説明

弾性導電樹脂

【課題】アスペクト比(たてよこ比)の高いフィラーを用いることにより高導電性を得るためのフィラー含有量を低減でき、また、弾力性に富んだ高導電樹脂を工夫すること。
【解決手段】ゴム状弾性を有する樹脂と、針形状フィラーの表層をAu、Ag、Ni又はCuで被覆した導電フィラーと、を含む弾性導電樹脂において、
前記針形状フィラーの径が0.5〜2.0μm、かつフィラー長が10〜100μmの範囲にあることである。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、弾性導電樹脂及び弾性導電樹脂による弾性導電接合構造に関するものであり、電子部品の実装、メカニカル接触式コネクタに利用できるものである。
【背景技術】
【0002】
導電性弾性樹脂に関する従来技術として特開平10−242616号公報に記載されているものがある。このものは、回路基板とICチップとの間隙に封止樹脂を充填することなく接続部の高信頼度での実装を可能にするものであり、図11に示すように、バンプ座2がICパッケージ1のパッケージの下部に設けられていて、導電性接着剤3がバンプ座2と導電性弾性樹脂バンプ(集積回路においてワイヤレスボンディング用素子の電極部に形成された突起電極)4とを接続している。導電性弾性樹脂バンプ4はシリコン樹脂に、金メッキを施した180〜200μmの銅粉などの導電体粉体(フィラー)を混入させたもの(混合比2:1)であり、熱歪みおよび機械的歪みによる応力を吸収する。回路基板5の部品取り付け座6があって、導電性弾性樹脂バンプ4と電気的に接続される。
また、他に、特開平10−256304号公報に記載されているものがあり、このものは、図12に示すように、ゴム状弾性を有する導電性接着剤の硬化後、冷却とともに半導体集積回路チップ11と絶縁基板12との熱膨張率の差により導電性接着剤15にせん断応力が加わっても、導電性接着剤15がこのせん断応力を緩和して、剥離や接着剤層の破壊が生じないようにし、硬化収縮の大きな封止樹脂16の採用により発生する縦方向の応力を導電性接着剤15の樹脂成分が妨げることがなく、突起電極13と基板電極14が導電性接着剤15の導電粒子を介して圧接されて良好な電気的接続が得られるようにしたものである。
【特許文献1】特開平10−242616号公報
【特許文献2】特開平10−256304号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
従来、ICパッケージの実装においては、はんだ接合が一般的に行われている。しかし、パッケージ品と配線基板との熱膨張係数差が大きく違うことにより、温度サイクルが負荷された場合に接続部に繰り返し応力が発生してしまう。このため、接続部破断等の異常発生を防止することを目的として樹脂補強がされている。さらに、昨今の多ピン化、大型化が進んでいるパッケージ実装に対しては、上記の特開平10−256304号公報に記載されているもののように、ゴム状弾性を有する導電性接着剤を用いて接続するものがある。このものは確かに接続信頼性を向上させることができるが、応力緩和機能が不充分のため樹脂による補強が必要である。
【0004】
また、上記の特開平10−242616号公報に記載されている実装構造は、導電性弾性樹脂をバンプ状に形成し、これを圧接することにより電気的な接続を確保するものであるが、この導電性弾性樹脂がシリコーン系樹脂にAuめっきしたCu粉を混合させたものであることから、弾性率が高くエリアアレイ状に形成された電極に電気的な接続させるには高い圧接力が必要であり、また、バンプ高さを精密に揃えないと、各バンプに対して均等な圧接力がかからず、そのため、全電極の接続の安定的確実性に劣るという問題がある。
【0005】
これまでの弾性導電樹脂は、ゴム状弾性を有するシリコーン樹脂に球状導電粒子あるいはフレーク状導電フィラーを含有したものであり、球状粒子およびフレーク状フィラーを用いて高導電性を確保するためには、フィラー配合量を高めることが必要であるので、硬化物としてはシリコーン樹脂のゴム弾性特性を十分に活用することができなかった。このため、弾性導電バンプによるメカニカル接触で電気的接合を行う場合には、大きな加重で圧接する構造とする必要があり、さらに、バンプ高さのばらつきを高精度で制御する必要がある。
そこでこの発明は、圧縮力に対する変形能力が高いとともに、導電性が高い弾性導電体を提供することを目的とするものであり、そのための具体的な課題は次のとおりである。
【0006】
〔課題1〕
課題1は、アスペクト比(たてよこ比)の高いフィラーを用いることにより高導電性を得るためのフィラー含有量を低減でき、また、弾力性に富んだ高導電樹脂を工夫することである。
〔課題2〕
また、課題2は、導電フィラーの比重を低減し、ゴム状弾性樹脂中のフィラー沈殿によるフィラー分布の不均一を防止することである。
〔課題3〕
また、課題3は、電子部品交換が容易なメカニカル接触式の接合構造とし、また、対向する電極へのメカニカル接触時の加圧力を低減できるとともに、バンプ高さばらつきの許容範囲を大きくできるようにすることである。
〔課題4〕
さらに課題4は、弾性導電バンプとメカニカル接触にて電気的接続する電極表面に酸化膜および汚れがあっても、安定した接触抵抗を確保できるようにすることである。
〔課題5〕
さらに課題5は、バンプ形状をより圧縮変形しやすい形状とすることにより、バンプ高さばらつき許容範囲を更に大きくできるようにすることである。
〔課題6〕
さらに、課題6は、量産性の高いスクリーン印刷工法により、低抵抗、高弾力性を持ったバンプを形成できるようにすることである。
〔課題7〕
さらに、課題7は、取扱いが容易な弾性導電バンプとその低コスト化が可能な製造方法を工夫することである。
〔課題8〕
さらに、課題8は、低温、短時間での弾性導電バンプ形成を可能とすることである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
〔解決手段1〕
上記課題1を解決するために講じた手段1(請求項1に対応)は、ゴム状弾性を有する樹脂と、針形状フィラーの表層をAu、Ag、Ni又はCuで被覆した導電フィラーと、を含む弾性導電樹脂において、
前記針形状フィラーの径が0.5〜2.0μm、かつフィラー長が10〜100μmの範囲にあることである。
なお、上記「針形状フィラー」は、概略、繊維状のものであって、樹脂中において3次元的な網目構造を形成してフィラー間が接触している特徴を有するものを意味する。
〔作 用〕
フィラーは上記のとおりの針形状フィラーであってその表層をAu、Ag、Ni又はCuで被覆した導電フィラーであるから、そのアスペクト比が高い。そして、アスペクト比が高いので、樹脂の弾性変形に対する拘束力が小さく、したがって樹脂の高い弾力性が維持される。また、アスペクト比が高いので、少ない導電フィラー含有量で樹脂に高い導電性を付与できるので、フィラー含有量を低減できる。
したがって、少量の針形状フィラーを混入させた弾性導電樹脂は、弾力性に富み、かつ安定した高導電性の弾性導電樹脂である。
【0008】
〔実施態様1〕
実施態様1は、解決手段1における上記針形状フィラーのコア材がウイスカーであることである。
〔作 用〕
針形状フィラーのコア材がウイスカーを利用したものであるから、径が小さく高アスペクト比の導電フィラーを容易に製作でき、したがって、弾性導電樹脂の微細化も可能である。
【0009】
〔実施態様2〕
実施態様2は、上記実施態様1の針形状フィラーのコア材が、高分子ウイスカーであることである。(請求項2に対応)
因みにいえば、高分子ウイスカーは、その径が0.5〜2.0μm、フィラー長が10〜100μm、アスペクト比が10〜100であり、適当な高分子材料として、ポリ(p−オキシベンゾイル)、ポリ(2−オキシ−6−ナフトイル)を挙げることができる。
〔作 用〕
ウイスカーを利用したコア材が、高分子ウイスカーであるから、導電フィラーの比重が低く、したがって、ゴム状弾性樹脂中で導電フィラーが分散されて沈殿する傾向が小さいので、弾性導電体内での導電フィラー分布が均等である。したがって、導電フィラー分布の偏りにともなう体積抵抗率の不安定さはなく、当該体積抵抗率の安定化が図られる。
【0010】
〔解決手段2〕
解決手段2は、上記課題3を解決するための手段であり、弾性導電体による接合構造について、
弾性導電樹脂を一方の被接合部品の電極上にバンプ状に形成し、他方側にメカニカル接触させることにより電気的接合を行うことである。
〔作 用〕
圧縮力に対する高い変形能力を持ち、高導電性の導電体である弾性導電体をバンプ状に形成したことにより、弾性導電体をメカニカル接触させ、所定量変形させたときの加圧力を低減でき、したがって、バンプ高さばらつきの許容範囲を大きくすることが可能である。
【0011】
〔実施態様1〕
実施態様1は、解決手段2の弾性導電体による接合構造について、ゴム状弾性を有する樹脂と、表層をAu、Ag、Ni又はCuで被覆した針形状フィラーを含む弾性導電樹脂を、一方の被接合部品の電極上にバンプ状に形成し、他方側にメカニカル接触させることにより電気的接合を行うことである。
【0012】
〔実施態様2〕
実施態様2は、上記解決手段2又は実施態様1の導電接合におけるバンプ形状について、
弾性導電バンプが先端に向かうに従って細くなっており、アスペクト比が0.1〜1.0であることである。
〔作 用〕
弾性導電バンプが先端に向かうに従って細くなっていて、アスペクト比が0.1〜1.0であることから、接合時に弾性導電バンプにかかる圧縮応力に対するバンプの変形能力が大きい。したがって、メカニカル接触時の加圧力を更に低減でき、バンプ高さばらつきの許容範囲を更に大きくすることができる。
【0013】
〔実施態様3〕
実施態様3は、上記実施態様2におけるバンプ形状の形成方法について、
加熱硬化型シリコーン樹脂と希釈剤と針形状導電フィラーを含有する導電ペーストを電極上にスクリーン印刷して後、2段階以上の温度上昇プロファイルにて加熱硬化することによりバンプを形成することである。
【0014】
〔実施態様4〕
実施態様4は、上記実施態様2におけるゴム状弾性を有する樹脂が、紫外線硬化性及び湿気硬化性を併せ持ったシリコーン樹脂であることである。
〔作 用〕
ゴム状弾性樹脂として紫外線硬化性と湿気硬化性とを有するシリコーン樹脂を利用するものであるから、硬化時間を短縮することができ、また接合のための加熱が不要であるから、加熱することが許されない電子部品でも弾性導電バンプを用いて電気的接合をすることができる。
【0015】
〔解決手段3〕
解決手段3は、上記課題7を解決するための手段であり、
ゴム状弾性樹脂と針形状導電フィラーを含む弾性導電樹脂に金属箔を付設して弾性導電体を構成したことである。
〔作 用〕
ゴム状弾性樹脂と針形状導電フィラーを含む弾性導電樹脂に金属箔を付設したことによって弾性導電樹脂に単独で保形性が与えられる。したがって、量産性の高いスクリーン印刷と加熱リフロー工程によって、低コストで低抵抗、高弾力性のおわん型バンプを一つの部品として形成することが可能であり、これを所定の構造体等に後付けすることが可能である。
【0016】
〔実施態様1〕
実施態様1は、解決手段3による金属箔付き弾性導電体の製造方法であって、金属箔上に弾性導電樹脂を所定の厚みで一面に塗工した後硬化させ、裁断することにより、所定の弾性導電体を形成することである。
【発明の効果】
【0017】
この発明の効果は、各請求項毎に次のように整理される。
1.請求項1に係る発明の効果
アスペクト比の高い導電フィラーを用いることにより高導電性を得るためのフィラー含有量を低減でき、ゴム状弾性樹脂とを組み合わせることにより弾力性に富んだ導電樹脂が得られる。
2.請求項2に係る発明の効果
針形状フィラーのコア材としてウイスカーを利用することから、径が小さく高アスペクト比の導電フィラーを容易に製作でき、弾性導電樹脂の微細化も可能となる。
また、高分子ウイスカーを使用することから導電フィラーの比重を低減でき、ゴム状弾性樹脂中の導電フィラー沈殿を防止できるので、弾性導電体の体積抵抗率の安定化が図れる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0018】
次いで、図面を参照して、実施例を説明する。
〔実施例1〕
ゴム状弾性樹脂の代表格であるシリコーン樹脂に針形状導電フィラーを含有させた導電性ゴム状弾性樹脂の体積抵抗率とゴム硬度(JIS A)を図1、図2にそれぞれ示している。この実施例で使用したシリコーン樹脂は加熱硬化型でゴム硬度(JIS A)28のものである。また、針形状導電フィラーとしては無機化合物ウイスカーにAgめっきを施したものを使用しており、フィラー径が約0.5μm、フィラー長が約20μmのものを使用した。
ゴム状弾性樹脂に針形状導電フィラーを混入させて混練して、十分に分散させることにより、図1に示すとおりフレーク状フィラーを含有した場合よりも高い導電性が得られ、また、図2に示すとおりゴム硬度を低くすることができる。
【0019】
〔実施例2〕
上記の導電性ゴム状弾性樹脂をバンプ状に形成し、メカニカル接触させることにより、電子部品と基板とを電気的に接続させる接合構造を図3に示している。この導電性ゴム状弾性樹脂によるバンプは、図2、図1に示すとおり、圧縮力に対する変形能力が高く、高導電性を確保することができることから、エリアアレイ状に多数形成した電極接合においても低加重にて安定した接触を確保することができ、したがって、バンプを形成した電子部品を基板上に押圧保持させる保持構造を簡略化できる。
この弾性導電樹脂でバンプ径0.5mmφ、バンプ高さ0.15mmのバンプ状に形成した一つの弾性導電バンプについて、その圧縮変形特性と接触抵抗を、径:0.5mmφの圧子ツールにて、加重9.8〜490mNで繰り返し加重をかけて評価した。この場合の繰り返し変形量と針状フィラー混合比(wt%)との関係は図5に示すとおりであり、針状フィラーを40wt%添加したときの圧縮変形特性を、その代表的なデータとして図4に示している。これから、繰り返し圧縮に対する変位量が安定していて、その間、ほぼ弾性変形していることが明らかである。
また、Au電極に対して加重490mNにてこの弾性導電バンプを押しつけたときの接触抵抗と針状フィラー混合比(wt%)との関係は図6に示すとおりである。
【0020】
以上の評価結果から、低加重で変形するとともに繰り返し圧縮に対しても安定した弾性変形特性が保持され、また接触抵抗も低レベルであることが明らかである。
なお、針形状導電フィラーの配合比については、上記評価結果を参照して、要求される弾性変形量および接触抵抗値に応じて適宜選択することができる。
また、この弾性導電バンプは、メカニカル接触式の導通部材であるから、弾性導電バンプを形成した電子部品は簡単に脱着される。したがって、電子部品の再使用が可能であり、電子部品リユースへの展開も可能となる。
【0021】
〔実施例3〕
ゴム状弾性を有する樹脂にテトラポット型の導電フィラーを含有させた弾性導電樹脂をバンプ状に形成した例を図7に示している。このテトラポット型導電フィラー21は正4面体の重心から各4頂点に向かって成長した酸化亜鉛結晶体を各種金属(例えばAu、Ag、Ni、Cu)で被覆して導電性を付与したものである。この例のテトラポット型導電フィラー21の平均針状部長は20μm、平均針状基部径は1μm程度である。このテトラポット型導電フィラー21をゴム状弾性樹脂に混入させた導電性弾性体で形成した弾性導電バンプ20はバンプ表面に導電フィラーの針部が無数に突き出している。この弾性導電バンプ20に対向電極を押し当てると弾性導電バンプは変形し、その際バンプ表面から突き出している針部が対向電極の表面をすべる。このため、対向電極の表面が酸化あるいは汚れが付着していてもこれが排除され、針部先端が対向電極の導電表面に確実に当接するので、接合部の接触抵抗が安定することになる。
【0022】
〔実施例4〕
弾性導電バンプの断面形状が、その先端が緩やかに細くなった形状であれば、先端部分が細い分だけ圧縮力に対する変形量が大きいので、バンプ全体の圧縮力に対するバンプの変形量を大きくすることができる。これにより、バンプ高さばらつきに対する許容範囲が更に大きくなる。図8に示す実施例ではバンプの断面形状をおわん型としているが円錐形状にしても同様の効果がある。ここで、バンプのアスペクト比において0.1以下とすると弾性導電バンプの圧縮変形量を確保できないため、複数電極での電気的接続を安定に確保することができなくなるとともに、1.0以上となると弾性導電バンプの倒れが生じて接触抵抗のばらつきが拡大し、また隣接電極との接触を招いてしまう可能性が生じる。
【0023】
次に、低コストでおわん型の弾性導電バンプを形成するための材料および製造方法について説明する。
この弾性導電樹脂が十分なゴム弾性を有するものであれば、必要な弾性を確保しつつ、樹脂配合比を高くすることができる。他方、ゴム弾性を有する樹脂として加熱硬化型シリコーン樹脂を用い、更に希釈剤を加えることにより、十分なゴム弾性が確保される。この場合、電極上への弾性導電樹脂供給形状が不定形でも、加熱硬化時の高温環境初期で粘度が低くなることから、樹脂および希釈剤の表面張力が作用して、おわん型のバンプが形成されるので、問題はない。したがって、弾性導電樹脂をスクリーン印刷方式にて電極上に供給することによって、能率的におわん型弾性導電バンプを形成することができる。ただし、希釈剤を含んでいるので、いきなり完全硬化温度まで昇温して硬化させるとボイドを巻き込み、このために高抵抗化を招いてしまう恐れがあるので、初期の段階で完全硬化温度よりも低い温度で加熱し、希釈剤をゆっくり飛ばして後、本硬化温度まで昇温し硬化させることが必要である。
【0024】
〔実施例5〕
金属箔を付加した弾性導電体の実施例を図9に示している。この実施例における弾性導電樹脂は上記の実施例と異なるものではなく、その片面側に金属箔22を付加している。この金属箔22はCu箔のみでも良いが、弾性導電樹脂30aとの接触抵抗を低減するため、金属箔22の表層にAu、Agめっきが施されていることが望ましい。この金属箔付き弾性導電体30は弾性導電樹脂を直接電極に供給してバンプを形成することが困難な3次元構造体等に弾性導電バンプを形成する場合に有効なものであり、一つの部品として形成して後、これを3次元構造体等に後付けすることが可能である。後付け方法として、はんだ付けや導電性接着剤による接合等を利用することができる。ここで、金属箔のない弾性導電体を電極に接合するに際しては、はんだ付けができないこと、また、弾性樹脂の接着濡れ性が悪いことから、導電性接着剤による接着接合に十分な強度が確保することができないが、金属箔をつけることでこの問題は簡単に解消される。
【0025】
〔実施例6〕
次いで、図10を参照して金属箔付き弾性導電体の製造方法について説明する。
金属箔22上に弾性導電樹脂30aを所定の厚みに塗工し、硬化させる。硬化方法はゴム状弾性樹脂の種類に応じて加熱硬化法、湿気硬化法など適宜の方法が採用される。硬化後、弾性導電樹脂と金属箔を一括してカットして、所要のサイズに裁断して、金属箔付き弾性導電体を作成することができる。なお、金属箔の裏面側にUV照射することにより粘着力が失われる粘着テープを予め貼りつけておき、裁断時にこの粘着テープ部を残してカットすることで、カット後の弾性導電体がバラけることを回避することができる。使用時には裏面から使用部のみUV照射して、金属箔付き弾性導電体を取り外すことが可能であるから、作業性が大幅に向上する。
【0026】
〔実施例7〕
この実施例7の弾性導電樹脂は、導電性フィラーの含有量を少なくしても高導電性が得られること、フィラー形状が針形状をしていることから、フレーク状フィラーを含有した時よりも光が内層まで入り込むことであり、ゴム状弾性樹脂として紫外線硬化性と湿気硬化性を有するシリコーン樹脂により構成している。具体的な材料としてはスリーボンド製紫外線硬化性シリコーン樹脂3164を使用でき、電極上に弾性導電樹脂を供給して後、紫外線を照射することにより内部まで完全硬化する。または、表層のみを硬化後、常温常湿環境で保管し、湿気硬化機能を活用することで、完全硬化させることもできる。両硬化工程においても少なくとも表層近傍の完全な硬化が短時間に完了するとともに、加熱を必要としないから、これにより加熱できない電子部品に弾性導電体を形成することが可能である。
【0027】
なお、以上の実施例で説明した他、針状フィラーとしては、コア材としての金属ウイスカー、炭酸カルシウムウイスカー及びチタン酸カリウムウイスカー等の無機ウイスカーの表層に金属被覆した導電性フィラーを使用することが可能であり、また、ゴム状樹脂としてはシリコーン樹脂に限らず、ゴム状弾性を有する樹脂であれば、いずれも使用することが可能である。
【図面の簡単な説明】
【0028】
【図1】は、導電フィラー配合比と弾性導電樹脂の体積抵抗率との関係をグラフで示す図である。
【図2】は、導電フィラー配合比と弾性導電樹脂のゴム硬度との関係のグラフを示す図である。
【図3】は、弾性導電バンプの接合構造を拡大して模式的に示す断面図である。
【図4】は、弾性導電バンプの繰り返し圧縮変形特性のグラフを示す図である。
【図5】は、針状フィラー配合比と弾性導電バンプの繰り返し変形量との関係のグラフを示す図である。
【図6】は、針状フィラー配合比と弾性導電バンプの接触抵抗との関係のグラフを示す図である。
【図7】は、実施例の弾性導電バンプを拡大して模式的に示す正面図である。
【図8】は、おわん状バンプ形成方法の一例を模式的に示す図である。
【図9】(a)は、金属箔付き弾性導電体の構造等を模式的に示す図であり、(b)は、金属箔付き弾性導電体の使い方を模式的に示す図である。
【図10】は、金属箔付き弾性導電体の作り方を模式的に示す図である。
【図11】は、従来例の断面図である。
【図12】は、他の従来例の断面図である。
【符号の説明】
【0029】
20:弾性導電バンプ
21:テトラポット型導電フィラー
22:金属箔
30:弾性導電体
30a:弾性導電樹脂

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ゴム状弾性を有する樹脂と、針形状フィラーの表層をAu、Ag、Ni又はCuで被覆した導電フィラーと、を含む弾性導電樹脂において、
前記針形状フィラーの径が0.5〜2.0μm、かつフィラー長が10〜100μmの範囲にあることを特徴とする弾性導電樹脂。
【請求項2】
請求項1において、針形状フィラーのコア材が高分子ウイスカーであることを特徴とする弾性導電樹脂。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【公開番号】特開2008−179834(P2008−179834A)
【公開日】平成20年8月7日(2008.8.7)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−94868(P2008−94868)
【出願日】平成20年4月1日(2008.4.1)
【分割の表示】特願2002−210181(P2002−210181)の分割
【原出願日】平成14年7月18日(2002.7.18)
【出願人】(000006747)株式会社リコー (37,907)
【Fターム(参考)】