説明

形成外科における組織弁壊死の予防

【課題】有茎皮弁または他の顕微手術における、血管収縮の解消または予防および血流減少の予防または血流回復の方法を提供すること。
【解決手段】有茎皮弁において、または任意の微小血管外科手術において、壊死を予防する方法であって、該方法は、茎または他の血液供給源に、治療的有効量の血管拡張組成物を局所的に適用する工程を包含し、該組成物は、NOもしくはNO供与体または組織内でニトロソチオールの形成を引き起こすプロドラッグを、必要に応じてリドカインと組み合わせて含有する、方法。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
(関連出願の相互参照)
本出願は、米国特許出願第60/336,175号(2001年12月6日出願)の優先権を主張し、その内容全体は、本明細書に参考として援用される。
【0002】
(技術分野)
本発明は、有茎皮弁または他の顕微手術における、血管収縮の解消または予防および血流減少の予防または血流回復の方法に関する。
【背景技術】
【0003】
(発明の背景)
外傷もしくは他の損傷のため、または癌組織もしくは他の組織を除去するための手術の後の再構築のために、そのような必要のある部位に、新しい組織を提供するための形成外科/微小血管外科手術において、組織弁は再構築のために使用され得る。特に、組織弁は栄養物血液供給源に関して分離された組織のブロックである。組織がその茎(動脈および静脈)上に転移された時はいつでも、その組織は血管痙攣および血栓症に供され、血管痙攣および血栓症が回復されない場合、組織の壊死を引き起こし得る。
【0004】
組織弁壊死を予防するための試みにおいて、有茎皮弁に血液供給源を接続する茎に、血管拡張剤(例えば、リドカインまたはパパラビン(paparavine))を局所的に適用することは、標準手順である。この血管拡張剤は、血管収縮を内部動作可能的に回復または予防するが、その効果は、血流量減少の予防または血流回復に常に有効なわけではない。さらに、この効果は短寿命であり、リドカイン適用後30分で、ベースラインの約50%またはそれ以下に減少する。
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明は、例えば、以下を提供する:
(項目1)
有茎皮弁において、または任意の微小血管外科手術において、壊死を予防する方法であって、該方法は、茎または他の血液供給源に、治療的有効量の血管拡張組成物を局所的に適用する工程を包含し、該組成物は、NOもしくはNO供与体または組織内でニトロソチオールの形成を引き起こすプロドラッグを、必要に応じてリドカインと組み合わせて含有する、方法。
(項目2)
上記血管拡張組成物が、分子量10,000までの亜硝酸アルキルを含有する、項目1に記載の方法。
(項目3)
上記亜硝酸アルキルが、亜硝酸エチルである、項目2に記載の方法。
(項目4)
上記血管拡張組成物が、S−ニトロソチオールを含有する、項目1に記載の方法。
(項目5)
上記S−ニトロソチオールが、シクロデキストリンNOである、項目4に記載の方法。
(項目6)
上記血管拡張組成物が、金属ニトロシルを含有する、項目1に記載の方法。
(項目7)
薬物を送達する方法であって、該方法は、該薬物を、1μM〜100μMのニトロシル化ポリチオール化シクロデキストリンまたは他のニトロシル化ポリマーもしくはシクロデキストリンにより例示される長寿命ゲルコーティング等価物を含有するゲル中もしくは溶液中または薬学的基剤中に取り込む工程、あるいは、丸剤形態の該薬物を、一酸化窒素を送達するコーティングでコーティングする工程、および得られた薬物含有組成物を、皮膚に局所的に、または胃腸管に局所的に投与する工程、
を包含する、方法。
(項目8)
上記薬物が、1μM〜100mMのニトロシル化ポリチオレート化シクロデキストリンを含むゲル中に、治療的有効量で取り込まれる、項目7に記載の方法。
(発明の要旨)
形成外科または他の顕微手術において、血管収縮の回復または予防および有茎皮弁中の血流減少の予防または回復におけるリドカインの効果は、一酸化窒素(NO)および/またはNO供与体および/または組織内でニトロソチオールの形成を引き起こすプロドラッグを、血管拡張剤としてまたはリドカインとの組み合わせで使用することにより従来のリドカインのみの使用と比較した場合、改善かつ延長され得ることが、本明細書中で見出された。
【0006】
第1の実施形態において、本明細書中の本発明は、有茎皮弁において、または任意の微小血管外科手術において壊死を予防する方法に関し、この方法は、茎または他の血管供給源に治療的有効量の血管拡張組成物を局所的に適用する工程を包含し、この組成物は、NOもしくはNO供与体または組織内でニトロソチオールの生成を起こすプロドラッグを、必要に応じてリドカインと組み合わせて含有する。
【0007】
用語「治療的有効量」は、第1の実施形態に関しては、血管収縮回復量または血管収縮予防量、および血流量減少予防量または血流減少回復量を意味するために本明細書中で使用される。
【0008】
第2の実施形態において、本明細書中の本発明は、薬物を送達する方法に関し、この方法は、薬物を、1μM〜100mMのニトシル化ポリチオール化シクロデキストリンもしくは他のニトシル化ポリマーまたはシクロデキストリンにより例示される長寿命ゲルコーティング等価物を含有するゲル中もしくは溶液中または薬学的基剤中に治療的有効量で組み込む工程、あるいは丸剤形態の薬物を一酸化窒素を送達するコーティングでコーティングする工程、および得られた組み合わせを、皮膚に局所的に、または胃腸管に局所的に投与する工程を包含し、従って、薬物吸収の増加により薬物送達を改善し、および/または薬物の副作用を打ち消し、そして/または薬物送達および一酸化窒素送達の組み合わせた効果を得る。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【図1】図1は、時間(分)対%ベースラインのグラフであり、バックグラウンドの実施例2の結果を示す。
【発明を実施するための形態】
【0010】
(詳細な説明)
本発明者らはここで、本発明の第1の実施形態について熟考する。その実施形態は、有茎皮弁において、または任意の微小血管外科手術において、壊死を予防する方法のためであって、この方法は、茎もしくは他の血液供給源に、治療的有効量の血管拡張組成物を局所的に適用する工程を含有し、その組成物は、NOもしくはNO供与体または組織内でニトロソチオールの生成を起こすプロドラッグを、必要に応じてリドカインと組み合わせて含有する。
【0011】
本発明者らはここで、NO、NO供与体、および組織内でニトロソチオールの生成を起こすプロドラッグについて熟考し、それらは、本明細書中の本発明の第1の実施形態において、組成物において局所的に適用される。
【0012】
一酸化窒素は、水溶液として容易に適用される。
【0013】
本発明者らはここで、投与されるNO供与体について熟考する。NO供与体は一酸化窒素または関連する酸化還元種を表し、そしてより一般的には、一酸化窒素生物活性、すなわち、一酸化窒素で同定される活性(例えば、血管緊張低下またはレセプタータンパク質(例えば、rasタンパク質、アドレナリン作用性レセプター、NFκB)の刺激もしくは阻害)を提供する。本明細書中で有用なNO供与体(S−ニトロソ化合物、O−ニトロソ化合物、C−ニトロソ化合物およびN−ニトロソ化合物およびそれらのニトロ誘導体ならびに金属NO錯体を含むが、他のNO生物活性を生じる化合物は除かない)は、Feelisch,M.,およびStamler,J.S.,JohnWiley&Sonsにより編集された「Methods in Nitric Oxide Research」New York,1996,71−115ページに記載され、それは本明細書で参考として援用される。ニトロソが第三級炭素に結合したC−ニトロソ化合物である、本明細書中で有用であるNO供与体としては、米国特許第6,359,182号となった米国特許出願番号09/695,934に記載されるNO供与体およびWO02/34705に記載されるNO供与体が挙げられる。本明細書で有用なS−ニトロソチオールを含むS−ニトロソ化合物の例としては、例えば、S−ニトロソグルタチオン、S−ニトロソ−N−アセチルペニシルアミン、S−ニトロソ−システインおよびそれらのエチルエステル、S−ニトロソ−システイン−グリシン、S−ニトロソ−γ−メチル−L−ホモシステイン、S−ニトロソ−L−ホモシステイン、S−ニトロソ−γ−チオ−L−ロイシン、S−ニトロソ−Δ−チオ−L−ロイシン、およびS−ニトロソアルブミンが挙げられる。S−ニトロシル化化合物またはO−およびS−ニトロシル化化合物の例は、Stamler、ら米国特許第6,403,759号に記載されるニトシル化ポリチオール化シクロデキストリン(本明細書中以下ではシクロデキストリンNOまたはCX−NO)であり、それは、例えば米国特許第6,403,759号の実施例14に記載されるO−およびS−ニトロシル化β−シクロデキストリンまたは米国特許第6,403,759号の実施例3〜6に記載されるニトシル化ポリチオール化−β−シクロデキストリンであり得る。本明細書中で有用な他のNO供与体の例は、金属ニトロシル(例えば、ニトロプルシドナトリウム(ニプリド(nipride))、10,000までの分子量の亜硝酸アルキル(例えば、亜硝酸エチル)、ニトログリセリン、モルシドミンであるSIN1、フロキサミン(furoxamine)、N−ヒジオキシ(N−ニトロサミン)、NOまたは疎水性NO供与体で飽和したペルフルオロカーボン、およびカーボンモノチューブ(carbonmonotubule)に混入したNOである。
【0014】
NO供与体であるC−ニトロソ化合物の例としては、以下が挙げられる:
【0015】
【化1】

実際の実施例において使用される、NO供与体または組織内でニトロソチオールの形成を引き起こすNOプロドラッグは、亜硝酸エチルまたはニトロシル化ポリチオール化シクロデキストリンである。
【0016】
上に示されたように、NO、NO供与体および/またはプロドラッグは、治療的有効量で投与される。一般的に、これらは1μM〜100mMにわたる濃度で適用され、この範囲内の変動は、投与される薬剤に依存する。亜硝酸エチルは、エタノール中で90〜95%の亜硝酸エチルとして有用であり、例えば、5×10−3〜5×10−4Mの濃度でエタノール溶液として適用され得る。シクロデキストリンNOは、1μM〜100mMの濃度で、溶液あるいはゲルとして、または薬学的基剤中の微粒子として適用され得る。
【0017】
本発明者らはここで、NO、NO供与体、または組織内でニトロソチオールの生成を引き起こすプロドラッグが、リドカインとの組み合わせにおいて使用されることを熟考する。リドカインは、溶液の形態で、もしくはクリームの形態で、または適用した組成物中に、例えば2〜20%で存在する粘性リドカインとして適用され得る。
【0018】
NO、NO供与体または組織内でニトロソチオールの生成を引き起こすプロドラッグおよびリドカイン(使用される場合)は、液体組成物または粘性組成物(例えば、溶液、クリーム、軟膏またはゲルとして)の形態で、局所的に適用され得る。
【0019】
本発明者らはここで、本発明の第2の実施形態の方法について熟考する。この第2の実施形態は、薬物(ニトロシル化されていない)を送達する方法に関し、この方法は、薬物を1μM〜100mMのニトロシル化ポリチオール化シクロデキストリン(時々CX−NOと示される)もしくは任意のニトロシル化ポリマーまたはシクロデキストリンにより例示される長寿命ゲルコーティング等価物を含有するゲル中もしくは溶液中または薬学的基剤中に組み込む工程、あるいは、丸剤形態の薬物を、一酸化窒素を送達するコーティング(例えば、CX−NOまたは他のニトロシル化ポリマー含むコーティング、もしくはカーボンナノチューブに取りこまれた一酸化窒素のコーティング)でコーティングする工程、および得られた組み合わせを皮膚に局所的に、または胃腸管に局所的に投与する工程を包含し、それにより、薬物送達を改善し、そして/または薬物の副作用を打ち消し、そして/または薬物送達および一酸化窒素送達の組み合わせた効果を得る。
【0020】
ニトロシル化ポリチオレール化シクロデキストリンは、第1の実施形態に記載されるものである。
【0021】
薬物は、例えば、アスピリンまたは非ステロイド性抗炎症薬物(NSAID)あるいは疼痛または炎症の処置のため(例えば、頭痛または骨関節炎のため)のシクロオキシゲナーゼ−2の選択的インヒビター、あるいは抗増殖薬剤が治療法である子供の癌の処置のための抗増殖性薬剤(例えば、ラパマイシンまたはタキソール)、もしくは血液の代用としてヘモグロビン、敗血症の因子VIII阻害剤あるいはI型糖尿病の治療のためのインシュリンを含むタンパク質であり得る。例えば、CX−NOは、血液代用品に基づいたヘモグロビンと、25:1から1,000:1にわたるヘモグロビン:NOの割合で処方され、末梢血流を改善し得、かつ高血圧を緩和し得る。
【0022】
CX−NOは、ゲル中あるいは溶液中に、または薬学的基剤および混合後の薬物中に微粒として処方され得るか、または薬物およびCX−NOは、ゲル中もしくは溶液中または薬学的基剤あるいはCX−NO前に取りこまれ得る薬物中に、一緒に処方され得る。
【0023】
薬物およびCX−NOを含有する化合物は、局所的な適用により皮膚への投与され得、そこで局所的に作用するか、あるいは局所的な適用のためのカプセル形態または他の経口投薬形態で、胃腸管に取りこまれ得るか、または胃腸管への適用のために、吸入により投与され得る。
【0024】
丸剤形態の薬物およびNOを送達する丸剤上のコーティングから成る化合物は、胃腸管に対する局所的な適用のために、経口的に投与され得る。
【0025】
CX−NO由来の一酸化窒素は、血管拡張を引き起こしそして/または浸透性を増加することにより薬剤の吸収を増加させ、そしてこのような場合、血管拡張量および/または浸透性増加量で投与される。
【0026】
第2の実施形態の方法はまた、薬剤の副作用を緩和し得、例えば、CX−NOの一酸化窒素は、アスピリンおよびNSAIDにによって起こされ得る胃腸管出血を改善または予防し得る。
【0027】
第2の実施形態の方法はまた、NOに対する代替物または米国特許第6,057,367号および米国特許第6,359,182号に記載されるような薬物のSNO代替物となり得、薬物およびNO投与またはNO供与体投与の組み合わせた効果を得る。
【0028】
本発明は、以下のバックグラウンドの実施例により支持され、その実施例は組織弁血流を測定する標準モデルを使用する。バックグラウンドの実施例1において、ENOは亜硝酸エチルを意味する。バックグラウンドの実施例2において、CX−NOは、ニトロシル化ポリチオール化シクロデキストリンを意味する。
【実施例】
【0029】
(バックグラウンドの実施例1)
雄性ラット(N=9)を麻酔し、そして上腹部の動脈および静脈に基づいて皮膚弁(3×3cm)を両側に上げた。茎血管収縮を、10−5Mエンドセニン(endothenin)−1(ET−1)の局所的な適用により誘導した。ET−1適用後15分、生理食塩水に溶解した、2%リドカインまたは10M−4ENOのいずれかを適用した。次の30分間、組織弁血流をレーザーDoppler流量計を用いて測定し、そし茎導管の直径をビデオ顕微鏡を用いて測定した。データーをベースラインの%(平均値±SEM)として表す。二つ一組の比較は、スチューデントt検定を用いて行った。ET−1は、上腹部動脈の69〜76%の血管収縮、上腹部静脈の43〜72%の血管収縮、および組織弁血流のベースラインの35〜45%までの減少を引き起こした。リドカインの適用は、1分以内にベースラインの101±6%までの急速な動脈性血管拡張を起こすが、30分後、その効果はベースラインの82±6%に減少した。静脈は、リドカイン適用後30分でベースラインの68±7%に拡張した。リドカインはまた、2分でベースラインの87±13%に血量を増加させたが、30分後は、たったのベースラインの55±7%であった。ENOは、動脈を1分後にベースラインの83±5%に、および30分後にベースラインの98±5%に拡張し、そして静脈を30分後にベースラインの75±5%に拡張した。ENOは、2分後にベースラインの62±6%に、そして30分後に86±10%に血流を回復した。ENOは、血流のより大きな回復を引き起こし、そして動脈拡張薬(p<0.5)は、各々の拡張薬の適用後、リドカイン開始13分(血量のため)またはリドカイン開始10分(拡張薬のため)と比較した。リドカインは、速い効果を有することが示されたが、ENOは、動脈拡張薬および血量に関してより長い持続性効果およびより大きな効果を有した。
【0030】
(バックグラウンドの実施例2)
250〜250gmの重さの成体雄性ラット(6)を、吸入麻酔薬としてイソフルレンで誘導した後、50mg/kgの初期用量の腹腔内の過ホウ酸ナトリウムにより麻酔した。追加のペントバルビタールを必要に応じて投与した。ラットの核心温度は、直腸測定により測定し、あんかで36〜38℃に保った。鼠径部および腹部を剃毛した。
【0031】
気管切開を行い、そしてラットに直接挿管して、呼吸運動と関連した動きの除去を促進した。上腹部の動脈および静脈に基づいて、左右対称3×3cmの島状皮膚弁を上げた。上腹部の動脈および静脈を、お互いからおよび周りの柔組織から慎重に単離した。解剖を外科用顕微鏡によって行った。組織弁の上昇後、組織弁を透明なアクリルシート上に配置し、そしてその元のサイズを4−0ナイロン縫合糸で維持した。最後のDoppler量プローブを組織弁の中心に配置した。ビデオカメラを顕微鏡のカメラポート開口部に接続した。カメラ出力をビデオタイマー、13インチビデオモニター、およびビデオテープレコーダーに接続した。切断面測定は、100マイクロメーター解像度を有するデジタルカメラを用いてなされた。解剖後、ベースライン測定を記録する前に、ラットを60分間安定させ、そしてモデルの調製に関連した任意の血管変化の制御をより促進するために実験を行った。
【0032】
血管収縮を、10−5M濃度で直接露出した血管茎にツベルクリンシリンジの27標準規格注射針を用いて、エンドセニン−1(ET−1)の滴下を加えることにより誘導した。ET−1を0.1%酢酸に溶解し、そして20℃で保存した。次の各分で集めたデータは、動脈直径、静脈直径、およびレーザードップラー血流(laserDoppler flow)を含んだ。ET−1、ジメチルスルホキシド(DMSO)中の0.25mlの3.17mMCX−NOの投与後15分を適用した。データをさらなる30分から集めた。次いで、ラットをペントバルビタールの過剰投与で屠殺した。
【0033】
結果を図1に示す。図1において、上の曲線はベースラインの割合に応じた動脈の直径に関し、下の曲線はベースラインの割合に応じた静脈の直径に関し、そして破線の曲線は、レーザードップラー血流計での血流の測定を示し、かつベースライン量の割合に応じた小血管の血流量を示す。この結果は、CX−NOが動脈および静脈直径の増大ならびに小血管中の血流量の増加を示す。
【0034】
本発明は、以下の実用実施例において説明される。
【0035】
(実施例I)
頭部腫瘍および頚部腫瘍が切除され、そして前腕組織の自由組織移動で再構築され、顔が再構築後血管痙攣を患いおよび血流量のなくなった、40歳の白人男性を調べた。局所的な亜硝酸エチル(100μM)の適用は、血管拡張を生じ、そして流量を保った。上記の化合物(1)を亜硝酸エチルの代わりに50mMの濃度で適用した場合、同様の結果が得られる。ニトロプルシドナトリウムを亜硝酸エチルの代わりに50mMの濃度で適用した場合、同様の結果が得られる。
【0036】
(実施例II)
緊急CABF(冠状動脈バイパス)を受けた60歳は、移植後、移植片の血管痙攣から心臓虚血となる。リドカイン(2%)の局所的な適用は、一時的だがわずかな血流量となった。100μM亜硝酸エチルの添加は、流量を保持し、そしてEKG(虚血)を正常化した。
【0037】
(実施例III)
米国特許第6,403,759号の実施例14のCX−NOを50mMのゲル中で処方し、そして皮膚に局所的に適用して変形性関節症の疼痛を軽減する。
【0038】
(実施例IV)
米国特許第6,403,759号の実施例14のCX−NOを50mMのゲル中で処方し、そしてアスピリンを混合し、そしてその配合は、各100mgアスピリンおよび200mgのCX−NOを含むカプセルを充填するために使用された。カプセルの投与は、いくつかの消化管出血なしに、経口的に頭痛を軽減した。あるいは、CX−NOをアスピリン錠剤(錠剤中に100mgアスピリン)のためのコーティングとして使用するか、またはそのコーティングに含有し、そしてそのコーティングしたアスピリンの経口投与は、同様の結果を提供する。
【0039】
(実施例V)
米国特許第6,403,759号の実施例14のCX−NOを50mMのゲル中で、治療量のインスリンとともに処方する。皮膚への適用は、1型糖尿病の処置である。
【0040】
(実施例VI)
米国特許第6,403,759号の実施例14のCX−NOを、代用血液を基にしたヘモグロビンと、500:1のヘモグロビン:NOの割合で処方する。この処方物を患者に投与し、抹消血流量を増加し、かつ高血圧の軽減する。
【0041】
(変更)
変更は、当業者に明らかである。従って、本発明の範囲は、請求項により限定される。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
薬物を送達する方法であって、該方法は、該薬物を、1μM〜100μMのニトロシル化ポリチオール化シクロデキストリンまたは他のニトロシル化ポリマーもしくはシクロデキストリンにより例示される長寿命ゲルコーティング等価物を含有するゲル中もしくは溶液中または薬学的基剤中に取り込む工程、あるいは、丸剤形態の該薬物を、一酸化窒素を送達するコーティングでコーティングする工程、および得られた薬物含有組成物を、皮膚に局所的に、または胃腸管に局所的に投与する工程、
を包含する、方法。
【請求項2】
前記薬物が、1μM〜100mMのニトロシル化ポリチオレート化シクロデキストリンを含むゲル中に、治療的有効量で取り込まれる、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
本明細書中に記載される発明。

【図1】
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【公開番号】特開2010−47619(P2010−47619A)
【公開日】平成22年3月4日(2010.3.4)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−275959(P2009−275959)
【出願日】平成21年12月3日(2009.12.3)
【分割の表示】特願2003−550646(P2003−550646)の分割
【原出願日】平成14年12月2日(2002.12.2)
【出願人】(507189666)デューク ユニバーシティ (25)
【Fターム(参考)】