説明

後部ゲート構造

【課題】開放位置にある後部ゲートを閉鎖位置に切り換え、同閉鎖位置でロックする操作をより簡単に実施可能な後部ゲート構造を低コストで提供する。
【解決手段】荷台の後端に枢支された後部ゲート24を閉鎖位置に保持するロック機構が、後部ゲート24の車両幅方向に移動自在に支持された左右一対のロッド38Rと、一対のロッド38Rを側方に突出したロック位置に付勢する付勢手段と、ロッド38Rの両端部位を後方から捕捉すべくサイドパネル23に設けられた係合部27Bと、一対のロッド38Rを付勢手段に抗して係合部27Bから引退させるロック解除手段とを備え、後部ゲート24の閉鎖位置への移動に基づいて、同両端部位を上下いずれかに摺動移動させる傾斜案内面31Aがサイドパネル23に設けられている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、フロアパネル及び一対のサイドパネルを有する車両用荷台の後端に後部ゲートが揺動開閉自在に枢支された後部ゲート構造に関し、特に、後部ゲートを閉鎖位置に保持するロック機構に関する。
【背景技術】
【0002】
この種の後部ゲート構造に関連する先行技術文献情報として下記に示す特許文献1がある。この特許文献1に記された後部ゲート構造は、後部ゲートの車両幅方向に移動自在に支持された左右一対のロッドと、これらロッドを外向きのロック位置に付勢するバネと、ロック位置にあるロッドの先端を捕獲するようにサイドパネルに設けられた凹部と、これらロッドを内向きのロック解除位置に手動操作するハンドル(ロック解除手段)とを備えている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】米国特許第5678872号明細書(図7、図9)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかし、特許文献1に記された後部ゲート構造では、開放位置にある後部ゲートを閉鎖位置に切り換え、同閉鎖位置でロックする際には、先ず、ハンドル(ロック解除手段)で左右一対のロッドをロック解除位置に保持しながら、後部ゲートを閉鎖し、次に、後部ゲートを閉鎖位置に保持しながら、ロッドをロック解除位置に保持しているハンドルの操作を解除する、という一連の操作を途切れなく必要があり、後部ゲートのロック操作が比較的煩雑であった。
【0005】
そこで、本発明の目的は、上に例示した従来技術による後部ゲート構造が与える課題に鑑み、開放位置にある後部ゲートを閉鎖位置に切り換え、同閉鎖位置でロックする操作をより簡単に実施可能な後部ゲート構造を、より低コストで提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明による後部ゲート構造の特徴構成は、
フロアパネル及び一対のサイドパネルを有する車両用荷台の後端に後部ゲートが揺動開閉自在に枢支された後部ゲート構造であって、
前記後部ゲートを閉鎖位置に保持するロック機構が、
前記後部ゲートの車両幅方向に移動自在に支持された左右一対のロッドと、
前記一対のロッドを後部ゲートの左右端部付近から側方に突出したロック位置に付勢する付勢手段と、
前記ロック位置における前記一対のロッドの両端部位を少なくとも後方から捕捉すべく前記サイドパネルに設けられた係合部と、
前記一対のロッドを前記付勢手段の付勢力に抗して手動で前記係合部から引退させるためのロック解除手段と、を備え、
前記後部ゲートの前記閉鎖位置への移動に基づいて、前記ロック位置における前記一対のロッドの両端部位を上下いずれかに摺動移動させる傾斜案内面が前記サイドパネルに設けられており、前記両端部位は前記傾斜案内面を乗り越えると前記係合部に捕捉される点にある。
【0007】
上記の特徴構成による後部ゲート構造では、後部ゲートを閉鎖位置でロックさせる際には、単純に後部ゲートを閉鎖位置に揺動操作するだけで、一対のロッドの両端部位がサイドパネルの傾斜案内面によって上下いずれかに摺動移動され、傾斜案内面を乗り越えると係合部に捕捉されて、閉鎖位置でのロックが自動的に完了するので、全くロック解除手段を操作する必要はない。また、後部ゲートを閉鎖位置に揺動操作する際には、一対のロッドはそれらの軸心方向に動かないので、ロック解除手段が連動して動くこともない。
このように、開放位置にある後部ゲートを閉鎖位置に切り換え、同閉鎖位置でロックする操作をより簡単に実施可能な後部ゲート構造が、乗用車のドアなどに一般的に用いられているストライカのような重く高価な部品を用いることなく提供された。尚、開放姿勢に切り換える際には、従来の構成と同様にロック解除手段を操作すればよい。
【0008】
本発明の他の特徴構成は、前記係合部は前記サイドパネルの後端面に形成された開口部と連通形成されており、
前記傾斜案内面が前記後端面を構成する板材の一部を前記開口部の内側に向けて曲げ加工することで形成されている点にある。
【0009】
本構成であれば、サイドパネルの後端面を構成する板材の一部を開口部の内側に向けて曲げ加工することで傾斜案内面が形成されるので、後部ゲート構造を実現するための部品数が少なくて済み、後部ゲート構造の製作コストも安く済む。
【0010】
本発明の他の特徴構成は、前記傾斜案内面を乗り越えた前記一対のロッドの両端部位を前記傾斜案内面の前方に位置する前記係合部に向けて上下いずれかに付勢する補助付勢手段が設けられている点にある。
【0011】
本構成であれば、後部ゲートを閉鎖位置に揺動させる操作に伴って、傾斜案内面を乗り越えたロッドの両端部位が、補助付勢手段によって確実に係合部に移動操作されるので、後部ゲートを閉鎖位置でロックさせる操作がより円滑に行われる。
【0012】
本発明の他の特徴構成は、前記補助付勢手段として前記両端部位付近を上下いずれかの向きに付勢するバネが設けられている点にある。
【0013】
本構成であれば、ロッドの両端部位と後部ゲートの上下いずれかの縁部との間に圧縮バネなどのバネを取り付けるだけでよいので、補助付勢手段を簡単に実現できる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【図1】作業用車両を示す側面図である。
【図2】作業用車両を示す平面図である。
【図3】作業用車両を示す後面図である。
【図4】作業用車両の機体フレームを示す斜視図である。
【図5】作業用車両の荷台を示す分解斜視図である。
【図6】サイドパネルの後部エンド部材を示す斜視図である。
【図7】後部エンド部材を示す分解斜視図である。
【図8】フロアパネルとサイドパネルと後部ゲートを示す一部破断斜視図である。
【図9】後部ゲートのロック機構を示す後面図である。
【図10】ロックアーム付近を示す後面図である。
【図11】ロックアーム付近を示す側面図である。
【図12】ロック機構の作用を示す側面図である。
【図13】吊設機構の作用を示す側面図である。
【図14】吊設機構の作用を示す別の側面図である。
【図15】吊設機構の保持部材の作用を示す後面図である。
【図16】保持部材の動きを示す側面図である。
【図17】吊設機構のゲートハンガーを示す側面図である。
【図18】荷台(下降位置)のダンプシリンダ付近を示す側面図である。
【図19】荷台(上昇位置)のダンプシリンダ付近を示す側面図である。
【図20】ストッパ体を示す側面図及び平面図である。
【図21】荷台とピストン部材とストッパ体を示す後面図である。
【図22】荷台の前端部付近を示す側面図である。
【図23】荷台の前端部を示す分解斜視図である。
【図24】吊設機構の別実施形態を示す一部破断後面図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下に本発明を実施するための形態について図面を参照しながら説明する。
本発明に係る作業用車両の外観を図1、図2及び図3に示す。この作業用車両は、操向操作自在な左右一対の前輪1と左右一対の後輪2とによって支持された走行機体Aを備え、走行機体Aの前部にフロントガード3及びボンネット4が、走行機体Aの中央部に運転部5を構成するキャビンBが、走行機体Aの後部に荷台6が備えられ、荷台6の下方位置にエンジンEを含む駆動部Cが設けられている。
【0016】
運転部5には前輪1を操向操作する操縦ハンドル7及び座席8が備えられる。キャビンBの前部にはフロントガラス9が備えられており、キャビンBの右側部及び左側部には乗降用ドア10が備えられ、キャビンBの上方にはルーフ12が取り付けられている。
【0017】
この作業車は、駆動部Cからの駆動力を前輪1と後輪2とに伝える走行駆動系を有した4輪駆動型に構成され、農作業や運搬作業等の多目的の作業に使用可能となっている。荷台6は、走行機体Aの後端付近に配置された横向き軸心X1を中心として揺動自在に支持され、荷台6の前端側が油圧式のダンプシリンダ13の作動によって昇降操作される。
【0018】
走行機体Aは強度メンバーとしての機体フレームFを備えている。図4に示すように、この機体フレームFは、前後方向に伸びる左右一対のメインフレーム14と、このメインフレーム14の前部位置においてキャビンBを支持するキャビンフレームユニット15と、メインフレーム14の前端に連結された前部フレームユニット16と、メインフレーム14の後部位置の上方位置でメインフレーム14と平行姿勢となるように走行機体Aの前後方向に伸びる上部フレーム17と、メインフレーム14の後部位置において駆動部Cを支持するフレームユニット18とを備えている。左右のメインフレーム14と上部フレーム17とは縦向き姿勢の連結フレーム19によって連結されており、荷台6の横向き軸心X1は上部フレーム17の後端付近に設けられている。
【0019】
(荷台の概略構成)
図5に示すように、荷台6は、フロアパネル21とフロントパネル22と左右のサイドパネル23と開閉自在な後部ゲート24とを備えている。フロントパネル22と左右のサイドパネル23とがフロアパネル21に連結され、後部ゲート24はフロアパネル21の後端付近に配置された横向き軸心X2を中心として揺動自在に支持されている。より具体的には、フロアパネル21の左右の後端付近に一対の板状ブラケット25が取り付けられており(図8も参照のこと)、後部ゲート24はこの板状ブラケット25の後端に設けられた横向き軸心X2で枢支されている。左右のサイドパネル23の後端には上下方向に延びた筐体状の後部エンド部材27が溶接固定されている。
【0020】
図6に示すように、この後部エンド部材27は互いに溶接固定された外側エンド体28と内側エンド体29とからなる。
図6及び図7に示すように、外側エンド体28は、走行機体Aの前後方向に延びた主プレート部28Aと、主プレート部28Aの前端に配置された角パイプ部28Bと、主プレート部28Aの後端を内側に折り曲げ加工することで形成された後端プレート部28Cとを有する。角パイプ部28Bは、主プレート部28Aの前端を内側に連続的に折り曲げ加工することで形成されており、平面視で概して正方形の断面形状を備え、内部は空洞状とされている。
後部エンド部材27は角パイプ部28Bの前端面を介してサイドパネル23の後端面に溶接固定されている。
【0021】
内側エンド体29は、走行機体Aの前後方向に延びた主プレート部29Aと、主プレート部29Aの上端から外向きに延びた上端プレート部29Bとを有する。
外側エンド体28と内側エンド体29とは、内側エンド体29の上端プレート部29Bが、外側エンド体28の主プレート部28Aの上端内面に当接し、内側エンド体29の主プレート部29Aの前端面が、主プレート部28Aの角パイプ部28Bに当接する形態で、溶接固定されている。これによって、主プレート部28Aの後端プレート部28Cと角パイプ部28Bの間に位置する空間が、内側エンド体29によって閉じられ、同空間に概して直方体状の筐体が形成される。
【0022】
外側エンド体28の後端プレート部28Cには、2つの矩形の切り欠き部30A,30Bが上下に間隔を空けた状態で形成されている。2つの切り欠き部30A,30Bの間に残された矩形の端面形成部位31の上端からは、前方に傾斜した案内片31Pが一体的に延びている。
【0023】
内側エンド体29の主プレート部29Aにも、2つの切り欠き部32A,32Bが上下に間隔を空けた状態で形成されている。上方の切り欠き部32Aの下端の後方からは、丸みを帯びた先端を有する舌片状の規制片33が前方及び上方に向かって斜めに突出形成されている。規制片33の後方端面は、案内片31Pを前方から支持可能とされている。
また、内側エンド体29の主プレート部29Aの内面からは、後述するゲートハンガー40を枢支するための枢支ピン34が外側に向かって立設されている。
【0024】
図6に示すように、外側エンド体28の上方の切り欠き部30Aと内側エンド体29の上方の切り欠き部32Aは、互いに協働して、後述するロッド38L,38Rの他端付近を受け入れる開口部27Aを形成している。また、切り欠き部32Aの最下端部すなわち規制片33の基端部の前方部位は、ロッド38L,38Rの他端付近を少なくとも後方から捕捉する係合部27Bを構成している。係合部27Bは開口部27Aと連通状に形成されている。
【0025】
後部ゲート24を閉鎖姿勢にすると、後部ゲート24の左右端部に上下に延びるように設けられたエンド体24SL,24SRが、サイドパネル23の後部エンド部材27と重なり合い、且つ、エンド体24SL,24SRの上端外側から下方に延びたキャッチ部24Uが後部エンド部材27の上端を側方から包み込む状態となる。
【0026】
(ロック機構の構成)
後部ゲート24とサイドパネル23の間には、後部ゲート24を左右のサイドパネル23の後端付近を閉じた閉鎖姿勢に保持するためのロック機構が設けられている。図9に示すように、ロック機構は、後部ゲート24の後面の左右中央部付近に前後向きの軸心35A回りで揺動自在に設けられた左右一対のL字状のロックアーム35と、ロックアーム35の外側遊端に一端で枢支され、他端が車両幅方向外向きに延びた左右一対のロッド38L,38Rとを備える。ロックアーム35の内側遊端どうしは、この内側遊端に形成された長孔に挿通したピンを介して軸心35B回りで枢支されている。また、ロック機構は、図10及び図11に示すように、ロックアーム35の外側遊端どうしを離間させる向きに付勢するスプリング36(付勢手段の一例)を備え、さらに、図9に示すように、ロックアーム35の外側遊端どうしをスプリング36の付勢力に抗して手動で近接させるためのロック解除ハンドル37(ロック解除ハンドル手段の一例)を備える。ロック解除ハンドル37は横軸回りで枢支されており、ロック解除ハンドル37の下端を手前に引き上げるように揺動操作すると、ロックアーム35の各内側遊端が軸心35Bと共に押し下げられるため、ロックアーム35の外側遊端どうしが近接操作され、ロッド38L,38Rを左右の中央側に引き寄せる。尚、図10ではロック解除ハンドル37が省略されている。
【0027】
また、図9に示すように、ロッド38L,38Rの前記他端よりも僅かに中央寄りの位置と、後部ゲート24の本体との間には、ロッド38L,38Rの他端付近を下方に付勢する一対のコイルバネ39(補助付勢手段の一例)が設けられている。コイルバネ39の上端はロッド38L,38Rの他端付近に形成された貫通孔に係止されており、コイルバネ39の下端は、後部ゲート24の後面を形成するパネルに形成された貫通孔に係止されている。
図9(b)に示すように、ロック解除ハンドル37によってロッド38L,38Rを左右の中央側に引き寄せた状態では、コイルバネ39は上端が内側に移動した傾斜姿勢となることで、ロッド38L,38Rを左右外側に付勢する作用をする。したがって、スプリング36と同様にコイルバネ39もまたロックアーム35の前記遊端どうしを離間させる向きに付勢する働きをする。
【0028】
図9(a)は、閉鎖位置にある後部ゲート24の左右端面よりも外側に突出付勢された左右一対のロッド38L,38Rの他端が、前述した後部エンド部材27の開口部27Aに進入し、係合部27Bによって後方から捕捉されたロック状態を示す。
すなわち、ロック解除ハンドル37を介してロックアーム35に外力が働かない状態では、左右一対のロッド38L,38Rの他端は、スプリング36などによって後部ゲート24の左右端面よりも外側に突出付勢されている。
【0029】
そこで、図12(a)に示すように、後部ゲート24を開放位置から閉鎖位置に向けて揺動操作すると、後部ゲート24から左右に突出したロッド38L,38Rの他端が開口部27Aに進入し、左右のサイドパネル23の案内片31Pと当接し始め、ロッド38L,38Rの他端は案内片31Pの傾斜した後面31A(傾斜案内面の一例)によってコイルバネ39の付勢力に抗して上方に移動操作される。最終的に後面31Aの上端を乗り越えると、図12(b)に示すように、コイルバネ39の付勢力によって、規制片33の前方且つ下方に位置する係合部27Bに収納され、同箇所に捕捉されて、後部ゲート24のロックが実現される。
【0030】
次に、図9(b)に示すように、後部ゲート24が閉鎖位置でロックされている状態で、スプリング36などの付勢力に抗してロック解除ハンドル37を引き上げると、ロックアーム35の前記遊端どうしを互いに近接させる揺動操作が行われて、ロッド38L,38Rの他端が開口部27Aから内方に抜け出し、係合部27Bによる捕捉から解放開放されるので、後部ゲート24を開放することができる。
図5に例示するように、ロック解除ハンドル37を除くロック機構の構成部材は、後部ゲート24の後面カバーを構成するカバー部材24Cによって覆われている。
【0031】
(吊設機構の構成)
ロック解除後の後部ゲート24を図13(a)の閉鎖姿勢から次第に下向きに開放していくと、図13(b)に示すように、後部ゲート24は、左右のサイドパネル23と後部ゲート24の間に設けられた吊設機構によって自動的に、後部ゲート24が閉鎖位置から約90°開き、後部ゲート24の内面がほぼ水平となる中間姿勢で保持される。
この吊設機構は、左右のサイドパネル23の枢支ピン34に枢支された左右一対の長尺状のゲートハンガー40と、後部ゲート24から横外向きに突出配置された左右一対の軸部材42とを有する。
【0032】
ゲートハンガー40はその上端側に形成された長孔40Aを介して枢支ピン34に枢支されている。
他方、ゲートハンガー40の下端側には貫通孔40Bが形成されており、後部ゲート24の軸部材42は手動によりこの貫通孔40Bと係脱可能とされている。
図14は、ゲートハンガー40の下端側が手動により軸部材42から外された状態を示している。
【0033】
図14に示すように、貫通孔40Bは、狭隘部40B3を介して互いに連通した下方の第1孔部40B1と上方の第2孔部40B2とを備える。上方の第2孔部40B2は下方の第1孔部40B1よりも十分に大きな内径を有し、狭隘部40B3を構成するために互いに対向した突起部どうしの最短距離は、第1孔部40B1よりも小さく設定されている。
【0034】
図15に示すように、軸部材42は中実の円柱体からなり、左右のサイドパネル23の側面に固定された基端部42Aと、基端部42Aの先端側に隣接状に延設された離脱用軸部42Bと、離脱用軸部42Bの先端側に隣接状に延設された係止用軸部42Cと、係止用軸部42Cの先端側に隣接状に延設された円板状の抜け止めヘッド42Dとを有する。
【0035】
係止用軸部42Cは狭隘部40B3の幅よりも大きく第1孔部40B1の内径よりも小さな外径を備える。離脱用軸部42Bは狭隘部40B3の幅よりも小さな外径を備える。基端部42Aと抜け止めヘッド42Dとは第1孔部40B1の内径より大きな外径を備える。特に、抜け止めヘッド42Dは第2孔部40B2の内径より小さな外径を備える。
【0036】
通常は、図15に示すように、ゲートハンガー40は、その第1孔部40B1が軸部材42の係止用軸部42Cに外嵌状に係止された状態で枢支されている。したがって、前述したように、後部ゲート24を次第に下向きに開放していくと、左右のサイドパネル23の枢支ピン34がゲートハンガー40の長孔40Aの上端に当接した時点で、後部ゲート24の開放が規制され、図13(b)に示すように、後部ゲート24の内面がほぼ水平となる中間姿勢で保持される。
【0037】
ここで、ゲートハンガー40の下端付近を内側に移動させることで、第1孔部40B1を軸部材42の離脱用軸部42Bと一致させ、そのまま後部ゲート24を少し閉鎖位置に向けて戻すと、離脱用軸部42Bが狭隘部40B3を通過して第2孔部40B2に進入する。そこで、次にゲートハンガー40の下端付近を外側に移動させると、第2孔部40B2が抜け止めヘッド42Dから外側に抜けることで、ゲートハンガー40が軸部材42から解放される。そのまま後部ゲート24を水平姿勢よりも下方へと開放することが可能になる。
【0038】
(保持部材の構成)
さらに、図13(b)、図14及び図15に示すように、吊設機構は、ゲートハンガー40が不用意に係止用軸部42Cから離脱用軸部42Bに移動することを防止するための板状の保持部材44を備えている。保持部材44は、板材を断面が概してコ字状となるように曲げ加工したもので、後部ゲート24の側面に枢支されており、図14に示すように、互いに対向する一対の脚部44A,44Bと、脚部44A,44Bを連結する連結部44Cとを有する。
保持部材44は、内側の脚部44Aに形成されている貫通孔を介して、後部ゲート24の側面にボルト44Hで固定されているが、手動によって揺動操作することが可能とされている。
【0039】
保持部材44は、図15に示し、また、図13(b)に実線で示すように、外側の44Bに形成されている切り欠き44Vを介して、軸部材42の離脱用軸部42Bに外嵌状に係合されたロック位置と、図13(b)に二点鎖線で示すように、離脱用軸部42Bの位置から抜け出たロック解除位置との間で揺動操作可能とされている。ロック位置では、保持部材44の連結部44Cが後部ゲート24の内面と平行で且つ同内面とほぼ面一、または、同内面と平行で且つ同内面よりも僅かに引退した状態となる。
【0040】
図15に示すように、ゲートハンガー40の第1孔部40B1が軸部材42の係止用軸部42Cに外嵌配置された通常の状態で、保持部材44を軸部材42に対して押付けるように揺動させると、保持部材44の切り欠き44Vが離脱用軸部42Bと係合し、且つ、保持部材44が後部ゲート24の側面とゲートハンガー40との間に挟着された状態となり、ゲートハンガー40が不用意に離脱用軸部42Bへ移動する事態が阻止される。
【0041】
後部ゲート24の側面には、ロック解除位置における保持部材44の後部ゲート24に対する角度を90°未満の所定角度(例えば45°など)以下に規制する円板状のストッパ24Bが突設されている。
尚、図17に示すように、後部エンド部材27を構成する内側エンド体29の切り欠き部32Bの縦向き辺からは、上下に長い案内板部29Cが車両の幅方向に延びている(図6、図7も参照のこと)。
【0042】
仮に、図16(a)に示すように、保持部材44がストッパ24Bと当接したロック解除位置にあっても、後部ゲート24を開放位置から閉鎖位置に向けて揺動操作すると、保持部材44の先端部が自動的に案内板部29Cと当接開始され、先端部が案内板部29Cに下方に移動操作されることで、図16(b)に示すように、保持部材44は強制的にロック位置に操作される。
【0043】
図17に示すように、ゲートハンガー40の長孔40Aから枢支ピン34が不用意に外れないように、枢支ピン34の先端には抜け止めヘッド34Aが設けてある。尚、後部ゲート24の組み立てを完了した後での、ゲートハンガー40の枢支ピン34への取り付けを可能とする目的で、抜け止めヘッド34Aは長円形を呈しており、ゲートハンガー40に形成された長孔40Aの一部には、抜け止めヘッド34Aの長径を上回る拡幅部40Axが形成されている。ゲートハンガー40の枢支ピン34への取り付けは、後部エンド部材27に形成された切り欠き部30Bを利用して行われる。
【0044】
(ストッパ体の構成)
図18に示すように、荷台6の前方側を昇降させるダンプシリンダ13は、機体フレームF側に枢支されたシリンダ部材13Aを有し、シリンダ部材13Aに対して伸縮自在に支持されたピストン部材13Bの先端部は荷台6の下面に枢支されている。
図21に示すように、ピストン部材13Bは、ピストン部材13Bの先端に固定された連結用筒体13Cが、荷台6の下面に形成された一対のブラケット6Aの間に介装され、ブラケット6Aの各貫通孔と連結用筒体13Cとにピン部材6Pが横向き姿勢で同時に挿通されることで、荷台6の下面に枢支されている。
【0045】
シリンダ部材13AにはエンジンEによって駆動される油圧ポンプ(不図示)から延設された耐圧ホース(不図示)がピストン部材13Bを伸縮操作するための油路として接続されている。シリンダ室に対するオイルの供給/排出は油圧ポンプとシリンダ室の間に介装されたダンプ制御弁(不図示)によって制御される。ここでは、シリンダ部材13Aの下端部は、右側のメインフレーム14の後端付近から内側に延設された支持ブラケット20に枢支されている(図4も参照のこと)。
【0046】
荷台6の下面には、ダンプシリンダ13によって上昇位置に配置された荷台6の降下を防止するストッパ体50が設けられている。
図20に示すように、ストッパ体50は、チャンネル材によって構成された長尺のストッパ本体51と、ストッパ本体51の上端付近に取り付けられた左右一対のブラケット52とを有する。
【0047】
ブラケット52は、ストッパ本体51の側面に溶接固定された基端部52Aと、基端部52Aから上方に延設された被支持部52Bとを備える。左右の被支持部52Bには、ストッパ本体51の長手方向に沿って延びる長孔52Hが形成されている。
図21に示すように、ストッパ体50は、一対のブラケット52が荷台6の一対のブラケット6Aを左右の外側から挟み、ピン部材6Pが、ピストン部材13Bの連結用筒体13Cと、荷台6の一対のブラケット6Aと、ストッパ体50の一対のブラケット52(長孔52H)とに同時に挿通される形態で、横向き軸心回りで揺動自在に支持されている。
【0048】
ストッパ体50は、図18に示すように、ストッパ本体51を構成するチャンネル材がピストン部材13Bの上方に位置し、ピストン部材13Bの伸張に応じて、ピストン部材13Bの少なくとも一部をチャンネル材の断面の凹部に進入させることが可能な状態で配置されている。また、ブラケット52はストッパ本体51の上端面51A寄りの部位に設けられており、ストッパ本体51は長孔52Hにピン部材6Pを挿通させた状態で揺動自在に支持されている。
【0049】
図18に示すように、ストッパ体50を荷台6の降下防止手段として使用しないときには、原則的にストッパ体50は、ストッパ体50と荷台6の下面との間に設けられた係止機構によって、ストッパ本体51の下端面51B側を荷台6の下面に近接した退避位置に保持されている。
この係止機構は、荷台6の下面に取り付けられた係止フック55と、ストッパ本体51の下端面51B付近に形成された貫通孔51Hとを有する。係止フック55は、荷台6の下面から下方に延出した基端部55Aと、基端部55Aの下端から前方に向かって延出したアーム部55Bと、アーム部55Bの前端から上向きに延出したフック部55Cとを有する。
【0050】
ストッパ体50を退避位置に移動する際には、ストッパ本体51の下端面51B付近を持ち上げて荷台6の下面に近付け、長孔52Hの融通代を利用して、下端面51Bがフック部55Cよりも前方に配置されるまでストッパ体50を一旦前方に移動させ、次に、荷台6の下面とフック部55Cとの間隙からストッパ本体51の下端側を後方に差し込みながら、貫通孔51Hにフック部55Cを挿通させればよい。
【0051】
ストッパ体50を荷台6の降下防止手段として使用する際には、ダンプシリンダ13によって荷台6を最大角度まで上昇させた状態で、ストッパ本体51の下端側を僅かに持ち上げながらストッパ体50を後方に移動させると、ストッパ本体51の下端側が係止フック55から外され、ピン部材6P回りで揺動操作可能な状態となる。
そこで、図19に示すように、ストッパ本体51の下端側を引き下ろし、長孔52Hに基づく融通性を利用してストッパ体50の位置をピストン部材13Bに沿って調整しながら、ストッパ本体51を構成するチャンネル材がピストン部材13Bを包み込む状態となるまでピストン部材13Bに近付けると、ストッパ本体51の下端面51Bがピストン部材13Bの外周面と接触し、且つ、シリンダ部材13Aの上端面と対向する状態となる。
【0052】
この状態から、荷台6が下降すると、ストッパ本体51のコ字状の上端面51Aがピストン部材13Bの連結用筒体13Cの外周面を受け、ストッパ本体51のコ字状の下端面51Bがシリンダ部材13Aの上端面(シリンダ部材13Aにおける連結用筒体13Cと対向する側の端面)を受けた状態で、荷台6の降下防止が実現される。
【0053】
このようにストッパ体50を荷台6の降下防止手段として使用している間、ピン部材6Pはブラケット52の長孔52Hの両端のいずれからも離間しているので、荷台6の荷重はストッパ体50のストッパ本体51のみによって支えられ、ブラケット52は荷台6の荷重の支持に関与しない。
【0054】
(荷台の前端付近の構成)
尚、図5、図22及び図23に示すように、荷台6の左右のサイドパネル23の前端には、上下方向に延びた角パイプ状の前部エンド部材26が溶接固定されている。図23(b)に示すように、個々の前部エンド部材26は、一枚の鋼板を曲げ加工することで形成されており、平面視で概して正方形の断面を有する角パイプ部26Aと、同正方形の内側の辺を構成する部位の前端から内向きに延出された平板状の延長部26Bとを有する。
【0055】
前部エンド部材26は、角パイプ部26Aの後端面を介してサイドパネル23の前端に溶接固定されている。
また、前部エンド部材26は、前部エンド部材26の延長部26Bが、フロントパネル22の前面構成板部22Aに前方から重ね合わされた状態で、延長部26Bの先端部を介してフロントパネル22に溶接固定されている。
【0056】
フロントパネル22の前面構成板部22Aの下端には、荷台6のフロアパネル21に溜まりかけた雨水などを排水する排水流路60が形成されている。前面構成板部22Aの下端はフロアパネル21の下面よりも十分下方まで延出されており、同下端から後方に延出した第1水平部22Bと、第1水平部22Bの後端から上向きに延出した第1垂直部22Cと、第1垂直部22Cの上端から後方に延出した第2水平部22Dとを有する。
【0057】
図22に示すように、この第2水平部22Dがフロアパネル21の下面に溶接固定されており、底部を構成する第1水平部22Bと、互いに前後方向から対向して側壁部を構成する前面構成板部22Aの下端付近と第1垂直部22Cとで排水流路60が形成されている。荷台6のフロアパネル21に溜まりかけた雨水などは、フロアパネル21に形成された前後向きの溝部を介して、第1水平部22Bに流れ込み、排水流路60から側方外部に排水される。
【0058】
〔別実施形態〕
〈1〉ロッド38L,38Rの他端付近を下方に付勢する補助付勢手段の形態としては、一対のコイルバネ39に限らず、種々の手段を適用できる。
例えば、ロッド38L,38Rの他端付近が自重で下方に落下することで、規制片33の前方且つ下方に位置する係合部27Bに収納され、同箇所に捕捉される形態で実施してもよい。
あるいは、ロッド38L,38Rの各左右中間部付近の位置を上下方向に関して規制する案内部材を後部ゲート24の後面に取り付けておき、後部ゲート24の閉鎖姿勢への揺動切り換えの最終段階では、前記案内部材よりも外側の領域でロッド38L,38Rが弾性的な曲げ変形を伴いながら、ロッド38L,38Rの他端が後面31A(傾斜案内面の一例)によって上方に移動操作され、後面31Aの上端を乗り越えると、ロッド38L,38Rの同領域の復元力で係合部27Bに収納される形態で実施してもよい。
【0059】
〈2〉前述した実施形態とは後面31Aの傾斜の向きを逆とし、後部ゲート24の閉鎖姿勢への揺動切り換えに際して、ロッド38L,38Rの他端が後面31Aによって下方に移動操作され、後面31Aの下端を乗り越えると、ロッド38L,38Rの同領域の復元力で係合部27Bに収納される形態で実施してもよい。
【0060】
〈3〉図24に示す吊設機構では、ゲートハンガー40の下端部の形状は前述のものと共通であるが、後部ゲート24の左右の側面から左右に立設された軸部材142は、先端の抜け止め部142Dを除いて軸心に沿って一定の外径を備えている。
軸部材142には、ゲートハンガー40の他に、第1孔部40B1の内径よりも大きく、第2孔部40B2の内径よりも小さな外径を備えた一対のワッシャ144A,144Bが外嵌配置されており、外側のワッシャ144Aの内面には、狭隘部40B3よりも大きく、第1孔部40B1の内径よりも小さな外径を備えた環状のカラー部材143が取り付けられている。
【0061】
また、内側のワッシャ144Bと後部ゲート24の間には、圧縮バネ146が軸部材142に外嵌配置されており、ゲートハンガー40の下端部付近を外向きに付勢している。
圧縮バネ146の付勢力によって外側のワッシャ144Aが抜け止め部142Dに押付けられた通常の状態では、カラー部材143は第1孔部40B1に挿通されているので、軸部材142及びカラー部材143は狭隘部40B3を通って第2孔部40B2に移動することはできない。
抜け止め部142Dとしては第1孔部40B1の内径を超える長さを備えた抜け止めピンを用いてもよい。
【0062】
ゲートハンガー40の下端部を軸部材142から取り外す際には、ゲートハンガー40の下端部付近を圧縮バネ46の付勢力に抗して内側に移動させながら、カラー部材143を第1孔部40B1から外側に移動させ、そのまま後部ゲート24を少し閉鎖位置に向けて戻すと、軸部材142が狭隘部40B3を通過して大径の第2孔部40B2に進入する。そこで、次にゲートハンガー40の下端付近を外側に移動させると、第2孔部40B2が抜け止め部142Dから外側に抜けることで、ゲートハンガー40が軸部材142から解放される。
【産業上の利用可能性】
【0063】
フロアパネル及び一対のサイドパネルを有する車両用荷台の後端に後部ゲートが揺動開閉自在に枢支され、後部ゲートを閉鎖位置に保持するロック機構を備える作業車などの後部ゲート構造を改良するための技術として利用可能な発明である。
【符号の説明】
【0064】
X2 横向き軸心(後部ゲート)
6 荷台(車両用荷台)
21 フロアパネル
22 フロントパネル
23 サイドパネル
24 後部ゲート
27 エンド部材
27A 開口部
27B 係合部(ロック機構)
31 端面形成部材(板材の一部)
31A 後面(ロック機構、傾斜案内面)
31P 案内片(ロック機構)
33 規制片(ロック機構)
35 ロックアーム(ロック機構)
36 スプリング(付勢手段)
37 ロック解除ハンドル(ロック機構、ロック解除手段)
38L ロッド(ロック機構)
38R ロッド(ロック機構)
39 コイルバネ(ロック機構、補助付勢手段、バネ)
40 ゲートハンガー(吊設機構、リンク部材)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
フロアパネル及び一対のサイドパネルを有する車両用荷台の後端に後部ゲートが揺動開閉自在に枢支された後部ゲート構造であって、
前記後部ゲートを閉鎖位置に保持するロック機構が、
前記後部ゲートの車両幅方向に移動自在に支持された左右一対のロッドと、
前記一対のロッドを後部ゲートの左右端部付近から側方に突出したロック位置に付勢する付勢手段と、
前記ロック位置における前記一対のロッドの両端部位を少なくとも後方から捕捉すべく前記サイドパネルに設けられた係合部と、
前記一対のロッドを前記付勢手段の付勢力に抗して手動で前記係合部から引退させるためのロック解除手段と、を備え、
前記後部ゲートの前記閉鎖位置への移動に基づいて、前記ロック位置における前記一対のロッドの両端部位を上下いずれかに摺動移動させる傾斜案内面が前記サイドパネルに設けられており、前記両端部位は前記傾斜案内面を乗り越えると前記係合部に捕捉される後部ゲート構造。
【請求項2】
前記係合部は前記サイドパネルの後端面に形成された開口部と連通形成されており、
前記傾斜案内面が前記後端面を構成する板材の一部を前記開口部の内側に向けて曲げ加工することで形成されている請求項1に記載の後部ゲート構造。
【請求項3】
前記傾斜案内面を乗り越えた前記一対のロッドの両端部位を前記傾斜案内面の前方に位置する前記係合部に向けて上下いずれかに付勢する補助付勢手段が設けられている請求項1または2に記載の後部ゲート構造。
【請求項4】
前記補助付勢手段として前記両端部位付近を上下いずれかの向きに付勢するバネが設けられている請求項3に記載の後部ゲート構造。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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【図19】
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【図20】
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【図21】
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【図22】
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【図23】
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【図24】
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