説明

弾性波フィルタ

【課題】IDT電極を圧電基板上に送信側電極及び受信側電極として弾性波の伝搬方向に並べた弾性波フィルタにおいて、IDT電極から放出された弾性波が圧電基板の端部にて反射して当該IDT電極に再入射することを抑えながら、圧電基板の寸法を小さく抑えること。
【解決手段】IDT電極12、13と弾性波の伝搬方向においてIDT電極12、13に近接する圧電基板11の端部との間に補助マルチストリップカプラ42を設けて、弾性波が補助マルチストリップカプラ42を通過する時にこの弾性波のエネルギーがトラックTr1、Tr2に亘って分散した状態となるように電極指41の本数を設定する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、弾性波フィルタ例えば(SAW:Surface Acoustic Wave)フィルタに関する。
【背景技術】
【0002】
IDT(IDT:インターディジタルトランスデューサ)電極を圧電基板100上に送信側(入力側)電極112及び受信側(出力側)電極113として弾性波の伝搬方向に並べた弾性波フィルタ例えばSAWフィルタとして、例えば図15に示すように、マルチストリップカプラ120と呼ばれる結合子をこれら電極112、113間に配置したフィルタが知られている。これらの電極112、113の各々において、一対のバスバー114、114間にて電極指115の配列された領域(弾性波の伝搬領域)を配列領域116とすると、各々の配列領域116、116が弾性波の伝搬方向に直交する方向に互いに離間するように、この例では送信側電極112は図15中手前側に配置され、受信側電極113は同図中奥側に配置されている。また、この例では、各々の電極112、113は、各々の電極指115、115の交差する交差幅が弾性波の伝搬方向に沿って変化するように、各々アポダイズ型に重み付けられている。
【0003】
マルチストリップカプラ120は、弾性波の伝搬方向に直交する方向に伸びる複数の電極指121を備えており、送信側IDT電極112の手前側のバスバー114から受信側IDT電極113の奥側のバスバー114までに亘って伸びるように各々の電極指121がライン状に配置されている。そのため、送信側電極112及び受信側電極113における配列領域116、116を夫々送信側トラック及び受信側トラックとすると、送信側トラックにおいて送信側IDT電極112から弾性波が右側(受信側電極113側)に向かって伝搬していくと、マルチストリップカプラ120において弾性波が送信側トラックが受信側トラックに転移して、即ち弾性波の伝搬領域がマルチストリップカプラ120において手前側から奥側に移動する。そして、弾性波は圧電基板100上における図15中奥側の領域(受信側トラック)を受信側IDT電極113に向かって伝搬し、当該受信側IDT電極113にて電気信号として受信される。従って、例えばこの弾性波とは励振モードの異なるバルク波などの不要波は、マルチストリップカプラ120において転移されずに送信側IDT電極112からこのマルチストリップカプラ120を通過して図15中手前側の領域(受信側IDT電極113が形成されていない領域)を伝搬していくので、このフィルタでは、この不要波の影響を抑えて良好な周波数特性が得られる。
【0004】
ところで、このようなフィルタでは、弾性波は各々の電極112、113において各々右側及び左側に向かって伝搬していくので、例えばこれらの電極112、113から圧電基板100の端部領域に向かって放出されると、当該端部において反射して電極112、113に戻ってきてしまうおそれがある。このような反射波が電極112、113に戻ってくると、フィルタの周波数特性が劣化してしまう。そこで、各電極112、113と、弾性波の伝搬方向においてこれら電極112、113に近接する圧電基板100の端部と、の間における圧電基板100上には、このような反射波のエネルギーを吸収して各電極112、113への再入射を抑えるために、例えばシリコーンゴムなどからなる吸収材117、117が形成されている。しかしながら、反射波のエネルギーを吸収するためには、弾性波の伝搬方向における吸収材117の幅寸法を例えば弾性波の波長の10倍〜20倍程度に広く確保しておく必要があるので、フィルタが大型化してしまう。
【0005】
特許文献1、2には、このようなマルチストリップカプラについて記載されており、またこの特許文献1には弾性表面波のエネルギーが100%伝搬する場合よりもマルチストリップカプラの電極指の本数を少なくする技術について記載されているが、既述の課題については検討されていない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開平8−116234(段落0014、図1)
【特許文献2】特開平3−226107(図1)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明はかかる事情に鑑みてなされたものであり、その目的は、IDT電極を圧電基板上に送信側電極及び受信側電極として弾性波の伝搬方向に並べた弾性波フィルタにおいて、IDT電極から放出された弾性波が圧電基板の端部にて反射して当該IDT電極に再入射することを抑えながら、小型化を図ることのできる弾性波フィルタを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明の弾性波フィルタは、
圧電基板上に形成され、互いに平行にX方向に伸びる一対のバスバーから互いに向き合って櫛歯状に伸びだす電極指群を備えた送信側IDT電極と、
この送信側IDT電極からX方向に離間しかつ電極指群の配列領域が送信側IDT電極における電極指群の配列領域に対してX方向に直交するY方向に離間するように、また前記圧電基板上に設けられ、互いに平行にX方向に伸びる一対のバスバーから、互いに向き合って櫛歯状に伸びだす電極指群を備えた受信側IDT電極と、
前記送信側IDT電極を伝播する弾性波を受信側IDT電極に転移させるために送信側IDT電極及び受信側IDT電極の間に設けられ、送信側IDT電極における電極指群の配列領域のY方向全体に臨む領域から受信側IDT電極における電極指群の配列領域のY方向全体に臨む領域に亘って、Y方向に互いに平行状に伸びる複数本の電極指を備えた主マルチストリップカプラと、
前記送信側IDT電極及び受信側IDT電極の一方側のIDT電極から、前記主マルチストリップカプラとは反対方向に位置する圧電基板の端部に向かう弾性波が一方側のIDT電極へ再入射することを抑えるために、前記一方側のIDT電極と前記端部との間に設けられ、一方側のIDT電極における電極指群の配列領域のY方向全体に臨む領域から、当該領域と少なくとも同じ長さ分だけY方向に離れた位置まで平行状に伸びる複数本の電極指を備えた補助マルチストリップカプラと、を備え、
前記補助マルチストリップカプラは、一方側のIDT電極から当該IDT電極にY方向に隣接する領域に弾性波を転移させる役割を有していることを特徴とする。
【0009】
また、本発明の弾性波フィルタは、
圧電基板上に形成され、互いに平行にX方向に伸びる一対のバスバーから互いに向き合って櫛歯状に伸びだす電極指群を備えた送信側IDT電極と、
この送信側IDT電極からX方向に離間しかつ電極指群の配列領域が送信側IDT電極における電極指群の配列領域に対してX方向に沿って相対向するように、また前記圧電基板上に設けられ、互いに平行にX方向に伸びる一対のバスバーから、互いに向き合って櫛歯状に伸びだす電極指群を備えた受信側IDT電極と、
前記送信側IDT電極及び受信側IDT電極の一方側のIDT電極から、他方側のIDT電極とは反対方向に位置する圧電基板の端部に向かう弾性波が一方側のIDT電極へ再入射することを抑えるために、前記一方側のIDT電極と前記端部との間に設けられ、一方側のIDT電極における電極指群の配列領域のY方向全体に臨む領域から、当該領域と少なくとも同じ長さ分だけY方向に離れた位置まで平行状に伸びる複数本の電極指を備えた補助マルチストリップカプラと、を備え、
前記補助マルチストリップカプラは、一方側のIDT電極から当該IDT電極にY方向に隣接する領域に弾性波を転移させる役割を有していることを特徴とする。
【0010】
前記弾性波フィルタの具体的な態様としては、以下のように構成しても良い。 前記補助マルチストリップカプラは、弾性波が当該補助マルチストリップカプラを通過する時に、この弾性波のエネルギーが前記一方側のIDT電極のトラックから前記隣接する領域のトラックに亘って50%ずつ分布した状態となるように電極指の本数が設定されている構成。
前記補助マルチストリップカプラは、前記送信側IDT電極と弾性波の伝搬方向においてこの送信側IDT電極に近接する圧電基板の端部との間及び、前記受信側IDT電極と弾性波の伝搬方向においてこの受信側IDT電極に近接する圧電基板の端部との間に各々配置されている構成。
【0011】
弾性波の伝搬方向における前記補助マルチストリップカプラのX方向いずれか一方に隣接して、弾性波を吸収するための主吸収材が配置されている構成。
前記主吸収材は、前記補助マルチストリップカプラと、この補助マルチストリップカプラに近接配置されたIDT電極との間に配置され、
前記主吸収材の下方側における前記圧電基板上には、前記IDT電極から前記補助マルチストリップカプラに向かう弾性波の拡散を抑えるために、弾性波の伝搬方向に対して各々直交する方向に伸びる電極指群と、これら電極指群の長さ方向における一端側及び他端側を各々接続するために弾性波の伝搬方向に互いに平行となるように配置された一対のバスバーと、を備えたグレーティング導波路が形成されている構成。
前記補助マルチストリップカプラからX方向に離れた領域において当該補助マルチストリップカプラに近接配置されたIDT電極のY方向に離間した位置には、弾性波を吸収するための補助吸収材が配置されている構成。送信側IDT電極における電極指群の配列領域と受信側IDT電極における電極指群の配列領域とのY方向の寸法は、同じに設定されている構成。
【発明の効果】
【0012】
本発明は、IDT電極と弾性波の伝搬方向においてこのIDT電極に近接する圧電基板の端部との間に複数の電極指を備えた補助マルチストリップカプラを設けて、補助マルチストリップカプラを通過する時に弾性波のエネルギーが当該IDT電極のトラック及びこのトラックとは異なるトラックに亘って分散した状態となるように電極指の本数を設定しているので、IDT電極から放出された弾性波が圧電基板の端部にて反射して当該IDT電極に再入射することを抑えながら、弾性波フィルタの小型化を図ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【図1】本発明の実施の形態に係る弾性波フィルタの一例を示す平面図である。
【図2】前記弾性波フィルタのマルチストリップカプラにおいて弾性波が伝搬する様子を示す模式図である。
【図3】前記弾性波フィルタのマルチストリップカプラにおいて弾性波が伝搬する様子を示す模式図である。
【図4】前記弾性波フィルタのマルチストリップカプラにおいて弾性波が伝搬する様子を示す模式図である。
【図5】前記弾性波フィルタのマルチストリップカプラにおいて弾性波が伝搬する様子を示す模式図である。
【図6】前記弾性波フィルタのマルチストリップカプラにおいて弾性波が伝搬する様子を示す模式図である。
【図7】前記弾性波フィルタにおいて得られた周波数特性を示す特性図である。
【図8】前記弾性波フィルタの他の例を示す平面図である。
【図9】前記弾性波フィルタの他の例を示す平面図である。
【図10】前記弾性波フィルタの他の例を示す平面図である。
【図11】前記弾性波フィルタの他の例を示す平面図である。
【図12】前記弾性波フィルタの他の例を示す平面図である。
【図13】前記弾性波フィルタの他の例を示す平面図である。
【図14】前記弾性波フィルタの他の例を示す平面図である。
【図15】前記弾性波フィルタの他の例を示す平面図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
本発明の実施の形態の弾性波フィルタ例えばSAWフィルタの一例について、図1を参照して説明する。このSAWフィルタは、例えばLiNbO3などからなる圧電基板11において、即ち結晶のY軸に対して128°回転させたY’軸と垂直な面で切断したニオブ酸リチウムの表面において、弾性波の伝搬方向に互いに離間して形成された送信側(入力側)IDT電極12及び受信側(出力側)IDT電極13を備えている。従って弾性波は、圧電基板11の長手方向であるX方向(図1中左右方向)に沿って、当該圧電基板11の2つの短辺2、3のうち一方側(図1中左側)の短辺2と他方側(図1中右側)の短辺3との間において伝搬する。この例では、圧電基板11上において送信側IDT電極12は図1中一方側の短辺2に近接する領域に配置され、受信側IDT電極13は他方側の短辺3に近接する領域に配置されている。尚、既述の「X方向」及び以下において説明する「Y方向」とは、圧電基板11の結晶方位とは無関係である。
【0015】
これらのIDT電極12、13は、弾性波の伝搬方向に沿って互いに平行となるように配置された一対のバスバー14a、14bと、これらのバスバー14a、14bの各々から対向するバスバー14b、14a側に向かって弾性波の伝搬方向に対して各々直交するようにY方向に櫛歯状に伸び出す複数の電極指15と、を各々備えている。この例では、送信側IDT電極12のバスバー14a、14bのうち一のバスバー14aは、圧電基板11の2つの長辺4、5のうち一方側の長辺4に近接する領域に配置されて入力ポート21に接続されている。送信側IDT電極12の他のバスバー14bは、圧電基板11の中央部側に配置されて接地されている。また、受信側IDT電極13におけるバスバー14a、14bのうち一のバスバー14aは、圧電基板11の2つの長辺4、5のうち、前記送信側IDT電極12におけるバスバー14aの近接配置された一方側の長辺4とは異なる他方側の長辺5に近接する領域に配置されて出力ポート22に接続されている。受信側IDT電極13の他のバスバー14bは、圧電基板11の中央部側に配置されて接地されている。
【0016】
各々の電極12、13において、一対のバスバー14a、14b間にて電極指15が配列された領域を配列領域16と呼ぶと、各々の電極12、13は、配列領域16において互いに隣接する電極指15、15同士の交差する部位(弾性波の励振領域)の長さ寸法(交差幅)が弾性波の伝搬方向に沿って変化するように、アポダイズ型に各々重みづけられている。また、送信側IDT電極12及び受信側IDT電極13の配列領域16を夫々トラックTr1(送信側トラック)、トラックTr2(受信側トラック)と呼ぶと、これらのトラックTr1、Tr2では、電極12、13における電極指15の幅寸法と電極指15、15間の離間寸法とからなる周期単位λに対応する波長の弾性波が夫々伝搬するように構成されている。
【0017】
これらの電極12、13において、電極指15、15の交差する部位の数量(電極指15の対数)は、各々例えば64対となっている。この例では、各々の電極12、13における配列領域16、16は、弾性波の伝搬方向に直交する方向における長さ寸法が互いに等しくなっている。
そして、これらの電極12、13は、弾性波の伝搬方向に対して直交する方向において互いの配列領域16、16(トラックTr1、Tr2)同士が離れるように(互いに重なり合わないように)並べられており、既述のように送信側IDT電極12は図1中一方側の長辺4側に配置され、受信側IDT電極13は同図中他方側の長辺5側に配置されている。言い換えると、送信側IDT電極12及び受信側IDT電極13は、圧電基板11の短辺方向(弾性波の伝搬方向に対して直交する方向)における概略中央位置を弾性波の伝搬方向に沿って平行に伸びるライン30において、送信側IDT電極12のバスバー14bにおける電極指15の接続されている側の端部と、受信側IDT電極13のバスバー14bにおける電極指15の接続されている側の端部と、が一列に並ぶように各々配置されている。
【0018】
これら電極12、13間には、弾性波の伝搬方向に対して直交する方向にライン状に伸びる電極指31が互いに平行に複数本配置された主マルチストリップカプラ32が形成されている。この主マルチストリップカプラ32は、送信側IDT電極12において弾性波が伝搬する領域であるトラックTr1から、受信側IDT電極13において弾性波が伝搬する領域であるトラックTr2に、弾性波が伝搬する伝搬領域を転移させるためのものである。そのため、主マルチストリップカプラ32を弾性波が通過すると、当該弾性波の伝搬する位置(領域)がトラックTr1とトラックTr2との間で変わることになる。
【0019】
主マルチストリップカプラ32における電極指31は、弾性波の伝搬方向から見た時に、各電極12、13の配列領域16、16と重なり合うように配置されている。即ち、各々の電極指31は、送信側IDT電極12のバスバー14aに沿って伸びるライン及び受信側IDT電極13のバスバー14aに沿って伸びるラインを夫々端部ライン33、34とすると、これら端部ライン33、34間に亘って各々配置されている。言い換えると、各々の電極指31は、配列領域16、16をY方向全体に臨む領域に亘って形成されている。従って、主マルチストリップカプラ32は、長さ方向における中央位置が既述のライン30上に位置していると言える。
【0020】
また、電極指31の本数は、トラックTr1からトラックTr2に弾性波のエネルギーができるだけ転移するように、即ち完全に(100%)転移するように、例えば110本となっている。この主マルチストリップカプラ32において弾性波が転移する理由について、図2を参照して以下に詳述する。ここで、図2において中央部に主マルチストリップカプラ32が配置されているものとし、当該主マルチストリップカプラ32に対して左側からトラックTr1において弾性波が入射(Input)し、右側からトラックTr2において弾性波が出力(Output)されるものとする。
【0021】
主マルチストリップカプラ32に対してトラックTr1において弾性波が入射すると、トラックTr1及びトラックTr2の両方において各々励振する2種類の弾性波Ps、Paが発生する(分離される)。ここで弾性波Psは、これらのトラックTr1及びトラックTr2において弾性波が互いに同じ変位(位相)で励振する対称モードの弾性波であり、一方弾性波Paは、前記ライン30を節としてこれらトラックTr1、Tr2間の位相が互いに逆になるように励振する反対称モードの弾性波である。図2において長辺4、5に各々近接する領域には、これら対称モードの弾性波Ps及び反対称モードの弾性波Paにおける夫々のトラックTr1、Tr2の位相を各々模式的に示している。また、この図2における中央部には、これら弾性波Pa、Psにおいて伝搬する例えばトラックTr1の弾性波の振幅を模式的に夫々示している。尚、既述の図1ではトラックTr1の弾性波が長辺4とライン30との間を伝搬し、トラックTr2の弾性波が長辺5とライン30との間を伝搬するが、この図2では説明を簡略化するために、これらトラックTr1、Tr2が伝搬する領域を互いに入れ替えて示している。
【0022】
この図2の中央部に示したように、反対称モードの弾性波Paは、ライン30を境として電荷の正負(位相)が互いに逆になるように夫々発生するトラックTr1、Tr2間において主マルチストリップカプラ32上に発生した電荷を打ち消しながら伝搬していくので、即ち主マルチストリップカプラ32の各々の電極指31で互いに異なる電荷が発生すると打ち消されるので、対称モードの弾性波Psよりも伝搬速度が遅くなる。つまり、これらの弾性波Ps、Pa間で位相に差が生じることになり、この位相差は主マルチストリップカプラ32をこれら弾性波Ps、Paが伝搬するほど大きくなる。そのため、主マルチストリップカプラ32から出力される時に、対称モードの弾性波PsにおいてはトラックTr1、Tr2のいずれについても正の振幅が極大となり、一方反対称モードの弾性波PaにおいてはトラックTr1の振幅が負の極大になると共にトラックTr2の振幅が正の極大となるように電極指31の本数(弾性波Ps、Paの伝搬路の長さ)xを設定している。これによって、主マルチストリップカプラ32から出力される弾性波であるこれら弾性波Ps、Paの合成波は、トラックTr1とは異なるトラックTr2において発生することになる。従って、主マルチストリップカプラ32においてトラックTr1からトラックTr2にエネルギーが100%転移されることになる。言い換えると、主マルチストリップカプラ32に入射する時にトラックTr1に集中していた弾性波のエネルギーは、この主マルチストリップカプラ32から出力される時に、トラックTr2にエネルギーが集中した状態となる。この図2には「x」として、送信側IDT電極12から主マルチストリップカプラ32を見た時の電極指31の本数Nを示しており、この例では既述のようにN=110としている。
【0023】
ここで、後述するように、x=N/2の領域では、対称モードの弾性波PsではトラックTr1、Tr2のいずれについても正の振幅が極大となっているが、反対称モードの弾性波PaではこれらのトラックTr1、Tr2が互いに打ち消し合って励振していない(振幅がなくなっている)。従って、このx=N/2の領域においてこれら弾性波Ps、Paを合成したとすると、合成波は、トラックTr1及びトラックTr2にエネルギーが50%ずつ分配されて、これらトラックTr1、Tr2にエネルギーが一様に分布している状態となる。即ち、主マルチストリップカプラ32に入射した時の弾性波のエネルギーがこれらトラックTr1、Tr2の夫々に50%ずつ転移している状態になっていることになる。
【0024】
また、送信側IDT電極12と弾性波の伝搬方向においてこの送信側IDT電極12に近接する図1中一方側の短辺2との間には、主マルチストリップカプラ32と同様に端部ライン33、34間に亘って伸びる電極指41が互いに平行に複数本形成された補助マルチストリップカプラ42が配置されている。この補助マルチストリップカプラ42は、弾性波の伝搬方向に沿って主マルチストリップカプラ32と相対向するように、この送信側IDT電極12の配列領域16のY方向全体に臨む領域から受信側IDT電極13の配列領域16のY方向全体を臨む領域までに亘って配置されている。また、補助マルチストリップカプラ42は、主マルチストリップカプラ32と同様に弾性波をトラックTr1からトラックTr2に転移させるものであるが、この転移量が主マルチストリップカプラ32よりも小さくなるように、この例では完全に転移する量の50%が転移するように電極指41の本数が55本(主マルチストリップカプラ32の電極指31の半分の本数)に設定されている。
【0025】
つまり、この補助マルチストリップカプラ42では、既述の図2で説明したように、対称モードの弾性波PsについてはトラックTr1、Tr2のいずれについても正の振幅が極大となり、一方反対称モードの弾性波PaについてはいずれのトラックTr1、Tr2においても振幅がなくなるように電極指41の本数をx=N/2に設定している。従って、図3に送信側IDT電極12及び補助マルチストリップカプラ42を模式的に示すように、送信側IDT電極12から補助マルチストリップカプラ42に入射したトラックTr1の弾性波は、既述のように2つの弾性波Ps、Paに分離され(図3中(1))、弾性波PsについてはトラックTr1、Tr2のいずれについても正の振幅が極大となり、弾性波PaについてはいずれのトラックTr1、Tr2においても振幅がなくなった状態で圧電基板11の端部へと放出される(図3中(2))。そのため、送信側IDT電極12から補助マルチストリップカプラ42に入射した弾性波は、トラックTr1、Tr2にエネルギーが各々50%ずつ分配されたことになる。
【0026】
そして、補助マルチストリップカプラ42から抜け出たPaとPsとの合成波である弾性波は、圧電基板11の一方側の短辺2である端部において反射して(図3中(3))、補助マルチストリップカプラ42に再入射すると、再び2つの弾性波Ps、Paに分離される。これら弾性波Ps、Paは、補助マルチストリップカプラ42から放出された時と同じ状態、即ち弾性波PsについてはトラックTr1、Tr2のいずれについても正の振幅が極大となり、弾性波PaについてはいずれのトラックTr1、Tr2においても振幅がなくなった状態(図3中(4))となる。こうして再度補助マルチストリップカプラ42に入射した弾性波は、更にx=N/2本の電極指41が形成された領域を伝搬して行くことになるので、既述の図2において説明したように、弾性波PsについてはトラックTr1、Tr2のいずれについても正の振幅が極大となり、一方弾性波PaについてはトラックTr1の振幅が負の極大となると共に、トラックTr2の振幅が正の極大となる(図3中(5))。従って、補助マルチストリップカプラ42から圧電基板11の他方側の短辺3(受信側IDT電極13)に向かって放出される弾性波であるこれら弾性波Ps、Paの合成波は、トラックTr2に100%のエネルギーを持つ弾性波となり、即ちトラックTr1からトラックTr2に転移された状態となり、図3中他方側の長辺5と前記ライン30との間の領域を主マルチストリップカプラ32に向かって伝搬して行く。
【0027】
ここで、補助マルチストリップカプラ42の電極指41の本数として既述の主マルチストリップカプラ32の電極指31と同じ本数を配置した場合には、送信側IDT電極12から圧電基板11の一方側の短辺2に向かう弾性波が補助マルチストリップカプラ42を通過すると、トラックTr2に100%転移した状態となる。そのため、このトラックTr2の弾性波が圧電基板11の端部にて反射して補助マルチストリップカプラ42に再入射すると、当該補助マルチストリップカプラ42においてトラックTr2からトラックTr1へと100%転移することになり、見かけ上補助マルチストリップカプラ42を設けない場合と同じ特性の反射波(後述のバルク波を除く)が送信側IDT電極12に戻ってくると言える。尚、図3では、後述の補助吸収材51については描画を省略している。
【0028】
続いて、図1を参照してフィルタの構成の説明に戻る。弾性波の伝搬方向における補助マルチストリップカプラ42の側方位置の送信側IDT電極12とは反対側の領域には、既述の端部ライン33、34間に亘って形成された例えばシリコーンゴムなどからなる主吸収材50が配置されている。この主吸収材50は、送信側IDT電極12から補助マルチストリップカプラ42を介して伝搬してくる不要波例えば既述の弾性波とは励振モードの異なる弾性波(バルク波)を吸収するためのものである。弾性波の伝搬方向における主吸収材50の幅寸法は、送信側IDT電極12にて伝搬する弾性波の周期単位λの長さ寸法の例えば5倍となっている。
【0029】
これらの補助マルチストリップカプラ42及び主吸収材50は、受信側IDT電極13とこの受信側IDT電極13に近接する圧電基板11の他方側の短辺3との間にも当該受信側IDT電極13から短辺3側に向かってこの順番で配置されており、各々の長さ寸法や電極指31の本数については既述のように設定されている。これらの2つの補助マルチストリップカプラ42、42は、弾性波の伝搬方向に沿って相対向するように配置されている。
【0030】
主マルチストリップカプラ32と補助マルチストリップカプラ42、42との間において電極12、13の配置された領域から弾性波の伝搬方向に直交する方向に離間した位置には、即ち送信側IDT電極12よりも他方側の長辺5側及び受信側IDT電極13よりも一方側の長辺4側の領域には、補助マルチストリップカプラ42、42から主マルチストリップカプラ32へと向かう弾性波を吸収するために、例えばシリコーンゴムなどからなる補助吸収材51、51が配置されている。
【0031】
このフィルタにおいて入力ポート21から電気信号が入力されると、図4に示すように、送信側IDT電極12にて弾性波が発生する。この弾性波は、図4中短辺2、3側に向かって伝搬していき、他方側の短辺3に伝搬する弾性波については主マルチストリップカプラ32へと到達して、既述のようにトラックTr1からトラックTr2へと転移する。そして、このトラックTr2の弾性波は、図4中他方側の短辺3とライン30との間において受信側IDT電極13に伝搬していき、当該受信側IDT電極13において電気信号に変換されて出力ポート22から取り出される。尚、送信側IDT電極12においては、弾性波と共に当該弾性波とは励振モードの異なるバルク波などの不要波も発生するが、この不要波は送信側IDT電極12から主マルチストリップカプラ32を介して図4中一方側の長辺4側の領域(受信側IDT電極13が形成されていない領域)を伝搬して、受信側IDT電極13よりも短辺3よりの主吸収材50にて吸収される。
【0032】
一方、送信側IDT電極12から一方側の短辺2に向かって伝搬する弾性波は、図5に示すように、補助マルチストリップカプラ42において既述のようにトラックTr1、Tr2に各々50%ずつ分布した状態となるように転移して、主吸収材50に到達する。そして、この弾性波は、この主吸収材50にて一部が吸収され、圧電基板11の端部において反射して主吸収材50に再入射し、更に一部が吸収される。また、この弾性波と共に主吸収材50に伝搬する励振モードの異なる不要波は、この主吸収材50において吸収される。そして、これらのトラックTr1、Tr2の弾性波が補助マルチストリップカプラ42に再入射すると、既述のようにこの弾性波はトラックTr2へ転移して、図6に示すように、圧電基板11上の他方側の長辺5とライン30との間の領域を受信側IDT電極13に向かって伝搬して行く。このトラックTr2の弾性波は、補助吸収材51によって吸収される。
【0033】
また、主マルチストリップカプラ32にてトラックTr1から転移されて受信側IDT電極13に到達したトラックTr2の弾性波は、一部が電気信号に変換されずに当該受信側IDT電極13を通過していく場合もある。このような弾性波についても、受信側IDT電極13よりも他方側の短辺3よりの補助マルチストリップカプラ42において50%がトラックTr1に転移される。次いで、この弾性波は、圧電基板11の端部で反射して補助マルチストリップカプラ42に再入射すると、トラックTr1に100%転移されて圧電基板11上における受信側IDT電極13よりも一方側の長辺4よりの領域を送信側IDT電極12に向かって伝搬し、補助吸収材51において吸収される。尚、この弾性波についても、主吸収材50を通過する時に一部が吸収される。
【0034】
こうして送信側IDT電極12にて発生する弾性波のうち他方側の短辺3に向かう弾性波が受信側IDT電極13にて受信され、送信側IDT電極12から一方側の短辺2及び受信側IDT電極13から他方側の短辺3に向かう弾性波についてはこれら電極12、13への再入射が抑えられるので、不要波である反射波及びバルク波の影響が抑えられて、リップル(通過周波数帯域における信号の揺らぎ)が小さくなる。図7には、既述の図1のフィルタの構成に基づいて得られた周波数特性を示している。この時、受信側IDT電極13における中心周波数が70MHz、帯域幅が10MHzとなるようにフィルタを設計すると共に、電極12、13の電極指15の対数(電極指15、15の交差位置の数量)を各々64対、主マルチストリップカプラ32の電極指31の本数を110本、補助マルチストリップカプラ42、42の電極指41の本数を55本として、弾性波の伝搬方向における主吸収材50、50の幅寸法を弾性波の波長の長さ寸法の5倍としている。この図7から、既述の図15に示す従来例と比較して、通過周波数帯域におけるリップルが低減していることが分かる。また、本発明と同程度の周波数特性を得るためには、主吸収材50の幅寸法を弾性波の波長の10〜20倍とする必要があったため、本発明のフィルタでは、通過周波数帯域におけるリップルを抑えながら、圧電基板11の長手方向の寸法が図15のフィルタよりも小さくなっている。
【0035】
上述の実施の形態によれば、IDT電極12、13と弾性波の伝搬方向においてIDT電極12、13に近接する圧電基板11の端部との間に補助マルチストリップカプラ42を設けて、補助マルチストリップカプラ42を通過する時に弾性波のエネルギーがトラックTr1、Tr2に亘って分散した状態となるように電極指41の本数を設定しているので、IDT電極12、13から放出された弾性波が圧電基板11の端部にて反射してIDT電極12、13に再入射することを抑えながら、圧電基板11の寸法を小さく抑えてフィルタの小型化を図ることができる。
【0036】
また、IDT電極12、13において弾性波の伝搬方向に対して直交する方向には、補助吸収材51、51を設けているので、補助マルチストリップカプラ42を通過して主マルチストリップカプラ32に戻る弾性波の影響を抑えることができる。更に、主マルチストリップカプラ32、補助マルチストリップカプラ42、42を夫々ライン33、34間に形成しているので、圧電基板11の短辺方向の寸法を小さく抑えることができる。
【0037】
既述の例では補助吸収材51、51を配置したが、図8に示すように、これらの補助吸収材51、51を配置しなくても良い。このような場合であっても、補助マルチストリップカプラ42と主マルチストリップカプラ32との間が大きく離間しているため、補助マルチストリップカプラ42から主マルチストリップカプラ32へと向かう弾性波の影響が小さく抑えられる。
【0038】
また、電極12(13)から圧電基板11の端部に向かって補助マルチストリップカプラ42、主吸収材50をこの順番で並べたが、図9に示すように、これら補助マルチストリップカプラ42と主吸収材50との配置位置を入れ替えても良い。この場合であっても、同様の効果が得られる。更に、この図9のレイアウトで補助マルチストリップカプラ42及び主吸収材50を配置する場合には、図10に示すように、主吸収材50の下方側の圧電基板11上に電極12、13に隣接するようにグレーティング導波路60を配置しても良い。このグレーティング導波路60は、図11にも示すように、弾性波の伝搬方向に互いに平行に配置された一対のバスバー61、61と、これらのバスバー61、61間を接続するように弾性波の伝搬方向に直交するように配置された複数の電極指62と、を備えている。このグレーティング導波路60を設けることによって、電極12(13)から主吸収材50の下方領域を介して補助マルチストリップカプラ42へと向かう弾性波の拡散が抑えられる。そのため、例えばトラックTr1の弾性波が補助マルチストリップカプラ42に向かう時に、トラックTr2にまで拡散することを抑えることができるので、既述のようにトラックTr1からトラックTr2への転移が良好に行われることになる。尚、図10においてはグレーティング導波路60の上方側における主吸収材50を切り欠いて示しており、図11では圧電基板11を一部切り欠いて示している。
【0039】
以上の各例においては、電極12、13としていずれについてもアポダイズ型に重み付けを行ったが、これらの電極12、13の夫々についてアポダイズ型、重み付けを行わない正規型及び電極指15を間引く間引き型のいずれかとしても良い。
【0040】
以上の例では、電極12、13及び2つの補助マルチストリップカプラ42、42に加えて主マルチストリップカプラ32を配置して、これら電極12、13間でトラックの転移を行う例について説明したが、主マルチストリップカプラ32を設けずにトラックの転移を行わない場合に補助マルチストリップカプラ42、42を配置しても良い。具体的には、図12に模式的に示すように、電極12、13は、弾性波の伝搬方向に沿って各々の配列領域16、16同士が対向するように配置されると共に、弾性波の伝搬方向に直交する方向における各々の配列領域16、16の長さ寸法が互いに等しくなるように形成される。これら電極12、13は、圧電基板11上において各々他方側の長辺5とライン30との間に配置されている。また、これら電極12、13は、既述の周期単位λが互いに同じ長さとなるように電極指15が形成される。この場合には、電極12、13共にアポダイズ型電極を用いると、各々の電極12、13の伝達関数の積が得られないために、電極12、13の少なくとも一方は、正規型または間引き型の電極として構成される。
【0041】
また、補助マルチストリップカプラ42、42は、弾性波の伝搬方向に対して直交する方向における配列領域16の長さ寸法と同じ長さだけ、これら電極12、13の側方領域から前記直交方向この例では一方側の長辺4に向かって伸びるように各々配置される。この例においても、補助マルチストリップカプラ42、42を設けることによって、電極12、13から圧電基板11の端部へと伝搬する弾性波のトラックが当該トラックとは別のトラックに転移される。尚、この図12では、各電極12、13及び補助マルチストリップカプラ42、42の内部領域の記載を省略している。以下の図13及び図14も同様である。
【0042】
また、既述の図12の例と同様に主マルチストリップカプラ32を設けない場合には、図13に示すように、例えば送信側IDT電極12に近接する補助マルチストリップカプラ42についてはこの送信側IDT電極12の側方位置から圧電基板11の他方側の長辺5に向かって伸びるように配置し、受信側IDT電極13に近接する補助マルチストリップカプラ42については受信側IDT電極13の側方位置から圧電基板11の一方側の長辺4に向かって伸びるように配置しても良い。従って、電極12、13は、圧電基板11上において弾性波の伝搬方向に直交する方向における中央部に各々配置される。この場合には、補助マルチストリップカプラ42において転移されたトラックは、弾性波の伝搬方向において電極12、13の配置された領域から外れた領域に形成されるので、補助マルチストリップカプラ42、42から電極12、13側に向かう弾性波の影響を更に抑えることができる。
【0043】
更にまた、既述の図1に示した主マルチストリップカプラ32を設けてトラックTr1をトラックTr2に転移する場合であっても、図14のように、弾性波の伝搬方向から見た時に補助マルチストリップカプラ42、42が離間するように配置しても良い。
【0044】
補助マルチストリップカプラ42の電極指41の本数については、既述の例ではトラックTr1からトラックTr2に50%転移するようにx=N/2に設定したが、50%以下あるいは50%以上例えば30%〜70%程度であっても良い。つまり、電極12、13から補助マルチストリップカプラ42に伝搬する弾性波のエネルギーがこれらトラックTr1、Tr2に亘って分布するようにすれば良い。この場合であっても、補助マルチストリップカプラ42を設けない場合に比べて、圧電基板11の端部において反射する不要波の電極12、13への再入射が抑えられる。
【0045】
また、既述の各例では、主マルチストリップカプラ32及び補助マルチストリップカプラ42の長さ寸法については端部ライン33、34に亘って配置したが、これら端部ライン33、34を越えて圧電基板11の長辺4、5に電極指31、41の一端側及び他端側が近接するように配置しても良い。更に、主マルチストリップカプラ32及び補助マルチストリップカプラ42の本数については、圧電基板11の電気機械結合係数に応じて調整しても良い。更にまた、補助マルチストリップカプラ42については電極12、13のいずれか一方の側方領域にだけ設けても良いし、この場合には、補助マルチストリップカプラ42が設けられていない電極12、13の側方における主吸収材50について、弾性波の伝搬方向における幅寸法を例えば弾性波の波長の10倍〜20倍程度にしても良い。また、配列領域16、16のY方向の寸法が互いに等しくなるように各電極12、13を形成したが、これら電極12、13の間のインピーダンスを調整するために、互いの配列領域16、16のY方向の寸法が異なるようにしても良い。
【符号の説明】
【0046】
11 圧電基板
12 送信側IDT電極
13 受信側IDT電極
16 配列領域
32 主マルチストリップカプラ
33、34 ライン
42 補助マルチストリップカプラ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
圧電基板上に形成され、互いに平行にX方向に伸びる一対のバスバーから互いに向き合って櫛歯状に伸びだす電極指群を備えた送信側IDT電極と、
この送信側IDT電極からX方向に離間しかつ電極指群の配列領域が送信側IDT電極における電極指群の配列領域に対してX方向に直交するY方向に離間するように、また前記圧電基板上に設けられ、互いに平行にX方向に伸びる一対のバスバーから、互いに向き合って櫛歯状に伸びだす電極指群を備えた受信側IDT電極と、
前記送信側IDT電極を伝播する弾性波を受信側IDT電極に転移させるために送信側IDT電極及び受信側IDT電極の間に設けられ、送信側IDT電極における電極指群の配列領域のY方向全体に臨む領域から受信側IDT電極における電極指群の配列領域のY方向全体に臨む領域に亘って、Y方向に互いに平行状に伸びる複数本の電極指を備えた主マルチストリップカプラと、
前記送信側IDT電極及び受信側IDT電極の一方側のIDT電極から、前記主マルチストリップカプラとは反対方向に位置する圧電基板の端部に向かう弾性波が一方側のIDT電極へ再入射することを抑えるために、前記一方側のIDT電極と前記端部との間に設けられ、一方側のIDT電極における電極指群の配列領域のY方向全体に臨む領域から、当該領域と少なくとも同じ長さ分だけY方向に離れた位置まで平行状に伸びる複数本の電極指を備えた補助マルチストリップカプラと、を備え、
前記補助マルチストリップカプラは、一方側のIDT電極から当該IDT電極にY方向に隣接する領域に弾性波を転移させる役割を有していることを特徴とする弾性波フィルタ。
【請求項2】
圧電基板上に形成され、互いに平行にX方向に伸びる一対のバスバーから互いに向き合って櫛歯状に伸びだす電極指群を備えた送信側IDT電極と、
この送信側IDT電極からX方向に離間しかつ電極指群の配列領域が送信側IDT電極における電極指群の配列領域に対してX方向に沿って相対向するように、また前記圧電基板上に設けられ、互いに平行にX方向に伸びる一対のバスバーから、互いに向き合って櫛歯状に伸びだす電極指群を備えた受信側IDT電極と、
前記送信側IDT電極及び受信側IDT電極の一方側のIDT電極から、他方側のIDT電極とは反対方向に位置する圧電基板の端部に向かう弾性波が一方側のIDT電極へ再入射することを抑えるために、前記一方側のIDT電極と前記端部との間に設けられ、一方側のIDT電極における電極指群の配列領域のY方向全体に臨む領域から、当該領域と少なくとも同じ長さ分だけY方向に離れた位置まで平行状に伸びる複数本の電極指を備えた補助マルチストリップカプラと、を備え、
前記補助マルチストリップカプラは、一方側のIDT電極から当該IDT電極にY方向に隣接する領域に弾性波を転移させる役割を有していることを特徴とする弾性波フィルタ。
【請求項3】
前記補助マルチストリップカプラは、弾性波が当該補助マルチストリップカプラを通過する時に、この弾性波のエネルギーが前記一方側のIDT電極のトラックから前記隣接する領域のトラックに亘って50%ずつ分布した状態となるように電極指の本数が設定されていることを特徴とする請求項1または2に記載の弾性波フィルタ。
【請求項4】
前記補助マルチストリップカプラは、前記送信側IDT電極と弾性波の伝搬方向においてこの送信側IDT電極に近接する圧電基板の端部との間及び、前記受信側IDT電極と弾性波の伝搬方向においてこの受信側IDT電極に近接する圧電基板の端部との間に各々配置されていることを特徴とする請求項1ないし3のいずれか一つに記載の弾性波フィルタ。
【請求項5】
弾性波の伝搬方向における前記補助マルチストリップカプラのX方向いずれか一方に隣接して、弾性波を吸収するための主吸収材が配置されていることを特徴とする請求項1ないし4のいずれか一つに記載の弾性波フィルタ。
【請求項6】
前記主吸収材は、前記補助マルチストリップカプラと、この補助マルチストリップカプラに近接配置されたIDT電極との間に配置され、
前記主吸収材の下方側における前記圧電基板上には、前記IDT電極から前記補助マルチストリップカプラに向かう弾性波の拡散を抑えるために、弾性波の伝搬方向に対して各々直交する方向に伸びる電極指群と、これら電極指群の長さ方向における一端側及び他端側を各々接続するために弾性波の伝搬方向に互いに平行となるように配置された一対のバスバーと、を備えたグレーティング導波路が形成されていることを特徴とする請求項5に記載の弾性波フィルタ。
【請求項7】
前記補助マルチストリップカプラからX方向に離れた領域において当該補助マルチストリップカプラに近接配置されたIDT電極のY方向に離間した位置には、弾性波を吸収するための補助吸収材が配置されていることを特徴とする請求項1ないし6のいずれか一つに記載の弾性波フィルタ。
【請求項8】
送信側IDT電極における電極指群の配列領域と受信側IDT電極における電極指群の配列領域とのY方向の寸法は、同じに設定されていることを特徴とする請求項1ないし7のいずれか一つに記載の弾性波フィルタ。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【公開番号】特開2012−4827(P2012−4827A)
【公開日】平成24年1月5日(2012.1.5)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−137624(P2010−137624)
【出願日】平成22年6月16日(2010.6.16)
【出願人】(000232483)日本電波工業株式会社 (1,148)
【Fターム(参考)】