説明

往復動ポンプ

【課題】シール交換作業を容易とすることでメンテナンス性に優れた往復動ポンプを提供する。
【解決手段】クランクケース2内に、オイルシール8を装着したアダプタ10が装着され、このアダプタ10は、クランクケース2から引き出すための係合手段10bを備えているため、この係合手段10bにクランクケース2から引き出すための例えば冶具16の凸部16aと係合でき、この係合により、アダプタ10をクランクケース2から引き出すことができ、オイルシール8を容易に取り出すことができる。よって、オイルシール8の交換時間を短縮でき、往復動ポンプ1のメンテナンス性を向上することができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、往復動ポンプに関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、ポンプ室内を加減圧することで、ポンプ室内に液体を吸入し排出するポンプ作用を行う往復動ポンプが知られている。この往復動ポンプは、クランクケース内の往復動部材が往復動することによってポンプ作用を実現するため、往復動部材の摺動性を高めるべく、潤滑油が用いられる。この場合、潤滑油が漏洩することを防ぐために、クランクケース内において、往復動部材はオイルシールを用いて液密に封止されている(例えば、特許文献1,2参照)。
【特許文献1】実案1973267号公報
【特許文献2】特開平8−61225号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
ここで、従来の往復動ポンプにあっては、潤滑油を液密にシールするオイルシール等のシール部材は、シール機能を維持するために、使用期間や使用頻度に応じて交換が必要となる。しかしながら、シール部材はクランクケースやシールケースに直接圧入されているため取り出し難く、特殊冶具を用いて手間をかけなければ交換することができない。また、シール部材がシールケースに圧入され、シールケースごと取り出す場合であっても取り出し難い。
【0004】
そこで、本発明は、このような技術課題を解決するためになされたものであって、シール交換作業を容易とすることでメンテナンス性に優れた往復動ポンプを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明に係る往復動ポンプは、往復動部材(14)が往復動することでポンプ作用を行う往復動ポンプ(1)であって、往復動部材(14)に摺接し、クランクケース(2)内の潤滑油を液密に封止するシール部材(8)を備えた往復動ポンプ(1)において、筒状に構成されてクランクケース(2)内面に液密に装着され、内面にシール部材(8)を液密に装着するアダプタ(10,17)を有し、アダプタ(10,17)は、クランクケース(2)から引き出すための係合手段を備えることを特徴として構成される。
【0006】
このような構成の往復動ポンプによれば、クランクケース(2)内に、シール部材(8)を装着したアダプタ(10,17)が装着される。このアダプタ(10,17)は、その係合手段に、クランクケース(2)から引き出すための例えば冶具(16)と係合でき、この係合により、アダプタ(10,17)をクランクケース(2)から引き出すことができ、シール部材(8)を容易に取り出すことができる。よって、シール部材(8)の交換時間を短縮でき、往復動ポンプ(1)のメンテナンス性を向上することができる。
【0007】
ここで、係合手段は、アダプタ(10)内周に沿って設けられ、アダプタ(10)を引き出すための冶具(16)の一部(16a)を軸線方向に係止するための環状の鍔(10b)と、鍔(10b)に設けられ、冶具(16)の一部(16a)を軸線方向に挿入するための切欠部(10a)と、を備えることが好ましい。
【0008】
このように構成することで、冶具(16)を用い、冶具(16)の一部(16a)をアダプタ(10)の切欠部(10a)に差し込み、ある程度回転させた後、冶具(16)の一部(16a)を鍔(10b)に引っ掛けてアダプタ(10)を容易に引き出すことができる。また、係合手段は簡易な構成であり、アダプタ(10)は従来技術のシールケースのように外側へ突出する鍔部を有する構成では無いため、小型化かつ低コスト化を図ることができる。
【0009】
また、係合手段は、アダプタ(17)の内周または外周に設けられ、アダプタ(17)を引き出すための冶具のネジ部と螺合するネジ部(17a)であっても良い。このように構成することで、冶具のネジ部をアダプタ(17)のネジ部(17a)に螺合させて、アダプタ(17)を容易に引き出すことができる。また、係合手段は簡易な構成であり、アダプタ(17)は従来技術のシールケースのように外側へ突出する鍔部を有する構成では無いため、小型化かつ低コスト化を図ることができる。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、シール交換作業を容易とし往復動ポンプのメンテナンス性を向上できる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0011】
以下、添付図面を参照して本発明の実施形態について説明する。なお、図面の説明において同一の要素には同一の符号を付し、重複する説明を省略する。また、図中の寸法比率は必ずしも説明中のものとは一致していない。
【0012】
図1は、本発明の実施形態に係る往復動ポンプを示す縦断面図、図2は、図1中のオイルシールを装着するアダプタを示す左側面図、図3は、図2に示すアダプタの縦断面図である。
【0013】
図1に示す往復動ポンプ1は、往復動部材14を構成するプランジャ14a及びプランジャロッド14bが往復動(図示左右動)することで液体を吸入し排出するポンプ作用を行う往復動ポンプである。往復動部材14は、プランジャ14aの後端側(図示右側)にプランジャロッド14bの先端側(図示左側)が連結されて一体となって往復動するように構成されている。そして、往復動部材14を有する往復動ポンプ1は、プランジャ14aが内部を往復動するマニホルド15と、マニホルド15に連結され、プランジャロッド14bが内部を往復動するクランクケース2とを備えている。
【0014】
マニホルド15には、プランジャ14aが往復動するシリンダ部15aと、このシリンダ部15a内の先端側にポンプ室22とが形成され、クランクケース2には、シリンダ部15aに連通し、プランジャロッド14bが往復動する空間2aが形成されている。
【0015】
また、クランクケース2の内部には、空間2aより後方側に、往復動部材14の駆動源となるクランクシャフト3と、このクランクシャフト3に連結したコンロッド4と、このコンロッド4の先端側とプランジャロッド14bの後端側とを連結するピストンピン5とが配設されている。そして、クランクシャフト14が回転することで、コンロッド4及びピストンピン5を介して、プランジャロッド14b及びプランジャ14aが一体となってシリンダ15a内および空間2a内を往復動し、プランジャ14aによりポンプ室22が加圧/減圧される。具体的には、クランクシャフト3側に向かってプランジャ14aが移動すると、ポンプ室22が減圧され、マニホルド15に設けられた吸入弁20及び吐出弁21がそれぞれ開及び閉となり、液体は、マニホルド15に設けられた吸入口18から吸入弁20を通ってポンプ室22へ吸入され、一方、プランジャ14aがクランクシャフト3と反対側に向かって移動すると、ポンプ室22が加圧され、吸入弁20及び吐出弁21がそれぞれ閉及び開となり、ポンプ室22の液体は吐出弁21を通って、マニホルド15に設けられた吐出口19へ吐出される。すなわち、往復動ポンプ1にあっては、このような吸入工程と吐出工程とを繰り返すことで、液体を吸入口18から吐出口19へと一方向に輸送する。
【0016】
なお、マニホルド15にあっては、シリンダ部15aの後端側に、往復動するプランジャ14aとの間を上記液体が伝ってクランクケース2内の空間2a側に漏洩するのを防止するための環状体のシールパッキン13を、プランジャ14aの外周面に液密に摺接するように備えると共に、シールパッキン13が振動しないように軸線方向に押えるカラー12を、プランジャ14aの先端側から軸線方向にこの順に備えている。
【0017】
一方、クランクケース2の空間2aの後部側には、クランクケース2内に充填されている潤滑油が往復動するプランジャロッド14bとの間を伝って空間2a側に漏洩するのを防止するためのオイルシール(シール部材)8が配設されている。このオイルシール8は、プランジャロッド14bの往復動の際に、プランジャロッド14bの外周面に液密に摺接するように配置されている。
【0018】
ここで、特に本実施形態においては、オイルシール8とクランクケース2との間にアダプタ10が設けられている。
【0019】
図2及び図3に示すように、アダプタ10は筒状に構成されており、その一方側(図3の図示左側,プランジャ14a側)の端部に内周に沿って設けられ内側に張り出す環状の鍔10bを備えている。そして、この鍔10bには軸線を挟んだ対称位置に切欠部10aが一対形成されており、この切欠部10aと鍔部10bが、アダプタ10をクランクケース2から取り出すための係合手段として機能する。また、アダプタ10の後半部は、その内面がオイルシール8を装着可能な拡径部10cとされ、前述したオイルシール8は、アダプタ10の拡径部10cに圧入されることで液密に装着される。この状態で、オイルシール8と鍔部10bとの間には空隙10dが形成される。このアダプタ10は、鍔部10cが設けられた端部をプランジャ14a側に向けた状態で、クランクケース2に挿入され、外周面の環状溝10eに装着されたOリング9(図1参照)がクランクケース2の内面に圧接することで、液密に装着される。そして、アダプタ10は、上記カラー12を軸線方向に押えるシールパッキン押え11によって軸線方向に押えられて固定されている。尚、アダプタ10及びオイルシール8のクランクシャフト3側の端面とクランクケース2の段差面との間には、平座金7が装着されている。
【0020】
このような往復動ポンプ1にあって、使用頻度や使用年数に応じてオイルシール8を交換する場合には、以下のように行う。先ず、アダプタ10を引き出すための冶具16を用意する。この冶具16は、図4、5に示すように、有底筒状に構成され、開放側の端部の軸線を挟んだ対称位置に径方向外側に突出する凸部16aを一対有するものであり、この凸部16aは、アダプタ10の切欠部10bに挿入できる形状に形成され、凸部16aの軸線方向の厚さは、アダプタ10に形成される前述の空隙10d(図3参照)よりも薄くされている。尚、冶具16の有底部の孔16bに関しては後述する。
【0021】
そして、まず、図1の往復動ポンプ1において、マニホルド15とクランクケース2との連結を解除し、シールパッキン押え11を取り外す。次いで冶具16を用い、冶具16の凸部16aをアダプタ10の切欠部10aに軸線方向に差し込み、冶具16の凸部16aをアダプタ10の空隙10dに進入させ、軸線周りに冶具16をある程度回転させて、凸部16aを鍔10bに引っ掛け軸線方向に引っ張ることで、アダプタ10を容易に引き出すことができる。よって、オイルシール8をクランクケース2から容易に取り出すことができる。従って、オイルシール8の交換時間を短縮でき、往復動ポンプ1のメンテナンス性を向上することができる。
【0022】
また、上記係合手段は簡易な構成であり、アダプタ10は従来技術のシールケースのように外側へ突出する鍔部を有する構成では無いため、小型化かつ低コスト化を図ることができる。
【0023】
また、冶具16の有底部において、図6に示すプランジャロッド14bのプランジャ14aに対する連結部14cを挿通可能とする孔16bが設けられていると、以下の好適な取り外し方法が適用できる。すなわち、まず、図1の往復動ポンプ1において、マニホルド15とクランクケース2との連結を解除し、シールパッキン押え11を取り外し、図6に示すように、プランジャロッド14bが完全に先端側(図示左側)に移動していない状態で、冶具16を上記と同様にしてアダプタ10に係合させる。そして、クランクシャフト3を回転させてプランジャロッド14bを先端側に移動させる。すると、冶具16の開口16bにプランジャロッド14bの連結部14cが挿入され、冶具16とプランジャロッド14bが軸線方向に係合し、さらにプランジャロッド14bを先端側に移動させることで、冶具16に軸線方向の力が加わり、アダプタ10がクランクケース2から取り外される。よって、人力を加えること無くアダプタ10を取り外すことができるため、オイルシール8をクランクケース2から一層容易に取り出すことができる。
【0024】
以上、本発明の好適な実施形態について具体的に説明したが、上記実施形態は本発明に係る往復動ポンプの一例を示すものであり、本発明に係る往復動ポンプは、上記実施形態に係る往復動ポンプに限られるものではない。
【0025】
例えば、上記実施形態では、アダプタ10と冶具16との係合は、アダプタ10の鍔10b及び切欠部10aと、冶具16の凸部16aとによって実現されていたが、図7に示すアダプタ17のように、その内周面17bにおけるオイルシール8が圧入される部分よりプランジャ14a側にネジ部としてメネジ17aを設け、ネジ部としてオネジが設けられた柱状の冶具を用いてアダプタ17と冶具を螺合させて引き出すようにしても良い。また、図7のネジ部は内周面に形成されているが、外周面にオネジとして形成しても良く、この場合には、冶具のネジ部はメネジとなる。
【0026】
なお、上記実施形態では、シール部材を特に好ましいとしてオイルシールとしているが、オイルシールに限定されるものではない。
【図面の簡単な説明】
【0027】
【図1】本発明の実施形態に係る往復動ポンプを示す縦断面図である。
【図2】図1中のオイルシールを装着するアダプタを示す左側面図である。
【図3】図2に示すアダプタの縦断面図である。
【図4】図2及び図3に示すアダプタに係合する冶具を示す縦断面図である。
【図5】図4に示す冶具の右側面図である。
【図6】オイルシールを取り外す例を示す説明図である。
【図7】他のアダプタを示す縦断面図である。
【符号の説明】
【0028】
1…往復動ポンプ、2…クランクケース、8…オイルシール(シール部材)、10,17…アダプタ、10a…切欠部(係合手段)、10b…鍔(係合手段)、14…往復動部材、14a…プランジャ、14b…プランジャロッド、17a…メネジ(ネジ部,係合手段)。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
往復動部材(14)が往復動することでポンプ作用を行う往復動ポンプ(1)であって、前記往復動部材(14)に摺接し、クランクケース(2)内の潤滑油を液密に封止するシール部材(8)を備えた往復動ポンプ(1)において、
筒状に構成されて前記クランクケース(2)内面に液密に装着され、内面に前記シール部材(8)を液密に装着するアダプタ(10,17)を有し、
前記アダプタ(10,17)は、前記クランクケース(2)から引き出すための係合手段を備えること、
を特徴とする往復動ポンプ。
【請求項2】
前記係合手段は、
前記アダプタ(10)内周に沿って設けられ、前記アダプタ(10)を引き出すための冶具(16)の一部(16a)を軸線方向に係止するための環状の鍔(10b)と、
前記鍔(10b)に設けられ、前記冶具(16)の一部(16a)を軸線方向に挿入するための切欠部(10a)と、
を備えることを特徴とする請求項1に記載の往復動ポンプ。
【請求項3】
前記係合手段は、前記アダプタ(17)の内周または外周に設けられ、前記アダプタ(17)を引き出すための冶具のネジ部と螺合するネジ部(17a)であることを特徴とする請求項1に記載の往復動ポンプ。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2008−223580(P2008−223580A)
【公開日】平成20年9月25日(2008.9.25)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−62328(P2007−62328)
【出願日】平成19年3月12日(2007.3.12)
【出願人】(000141174)株式会社丸山製作所 (134)
【Fターム(参考)】