説明

弾性波素子、フィルタ、通信モジュール、および通信装置

【課題】共振周波数付近でのロスを低減することができる弾性波素子を実現する。
【解決手段】圧電基板と、圧電基板上に形成された第1の櫛形電極1及び第2の櫛形電極2とを備え、櫛形電極1及び2は互いに交差幅が異なる部分を有する弾性波素子であって、櫛形電極1及び2は、隣接電極が交差していないダミー領域14と、隣接電極が交差するIDT領域13とを備え、ダミー領域14は、IDT領域13よりも音速が遅くなるように形成されている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、例えばテレビジョン受像機や携帯電話端末、PHS(Personal Handy-phone System)等におけるフィルタ素子や発振子に用いることができる弾性波素子に関する。また、そのような弾性波素子を備えたフィルタ、通信モジュール、および通信装置に関する。
【背景技術】
【0002】
弾性波を応用したデバイスの一つとして弾性表面波素子(SAWデバイス:Surface Acoustic Wave Device)が以前より良く知られている。このSAWデバイスは、例えば45MHz〜2GHzの周波数帯における無線信号を処理する装置における各種回路に用いられる。このような回路としては、例えば送信バンドパスフィルタ、受信バンドパスフィルタ、局発フィルタ、アンテナ共用器、IFフィルタ、FM変調器等がある。
【0003】
近年、携帯電話などの高性能化に伴い、例えばバンドパスフィルタに用いられるSAWデバイスに対して、帯域内での低ロス化、帯域外での高抑圧化、温度安定性の向上など、諸特性の改善やデバイスサイズの小型化が求められている。中でも、低ロス化は、近年問題となっている携帯機器の駆動時間の長時間化に直結する課題であり、携帯機器用部品に求められる永遠の課題となっている。
【特許文献1】特開平11−298286号公報
【特許文献2】特開平7−15272号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
櫛形電極を用いた弾性波素子において、高次横モードによるスプリアス応答の抑圧、電気機械結合係数の調整などのために、電極の交差幅に重み付けを行うことがある。一般的には、このような重み付けを「アポダイズ重み付け」と呼ぶ。櫛形電極にアポダイズ重み付けを適用した弾性波素子は、弾性波の伝搬方向において不連続性を有することなどから、ロスが増大することが多い。また、櫛形電極と反射器とからなる1ポート共振器においては、そのストップバンド(弾性波が電極で反射される周波数の範囲)が共振周波数より高い周波数であるため、共振周波数付近のロスが増大するという問題があった。
【0005】
本発明の目的は、共振周波数付近でのロスを低減することができる弾性波素子を実現することである。また、そのような弾性波素子を備えたフィルタ、通信モジュール、および通信装置を実現することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の弾性波素子は、圧電基板と、前記圧電基板上において、互いに対向するように配された櫛形電極とを備えた弾性波素子であって、前記櫛形電極は、隣接電極が交差していない非交差領域と、隣接電極が交差している交差領域とを備え、前記非交差領域は、前記交差領域よりも音速が遅くなるように形成されているものである。
【発明の効果】
【0007】
本発明によれば、共振周波数付近のロスを低減することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0008】
(実施の形態)
〔1.弾性波素子の構成〕
本発明の弾性波素子は、回転Y板のニオブ酸リチウム(LiNbO3)基板などの圧電基板上に銅(Cu)など導電性材料からなる櫛形電極を形成し、櫛形電極にアポダイズ重み付けが施されている場合において、櫛形電極において電極が交差していない部分(非交差領域)の音速を、電極が交差している部分(交差領域)の音速より遅くすることによって、共振周波数付近でのロスを低減することができることを特徴とする。櫛形電極における非交差領域の音速を遅くすることによって、櫛形電極における非交差領域のストップバンドを交差領域のストップバンドよりも低周波側にシフトすることができ、共振周波数付近が非交差領域のストップバンド内に入ることになる。その結果、共振周波数付近のロスを低減化することができる。以上が本発明の概要であり、以下本発明の弾性波素子の実施形態について説明する。
【0009】
図1は、本実施の形態の弾性波素子の平面図である。図1において、弾性波素子は、複数の電極を櫛形に備えた第1の櫛形電極1と第2の櫛形電極2とを備えている。第1の櫛形電極1と第2の櫛形電極2は、それらに含まれる複数の電極が互いに交差配置している。第1の櫛形電極1は、幅狭部11aと幅広部11bとから構成される第1の電極11を備えている。第2の櫛形電極2は、幅狭部12aと幅広部12bとから構成される第2の電極12を備えている。幅狭部11aと幅広部11bとは一体形成され、幅狭部12aと幅広部12bとは一体形成されている。また、幅狭部11a及び12aは、それぞれ幅寸法W2を有する。また、幅広部11b及び12bは、それぞれ幅寸法W2よりも大きい幅寸法W1を有する。対向電極11cは幅狭部12aに対向配置し、対向電極12cは幅狭部11aに対向配置している。なお、以下の説明において、隣接する第1の電極11と第2の電極12とにおいて互いに交差する領域を「IDT領域」または「交差領域」と称する。また、隣接する第1の電極11と第2の電極12とにおいて互いに交差しない領域を「ダミー領域」または「非交差領域」と称する。したがって、図1に示す弾性波素子では、枠線13に囲まれた領域がIDT領域であり、枠線13の外側の領域14がダミー領域である。また、寸法E1は、図1における右端のIDT領域13の寸法(交差幅)である。また、寸法E2は、図1における右端のダミー領域14の寸法である。
【0010】
図1に示すように、本実施の形態の櫛形電極1及び2は、その交差幅E1が場所によって異なるアポダイズ重み付けが適用されている。さらに、櫛形電極1及び2において、IDT領域13における電極の幅は、ダミー領域14における電極の幅よりも細くしている(W2<W1)。このような構成とすることによって、ダミー領域14において発生する弾性波の音速を、IDT領域13における弾性波の音速より遅くすることができるため、ダミー領域14におけるストップバンドをIDT領域13におけるストップバンドよりも低周波側にシフトすることができる。なお、ストップバンドや低周波側シフトのメカニズムについては後述する。
【0011】
図2は、図1におけるA−A部の断面図である。図2に示すように、本実施の形態の弾性波素子は、LiNbO3で形成された圧電基板3上に、Cuを材料とした櫛形電極1及び2が形成されており、櫛形電極1及び2を覆うように酸化シリコン(SiO2)膜4が形成されている。本実施の形態の弾性波素子は、表面弾性波の一種であるラブ波を利用する弾性波素子である。なお、弾性波素子は、ラブ波デバイスに限らず境界波デバイスであってもよい。
【0012】
図3は、図1及び図2に示したラブ波デバイスの1ポート共振器の周波数特性である。図中の破線は、IDT領域13における電極の幅寸法とダミー領域14における電極の幅寸法とが互いに等幅(両方とも40%)の時の周波数特性であり、図中の実線は、IDT領域13における電極の幅寸法が40%でダミー領域14における電極の幅寸法が50%の時の周波数特性を示している。すなわち、図中の破線が従来の弾性波素子における周波数特性で、実線が本実施の形態の弾性波素子における周波数特性である。なお、図4は、図3に示す特性の共振周波数付近を拡大した図である。
【0013】
図3及び図4における実線特性に示すように、ダミー領域14における電極の幅を50%と太くしたデバイスの方が、共振周波数付近においてロスを低く抑えることができる。共振周波数で比較すると、ダミー領域14における電極の幅が40%でかつIDT領域13における電極の幅と同じ幅のデバイスは、ロスが0.18dBであり、ダミー領域14における電極の幅がIDT領域13における電極の幅よりも大きいデバイスは、ロスが0.15dBであった。すなわち、ダミー領域14における電極の幅が広い弾性波素子の方が、2割程度低ロスとなっている。このロス低減のメカニズムを図5に示す。
【0014】
図5において、1ポート共振器の特性を模式的に示し、横軸は周波数、縦軸はロスを示した。縦軸は、下側ほどロスが大きく、上側ほどロスが小さいことを表している。本実施の形態における弾性波素子は、共振周波数と反共振周波数とを有している。図中の、周波数範囲f1は、IDT領域13におけるストップバンドである。周波数範囲f2は、ダミー領域14(線幅を太くした電極を備えた領域)におけるストップバンドである。
【0015】
ここで、「ストップバンド」とは、弾性波が電極で反射される周波数の範囲であり、IDT領域13のストップバンドの下端は共振周波数となる。図6は、ストップバンドを説明するための弾性波素子の平面図であり、同図における弾性波素子は第1の櫛形電極101及び第2の櫛形電極102における各電極の太さは全て同じである。図6に示したように、ストップバンド外の周波数の弾性波は電極で反射されず、図中の矢印に示すように弾性波素子の外に散逸してしまいロスとなる。図1に示すように、本実施の形態の弾性波素子では、ダミー領域14における電極はIDT領域13における電極よりも線幅を太くしたために音速が低下しており、その結果、図5における周波数範囲f2に示すようにストップバンドも全体的に低周波側にシフトする。その結果、共振周波数より低周波側もストップバンド内に入り、図4に示したように共振周波数付近でロスを低減することができる。
【0016】
図7は、本実施の形態の弾性波素子の応用例を示す。図7に示す弾性波素子は、第1の櫛形電極1と第2の櫛形電極2とからなる櫛形電極部21の両側に、少なくとも櫛形電極部21における幅狭部(図1における幅狭部11a及び12a参照)よりも線幅が太い反射器22及び23を配した構成である。このような構成とすることで、櫛形電極部21から散逸しようとする弾性波(図6における矢印に示す方向に散逸する弾性波)を反射器22及び23で反射させて、再び櫛形電極部21に戻すことができ、さらにロスを低減することができる。また、図示は省略するが、IDT電極13の交差していない部分は電極幅を広くせず、ダミー電極14のみの線幅を広くしても同様の効果が得られる。
【0017】
図8は、ラダー型フィルタに本実施の形態の弾性波素子を適用した場合のロス低減メカニズムを示す。ラダー型フィルタ(不図示)は、弾性波素子を直列接続した直列椀に、別の弾性波素子が接続された並列椀を並列接続したフィルタであり、直列椀に接続された弾性波素子を直列共振器と呼び、並列椀に接続された弾性波素子を並列共振器と呼ぶ。図8に示したように、ラダー型フィルタの直列共振器に本実施の形態の弾性波素子を適用することによって、通過帯域の低周波部分のロスを低減することができる。
【0018】
図9は、本実施の形態の弾性波素子の第1実施例の構成を示す平面図である。図10は、図9におけるA−A部の断面図である。図9及び図10に示す弾性波素子は、第1の櫛形電極1及び第2の櫛形電極における各電極の幅は全て同じである。また、図示の弾性波素子は、ラブ波デバイスのIDT領域のSiO2膜4上に、SiO2膜4よりも音速が速い高音速膜5を形成した例である。このような構成とすることによって、IDT領域13の音速をダミー領域14の音速よりも速くすることができるため、相対的にダミー領域14の音速を遅く、つまりストップバンドを低周波側にシフトすることができる。高音速膜5としては、例えば、窒化シリコン(SiN)、酸化アルミニウム(アルミナ)などが考えられる。
【0019】
図11は、本実施の形態の弾性波素子の第2実施例の構成を示す平面図である。図12は、図11におけるA−A部の断面図である。図11及び図12に示す弾性波素子は、第1の櫛形電極1及び第2の櫛形電極における各電極の幅は全て同じである。また、図11及び図12に示す弾性波素子は、ラブ波デバイスのダミー領域のSiO2膜4上に、SiO2膜4よりも音速が遅い低音速膜6を形成した例である。このような構成とすることによって、ダミー領域14の音速をIDT領域13の音速よりも遅くすることができるため、相対的にIDT領域13の音速を速く、つまりストップバンドを低周波側にシフトすることができる。
【0020】
図13は、本実施の形態の弾性波素子の第3実施例の構成を示す平面図である。図14は、図13におけるA−A部の断面図である。図13及び図14に示す弾性波素子は、第1の櫛形電極1及び第2の櫛形電極における各電極の幅は全て同じである。また、図13及び図14に示す弾性波素子は、ラブ波デバイスのIDT領域におけるSiO2膜4に、膜厚を薄くした高音速領域4aを備えたものである。このような構成とすることによって、IDT領域13の音速をダミー領域13における音速よりも速くすることができるため、相対的にダミー領域14の音速を遅く、つまりストップバンドを低周波側にシフトすることができる。このような構成では、高音速膜5や低音速膜6が不要であるため、低コストに実現することができる。
【0021】
〔2.デュープレクサの構成〕
携帯電話端末、PHS(Personal Handy-phone System)端末、無線LANシステムなどの移動体通信(高周波無線通信)には、デュープレクサが搭載されている。デュープレクサは、通信電波などの送信機能及び受信機能を持ち、送信信号と受信信号の周波数が異なる無線装置において用いられる。
【0022】
図15は、本実施の形態の弾性波素子を備えたデュープレクサの構成を示す。デュープレクサ52は、位相整合回路53、受信フィルタ54、および送信フィルタ55を備えている。位相整合回路53は、送信フィルタ55から出力される送信信号が受信フィルタ54側に流れ込むのを防ぐために、受信フィルタ54のインピーダンスの位相を調整するための素子である。また、位相整合回路53には、アンテナ51が接続されている。受信フィルタ54は、アンテナ51を介して入力される受信信号のうち、所定の周波数帯域のみを通過させる帯域通過フィルタで構成されている。また、受信フィルタ54には、出力端子56が接続されている。送信フィルタ55は、入力端子57を介して入力される送信信号のうち、所定の周波数帯域のみを通過させる帯域通過フィルタで構成されている。また、送信フィルタ55には、入力端子57が接続されている。ここで、受信フィルタ54及び送信フィルタ55には、本実施の形態における弾性波素子が含まれている。
【0023】
以上のように、本実施の形態の弾性波素子を受信フィルタ54及び送信フィルタ55に備えることで、ロスが少なくフィルタ特性が優れたデュープレクサを実現することができる。
【0024】
〔3.通信モジュールの構成〕
図16は、本実施の形態の弾性波素子または図15に示すデュープレクサを備えた通信モジュールの一例を示す。図16に示すように、デュープレクサ62は、受信フィルタ62aと送信フィルタ62bとを備えている。また、受信フィルタ62aには、例えばバランス出力に対応した受信端子63a及び63bが接続されている。また、送信フィルタ62bは、パワーアンプ64を介して送信端子65に接続している。ここで、受信フィルタ62a及び送信フィルタ62bには、本実施の形態における弾性波素子またはデュープレクサが含まれている。
【0025】
受信動作を行う際、受信フィルタ62aは、アンテナ端子61を介して入力される受信信号のうち、所定の周波数帯域の信号のみを通過させ、受信端子63a及び63bから外部へ出力する。また、送信動作を行う際、送信フィルタ62bは、送信端子65から入力されてパワーアンプ64で増幅された送信信号のうち、所定の周波数帯域の信号のみを通過させ、アンテナ端子61から外部へ出力する。
【0026】
以上のように本実施の形態の弾性波素子またはデュープレクサを、通信モジュールの受信フィルタ62a及び送信フィルタ62bに備えることで、ロスが少なくフィルタ特性が優れた通信モジュールを実現することができる。
【0027】
なお、図16に示す通信モジュールの構成は一例であり、他の形態の通信モジュールに本発明の弾性波素子を搭載しても、同様の効果が得られる。
【0028】
〔4.通信装置の構成〕
図17は、本実施の形態の弾性波素子、デュープレクサ、または通信モジュールを備えた通信装置の一例として、携帯電話端末のRFブロックを示す。また、図17に示す構成は、GSM(Global System for Mobile Communications)通信方式及びW−CDMA(Wideband Code Divition Multiple Access)通信方式に対応した携帯電話端末の構成を示す。また、本実施の形態におけるGSM通信方式は、850MHz帯、950MHz帯、1.8GHz帯、1.9GHz帯に対応している。また、携帯電話端末は、図17に示す構成以外にマイクロホン、スピーカー、液晶ディスプレイなどを備えているが、本実施の形態における説明では不要であるため図示を省略した。ここで、受信フィルタ73a、77、78、79、80、および送信フィルタ73bには、本実施の形態における弾性波素子、デュープレクサが含まれている。
【0029】
まず、アンテナ71を介して入力される受信信号は、その通信方式がW−CDMAかGSMかによってアンテナスイッチ回路72で、動作の対象とするLSIを選択する。入力される受信信号がW−CDMA通信方式に対応している場合は、受信信号をデュープレクサ73に出力するように切り換える。デュープレクサ73に入力される受信信号は、受信フィルタ73aで所定の周波数帯域に制限されて、バランス型の受信信号がLNA74に出力される。LNA74は、入力される受信信号を増幅し、LSI76に出力する。LSI76では、入力される受信信号に基づいて音声信号への復調処理を行ったり、携帯電話端末内の各部を動作制御する。
【0030】
一方、信号を送信する場合は、LSI76は送信信号を生成する。生成された送信信号は、パワーアンプ75で増幅されて送信フィルタ73bに入力される。送信フィルタ73bは、入力される送信信号のうち所定の周波数帯域の信号のみを通過させる。送信フィルタ73bから出力される送信信号は、アンテナスイッチ回路72を介してアンテナ71から外部に出力される。
【0031】
また、入力される受信信号がGSM通信方式に対応した信号である場合は、アンテナスイッチ回路72は、周波数帯域に応じて受信フィルタ77〜80のうちいずれか一つを選択し、受信信号を出力する。受信フィルタ77〜80のうちいずれか一つで帯域制限された受信信号は、LSI83に入力される。LSI83は、入力される受信信号に基づいて音声信号への復調処理を行ったり、携帯電話端末内の各部を動作制御する。一方、信号を送信する場合は、LSI83は送信信号を生成する。生成された送信信号は、パワーアンプ81または82で増幅されて、アンテナスイッチ回路72を介してアンテナ71から外部に出力される。
【0032】
以上のように、本実施の形態の弾性波素子を通信装置に備えることで、ロスが少なくフィルタ特性が優れた通信装置を実現することができる。
【0033】
〔5.実施の形態の効果、他〕
本実施の形態によれば、ダミー領域14の音速をIDT領域13における音速よりも遅くしたことにより、弾性波素子のストップバンドを低周波側に移動させることができ、共振周波数及び反共振周波数におけるロスを低減することができる。また、このような弾性波素子をフィルタ、通信モジュール、および通信装置に搭載することで、ロスが少なくフィルタ特性が優れたデバイスを実現することができる。
【0034】
なお、本実施の形態では、ラブ波デバイスの場合の実施例を挙げたが、本発明はラブ波デバイスに限らず、櫛形電極にアポダイズ重み付けを適用した弾性波素子であれば、本発明を適用可能である。例えば、弾性境界波デバイスにも適用が可能である。
【0035】
また、本実施の形態では、櫛形電極1及び2のIDT領域13の交差幅が互いに異なる部分を有する構成としたが、全て同じ交差幅としてもよい。
【0036】
また、本実施の形態では、高音速膜5または低音速膜6を備える構成としたが、両方を備える構成、すなわちIDT領域13に高音速膜5を備えてダミー領域14に低音速膜6を備える構成としてもよい。また、高音速領域4aを備えた構成において、さらにダミー領域14に低音速膜を備える構成としてもよい。
【0037】
また、本実施の形態における圧電基板3は、本発明の圧電基板の一例である。また、本実施の形態における第1の櫛形電極1、第2の櫛形電極2、および櫛形電極部21は、本発明の櫛形電極の一例である。また、本実施の形態におけるIDT領域13は、本発明の交差領域の一例である。また、本実施の形態におけるダミー電極14は、本発明の非交差領域の一例である。また、本実施の形態における高音速膜5は、本発明における音速が速い材料で形成された膜の一例である。また、本実施の形態における低音速膜6は、本発明における音速が遅い材料で形成された膜の一例である。また、本実施の形態におけるSiO2膜4は、本発明の誘電体層の一例である。
【0038】
以上、本発明の実施例について詳述したが、本発明は係る特定の実施例に限定されるものではなく、特許請求の範囲に記載された本発明の要旨の範囲内において、種々の変形・変更が可能である。
【0039】
(付記1)
圧電基板と、
前記圧電基板上において、互いに対向するように配された櫛形電極とを備えた弾性波素子であって、
前記櫛形電極は、
隣接電極が交差していない非交差領域と、隣接電極が交差している交差領域とを備え、
前記非交差領域は、前記交差領域よりも音速が遅くなるように形成されている、弾性波素子。
【0040】
(付記2)
前記櫛形電極は、互いに交差幅が異なる部分を有する、付記1記載の弾性波素子。
【0041】
(付記3)
前記櫛形電極は、
前記非交差領域に、前記交差領域における電極の幅より太い幅を有する電極を備えた、付記1記載の弾性波素子。
【0042】
(付記4)
前記櫛形電極上に形成された誘電体層を、さらに備え、
前記誘電体層は、
酸化シリコン(SiO2)を主成分とし、
前記櫛形電極の前記非交差領域を覆う部分が、前記交差領域を覆う部分よりも厚く形成されている、付記1記載の弾性波素子。
【0043】
(付記5)
前記櫛形電極における前記交差領域上に、音速が速い材料で形成された膜を備えた、付記1記載の弾性波素子。
【0044】
(付記6)
前記櫛形電極における前記非交差領域上に、音速の遅い材料で形成された膜を備えた、付記1記載の弾性波素子。
【0045】
(付記7)
前記誘電体層は、前記櫛形電極上を覆う部分の膜厚が、前記櫛形電極より厚い、付記4記載の弾性波素子。
【0046】
(付記8)
圧電基板と、
前記圧電基板上に形成された櫛形電極と、
前記櫛形電極に隣接する位置に配された反射器とを備え、
前記櫛形電極の交差幅が異なる部分を有する弾性波素子であって、
前記櫛形電極は、隣接電極が交差していない非交差領域と、隣接電極が交差する交差領域とを備え、
前記反射器は、前記櫛形電極の交差領域における音速より遅い音速を有する領域を備えた、弾性波素子。
【0047】
(付記9)
ラブ波デバイスで構成された、付記1〜8のいずれかに記載の弾性波素子。
【0048】
(付記10)
前記ラブ波デバイスに含まれる圧電基板は、ニオブ酸リチウム(LiNbO3)基板を用いる、付記9記載の弾性波素子。
【0049】
(付記11)
境界波デバイスで構成された、付記1〜9のいずれかに記載の弾性波素子。
【0050】
(付記12)
付記1〜11のいずれかに記載の弾性波素子を備えた、フィルタ。
【0051】
(付記13)
付記12に記載のフィルタを備えた、通信モジュール。
【0052】
(付記14)
付記13に記載の通信モジュールを備えた、通信装置。
【産業上の利用可能性】
【0053】
本発明の弾性波素子、フィルタ、通信モジュール、および通信装置は、所定周波数の信号を受信または送信することができる機器に有用である。
【図面の簡単な説明】
【0054】
【図1】実施の形態における弾性波素子の平面図
【図2】図1におけるA−A部の断面図
【図3】IDT領域における電極の太さ及びダミー領域における電極の太さと周波数特性との関係を示す特性図
【図4】IDT領域における電極の太さ及びダミー領域における電極の太さと周波数特性との関係を示す特性図
【図5】周波数特性とロスとの関係を示す特性図
【図6】従来の弾性波素子の構成を示す平面図
【図7】実施の形態における弾性波素子の応用例を示す平面図
【図8】実施の形態における弾性波素子をラダー型フィルタに適用した際の周波数特性を示す特性図
【図9】実施の形態における弾性波素子の第1実施例の構成を示す平面図
【図10】図9におけるA−A部の断面図
【図11】実施の形態における弾性波素子の第2実施例の構成を示す平面図
【図12】図11におけるA−A部の断面図
【図13】実施の形態における弾性波素子の第3実施例の構成を示す平面図
【図14】図13におけるA−A部の断面図
【図15】デュープレクサのブロック図
【図16】通信モジュールのブロック図
【図17】通信装置のブロック図
【符号の説明】
【0055】
1 第1の櫛形電極
2 第2の櫛形電極
11 第1の電極
12 第2の電極
13 IDT領域
14 ダミー領域

【特許請求の範囲】
【請求項1】
圧電基板と、
前記圧電基板上において、互いに対向するように配された櫛形電極とを備えた弾性波素子であって、
前記櫛形電極は、
隣接電極が交差していない非交差領域と、隣接電極が交差している交差領域とを備え、
前記非交差領域は、前記交差領域よりも音速が遅くなるように形成されている、弾性波素子。
【請求項2】
前記櫛形電極は、
前記非交差領域に、前記交差領域における電極の幅より太い幅を有する電極を備えた、請求項1記載の弾性波素子。
【請求項3】
前記櫛形電極上に形成された誘電体層を、さらに備え、
前記誘電体層は、
酸化シリコン(SiO2)を主成分とし、
前記櫛形電極の前記非交差領域を覆う部分が、前記交差領域を覆う部分よりも厚く形成されている、請求項1記載の弾性波素子。
【請求項4】
前記櫛形電極における前記交差領域上に、音速が速い材料で形成された膜を備えた、請求項1記載の弾性波素子。
【請求項5】
前記櫛形電極における前記非交差領域上に、音速の遅い材料で形成された膜を備えた、請求項1記載の弾性波素子。
【請求項6】
請求項1〜5のいずれかに記載の弾性波素子を備えた、フィルタ。
【請求項7】
請求項6に記載のフィルタを備えた、通信モジュール。
【請求項8】
請求項7に記載の通信モジュールを備えた、通信装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【公開番号】特開2009−232242(P2009−232242A)
【公開日】平成21年10月8日(2009.10.8)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−76248(P2008−76248)
【出願日】平成20年3月24日(2008.3.24)
【出願人】(000005223)富士通株式会社 (25,993)
【Fターム(参考)】