説明

弾性表面波センサアセンブリ

本発明は、Z軸導電性エラストマーなどのZ軸導電層を使用する弾性表面波センサ(SAW)アセンブリに関する。特に、Z軸導電性エラストマーが、SAWセンサアセンブリを形成するために、回路層を弾性表面波(SAW)センサに結合する。たとえば、回路層の複数の電気コンタクトを、Z軸導電性エラストマーを介して、SAWセンサの複数の電極に結合することができる。Z軸導電性エラストマーは、電気コンタクトと電極との間の電気的結合を提供し、また、回路層とSAWセンサとの間の密閉バリヤを形成する。さらに、Z軸導電性エラストマーの弾性特性は、使用の間SAWセンサ上に加えられる圧力を低減することができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本出願は、2003年12月30日に出願された米国仮特許出願第60/533,176号への優先権を主張し、その出願の全体を引用によりここに援用する。
【0002】
本発明は、弾性表面波(SAW)センサに関し、より特定的には、SAWセンサを回路に結合するための技術に関する。
【背景技術】
【0003】
化学的および生物学的テストが、一般に、化学剤または生物学的剤の存在または不在についてテストするために用いられる。血液、食物、または他の材料中の化学剤または生物学的剤の存在についてのテストは、一般に、安全性を保証するために、または健康状態の診断を促進するために行われる。たとえば、テストが、医療患者からとられた血液サンプル、実験のために開発された実験室サンプル、食物サンプルなどの中の、化学物質、細菌、または他の作用物質(agent)を特定するために用いられる。さらに、化学的および生物学的テストは、また、妊娠、糖尿病、および患者の化学または生物学に影響を及ぼすことがある非常にさまざまな他の状態などの健康状態についてテストするために用いられる。
【0004】
化学的または生物学的検知能力のために開発されたセンサの1タイプは、弾性表面波(SAW)センサである。SAWの一例は、ラブモード剪断水平弾性表面波(Love mode shear−horizontal surface acoustic wave)(SH−SAW)センサである。SH−SAWセンサは、4つの主構成要素:1)圧電性基材;2)圧電効果に基いて音波を励起するために使用される、基材上の入力インターデジット式(inter−digitated)トランスデューサ(IDT);3)圧電効果を利用することによって、伝送された音波を受けて電気出力を発生する、基材上の出力IDT;および4)入力IDTから出力IDTへの伝送のためSHタイプ波を導波路ラブモードに変換する、IDT上の導波路層、を含む。SH−SAWの表面上の1つ以上の材料の存在は、導波路層を通る波伝播に影響を及ぼし、これは、所与の作用物質の検出を促進する。
【0005】
動作中、SAWセンサが回路に電気的に結合され、回路は、信号をSAWに送り、SAWから信号を受ける。特に、回路は、典型的には、SAWの電極に半田付けされた回路トレースを含む。このように、電気信号を、SAWを駆動するためにSAWに送ることができ、回路による処理のためにSAWから受けることができる。
【発明の開示】
【課題を解決するための手段】
【0006】
概して、本発明は、Z軸導電性エラストマーなどのZ軸導電層を使用する弾性表面波センサ(SAW)アセンブリに関する。特に、Z軸導電性エラストマーが、SAWセンサアセンブリを形成するために、回路層をSAWセンサに結合する。たとえば、回路層の複数の電気コンタクトを、Z軸導電性エラストマーを介して、SAWセンサの複数の電極に結合することができる。Z軸導電性エラストマーは、電気コンタクトと電極との間の電気的結合を提供し、また、回路層とSAWセンサとの間の密閉バリヤを形成することができる。さらに、その弾性特性のため、Z軸導電性エラストマーは、使用の間SAWセンサ上に加えられる圧力を低減することができる。
【0007】
回路層に開口を形成することができ、SAWセンサは、当該開口を通してアクセス可能であるように、開口に近接して回路層に結合することができる。Z軸導電性エラストマーが、回路層とSAWセンサとの間の密閉バリヤをも形成する場合、開口の上を流れる流体を、回路層の回路と接触することなくSAWセンサによって検知することができる。したがって、本発明は、流体中で運ばれる化学的または生物学的作用物質の検出に有用であることができる。
【0008】
上記SAWセンサアセンブリは、センサカートリッジの一部を形成することができる。その場合、カートリッジハウジング内に形成された流体経路が、流体が、回路層の開口内および導波路層上を流れることを可能にし、SAWセンサは流体中の1つ以上の生物学的または化学的作用物質を検出することができる。Z軸導電性エラストマーは、また、回路層とSAWセンサとの間の密閉バリヤを形成することができ、SAWセンサによって検知された流体が回路層の回路と接触しない。
【0009】
一実施形態において、本発明は、複数の電極を含むSAWセンサと、開口および複数の電気コンタクトを含む回路層と、電気コンタクトを電極に結合するためのZ軸導電層と、を含むSAWセンサアセンブリを提供する。
【0010】
別の実施形態において、本発明は、流体経路を有するハウジングと、複数の電極を有するSAWセンサ、開口および複数の電気コンタクトを有する回路層、ならびに電気コンタクトを電極に結合するためのZ軸導電層を含むSAWセンサアセンブリであって、SAWセンサが、開口を介して流体経路に露出される、SAWセンサアセンブリと、を含むセンサカートリッジを提供する。
【0011】
別の実施形態において、本発明は、SAWセンサの複数の電極を、Z軸導電層で、回路層の複数の電気コンタクトに電気的に結合する工程を含む、SAWアセンブリを形成する方法を提供する。
【0012】
本発明は、いくつもの利点をもたらすことができる。特に、Z軸導電層の使用は、組立て、およびSAWセンサと回路層との間の電気的結合を簡単にすることができる。さらに、Z軸導電性エラストマーが、SAWセンサと回路層との間の密閉シールを提供することができ、SAWアセンブリを、流体とより適合性にする。また、Z軸導電性エラストマーの使用は、SAWセンサを、たとえば剛性センサカートリッジハウジングから、機械的に隔離することができ、SAWセンサは、センサの上の流体流れによって加えられた圧力に応答して、自由にわずかに移動することができる。
【0013】
本発明の1つ以上の例示的な実施形態の詳細は、添付の図面および以下の説明に記載される。本発明の他の特徴、目的、および利点は、説明および図面、ならびに特許請求の範囲から明らかであろう。
【発明を実施するための最良の形態】
【0014】
本発明は、Z軸導電性エラストマーなどのZ軸導電層を使用する弾性表面波(SAW)センサアセンブリに関する。Z軸導電性エラストマーは、一般に、エラストマー材料の厚さ方向を横切る導電経路を発生する導電性粒子が充填されたエラストマー材料を指す。エラストマーが多くの実施形態に使用されるが、Z軸導電層のための適切な材料としては、また、米国特許第5,685,939号明細書(ウォーク(Wolk)ら)、米国特許第5,362,421号明細書(クロップ(Kropp)ら)、および米国特許出願公開第2001/0028953 A1号明細書に記載されたものを挙げることができる。
【0015】
本発明の一実施形態によれば、Z軸導電性エラストマーが、SAWセンサアセンブリを形成するために、回路層をSAWセンサに結合する。たとえば、回路層の複数の電気コンタクトを、Z軸導電性エラストマーを介して、SAWセンサの複数の電極に結合することができる。Z軸導電性エラストマーは、電気コンタクトと電極との間の電気的接続を提供し、また、回路層とSAWセンサとの間の密閉バリヤを形成する。さらに、その弾性特性のため、Z軸導電性エラストマーは、使用の間SAWセンサ上に加えられる圧力を低減することができる。
【0016】
回路層は、開口を含み、SAWセンサは、当該開口を通してアクセス可能であるように、当該開口に近接して回路層に結合される。当該開口の上を流れる流体を、好ましくは、回路層の回路に影響を及ぼすことなくSAWセンサによって検知することができる。なぜなら、Z軸導電性エラストマーが、回路層とSAWセンサとの間の密閉バリヤを形成するからである。特に、Z軸導電性エラストマーは、センサから回路への流体の移動を阻止し、それにより、電気的短絡を防止する。したがって、本発明は、流体環境におけるSAWセンサの使用を促進することができる。
【0017】
SAWセンサアセンブリは、テストすべき流体を受けるか収容するセンサカートリッジの一部を形成することができる。カートリッジ内に形成された流体経路が、流体が流れて回路層の開口を通り過ぎることを可能にし、SAWセンサは流体中の1つ以上の生物学的剤または化学剤を検出することができる。再び、Z軸導電性エラストマーは、好ましくは、回路層とSAWセンサとの間の密閉バリヤを形成し、SAWセンサによって検知された流体が回路層の回路と接触しない。しかし、同時に、Z軸導電性エラストマーは、SAWセンサと関連する電極と回路層内の回路素子との間の導電を可能にする。
【0018】
図1は、本発明の実施形態による例示的なSAWセンサアセンブリ10を示す分解斜視図である。SAWセンサアセンブリ10は、SAWセンサ12と、回路層14と、SAWセンサ12を回路層14に電気的に結合するZ軸導電性エラストマー16と、を含む。
【0019】
SAWセンサ12は、複数の電極13A〜13H(まとめて電極13)を含み、回路層14は、回路層14の底側19に形成された複数の電気コンタクト15A〜15H(まとめて電気コンタクト15)を含む。電極13は、一般に、SAWセンサ12の周縁に配置される。回路層14の電気コンタクト15は、SAWセンサ12の電極13に結合するために位置決めされた回路トレース11A〜11H(まとめて回路トレース11)を含むことができる。
【0020】
図1に示された電極13および電気コンタクト15の数は、ここに広く具体化され請求されるような本発明を限定するものではない。換言すれば、いかなる数の電極13および電気コンタクト15も本発明によって使用することができる。図1にさらに示されているように、SAWセンサ12は、1つ以上の入力および出力トランスデューサ(図示せず)の上に形成された導波路層8を含む。例として、SAWセンサ12は、ラブモード剪断水平弾性表面波(SH−SAW)センサを含むことができる。その場合、センサは、基材上の入力および出力インターデジット式トランスデューサ(IDT)を含む。
【0021】
回路層14は、一般に、電気信号をルーティングするための回路トレース、抵抗器、キャパシタ、インダクタ、トランジスタ、増幅器、またはいかなる他の回路素子などの、1つ以上の回路素子を含む層を指す。回路層14は、SAWセンサ12を駆動し制御するための構成要素を含むことができるか、単に、SAWセンサ12へおよびSAWセンサ12から信号をルーティングするための回路トレースを含むことができる。
【0022】
回路層14は開口17が形成される。Z軸導電性エラストマー16は、電極13を電気コンタクト15に電気的に結合する。特に、Z軸導電性エラストマー16は、電極13を電気コンタクト15の各々の回路トレース11に電気的に結合するように位置決めすることができる。Z軸導電性エラストマー16は、SAWセンサ12と回路層14との間に開口17に近接して密閉バリヤを形成する。したがって、アセンブリ10の第1の側18、すなわち頂側の上の流体経路を、SAWセンサ12に露出させることができるが、アセンブリ10の第2の側19、すなわち底側の回路を、流体流れから隔離することができる。本開示で用いられるように、密閉バリヤは、1つ以上のタイプの流体に対する実質的なバリヤを指す。しかし、いくつかの場合、密閉バリヤは、ほとんどの液体および気体を阻止しながらではあるが、いくつかの特定の気体がバリヤを通過することを可能にすることができる。
【0023】
図2は、図1の例示的なSAWセンサアセンブリを示す斜視図である。再び、アセンブリ10は、SAWセンサ12と、回路層14と、SAWセンサ12を回路層14に電気的に結合するZ軸導電性エラストマー16と、を含む。Z軸導電性エラストマー16は、SAWセンサ12と回路層14との間に開口17に近接して密閉バリヤを形成する。したがって、アセンブリ10の第1の側18の上の流体経路を、SAWセンサ12に露出させることができるが、アセンブリ10の第2の側19の回路を、流体流れから隔離することができる。
【0024】
SAWセンサ12は、非常にさまざまなSAWセンサのいずれかを含むことができる。SH−SAWセンサは、典型的には、波伝播が、剪断水平モードに、すなわち、導波路によって規定された平面に平行に回転されることを可能にし、検出表面と接触する液体への音波(acoustic)減衰損失の低減をもたらす結晶カットおよび配向を有する圧電性材料から構成される。剪断水平音波は、たとえば、厚み剪断モード(thickness shear modes)(TSM)、音波プレートモード(acoustic plate modes)(APM)、表面スキミングバルク波(surface skimming bulk waves)(SSBW)、ラブ波、漏洩音波(leaky acoustic waves)(LSAW)、およびブルースタイン−グリヤエフ(Bleustein−Gulyaev)(BG)波を含むことができる。
【0025】
一例において、センサ12は、ラブモード剪断水平弾性表面波(SH−SAW)センサを含む。SH−SAWセンサは、たとえば、4つの主構成要素:1)圧電性基材;2)圧電効果に基いて音波を励起するために使用される、基材上の入力インターデジットトランスデューサ(IDT);3)圧電効果を利用することによって、伝送された音波を受けて電気出力を発生する、基材上の出力IDT;および4)入力IDTから出力IDTへの伝送のためSHタイプ波を導波路ラブモードに変換する、IDTの上の導波路層、を含む。
【0026】
特に、ラブ波センサは、ST石英のSSBWまたは36°YXLiTaO3の漏洩波などのSH波モードを支持する基材を含むことができる。これらのモードは、好ましくは、薄い音響案内層(acoustic guiding layer)または導波路の付与によってラブ波モードに変換することができる。これらの波は、周波数依存であり、導波路層の剪断波速度が圧電性基材の剪断波速度より低い場合に発生することができる。
【0027】
SAWセンサ12は、非常にさまざまな化学的または生物学的作用物質のいずれかの検出のために設計することができる。さまざまな化学的または生物学的作用物質の検出を促進するために、さまざまな材料をSAWセンサ12の導波路層上にコーティングすることができる。導波路材料は、好ましくは、次の特性:低音波損失、低導電性、水および水溶液中の安定性および堅牢性、比較的低い音響速度、疎水性、より高い分子量、高度架橋などの1つ以上を示す材料であることができる。一例において、SiO2が石英基材上の音響導波路層(acoustic waveguide layer)として使用されている。他の熱可塑性および架橋ポリマー導波路材料の例としては、たとえば、エポキシ、ポリメチルメタクリレート、フェノール樹脂(たとえば、ノバラク(NOVALAC))、ポリイミド、ポリスチレンなどが挙げられる。
【0028】
特に、SAWセンサの表面上の特定の材料の存在は、導波路層を通る波伝播に影響を及ぼし、これは、特定の化学的または生物学的作用物質の検出を促進する。したがって、導波路層上にコーティングされた材料を、導波路を横切って流れる流体中に浮遊した材料を引きつけるか、捕えるか、それらと接合するか、それらに他の態様で付着するように選択することができる。SAWセンサ12は、他のタイプのそのようなセンサを含むこともできる。いずれにせよ、電極13は、SAWセンサ12の構成要素への電気的インタフェースを提供する。
【0029】
再び、回路層14は、一般に、電気信号をルーティングするための回路トレース、抵抗器、キャパシタ、インダクタ、トランジスタ、増幅器、またはいかなる他の回路素子などの、1つ以上の回路素子を含む層を指す。回路層14は、SAWセンサ12を駆動し制御するための構成要素を含むことができるか、単に、SAWセンサ12へおよびSAWセンサ12から信号をルーティングするための回路トレースを含むことができる。いずれにせよ、回路層14には開口17が形成される。たとえば、回路層14は、回路層14の第2の側19のさまざまな回路トレースを規定するようにエッチングまたは印刷された導電性材料でコーティングされた可撓性または剛性基材を含むことができる。基材は、回路層14の第1の側18を回路層14の第2の側19のそのような回路トレースから密閉して隔離することができる。
【0030】
Z軸導電性エラストマー16は、Z軸(図1および図2上に標記された)において導電性であるが、他の方向すべて、たとえばX軸およびY軸において、実質的に電気的に絶縁性である実質的に連続した層を指す。換言すれば、Z軸導電性エラストマー16は、その主面に垂直な方向にのみ電気を伝導する。場合によっては、導電は、Z軸導電性エラストマー16がZ軸において圧縮されたときに促進され、他の場合、Z軸における導電は、Z軸導電性エラストマー16の通常の圧縮されていない状態において生じる。
【0031】
さらに、Z軸導電性エラストマー16はコンプライアントなものであることができる。いずれにせよ、Z軸導電性エラストマー16は、一般に、回路層14および音波センサ12の表面をシールしこれらと密接に係合する。たとえば、Z軸導電性エラストマー16は、開口17の外周に沿って位置決めされた実質的に連続した層を含むことができる。いくつかの実施形態において、Z軸導電性エラストマー16は、成形されるか、打抜かれるか、カットされるか、他の態様で処理されて、開口17の周囲の周りに延在するようなサイズにされたガスケット状リングを形成する。Z軸導電性エラストマー16は、SAWセンサ12上の電極13の各々を、たとえば回路トレース11を介して、回路層14上の電気コンタクト15の対応する1つに電気的に結合する。しかし、Z軸導電性エラストマー16がX軸およびY軸において実質的に電気的に絶縁性であるので、電極13間または電気コンタクト15間の電気的短絡が生じない。
【0032】
Z軸導電性エラストマー16は、SAWセンサ12と回路層14との間の密閉シールを提供することができる。したがって、アセンブリ10の第1の表面18を流体経路に沿って位置決めすることができ、Z軸導電性エラストマー16によって提供された密閉(hermitically)シールのため、アセンブリ10の第2の表面19を流体経路から密閉して隔離することができる。
【0033】
Z軸導電性エラストマー16は、また、エラストマーである。したがって、SAWセンサ12は、センサ12と回路層14との間の密閉シールを破壊することなく、回路層14に対して自由にわずかに移動することができる。回路層14は、たとえばセンサカートリッジハウジングに、機械的に取付けることができ、SAWセンサ12が、取付けられ、カートリッジハウジングの剛性によって抑制されることを必要としない。
【0034】
図3は、SAWセンサアセンブリ10の底面図である。図3に示されているように、回路層14の電気コンタクト15は、アセンブリ10の底面上に少なくとも部分的に露出される。この例において、電気コンタクト15に対応する回路トレース11は、半径方向に内方に延在して、Z軸導電性エラストマー(図3に示されていない)とインタフェースする。Z軸導電性エラストマーは、電気コンタクト15をSAWセンサ12の電極(図3に示されていない)に電気的に結合する。
【0035】
図4は、SAWセンサアセンブリ10の側断面図である。アセンブリ10は、SAWセンサ12と、回路層14と、SAWセンサ12を回路層14に電気的に結合するZ軸導電性エラストマー16と、を含む。Z軸導電性エラストマー16は、SAWセンサ12と回路層14との間の密閉シールも提供する。したがって、アセンブリ10の第1の表面18を流体経路に沿って位置決めすることができ、Z軸導電性エラストマー16によって提供された密閉シールのため、アセンブリ10の第2の表面19を流体経路から密閉して隔離することができる。さらに、Z軸導電性エラストマー16はエラストマーである。したがって、SAWセンサ12は、センサ12と回路層14との間の密閉シールを破壊することなく、回路層14に対して自由にわずかに移動することができる。再び、回路層14は、たとえばセンサカートリッジハウジングに、機械的に取付けることができ、SAWセンサ12が、取付けられ、カートリッジハウジングの剛性によって抑制されることを必要としない。
【0036】
図5は、本発明の実施形態による例示的なセンサカートリッジ50を示す側断面図である。特に、センサカートリッジ50は、ここで説明されるようなSAWセンサアセンブリ10を使用することができるデバイスの一例である。
【0037】
センサカートリッジ50は、カートリッジ50を通る流体経路(図5に矢印で示された)を規定するハウジング52を含む。この例において、流体経路は、入力溜め(input reservoir)51と、出力溜め(output reservoir)53と、入力溜め51と出力溜め53との間のチャネル57と、を含む。入力ポート54が、流体を受けるためにハウジング52内に形成される。Z軸導電性エラストマー16を介してSAWセンサ12に結合された回路層14を含むSAWセンサアセンブリが、ハウジング52を通る流体経路に沿って位置決めされる。特に、回路層14の開口17(図1)は、SAWセンサ12が流体経路に露出されるように、流体経路に沿って位置決めされる。
【0038】
ハウジング52は、回路層14に個別に結合するいくつもの別々の構成要素または他のハウジング構成要素を含むことができるか、一体化ハウジング構造を含むことができる。いずれにせよ、回路層14はハウジング52に機械的に結合する。Z軸導電性エラストマー16のエラストマー特性は、センサ12と回路層14との間の密閉シールを破壊しない、回路層14およびハウジング52に対するSAWセンサ12のわずかな移動を考慮する。したがって、SAWセンサ12は、センサ12の上の流体流れによって加えられた圧力に応答して、自由にわずかに移動することができる。空気溜め58を、流体経路に対してSAWセンサ12の反対側にハウジング52内に形成することができる。空気溜め58は、SAWセンサ12の隔離を向上させ、SAWセンサ12とハウジング52との間の機械的相互作用を回避するのを助ける。
【0039】
電気コンタクト15(図5に示されていない)の少なくとも一部を、カートリッジ50の外面上で、たとえば位置55および56において露出させることができる。したがって、回路層14、およびしたがって、Z軸導電性エラストマーを介してSAWセンサ12への電気的結合を、位置55および56において達成することができる。センサモジュール処理ユニット(図示せず)が、位置55および56において電気コンタクトパッドに結合する回路トレース延長部分を介して回路層14にアクセスすることができる。このように、処理ユニットは、SAWセンサ12によって発生された信号を受け、センサ結果、すなわち、生物学的または化学的物質の存在、不在、またはレベルを発生する。
【0040】
動作中、流体がカートリッジ52内の流体経路(図5に矢印で示された)を通って導入される。チャネル57の高さは、SAWセンサ12の上の所望の流体流れを確実にするように規定することができる。流体がSAWセンサ12の上を通過するとき、流体中の作用物質が導波路層の表面に付着することができ、それにより、センサ12の導波路層を通る波伝播に影響を及ぼし、これは、回路層14上の回路、または回路層14を介してZ軸導電性エラストマー16を通してSAWセンサ12とインタフェースする外部回路による所与の作用物質の検出を促進する。
【0041】
図6は、本発明の実施形態による例示的なセンサカートリッジ60を示す別の側断面図である。センサカートリッジ60は、ここで説明されるようなSAWセンサアセンブリ10を使用することができるデバイスの別の例である。
【0042】
センサカートリッジ60は、カートリッジ60内への流体経路(図6に矢印で示された)を規定するハウジング62を含む。この例において、流体経路は、入力溜め61と、出力溜め63と、入力溜め61と出力溜め63との間のチャネル67と、を含む。入力ポート64が、流体を受けるためにハウジング62内に形成される。Z軸導電性エラストマー16を介してSAWセンサ12に結合された回路層14を含むSAWセンサアセンブリが、ハウジング62を通る流体経路に沿って位置決めされる。特に、回路層14の開口17(図1)は、SAWセンサ12が流体経路に露出されるように、流体経路に沿って位置決めされる。
【0043】
センサカートリッジ60は、出力溜め63内の収着剤68をさらに含む。収着剤68は、チャネル67を介して入力溜め61から出力溜め63に流体を引寄せる傾向がある。さらに、収着剤68は、流体を吸収することができ、SAWセンサ12によって行われた検知機能の実行の後、入力溜め61に導入された流体がセンサカートリッジ60内に収容される。入力溜め61、出力溜め63、およびチャネル67によって規定された流体経路を通る流体流れを向上させるために、空気口69を、また、出力溜め63に近接して形成することができる。チャネル67の高さは、また、SAWセンサ12の上の所望の流体流れを確実にするように規定することができる。
【0044】
ハウジング62は、回路層14に個別に結合するいくつもの別々の構成要素を含むことができるか、一体化ハウジング構造を含むことができる。いずれにせよ、回路層14はハウジング62に機械的に結合する。Z軸導電性エラストマー16のエラストマー特性は、センサ12と回路層14との間の密閉(hermitic)シールを破壊しない、回路層14およびハウジング62に対するSAWセンサ12のわずかな移動を考慮する。したがって、SAWセンサ12は、センサ12の上の流体流れによって加えられた圧力に応答して、自由にわずかに移動することができる。空気溜め85を、流体経路に対してSAWセンサ12の反対側にハウジング62内に形成することができる。空気溜め85は、SAWセンサ12の隔離を向上させ、SAWセンサ12とハウジング62との間の機械的相互作用を回避するのを助ける。
【0045】
電気コンタクト15(図6に示されていない)の少なくとも一部を、カートリッジ60の外面上で、たとえば位置65および66において露出させることができる。したがって、回路層14、およびしたがって、Z軸導電性エラストマーを介してSAWセンサ12への電気的結合を、位置65および66において達成することができる。
【0046】
動作中、流体がカートリッジ62内の流体経路(図6に矢印で示された)を通って導入される。流体がSAWセンサ12の上を通過するとき、流体中の剤がセンサ12の導波路層を通る波伝播に影響を及ぼすことができ、これは、回路層14上の回路、または回路層14を介してZ軸導電性エラストマー16を通してSAWセンサ12とインタフェースする外部回路による所与の作用物質の検出を促進する。センサ12による流体中のさまざまな剤の検出後、流体を出力溜め63内の収着剤68中に実質的に含有することができる。
【実施例】
【0047】
銅で先にスパッタリングされたポリイミド基材を使用してフレキシブル回路層を構成した。構造の銅側を、回路トレースが望まれるところでポリマーでマスクした。次に、マスクされていない銅を酢酸ナトリウム浴中でエッチング除去した。結果として生じる回路層は、SAWセンサの電極コネクタに対応する、ポリイミド基材上の8のトレースを含んだ。
【0048】
Z軸導電性エラストマーの製造指示に従って、わずかな圧力をZ軸導電性エラストマー上に加え、材料を摂氏80度の温度に加熱することによって、Z軸導電性エラストマーの層を回路層に回路トレースの上に接合した。Z軸導電性エラストマーを摂氏80度に加熱されたプラテンによって加熱し、このプラテンは、また、回路およびZ軸導電性エラストマーを接合するのに必要なわずかな圧力を提供する。Z軸導電性エラストマーは、ミネソタ州セントポールの3Mカンパニー(3M Company of Saint Paul,Minnesota)から市販されている熱可塑性マトリックス内の40ミクロンの銀コーティングガラスビーズを含んだ。次に、SAWセンサの導波路表面に対応する回路層に開口をあけた。
【0049】
ニューメキシコ州アルバカーキのサンディア国立研究所(Sandia National Laboratories,Albuquerque,New Mexico)から入手可能なラブモード剪断水平弾性表面波(SH−SAW)センサを、SH−SAWセンサの電極がZ軸導電性エラストマーに結合されるように、基材上に開口の上に配置した。アセンブリを加熱されたプラテンの下に配置し、それは圧力および熱をアセンブリに加え、したがって、Z軸導電性エラストマーを回路およびSH−SAWに処理する。この処理の間、Z軸導電性エラストマーを摂氏140度の温度に加熱し、プラテンを接合領域上に圧力250psi配置した。プラテンは、この熱および圧力を10秒間加えて、Z軸導電性エラストマーを完全に処理した。次に、アセンブリを冷却させた。回路層とSH−SAWセンサとの間の電気的接続をデジタル電圧計で確かめた。
【0050】
本発明のさまざまな実施形態を説明した。特に、Z軸導電層を使用するSAWセンサアセンブリを説明した。ここで説明した多くの実施形態において、Z軸導電層をZ軸導電性エラストマーとして説明する。しかし、他の実施形態において、Z軸導電層は必ずしもエラストマーでない。これらおよび他の実施形態は、特許請求の範囲内である。
【0051】
本発明は、以下で特定されるさまざまな米国およびPCT特許出願に記載されるようなさまざまな材料、方法、システム、装置などと組合せて使用することができ、これらの出願のすべては、それらのそれぞれの全体を引用により援用する。それらは、2003年12月30日に出願された米国特許出願第60/533,162号明細書;2003年12月30日に出願された米国特許出願第60/533,178号明細書;2004年7月22日に出願された米国特許出願第10/896,392号明細書;2003年11月14日に出願された米国特許出願第10/713,174号明細書;2004年11月12日に出願された米国特許出願第10/987,522号明細書;2003年11月14日に出願された米国特許出願第10/714,053号明細書;2004年11月12日に出願された米国特許出願第10/987,075号明細書;2003年12月30日に出願された米国特許出願第60/533,171号明細書;2004年10月7日に出願された米国特許出願第10/960,491号明細書;2003年12月30日に出願された米国特許出願第60/533,177号明細書;2003年12月30日に出願された米国特許出願第60/533,169号明細書;本明細書と同日に出願された「細胞の細胞壁成分の信号検出を向上させる方法(Method of Enhancing Signal Detection of Cell−Wall Components of Cells)」という名称の_____________(代理人整理番号59467US002);本明細書と同日に出願された「アミン捕捉剤としての可溶性ポリマーおよび方法(Soluble Polymers as Amine Capture Agents and Methods)」という名称の__________(代理人整理番号59995US002);本明細書と同日に出願された「多官能性アミン捕捉剤(Multifunctional Amine Capture Agents)」という名称の___________(代理人整理番号59996US002);本明細書と同日に出願された「弾性表面波センサによる伝播速度の推定(Estimating Propagation Velocity Through A Surface Acoustic Wave Sensor)」という名称のPCT出願番号__________(代理人整理番号58927WO003);本明細書と同日に出願された「音響機械的検出システムおよび使用方法(Acousto−Mechanical Detection Systems and Methods of Use)」という名称のPCT出願番号____________(代理人整理番号59468WO003);本明細書と同日に出願された「検出カートリッジ、モジュール、システム、および方法(Detection Cartridges,Modules,Systems and Methods)」という名称のPCT出願番号____________(代理人整理番号60342WO003);および本明細書と同日に出願された「音波センサおよび方法(Acoustic Sensors and Methods)」という名称のPCT出願番号____________(代理人整理番号60209WO003)を含む。
【0052】
ここでおよび特許請求の範囲で用いられるように、「a」、「an」、および「the」という単数形は、文脈が特に明示しない限り、複数の指示するものを含む。
【0053】
「含む(comprises)」およびその変形の用語は、これらの用語が説明または特許請求の範囲に現れる場合、限定的な意味を有さない。
【0054】
ここに引用された特許、特許出願、特許文書、および刊行物の完全な開示を、各々、個別に援用したかのように、それらの全体を引用により援用する。本発明へのさまざまな修正および変更は、本発明の範囲から逸脱することなく当業者には明らかになるであろう。本発明が、ここに記載された例示的な実施形態によって不当に限定されることが意図されないこと、および、そのような実施形態が例としてのみ提示され、本発明の範囲が、特許請求の範囲によってのみ限定されることが意図されることが理解されるべきである。
【図面の簡単な説明】
【0055】
【図1】本発明の実施形態による例示的な弾性表面波(SAW)センサアセンブリを示す分解斜視図である。
【図2】例示的なSAWセンサアセンブリを示す斜視図である。
【図3】例示的なSAWセンサアセンブリを示す底面図である。
【図4】例示的なSAWセンサアセンブリを示す側断面図である。
【図5】本発明の実施形態による例示的なセンサカートリッジを示す側断面図である。
【図6】本発明の実施形態による例示的なセンサカートリッジを示す別の側断面図である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数の電極を含む弾性表面波センサと、
開口および複数の電気コンタクトを含む回路層と、
前記電気コンタクトを前記電極に結合するためのZ軸導電層と、
を含む弾性表面波センサアセンブリ。
【請求項2】
前記Z軸導電層がZ軸導電性エラストマーを含む、請求項1に記載の弾性表面波センサアセンブリ。
【請求項3】
前記Z軸導電性エラストマーが、前記弾性表面波センサと前記回路層との間の密閉バリヤを形成する、請求項2に記載の弾性表面波センサアセンブリ。
【請求項4】
前記弾性表面波センサが、センサカートリッジの一部を形成し、前記弾性表面波センサが、前記開口を介して前記カートリッジ内の流体経路に露出されている、請求項1に記載の弾性表面波センサアセンブリ。
【請求項5】
前記弾性表面波センサがラブモード剪断水平弾性表面波センサを含む、請求項1に記載の弾性表面波センサアセンブリ。
【請求項6】
前記回路層の電気コンタクトが、前記回路層上に形成された回路トレースを含む、請求項1に記載の弾性表面波センサアセンブリ。
【請求項7】
前記電極が前記センサの周縁に配置された、請求項1に記載の弾性表面波センサアセンブリ。
【請求項8】
流体経路を含むハウジングと、
複数の電極を含む弾性表面波センサ、開口および複数の電気コンタクトを含む回路層、ならびに前記電気コンタクトを前記電極に結合するためのZ軸導電層を含む弾性表面波センサアセンブリであって、前記弾性表面波センサが、前記開口を介して前記流体経路に露出されている、弾性表面波センサアセンブリと、
を含むセンサカートリッジ。
【請求項9】
前記複数の電気コンタクトが前記流体経路に露出されていない、請求項8に記載のセンサカートリッジ。
【請求項10】
前記Z軸導電層がZ軸導電性エラストマーを含む、請求項8に記載のセンサカートリッジ。
【請求項11】
前記Z軸導電性エラストマーが、前記弾性表面波センサと前記回路層との間の密閉バリヤを形成する、請求項10に記載のセンサカートリッジ。
【請求項12】
前記弾性表面波センサがラブモード剪断水平弾性表面波センサを含む、請求項8に記載のセンサカートリッジ。
【請求項13】
前記ハウジングが前記流体経路への入力ポートを含む、請求項8に記載のセンサカートリッジ。
【請求項14】
前記流体経路が、前記入力ポートに近接した入力溜めと、出力溜めと、前記入力溜めと前記出力溜めとの間のチャネルと、を含み、前記開口が前記チャネルに近接している、請求項13に記載のセンサカートリッジ。
【請求項15】
前記出力溜めの内側に収着剤をさらに含む、請求項14に記載のセンサカートリッジ。
【請求項16】
前記ハウジングが、前記出力溜めに近接した出力口を含む、請求項15に記載のセンサカートリッジ。
【請求項17】
前記ハウジングが、前記流体経路に対して前記弾性表面波センサの反対側に空気溜めを含む、請求項8に記載のセンサカートリッジ。
【請求項18】
前記回路層の電気コンタクトが、前記回路層上に形成された回路トレースを含む、請求項8に記載のセンサカートリッジ。
【請求項19】
弾性表面波センサの複数の電極を、Z軸導電層で、回路層の複数の電気コンタクトに電気的に結合する工程を含む、弾性表面波アセンブリを形成する方法。
【請求項20】
前記回路層に開口を設け、前記複数の電極がZ軸導電層で回路層の複数の電気コンタクトに結合されたとき、前記弾性表面波センサが前記開口を介して露出されるようにする工程をさらに含む、請求項19に記載の方法。
【請求項21】
前記Z軸導電層がZ軸導電性エラストマーを含む、請求項19に記載の方法。
【請求項22】
前記Z軸導電性エラストマーが、前記弾性表面波センサと前記回路層との間の密閉バリヤを形成する、請求項21に記載の方法。
【請求項23】
前記弾性表面波センサがラブモード剪断水平弾性表面波センサを含む、請求項19に記載の方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公表番号】特表2007−520698(P2007−520698A)
【公表日】平成19年7月26日(2007.7.26)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−547194(P2006−547194)
【出願日】平成16年12月17日(2004.12.17)
【国際出願番号】PCT/US2004/042663
【国際公開番号】WO2005/066621
【国際公開日】平成17年7月21日(2005.7.21)
【出願人】(599056437)スリーエム イノベイティブ プロパティズ カンパニー (1,802)
【Fターム(参考)】