説明

後糊用接着用紙及び後糊用接着紙

【課題】例えば可変情報をインクジェット記録により印字、印刷することが可能な優れたインクジェット記録適性と、美麗な隠蔽情報をオフセット印刷することが可能な優れたオフセット印刷適性とを具備した後糊用接着用紙と、隠蔽情報記録面を毀損することなく容易に剥離可能な隠蔽用紙を実現し得る後糊用接着紙とを提供すること。
【解決手段】基紙を含む、剥離可能な接着層を設けるための後糊用接着用紙であって、該基紙が木材パルプを主原料としたものであり、該基紙の両面に、澱粉、耐水化剤及びサイズ剤を含有するクリアーコート層が設けられ、一方の前記クリアーコート層上に、塗工層が設けられ、もう一方のクリアーコート層の表面及び塗工層の表面に、平坦化処理が施された後糊用接着用紙、及び該後糊用接着用紙の平坦化された塗工層上に、情報が印字又は印刷された後、剥離可能な接着層が設けられた後糊用接着紙。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、後糊用接着用紙及び後糊用接着紙に関する。さらに詳しくは、例えば可変情報をインクジェット記録により印字、印刷することが可能な優れたインクジェット記録適性と、美麗な隠蔽情報をオフセット印刷することが可能な優れたオフセット印刷適性とを具備した後糊用接着用紙と、隠蔽情報記録面を毀損することなく容易に剥離可能な隠蔽用紙を実現し得る後糊用接着紙とに関する。
【背景技術】
【0002】
後糊用接着紙としては、2枚の接着紙用塗工紙間あるいは1枚の接着紙の折り畳み内面に、剥離可能な接着性フィルム等を介在させたフィルムタイプのものが主流である。近年では、このようなフィルムタイプの他に、印字、印刷後に、印刷面に紫外線硬化性樹脂等を塗工したうえで接着層を形成する塗工タイプの後糊用接着紙も研究されている。
【0003】
これら後糊用接着紙は、先に接着層を形成し、該接着層面上に印字、印刷を行う、いわゆる先糊用接着紙と比較して、接着層面の光沢感に優れ、高級感を有する。しかしながら、接着層であるフィルムや紫外線硬化性樹脂層の原料が、先糊用接着紙に形成される接着層の原料と比較して非常に高価であるため、製造コストが高いという問題を有する。
【0004】
ところが一方、先糊用接着紙は、後糊用接着紙と比較して製造コストが低いものの、接着層上に情報を記録するため、剥離時に接着層上の記録の一部が対面側に転移してしまう、いわゆる裏写りが生じる欠点を有している。したがって、先糊用接着紙を用いる場合、情報の記録は、電子写真方式等の加熱によってインクの定着が可能な方式に限られてしまい、このような先糊用接着紙は、例えば、近年記録方式として著しく進展しているインクジェット記録方式には適さない。
【0005】
そこで、インクジェット記録方式に適応し得る後糊用接着用紙の開発が進められており、例えば、両面にアルキルアミン・エピハロヒドリン重縮合物を付着させた一般のコート紙やフォーム用紙等の、高速インクジェットプリンティングシステムでの記録が可能な記録シートに、無水コハク酸塩を含む特定の接着層を設けた隠蔽葉書が提案されている(特許文献1参照)。該隠蔽葉書に用いられる記録シートは、確かに、接着面、すなわち接着層を設ける面に、インクジェット記録方式によって情報を印字、印刷することが可能であり、品質的にも比較的満足のいく情報記録面が得られる。しかしながら、該記録シートの接着層を設けない面、例えば宛名面にインクジェット記録方式によって情報を印字、印刷した場合には、印刷擦れや水濡れが原因で情報記録面が不鮮明になる。
【0006】
さらに、後糊用接着紙を製造する際に、接着層を設ける基紙への印字、印刷は、インクジェット記録方式とオフセット印刷方式とを併用することが多い。例えば、後糊用接着用紙を用いた親展葉書等では、親展情報や個人情報等の可変情報は、インクジェット記録方式にて印字、印刷し、これら可変情報以外の枠印刷や模様印刷等のフォーム印刷は、オフセット印刷方式にて印刷が行なわれる。このため、後糊用接着用紙には、優れたインクジェット記録適性及びオフセット印刷適性の双方が必要とされる。しかしながら、前記隠蔽葉書に用いられる記録シートに、オフセット印刷方式によって情報を印字、印刷した場合には、オフセットインクの沈み込みが生じ、美麗な情報記録面を得ることが困難である。
【0007】
そこで、インクジェット記録適性及びオフセット印刷適性を同時に呈する後糊用接着用紙の提供を目的として種々開発が進められている。例えば、ポリビニルアルコールを含む水溶性バインダーとシリカを含む顔料と水溶性流動性向上・保水性向上剤とを含む塗工液を、原紙の少なくとも一方の面に塗工し、特定の平滑度を有する塗工層を形成させた擬似接着紙用コート紙(特許文献2参照)や、カチオン性アクリル樹脂と、必要に応じてアンモニアとアミン類及びエピハロハドリン類とを反応させた縮合物等の染料定着機能を有する他のカチオン性樹脂とを含有した記録用紙の少なくとも一方の面に、加圧によって擬似接着される接着剤層を設けた擬似接着記録用紙(特許文献3参照)が提案されている。
【0008】
前記擬似接着紙用コート紙や擬似接着記録用紙は、確かにインクジェット記録方式にもオフセット印刷方式にも適用することが可能である。しかしながら、該擬似接着紙用コート紙の場合には、吸油性の高いシリカを含有する塗工層でインクの沈み込みが生じ、鮮明な情報記録面を得ることが困難であり、また塗工層の表面強度も低いため、高速オフセット印刷において、網点の抜けや、印刷不良が生じ易いという問題を有する。一方、前記擬似接着記録用紙の場合には、カチオン性アクリル樹脂を含有した記録用紙上に塗工層が設けられておらず、このような塗工層を有さない記録用紙へは、高精細な印刷が困難である。したがって、高繊細な情報記録面を得るには、例えば高価な紫外線硬化性インクを使用しなければならず、低コスト化を図るべき通常のオフセット印刷方式には不適切である。
【0009】
前記の他にも、各種後糊用接着紙が提案されているが、現在これらの後糊用接着紙に用いられている後糊用接着用紙は、オフセット印刷方式に主眼が置かれた一般的なコート紙が大半であり、これらのコート紙は、通常インクジェット記録適性が低いという問題がある。
【特許文献1】特開2001−219680号公報
【特許文献2】特開2005−307387号公報
【特許文献3】特開2006−70383号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
本発明は、前記背景技術に鑑みてなされたものであり、例えば可変情報をインクジェット記録により印字、印刷することが可能な優れたインクジェット記録適性と、美麗な隠蔽情報をオフセット印刷することが可能な優れたオフセット印刷適性とを具備した後糊用接着用紙と、印字・印刷情報上に後糊用接着剤にて接着層を設けても、隠蔽情報記録面を毀損することなく容易に剥離可能な隠蔽用紙を実現し得る後糊用接着紙とを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
すなわち本発明は、
基紙を含む、剥離可能な接着層を設けるための後糊用接着用紙であって、
前記基紙が、木材パルプを主原料としたものであり、
前記基紙の両面に、澱粉、耐水化剤及びサイズ剤を含有するクリアーコート層が設けられ、
一方の前記クリアーコート層上に、塗工層が設けられ、
もう一方のクリアーコート層の表面及び前記塗工層の表面に、平坦化処理が施されており、
平坦化された前記塗工層上に、情報が印字又は印刷された後、前記剥離可能な接着層が設けられる、後糊用接着用紙、及び
基紙に、剥離可能な接着層が設けられた後糊用接着紙であって、
前記基紙が、木材パルプを主原料としたものであり、
前記基紙の両面に、澱粉、耐水化剤及びサイズ剤を含有するクリアーコート層が設けられ、
一方の前記クリアーコート層上に、塗工層が設けられ、
もう一方のクリアーコート層の表面及び前記塗工層の表面に、平坦化処理が施されており、
平坦化された前記塗工層上に、情報が印字又は印刷された後、前記剥離可能な接着層が設けられた、後糊用接着紙
に関する。
【発明の効果】
【0012】
本発明の後糊用接着用紙は、例えば可変情報をインクジェット記録により印字、印刷することが可能な優れたインクジェット記録適性と、美麗な隠蔽情報をオフセット印刷することが可能な優れたオフセット印刷適性とを具備している。したがって、本発明の後糊用接着用紙に情報を印字、印刷した後、剥離可能な接着層を設けた本発明の後糊用接着紙を、所定の圧力で接着させることにより、鮮明で美麗な隠蔽情報記録面を毀損することなく容易に剥離可能な隠蔽用紙を得ることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0013】
(実施の形態)
本発明の後糊用接着用紙は、前記したように、基紙を含み、接着層を設けるためのものであり、また本発明の後糊用接着紙は、該後糊用接着用紙に接着層が設けられたものであるが、単に基紙の一方の面上に接着層が設けられるのではなく、基紙の両面にはまずクリアーコート層が設けられ、次いで一方のクリアーコート層上に塗工層が設けられ、該塗工層上に情報が印字又は印刷された後に、さらに接着層が設けられる。
【0014】
まず、本発明に用いる基紙について説明する。本発明に用いる基紙を得るには、例えば針葉樹晒クラフトパルプ(NBKP)、広葉樹晒クラフトパルプ(LBKP)、針葉樹晒サルファイトパルプ(NBSP)等から適宜選択した木材パルプを、原料パルプ全量の50質量%以上含んで主原料とし、さらに各種古紙パルプ、合成パルプ等のパルプを適宜用いることができる。該パルプを、例えば叩解度300〜600mL(カナディアンスタンダードフリーネス(C.S.F.))に叩解した後、これにクレー、カオリン、炭酸カルシウム、二酸化チタン等のフィラー;澱粉、ポリビニルアルコール、ポリアクリルアマイド等の紙力増強剤;メラミン樹脂、尿素樹脂、ポリアミドエピクロルヒドリン、ポリアクリルアミド等の湿潤紙力増強剤;蛍光増白剤;着色染顔料;定着剤等の添加剤を適宜添加し、円網抄紙機、長網抄紙機等の通常の抄紙機を使用して常法にしたがって、酸性又は中性の条件で、例えば坪量が110〜150g/m2程度となるように抄紙して、本発明に用いる基紙を製造することができる。
【0015】
基紙のサイズ度の調整は、例えばロジン系サイズ剤、アルケニル無水コハク酸、アルキルケテンダイマー、石油樹脂系サイズ剤等の内添サイズ剤を使用することで可能である。
【0016】
なお、前記添加剤のうち、湿潤紙力増強剤を用いる場合には、抄紙して得られた基紙を水に10分間浸漬して湿潤させた後に測定した値として、例えば引張り強さが20N/25mm(MD)程度以上、紙層間剥離強度が0.5N/15mm(MD)程度以上となるように、該湿潤紙力増強剤の量を調整して内添することが好ましい。通常、パルプ絶乾質量に対して、0.05〜2.0質量%程度、好ましくは0.5〜1.0質量%程度の範囲で添加することが望ましい。
【0017】
前記湿潤時の引張り強さを20N/25mm(MD)程度以上とすることで、湿潤時に紙力が低下する基紙の強度を維持し、湿潤時に接着剤の水和結合が強まり接着強度が高まっても、基紙の破れを生じることなく剥離可能とすることができる。
【0018】
さらに、前記湿潤時の紙層間剥離強度を0.5N/15mm(MD)程度以上とすることで、湿潤時に接着剤の水和結合が強まり接着強度が高まっても、基紙の表面取られや、毀損を生じることなく剥離可能とすることができる。
【0019】
基紙の両面に設けられるクリアーコート層は、澱粉、耐水化剤及びサイズ剤を含有したものである。
【0020】
前記澱粉は、耐水性にはそれ程優れないものの、基紙との密着性が高い。本発明に用いる澱粉の種類には特に限定がないが、変性澱粉が好ましく、中でも、適度な粘性と被膜性に優れた酸化澱粉を特に好適に使用することができる。
【0021】
前記酸化澱粉は、比較的安価に得られるものであり、例えばとうもろこし、馬鈴薯、タピオカ、甘藷、小麦、米等の澱粉を水に分散させ、これに次亜塩素酸ナトリウム、過硫酸アンモニウム、過酸化水素等の酸化剤を加え、40〜150℃程度に加熱し、澱粉を解重合することによって得ることができる。酸化澱粉の粘度は、酸化剤の添加量、反応時間や温度等によって調整することができる。
【0022】
なお澱粉として、前記変性澱粉の他にも、例えばカチオン澱粉の使用も可能ではあるが、後述する耐水化剤との間で望ましくない反応が生じる場合があり、該耐水化剤が例えばカチオン性ポリアミン系樹脂の場合には、その機能を損なう恐れがあるので、使用量や耐水化剤との組み合わせを考慮することが好ましい。
【0023】
前記耐水化剤(インク定着剤)は、濡れ抵抗性を付与する成分であり、クリアーコート層上に設けられる塗工層の均一性を向上させることができる。
【0024】
本発明に用いられる耐水化剤の種類には特に限定がなく、通常インクジェット記録体用に用いられる、例えばカチオン性耐水化剤を例示することができる。該カチオン性耐水化剤としては、例えば、
(1)ポリエチレンポリアミン、ポリプロピレンポリアミン等のポリアルキレンポリアミン類又はその誘導体
(2)第2級アミノ基、第3級アミノ基、第4級アンモニウム基等を有するアクリル重合体
(3)ポリビニルアミン及びポリビニルアミジン類
(4)ジシアンジアミド−ホルマリン共重合体に代表されるジシアン系カチオン性重合体
(5)ジシアンジアミド−ポリエチレンアミン共重合体に代表されるポリアミン系カチオン性重合体
(6)エピクロルヒドリン−ジメチルアミン共重合体
(7)ジアリルジメチルアンモニウム−SO2重縮合体
(8)ジアリルアミン塩−SO2重縮合体
(9)ジアリルジメチルアンモニウムクロライド重合体
(10)ジアリルジメチルアンモニウムクロライド−アクリルアミド共重合体
(11)アリルアミン塩の共重合体
(12)ジアルキルアミノエチル(メタ)アクリレート4級塩共重合体
(13)アクリルアミド−ジアリルアミン共重合体
(14)5員環アミジン構造を有するカチオン性樹脂
等を例示することができる。これらの中でも、カチオン性ポリアミン系樹脂が、コスト対効果の面で優れており、特に好適に用いることができる。
【0025】
前記サイズ剤は、クリアーコート層にサイズ効果を付与する成分である。本発明に用いられるサイズ剤の種類には特に限定がないが、中性領域でも安定したサイズ効果を発現するアルキルケテンダイマーサイズ剤が好ましい。該アルキルケテンダイマーサイズ剤を使用した場合には、クリアーコート層と後述する塗工層を形成する塗工液との相溶性がよく、塗工層をクリアーコート層上により均質に設けることが可能となると共に、基紙とクリアーコート層と塗工層との間で、良好な層状構成を維持することができる。
【0026】
このように、本発明では澱粉と耐水化剤とサイズ剤とが併用されており、基紙中への水分浸透を適度に誘引するので、例えば塗工層中のラテックスがクリアーコート層中に僅かに浸透し、塗工層のアンカー的機能を発現する。したがって、後糊用接着用紙に接着層が設けられた後糊用接着紙を、所定の方法にて擬似接着させた後に剥離した際に、塗工層の毀損を起こすことなく、鮮明で美麗な隠蔽情報記録面をそのままの状態で得ることができる。
【0027】
また本発明の後糊用接着用紙及び後糊用接着紙の好適な用途は、例えば隠蔽情報が塗工層上に印字、印刷された後に後糊用接着剤による接着層が設けられる、圧着葉書用紙等の隠蔽用紙である。該圧着葉書用紙は、郵送段階で風雨等による濡れを生じる場合がある。この濡れは、接着剤の接着性に多大な影響を及ぼし、時には擬似接着面が剥離不能になり、接着層が基紙との間で剥離し、隠蔽情報等の記載情報が毀損されるといった問題がある。
【0028】
前記問題を解決する手段として、例えば後糊用接着用紙に耐水性を付与することが考えられるが、後糊用接着用紙の耐水性向上は、使用薬品によるコストアップを招くだけでなく、使用後の後糊用接着用紙を古紙として回収、再利用することが不可能となり、焼却処分せざるを得ないため、資源の有効活用という点から好ましくない。
【0029】
後糊用接着紙を資源原料として再利用するには、接着層が基紙から容易に除去され、分別可能であることが必用である。本発明の後糊用接着紙は、基紙に塗工層が直接設けられているのではなく、基紙の両面に、澱粉、耐水化剤及びサイズ剤からなる特定のクリアーコート層が設けられ、該クリアーコート層上に塗工層が、さらに該塗工層上に情報の印字又は印刷が成された上で接着層が設けられているので、低い物理的除去処理で、塗工層及び接着層を基紙から容易に分離除去することができる。
【0030】
クリアーコート層を形成する澱粉と耐水化剤とサイズ剤との割合は、各成分による効果がバランスよく発現され、かつ前記のごとき基紙中への水分浸透を適度に誘引する効果が充分に発現される限り特に限定がないが、例えば澱粉:耐水化剤:サイズ剤(質量比)が10〜30:10〜30:0.05〜0.40であることが好ましく、15〜25:15〜25:0.15〜0.30であることがさらに好ましい。
【0031】
基紙の両面に、澱粉、耐水化剤及びサイズ剤を含有するクリアーコート層を設けるには、例えば澱粉、耐水化剤及びサイズ剤を前記範囲の質量比にて適宜配合したクリアーコート液を、例えばサイズプレス、ゲートロールコーターを備えたサイズプレス等を用いたフィルムトランスファー方式にて基紙の両面に塗工する方法を採用することができる。クリアーコート液の塗工量は、1.5〜3.5g/m2、さらには1.7〜3.3g/m2であることが好ましい。クリアーコート液の塗工量が前記下限値未満の場合には、クリアーコート層を設けた効果が充分に発現されない恐れがあり、前記上限値を超える場合には、コスト上昇を招くと共に、基紙表面に被覆層が形成され、インク吸収乾燥性が低下し、インクの裏写りや、接着層での剥離強度の低下を招く恐れがある。
【0032】
なお、クリアーコート層の厚さには特に限定がないが、例えば0.1〜2.0μm程度であることが好ましい。
【0033】
かくして形成された一方のクリアーコート層上には塗工層が設けられる。該塗工層を形成するための塗工液には特に限定がないが、例えば接着性組成物及び顔料を主成分とする塗工液を好適に用いることができる。
【0034】
前記接着性組成物としては、例えばカチオン澱粉、エーテル化澱粉、リン酸エステル化澱粉、ヒドロキシエチルエーテル化澱粉等の澱粉誘導体;カルボキシメチルセルロース、ヒドロキシエチルセルロース等のセルロース誘導体;カゼイン、ゼラチン、大豆蛋白、ポリビニルアルコール又はその誘導体;ポリビニルピロリドン、無水マレイン酸樹脂、スチレン−ブタジエン共重合体、メチルメタクリレート−ブタジエン共重合体等の共役ジエン系共重合体ラテックス;アクリル酸エステル及びメタクリル酸エステルの重合体又は共重合体等のアクリル系重合体ラテックス;エチレン−酢酸ビニル共重合体等のビニル系重合体ラテックス;これら各種重合体のカルボキシル基等の官能基含有単量体による官能基変性重合体ラテックス;これら各種重合体にカチオン性基を用いてカチオン化したラテックス、カチオン性界面活性剤にて重合体表面をカチオン化したラテックス、カチオン性ポリビニルアルコール下で重合し、重合体表面に該カチオン性ポリビニルアルコールを分布させたラテックス、カチオン性コロイド粒子の懸濁分散液中で重合を行い、重合体表面に該カチオン性コロイド粒子を分布させたラテックス;メラミン樹脂、尿素樹脂等の熱硬化合成樹脂等の水性接着剤;ポリメチルメタクリレート等のアクリル酸エステルやメタクリル酸エステルの重合体又は共重合体;ポリウレタン系樹脂、不飽和ポリエステル系樹脂、塩化ビニル−酢酸ビニル共重合体、ポリビニルブチラール、アルキッド樹脂等の合成樹脂系接着剤等があげられ、これらは単独で又は2種以上を組み合せて用いることができる。これらの中では、汎用性の高いスチレンブタジエンラテックス及び澱粉誘導体が、費用対効果の面で優れており、好適に用いられる。また得られる後糊用接着用紙の主たる用途が郵送であることを考慮すると、黄変化が生じ易いアクリロニトリルの含有量が少なく、より好ましくは含有しないスチレンブタジエンラテックスがさらに好ましく、ガラス転移温度が0℃未満の柔軟性を有するスチレンブタジエンラテックスが特に好ましい。
【0035】
前記顔料としては、例えば軽質炭酸カルシウム、重質炭酸カルシウム、炭酸マグネシウム、カオリン、デラミネーティッドカオリン、焼成カオリン、タルク、硫酸カルシウム、硫酸バリウム、二酸化チタン、酸化亜鉛、硫化亜鉛、炭酸亜鉛、サチンホワイト、珪酸アルミニウム、ケイソウ土、珪酸カルシウム、合成非晶質シリカ、コロイダルシリカ、カチオン修飾したコロイダルシリカ、水酸化アルミニウム、アルミナ、アルミナ水和物、リトポン、ゼオライト、加水ハロサイト、水酸化マグネシウム等の白色無機顔料;スチレン又はその共重合体のプラスチックピグメント、ポリエチレン、マイクロカプセル、尿素樹脂、メラミン樹脂等の有機顔料等があげられ、これらは単独で又は2種以上を組み合せて用いることができる。これらの中では、比較的安価であること、例えばブレードコーターでの高速塗工適性に優れていること、優れた後糊適性が得られることから、炭酸カルシウム及びクレーが好適に用いられる。
【0036】
塗工液が接着性組成物及び顔料を主成分とする場合、該接着性組成物と顔料との割合には特に限定がないが、顔料100質量部に対して、接着性組成物の総量が5〜25質量部程度、さらには7〜23質量部程度となるように調整することが好ましい。接着性組成物の総量が前記下限値よりも少ない場合には、塗工層の強度が低下する恐れがあり、前記上限値よりも多い場合には、塗工層同士の密着性が高くなって、後糊用接着用紙の製造工程においてブロッキング、貼り付き等のトラブルを生じる恐れがあり、コストも上昇する傾向がある。
【0037】
なお、本発明において、塗工液が接着性組成物及び顔料を主成分とし、接着性組成物としてスチレンブタジエンラテックス及び澱粉誘導体が、顔料として炭酸カルシウム及びクレーが用いられる場合、これら4成分の割合(固形分質量比)は、クレー:炭酸カルシウム:スチレンブタジエンラテックス:澱粉誘導体が30〜60:30〜60:3〜20:2〜10であることが、さらには35〜55:35〜55:5〜15:3〜8であることが、塗工層の強度、粘性等の物性がバランスよく付与される点から特に好適である。
【0038】
また塗工液には、前記接着性組成物及び顔料の他にも、例えば顔料分散剤、増粘剤、流動性改良剤、消泡剤、抑泡剤、滑剤、離型剤、発泡剤、浸透剤、着色染料、着色顔料、蛍光増白剤、紫外線吸収剤、酸化防止剤、防腐剤、防バイ剤、耐水化剤、染料定着剤等の通常の添加剤や、例えばステアリン酸、ステアリン酸カルシウム、オレイン酸、オレイン酸カルシウム、オレイン酸アンモニウム、レシチン、ポリエチレン、ワックスやこれらの誘導体等の、カレンダー加工時のダスティングや汚れを防止する滑剤等の助剤を、必要に応じて適宜配合することができる。
【0039】
一方のクリアーコート層上に塗工層を設けるには、例えば接着性組成物、澱粉誘導体等を前記範囲の質量比にて適宜配合した塗工液を、通常の塗工機にて一方のクリアーコート層上に塗工する方法を採用することができる。
【0040】
前記塗工機としては、例えばエアナイフコーター、ブレードコーター、ロッドメタリングコーター、カーテンコーター等があげられる。ストリーク等の塗工欠陥の発生を抑制するという観点からは、原理的に塗工部に糊粕が付着し難いエアナイフコーターやカーテンコーターの使用が好適であるが、例えば保水性向上剤の効果によるストリーク等の発生の抑制や、次工程での平坦化処理の難易度及び操業コストを考慮すると、カーテンコーター及びエアナイフコーターよりも高平滑度の塗工層が容易に得られるブレードコーター、ロッドコーター等を使用することが望ましい。
【0041】
塗工液の塗工量は、5〜20g/m2、さらには10〜15g/m2であることが好ましい。塗工液の塗工量が前記下限値未満の場合には、次工程における平坦化処理によっても所望の平滑度を得ることが困難となると共に、後の工程にて接着層を形成する際の擬似接着剤(後糊)の消費量低減効果が充分に得られなくなる恐れがあり、前記上限値を超える場合には、塗工層の所望の表面強度を担保することが困難となると共に、塗工時に塗工ロールに糊粕が付着して操業上及び品質上のトラブルを招き易くなる他、非塗工面への塗工液の浸漬によりインクジェット記録適性を担保することも困難となる恐れがある。
【0042】
なお、塗工層の厚さには特に限定がないが、例えば3〜20μm程度であることが好ましい。
【0043】
次に、前記塗工層の表面及び該塗工層が設けられていないもう一方のクリアーコート層の表面に、平坦化処理を施す。本発明の後糊用接着用紙及び後糊用接着紙においては、例えばこのクリアーコート層に可変情報をインクジェット記録により印字、印刷して宛名面とし、反対側の塗工層に隠蔽情報をオフセット印刷して非宛名面とすることができる。
【0044】
前記もう一方のクリアーコート層の表面及び塗工層の表面に平坦化処理を施すには、例えばスーパーカレンダーを用いることができる。本来スーパーカレンダーは、両面に塗工層を有する塗工紙の平坦化処理に利用されているが、本発明においては、片面のクリアーコート層と、反対側面のクリアーコート層上にさらに設けられた塗工層との平坦化処理を行うことで、塗工層面の緻密性を向上させると共に、クリアーコート層面の澱粉、耐水化剤及びサイズ剤の浸漬により生じた凹凸を平坦にし、インクジェット記録時の印字、印刷情報の精細度を向上させることができる。
【0045】
平坦化処理は、前記塗工機と一連をなす、いわゆるオンマシンのカレンダーによって行ってもよいし、塗工機と一連ではなく、完全に別体のオフマシンのカレンダーによって行ってもよい。カレンダーの種類は特に限定されない。また、平滑化処理手段であるカレンダーロールとしては、金属ロールと弾性ロールとを組み合せたものや、金属ロール同士を組み合せたものを使用することができる。
【0046】
特に、塗工設備の後段に、熱ソフトカレンダーからなるオンマシンカレンダーを設置し、平坦化処理を行うことが好適である。該熱ソフトカレンダーは、例えばオイル等の熱媒体を流通させて加熱するものでもよいが、かかる熱ソフトカレンダーでは、表面温度180℃程度が限界である。高速での抄紙を図るためには、前記金属ロールは、その幅方向に分割温度制御可能な電磁誘導作用による内部加熱装置が装備され、その表面温度が230℃程度以上、特に230〜500℃程度に調整されるものが望ましい。このような金属ロールの具体例としては、シェル内の鉄心の周囲に誘導コイルが巻回され、ジャケット室を通る熱媒体を加熱するものがあげられる。
【0047】
なお、例えば金属ロールの表面温度を250〜380℃で、特に300℃を超えて380℃以下の温度で処理し、平坦化設備入口の水分率を4〜10%、より好適には6〜9%の範囲で、できる限り低いニップ圧で紙が全層に渡って潰れないようにすることにより、嵩の低下を防ぎ、塗工層及びクリアーコート層両面の平滑度をより高めることができる。
【0048】
平坦化されたクリアーコート層の平滑度は、JIS P 8119に記載の「紙及び板紙−ベック平滑度試験機による平滑度試験」に準拠したベック平滑度が60秒以上、さらには65秒以上であることが好ましい。クリアーコート層のベック平滑度が前記値未満である場合には、得られる後糊用接着用紙にインクジェット記録を行った際の外観が低下し、印刷物に滲みが生じる等、印刷適正が不充分となる恐れがある。なお該ベック平滑度の上限には特に限定がないが、特に処理速度100m/分を超える高速インクジェットプリンターを使用した場合に滲みが生じ易くなる傾向があること、及び塗工機の性能やコストの点を考慮すると、通常100秒程度が上限とされる。また該クリアーコート層のベック平滑度を例えば前記範囲程度とするには、クリアーコート液を塗工した後に、例えばマシンカレンダー等の平坦化処理手段、具体的にはカレンダー圧を適宜調整すればよい。
【0049】
平坦化された塗工層の平滑度は、前記JIS P 8119に記載の「紙及び板紙−ベック平滑度試験機による平滑度試験」に準拠したベック平滑度が125秒以上、さらには130秒以上であることが好ましい。塗工層のベック平滑度が前記値未満である場合には、塗工層表面の光沢感が低下して外観がわるくなり易く、得られる後糊用接着用紙にオフセット印刷を行った際に、印刷物を優れた美観とすることが困難となる恐れがある。なお該ベック平滑度の上限には特に限定がないが、次工程にて塗工する擬似接着剤のアンカー機能が低下しはじめ、剥離時に不用意な接着層の剥がれが生じる恐れがあることを考慮すると、通常200秒程度が上限とされる。
【0050】
次に、前記のごとく得られた後糊用接着用紙の、平坦化された塗工層上に、情報を印字又は印刷した後、剥離可能な接着層を設ける。該接着層を形成するには、例えば擬似接着剤(剥離可能な後糊用の接着剤)を含んだ接着液を塗工層上に塗工すればよい。該擬似接着剤には特に限定がないが、例えばエマルジョン型接着剤が好適に用いられる。該エマルジョン型接着剤としては、例えばアクリル酸エステルとアクリル酸、メタクリル酸エステル等とを乳化重合したアクリルエマルジョンが好ましく、特に固形分濃度が5〜15%程度のものが好ましい。なお該アクリルエマルジョンの使用量が多いと、接着力が大きくなりすぎて、剥離時に後糊用接着用紙の表面が破れる恐れがあり、逆に使用量が少ないと、接着力が小さすぎて郵送中等に剥離してしまう恐れがあるので、接着層中に固形分で5〜 20質量%程度含有されるように適宜調整することが好ましい。
【0051】
また、接着力を制御する他、前記した剥離時に裏写りが生じ難くなるように、接着層にはシリカが含有されていることが好ましい。接着層中の該シリカの含有量は、固形分で5〜15質量%程度であることが好ましい。なお該シリカとしては、平均粒子径が3〜20μm程度のものが好ましい。該平均粒子径が前記下限値よりも小さいと、配送時の濡れや環境変化で接着強度の変動が生じ易く、また前記下限値よりも大きいと、接着力が抑制されすぎる恐れがある。
【0052】
さらに、接着層中には、前記擬似接着剤やシリカの他にも、助剤として増粘剤、流動性改良剤、消泡剤、抑泡剤、浸透剤等を、本発明の目的を阻害しない範囲で適宜含有させることもできる。
【0053】
平坦化された塗工層上に情報を印字又は印刷した後、剥離可能な接着層を設けるには、例えば擬似接着剤、シリカ等を適宜配合した接着液を、例えばロールコーター、グラビアコーター、リップコーター等の各種塗工機や印刷機等を用いた通常の方法にて塗工すればよい。該接着液の塗工量は、固形分で15〜30g/m2、さらには17〜28g/m2であることが好ましい。接着液の塗工量が前記下限値未満の場合には、接着層の接着力が弱すぎる恐れがあり、また前記上限値を超える場合には、接着層を形成した後、貼り合せる際に接着層が後糊用接着用紙からはみ出す恐れがある。
【0054】
形成された接着層同士の剥離強度(擬似接着強度)としては、JIS P 8113に記載の「紙及び板紙−引張特性の試験方法」に準拠して測定した、線圧約390N/cm以上の圧力をかけて接着した時のT字剥離力が0.2〜0.5N/15mm程度、さらには0.25〜0.45N/15mm程度であることが好ましい。該T字剥離力が前記下限値よりも小さいと、例えば郵便局での仕分け作業中や郵送途中で接着面が剥離する恐れがあり、また前記上限値よりも大きいと、接着面の剥離時に後糊用接着紙の表面が破れたり、受取人が容易に剥離することが困難になる傾向がある。なお接着層同士の剥離強度が前記範囲内となるように、接着液の塗工量を適宜調整することが好ましい。
【0055】
なお、接着層の厚さには特に限定がないが、例えば10〜100μmの範囲にすればよく、好ましくは20〜50μm程度である。
【0056】
かくして得られる後糊用接着用紙及び後糊用接着紙において、平坦化されたクリアーコート層面のサイズ性としては、該平坦化されたクリアーコート層面側の、JIS P 8140に記載の「紙及び板紙−吸水度試験方法−コッブ法」に準拠して測定した、10秒コッブサイズ度が10〜30g/m2、さらには12〜28g/m2であることが好ましい。該10秒コッブサイズ度が前記下限値よりも小さい場合、すなわち吸水性が低い場合、通常150m/分以上の印刷速度で行われるインクジェット記録において、印字されたインクが補助乾燥装置で完全に乾燥されずに、該補助乾燥装置直後に設けられた金属ロールに転写し、その転写したインクが後糊用接着用紙に再転写して汚れを引き起こす恐れがある。また10秒コッブサイズ度が前記上限値よりも大きい場合、すなわち吸水性が高い場合、インクジェット記録におけるインクセット性や画像耐水性は良好であるものの、インクジェットインクの滲みが大きく、フェザリングと称するドット形状の悪化を招き、記録文字の品位が劣る恐れがある。
【0057】
本発明の後糊用接着用紙及び後糊用接着紙は、基紙の両面に単に塗工層が設けられているのではなく、まず基紙の両面に澱粉、耐水化剤及びサイズ剤を含有する特定のクリアーコート層が設けられ、一方のクリアーコート層上には塗工層が設けられ、もう一方のクリアーコート層の表面及び塗工層の表面が平坦化されているので、例えばこの平坦化されたクリアーコート層に可変情報をインクジェット記録により印字、印刷して宛名面とし、反対側の平坦化された塗工層に隠蔽情報をオフセット印刷して非宛名面とすることができる。このように、本発明の後糊用接着用紙及び後糊用接着紙は、例えば可変情報をインクジェット記録により印字、印刷することが可能な優れたインクジェット記録適性と、美麗な隠蔽情報をオフセット印刷することが可能な優れたオフセット印刷適性とを具備したものである。
【0058】
次に、本発明の後糊用接着用紙及び後糊用接着紙を実施例に基づいてさらに詳細に説明するが、本発明はこれら実施例のみに限定されるものではない。
【0059】
実施例1〜7及び比較例1〜9
NBKP5質量%及びLBKP95質量%からなる原料パルプを、ギャップフォーマー抄紙機にて抄紙し、2段・2スタックの熱ソフトカレンダーにて平坦化処理して、坪量120g/m2の基紙を用意した。
【0060】
次に、表1に示す組成にてクリアーコート液を調製し、表1に示す塗工方式及び塗工量で、該クリアーコート液を前記基紙の両面に塗工し、クリアーコート層を形成させた。その厚さは約0.2μmであった。
【0061】
次に、表2に示す組成にて塗工液を調製し、表2に示す塗工方式及び塗工量で、前記一方のクリアーコート層上に塗工し、塗工層を形成させた。その厚さは約12μmであった。なお比較例3においては、塗工層を設けなかった。
【0062】
次に、一方の面にクリアーコート層が形成され、反対側の面にクリアーコート層及び塗工層が積層された基紙を、金属ロール(120℃)と弾性ロールとを組み合せたソフトカレンダー2スタックに通紙し、塗工層の表面及び該塗工層が形成されていないもう一方のクリアーコート層の表面に平坦化処理を施して後糊用接着用紙を得た。なお比較例3においては、塗工層が設けられていないので、両面のクリアーコート層に平坦化処理を施した。また比較例4〜9においては、いずれの表面にも平坦化処理を施さなかった。
【0063】
平坦化されたクリアーコート層の平滑度及び平坦化された塗工層の平滑度として、JIS P 8119に記載の「紙及び板紙−ベック平滑度試験機による平滑度試験」に準拠し、ベック平滑度を測定した。その結果を表3に示す。
【0064】
次に、得られた後糊用接着用紙の、平坦化処理を施した塗工層上に、通常の方法にて情報を印字・印刷した後、アクリルエマルジョン100質量部(乾燥重量)とシリカ(2次凝集体、平均粒子径:10μm)100質量部とを混合して調製した接着液を、表3に示す塗工方式及び塗工量で塗工し、厚さ約25μmの接着層を形成させて後糊用接着紙を得た。なお比較例3では、塗工層を設けなかったので、一方の平坦化されたクリアーコート層上に情報を印字・印刷し、比較例4〜9では、平坦化されていない塗工層上に情報を印字・印刷した後、接着層を設けた。
【0065】
得られた後糊用接着紙について、形成された接着層同士の剥離強度(擬似接着強度)として、線圧約390N/cmの圧力をかけて接着した時のT字剥離力を、以下の方法にしたがって測定した。その結果を表3に示す。
【0066】
(剥離強度)
後糊用接着紙を15mmの幅で短冊状に切り取り、JIS P 8113に記載の「紙及び板紙−引張特性の試験方法」に準拠して、テンシロン万能試験機を用い、剥離速度300mm/分で180°剥離強度を測定した。
【0067】
【表1】

【表2】

【表3】

【0068】
次に、後糊用接着用紙及び後糊用接着紙の特性を、以下の試験例1〜3の方法にしたがって調べた。その結果を表4に示す。
【0069】
試験例1(クリアーコート層(宛名面)のインクジェット記録適性(後糊用接着用紙の特性))
(1)初期印字(滲み)
黒色インク(サイテックスデジタルプリンティング社製、No.1007)をセットしたインクジェットプリンター(キヤノン(株)製、型番:PIXUS9900i)を用い、後糊用接着用紙の平坦化されたクリアーコート層(宛名面)上に、4ポイント、長さ20cmの罫線印刷を、5mm間隔で連続25回行い、各罫線の滲みを目視にて観察し、以下の評価基準に基づいて評価した。
(評価基準)
◎:25回とも滲みがない。
〇:20回以上滲みがない。
△:滲みが5回を超える頻度で生じている。
×:罫線の半数以上が滲みを生じている。
【0070】
(2)耐水性
前記と同じインクジェットプリンターを用いてインクジェット記録した後糊用接着用紙を、水道水中に30秒間浸積した後、余分な水分を濾紙で吸い取り自然乾燥した。その後、記録画像の滲みを目視にて観察し、以下の評価基準に基づいて評価した。
(評価基準)
◎:滲みが認められない。
〇:滲みが僅かに認められるが、実用上問題ない程度である。
△:滲みがあり、実用上問題がある。
×:滲みが著しい。
【0071】
(3)コッブサイズ度
JIS P 8140に記載の「紙及び板紙−吸水度試験方法−コッブ法」に準拠し、後糊用接着用紙の平坦化されたクリアーコート層面側の10秒コッブサイズ度を測定した。
【0072】
試験例2(オフセット印刷適性(後糊用接着紙の特性))
ビジネスフォーム用オフセット印刷機(小森コーポレーション(株)製、型番:スプリント25)を用い、後糊用接着紙のクリアーコート層(宛名面)上又は接着層(後糊面)上に罫線印刷した際の、インクの滲み、ズレ及び画像の再現性を目視にて観察し、各々以下の評価基準に基づいて評価した。
(評価基準)
◎:インクの滲み及びズレがなく、網点再現性及び画像再現性に優れている。
〇:罫線部分に若干の膨らみが認められるものの、実用上問題ない程度である。
△:網点の欠落があり、罫線部分・輪郭の精細度合いが低い。
×:網点の欠落が多く、画線部の滲み及びズレが著しい。
【0073】
試験例3(後糊適性(後糊用接着紙の特性))
後糊用接着紙のクリアーコート層(宛名面)上に試験例1と同様にしてインクジェット記録を施し、また接着層(後糊面)上に試験例2と同様にしてオフセット印刷を施した後、接着層同士が向かい合うように2つ折りにして、圧着シーラ(大日本印刷(株)製、型番:MS−9100)を用い、シーラーギャップ17の条件で圧着処理をして向かい合った接着層を加圧接着させ、隠蔽用紙を得た。
【0074】
得られた隠蔽用紙について、成人男女20名に剥離性、視認性(後糊面及び宛名面の印字情報の精細度合い)、手触り等の感性試験を行ってもらい、以下の評価基準に基づいて評価を得た。
(評価基準)
1:剥離性、視認性及び手触りがいずれも優れている。
2:剥離性、視認性及び手触りが良好で、実用上問題ない。
3:剥離性に若干難があり、剥離面に取られが生じており、視認性がよくない。
4:剥離が困難であり、剥離面に毀損が生じ、視認性に劣る。
【0075】
20名の評価結果から、後糊用接着紙の後糊適性を以下の評価基準に基づいて総合評価した。表4にはこの総合評価の結果を示す。
(評価基準)
◎:評価1が18名以上である。
○:評価1が12〜17名である。
△:評価4が12〜17名である。
×:評価4が18名以上である。
【0076】
【表4】

【0077】
実施例1〜7の後糊用接着用紙は、基紙の両面に特定のクリアーコート層が形成され、一方のクリアーコート層上には塗工層が形成され、もう一方のクリアーコート層の表面とこの塗工層の表面とが共に平坦化されており、また実施例1〜7の後糊用接着紙は、この後糊用接着用紙の平坦化された塗工層上に接着層が形成されたものである。したがって、表4に示すように、この接着層が好適な剥離強度を有する他、平坦化されたクリアーコート層面にインクジェット記録を行った場合、滲みがほとんどなく、耐水性に優れ、好適なコッブサイズ度を示し、クリアーコート層はインクジェット記録適性に優れており、かつ、クリアーコート層及び後糊層がいずれもオフセット印刷適性に優れている。
【0078】
これに対して、比較例1〜3の後糊用接着用紙及び後糊用接着紙では、一般的なクリアーコート液にてクリアーコート層が形成されているので、接着層の剥離強度が低く、各特性の中でも特に、インクジェット記録を行った場合のクリアーコート層での滲みが多く、オフセット印刷適性及び後糊適性にも劣るものであることがわかる。特に比較例3では、塗工層が形成されていないので、全体的に悪い結果となっている。
【0079】
また比較例4〜9の後糊用接着用紙及び後糊用接着紙では、クリアーコート層の表面及び塗工層の表面に平坦化処理が施されていないので、各特性の中でも特に、インクジェット記録を行った場合のクリアーコート層での滲みが多く、しかもいずれかの特性に劣り、優れた特性を兼備するものではないことがわかる。
【産業上の利用可能性】
【0080】
本発明の後糊用接着用紙及び後糊用接着紙は、インクジェット記録にもオフセット印刷にも適しているので、例えば、その製造の際にこれらインクジェット記録とオフセット印刷とを併用する、各種隠蔽用紙等に好適に利用することができる。


【特許請求の範囲】
【請求項1】
基紙を含む、剥離可能な接着層を設けるための後糊用接着用紙であって、
前記基紙が、木材パルプを主原料としたものであり、
前記基紙の両面に、澱粉、耐水化剤及びサイズ剤を含有するクリアーコート層が設けられ、
一方の前記クリアーコート層上に、塗工層が設けられ、
もう一方のクリアーコート層の表面及び前記塗工層の表面に、平坦化処理が施されており、
平坦化された前記塗工層上に、情報が印字又は印刷された後、前記剥離可能な接着層が設けられる、後糊用接着用紙。
【請求項2】
前記澱粉が変性澱粉であり、前記耐水化剤がカチオン性ポリアミン系樹脂であり、前記サイズ剤がアルキルケテンダイマーサイズ剤である、請求項1に記載の後糊用接着用紙。
【請求項3】
前記塗工層が、接着性組成物及び顔料を主成分とする塗工液を塗工して形成されたものであり、該接着性組成物としてスチレンブタジエンラテックス及び澱粉誘導体を含み、該顔料として炭酸カルシウム及びクレーを含む、請求項1又は2に記載の後糊用接着用紙。
【請求項4】
基紙に、剥離可能な接着層が設けられた後糊用接着紙であって、
前記基紙が、木材パルプを主原料としたものであり、
前記基紙の両面に、澱粉、耐水化剤及びサイズ剤を含有するクリアーコート層が設けられ、
一方の前記クリアーコート層上に、塗工層が設けられ、
もう一方のクリアーコート層の表面及び前記塗工層の表面に、平坦化処理が施されており、
平坦化された前記塗工層上に、情報が印字又は印刷された後、前記剥離可能な接着層が設けられた、後糊用接着紙。


【公開番号】特開2008−2033(P2008−2033A)
【公開日】平成20年1月10日(2008.1.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−174309(P2006−174309)
【出願日】平成18年6月23日(2006.6.23)
【出願人】(390029148)大王製紙株式会社 (2,041)
【Fターム(参考)】