説明

弾性舗装ブロック及びその製造方法

【課題】表面の耐摩耗性を維持しつつ、反りが発生することを防ぐことができる弾性舗装ブロックを提供する。
【解決手段】粒状ゴムチップ材をバインダーで結合させて形成される表面層1と、前記バインダーを含有することなくゴム粉を熱圧縮成形して形成されるクッション層2の、少なくとも2層の積層構造で、弾性舗装ブロックを形成する。弾性舗装ブロックの表面は粒状ゴムチップ材をバインダーで結合させて形成される表面層1で形成されているため、弾性舗装ブロックの表面の耐摩耗性を維持することができる。表面層1にはバインダーを含有することなくゴム粉を熱圧縮成形して形成されるクッション層2が積層されているため、バインダーを含有しないクッション層2は劣化を受け難いものであって、表面層1のバインダーが劣化しても、表面層1の反り変形をクッション層2で防ぐことができ、弾性舗装ブロックに反り変形が生じることを防止できる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、地面等に敷設して使用される弾性舗装ブロック及びその製造方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
遊具で遊んでいる際の落下や、転倒などした場合の衝撃を吸収して、ケガを防止するために、また歩行の際の膝に対する衝撃を和らげるために、地面などに弾性舗装ブロックを敷設することが行なわれている。また最近では、馬事施設などにおいて、厩舎内や馬場に通じる屋外馬事通路に弾性舗装ブロックを敷設して、馬の歩行時の衝撃や騒音を防ぎ、また床面の冷えから馬を守ることが行なわれている。
【0003】
上記のような用途に使用される弾性舗装ブロックとして、最近では、ゴム製品の廃材から製造されたものが広く利用されている。例えば、廃棄タイヤなどを粉砕して得られるゴムチップ材を用い、この粒状のゴムチップ材をバインダーで結合して製造した弾性舗装ブロックが多く利用されている(例えば特許文献1,2等参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開平7−9459号公報
【特許文献2】特開2010−24647号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
上記のような粒状のゴムチップ材をバインダーで結合した弾性舗装ブロックとしては、特許文献1、2にみられるように、ゴムチップ材をバインダーで結合した結合体の層のみからなる単一層構造のものが多い。
【0006】
ここで、弾性舗装ブロックは直射日光にさらされる屋外環境で使用されることが多く、長期に亘って敷設している間に、弾性舗装ブロックの表面付近のバインダーが熱や紫外線により劣化するおそれがある。そしてこのように表面付近のバインダーが劣化すると、弾性舗装ブロックの表面付近が収縮して、弾性舗装ブロックに端部が持ち上がる格好で反りが発生することになる。また弾性舗装ブロックの表面付近だけでなくバインダーの全体も経年劣化するものであり、このようなバインダーの経年劣化によっても、弾性舗装ブロックに反りなどの変形が生じる。
【0007】
しかしこのように弾性舗装ブロックが反って変形すると、弾性舗装ブロックの上を歩行する際の人の加重で弾性舗装ブロックがガタついて、歩行する人の足元が不安定になり、また隣り合う弾性舗装ブロック間の段差につまずいて転倒するなど、怪我のもとになるおそれがある。このため、弾性舗装ブロックを敷設した後に反り変形が発生すると、わずか数年で引き剥がして、新品に入れ替える必要があるという問題があった。
【0008】
そこで、バインダーによるゴムチップ材間の結合強度を一定レベル以上に保持して表面の耐摩耗性を確保しつつ、バインダーの劣化に起因する反りの進行を抑制するために、弾性舗装ブロックの製品厚みを大きくして剛性を高めることが行なわれている。しかし弾性舗装ブロックの厚みを大きくすると、製品重量が増して取扱い性が悪くなると同時にコスト増になるという問題が生じる。しかも表面付近のバインダーの収縮による反りを解消するまでには至らず、反りの進行速度を抑制して弾性舗装ブロックの交換時期を多少延ばすことができる程度のものであり、抜本的対策とはいえないものであった。
【0009】
本発明は上記の点に鑑みてなされたものであり、表面の耐摩耗性を維持しつつ、反りが発生することを防ぐことができる弾性舗装ブロックを提供することを目的とするものであり、また製造工程を簡略化してコスト安価に製造を行なうことができる弾性舗装ブロックの製造方法を提供することを目的とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明の請求項1に係る弾性舗装ブロックは、粒状ゴムチップ材をバインダーで結合させて形成される表面層1と、前記バインダーを含有することなくゴム粉を熱圧縮成形して形成されるクッション層2の、少なくとも2層の積層構造で形成されて成ることを特徴とするものである。
【0011】
弾性舗装ブロックの表面は粒状ゴムチップ材をバインダーで結合させて形成される表面層1で形成されているため、弾性舗装ブロックの表面の耐摩耗性を高く維持することができると共に、またこの表面層1にバインダーを含有することなくゴム粉を熱圧縮成形して形成されるクッション層2が積層されているため、バインダーを含有しないクッション層2は劣化を受け難いものであって、表面層1のバインダーが劣化しても、表面層1の反り変形をクッション層2で防ぐことができ、弾性舗装ブロックに反り変形が生じることを防止することができるものである。
【0012】
本発明の請求項2に係る弾性舗装ブロックは、粒状ゴムチップ材をバインダーで結合して形成される表面層1及び裏面層3と、表面層1と裏面層3の間に配置され、前記バインダーを含有することなくゴム粉を熱圧縮成形して形成されるクッション層2の、少なくとも3層の積層構造で形成されて成ることを特徴とするものである。
【0013】
弾性舗装ブロックの表面は粒状ゴムチップ材をバインダーで結合させて形成される表面層1で形成されているため、弾性舗装ブロックの表面の耐摩耗性を高く維持することができると共に、またこの表面層1にバインダーを含有することなくゴム粉を熱圧縮成形して形成されるクッション層2が積層されているため、バインダーを含有しないクッション層2は劣化を受け難いものであって、表面層1のバインダーが劣化しても、表面層1の反り変形をクッション層2で防ぐことができ、弾性舗装ブロックに反り変形が生じることを防止できるものであり、しかも同じ構造の表面層1と裏面層3がクッション層2の表裏に対称的に積層されているために、表面層1と裏面層3の反りが相殺されて、反り変形がより生じ難いものである。
【0014】
また請求項3の発明は、上記粒状ゴムチップ材とゴム粉の少なくとも一方が、ゴム廃棄物の再利用品であることを特徴とするものであり、廃棄物の再生利用によって省資源化に寄与することができるものである。
【0015】
また請求項4の発明は、上記粒状ゴムチップ材の粒径が0.3〜10.0mmであることを特徴とするものであり、表面層1や裏面層3の強度を確保しつつ透水性を良好に得ることができるものである。
【0016】
また請求項5の発明は、上記ゴム粉の粒径が3〜80μmであることを特徴とするものであり、ゴム粉同士を隙間なく充填することができ、ゴム粉の界面の接触面積を増大させて結合強度を確保し、クッション層2の強度や弾性力を高く得ることができるものである。
【0017】
本発明の請求項6に係る弾性舗装ブロックの製造方法は、粒状ゴムチップ材とバインダーを含有する材料の層5,6の間に、前記バインダーを配合しないゴム粉を含有する材料の層7を重ね、これを熱圧縮して同時一体成形することによって、粒状ゴムチップ材をバインダーで結合して形成される表面層1及び裏面層3と、表面層1と裏面層3の間に配置され、バインダーを含有することなくゴム粉を熱圧縮成形して形成されるクッション層2の、少なくとも3層の積層構造で形成される弾性舗装ブロックを製造することを特徴とするものである。
【0018】
粒状ゴムチップ材とバインダーを含有する材料の層5,6とバインダーを配合しないゴム粉を含有する材料の層7を熱圧縮して同時に一体成形することによって、粒状ゴムチップ材をバインダーで結合して形成される表面層1及び裏面層3と、バインダーを用いることなくゴム粉を熱圧縮成形して形成されるクッション層2をそれぞれ成形すると同時に、各層を積層して弾性舗装ブロックを製造することができるものであり、表面層1及び裏面層3とクッション層2を個別に成形してこれらを貼り合せて弾性舗装ブロックを製造する工法に比べて、製造工程を少なくして簡略化することができ、コスト安価に弾性舗装ブロックを製造することができるものである。
【発明の効果】
【0019】
本発明の請求項1に係る弾性舗装ブロックによれば、弾性舗装ブロックの表面は粒状ゴムチップ材をバインダーで結合させて形成される表面層1で形成されているため、弾性舗装ブロックの表面の耐摩耗性を高く維持することができると共に、またこの表面層1にバインダーを含有することなくゴム粉を熱圧縮成形して形成されるクッション層2が積層されているため、バインダーを含有しないクッション層2は劣化を受け難いものであって、表面層1のバインダーが劣化しても、表面層1の反り変形をクッション層2で防ぐことができ、弾性舗装ブロックに反り変形が生じることを防止することができるものである。
【0020】
本発明の請求項2に係る弾性舗装ブロックによれば、弾性舗装ブロックの表面は粒状ゴムチップ材をバインダーで結合させて形成される表面層1で形成されているため、弾性舗装ブロックの表面の耐摩耗性を高く維持することがきると共に、またこの表面層1にバインダーを含有することなくゴム粉を熱圧縮成形して形成されるクッション層2が積層されているため、バインダーを含有しないクッション層2は劣化を受け難いものであって、表面層1のバインダーが劣化しても、表面層1の反り変形をクッション層2で防ぐことができ、弾性舗装ブロックに反り変形が生じることを防止できるものであり、しかも同じ構造の表面層1と裏面層3がクッション層2の表裏に対称的に積層されているために、表面層1と裏面層3の反りが相殺されて、反り変形がより生じ難いものである。
【0021】
本発明の請求項6に係る弾性舗装ブロックの製造方法によれば、粒状ゴムチップ材とバインダーを含有する材料の層5,6とバインダーを配合しないゴム粉を含有する材料の層7を熱圧縮して同時に一体成形することによって、粒状ゴムチップ材をバインダーで結合して形成される表面層1及び裏面層3と、バインダーを含有することなくゴム粉を熱圧縮成形して形成されるクッション層2をそれぞれ成形すると同時に、各層を積層して弾性舗装ブロックを製造することができるものであり、表面層1及び裏面層3とクッション層2を個別に成形してこれらを貼り合せて弾性舗装ブロックを製造する工法に比べて、製造工程を少なくして簡略化することができ、コスト安価に弾性舗装ブロックの製造を行なうことができるものである。
【図面の簡単な説明】
【0022】
【図1】本発明に係る弾性舗装ブロックを示すものであり、(a)(b)はそれぞれ各態様の斜視図である。
【図2】本発明に係る弾性舗装ブロックの製造方法を示すものであり、(a)(b)はそれぞれ各工程の断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0023】
以下、本発明の実施の形態を説明する。
【0024】
本発明において、弾性舗装ブロックAの表面層1や裏面層3を形成する粒状ゴムチップ材や、クッション層2を形成するゴム粉としては、特に限定されるものではないが、ゴム廃棄物から得られるものを用いるのが好ましい。ゴム廃棄物は、ゴムを加硫する前の廃棄物であっても、ゴムを加硫した後の廃棄物であってもいずれでもよい。粒状ゴムチップ材は例えばゴム廃棄物を破砕や粉砕して得ることができ、またゴム粉はゴム廃棄物の研磨粉として得ることができる。このようにゴム廃棄物を用いることによって、廃棄物を有効再利用して省資源化することができるものであり、また材料コストが殆どかからないためにより安価な弾性舗装ブロックAを製造することができるものである。ここで例えば、ゴム廃棄物として伝動ベルトの廃棄物を用いる場合、伝動ベルトにはゴムの他に、短繊維や帆布として綿、ナイロン6、パラ系アラミド、メタ系アラミド、ビニロンなどの繊維や、心線としてポリエステルなどの繊維が含有されている。このため、弾性舗装ブロックAにゴムチップ材の他に繊維も含有させることができ、強度や弾性に優れた弾性舗装ブロックAを得ることができるものである。
【0025】
また粒状ゴムチップ材やゴム粉のゴム成分は、特に限定されるものではなく、クロロプレン系ゴム、EPDM系ゴム、天然ゴム系ゴム、ブタジエン系ゴム、スチレンブタジエン系ゴム、水素化ニトリル系ゴム、ACSM(アルキル化クロロスルフォン化ポリエチレン)系ゴムなど、任意である。
【0026】
弾性舗装ブロックAの表面層1や裏面層3を形成する粒状ゴムチップ材の粒径は、表面層1や裏面層3の引張強度や耐久性を確保しながら高い透水性を得るために重要であり、0.3〜10.0mmの範囲が好ましく、より好ましくは2〜6mmの範囲である。粒状ゴムチップ材の粒径が6mmを超えて、特に10.0mmを超えて大きいと、粒状ゴムチップ材間の結合強度が低くなるため、表面層1や裏面層3に欠損が生じ易くなり、また摩耗も早くなるため好ましくない。逆に粒状ゴムチップ材の粒径が2mm未満、特に0.3mm未満の場合には、粒状ゴムチップ材間に空隙を形成することが難しくなり、水溶性物質の水溶処理を行なっても表面層1や裏面層3に空隙を形成できなくなるため、透水性を得ることが困難になる。
【0027】
また弾性舗装ブロックAのクッション層2を形成するゴム粉の粒径は、強度と弾性を確保するために重要であり、3〜80μmの範囲が好ましい。ゴム粉の粒径が3μm未満の場合、ゴム粉が嵩高になるので成形の際の成形型への投入において、取り扱い性が低下するおそれがある。逆にゴム粉の粒径が80μm超の場合、ゴム粉同士を隙間なく充填することができず、ゴム粉の界面の接触面積を大きく確保することができなくなって、ゴム粉同士の結合強度が低くなり、クッション層2に欠損が生じるおそれがあると共に、必要な強度や弾性力を得ることが困難になるものである。
【0028】
そして粒状ゴムチップ材に接着剤として液状のバインダーを添加し、これを十分に撹拌・混合してバインダーを粒状ゴムチップ材の全表面に分散浸透させ、この粒状ゴムチップ材とバインダーの混合物を型に注型し、これを加熱加圧成形してバインダーを硬化させたり、あるいは空気中の水分によりバインダーを自然硬化させたりすることによって、粒状ゴムチップ材をバインダーで結合したゴムチップ結合体からなる表面層1や裏面層3を成形することができるものである。加熱加圧成形の条件は特に限定されるものではないが、型温度140〜180℃、時間3〜30分、面圧0.1〜15MPaの範囲に設定するが好ましい。
【0029】
上記のバインダー接着剤としては、特に限定されるものではないが、1液性のウレタンバインダーなどを用いることができる。1液性のウレタンバインダーはNCO末端プレポリマーが主成分であり、粒状ゴムチップ材をNCO末端プレポリマーで結合することにより、弾性舗装ブロックAの強度および耐久性を高める効果を得ることができるものである。バインダーとしては、このようなポリウレタン系の他に、エポキシ樹脂系やアクリル樹脂系などの公知の接着剤を使用することもできる。
【0030】
またゴム粉はバインダーと混合することなく、ゴム粉単体で用いるものであり、ゴム粉の凝集物を型に入れ、加熱加圧して熱圧縮成形することにより、バインダーが一切介在しないゴム粉圧縮体からなるクッション層2を成形することができるものである。加熱加圧の熱圧縮条件は、特に限定されるものではないが、金型温度100〜180℃(より好ましくは140〜180℃)、時間3〜30分、面圧1〜15MPaの範囲に設定するのが好ましい。
【0031】
ゴム製品から得られたゴム粉には、ゴム製品において加硫に寄与せず残存していた加硫剤や加硫促進剤が含まれており、加熱加圧して熱圧縮成形する際にゴム粉同士が界面で共加硫により結合し、成形体として一体に固化するものであり、またゴム粉は粒径の小さい粉状であるので、ゴム粉同士が隙間なく充填され、界面の接触面積が大きくなって共加硫によるゴム粉同士の結合力が増大する。従って、バインダーを用いてゴム粉を結合させる必要なく、熱圧縮成形でゴム粉の圧縮体としてクッション層2を成形することができるものである。
【0032】
上記のようにして成形した表面層1の下面にクッション層2を重ねて接着することによって、図1(a)に示すような、表面層1とクッション層2の2層積層構造の弾性舗装ブロックAを作製することができるものである。また上記のようにして成形した表面層1と裏面層3の間にクッション層2を重ねて、つまりクッション層2の上面に表面層1を、クッション層2の下面に裏面層3を重ねて、接着することによって、図1(b)のような、表面層1とクッション層2と裏面層3の3層積層構造の弾性舗装ブロックAを作製することができるものである。表面層1や裏面層3とクッション層2とを接着する接着剤としては、任意のものを用いることができるが、例えば上記のように粒状ゴムチップ材を結合するバインダーとして使用した接着剤を用いることができる。
【0033】
図1(a)には、表面層1とクッション層2が接する2層のみの積層構造の弾性舗装ブロックAを示したが、クッション層2の下側に他の層を積層するなど、3層以上の積層構造であってもよい。また図1(b)には、表面層1とクッション層2と裏面層3が接する3層のみの積層構造の弾性舗装ブロックAを示したが、裏面層3の下側に他の層を積層するなど、4層以上の積層構造であってもよい。
【0034】
そして図1(a)の表面層1とクッション層2を積層した構造の弾性舗装ブロックAにあって、表面層1は粒状ゴムチップ材をバインダーで結合したゴムチップ結合体からなるので、弾性舗装ブロックAの表面の耐摩耗性は、硬化したバインダーによって高く維持することがきるものである。またクッション層2はバインダーを含有しないゴム粉の層からなるので、ゴムの弾力性がそのまま維持されており、弾性舗装ブロックAに高い衝撃吸収性を付与することができるものである。
【0035】
ここで、表面層1には上記のようにバインダーが含有されているので、日光の照射等によってバインダーが経時劣化すると、表面層1に収縮が生じることがある。しかし、表面層1の背面側に積層されたクッション層2は、バインダーを一切含有しないので経時的な劣化を受け難いものであり、ゴム粉を熱圧縮成形して一体化したときの形状寸法が長期に亘って維持される。このため、表面層1が収縮して反ろうとする力に対して反発する応力(引張力)がクッション層2に作用し、弾性舗装ブロックAに反りが発生することを防ぐことができるものである。そのため、衝撃吸収性能に過大な影響を及ぼさない範囲内で、弾性舗装ブロックAの製品厚みを薄くできるものであり、重量化することを避けることができるので取扱性が向上し、また材料コストを抑制して安価に製造することができるものである。
【0036】
また上記のように、クッション層2はゴム粉の熱圧縮成形で形成されており、バインダーを一切含有しないので、粒状ゴムチップ材を結合させるためにバインダーを硬化させた表面層1よりもクッション層2のほうが、一般的に硬さが低く設定されており、このクッション層2で弾性舗装ブロックAの弾性が高く確保されている。そして、表面層1のバインダーの経時劣化で表面層1が硬くなっても、バインダーを含有しないクッション層2は経時変化による硬さの変化は小さく、製造時点での硬さが長期間維持されるので、弾性舗装ブロックAの弾性の変化は小さいものであり、弾性舗装ブロックAの衝撃吸収性能を長期に亘って高く保つことができるものである。
【0037】
上記のように、弾性舗装ブロックAの表面の耐摩耗性は表面層1で、衝撃吸収性はクッション層2で、というように各特性を各層で分担させるようにしている。従って、耐摩耗性は表面層1の嵩密度やバインダーの添加量で調整することによって、また衝撃吸収性はクッション層2の嵩密度や厚みで調整することによって、これらの特性を個別に設計することが可能になるものであり、従来の単一層構造のものよりも、容易にユーザーの要求に対応することができるものである。
【0038】
また、図1(b)の表面層1及び裏面層3とクッション層2を積層した構造の弾性舗装ブロックAにあっても、上記と同様な利点を有するものである。しかもこのものでは、表面層1の他に裏面層3を有するので、クッション層2を挟んで上下に対称的な層構成に形成されている。表面層1と裏面層3はそれぞれバインダーを含有して形成されているので、表面層1と裏面層3のバインダーがそれぞれ経時的に劣化して収縮しても、クッション層2の上と下で同じ寸法変化が生じることになるものであり、表面層1と裏面層3の反りが相殺されて、弾性舗装ブロックAに反り変形がより生じ難くなるものである。従って、表面層1と裏面層3は同じ組成で形成するのが好ましく、また厚みも同じに設定するのが好ましい。
【0039】
弾性舗装ブロックAの厚みは特に制限されるものではないが、表面層1や裏面層3の厚みを2〜10mm程度、クッション層2の厚みを5〜40mm程度に設定し、また表面層1や裏面層3とクッション層2の厚みの比を1:2〜1:5の範囲に設定するのが好ましい。さらに弾性舗装ブロックAの嵩密度は特に制限されるものではないが、表面層1や裏面層3の嵩密度は0.6〜1.3g/cm程度に、クッション層2の嵩密度は0.5〜1.2g/cm程度に設定するのが好ましい。
【0040】
上記の実施の形態では、表面層1及び裏面層3とクッション層2をそれぞれ予め成形して作製しておき、クッション層2の上面に表面層1を、クッション層2の下面に裏面層3をそれぞれ接着剤で接着することによって、図1(b)のような表面層1とクッション層2と裏面層3の3層積層構造の弾性舗装ブロックAを製造するようにしたが、図2に示す同時一体成形法で弾性舗装ブロックAを製造することもできる。
【0041】
すなわちまず、粒状ゴムチップ材にバインダーを混合して表面層1用や裏面層3用の材料5,6を調製し、またバインダーを配合しないゴム粉でクッション層2用の材料7を調製する。そして図2(a)のように、成形型9のキャビティ凹所10内に表面層1用の材料6、クッション層2用の材料7、裏面層3用の材料5を供給し、キャビティ凹所10内に材料6,7,5を堆積させる。次に成形型9でキャビティ凹所10内の材料6,7,5を加熱しながら、図2(b)のように、加圧盤11でキャビティ凹所10内の材料6,7,5を加圧して、熱圧縮成形する。このように熱圧縮成形することによって、粒状ゴムチップ材をバインダーで結合したゴムチップ結合体からなる表面層1や裏面層3を成形することができると同時に、ゴム粉の圧縮体としてクッション層2を成形することができるものであり、さらに同時に、粒状ゴムチップ材を結合させるためのバインダーでクッション層2に表面層1と裏面層3を接着することができ、一度の熱圧縮成形で、表面層1とクッション層2と裏面層3の3層積層構造の弾性舗装ブロックAを得ることができるものである。
【0042】
このようにして、粒状ゴムチップ材をバインダーで結合して形成される表面層1及び裏面層3と、バインダーを用いることなくゴム粉を熱圧縮成形して形成されるクッション層2をそれぞれ成形すると同時に、各層1,2,3を積層して弾性舗装ブロックAを製造することができるものである。従って、表面層1及び裏面層3とクッション層2を個別に成形した後、これらの各層を貼り合せることによって弾性舗装ブロックAを製造する場合に比べて、製造工程を少なくすることができるものであり、コスト安価に弾性舗装ブロックAの製造を行なうことができるものである。
【0043】
尚、図2の製造方法を図1(a)の表面層1とクッション層2を積層した構造の弾性舗装ブロックAに適用することは好ましくない。すなわち、成形型9のキャビティ凹所10内に、粒状ゴムチップ材にバインダーを混合して調製した表面層1用の材料6と、バインダーを配合しないゴム粉で調製したクッション層2用の材料7を供給して堆積させ、加圧盤11でキャビティ凹所10内の材料6,7を加圧して、熱圧縮成形することによって、表面層1とクッション層2の2層積層構造の弾性舗装ブロックAを製造することができる。しかし、表面層1はバインダーを含有しているのに対してクッション層2はバインダーを含有していないので、成形後の冷却の際に表面層1が収縮する寸法とクッション層2が収縮する寸法が大きく異なり、この寸法収縮の差で表面層1とクッション層2の2層積層構造の弾性舗装ブロックAには反りが大きく発生することになるので、図2の製造方法を適用するのは難しい。一方、図1(b)のような表面層1と裏面層3の間にクッション層2を積層した3層構造の弾性舗装ブロックAでは、クッション層2を挟んで表面層1と裏面層3が対称的に積層されているので、表面層1とクッション層2の間の寸法収縮の差と、クッション層2と裏面層3の間の寸法収縮の差が相殺され、反りが発生するようなことなく弾性舗装ブロックAを製造することができるものである。
【実施例】
【0044】
次に、本発明を実施例によって具体的に説明する。
【0045】
(実施例1)
表1に示すクロロプレンゴム組成物からなる加硫済みのゴム製品(伝動ベルト)を3mmの粒径になるように粉砕し、粒状ゴムチップ材を得た。この粒状ゴムチップ材100質量部に、バインダー(1液性のウレタンバインダー:三井化学ポリウレタン社製「タケネートF−188P」)を30質量部添加して混合し、表面層1用及び裏面層3用の材料5,6を準備した。また表1に示すクロロプレンゴム組成物からなる加硫済みのゴム製品(伝動ベルト)を研磨して得た粒径10μmのゴム粉を、バインダーを配合しないでクッション層2用の材料7として準備した。
【0046】
【表1】

【0047】
次に、図2(a)のように、成形型9のキャビティ凹所10に表面層1用の材料6、クッション層2用の材料7、裏面層3用の材料5をこの順に投入した。表面層1用の材料6と裏面層3用の材料5は同じ量で投入した。そして図2(b)のように、170℃、10分、面圧11MPaの条件で熱圧縮成形した後、成形品を取り出して常温冷却した。このようにして、表面層1とクッション層2と裏面層3の3層積層構造からなる、縦200mm、横100mm、厚み43mmの弾性舗装ブロック用試験片を得た。
【0048】
(実施例2)
成形型9への表面層1用の材料6と裏面層3用の材料5の投入量を実施例1と同じに設定し、またクッション層2用の材料7の投入量を実施例1より少なく設定する他は、実施例1と同様に成形した。このようにして、表面層1と裏面層3の厚み及び嵩密度が実施例1と同じであり、クッション層2の嵩密度が実施例1と同じで且つ厚みが実施例1より薄い、縦200mm、横100mm、厚み22mmの弾性舗装ブロック用試験片を得た。
【0049】
(実施例3)
上記の表1に示すクロロプレンゴム組成物からなる加硫済みのゴム製品(伝動ベルト)を3mmの粒径になるように粉砕し、粒状ゴムチップ材を得た。この粒状ゴムチップ材100質量部に、バインダー(1液性のウレタンバインダー:三井化学ポリウレタン社製「タケネートF−188P」)を30質量部添加して混合し、表面層1用及び裏面層3用の材料5,6を準備した。また表2に示すEPDMゴム組成物からなる加硫済みのゴム製品(伝動ベルト)を研磨して得た粒径10μmのゴム粉を、バインダーを配合しないでクッション層2用の材料7として準備した。
【0050】
【表2】

【0051】
次に、図2(a)のように、成形型9のキャビティ凹所10に表面層1用の材料6、クッション層2用の材料7、裏面層3用の材料5をこの順に投入した。表面層1用の材料6と裏面層3用の材料5は同じ量で投入した。そして図2(b)のように、170℃、10分、面圧11MPaの条件で熱圧縮成形した後、成形品を取り出して常温冷却した。このようにして、表面層1とクッション層2と裏面層3の3層積層構造からなる、縦200mm、横100mm、厚み22mmの弾性舗装ブロック用試験片を得た。
【0052】
(実施例4,5)
成形型9への表面層1用の材料6と裏面層3用の材料5の投入量を実施例3と同じに設定し、またクッション層2用の材料7の投入量を実施例3より少なく設定する他は、実施例3と同様に成形した。このようにして、表面層1と裏面層3の厚み及び嵩密度が実施例3と同じであり、クッション層2の厚みが実施例3と同じで且つ嵩密度が実施例3より小さい、縦200mm、横100mm、厚み22mmの弾性舗装ブロック用試験片を得た。
【0053】
(実施例6)
上記の表1に示すクロロプレンゴム組成物からなる加硫済みのゴム製品(伝動ベルト)を3mmの粒径になるように粉砕し、粒状ゴムチップ材を得た。この粒状ゴムチップ材100質量部に、バインダー(1液性のウレタンバインダー:三井化学ポリウレタン社製「タケネートF−188P」)を30質量部添加して混合し、表面層1用の材料6を準備した。そしてこの材料6を成形型9のキャビティ凹所10に投入し、170℃、10分、面圧11MPaの条件で熱圧縮成形した後、取り出し、常温冷却して表面層1を得た。
【0054】
また上記の表1に示すクロロプレンゴム組成物からなる加硫済みのゴム製品(伝動ベルト)を研磨して得た粒径10μmのゴム粉を、バインダーを配合しないでクッション層2用の材料7として準備した。そしてこの材料7を成形型9のキャビティ凹所10に投入し、170℃、10分、面圧11MPaの条件で熱圧縮成形した後、取り出し、常温冷却してクッション層2を得た。
【0055】
次に、上記の表面層1とクッション層2を接着剤(1液性のウレタンバインダー:三井化学ポリウレタン社製「タケネートF−188P」)で接着して貼り合わせることによって、表面層1とクッション層2の2層積層構造からなる、縦200mm、横100mm、厚み22mmの弾性舗装ブロック用試験片を得た。
【0056】
(比較例1)
上記の表1に示すクロロプレンゴム組成物からなる加硫済みのゴム製品(伝動ベルト)を3mmの粒径になるように粉砕し、粒状ゴムチップ材を得た。この粒状ゴムチップ材100質量部に、バインダー(1液性のウレタンバインダー:三井化学ポリウレタン社製「タケネートF−188P」)を30質量部添加して混合した材料6を準備した。そしてこの材料6を成形型9のキャビティ凹所10に投入し、170℃、10分、面圧11MPaの条件で熱圧縮成形した後、取り出して常温冷却した。このようにして、表面層1の単層構造からなる、200mm、横100mm、厚み42mmの弾性舗装ブロック用試験片を得た。
【0057】
(比較例2)
成形型9へ材料6の投入量を比較例1より少なく設定する他は、比較例1と同様に成形した。このようにして、嵩密度が比較例1と同じであり、厚みが薄い、表面層1の単層構造からなる、200mm、横100mm、厚み22mmの弾性舗装ブロック用試験片を得た。
【0058】
(比較例3)
上記の表1に示すクロロプレンゴム組成物からなる加硫済みのゴム製品(伝動ベルト)を3mmの粒径になるように粉砕し、粒状ゴムチップ材を得た。この粒状ゴムチップ材100質量部に、バインダー(1液性のウレタンバインダー:三井化学ポリウレタン社製「タケネートF−188P」)を30質量部添加して混合し、表面層1用の材料6を準備した。また上記の表1に示すクロロプレンゴム組成物からなる加硫済みのゴム製品(伝動ベルト)を研磨して得た粒径10μmのゴム粉を、バインダーを配合しないでクッション層2用の材料7として準備した。
【0059】
次に、成形型9のキャビティ凹所10に表面層1用の材料6、クッション層2用の材料7を投入し、170℃、10分、面圧11MPaの条件で熱圧縮成形した後、成形品を取り出して常温冷却した。このようにして、表面層1とクッション層2の2層積層構造からなる、縦200mm、横100mm、厚み22mmの弾性舗装ブロック用試験片を得た。
【0060】
上記のようにして実施例、比較例で得た弾性舗装ブロック用試験片について、嵩密度、耐摩耗性、衝撃吸収性、耐候性を測定した。その結果を表3に示す。尚、測定方法は以下の通りである。
【0061】
嵩密度は、試験片の質量(g)/試験片の体積(cm)の式により算出して求めた。
耐摩耗性は、試験片に4.9N(500gf)の荷重をかけ、テーバ摩耗試験を行うことにより測定し、摩耗率(%)を[摩耗量(g)/試験前の試験片の質量(g)×100]の式より算出した。
衝撃吸収性は、床の硬さ試験(JIS A6519)に準拠して測定し、鋼製ヘッド体(質量3.85kg)を試験片の上に高さ20cmから自由落下させたときの衝撃加速度(G値)を求めた。
耐候性は、人工光源キセノンアークによる耐候性試験機(スガ試験機社製「強エネルギーキセノンメーター」)を使用して測定し、照射時間に対する試験片の反りの有無を確認して評価した。
【0062】
【表3】

【0063】
表3にみられるように、表面層の単層構造の比較例1、2では、耐候性試験をすることによって反りが発生したが、表面層と裏面層の間にクッション層を積層した実施例1〜5や、表面層の背面側にクッション層を接着剤で貼り合わせた実施例6では、反りの発生が認められないものであり、バインダーを含有しないクッション層を積層することによって反りの発生を防ぐことができることが確認された。
【0064】
また、実施例1〜5のように、表面層とクッション層と裏面層の3層積層構造の弾性舗装ブロックについては、反りが発生することなく同時一体成形によって製造を行なうことができた。これに対して、表面層とクッション層の2層積層構造の弾性舗装ブロックについては、比較例3のように、同時一体成形すると、成形直後に反りが発生するものであり、同時一体成形は適していないことが確認された。
【符号の説明】
【0065】
1 表面層
2 クッション層
3 裏面層
A 弾性舗装ブロック

【特許請求の範囲】
【請求項1】
粒状ゴムチップ材をバインダーで結合して形成される表面層と、前記バインダーを含有させることなくゴム粉を熱圧縮成形して形成されるクッション層の、少なくとも2層の積層構造で形成されて成ることを特徴とする弾性舗装ブロック。
【請求項2】
粒状ゴムチップ材をバインダーで結合して形成される表面層及び裏面層と、表面層と裏面層の間に配置され、前記バインダーを含有させることなくゴム粉を熱圧縮成形して形成されるクッション層の、少なくとも3層の積層構造で形成されて成ることを特徴とする弾性舗装ブロック。
【請求項3】
上記粒状ゴムチップ材とゴム粉の少なくとも一方は、ゴム廃棄物の再利用品であることを特徴とする請求項1又は2に記載の弾性舗装ブロック。
【請求項4】
上記粒状ゴムチップ材は粒径が0.3〜10.0mmであることを特徴とする請求項1乃至3のいずれかに記載の弾性舗装ブロック。
【請求項5】
上記ゴム粉は粒径が3〜80μmであることを特徴とする請求項1乃至4のいずれかに記載の弾性舗装ブロック。
【請求項6】
上記請求項2乃至5のいずれかに記載の弾性舗装ブロックを製造するにあたって、粒状ゴムチップ材とバインダーを含有する材料の層の間に、前記バインダーを配合しないゴム粉を含有する材料の層を重ね、これを熱圧縮して同時一体成形することによって、粒状ゴムチップ材をバインダーで結合して形成される表面層及び裏面層と、表面層と裏面層の間に配置され、前記バインダーを含有することなくゴム粉を熱圧縮成形して形成されるクッション層の、少なくとも3層の積層構造で形成される弾性舗装ブロックを製造することを特徴とする弾性舗装ブロックの製造方法。

【図1】
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【図2】
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