により、たて糸のみが炭素繊維束から構成される一方向性織物Aを製造した。
(A)強化繊維束の位置決め工程において、まず、強化繊維ボビン1から引き出した複数本のたて糸2を、コーム3を用いて配列密度が2.5本/cmになるように強化繊維織物のたて糸として実質的に等間隔になるように位置決めした。
(B)強化繊維束の第1の糸幅規制工程においては、位置決め工程から導いたたて糸2を、図2に示すようにたて糸の搬送面に垂直方向に平行に配列したガイドバーを通過させ、糸幅が3.5mmになるように糸幅を規制した。ここで使用した金属製のガイドバーは、いずれも直径2mmのガイドバーとした。
(C)強化繊維束の送出工程において、強化繊維束の第1の糸幅規制工程から導いたたて糸を直径15cmの2本のニップローラ(7a、7b)で、たて糸が滑らないようにニップしながら織機の引き取り速度と同じになるように送り出した。ニップローラは、一方(7a)が金属で他方(7b)が硬質ウレタンゴムを表面にコーティングしたローラであり、たて糸のニップローラへの接触角度は10°であった。
織成工程において、強化繊維束の送出工程から導かれたたて糸を、2枚のヘルドフレーム(9a、9b)のそれぞれのヘルド(9c、9d)に分けて交互に通した。そして、2枚のヘルドフレーム(9a、9b)のそれぞれのヘルドに通したたて糸(2a、2b)が開口されたとき、杼口にレピアにて密度が3.0本/cmになるように、よこ糸ボビン10から解舒されたよこ糸11を打ち込み、筬12により筬打ちすることにより、炭素繊維目付が200g/mの平組織の強化繊維織物13を織成し、引取ガイドローラ15、16、引取ローラ17、および引取ガイドローラ18を介して、強化繊維織物13を巻芯19に巻き取って巻物20を得た。ここで、送出ローラ上で隣接するたて糸の重なりは観察されなかった。
【0068】
得られた一方向性織物Aは、ニップローラにたて糸を導く前に糸幅を規制したことからニップローラ上でのたて糸の重なりが生じることがなく、巻取り後の強化繊維織物において、ぼこつきおよびよこ糸の蛇行(組織崩れ)が全く観察されなかった。得られた一方向性織物Aの概略平面図を図5に示す。図5において、たて糸の炭素繊維束52に対してよこ糸51が蛇行することなく等間隔に引き揃えられており、組織の崩れが認められない。
【0069】
(実施例2)
実施例1における(C)強化繊維束の送出工程と織成工程の間に(D)第2の糸幅規制工程を設けた他は実施例1と同じようにして一方向織物Bを得た。
【0070】
ここで、(D)第2の強化繊維束の糸幅規制工程においては、送出工程から導いたたて糸2を、図1の第1の糸幅規制工程と同じようにたて糸の搬送面に垂直方向に平行に配列したガイドバーを通過させ、糸幅が3.5mmになるように糸幅を規制した。ここで使用した金属製のガイドバーは、いずれも直径2mmのガイドバーとした。また、ガイドローラ上で隣接するたて糸の重なりは観察されなかった。
【0071】
得られた一方向性織物Bは、ニップローラ前後に糸幅規制工程を設けたことにより、たて糸の重なりが生じることがなく、巻取り後の強化繊維織物において、ぼこつきおよびよこ糸の蛇行(組織崩れ)が全く観察されなかった。
【0072】
(実施例3)
実施例1の(C)強化繊維束の送出工程と織成工程の間に(E)イージングによる張力調整工程を設けるとともに、送出ローラおよびイージングローラをそれぞれ2本準備した。そして、ヘルドフレーム毎に強化繊維束を送出ローラ、ヘルドフレーム、イージングに順に配置した他は実施例1と同じようにして一方向織物Cを得た。
ここで、(E)イージングによる強化繊維束の張力調整工程において、たて糸送出工程から送り出されたたて糸を、ヘルドフレーム毎にそれぞれ異なるイージングローラに接触させることにより、たて糸シートの開閉口による張力変動を緩和させた。
【0073】
得られた一方向性織物Cは、ニップローラにたて糸を導く前に糸幅を規制したことからニップローラ上でのたて糸の重なりが生じることがなく、かつ、たて糸シートの開閉口による張力変動を緩和させたことから巻取り後の強化繊維織物において、ぼこつきおよびよこ糸の蛇行(組織崩れ)が全く観察されなかった。
【0074】
(実施例4)
実施例1において、隣接する強化繊維束3本を引き揃えて1本のたて糸とするとともに、送出ローラを3本準備し、引き揃えた3本の強化繊維束をそれぞれ異なる送出ローラに順に配置した他は実施例1と同じようにして一方向織物Dを得た。
【0075】
得られた一方向性織物Dは、3本の強化繊維束を引き揃えて1本のたて糸としたものの隣接する強化繊維束をそれぞれ異なるニップローラに順に配置したことからニップローラ上でのたて糸の重なりが生じることがなく、巻取り後の強化繊維織物において、ぼこつきおよびよこ糸の蛇行(組織崩れ)が全く観察されなかった。
【0076】
(実施例5)
実施例1の(A)強化繊維束の位置決め工程と(B)第1の糸幅規制工程の間に開繊・拡幅工程を設けた他は実施例1と同じようにして一方向織物Eを得た。
ここで、開繊・拡幅工程においては、位置決め工程から導いたたて糸2を、図3に示すように前後および上下方向に交互に配列させた金属製の5本のガイドローラ(30a、30b、30c、30d、30e)からなる屈曲パスに、たて糸を接触させながら糸幅を拡げた後、第1の糸幅規制工程で糸幅の調整を行った。開繊・拡幅工程で用いた金属製のガイドローラは、いずれも直径30mmのガイドローラとした。 得られた一方向性織物Eは、ニップローラにたて糸を導く前にたて糸をいったん開繊・拡幅した上で糸幅を規制したことから狭幅糸を解消することができるとともに、ニップローラ上でのたて糸の重なりが生じることがなく、巻取り後の強化繊維織物において、ぼこつきおよびよこ糸の蛇行(組織崩れ)が全く観察されなかった。
【0077】
(実施例6)
強化繊維束の強化繊維束送出工程において、図4に示すようにニップローラのかわりに直径が300mmのテンションローラ40に、たて糸を接触角度が200°になるように接触させながら送り出した他は、実施例1と同じようにして一方向性織物Fを製造した。
【0078】
得られた一方向性織物Fは、テンションローラにたて糸を導く前に糸幅を規制したことからたて糸の重なりを防止することができ、かつ、テンションローラでたて糸がスリップすることなく送り出すことができたことから巻取り後の強化繊維織物において、ぼこつきおよびよこ糸の蛇行(組織崩れ)が全く観察されなかった。
【0079】
(実施例7)
織成工程において、たて糸シートの開閉口部にたて糸シートの横方向全幅にわたってたて糸を押さえる直径が10mmの円筒状押さえガイドを設けた他は、実施例1と同じようにして一方向性織物Gを製造した。
【0080】
得られた一方向性織物Gは、ニップローラにたて糸を導く前に糸幅を規制したことからニップローラ上でのたて糸の重なりが生じることがなく、かつ、よこ糸挿入後のたて糸シートの開閉口にともなうよこ糸の屈曲をたて糸シートの横方向全幅にわたって押さえガイドとの接触により抑制したことから巻取り後の強化繊維織物において、ぼこつきおよびよこ糸の蛇行(組織崩れ)が全く観察されなかった。
【0081】
(実施例8)
たて糸およびよこ糸に、引張強度が4,900MPa、引張弾性率が230GPa、フィラメント数が12,000本のPAN系炭素繊維束からなる糸条(総繊度:800テックス)を強化繊維として用い、下記の手順により、たて糸およびよこ糸が炭素繊維から構成される二方向性織物Hを製造した。
(A)強化繊維束の位置決め工程においては、たて糸密度を1.2本/cmとした他は、実施例1と同様に実施した。
(B)強化繊維束の第1の糸幅規制工程は、糸幅を7.8mmに規制した他は実施例1と同様に実施した。
(C)強化繊維束の送出工程は、実施例1と同様に実施した。
織成工程は、よこ糸をたて糸と同じ炭素繊維束を用いるとともに、よこ糸密度が1.2本/cm、炭素繊維目付が190g/m平組織の強化繊維織物とした他は、実施例1と同様に実施した。
得られた二方向性織物Hは、ニップローラにたて糸を導く前に糸幅を規制したことからニップローラ上でのたて糸の重なりが生じることがなく、巻取り後の強化繊維織物において、ぼこつきおよびよこ糸の蛇行(組織崩れ)が全く観察されなかった。
【0082】
(比較例1)
強化繊維束の位置決め工程および第1の糸幅規制工程を有さず、糸幅を規制しなかった他は、実施例1と同じようにして一方向性織物Iを製造した。
【0083】
得られた一方向性織物Iは、たて糸の配列位置および糸幅を規制していないことからガイドローラ上でたて糸の重なりが発生したことで糸厚みにばらつきが生じ、強化繊維束の送出工程において、ニップされるたて糸とニップされないたて糸が生じたことにより糸長差が生じ巻取り後の強化繊維織物において、ぼこつきとよこ糸の蛇行(組織崩れ)が生じていた。得られた一方向性織物Iの概略平面図を、図6に示す。図6において、たて糸の炭素繊維束54に対してよこ糸53が蛇行し、組織の崩れが認められる。
【0084】
(比較例2)
強化繊維束の第1の糸幅規制工程を有さず、糸幅を規制しなかった他は、実施例1と同じようにして一方向性織物Jを製造した。
【0085】
得られた一方向性織物Jは、たて糸の糸幅を規制していないことからガイドローラ上でたて糸の重なりが発生したことで糸厚みにばらつきが生じ、強化繊維束の送出工程において、ニップされるたて糸とニップされないたて糸が生じたことにより糸長差が生じ巻取り後の強化繊維織物において、ぼこつきとよこ糸の蛇行(組織崩れ)が生じていた。
【0086】
(比較例3)
第1の糸幅規制工程およびニップローラによる強化繊維束の送出手段を用いなかった他は、実施例5と同じようにして一方向性織物Kを製造した。
【0087】
得られた一方向性織物Kは、たて糸の糸幅を規制したものの、たて糸送出工程を有さなかったことから、たて糸の送り出し量が不揃いとなったことにより、糸長差が生じ、巻取り後の強化繊維織物において、ぼこつきとよこ糸の蛇行(組織崩れ)が生じていた。
【0088】
上記の各実施例および各比較例の結果を、表1にまとめて示す。
【0089】
【表1】

【産業上の利用可能性】
【0090】
本発明の強化繊維織物の製造方法によれば、たて糸の糸幅を規制した後、たて糸の送出工程にたて糸を導くことから送出工程におけるローラ上でたて糸が重なることがないことからたて糸の送り出し量を揃えることで、たて糸糸長差の発生を抑制することができ、強化繊維織物のぼこつきやよこ糸の蛇行(組織崩れ)を抑えることができる。本発明の強化繊維織物の製造方法で得られた強化繊維織物は、強化繊維が真直に配向されているので、FRPに成形した場合、高い強度および弾性率などの力学的特性を発現するだけでなく、優れた外観品位を達成することができる。かかる強化繊維織物は、構造物の補修・補強、輸送機器(自動車、船舶、航空機および自転車など)、スポーツ用品およびFRP型をはじめ、その他の一般産業に用いられるFRPの強化材として好適に用いられる。
【図面の簡単な説明】
【0091】
【図1】本発明の強化繊維織物の製造方法に適用する装置の一例を示す概略側面図である。
【図2】本発明の強化繊維織物の製造方法に適用する糸幅規制ガイド部分の一例を示す概略斜視図である。
【図3】本発明の強化繊維織物の製造方法に適用する装置のガイドローラ部分の一例を示す概略側面図である。
【図4】本発明の強化繊維織物の製造方法に適用する装置のテンションローラ部分の一例を示す概略側面図である。
【図5】実施例1により製造された強化繊維織物の織組織を示す概略平面図である。
【図6】比較例1により製造された強化繊維織物の織組織を示す概略平面図である。
【符号の説明】
【0092】
1: 強化繊維ボビン
2、2a、2b: たて糸
3: コーム
4、6、8: ガイドローラ
5: 糸幅規制ガイド
7a、7b: ニップローラ
9: 開口装置
9a、9b: ヘルドフレーム
9c、9d: ヘルド
10: よこ糸ボビン
11: よこ糸
12: 筬
13: 強化繊維織物
14: 押さえガイド
15、16、18: 引取ガイドローラ
17: 引取ローラ
19: 巻芯
20: 巻物
30、30a、30b、30c、30d、30e、30f、30g:
ガイドローラ(揺動ローラ)
40: テンションローラ
41、42: ガイドローラ
51、53: よこ糸
52、54: 炭素繊維束

【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数枚のヘルドフレームに組み付けられたヘルドにたて糸となる強化繊維束を1本ずつ通し、前記ヘルドフレームを上下運動することにより、たて糸を開口させて、杼口によこ糸を打ち込む織成工程を有する強化繊維織物の製造方法であって、次の(A)〜(C)の工程を経て強化繊維束を織成工程に送出することを特徴とする、少なくとも強化繊維をたて糸に有する強化繊維織物の製造方法。
(A)強化繊維ボビンから解舒された複数の強化繊維束を、織物のたて糸として幅方向に等間隔に位置決めし、引き揃える、位置決め工程
(B)前記位置決め工程で、位置決めした間隔を超えない幅に強化繊維束の糸幅を規制する、第1の糸幅規制工程
(C)前記引き揃えられた複数の強化繊維束を送出ローラを用いてシート状のたて糸シートとして、織成工程に送り出す、送出工程
【請求項2】
前記(C)の送出工程と織成工程との間に、次の(D)の工程を有する、請求項1記載の強化繊維織物の製造方法。
(D)前記位置決め工程で、位置決めした間隔を超えない幅に糸幅を再度規制する、第2の糸幅規制工程
【請求項3】
前記(C)の送出工程において、送出ローラを複数本用い、隣接するたて糸をそれぞれ異なる送出ローラに順に配置するか、または、織成工程において強化繊維束が通過しているヘルドフレーム毎に順に配置する、請求項1または2に記載の強化繊維織物の製造方法。
【請求項4】
2〜4本の強化繊維束を引き揃えたものを1本のたて糸として用いる、請求項1〜3のいずれかに記載の強化繊維織物の製造方法。
【請求項5】
前記(C)の送出工程が、たて糸シートをニップする機構を有し、織機主軸の回転に連動する送出ローラに、90°未満の角度で接触させて該送出ローラを回転させることにより、送り出す工程である、請求項1〜4のいずれかに記載の強化繊維織物の製造方法。
【請求項6】
前記(C)の送出工程が、たて糸シートを織機主軸の回転に連動する直径が200〜500mmの送出ローラに接触角度が90〜270°の範囲で、接触させて該送出ローラを回転させることにより、送り出す工程である、請求項1〜4にいずれかに記載の強化繊維織物の製造方法。
【請求項7】
強化繊維をたて糸に有する強化繊維織物を製造する装置の強化繊維ボビンを搭載するクリールと織成手段の間に設置するたて糸供給装置であって、次の(a)〜(c)の手段を有することを特徴とする、たて糸供給装置。
(a)複数のバーもしくはワイヤがたて糸の搬送面に垂直に配置されてなる強化繊維束の位置決め手段
(b)前記(a)の位置決め手段の下流に設置された、たて糸の搬送面に垂直に配置された複数のバーもしくはワイヤと、少なくとも1本のたて糸の搬送面に平行に配置されたローラからなる強化繊維束の第1の糸幅規制手段
(c)(b)の第1の糸幅規制手段の下流に設置された、少なくとも1つのローラが駆動ローラである一対のニップローラからなる強化繊維束の送出手段
【請求項8】
前記(c)の送出手段の後に、次の(d)の手段を有する請求項7に記載のたて糸供給装置。
(d)少なくとも複数のバーもしくはワイヤがたて糸の搬送面に垂直に配置されてなる強化繊維束の第2の糸幅規制手段
【請求項9】
前記(c)の送出手段が、複数の送出ローラから構成されてなる請求項7ないし8記載のたて糸供給装置。
【請求項10】
前記(c)の強化繊維束の送出手段が、強化繊維束の糸幅規制手段aにおける最下流のローラの軸中心とニップローラのニップ部との成す角度、および、強化繊維束の送出工程における最終ガイドローラの軸中心とニップローラのニップ部との成す角度とが、それぞれ90°未満の角度となる位置に、織機主軸の回転に連動して回転するニップローラが配置された構成のものである請求項7ないし9のいずれかに記載のたて糸供給装置。
【請求項11】
前記(c)の強化繊維束の送出手段が、直径が200〜500mmのテンションローラを、強化繊維束の糸幅規制手段aにおける最下流のローラの軸中心と前記テンションローラの軸中心との成す角度、および、強化繊維束の送出工程における最終ガイドローラの軸中心と前記テンションローラの軸中心との成す角度とが、それぞれ90〜270°の範囲となる位置に、織機主軸の回転に連動して回転するテンションローラが配置された構成のものである請求項7ないし9のいずれかに記載のたて糸供給装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2008−240185(P2008−240185A)
【公開日】平成20年10月9日(2008.10.9)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−80988(P2007−80988)
【出願日】平成19年3月27日(2007.3.27)
【出願人】(000003159)東レ株式会社 (7,677)
【Fターム(参考)】