説明

徐放性アミノピリジン組成物の使用方法

【課題】神経疾患を患った個人を治療するために使用され得るアミノピリジン薬学的組成物の徐放性経口投薬形態の提供。
【解決手段】組成物放出マトリックス中に分散された治療的有効量のアミノピリジンを有する薬学的組成物であって、例えば、錠剤などの安定な徐放性傾向投薬処方に処方され、患者への投与によって約12時間の期間、治療上有効な血漿レベルのアミノピリジンを提供するものである薬学的組成物、及び多発性硬化症を含む様々な神経疾患を治療するための前記組成物の使用。例えば、徐放性ファムプリジン組成物での治療に反応した個人を同定する工程を含む、治療に対する反応性に基づいて個人を選択する方法。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連文献の相互参照
本出願は、2004年4月9日に出願された米国仮出願番号第60/560,894号に対して優先権を主張するものである。
【0002】
本発明は、神経疾患を患った個人を治療するために使用され得るアミノピリジン薬学的組成物の徐放性経口投薬形態に関するものであり、前記薬学的組成物は、不都合な副作用を最小限にすると同時に薬学的効果を最大限にするものである。
【背景技術】
【0003】
本発明の徐放性経口投薬形態は、多発性硬化症、脊髄損傷、アルツハイマー病及びALSなどの神経疾患を治療するために使用される。
【0004】
多発性硬化症(MS)は、中枢神経系、より具体的にはミエリン鞘に影響を及ぼす変性及び炎症性神経疾患である。MSの病状は、神経線維の脱髄に関連しており、神経インパルスの"短絡(short−circuiting)"を引き起こし、神経線維に沿った伝達の遅延或いは阻止を示し、関連する機能障害症状を伴うものである。従って、影響を受けた神経に沿って伝達を促進するための代替治療は、非常に限定されている。
【0005】
カリウムチャネル遮断剤は、神経インパルスの状態を改善することが見出された化合物群である。結果として、それらは、脊髄損傷、MS、及びアルツハイマー病の症状の治療の注目の的となった。カリウムチャネル遮断剤の1つのサブクラスであるアミノピリジンは、神経疾患の治療において効果を発揮した。ファムプリジン(fampridine)として知られているモノ−アミノピリジンである4−アミノピリジン(4−AP)は、神経インパルス伝達におけるカリウム流動を減少することが見出され、阻止され脱髄された神経の状態を回復するのに効果的であることが示された。
【0006】
モノアミノピリジンの初期の研究においては、4−APを含有する静脈組成物が用いられていた。この初期研究の後に、一般的にファムプリジンとして知られている4−APを経口投与するための即効型(IR)組成物が開発された。前記IR組成物は、ゼラチンを基剤としたカプセル内における4−AP粉末から成り、投与後間もなく急速なピーク血漿濃度を引き起こし、約1時間で最大濃度となり、約3.5時間で血漿半減期となるものであった。ファムプリジンのこのような急速な放出及び短い半減期によって、各投与後、発作及び震えなどの望ましくない副作用を引き起こす可能性がある高いピークを生じることなく、効果的な血漿値を維持することが難しいものとなっている。
【0007】
単離した脊髄からの電気生理学的記録によって、鈍的挫傷後に残存する有髄軸索における活動電位伝導の慢性的機能不全が示された(Blight,A.R.,"Axonal physiology of chronic spinal cord injury in the cat:intracellular recording in vitro",Neuroscience.10:1471〜1486 (1983b))。このような伝導遮断の一部においては、薬剤4−アミノピリジン(4−AP)を用いることによって、単一神経線維のレベルで克服され得るものである(Blight,A.R.,"Effect of 4−aminopyridine on axonal conduction−block in chronic spinal cord injury",Brain Res.Bull.22:47〜52(1989))。実験的に或いは自然に脊髄損傷を引き起こした動物に、前記化合物を静脈注射すると、電気生理学的に(Blight,A.R.and Gruner,J.A.,"Augmentation by 4−aminopyridine of vestibulospinal free fall responses in chronic spinal−injured cats,"J.Neurol.Sci.82:145〜159,(1987))、及び行動機能的に(Blight,A.R.,"The effects of 4−aminopyridine on neurological deficits in chronic cases of traumatic spinal cord injury in dogs:a phase I clinical trial,"J.Neurotrauma,8:103〜119(1991))著しい改善がもたらされる。
【0008】
Keith Hayes博士によって計画された脊髄損傷患者における初期研究において、重篤な副作用がなく、主に電気生理学的レベルにおける治療有用性の可能性が示唆された(Hayes et al,"Effects of intravenous 4−aminopyridine on neurological function in chronic spinal cord injured patients:preliminary observations,"Proc.IBRO World Conf.Neurosci.,p.345 1991)。
【0009】
慢性不完全SCIを患った患者におけるファムプリジンの最近の研究は、Clinical Neuropharmacology 2003(Keith C.Hayes;Patrick J.Potter;Robert R.Hansebout;Joanne M.Bugaresti;Jane T.C.Hsieh;Sera Nicosia;Mitchell A.Katz;Andrew R.Blight;Ron Cohen 26(4):185〜192)に報告された。
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明の1実施形態は、1若しくはそれ以上のカリウムチャネル遮断剤を含有し、例えば脊髄損傷、多発性硬化症、アルツハイマー病、及びALSなどの様々な疾患の効果的な治療において使用され得る、薬学的組成物に関するものである。本発明の実施形態は、マトリックス及びカリウムチャネル遮断剤を含む組成物に関する。前記カリウムチャネル遮断剤は、例えば、4−アミノピリジン、3,4−ジアミノピリジン、及びその類似物などのアミノピリジン、最も好ましくは4−アミノピリジンを含む。前記組成物は、マトリックスからのアミノピリジンの徐放性を提供し、アミノピリジンの有効で安全な血漿レベルを維持するものである。マトリックス中に分散されたアミノピリジンは、患者への投与において、望ましい放出特性を提供することが可能である。前記組成物は、治療を必要とする患者において、1日2回前記患者に投与する場合に、アミノピリジン値の過剰なピーク及びトラフ(谷)を避けながら、少なくとも約6時間、好ましくは少なくとも約12時間アミノピリジンの治療的に有効な血漿値を達成するために使用されるものである。前記組成物は、速度制御ポリマーマトリックス(好ましくは、ヒドロキシプロピルメチルセルロース(HPMC)のような親水性ポリマーを含む)に均一に分散されたモノ−或いはジ−アミノピリジン、好ましくは4−AP或いは3,4−DAP、若しくはそれらの組み合わせを含む。本発明の組成物はまた、1若しくはそれ以上の更なる活性成分及び/若しくは1若しくはそれ以上の薬学的に許容可能な賦形剤を含む。これらの組成物は、例えば、脊髄損傷、多発性硬化症、アルツハイマー病、及びALSなどの様々な神経疾患を治療するために使用され得る。
【0011】
本発明の別の実施形態は、治療的有効量のマトリックス内で分散されたアミノピリジンを含む安定した薬学的組成物であり、望ましいCτに対するCmax比を有する患者に対してアミノピリジンの放出特性を提供するものである。前記組成物は、患者においてアミノピリジンの治療的有効値を達成及び/若しくは維持するために使用される。好ましくは、前記組成物を1日2回投与することにより前記患者においてアミノピリジンの治療的有効値が達成されるように、前記組成物中のアミノピリジンが長期間放出される。より好ましい実施形態において、アミノピリジンの放出において望ましくない急上昇或いはピークは回避される。
【0012】
本発明の別の実施形態は、少なくとも6時間、好ましくは少なくとも8時間、より好ましくは少なくとも12時間に亘って患者の血漿中において4−アミノピリジンの放出特性を提供する、マトリックス中に分散された治療上有効量の4−アミノピリジンを含む組成物の安定した徐放性経口投薬処方である。別の実施形態において、組成物の安定した徐放性経口投薬処方は、約24時間に亘って患者における4−アミノピリジンの治療上有効な血漿レベルを提供する、マトリックス中に分散された、治療上有効量の4−アミノピリジンを含む。
【0013】
好ましくは、前記組成物の経口投薬処方は、本発明の薬学的組成物の圧縮によって形成された単一(モノリシック)錠剤である。好ましい実施形態において、前記経口投薬処方は、HPMCなどの親水性ポリマーを含むマトリックス中に分散された治療的有効量の4−アミノピリジンの圧縮錠剤を含む。本発明の経口投薬形態は、1若しくはそれ以上の薬学的に許容可能な賦形剤も含む。
【0014】
マトリックス全体での4−アミノピリジンの分散は、徐放性特性を提供しながら、前記組成物に化学的及び物理的安定性を与える。この増強された投薬安定性は、低濃度の4−アミノピリジンを含む本発明の組成物及び投薬形態において最も顕著に観察され、安定性は望ましい制御放出特性を維持しながら達成される。特に、本発明の圧縮錠剤処方は、周囲湿度による吸湿に対して優れた抵抗性を示し、前記処方の1日1回或いは1日2回投与でカリウムチャネル遮断剤の治療上有効な濃度の達成を可能にする4−アミノピリジンの放出特性を提供しながら、錠剤全体での4−アミノピリジンの均一な分布を維持する。好ましくは、前記処方によって放出される治療上有効な濃度は、少なくとも約6時間、好ましくは少なくとも約8時間、より好ましくは少なくとも12時間に亘って延長されるものである。さらに、前記投薬形態の均一性によって、従来の徐放性投薬処方の重層的な構造を比較して、単純で安価な製造工程による形成に適するようになる。
【0015】
本発明の組成物は、治療を必要とする患者において治療上有効な濃度のカリウムチャネル遮断剤を達成する工程を含む、患者の病状の治療において使用される。前記組成物は、1日2回の投与によって、患者における治療上有効な濃度のアミノピリジンのレベルを増進し、維持するために使用される。本発明の組成物投薬は、望ましい結果或いは投薬スケジュールに依存して、昼夜の間患者に対する安らかな期間を促進するために、より低濃度のアミノピリジンで製造され得る。望ましい場合、本発明の組成物は、アミノピリジンの初期放出における大きなピークを避けるように処方される。本発明の組成物は、それを必要としている患者へ投与された場合、神経インパルス伝達の低下によって特徴付けされる神経疾患の治療を提供する。好ましくは、前記組成物は、治療上有効な血漿レベルのモノ−或いはジ−アミノピリジンが1日1回若しくは2回投与で少なくとも6時間、好ましくは少なくとも8時間、より好ましくは約10〜12時間患者において維持されるように、HPMC中に分散された、治療的有効量のモノ−或いはジ−アミノピリジンの安定な徐放性錠剤である。
【0016】
本発明の1実施形態は、多発性硬化症を患った患者へ有効量の徐放性アミノピリジン組成物を1日2回投与する工程を有する、歩行速度を増進する方法に関するものであり、前記有効量は約15ミリグラム以下のアミノピリジンである。好ましい実施形態において、有効量は、約10〜約15ミリグラムのアミノピリジンである。
【0017】
本発明の更なる実施形態において、多発性硬化症を患った患者へ有効量の徐放性アミノピリジン組成物を1日2回投与する工程を有する、下肢筋緊張を改善する方法が提供される。好ましい実施形態において、前記有効量は、約15ミリグラム以下のアミノピリジンである。
【0018】
本発明の別の実施形態は、多発性硬化症を患った患者に対して有効量の徐放性アミノピリジン組成物を1日2回投与する工程を有する、下肢筋強度を改善する方法に関し、前記有効量のアミノピリジンは、約15ミリグラム以下のアミノピリジンである。
【0019】
本発明の1実施形態は、治療に対する反応性に基づいて個人を選択する方法に関するものである。前記方法は、多数の個人を同定する工程と、治療前に各個人へテストを実施する工程と、治療期間に1若しくはそれ以上の個人へ治療を実施する工程と、治療期間に各個人へ複数回テストを実施する工程と、1若しくはそれ以上の個人を選択する工程とを有しており、選択された個人は、治療期間前に実施されたテストと比較して、治療期間に実施されたテストの大部分の間、改善された能力(パフォーマンス)を示す。特定の実施形態において、前記方法はさらに、治療期間後に各個人へテストを実施する工程を有しており、選択された個人はさらに、治療期間後に実施されたテストと比較して、治療期間の間実施されたテストの大部分の間、改善された能力(パフォーマンス)を示す。
【0020】
更なる実施形態は、治療に対する反応性に基づいて個人を選択する方法に関するものであり、前記方法は、多数の個人を同定する工程と、治療期間前に各個人へテストを実施する工程と、治療期間に1若しくはそれ以上の個人へ治療を実施する工程と、治療期間に各個人へ複数回テストを実施する工程と、治療期間後に各個人へテストを実施する工程と、1若しくはそれ以上の個人を選択する工程とを有しており、選択された個人は、治療期間前に実施されたテスト及び治療期間後に実施されたテストのより良い能力(パフォーマンス)と比較して、治療期間に実施されたテストの大部分の間、改善された能力を示す。
【図面の簡単な説明】
【0021】
【図1】図1は、5つ全ての未治療訪問と比べ、対象が時間25フィート歩行においてより早い歩行速度を示す時点での治療訪問の回数を示した柱状グラフである。
【図2】2は、研究日での平均歩行速度(フィート/秒)のグラフ(観察された事例、ITT集団)である。
【図3】図3は、12週安定投薬期間の間の平均歩行速度におけるパーセント変化の柱状グラフ(観察された事例、ITT集団)である。
【図4】図4は、治療群によるプロトコール特定応答者(少なくとも20%の12週安定投薬期間における歩行速度の平均変化を示した対象)のパーセンテージの柱状グラフである[(観察された事例、ITT集団)]。
【図5】図5は、研究日でのLEMMTのグラフ(観察された事例、ITT集団)である。
【図6】図6は、12週安定投薬期間でのLEMMTの変化の柱状グラフである。
【図7】図7は、本発明の応答者解析に従った、治療群(ITT集団)によるhoc後応答者のパーセンテージの柱状グラフである。
【図8】図8は、本発明の応答者解析に従った、プラセボ対象対ファムプリジン対象統合(ITT集団)の応答者のパーセンテージの柱状グラフである。
【図9】図9は、主観的スケールを用いたhoc後応答者変数の有効性確認の柱状グラフ(観察された事例、ITT集団)である。
【図10】図10は、応答者解析分類による各二重盲検訪問での歩行速度におけるパーセンテージ変化のグラフ(観察された事例、ITT集団)である。
【図11】図11は、応答者解析分類による各二重盲検訪問でのLEMMTにおける変化のグラフ(観察された事例、ITT集団)である。
【図12】図12は、応答者解析分類による各二重盲検訪問での全体のAshworthスコアにおける変化のグラフ(観察された事例、ITT集団)である。
【発明を実施するための形態】
【0022】
本発明の組成物及び方法を記載する前に、本発明は、記載された特定の分子、組成物、手順、或いはプロトコールに限定されるものではなく、変更され得るものであると理解される。また、説明において使用された専門用語は特定の種類や実施形態を説明する目的のためのみのものであり、添付の請求項のみによって限定される本発明の観点を限定するように意図されるものではないことが理解される。
【0023】
ここで使用された用語は、本分野の当業者に認識され知られている意味であるが、利便性と完全性のために、特定の用語及びその意味は以下で説明される。
【0024】
ここで使用され添付の請求項にあるように、単数形「a」、「an」及び「the」は、明らかに文脈で別の解釈を指示しない限り複数形参照も含むことに注意されるべきである。従って、例えば「球状体(spheroid)」という参照は、1若しくはそれ以上の球状体及び当業者には既知であるそれと同等のもの、その他のものを参照している。別の解釈を定義しない限り、ここで使用された全ての技術及び科学用語は、本分野の当業者に一般的に理解されているものと同じ意味である。ここで記載されたものと類似或いは同等のあらゆる方法及び物質は本発明の実施形態の実施或いはテストにおいて使用され得るが、好ましい方法、装置及び物質は、これから記載する。ここで言及された全ての刊行物は、この参照によって組み込まれる。本発明は先願の開示によって予想されないという了解としてここでは解釈されない。
【0025】
「局所的投与」は、非全身性経路によって、若しくは病気、障害或いは感知される痛みの部位付近での直接的な投与を意味する。
【0026】
「患者」及び「対象」という用語は、ヒトを含む全ての動物を意味する。患者或いは対象の例として、ヒト、雌牛、犬、猫、ヤギ、羊及び豚を含む。
【0027】
ここで用いられたように「薬学的に許容可能な塩類、エステル、アミド及びプロドラッグ」という用語は、本発明の化合物のカルボン酸塩、アミノ酸添加塩、エステル、アミド及びプロドラッグを参照するものであり、これは、可能であれば本発明の化合物の両性イオン型と同様に、診断医学評価の観点内で不適切な毒性、刺激、アレルギー反応及び同類のものなしで患者の組織に接触する際の使用に適しており、妥当な利益/リスク比に見合っており、それらの意図する使用に有効であるものである。
【0028】
「プロドラッグ」という用語は、in vivoで急速に形質転換され、例えば血液中の加水分解によって上述の化合式の親化合物を生じる化合物を参照するものである。詳細な議論は、T.Higuchi and V.Stellaの"Pro−drugs as Novel Delivery Systems"(Vol.14 of the A.C.S.Symposium Series)、及びBioreversible Carriers in Drug Design(ed.Edward B.Roche,American Pharmaceutical Association and Pergamon Press,1987)において提供されており、両方ともこの参照によって本明細書に組み込まれるものである。
【0029】
「塩類」という用語は、本発明の化合物の比較的に非毒性な無機酸及び有機酸添加塩を参照するものである。これらの塩類は、前記化合物の最終単離及び精製の間in situで、若しくは、適切な有機酸或いは無機酸と遊離塩基型の前記精製した化合物とを別々に反応させ、形成された塩類を単離することによって調合され得る。代表的な塩類は、臭化水素酸、塩酸、硫酸、重硫酸、硝酸、酢酸、シュウ酸、吉草酸、オレイン酸、パルミチン酸、ステアリン酸、ラウリン酸、ホウ酸、安息香酸、乳酸、リン酸、トシル酸、クエン酸、マレイン酸、フマル酸、コハク酸、酒石酸、ナフチル酸(naphthylate)メシラート、グルコヘプタン酸、ラクトビオン酸、及びラウリルスルホン酸塩、及び同類のものを含む。これらは、ナトリウム、リチウム、カリウム、カルシウム、マグネシウム及び同類のものなどのアルカリ及びアルカリ性土類金属に基づいた陽イオン、さらに非毒性アンモニウム、テトラメチルアンモニウム、メチルアミン、ジメチルアミン、トリメチルアミン、トリエチルアミン、エチルアミン及び同類のものを含む(例えば、S.M.Barge et al.,"Pharmaceutical Salts,"J.Pharm.Sci.,1977,66:1〜19を参照し、これはこの参照によって本明細書に組み込まれる)。
【0030】
「治療的有効量」は、病状或いは病気に関連した症状を軽減或いは予防する、特定の身体的機能の障害に起因する病気或いは障害における身体機能を正常化する、若しくは疾患の臨床的に測定されたパラメーターの1若しくはそれ以上の改善を提供するのに十分な量である。好ましくは、前記疾患に関連した症状の改善は、歩行速度、下肢筋緊張、下肢筋強度、或いは痙縮を含む。本適用に関して、治療的有効量は、治療される神経疾患に関連した痛み或いは痙縮を軽減するのに十分な量、若しくは正常な性的、膀胱或いは腸機能を妨害するような、神経状態を損傷している神経障害を患った対象における性的、膀胱或いは腸機能の改善をもたらす量である。
【0031】
「治療」は、患者が苦しんでいる病気或いは疾病の治療を目的とした、若しくは病気の持続期間或いは病気の重症度の軽減、或いはクオリティ・オブ・ライフ(生活の質)における自覚的な改善或いは患者の生存期間の延長を含む、患者の臨床状態の改善を目的とした、患者に対する薬剤の投与若しくは医療行為の実施を意味している。
【0032】
さらに、本発明の化合物は、非溶媒和形態、さらには水、エタノール及び同類のものなどの薬学的に許容可能な溶媒との溶媒和形態で存在し得る。一般的に、前記溶媒和形態は、本発明の目的のための非溶媒和形態と同等なものとして考えられている。
【0033】
本発明の1観点は、速度制御ポリマーなどの徐放性マトリックス中に分散されたアミノピリジンを有する徐放性薬学的組成物である。本発明の組成物は、患者への投与を介して、少なくとも6時間、好ましくは少なくとも約12時間、より好ましくは少なくとも24時間以上に亘ってアミノピリジンの放出特性を提供することができる。好ましくは前記組成物におけるアミノピリジン濃度は、治療的有効量であり、好ましくは、前記アミノピリジンは前記放出マトリックス全体で均一に分散している。治療的有効量は、患者或いは対象に投与された場合、神経疾患の症状を改善するようなカリウムチャネル遮断剤、好ましくはアミノピリジン化合物の量である。
【0034】
本発明の組成物を患者へ投与した場合、患者血漿中の長期間でのアミノピリジン濃度(放出特性)は、少なくとも6時間以上、好ましくは少なくとも8時間以上、より好ましくは約12時間以上の期間に亘って延長されるものである。前記組成物は、単回用量で患者のアミノピリジンの平均最大血漿濃度は約15〜約180ng/ml;平均Tmaxは患者へ前記組成物の投与後、約1〜約6時間、より好ましくは約2〜5.2時間を提供するものである。
【0035】
1実施形態において、アミノピリジンは、ある用量で、不利益な効果を示すことなく対象が前記用量を許容するのに十分な期間、対象へ投与され、その後治療用量が達成されるまで、選択された時間間隔で前記用量を増加させた。例えば、治療の開始時、アミノピリジンは、許容状態に達するまで15mg/日以下の用量で投与されることが好ましい。適切には、前記許容状態に達した場合、投与される前記用量は、前記治療用量に達するまで少なくとも5〜15mg/日の量まで増加される。
【0036】
好ましくは、アミノピリジンは、治療される状態或いは症状に依存して1日2回約10〜15mg(20〜30mg/日)の用量で投与される。この方法は、患者におけるアミノピリジンの濃度が、望ましい結果或いは投薬スケジュールに依存しており、昼夜に亘り前記患者の安らかな期間を増強するための最大濃度に比べて比較的低いが前記神経状態を改善するために治療上有効なレベルのおおよそ最小値であるような薬学的な用量のスケジューリング投与を含む。好ましくは、前記方法は、本発明の組成物を患者へ投与する工程を有する、神経インパルス伝達の低下によって特徴付けられる神経疾患の治療を提供する。
【0037】
本発明の処方及び組成物は、不利な副作用を最小限にしながら、治療効果を最大限にする特定の望ましい放出特性を示す。前記望ましい放出特性は、前記薬剤或いは活性物質の最大血漿濃度(Cmax)、及び特定投薬間隔での前記薬剤或いは活性物質の血漿濃度(Cτ)の観点から記載される。Cτに対するCmaxの比(Cmax:Cτ)は、観察Cmax及びCτから計算される。投薬間隔(τ)は、前記薬剤或いは活性物質の最終投与からの時間である。本適用において、前記投薬間隔(τ)は12時間であり、従ってCτは最終投与から12時間での前記薬剤或いは活性物質の濃度である。
【0038】
さらに、本発明の処方及び組成物は、定常状態での前記薬剤或いは活性物質の最大血漿濃度(CmaxSS)、及び定常状態での前記薬剤或いは活性物質の最少血漿濃度(CminSS)の観点で記載される望ましい放出特性を示す。定常状態は、投与の割合(吸収)が前記薬剤或いは活性物質の排出の割合と等しい場合観察される。CminSSに対するCmaxSSの比(CmaxSSCminSS)は、観察CmaxSS及びCminSSから計算される。さらに、本発明の処方及び組成物は、定常状態での前記薬剤或いは活性物質の平均最大血漿濃度(CavSS)の観点で記載される望ましい放出特性を示す。
【0039】
別の実施形態は、徐放性マトリックス及びアミノピリジンの徐放性錠剤であり、前記錠剤はin vivoでCmax:Cτ比が1.0〜3.5、より好ましくはCmax:Cτ比が1.5〜3.0を得るような放出特性を示す。別の好ましい実施形態において、前記Cmax:Cτ比は、約2.0〜3.0である。前記アミノピリジンは、4−アミノピリジンを有する。前記徐放性マトリックスは、例えばヒドロキシプロピルメチルセルロース、或いは本発明の薬学的組成物での使用においてアミノピリジンの放出率を制御するのに適している他の割合制御マトリックスを含む。
【0040】
別の実施形態は、徐放性マトリックス及びアミノピリジンの徐放性錠剤であり、前記錠剤は、in vivoでCmax:Cτ比が1.0〜3.5でありCavSSが約15ng/ml〜約35ng/ml、より好しくはCmax:Cτ比が1.5〜3.0を得るような放出特性を示す。別の好ましい実施形態において、Cmax:Cτ比は、約2.0〜約3.0である。
【0041】
更なる観点は、徐放性マトリックス及びアミノピリジンを有する徐放性組成物であり、前記組成物は、約15ng/ml〜約35ng/mlのCavSSを提供する。更なる観点において、徐放性錠剤は徐放性マトリックス及びアミノピリジンを有し、前記錠剤は約20ng/ml〜約35ng/mlのCavssを提供するものである。徐放性アミノピリジン組成物及び様々な神経疾患の治療方法の薬物動態特性は、2004年4月17日に出願された同時係属出願である国際出願番号第PCT/US2004/008101号(発明の名称"Stable Formulations of Aminopyrdines and Uses Thereof")、及び2004年12月13日に出願された米国出願番号第11/010,828号(発明の名称"Sustained Release Aminopyridine Composition")に記載されている。
【0042】
本発明の薬学的組成物に含まれる薬学的に許容可能な品質のアミノピリジン、塩、溶媒、或いはそれらのプロドラッグの量は、例えば使用された特定のカリウムチャネル遮断剤、望ましい投薬レベル、使用された速度制御ポリマーマトリックスの種類と量、前記組成物に含まれる添加物質の存在、種類及び量などを含む様々な因子に依存して変更されるであろう。好ましくは、前記アミノピリジンは、約0.1〜約13%w/w、より好ましくは約0.5〜約6.25%w/wを有する。本発明のより好ましい実施形態において、アミノピリジンは、前記薬学的組成物の約0.5〜約4.75%w/wで存在する。従って、約4.75%以下の重量パーセンテージが望ましい。前記処方におけるアミノピリジン或いはその誘導体の量は、効率的なドラッグデリバリーに対して望ましい用量、分子量、及び化合物の活性に依存して変更される。使用される薬剤の実用量は、患者の年齢、体重、性別、病状、病気或いは他の医学基準に依存され得る。実用薬剤量は、本分野で既知の技術によって、意図する医学的用途に従って決定される。本発明に従って処方された薬学的投薬は、主治医によって決定されるように、1日1回或いは複数回、好ましくは1日2回或いは少なめの回数で投与される。
【0043】
適切な処方及び製造方法はさらに、2004年4月17日に出願された同時係属出願である国際出願番号第PCT/US2004/008101号(発明の名称"Stable Formulations of Aminopyrdines and Uses Thereof")及び2004年12月13日に出願された米国出願番号第11/010,828(発明の名称"Sustained Release Aminopyridine Composition")に記載されており、それらの内容はこの参照によってその全体が本明細書に組み込まれるものである。
【0044】
放出マトリックスアミノピリジン処方は、好ましくは経口使用のために錠剤、カプセル、或いは顆粒に加工される。前記錠剤からのアミノピリジン放出率は、アミノピリジンが放出される放出マトリックスの浸食メカニズムによって制御される。一般的に、工業規模で錠剤を製造するために、前記薬剤及びポリマーは、単独或いは組み合わせで顆粒状にされる。好ましくは、前記薬学的組成物のマトリックスからのアミノピリジンの放出は、長期間比較的にリニア(直線的)である。好ましくは、前記マトリックスは、患者の血漿においてアミノピリジンの治療上有効な濃度を1日1回或いは1日2回の投薬で可能にする放出特性を提供する。好ましくは、患者への経口投与のための徐放性アミノピリジン処方は、約15〜約180ng/mlの平均最大血漿濃度、投与後約2〜約5時間の平均Tmax、及び投与後約8〜24時間で約10〜60ng/mlの平均最少血漿濃度を提供する、約0.0001モル〜約0.0013モルアミノピリジンを含む。
【0045】
本発明の処方は、例えば、乾式法或いは湿式法によってなど、本分野で既知の手順によって調合される。製造する工程のために選択された方法は、完成錠剤の放出特性に影響を与える。1方法において、例えば前記錠剤は、水或いは親水性ポリマーのどちらかの存在下で、若しくは造粒流体として他の結合剤を用いて湿式造粒法によって調合される。或いは、イソプロピルアルコール、エタノール及びそれと同等なものなどの有機溶媒は、水有り或いは無しで使用される。前記薬剤及びポリマーは、単独で或いは組み合わせで造粒される。使用される錠剤の製造のための別の方法は、水有り或いは無しで有機溶媒中において薬剤−ポリマー分散法を用いることが必要である。アミノピリジン或いはその誘導体は水に非常に低い溶解度を有しているので、例えば微粉末へ粉砕することによって粒子サイズを小さくし、このようにして前記薬剤の放出動態を制御し、その溶解度を増強することは好都合である。
【0046】
本発明の錠剤の硬度は、例えば使用された成分の相対量及び特定の種類、使用された錠剤化装置、及び選択された処理パラメーターなどを含む様々な因子に依存して変更される。前記錠剤を調合するために使用された圧力は、患者へのアミノピリジンの放出特性に影響を与え得る。本発明の錠剤を調合するために使用された圧力は、それらの表面積、前記錠剤に含まれるアミノピリジン、添加物、賦形剤、或いは結合剤の量と粒子サイズに依存して変更される。前記組成物における構成成分の水和度及び溶媒和度も、前記錠剤の硬度を決定する際に重要となるであろう。好ましくは、形成された錠剤は、80〜400N、より好ましくは150〜300Nの範囲の硬度を有するものである。
【0047】
様々なマトリックス、アミノピリジンの濃度、さらには様々な賦形剤や前記組成物への添加物のチャネル遮断剤の濃度や溶解率への影響は、例えば、米国薬局方XXIIに従ったタイプH溶解器具、或いはUSP装置II(Paddle Method)を用いて測定される。臨床的評価は、様々な放出マトリックス、アミノピリジンの濃度、さらには様々な賦形剤や添加物の血漿レベルに対する影響を研究するために使用される。血漿アミノピリジン濃度は、見かけの吸収及び排出率、濃度曲線下面積(AUC)、最大血漿濃度(Cmax)、最大血漿濃度までの時間(Tmax)、吸収半減期(T1/2(abs))、及び排出半減期(T1/2(elim))を含む、薬学動態データ(放出特性)を計算するために使用される。薬力学効果は、多発性硬化症或いは脊髄損傷を患った患者の筋肉強度改善或いは痙縮の軽減などの反応テスト、若しくは本分野の当業者には知られている他のテストに基づいて推測される。血漿或いは脳脊髄液中の血漿アミノピリジン濃度は、液体クロマトグラフィー/MS/MSアッセイ方法を用いて測定される。
【0048】
本発明のドラッグデリバリーは、あらゆる適切な投薬ユニット形態を利用することができる。本発明のデリバリーシステムの特定な実施例は、錠剤、顆粒へ分解される錠剤、カプセル、徐放性マイクロカプセル、球体、或いは経口投与を可能にするあらゆる他の手段である。これらの形態は、錠剤或いはカプセルが消化系の様々な部分で消化することを可能にするような薬学的に許容可能なコーティング剤で任意にコーティングされる。例えば、錠剤は小腸の基本環境に到達するまでに溶解しないようにする腸溶性コーティング剤を有する。
【0049】
放出マトリックス全体でのアミノピリジンの分散は、投薬処方において増強された持続特性を与える。この増強された持続性は、望ましい徐放性特性を失うことなく達成される。好ましくは分解率で測定されるこの放出特性は、リニア或いはほぼリニアであり、好ましくは、前記放出特性は、患者の血漿中のアミノピリジン濃度によって測定され、1日2回(BID)投薬を可能にするものである。
【0050】
本発明の薬学的組成物は、例えば、流動促進剤、溶解剤、界面活性剤、希釈剤、低温融解結合剤を含む結合剤、崩壊剤(錠剤分解物質)、可溶化剤及び/若しくは潤滑剤などの補助因子或いは賦形剤も含むことができ、これらは同時継続出願である2004年4月17日に出願された国際出願番号第PCT/US2004/008101号(発明の名称"Stable Formulations of Aminopyrdines and Uses Thereof")、及び2004年12月13日に出願された米国出願番号第11/010,828号(発明の名称"Sustained Release Aminopyridine Composition")に記載されており、これらの内容はこの参照によってこれらの全体が本明細書に組み込まれる。
【0051】
本発明の活性成分は、薬学的に許容可能で且つ前記活性成分と適合する賦形剤と、本明細書に記載された治療方法で使用されるのに適した量で混合される。様々な賦形剤は、本分野の当業者に知られているように本発明のアミノピリジンと均一的に混合される。例えばアミノピリジンは、これに限定されるものではないが、微結晶性セルロース、コロイド状二酸化ケイ素、ラクトース、デンプン、ソルビトール、シクロデキストリン、及びこれらの組み合わせなど、賦形剤と混合される或いは組み合わされる。
【0052】
徐放性組成物におけるアミノピリジンの安定性を更に改善するために、抗酸化化合物を含むことができる。適切な抗酸化剤は、例えばメタ重亜硫酸ナトリウム;α、β、δ−トコフェロールエステル及びα−トコフェロール酢酸などのトコフェロール;アスコルビン酸或いはその薬学的に許容可能な塩;パルミチン酸アスコルビル;プロピルガレート、Tenox PG、Tenox s−1などのアルキルガレート;亜硫酸或いはその薬学的に許容可能な塩;BHA;BHT;及びモノチオグリセロールなどを含む。
【0053】
別の実施形態において、本発明の薬学的組成物は、ヒドロゲルマトリックスを含む速度制御ポリマーマトリックスを有する。例えばアミノピリジンは、HPMCなどの速度制御ポリマー、若しくは湿式の場合ヒドロゲルを形成ように膨張するポリマーの混合物を含有する投薬処方へ圧縮される。この投薬処方からのアミノピリジンの放出率は、膨張した錠剤塊からの拡散によって、及び長期の錠剤表面の浸食によって持続される。前記アミノピリジンの放出率は、錠剤当たりのポリマー量によって、及び使用された前記ポリマーの固有粘土によって持続される。
【0054】
本発明の別の観点に従って、放出マトリックスに分散した有効量のアミノピリジンを含む、安定した徐放性経口投薬処方が提供され、これは患者への投与で或いは治療投薬計画の一部として、少なくとも6時間、好ましくは少なくとも12時間に亘って延長された(アミノピリジンの治療上有効な血漿レベルの)放出特性を提供する。別の実施形態において、前記安定な制御放出経口投薬形態は、患者への投与によってアミノピリジンの治療上有効な血漿レベルを少なくとも6時間、好ましくは少なくとも12時間、より好ましくは少なくとも24時間に亘って提供する。
【0055】
前記投薬処方は、速度制御ポリマーに分散された治療的有効量のアミノピリジンを患者へ経口的に運搬できるあらゆる形態が考えられる。好ましくは、前記投薬処方は、単体(モノリシック)錠剤を有している。
【0056】
錠剤重量もまた、他の事象、アミノピリジン投薬、使用された速度制御ポリマーの種類と量、及び添加物質の存在、種類及び量に従って変更される。4−アミノピリジン投薬は約2mg〜約120mgと考え、錠剤重量は1錠剤当たり約50mg〜約1200mg、好ましくは約250mg〜500mg、より好ましくは約400mgの範囲であり得る。
【0057】
本発明の投薬処方は、上述したような1若しくはそれ以上の薬学的に許容可能な賦形剤も有する。好ましい実施形態において、前記投薬処方は、アミノピリジンユニット用量及び速度制御ポリマーに加えて、希釈剤及び潤滑剤を有する。特定の好ましい希釈剤は、Avicel PH101という商品名で売られている微結晶セルロースであり、特に好ましい潤滑剤はステアリン酸マグネシウムである。これらの物質が使用される場合、ステアリン酸マグネシウム構成成分は、好ましくは前記投薬処方の約0.2〜約0.75%w/wを有しており、速度制御ポリマー及びアミノピリジンを含む微結晶セルロースは前記処方の残りを有している。例えば、錠剤処方は、アミノピリジンをx%w/w、速度制御ポリマーをyx%w/w、及び微結晶セルロースをzx%w/wで含むとすると、前記ステアリン酸マグネシウム量は(100−(x+y+z))となり、ここにおいて0.2%≦(100−(x+y+z))≦0.75%w/wである。本分野の当業者には既知であるように、ステアリン酸マグネシウムなどの添加物の量は、前記混合する工程を実行するために使用されたせん断速度に依存して変更され、そのような添加物の量は、満足な分解率やアミノピリジンの血漿レベルを得るように制限なく変化する。
【0058】
ここで用いられたように、アミノピリジン組成物に関連した「徐放性」という用語は、アミノピリジンの毒性レベル以下の治療上有益な血液レベルが少なくとも約12時間、好ましくは約24時間以上に亘って維持されるような持続速度での前記投薬処方からのアミノピリジンの放出を含む。好ましくは、本発明の実施例に従った経口投薬処方におけるアミノピリジンの量は、前記薬学的組成物のBID投与を介して治療上有効な血漿濃度を達成する。
【0059】
必要に応じて、本発明の投薬処方は、付加的な徐放性特性を提供するために徐放性ポリマー層でコーティングされる。この徐放性層を形成するために使用され得る適切なポリマーは、例えば上述した放出マトリックスを含む。要望に応じて、本発明の投薬処方は、光保護性及び/若しくは例えばフィルム−形成剤、顔料、抗接着剤及び可塑剤などの表面(化粧品)フィルムコーティングも提供される。そのようなフィルム−形成剤は、低粘性ヒドロキシプロピルメチルセルロース(例えばMethocel E5或いはD14、若しくはPharmacoat606(Shin−Etsu))などの速溶性構成物質から成る。このフィルムコーティングは、例えば酸化鉄、或いは二酸化チタンなどの光−保護性顔料、例えばタルクなどの抗接着剤、更には例えばPEG400、PEG6000、ジエチルフタレート或いはトリエチルシトレートなどの適切な可塑剤などの、フィルム−コーティング工程では慣例的である賦形剤或いは腸溶性コーティングも含む。
【0060】
本発明の組成物は、本発明の経口投薬処方の患者への投与によって、神経インパルス伝達の低下によって特徴付けられた神経疾患を治療するために使用される。好ましくは、前記投与は、治療的有効量のアミノピリジン、より好ましくはHPMCに分散された4−APの1日2回投薬である。この投与は、副作用を最小限にするための最大濃度と比較して比較的低いが、患者におけるアミノピリジンの濃度が神経状態を改善するような最少の治療上有効レベルであるような薬学的用量のスケジュール投与を含む。前記組成物は、ある用量で、前記対象が不利な効果を示さず前記用量を許容するのに十分な期間で対象へ投与され、その後、治療的用量が前記対象において達成されるまで、選択された時間の間隔での錠剤における前記活性物質の用量は増加していく。例えば、治療の開始時、前記活性物質は、許容状態が達成されるまで約15mg/日以下で投与される。投与された投薬は次に、治療的投薬が達成されるまで少なくとも5〜10mg/日の量まで、好ましくは約30mg/日以下まで増加される。他の疾患に対して、治療用に治療的有効量に達するために必要とされるアミノピリジンの量は、米国特許番号第5,952,357号に記載されており、その内容はこの参照によってその全体が本明細書に組み込まれる。
【0061】
カリウムチャネル遮断剤がモノ−或いはジ−アミノピリジン活性物質である本発明の組成物は、中枢神経系の脱髄、より具体的には多発性硬化症によって特徴付けられる神経疾患の治療に使用されることが特に好ましい。
【0062】
本発明の1実施形態において、多発性硬化症の治療方法が提供される。治療的有効量のモノ−或いはジ−アミノピリジン活性物質を含有する本発明の組成物は、それを必要とする患者へ投与される。特に、少なくとも約5ミリグラムのアミノピリジン、特に4−アミノピリジンを含有する徐放性組成物は、少なくとも1日1回投与される。好ましい実施形態において、約10〜15ミリグラムの4−アミノピリジンを含有する徐放性組成物は、1日2回投与される。多発性硬化症の治療は、歩行速度の増進、下肢筋強度の改善或いは下肢筋緊張の改善を含む。徐放性アミノピリジン組成物は、好ましくは1日2回投与される。特定の実施形態において、前記組成物は約12時間毎に投与される。
【0063】
更なる実施形態は、多発性硬化症を患った患者の歩行速度を増進する方法であって、徐放性アミノピリジン組成物の少なくとも約5ミリグラム、好ましくは徐放性アミノピリジン組成物の少なくとも約10〜約15ミリグラムを患者へ投与する工程を有する。
【0064】
更なる実施形態は、多発性硬化症を患った患者の筋緊張或いは筋強度を増加する方法であって、徐放性アミノピリジン組成物の少なくとも約5ミリグラム、好ましくは徐放性アミノピリジン組成物の少なくとも約10〜約15ミリグラムを患者へ投与する工程を有する。
【0065】
ファムプリジンは、独特な作用メカニズムを有するMSの潜在的な治療法である。1〜2μl以下の濃度で、ファムプリジンは、脱髄軸索の伝導に影響を及ぼす電位依存性神経カリウムチャネルの特定な遮断剤となるように見える。ファムプリジンは、損傷した不完全有髄神経線維における作用潜在伝導を修復すると示され、シナプス伝達も直接増強する。以前の臨床試験において、ファムプリジンでの治療は、標準神経学評価によって測定されたように、より速い歩行及び強度の増加を含む、MSを患った人における様々な神経学的利益に関連している。
【0066】
本発明の別の観点は、治療に対する反応性に基づいて個人を選択する方法を提供する。1実施形態において、前記方法は、多数の個人を同定する工程と、治療期間前に各個人へテストを実施する工程と、これに限定されるものではないが、治療薬或いは薬剤を治療期間に1若しくはそれ以上の個人へ投与する工程を含む治療を実施する工程と、治療期間に各個人へ複数回テストを実施する工程と、1若しくはそれ以上の個人を選択する工程とを有し、前記選択された個人は、治療期間前に実施されたテストと比較して、治療期間の間投与されたテストの大部分の間で改善された能力(パフォーマンス)を示す。特定の実施形態において、前記方法は更に、治療期間後に各個人に対してテストを実施する工程を有し、前記選択された個人は更に治療期間後に実施されたテストと比較して、治療期間に実施されたテストの大部分の間で改善された能力(パフォーマンス)を示す。
【0067】
この実施形態は、治療反応と一致する変化パターンを示す対象を選択するものであり、その反応の完全な特徴を定義するものではないということに注意しなくてはいけない。その基準自体は、改善の程度を特定するものでも、その改善が長期間安定であることを特定するものでもない。例えば、最大未治療値より遅い速度を招くような、一連の研究期間での効果の連続的低下は、前記基準によっては排除されない;特定の実施例としては、二重盲検治療期間でのそれぞれ+20%、+5%、+1%及び−30%である最大未治療値の変化は、基準下での反応として認定されるが、実際は全期間における純ネガティブ平均値変化、不完全な安定性及びネガティブ終了点を示している。以下で詳細に説明される研究のhoc後解析によって、本発明者らが効果の一致によって定義された応答者が利益の規模と安定性の増加も示すことを予想したと示唆された。
【0068】
本発明者らは、この実施形態は特に多発性硬化症を患った患者におけるファムプリジンの解析に適用可能であると見出した。MSに対して調合ファムプリジンを定期的に処方している臨床医は、彼らの患者の一部のみが明らかな臨床利益に反応するように見え、彼らの判断ではこの割合は約3分の1であると報告した。この程度の反応性は、電位依存性カリウムチャネルの遮断を介して脱髄軸索における状態の修復である、作用の推定メカニズムに関連している。疾患の高度に変異する病状を考えると、一部のMS患者のみがこれらの薬剤効果に影響を受けやすい適切な機能関連の軸索を有すると予想される。現在、潜在的に反応する患者の試験前選択を可能にする疾患の理解は不十分である。しかしながら、前記薬剤に常に反応する患者のサブセットの存在は、以下に記載する本発明者ら自身の臨床研究における定量的観察によって支持され得る。
【0069】
治療前、これらの2つの試験における対象は、TW25測定で1秒当たり約2フィート(ft/秒)の平均歩行速度を示した。これは、非罹患者個人の予想歩行速度が5〜6ft/秒なので、著しく遅い。MS−F202の対象は、0.42〜3.1ft/秒の速度範囲に等しい、8〜60のスクリーニングでのTW−25歩行時間に対して選択される。機能状態の可変性はMSの固有の特徴であり、これは数週間或いは数ヶ月間に亘る歩行速度の反復測定において見られる。安定な治療期間での3回の訪問で、プラセボ−治療の対象の15〜20%は、背景変動を越えた歩行速度の正確な変化を示すものとして選択された閾値である、基準歩行速度から20%以上という改善が見られた。ファムプリジン−SR治療した対象の大部分でそのような改善が見られたが、この違いは、サンプルサイズやプラセボ反応率を考えると統計学的に有意ではなかった。
【0070】
MSを患った人々が経験する機能における頻繁な様々な変化を考慮すると、対象或いは訓練を受けた観察者が、治療に関連した改善を長期間の整合性要素なしで疾患に関連した改善を区別するのは難しい。従って、利益の整合性は、変化の規模というよりも正確な治療効果のより選択的な測定となると予想される。この理論的解釈に基づいて、MS−F202試験における個々対象の反応性は、二重盲検治療期間において改善を示した時、及び彼らが薬剤を辞めた後のフォローアップ時に治療前の値に戻った時の彼らの歩行速度に対する程度で測定された。この対象毎の試験は、長期間の歩行速度のパターンが薬剤反応と一致するように見えた対象のサブグループをもたらした。これは、図1に記載された解析を導いた。これは、TW25における歩行速度が全5回(無作為化の前に4回訪問し、薬剤治療期間後のフォローアップ訪問が1回)の未治療訪問の最大速度より速い、重盲検治療期間での訪問回数の観点からプラセボとファムプリジン−SR治療群とを比較する。
【0071】
プラセボ治療群は、より頻繁に「ポジティブ」訪問している多くの対象において指数関数的減少の明らかなパターンを示した。これは可変性の無作為化工程から予想されることである。一方、ファムプリジン−SR治療群の反応のパターンは、この分布とは顕著に異なり、大多数のファムプリジン−SR治療対象は、全5回の未治療訪問の最大速度よりより速い歩行速度を示す3或いは4回の訪問があり、予想された割合の半分以下はより速い速度での訪問はなかった。これらの結果は、治療に関連した歩行速度の一定の増加を経験したファムプリジン−SR治療群における対象のサブ集団があることを示唆している。
【0072】
この解析は、適当な治療応答者に対する相対的に高い選択性基準が:全5回の未治療訪問の最大値と比べて、二重盲検治療期間において、4回の訪問の少なくとも3回(すなわち、3或いは4回)でより速い歩行速度を示す対象であるということを示している。二重盲検治療開始前の4回の訪問は、4回の治療訪問での反応の整合性を測定することに対する開始基準を提供する。比較の付加的構成要素としてフォローアップ訪問を取り入れることは、薬剤を辞めた後の改善の期待損失を示さなかった対象を除いて主に有益であると見出された。これらは、治療開始時前後にMS症状の改善が偶然起こり、彼らの改善は実際薬剤と関係なかったので薬剤の中止で逆行しなかった対象である可能性がある。従って、基準の一部としてのフォローアップ訪問を取り入れることは、TW25速度がフォローアップ時に続いている場合でも、誤ったポジティブを排除するのを助けるであろう。
【0073】
下記の実施例5に記載したように、この応答者基準は、プラセボ、10mg、15mg及び20mg b.i.d.治療群それぞれで、対象の8.5%、35.3%、36.0%及び38.6%を満たし、これはプラセボと薬剤治療群との間の著しく有意で整合性のある違いを示している。試験された3種類の用量間での反応の違いが小さいことを考え、プラセボ治療群に対する統合ファムプリジン−SR治療群と比較してより詳細な解析を実施した。研究に対するこの解析の完全な結果は、以下の項に記載した。これら結果は、応答者群が治療期間に歩行速度の25%以上の平均増加を経験したと同定され、この増加は治療期間を越えて減少しなかったことを示している。応答者群は、Subject Global Impressionスコアにおける増加、及びMSWS−12に対するスコアにおける改善も示した。
【0074】
本発明の更なる特徴と実施形態は、限定されない以下の実施例によって説明されるものである。
【実施例1】
【0075】
この実施例は、本発明の組成物の調合及びアミノピリジンの放出を説明したものである。それぞれ5mg、7.5mg及び12.5mgの用量で含有している本発明に従った錠剤は、5Kgスケールで製造された。材料は表1に示された量で使用した。
【0076】
【表1】

【0077】
混合する前に、4−APはFitzmill(登録商標)粉砕機を用いて#50メッシュスクリーンを通して粉末状にした。この材料を、以下の順番:半分のMethocel K100LV、Avicel PH101、Aerosil 200、粉砕された4−PA、そして残りのMethocel K100LV、でGral25ボールへ添加した。この混合物は175rpmで15分間混合し、次にステアリン酸マグネシウムを添加し、さらに100rpmで5分間混合した。サンプルは、混合有効性解析のために上部と低部から採取した。重量及び硬度チェックは、チェック−マスターE3049によって15分毎に行った。分離した錠剤サンプルは、内部バッチ内容均一性を評価するために、圧縮工程の間採取した。
【実施例2】
【0078】
この実施例は、即効放出及び制御放出処方と比較して、本発明の組成物におけるファムプリジンの薬物動態特性が徐放性錠剤マトリックスにおける投与によって変わることを説明するものである。
【0079】
吸収の程度に影響を及ぼすことなく、低ピーク濃度によって現れる吸収の遅れがある。単一12.5mg用量として投与された場合、ピーク濃度はIR処方の投与に続くピーク値と比較して約2〜3倍低い;ピーク血漿レベルに達するための時間は約2時間遅延された。IR処方と同様に、食物はファムプリジン−SRの吸収を遅らせた。ファムプリジンの吸収は脂肪食の後約50%遅くなり、吸収曲線の平坦性に起因しているが、これは過剰値である。吸収の程度は異ならないが、比較可能なCmax及びAUCに対する値として表2にまとめた。
【0080】
【表2】

【実施例3】
【0081】
この実施例は、多発性硬化症を患った患者に投与された本発明の錠剤におけるファムプリジン−SRの薬学動態特性を詳しく述べたものである。血漿サンプルは、2ng/mLの感度を有する有効LC/MS/MSアッセイを用いてファムプリジンに対して解析した。無隔壁薬物動態パラメーター値は、標準方法論を用いて計算した。
【0082】
これは、多発性硬化症を患った患者へ経口的に投与したファムプリジンの非盲検で多施設での用量比例実験であった。ファムプリジンの単一用量は、薬剤の各投薬の投与間を少なくとも4日間隔で増量する用量(5mg、10mg、15mg及び20mg)で与えた。安全性評価は、ファムプリジンの投与後24時間で行い、血液サンプルは薬学動態パラメーターを決定するために以下の時間:0時間(投与前)、1〜8時間、及び10、12、14、18及び24時間で採取した。
【0083】
全4治療を受けた23対象、及び3治療を受けた1対象で、全ての治療からのデータを解析した。用量依存性パラメーター(例えば、ピーク血漿濃度及び曲線下面積)は、用量間比較のために10mg用量で規準化した。ピーク血漿濃度(平均及びその95%信頼区間)の全体観察時間は3.75(3.52、3.98)時間であり、観察ピーク血漿ファムピリジン濃度(10mg用量で規準化)は24.12(23.8、26.6)ng/mlであり、濃度−時間曲線下面積(10mg用量で規準化)は254(238、270)ng・h/mlであると推測され、推定濃度−時間曲線下面積(10mg用量で規準化)は284(266、302)ng・h/mlであり、最終速度定数は0.14(0.13、0.15)時間(h)−1に等しく、最終半減期は5.47(5.05、5.89)時間であり、生物学的利用能で割ったクリアランス(CL/F)は637(600、674)ml/分に等しかった。
【0084】
めまいは、最も共通した治療に関連した不利益な事象であった。治療に関連した他の不利益な事象は、弱視、無力症、頭痛及び失調症が含まれた。一連の本研究に亘って注目した臨床研究値、ECGパラメーター、バイタルサイン、理学的検査知見、或いは神経学的検査知見における臨床的に著しい変化は見られなかった。
【0085】
ファムプリジンの血漿濃度を10.0mg用量レベルで規準化した場合、5〜20mg用量の範囲において、あらゆる薬学動態パラメーター(AUC、Cmax、t1/2)間の著しい違いはなかった。ファムプリジンは、本研究で使用された用量では良好な許容性を示した。用量−規準化(10mg用量での)薬学動態パラメーター値は、表3にまとめた。
【0086】
【表3】

【実施例4】
【0087】
この実施例は、多発性硬化症を患った患者における本発明の経口投与ファムプリジン(4−アミノピリジン)組成物の定常状態での薬学動態を推定するための非盲検研究の結果を記載したものである。この研究は、以前に表4にまとめられた研究を完了していた20人のMSの患者における定常状態の薬学動態を推定することを目的としたファムプリジン−SRの非盲検複数回投与研究である。ファムプリジン−SR(40mg/日)は、2回の20mg用量として投与し、朝晩1回で13日連続、14日目に20mgの一回投与を行った。薬学動態解析のための血液サンプルは、1、7/8、及び14/15日目に以下の間隔で:薬剤投与直前(基準)、最初の8時間、及び投薬後10、12及び24時間にで回収した。付加的な血液サンプルは、14日目の投薬後14、18及び20時間に、及び15日目の投薬後36時間で回収した。
【0088】
本研究1日目での患者における最初の投薬に続く薬学動態パラメーター推定値は、表4にまとめた本研究に関与した際に決定されたものと相当する。4つの平均(単一投薬=3.67時間;1日目=3.78時間、8日目=3.33時間、15日目=3.25時間)において決定されたTmaxにおける著しい違いはなかった。8日目(Cmax=66.7ng/ml)及び15日目(Cmax=62.6ng/ml)のCmax及びCmax/Cτは、単一投薬治療及び1日目(Cmax=48.6ng/ml)の場合と比べて非常に有意であり、これは複数回投薬での薬剤の蓄積を反映している。
【0089】
T或いはCに関連した4つの事象の間には著しい違いはなく、8日目〜15日目間でのCmax、Cmax/Cτ、CL/F或いはAUC0−τにも違いはなかった。更に、8日目及び15日目のAUCは、単一投薬治療での総AUCと著しく異なることはなかった。同様に、8日目及び15日目のCL/Fの推定値、及び15日目のλ及びT1/2の推定値は、単一投薬の推定値と著しく異なることはなかった。
【0090】
定常状態は、7/8日目及び14/15日目の間のCmax或いはAUCにおいて違いがないことの証拠として7/8日目に到達し、明らかな予想外の蓄積は見られなかった。同様に、7/8日目及び14/15日目におけるC1/Fの推定値、及び14/15日目のT1/2の推定値は、単一投薬で得られた推定値と比べて著しく異なることはなかった。投薬の最終日において平均Cmaxは62.6ng/mLであり、投薬後3.3時間で生じた。T1/2は5.8時間であった。これらの値は、本処方を同様の用量で受けている慢性SCIを患った患者において観察された値と類似していた。これらの結果は表4にまとめている。
【0091】
【表4】

【0092】
めまいは、最も共通した治療に関連した不利益な事象であった。治療に関連した他の不利益な事象は、吐き気、失調、不眠及び身震いが含まれた。臨床研究値、バイタルサイン、或いは基準から最終訪問までの理学的検査知見における臨床的に著しい変化は見られなかった。ファムプリジンの投与後における修正QT間隔或いはQRS振幅における臨床的に著しい変化も見られなかった。
【0093】
ファムプリジンは、ファムプリジンの1日2回投薬(20mg/1投薬)を2週間受けた多発性硬化症を患った対象において良好な許容性を示した。有意な増加は、1日目と単一投薬治療の場合と比較して8日目と15日目のCmax及びCmax/Cτにおいて観察され、これは複数回投薬でのファムプリジンの蓄積を反映している。8日目〜15日目の間でのCmax、Cmax/Cτ、CL/F或いはAUC0−τに有意な違いがないことは、近似な定常状態に8日目で達したことを示唆している。ファムプリジンの複数投薬の2週間での薬物動態における著しい変化の証拠はなかった。
【実施例5】
【0094】
この実施例は、徐放性ファムプリジン処方での対象の治療方法、及び本発明の応答者解析方法の実施形態を提供する。これは、多発性硬化症と診断された206の対象における第2相・二重盲検・プラセボ−制御・平行群・20週間治療研究であった。本研究は、臨床的に明確なMSを患った対象におけるファムプリジン−SRの3つの投薬レベル(10mg b.i.d.、15mg b.i.d.及び20mg b.i.d.)の安全性及び有効性を調査するために設計された。第1の有効性指標は、時間25フィート歩行に対する、基準に相対的な歩行速度の増進であった。第2の有効性測定は、下肢筋(股関節屈筋、膝屈筋、膝伸筋及び足首背屈筋)4グループにおける下肢徒手筋テスト;9−Hole Pegテスト及びPaced Auditory Serial Additionテスト(PASAT3"):痙縮に対するAshworthスコア:痙攣頻度/重症度スコア、更には臨床医(CGI)及び対象(SGI)Grobal Impression、対象Global Impression、多発性硬化症クオリティー・オブ・ライフ目録(MSQLI)、及び12アイテムMS歩行スケール(MSWS−12)が含まれた。
【0095】
最初の訪問(訪問0)において、機能の基準レベルを設定する目的で対象を2週間一重盲検プラセボ導入期(run−in period)へ導入した。訪問2において、対象は4つの治療群(プラセボ或いはファムプリジン−SR10mg、15mg、20mg)の1つを無作為に割り当て、活性薬剤治療群(B、C或いはD)における二重盲検用量増加を2週間始めた。A群は、研究の間中プラセボを摂取した。本研究の10mgを摂取した対象(B群)は、増加期の両週間の間、約12時間毎に10mgの用量を摂取した。15mg(C群)及び20mg(D群)用量対象は、増加期の1週目の間、約12時間毎に10mgの用量を摂取し、2週目は15mg b.i.d.まで漸増した。対象には「12時間毎」投薬スケジュールに順守するように指示した。各対象は、研究の間中、各日のほぼ同じ時間に薬剤を摂取するようにアドバイスしたが、異なる対象は異なる薬剤スケジュール(例えば、午前7時及び午後7時、若しくは午前9時及び午後9時)であった。2週間後、前記対象は、安定投薬治療期間を開始するために、訪問3において病院に戻ってきた。最終標的用量(A群のプラセボb.i.d.、B群の10mg b.i.d.、C群の15mg b.i.d.、及びD群の20mg b.i.d.)での二重盲検治療期の最初の用量を、訪問4での夜間追随研究において摂取した。対象は、12週間治療期間の間、5回評価した。12週間治療期間に続き、訪問9に開始する1週間ダウン滴定期間、Bは10mg b.i.d.で安定した状態を保ち、C群は10mg b.i.d.まで漸増した一方、D群はこの週の間に用量レベルを変化した(最初の3日間は15mg b.i.d.で残りの4日間は10mg b.i.d.)。訪問10での最終ダウン滴定の最後において、対象をあらゆる研究用薬剤を摂取しない2週間の休薬期間に導入した。最後の訪問(訪問11)は、最後の投薬日(ダウン滴定の最後)後2週間に計画した。血漿サンプルは、研究訪問0以外の各研究施設訪問時に回収した。
【0096】
有効性の第一測定は、多発性硬化症機能複合性スコア(MSFC)から時間25フィート歩行を用いる、基準期間(プラセボ導入期)に対する平均歩行速度における改善であった。これは、下肢機能運の定量測定である。対象には、彼らが正常に使用する歩行を助けるものは何でも使用し、明確に印された25フィートコースの端から端まで出来るだけ速く歩くことを指示した。他の有効性測定はLEMMTを含み、筋肉の4グループ:股関節屈筋、膝屈筋、膝伸筋及び足首背屈筋における左右筋強度を推定する。このテストは、スクリーニング訪問、及び研究訪問1、2、4、7、8、9及び11で実施した。各筋肉グループの強度は、修正BMRCスケール:5=正常筋強度;4.5=試験官によって適用された強い抵抗力に対する自発的な動きはするが正常ではない;4=試験官によって適用された中程度の抵抗力に対する自発的な動き;3.5=試験官によって適用された穏やかな抵抗力に対する自発的な動き;3=抵抗力ではなく、重力に対する自発的な動き;2=自発的な動きはあるが重力に抵抗することができない;1=手足の動きはないが、筋肉の可視的或いは触診可能な収縮;及び0=あらゆる自主的収縮の欠如、で評価した。各対象における痙縮は、Ashworth痙縮スコアを用いて評価した。このAshworth痙縮テストは、スクリーニング訪問、及び研究訪問1、2、4、7、8、9及び11で実施し記録をとった。
【0097】
プロトコール特定応答者解析。第一の解析を補足するために、分類「応答者」解析も実施した。成功反応は、各対象の少なくとも20%の歩行速度(基準からのパーセンテージ変化)における改善として定義した。安定投薬期間前に脱落した対象は、非応答者とみなした。プロトコール特定応答者の割合は、中間層を調整している、Cochran−Mantel−Haenszelテストを用いて治療群間を比較した。
【0098】
本研究のhoc後解析によって、適当な治療応用者に対する相対的に高度な選択基準は、二重盲検治療期間の間、5回の非治療訪問(治療前に4回、治療の中断後1回)のセットでの最大値と比較して、少なくとも3回の訪問においてより速い歩行速度を示した対象であるということを示唆された。二重盲検治療の開始前の4回訪問によって、4回の二重盲検治療訪問の間における反応の整合性を測定するための開始基準が提供された。比較の付加的構成要素としてフォローアップ訪問を取り入れることは、誤ったポジティブとなる対象、すなわち、薬剤を辞めた後の改善の期待損失を示さなかった対象を排除するのにまず有用であった。これらのhoc後応答者の割合における治療差異は、中間層を調整する、Cochran−Mantel−Haenszel(CMH)テストを用いて解析した。
【0099】
hoc後応答者変数の臨床有意味性を認証するために、(hoc後)応答者を(hoc後)非−応答者と以下の自覚的変数で比較し:(i)二重盲検間のMSWS−12における基準からの変化、(ii)二重盲検間のSGI、及び(iii)二重盲検間のCGIにおける基準からの変化、二重盲検間で歩行速度が一貫して改善された対象が歩行速度の一貫した改善が見られなかった対象と比較して改善に気が付くことができたかどうかを決定した。自覚的変数に対して、応答者状態分類(応答者或いは非−応答者)間の違いは、応答者状態及び中間層に対して効果を有するANOVAモデルを用いて比較した。
【0100】
結果。総206対象は、本研究は:47人にはプラセボを与える、52人は10mg bidファムプリジン−SR(10mg bid)を、50人には15mg bidファムプリジン−SR(15mg bid)を、及び57人には20mg bidファムプリジン−SR(20mg bid)を与える、のように無作為に割り当てた。対象の分布は以下の表5に記した。
【0101】
【表5】

【0102】
全206人の無作為化対象は、少なくとも1回の研究薬剤の投薬を受け、安全母集団に含まれた。1対象(対象#010/07、10mg bid群)は、ITT集団から除いた(プラセボ導入8日後のフォローアップの欠如)。総数11対象は本研究を中断した。
【0103】
前記集団は、63.6%女性及び36.4%男性で構成されていた。対象の大多数は白人(92.2%)、次いで黒人(4.9%)、ヒスパニック系(1.5%)、「その他」と分類された人(1.0%)、アジア/太平洋諸島系(0.5%)であった。対象の平均年齢、体重及び身長はそれぞれ、49.8歳(28〜69歳の範囲)、74.44キログラム(41.4〜145.5キログラムの範囲)、及び168.84センチメーター(137.2〜200.7センチメーターの範囲)であった。対象の大部分(52.4%)は、ほぼ同量の再発寛解型(22.8%)及び第一進行(24.8%)対象を示す第二の進行の分析タイプを有していた。疾患の平均持続期間は、12.00年(0.1〜37.5年)である一方、スクリーニング時の総合障害度評価スケール(EDSS)は5.77ユニット(2.5〜6.5ユニット)であった。治療群は、全ての基準人口統計学的及び疾患特徴的変数について同程度であった。
【0104】
ITT集団に対する基準での鍵となる有効性変数の結果は、以下の表6にさらにまとめてある。
【0105】
【表6】

【0106】
ITT集団における205人の対象に関して、基準歩行速度、LEEMT、SGI及びMSWS−12に対する平均値はそれぞれ、1秒当たり約2フィート、4ユニット、4.5ユニット及び76ユニットであった。治療群は、基準での他の全有効性変数と同様にそれら変数について同程度であった。
【0107】
時間25−フィート歩行に基づいた研究日での平均歩行速度(ft/秒)に対する記述統計学は、表7と図2に示した。平均改善は治療期間の間減少したが、時間25−フィート歩行は、全ての3投薬群に対する安定投薬期間の間速度増加という傾向を示した。
【0108】
【表7】

【0109】
二重盲検治療の間、全てのファムプリジン−SR群は、2.00〜2.26フィート/秒の間の平均歩行速度を示した一方、プラセボ群における平均値は一貫して約1.90フィート/秒であった。第三の安定投薬訪問で10mg bid及び20mg bid群両方の平均は、治療利益が長期間一定であるという推測下で予想されたことから減少したことは注意すべきである。これは偶然によるものなのかそうでないのか、更なる研究によって両場合に対する付加的な証拠を提供した。二重盲検薬剤が中断された後、全ての治療群は、フォローアップ時に同じ平均値にほぼ収束した。
【0110】
第一の有効性変数(25−フィート歩行に基づいた基準に相対した、12週間安定投薬期間での平均歩行速度におけるパーセント変化)に対する結果は、図3にまとめた。図3に示されたように、平均改善は治療期間中減少したが、時間25−フィート歩行は、安定投薬期間の間全ての3投薬群に対して速度増加の傾向を示した。12週間安定投薬期間(log−変換歩行速度の調節幾何平均変化に基づいた)平均歩行速度における平均パーセント変化は、プラセボ、10mg bid、15mg bid及び20mg bidに対してそれぞれ2.5%、5.5%、8.4%及び5.8%であった。ファムプリジン−SR群及びプラセボ群の間に統計学的差異はなかった。
【0111】
プロトコール特定応答者解析(安定二重盲検治療の12週間で少なくとも20%の歩行速度の平均変化を示した対象)に対する結果は、図4にまとめた。安定二重盲検治療の12週間で少なくとも20%の歩行速度の平均変化を示した対象(予め設定された応答者)のパーセンテージは、プラセボ、10mg bid、15mg bid及び20mg bidに対してそれぞれ12.8%、23.5%、26.5%及び16.1%であった。ファムプリジン−SR群及びプラセボ群の間に統計学的差異はなかった。
【0112】
研究日での下肢マニュアル筋肉テスト(LEMMT)全体の平均に対する記述統計学は、表8及び図5に記載した。
【0113】
【表8】

【0114】
二重盲検治療の間、全てのファムプリジン−SR群は(2回目の安定投薬訪問における20mg bid群を除いて)、プラセボに比べてより大きな平均LEMMTスコアの数値的パターンを示した。二重盲検を中断した後、15mg bid群の例外はあるが、全ての群平均は基準の平均より低かった。
【0115】
基準に相対した、12週間安定投薬期間LEMMTにおける平均変化に対する結果は、図6にまとめた。12週間安定投薬期間におけるLEMMT全体における平均変化は、プラセボ、10mg bid、15mg bid及び20mg bidに対してそれぞれ−0.05ユニット、0.10ユニット、0.13ユニット及び0.05ユニットであった。LEMMTにおける改善は、プラセボ群と比較して10mg bid及び15mg bid群において非常に有意であり、20mg bid群及びプラセボ群の間には有意な違いは見られなかった。
【0116】
表9に示されたように、あらゆる他の第二有効性変数に基づいた治療群の間には、有意な違いが検出されなかった。
【0117】
【表9】

【0118】
第一有効性評価項目の予め計画された解析より、全ファムプリジン−SR投薬の治療利益の証拠が不十分であると示されたが、一連の解析によって、臨床有意味性を有する薬剤に反応した対象のサブセットが存在することを明らかになった。これらの対象は、対象が活性薬剤を摂取しなかった時に測定されたより速い歩行速度と比べて一貫して良い歩行速度を薬剤を摂取中に示した。
【0119】
改善された歩行速度の整合性に基づいたhoc後応答者率は、図7に示されたように、プラセボ(9%、各投薬群に対してp<0.006、複数回比較によって調節した)に比べて全3活性用量群(35、36及び39%)において著しく高かった。
【0120】
検討された3用量間の反応性においてほぼ差異はなかったことを考えると、統合プラセボ治療群に対してファムプリジン−SR治療群を比較することによってより詳細な解析を実施した。プラセボ及び統合ファムプリジン−SR群に対する、hoc後応答者のパーセンテージを図8にまとめた。統合ファムプリジン−SR治療群においてhoc後応答者基準に当てはまった対象の数は、プラセボ治療群の4(8.5%)に比べて、58(36.7%)であり、この違いは統計学的に有意であった(p<0.001)。
【0121】
hoc後応答者変数の臨床有意味性を認証するために、62人の応答者(58ファムプリジン及び4プラセボ)を、自覚的変数に関して143人の非−応答者(100ファムプリジン及び43プラセボ)と比較し、二重盲検の間歩行速度が一貫して改善された対象は、歩行速度が一貫して改善されなかった対象と比較して利益に気が付くことができるかを決定した。結果は図9にまとめており、これは歩行速度の整合性は、応答者が(二重盲検期間の間)MSWS−12における基準から有意に変化し、著しく良い自覚的全体スコアを示しているので、本研究における対象に対して臨床有意味性を有することを示している。さらに、前記応答者は、二重盲検の間、臨床医によって非応答者よりわずかに良いと評価された。従って、応答者はMS症状の臨床的に有意義な改善を経験し、ファムプリジンでの治療はそのような反応の機会を有意に増加した。
【0122】
応答者解析群の間の基準比較可能性を確立するために、基準人口統計変数、鍵となる神経学的特徴、及び基準における関連有効性変数に対する解析を実施した。一般的に、応答者解析群は、全ての人口統計的及び基準特徴変数と比較可能であった。
【0123】
反応性の基準として二重盲検の間一貫した歩行速度の改善の臨床有意味性を示したので、利益の規模に対する疑問が興味深い。適切な有効性に関する情報は得られないが、ファムプリジン非応答者から、ファムプリジンで治療されたが臨床利益は示さなかった個人に対する安全性に関する情報が得られる。そのため、これらの群の応答者解析を実行した。
【0124】
利益の規模に関して、以下の図10及び表12は、応答者解析グループ分けによる各二重盲検訪問での歩行速度のパーセント変化をまとめたものである。14週間治療に亘る二重盲検の間のファムプリジン応答者に対する平均改善は、プラセボ群の1.7%〜3.7%と比較して、24.6%〜29.0%の範囲であり、これは、全ての訪問で著しく有意(p<0.001)であった。適切な有効性に関する情報は得られなかったが、ファムプリジン非応答者に対する結果より、非応答者がファムプリジンで治療された場合、12週間後に歩行速度におけるいくらかの悪化があり、あり得たことが明らかになり示された。この改善は、14週間治療に亘って安定(±3%)であり、2つの全体測定(対象全体影響(Subject Global Impression)及び多発性硬化症歩行スケール−12)における改善と関連するものであった。4人のプラセボ応答者は、歩行速度において19%の改善を示したが、有意味性な統計学的対照としてはこの群における対象は少なすぎた。反応状態は、MSの種類或いは重症度を含む基準人口統計に有意に関係するものではなかった。不利な現象及び安全性測定は、この薬剤に対する以前の実験と一致した。
【0125】
【表10】

【0126】
図11及び表13は、応答者解析グループ分けによる、各二重盲検訪問でのLEMMTにおける変化をまとめたものである。二重盲検の間でのファムプリジン応答者に対する平均改善は、プラセボ群に対する各訪問での−0.04ユニットと比較して、0.09〜0.18の範囲であり、これは第二の安定投薬訪問を除いた全ての訪問で有意であった(p=0.106)。適切な有用性に関する情報は得られなかったが、ファムプリジン非応答者に対する結果によって、非応答者がファムプリジンで治療された場合、肢強度におけるいくらかの有意な改善があり、あり得たことも明らかに示された。これは、臨床的に有意味な反応がファムプリジン−SRで治療された対象の約37%と関連付けできるが、追加の対象は歩行速度以外の変数において機能的な改善を有するということを示唆している。
【0127】
【表11】

【0128】
図12及び以下の表14は、応答者解析グループ分けによる、各二重盲検訪問での全体Ashworthスコアにおける変化をまとめたものである。二重盲検の間のファムプリジン応答者に対する基準からの平均減少(改善の指標)は、プラセボ群の−0.11〜−0.06と比較して、−0.18〜−0.11ユニットの範囲であった。ファムプリジン応答者は、数値的に優れていたが、有意な差異を検出するのに十分な証拠はなかった。適切な有用性に関する情報はほとんど提供されなかったが、ファムプリジン非応答者に対する結果も説明した。
【0129】
【表12】

【0130】
治療前に最も共通して報告された不利な事象は、12人(5.8%)の対象から報告された偶発性負傷、9人(4.4%)の対象から報告された吐き気、及びそれぞれ8人(3.9%)の対象から報告された無気力、下痢及び知覚異常であった。6人(2.9%)の対象も、頭痛、不安、めまい、下痢及び末梢浮腫を報告した。これらの不利な現象は、MSを患った人に影響を及ぼす薬剤状態の指標となる。
【0131】
結論。このデータは、約10〜15mg b.i.d.以上の用量、更には約10mg b.i.d.用量ではより有意な有効性と関連するべきであるという、前臨床薬理学からの多数の事例報告或いは予想を支持するようには見られない。以下の表15に示したデータは、新しい応答者解析方法論に基づいて、このことを支持するものである。
【0132】
【表13】

【0133】
改善の整合性に基づいた応答者解析は、時間25フィート歩行に対する影響を測定するための感度の良い有意味性なアプローチを提供し、将来の試行に対する第一の評価項目として使用される。このデータは、反応性対象(約37%)に対して、10〜20mg bidの用量のファムプリジンでの治療は、歩行における実質的で持続性の改善を実現するということを示唆している。
【0134】
有用性。薬剤に反応する対象における10mg bid〜15mg bid間の顕著な差異はなかった。実は、最も大きな差異は10mg bid群で有利に働く(MSWS−12結果を参照)。
【0135】
安全性。安全性に関して3つの検討材料がある:10mg bid及び20mg bid群の(しかし15mg bid群ではない)ファムプリジン非応答者における薬剤に対する最終訪問での基準歩行速度以下となる明らかな減少が存在する。これは有意かどうか分からないが、明らかに用量相関ではない。2週間フォローアップ訪問時のファムプリジン治療対象の間で基準以下に減少した歩行速度を示す明らかな回復効果が見られ、これは15及び20mgでは起こるが10mg bid群では起こらなかった。深刻なAE’sは、10mg bidの0%比率及びプラセボ群の4%比率に対して、15mg及び20mg bid群の10%及び12%比率と、より頻繁であった。これは有意かどうか分からないが、潜在的に関連したSAEs、特に発作のリスクは、全ての利用可能なデータより、及び作用メカニズムに基づいて、用量相関性であるようである。このデータに基づいて、15及び20mg用量と比較して利益率に対するその予測リスクのため、10mg bid用量が好ましいことが明らかである。
【0136】
本発明はその特定の好ましい実施例を参照することによってかなり詳細に記載したが、他の種類も可能である。従って、添付された請求項の要旨と範囲は、この記述及びこの明細書中に含まれる好ましい種類に限定されるものではない。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
歩行速度を増進するための方法であって、
1日2回徐放性アミノピリジン組成物の有効量を、多発性硬化症を患った患者へ投与する工程を有し、
前記有効量は、約15ミリグラム未満のアミノピリジンである、方法。
【請求項2】
請求項1の方法において、
前記有効量は、約10〜約15ミリグラムのアミノピリジンである。
【請求項3】
請求項1の方法において、
前記有効量は、約10ミリグラムのアミノピリジンである。
【請求項4】
請求項1の方法において、
前記アミノピリジンは、4−アミノピリジンである。
【請求項5】
請求項4の方法において、
前記徐放性4−アミノピリジン組成物は、約1.0〜3.5のCmax:Cτ比を示すものである。
【請求項6】
請求項1の方法において、
前記1日2回の投与は、約12時間毎になされるものである。
【請求項7】
下肢筋緊張を改善する方法であって、
1日2回徐放性アミノピリジン組成物の有効量を、多発性硬化症を患った患者へ投与する工程を有し、
前記有効量は、約15ミリグラム以下のアミノピリジンである、方法。
【請求項8】
請求項7の方法において、
前記有効量は、約10〜約15ミリグラムのアミノピリジンである。
【請求項9】
請求項7の方法において、
前記有効量は、約10ミリグラムのアミノピリジンである。
【請求項10】
請求項7の方法において、
前記アミノピリジンは、4−アミノピリジンである。
【請求項11】
請求項10の方法において、
前記徐放性4−アミノピリジン組成物は、約1.0〜3.5のCmax:Cτ比を示すものである。
【請求項12】
下肢筋強度を改善する方法であって、
1日2回徐放性アミノピリジン組成物の有効量を、多発性硬化症を患った患者へ投与する工程を有し、
前記有効量は、約15ミリグラム以下のアミノピリジンである、方法。
【請求項13】
請求項12の方法において、
前記有効量は、約10〜約15ミリグラムのアミノピリジンである。
【請求項14】
請求項12の方法において、
前記有効量は、約10ミリグラムのアミノピリジンである。
【請求項15】
請求項12の方法において、
前記アミノピリジンは、4−アミノピリジンである。
【請求項16】
請求項15の方法において、
前記徐放性4−アミノピリジン組成物は、約1.0〜3.5のCmax:Cτ比を示すものである。
【請求項17】
治療に対する反応性に基づいて個人を選択する方法であって、
多数の個人を同定する工程と、
治療期間前に各個人にテストを実施する工程と、
治療期間に1若しくはそれ以上の前記個人に治療を実施する工程と、
治療期間に各個人に複数回テストを実施する工程と、
1若しくはそれ以上の個人を選択する工程とを有し、
前記選択された個人は、前記治療期間前に実施されたテストと比較して、前記治療期間に実施されたテストの大部分の間において、改善された能力を示すものである、方法。
【請求項18】
請求項17の方法であって、この方法はさらに、
治療期間後に各個人にテストを実施する工程を有し、
前記選択された個人はさらに、前記治療期間後に実施されたテストと比較して、前記治療期間に実施されたテストの大部分の間において、改善された能力を示すものである。
【請求項19】
請求項17の方法において、
前記治療は、治療薬を有するものである。
【請求項20】
治療に対する反応性に基づいて個人を選択する工程であって、
多数の個人を同定する工程と、
治療期間前に各個人にテストを実施する工程と、
治療期間に1若しくはそれ以上の前記個人に治療を実施する工程と、
治療期間に各個人に複数回テストを実施する工程と、
治療期間後に各個人へテストを実施する工程と、
1若しくはそれ以上の個人を選択する工程とを有し、
前記選択された個人は、前記治療期間前に実施されたテスト及び治前記療期間後に実施されたテストのより良い能力と比較して、治療期間に実施されたテストの大部分の間、改善された能力を示すものである、方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【公開番号】特開2012−188427(P2012−188427A)
【公開日】平成24年10月4日(2012.10.4)
【国際特許分類】
【外国語出願】
【出願番号】特願2012−100498(P2012−100498)
【出願日】平成24年4月25日(2012.4.25)
【分割の表示】特願2007−507570(P2007−507570)の分割
【原出願日】平成17年4月11日(2005.4.11)
【出願人】(505425351)アコーダ セラピューティクス、インク. (12)
【Fターム(参考)】