説明

強磁場小型超電導マグネット

【課題】 個々の超電導材料のJcB(磁場下における特性臨界磁場特性)とその配置の双方を決定することによって、発生磁場を飛躍的に向上させることができる強磁場小型超電導マグネットを提供する。
【解決手段】 強磁場小型超電導マグネットにおいて、第1の高温超電導バルク体31と、この第1の高温超電導バルク体31上に積層されるガドリニウム系の第2の高温超電導バルク体32と、このガドリニウム系の第2の高温超電導バルク体32上に積層されるガドリニウム系の第3の高温超電導バルク体33と、このガドリニウム系の第3の高温超電導バルク体33上に積層される第4の高温超電導バルク体34とを具備する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、強磁場小型超電導マグネットに係り、特に、直線的で均一な強い磁場を発生できる強磁場小型超電導マグネットに関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、高温超電導バルク体の機械的特性向上の研究が行われており、樹脂含侵により発生磁場の安定化を図るようにしている(下記特許文献1参照)。
また、高磁場における発熱除去対策の研究が行われており、金属含侵により高温超電導で世界最高記録を達成している(下記特許文献2参照)。
また、本発明者らにより、「環状YBCOの永久モードマグネット」(下記非特許文献1参照)について開示され、マイクロNMR用永久マグネットとしての適用が行われている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特許第3144675号公報
【特許文献2】特許第3858221号公報
【非特許文献】
【0004】
【非特許文献1】IEEE TRANSACTIONS ON APPLIED SUPERCONDUCTIVITY,VOL.15,NO.2 JUNE 2005,pp.2352〜2355
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
これまで、高温超電導バルク体やプレート状の高温超電導マグネットからなる薄い層状の環状マグネットを使うことによって、磁場の捕捉は積層数に応じて変わると考えられていた。
本発明は、個々の超電導材料のJcB(磁場下における特性臨界磁場特性)とその配置の双方を決定することによって、発生磁場を飛躍的に向上させることができる強磁場小型超電導マグネットを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は、上記目的を達成するために、
〔1〕強磁場小型超電導マグネットにおいて、第1の高温超電導バルク体と、この第1の高温超電導バルク体上に積層されるガドリニウム系の第2の高温超電導バルク体と、このガドリニウム系の第2の高温超電導バルク体上に積層されるガドリニウム系の第3の高温超電導バルク体と、このガドリニウム系の第3の高温超電導バルク体上に積層される第4の高温超電導バルク体とを具備することを特徴とする。
【0007】
〔2〕上記〔1〕記載の強磁場小型超電導マグネットにおいて、前記第1乃至第4の高温超電導バルク体は、積層後の寸法が外径87mm、内径48mm、高さ22mmである、樹脂含浸を施した環状の高温超電導バルク体であることを特徴とする。
〔3〕上記〔1〕又は〔2〕記載の強磁場小型超電導マグネットにおいて、前記積層した高温超電導バルク体を大気圧下で液体窒素冷却することにより、直線的で均一な2テスラレベルの磁場空間を発生させる永久マグネットとすることを特徴とする。
【0008】
〔4〕上記〔3〕記載の強磁場小型超電導マグネットにおいて、前記永久マグネットをマイクロNMR用永久マグネットとして用いることを特徴とする。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、少ない個数の積層された高温超電導バルク体で空間に高品質の磁場、つまり、直線的で均一な磁場を発生することができる。また、小型で簡易輸送が可能であり、低温下での使用に適した、強い磁場を発生させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【図1】本発明にかかる樹脂含浸を施した高温超電導バルク体の磁場測定の様子を示す模式図である。
【図2】本発明に係る高温超電導バルク体の積層数(1〜3)と半径方向距離に対する磁場値を示す図である。
【図3】本発明に係る高温超電導バルク体の積層数(1〜10)と高さ方向距離に対する磁場値を示す図である。
【図4】本発明の4個積層された高温超電導バルク体による強磁場小型超電導マグネットを示す図である。
【図5】本発明の4個積層された高温超電導バルク体による強磁場小型超電導マグネットの高さ方向距離に対する磁場値を示す図である。
【図6】本発明の4個積層された高温超電導バルク体による強磁場小型超電導マグネットの半径方向距離に対する磁場値を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
本発明の強磁場小型超電導マグネットは、第1の高温超電導バルク体と、この第1の高温超電導バルク体上に積層されるガドリニウム系の第2の高温超電導バルク体と、このガドリニウム系の第2の高温超電導バルク体上に積層されるガドリニウム系の第3の高温超電導バルク体と、このガドリニウム系の第3の高温超電導バルク体上に積層される第4の高温超電導バルク体とを具備する。
【実施例】
【0012】
以下、本発明の実施の形態について詳細に説明する。
図1は本発明にかかる樹脂含浸を施した高温超電導バルク体の磁場測定の様子を示す模式図である。
複数個の樹脂含浸を施した高温超電導バルク体1(ここでは2個)を積層し、その内径rの中心位置にホール素子2を配置して、磁場の測定を行うようにしている。なお、この測定では、内径rの中心位置を0として半径方向の距離を示し、高温超電導バルク体を積層した高さの1/2の位置を0として高さ方向の距離を示している。
【0013】
図2は本発明に係る高温超電導バルク体の積層数(1〜3)と半径方向距離に対する磁場値を示す図、図3は高温超電導バルク体の積層数(1〜10)と高さ方向距離に対する磁場値を示す図である。
図2に示すように、高温超電導バルク体を複数個積層することによって、より均一な磁場を得られることがわかる。
【0014】
また、図3において、11〜20は高さ方向の磁場分布の解析値を示しており、11は環状の高温超電導バルク体が1層の場合、以下、環状の高温超電導バルク体がそれぞれ、12は2層の場合、13は3層の場合、14は4層の場合、15は5層の場合、16は6層の場合、17は7層の場合、18は8層の場合、19は9層の場合、20は10層の場合を示している。また、21〜23は1層〜3層の場合の実測値である。図3に示すように、高温超電導バルク体の積層数を増やすことによって、より強い磁場を発生させることできることがわかる。
【0015】
このように、高温超電導バルク体を複数個積層することによって、均一で強い磁場を得られることがわかった。
図4は本発明の4個積層された高温超電導バルク体による強磁場小型超電導マグネットを示す図、図5はその強磁場小型超電導マグネットの高さ方向距離に対する磁場値を示す図、図6はその強磁場小型超電導マグネットの半径方向距離に対する磁場値を示す図である。
【0016】
図4に示すように、第1の高温超電導バルク体31、ガドリニウム系(Ga−B−Cu−O)の第2の高温超電導バルク体32、ガドリニウム系(Ga−B−Cu−O)の第3の高温超電導バルク体33、第4の高温超電導バルク体34を積層した。ここでは、内径は48mm(樹脂層を除くと50mm)、外径は87mm(80mm)、高さは22mm(20mm)である。
【0017】
図5及び図6から明らかなように、中心の2個にガドリニウム系高温超電導バルク体を用いた本発明の強磁場小型超電導マグネットによって、直線的で均一な強い磁場空間35を少数の高温超電導バルク体で発生させることができる。
上記したように、環状に加工した外径87mmの超電導バルク体を積層し、大気圧下で液体窒素冷却することによって、48mm径の空間に2.02テスラの安定した磁場空間が得られることを実証した。なお、本発明によれば、少数の高温超電導バルク体の積層により、ボア径40mm以上で発生磁場強度が2テスラ以上の小口径の強磁場小型超電導マグネットが実現できた。
【0018】
なお、本発明は上記実施例に限定されるものではなく、本発明の趣旨に基づき種々の変形が可能であり、これらを本発明の範囲から排除するものではない。
【産業上の利用可能性】
【0019】
本発明の強磁場小型超電導マグネットは、少数の高温超電導バルク体により、直線的で均一な磁場を発生させることができるので、マイクロNMRなどに利用可能である。
【符号の説明】
【0020】
1 高温超電導バルク体
2 ホール素子
11〜20 環状の高温超電導バルク体の積層数1〜10の場合の磁場分布の解析値
21〜23 環状の高温超電導バルク体の積層数1〜3の場合の磁場分布の実測値
31 第1の高温超電導バルク体
32 ガドリニウム系(Ga−B−Cu−O)の第2の高温超電導バルク体
33 ガドリニウム系(Ga−B−Cu−O)の第3の高温超電導バルク体
34 第4の高温超電導バルク体
35 磁場空間

【特許請求の範囲】
【請求項1】
(a)第1の高温超電導バルク体と、
(b)該第1の高温超電導バルク体上に積層されるガドリニウム系の第2の高温超電導バルク体と、
(c)該ガドリニウム系の第2の高温超電導バルク体上に積層されるガドリニウム系の第3の高温超電導バルク体と、
(d)該ガドリニウム系の第3の高温超電導バルク体上に積層される第4の高温超電導バルク体とを具備することを特徴とする強磁場小型超電導マグネット。
【請求項2】
請求項1記載の強磁場小型超電導マグネットにおいて、前記第1乃至第4の高温超電導バルク体は、積層後の寸法が外径87mm、内径48mm、高さ22mmである、樹脂含浸を施した環状の高温超電導バルク体であることを特徴とする強磁場小型超電導マグネット。
【請求項3】
請求項1又は2記載の強磁場小型超電導マグネットにおいて、前記積層した高温超電導バルク体を大気圧下で液体窒素冷却することにより、直線的で均一な2テスラレベルの磁場空間を発生させる永久マグネットとすることを特徴とする強磁場小型超電導マグネット。
【請求項4】
請求項3記載の強磁場小型超電導マグネットにおいて、前記永久マグネットをマイクロNMR用永久マグネットとして用いることを特徴とする強磁場小型超電導マグネット。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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