説明

影響を受けない材料分析の方法および集成装置

本発明は、材料2における少なくとも一つの材料逸脱を検出および分析するための、影響を受けない材料分析の方法に関する。この方法は、材料と接触して配置される触覚センサー4を用いることによって、材料2における硬度の異なる領域1を検出すること、反射光Bを光スペクトルの形態で得るために、検出された領域をクロマトグラフィー光Aで照射すること、および材料の物理的および化学的分子構造に関する情報を得るために、得られた光スペクトルを分析することを特徴とする。本発明は集成装置にも関する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、影響を受けない材料分析の方法および集成装置(またはアレンジメント)に関する。
【背景技術】
【0002】
多くの技術分野において、例えば、材料における変化、逸脱(またはデビエーション、deviation)、変動、差異、異常等の少なくとも一つを検出、位置決定および特定するため、並びに望ましい材料および望ましくない材料の両方の分布を調べるために、材料およびその特性を調べることが望ましく、かつ必要である。
【0003】
そのような材料分析は、従来、材料を切断して視覚的に調べることによって、または材料の一部を取り出し、材料の試料を採取し、例えば顕微鏡で調べることによって行われてきた。そのような材料サンプリングの間に行われるこの機械的処理は通常、対象となる材料を、少なくともその材料の試料を採取する部分において破壊し、または望ましくない材料変化が起こる危険性もしくは他の種類の材料変化を引き起こし若しくは開始させる。
【0004】
材料は、人造材料または天然材料であってよい。材料は、無機材料または生体組織等の有機材料であってよい。
【発明の概要】
【0005】
本発明の一の目的は、材料における少なくとも一つの材料変化、逸脱、差異等を検出および分析するための、影響を受けない材料分析の実施を可能にする方法および集成装置を提供することである。
【0006】
この目的は、請求項1によって明らかにされる技術的特徴を有する方法、および請求項9によって明らかにされる技術的特徴を有する集成装置によって達成される。
【0007】
本発明を、添付の図面を参照して本明細書において説明する。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【図1】図1は、本発明の集成装置の概略図を示す。
【発明を実施するための形態】
【0009】
本発明の基本的アイデアは、材料2におけるより硬いまたはより軟らかい領域1の検出を、直接行われる検出領域の材料分析と組み合わせることができるようにすることである。これは、材料において、いずれの形態のサンプリングも必要とすることなく、いずれの材料の取り出しも必要とすることなく、直接実施されるべきである。これにより、材料における影響が最小限に維持され、材料の取り出しの結果としての材料における将来の変化を回避することが可能となる。以下、このことを「影響を受けない材料分析」と呼ぶ。同じ集成装置3を用いてこの方法を実施することが可能であることも、基本的アイデアである。
【0010】
本発明の方法は、基本的特性、所望の特性が知られている材料2における、材料の他の部分の硬度と異なる硬度、材料逸脱を有する少なくとも一つの領域1を検出および分析するための、影響を受けない材料分析の間に使用することが意図される。
【0011】
本発明の方法は、既知の材料と異なる硬度、剛性を有する領域1、材料の他の部分と異なる硬度を有する領域1の検出を含む。領域1の検出は、材料2と接触して配置される触覚センサー4を用いることによって行われる。触覚センサー4は硬度の差異を読み取り、これらの差異が記録および分析される。これは手動で又は機械によって行うことができる;その機械は作動させられてよく、または自動的でよい;種々の記録システム、処理システム、フィードバックシステム、報告システム等を使用できる;また、これらと関連付けられた集成装置は様々であってよい。
【0012】
硬度、剛性の逸脱を有する領域1を検出する場合、検出された領域1にクロマトグラフィー光Aが照射される。クロマトグラフィー光のエネルギーは、検出された領域1の材料に部分的に伝達される。領域1から反射されるクロマトグラフィー光は、エネルギーを領域1における材料に伝達している。エネルギーの変化を記録することによって光スペクトルを得る。
【0013】
本発明の方法には、検出された領域に存在する材料の物理的および化学的分子構造に関する情報を得るために、得られた光スペクトルの分析も含まれる。反射によって、材料の同一性に依存する固有の外観、固有の光スペクトルが明らかとなる。
【0014】
分析は、人が手動で行ってよく、あるいは機械によって行ってよい;その機械は作動させられてよく、または自動的でよい。本発明の方法が用いられる技術分野に応じて、得られる光スペクトルを、一般的な物質の光スペクトルおよびその技術分野における物質の光スペクトルと比較することが適切である。
【0015】
異なる硬度を有する領域1の検出は、触覚センサー4と接触させることによって行われ、触覚センサー4としては共鳴センサーが適している。共鳴センサーの主な構成要素は、素子5、圧電素子、セラミックであり、それは、振動するギターの弦とほぼ同じように、電気回路によって振動、揺動させられる。素子5は、固有振動数、その素子の共振振動数で振動する。負荷、例えば材料2をその後、振動素子5の一端と接触して配置すると、材料の音響インピーダンスは振動素子、揺動システムに影響を与え、その結果、その素子は新たな共振振動数で振動するだろう。素子5が振動する振動数は、センサーと接触する材料の硬度、剛性によって決まる。センサー4が材料2を横切って移動すると、振動数の連続的変化を記録することができ、硬度の異なる一つまたは複数の領域1を検出および位置決定することができる。記録され、登録される振動数の変化、振動数の差異は、センサーと接触する材料の硬度、剛性に依存する。
【0016】
従って、本発明の方法は、共鳴センサー4内に含まれる素子5を振動させて共振振動数を得るために電気回路6を作動させること、および素子4を材料2と接触して配置することを含み、その後、素子の共振振動数の変化を測定することができ、また、センサーと接触する材料の硬度と関連付けることができ、それによって硬度が異なる領域1を検出することができる。
【0017】
本発明の方法は、クロマトグラフィー光を得るためにレーザー光を使用することを含む。材料と接触して配置されるプローブ8を有するラマン分光計7、ラマンセンサーを使用することが適切であり、かつ好都合である。ラマン分光計7は、照射のためのレーザー光源9、並びに分析のための集成装置およびユニットを有する。そのようなセンサーの使用は、組織における癌化の検出に役立つことがわかった。腫瘍は通常、健康な組織(前立腺組織等)とは別の化学的組成を示すので、腫瘍を明らかにすることができる。腫瘍は組織の分子組成の変化を引き起こし、これがラマン分光計7によって記録されるスペクトルに反映される。
【0018】
本発明の集成装置3は、影響を受けない材料分析を可能にし、且つその方法に使用することができる集成装置3である。集成装置は、既知の材料2と比較して硬度の異なる少なくとも一つの領域1を検出するために材料2と接触して配置される触覚センサー4を有する。触覚センサー4は、素子5と、作動され、共振振動数を得るために素子を振動させる電気回路とを有する共鳴センサーである。素子5は圧電素子である。
【0019】
集成装置3は、集成装置9、クロマトグラフィー光を発し、光スペクトルとして再現され得る反射光Bを受け取るために、検出される領域1を光Aで照射するレーザー光源、および最後に、検出器(図示せず)を有し、受け取った光スペクトルを分析し、その領域の材料、その物理的および化学的分子構造に関する情報を提供する集成装置10を更に有する。
【0020】
集成装置3がラマン分光計7を有することが適切であり、そのラマン分光計7は、レーザー光を伝播させる光ファイバーの末端を構成するプローブ8、レーザー光源9、並びに分析および情報処理のための集成装置10を有する。分析および情報処理のための集成装置10は、より手動もしくは機械ベースであってよく、またはより手動もしくは機械ベースでなくてよい;その機械は作動させられてよく、または自動的でよい。
【0021】
本発明の、方法および集成装置の両方を、主に医薬の技術分野において開発および試験し、そこでは、影響を受けない材料分析を、組織、生体内の前立腺における腫瘍、癌腫瘍の診断のために、生体組織において実施した。
【0022】
組織病理学は、組織における癌の存在を明らかにするための一般的な方法である。その方法には、体外で、生体の外部で病的組織の変化の存在を、通常は顕微鏡を用いて検出および確認することが含まれる。組織病理学は、正確なサンプリングを、通常は組織内に導入される器具を用いて組織試料が採取される生検の形態で実施し得、試料を調査、分析および評価してその結果を正確に解釈し得る熟練者を必要とする、時間を要する方法である。
【0023】
ある種の状況において、例えば、欧米の男性が罹患する最も一般的な形態の癌である前立腺癌の場合において、この既知の方法を用いることは問題となることがある。触診、手を用いる分析、または超音波等のいずれの一般に用いられている造影法を用いても、前立腺における腫瘍を位置決定することは多くの場合不可能であり、このことが、サンプリング及び分析の両方を更に不確実かつ困難にする。
【0024】
前立腺の触診は、医師が、患者の直腸を介して指を用いて前立腺組織の硬度を調べることによって行われる。腫瘍が周囲の健康な組織より硬いことが通常は事実であるので、医師はより硬い領域を探す。たとえ医師がより硬い領域を感知して癌の存在を予想し得るとしても、前立腺における腫瘍の正確な場所を確定することは困難である。
【0025】
何らかの可能性のある癌腫瘍の場所を確定するためには、癌の場所および程度のより明確なイメージを得るために、前立腺におけるいくつかの任意の場所から生検を採取することが必要である。生検の採取は皮膚および組織における創傷を伴い、この種のサンプリングは肛門付近の細菌の多い場所で行われるので、この生検採取によって、例えば感染症の形態で発生する合併症の危険性が増加する。採取された試料の最終的な分析を行うことも困難である。存在する癌が比較的頻繁に検出されないことが事実であることがわかった。このことは、生検を10回実施する毎に3回の頻度で起こると推定された。
【0026】
分析すべき試料を身体から取り出さなければならないので、生体において病理組織学的分析がインビトロで行われ得、インビボで行われ得ないという事実は、材料の試料およびそれに関連する病気の状態を誤って評価するという更なる危険性を伴う。なぜなら、試料を身体から取り出す間に、その試料が機械的および化学的変化の両方を被る危険性が存在するからである。
【0027】
共鳴センサーの主な構成要素は、電気回路によって、振動するギターの弦とほぼ同じように振動し得る素子、圧電素子、セラミックである。素子は、特定の振動数、その素子の共振振動数で振動する。負荷、例えば材料をその後、振動素子の一端に接触して配置する場合、材料の音響インピーダンスは揺動システムに影響を与え、その結果、その素子は新たな共振振動数で振動するだろう。素子が振動する振動数は、センサーと接触する材料の硬度、剛性によって決まる。材料を横切ってセンサーを移動させると、振動数の連続的変化を記録することができ、硬度の異なる一つまたはいくつかの領域を検出および位置決定することができる。記録される振動数の変化、振動数の差異は、センサーと接触する材料の硬度、剛性に依存する。
【0028】
そのようなセンサーの使用が組織における癌化の検出に役立つことがわかった。腫瘍は通常、健康な組織(前立腺組織等)より硬いので、腫瘍を明らかにすることができる。
【0029】
ラマン分光法は、材料に単色光、通常はレーザー光を照射する、光に基づく方法である。材料、試料に作用する単色光は材料中の照射された分子の運動を引き起こし、検出し得る波長範囲にわたって光の波長を変化させ、光の一部をスペクトル、色のスペクトルの形態で反射し返す。このスペクトルは、解釈されて材料の分子組成および分子の特性に関する詳細な情報を提供する。
【0030】
本発明の集成装置3、器具は、診断の信頼性を高めるためだけでなく、生じる細胞変化の種類に関する補足情報を提供し得るために、二つの検出技術を組み合わせる。同一の集成装置によって、材料逸脱、腫瘍の存在を検出すること、および同時にそれを分析、調査することができるので、診断はより優れており、より信頼性があるだろう。更に、材料、組織の一部を取り出すサンプリングに関して比較的一般的である感染の危険性が低下する。
【0031】
本発明の方法および集成装置3は、他の技術分野、材料の構成要素が、所望の材料と硬度が異なる構造に積み重ねられている技術分野、または材料において、様々な理由の一つのために、所望の材料と硬度の異なる別の材料または複数の他の材料の積み重なりが得られる技術分野に適用され得る。積み重ねられた材料が既知の周囲材料より軟らかいことが事実であることもある。ここで示される説明は、材料が生体組織でない場合の影響を受けない材料分析、調査に対しても有効であるように簡単に適合し得る。
【0032】
本発明の集成装置3は、比較的小さく作製され得る。現在のところ、触覚センサー5およびラマン分光計プローブ8を、同一の集成装置ボディーC内に配置することが可能である。集成装置ボディーCは片手で保持することができる。クロマトグラフィー光を発するラマン分光計の集成装置9、および分析を行う集成装置10は、ボディーの中に配置され得、またはこれらはボディー自体の完全にまたは部分的に外側に位置することがあり、他の機能と関連して配置される。
【0033】
構造は、共鳴センサーの形態の触覚センサー5がラマンプローブ8の周りに配置され、そのラマンプローブ8が中央に位置するようなものであることが適切である。共鳴センサー5およびラマンプローブ8は、同一平面において接触面5aおよび8aを有するべきであり、その結果、集成装置を材料に対向して配置することが可能であり、同一の接触時の間に共鳴センサー5およびラマン分光計7の両方を用いることが可能である。
【0034】
集成装置3のボディーCは、分析を行う人が片手で握って保持することができる領域を提供する長いボディー3aを備えたペンの形態を有し得る。集成装置は、安定した確実な方法で材料2に対向して配置され得る部分3b、ポイントを有するべきである。
【0035】
電気的接続、接続配列等を、ケーブルもしくは他の供給配列またはその両方を用いて通常の方法で行うことが適している。集成装置3は、得られる測定値を格納、分析、および処理すること、並びに他の関連データと比較することができるコンピュータ11と様々な方法で接続され得る。
【0036】
腫瘍がその程度および種類の両方に関して明確であり、このことにより、念のための健康な組織の除去を必要とすることなく、外科医が癌または腫瘍を完全に除去することが可能となるので、集成装置3、器具は、主に例えば癌の手術の間に有用である。
【0037】
本発明の集成装置、器具に対して多数の用途が存在する。医学的視点から、人体の大部分を分析、調査し得るという将来性が存在する。この技術を備えた胃カメラ(胃および胃腸管の内部を見るのに用いられる長く柔軟な器具)は、非常に強力であり、この胃カメラを多数の異なる診断方法および分析に用いることが可能であろう。本発明の方法および集成装置は、他の形態の癌、例えば皮膚癌および乳癌の診断に用いることも可能である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
材料(2)における少なくとも一つの材料逸脱を検出および分析するための、影響を受けない材料分析の方法であって、
材料と接触して配置される触覚センサー(4)を用いることによって、材料(2)における硬度の異なる領域(1)を検出すること、
反射光(B)を光スペクトルの形態で得るために、検出された領域をクロマトグラフィー光(A)で照射すること、および
材料の物理的および化学的分子構造に関する情報を得るために、得られた光スペクトルを分析すること
を特徴とする方法。
【請求項2】
硬度の異なる領域(1)の検出を、共鳴センサーである触覚センサー(4)をその領域と接触して配置することによって行う、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
共鳴センサー(4)内に含まれる素子(5)を振動、揺動させて共振振動数を得るために、電気回路(6)を作動させる方法であって、素子(5)を材料(2)と接触して配置し、その後、素子(5)の共振振動数の差異を測定して、センサーと接触する材料(2)の硬度と関連付けることができる、請求項2に記載の方法。
【請求項4】
素子(5)が圧電素子である、請求項3に記載の方法。
【請求項5】
クロマトグラフィー光を得るためにレーザー光を用いる、請求項1〜4のいずれか1項に記載の方法。
【請求項6】
照射および分析のためにラマン分光計(7)を用いる、請求項1〜5のいずれか1項に記載の方法。
【請求項7】
影響を受けない材料分析を生体組織において行う、請求項1〜6のいずれか1項に記載の方法。
【請求項8】
腫瘍を検出および分析するために、影響を受けない材料分析を生体組織において行う、請求項7に記載の方法。
【請求項9】
材料(2)における少なくとも一つの材料逸脱を検出および分析するための、影響を受けない材料分析を可能にする集成装置(3)であって、
材料(2)における硬度が異なる少なくとも一つの領域(1)を検出するための、材料(2)と接触して配置される触覚センサー(5)、
クロマトグラフィー光(A)を発し、反射光(B)を光スペクトルの形態で得るために、検出された領域(1)をクロマトグラフィー光で照射する集成装置(7,8,9)、および
得られた光スペクトルを分析し、その領域の材料、その物理的および化学的分子構造に関する情報を提供する集成装置(10)
を特徴とする集成装置(3)。
【請求項10】
触覚センサー(4)が共鳴センサーである、請求項9に記載の集成装置。
【請求項11】
共鳴センサー(4)が、素子(5)、および作動され、共振振動数を得るために素子(5)を振動、揺動させる電気回路(6)を有する、請求項9に記載の集成装置。
【請求項12】
素子(5)が圧電素子である、請求項11に記載の集成装置。
【請求項13】
クロマトグラフィー光を得るためにレーザー光源(9)を有する、請求項9〜12のいずれか1項に記載の集成装置。
【請求項14】
ラマン分光計(7)を有し、そのラマン分光計(7)がレーザー光源(9)を有する、請求項13に記載の集成装置。
【請求項15】
生体組織の、影響を受けない材料分析に用いるための、請求項9〜14のいずれか1項に記載の集成装置。
【請求項16】
腫瘍を検出および分析するための、請求項15に記載の集成装置。
【請求項17】
触覚センサー(4)と、クロマトグラフィー光を発する集成装置(9)の少なくとも一部とが、片手で保持することができるボディー内に配置される、請求項9〜16のいずれか1項に記載の集成装置。
【請求項18】
触覚センサー(4)がクロマトグラフィー光を発する集成装置(9)の周りに配置され、その集成装置(9)がボディーの中央に位置する、請求項17に記載の集成装置。

【図1】
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【公表番号】特表2010−540958(P2010−540958A)
【公表日】平成22年12月24日(2010.12.24)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−527910(P2010−527910)
【出願日】平成20年9月11日(2008.9.11)
【国際出願番号】PCT/SE2008/051018
【国際公開番号】WO2009/045152
【国際公開日】平成21年4月9日(2009.4.9)
【出願人】(510091365)ビオレソナトル・アクチボラゲット (1)
【氏名又は名称原語表記】BIORESONATOR AB
【Fターム(参考)】