復調器
【課題】 デバイスの大型化を抑制しつつ消光比の劣化を抑制することができる復調器を提供する。
【解決手段】 復調器は、差動位相変調光信号を第1分岐光と第2分岐光とに分岐して第1分岐光を第1光路に出射し、第2分岐光を第2光路に出射する分岐手段と、第1光路上に配置され、第2光路の平均屈折率よりも高い屈折率を有する第1誘電体と、第1光路を経由した第1分岐光と第2光路を経由した第2分岐光とを合波干渉させる合波干渉手段と、を備え、第2光路を経由した第2分岐光に対して第1光路を経由した第1分岐光が1ビット遅延するように、第1光路長と第2光路長との差、および、第1誘電体の屈折率が設定されている。
【解決手段】 復調器は、差動位相変調光信号を第1分岐光と第2分岐光とに分岐して第1分岐光を第1光路に出射し、第2分岐光を第2光路に出射する分岐手段と、第1光路上に配置され、第2光路の平均屈折率よりも高い屈折率を有する第1誘電体と、第1光路を経由した第1分岐光と第2光路を経由した第2分岐光とを合波干渉させる合波干渉手段と、を備え、第2光路を経由した第2分岐光に対して第1光路を経由した第1分岐光が1ビット遅延するように、第1光路長と第2光路長との差、および、第1誘電体の屈折率が設定されている。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、復調器に関する。
【背景技術】
【0002】
復調器は、1ビット差の光の位相差を利用して信号を復調するために、光を分岐し1ビットに相当する時間差を設けて再び合波する(例えば、特許文献1参照)。マイクロオプティクスでは、空間を伝播する時間に差を設ける。この場合、空間を伝播する光は、回折によりビーム径が広がる。伝播する光は、波長が長い方が回折の影響を受けやすく、ビーム径が小さい方が回折の影響を受けやすい。
【0003】
しかしながら、光ファイバ通信に使用される波長には規定があり、自由に波長を選択することができない。そこで、ビームの広がりを抑えるために、ビーム径を大きくすることによって、並行光を維持できる距離を長くして対応することが考えられる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2007−67955号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、ビーム径が大きくなると、光学エレメントが大きくなってしまう。またファイバ端面とレンズの距離を大きくしなくてはならず、デバイス全体が大型化してしまう。
【0006】
近年、通信モジュールは小型化してきておりデバイスの小型化に強い要求がある。一方、小さいビーム径で復調器を構成して必要な遅延を設けるために伝播距離が違う光を合波する場合、ビーム径が異なるために光のパワーを0にしたい場合にも残留光が発生してしまう。それにより、オンオフ比である消光比を劣化させる要因になる。
【0007】
復調器において、消光比の劣化はそのままノイズの増加につながる。その結果、要求仕様により規定される重要な性能数値になる。また、異なるビーム径を一致させるためにレンズ等を利用した場合、位相波面が合波する二つのビームで異なってしまい、同様に消光比を劣化させる。したがって、細いビームを使い、ビーム径を一致させ、かつ位相波面も一致させることが求められている。
【0008】
本発明は上記課題に鑑みなされたものであり、デバイスの大型化を抑制しつつ消光比の劣化を抑制することができる復調器を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記課題を解決するために、明細書開示の復調器は、差動位相変調光信号を第1分岐光と第2分岐光とに分岐して第1分岐光を第1光路に出射し、第2分岐光を第2光路に出射する分岐手段と、記第1光路上に配置され、第2光路の平均屈折率よりも高い屈折率を有する第1誘電体と、第1光路を経由した第1分岐光と第2光路を経由した第2分岐光とを合波干渉させる合波干渉手段と、を備え、第2光路を経由した第2分岐光に対して第1光路を経由した第1分岐光が1ビット遅延するように、第1光路長と第2光路長との差、および、第1誘電体の屈折率が設定されているものである。
【発明の効果】
【0010】
明細書開示の復調器によれば、大型化を抑制しつつ消光比の劣化を抑制することができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【図1】第1の実施形態に係る復調器を含む差動位相変調光伝送システムの全体構成を説明するブロック図である。
【図2】光の回折による広がりについて説明するための図である。
【図3】ビーム径が異なる2つの光を干渉させた場合の残留光分布を説明するための図である。
【図4】干渉させる2つの光のビーム径の不一致(%)と消光比との関係を説明するための図である。
【図5】入力光のビーム径と伝播距離とビーム径の広がりとの関係の一例を説明するための図である。
【図6】第1の実施形態に係る復調器の詳細を説明するためのブロック図である。
【図7】フレネル領域とフラウンフォーファ領域との境界について説明するための図である。
【図8】第2の実施形態に係る復調器の詳細を説明するためのブロック図である。
【図9】第3の実施形態に係る復調器の詳細を説明するためのブロック図である。
【図10】第4の実施形態に係る復調器のブロック図である。
【図11】実施例および比較例の結果を説明するための図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、図面を参照しつつ、本発明の実施形態について説明する。
【0013】
(第1の実施形態)
図1(a)は、第1の実施形態に係る復調器50を含む差動位相変調(DPSK:Differential Phase Shift Keying)光伝送システム100の全体構成を説明するためのブロック図である。図1(b)は、差動位相変調信号を説明するための図である。
【0014】
図1(a)を参照して、光伝送システム100は、複数の光源10、複数の位相変調器20、波長合波器30、波長分波器40および複数の復調器50、および複数の受信機60を含む。
【0015】
各光源10は、互いに異なる波長の光信号を出射する。位相変調器20は、光源10から出射された光信号を受信する。位相変調器20は、受信した光信号から図1(b)で説明されるような位相変調信号を生成する。各位相変調器20によって生成された位相変調信号は、波長合波器30に入力される。波長合波器30は、入力された複数の位相変調信号を合波する。合波された位相変調信号は、光伝送路等を介して波長分波器40に入力される。
【0016】
復調器50は、分波された位相変調信号を復調する。この場合、復調器50は、位相変調信号とその変調レートの1周期(1ビット)遅延させた信号とを干渉させることによって、位相変調信号を復調する。各復調器50によって合波干渉された信号は、受信機60によって受信される。以上の過程により、DPSK光伝送が行われる。
【0017】
ここで、復調器50における分岐光のビーム径の広がりについて説明する。図2(a)を参照して、光信号を、実線で描かれる第1分岐光と破線で描かれる第2分岐光とに分岐し、第1分岐光を第2分岐光に対して1ビット遅延させるものとする。
【0018】
ところで、図2(b)で説明されるように、第1分岐光および第2分岐光のいずれも、伝播とともにビーム径が大きくなる。第1分岐光の伝播距離は長くなることから、第2分岐光に対して第1分岐光のビーム径が大きくなってしまう。そこで、図2(c)で説明されるようにビーム径の広がりを抑制しようとすれば、入力される光のビーム径を大きくするか波長を短くする必要がある。しかしながら、ビーム径を大きくすると、デバイスが大型化してしまう。そこで、入力される光のビーム径を小さくするか波長を長くすると、図2(d)で説明されるように、ビーム径の広がりが大きくなってしまう。
【0019】
図3(a)〜図3(c)は、ビーム径が異なる2つの光を干渉させた場合の残留光分布を説明するための図である。図3(a)で説明されるように、ビーム径が異なる2つの光を干渉させるとする。この場合、図3(b)および図3(c)で説明されるように、残留光に分布が生じ、複数のフェーズが発生する。この場合、消光比が劣化してしまう。
【0020】
図4は、干渉させる2つの光のビーム径不一致(%)と消光比との関係を説明するための図である。図4で説明されるように、ビーム径の不一致が大きくなると、消光比が劣化する。
【0021】
そこで、本実施形態においては、分岐光を1ビット遅延させるための光路途中に誘電体を配置することによって、ビーム径の広がりを抑制する。図5は、本実施形態に係る復調器50の詳細を説明するためのブロック図である。復調器50は、マイケルソン型の復調器である。図5を参照して、復調器50は、ハーフミラー51、プリズムミラー52、誘電体53およびプリズムミラー54を備える。
【0022】
ハーフミラー51は、入力される光を分岐する分岐手段として機能する。ハーフミラー51は、入力された光を、第1光路を経由する第1分岐光と第2光路を経由する第2分岐光とに分岐する。第1分岐光は、プリズムミラー52によって反射され、誘電体53を透過してハーフミラー51に再度入力される。本実施形態においては、第1光路は、ハーフミラー51とプリズムミラー52との間を往復する経路である。
【0023】
第2分岐光は、プリズムミラー54によって反射され、再度ハーフミラー51に入力される。本実施形態において、第2光路は、ハーフミラー51とプリズムミラー54との間を往復する経路である。本実施形態においては、第2光路を経由した第2分岐光に対して第1光路を経由した第1分岐光が1ビット遅延するように、第1光路長と第2光路長との差、および、誘電体53の屈折率が設定されている。
【0024】
ハーフミラー51は、合波干渉手段としても機能する。第1光路を経由してハーフミラー51に入力された第1分岐光は、第2光路を経由した第2光信号と合波干渉した後に出射されて受信機60のフォトダイオード61において受光される。第2光路を経由してハーフミラー51に入力された第2分岐光は、第1光路を経由した第1分岐光と合波干渉した後に出射されて受信機60のフォトダイオード62において受光される。
【0025】
本実施形態においては、誘電体53は、第2光路の平均屈折率よりも高い屈折率を有する透明媒質からなる。したがって、誘電体53を伝播する場合、第2光路を伝播する場合に比べて屈折率に反比例して波長が短くなる。そのため、第1分岐光の広がり角を抑制することができる。また、屈折率に比例して伝播速度が遅くなる。この二つの性質を利用して、誘電体53で遅延量を設けつつ、合波干渉の際の第1分岐光と第2分岐光とのビーム径の不一致を抑制することができる。その結果、消光比の劣化を抑制することができる。
【0026】
図6は、本実施形態の効果について説明するための図である。本実施形態によれば、図6で説明されるように、入力光のビーム径にかかわりなく、消光比の劣化を抑制することができる。それにより、入力光のビーム径を小さくすることができる。その結果、デバイスの大型化を抑制することができる。
【0027】
以下、誘電体53の具体例について説明する。第1光路(長路)の長さをL1、第2光路(短路)の長さをL2、誘電体53を第1分岐光が伝播する距離をLnとし、空気中の屈折率をnair、誘電体53の屈折率をnglassとすれば、復調器50に必要な遅延量Delayは、
と表される。なお、cは真空中の光速を表す。
【0028】
一方、信号光入力ファイバから出射された光の等位相波面をコリメートレンズで調整した直後(Z=0)のビーム径をD0、この界面から伝播方向にz離れた観測地点でのビーム径Dzは、z=0で理想的な平面ガウシアンビームに調整した場合には、
と表すことができる。ここで、λは入力信号光の波長である。
【0029】
伝播距離L1およびL2が、図7で説明されるフレネル領域とフラウンフォーファ領域との境界の目安となるD02/λより十分に大きい場合には、広がり角θが一定値に近づき、
となる。nは媒質の屈折率を示す。
【0030】
この場合のビーム径Dzは、
と表すことができるため、第1光路(長路)と第2光路(短路)を伝播後のビーム径D1、D2は、
と表すことができる。
【0031】
式(2)のビーム径D1と式(3)のビーム径D2とが等しくなるように第1光路長と第2光路長との差、および、誘電体53の屈折率を設定することによって、ビーム径の不一致をゼロにすることができる。それにより、消光比の劣化を抑制することができる。なお、図4を参照して、ビーム径の不一致を0.3%以下にすることによって、消光比を48dB程度まで向上させることができる。この場合、システム全体で必要な消光比を30dB以下とすれば、十分な効果が得られる。
【0032】
(第2の実施形態)
図8は、第2の実施形態に係る復調器50aの詳細を説明するためのブロック図である。図8を参照して、復調器50aにおいては、第2光路の途中に誘電体55が配置されている。ハーフミラー51において分岐した第2分岐光は、プリズムミラー54によって反射され、誘電体55を透過してハーフミラー51に再度入力される。本実施形態においては、第2光路を経由した第2分岐光に対して第1光路を経由した第1分岐光が1ビット遅延するように、第1光路長と第2光路長との差、および、誘電体53および誘電体55の屈折率が設定されている。このように、第2光路に誘電体を配置してもよい。
【0033】
本実施形態においても、誘電体53は、第2光路の平均屈折率よりも高い屈折率を有する透明媒質からなる。それにより、誘電体53で遅延量を設けつつ、合波干渉の際の第1分岐光と第2分岐光とのビーム径の不一致を抑制することができる。その結果、消光比の劣化を抑制することができる。
【0034】
(第3の実施形態)
図9は、第3の実施形態に係る復調器50bの詳細を説明するためのブロック図である。図9を参照して、復調器50bは、マッハツェンダ型の復調器である。図9を参照して、復調器50aは、ハーフミラー71、ミラー72、誘電体73、ミラー74、およびハーフミラー75を備える。
【0035】
ハーフミラー71は、入力される光を分岐する分岐手段として機能する。ハーフミラー71は、入力された光を、第1光路を経由する第1分岐光と第2光路を経由する第2分岐光とに分岐する。第1分岐光は、ミラー72によって反射し、誘電体73を透過してミラー74によって反射し、ハーフミラー75に入力される。したがって、第1光路は、ハーフミラー71から、ミラー72、誘電体73、およびミラー74を経由してハーフミラー75までの経路である。
【0036】
第2分岐光は、ミラー72、誘電体73およびミラー74を経由せずにハーフミラー75に入力される。第2光路は、ハーフミラー71とプリズムミラー74との間の経路である。本実施形態においては、第2光路を経由した第2分岐光に対して第1光路を経由した第1分岐光が1ビット遅延するように、第1光路長と第2光路長との差、および、誘電体73の屈折率が設定されている。
【0037】
ハーフミラー75は、合波干渉手段として機能する。第1光路を経由してハーフミラー75に入力された第1分岐光は、第2光路を経由した第2光信号と合波干渉した後に出射されて受信機60のフォトダイオード61において受光される。第2光路を経由してハーフミラー75に入力された第2分岐光は、第1光路を経由した第1分岐光と合波干渉した後に出射されて受信機60のフォトダイオード62において受光される。
【0038】
本実施形態においては、誘電体73は、第2光路の平均屈折率よりも高い屈折率を有する透明媒質からなる。それにより、誘電体73で遅延量を設けつつ、合波干渉の際の第1分岐光と第2分岐光とのビーム径の不一致を抑制することができる。その結果、消光比の劣化を抑制することができる。
【0039】
(第4の実施形態)
図10は、第4の実施形態に係る復調器50cのブロック図である。図10を参照して、復調器50cは、第1〜第3の実施形態に係る復調器が2つ(復調器50a1および復調器50a2)設けられた構造を有する。例えば、ハーフミラー58を用いて2つに分岐された光信号が各復調器に入力される。
【0040】
スキュー調整は復調器50a1と復調器50a2とに入力される光信号の光周波数(例えば、約200THz)における相対的位相差が0度になるように調整される。
【0041】
復調器50a1においては、第1光路と第2光路とが合波干渉される位置での光路長差が1ビットでかつ光周波数での位相差が−1/4πになるように設定される。復調器50a2にいては、第1光路と第2光路とが合波される位置での光路長差が1ビットでかつ光周波数での位相差が+1/4πになるように設定される。
【0042】
本実施例に係る復調器50cは、4相差動位相変調(DQPSK:Differential Quadrature Phase Shift Keying)された信号を復調する。このように、第1〜第3の実施形態に係る復調器は、DQSPK信号の復調器として用いることができる。
【実施例】
【0043】
(実施例)
実施例として、40GHzのFSR(自由スペクトル幅)の復調器で入射ビーム径を50μmとする場合の設計例を示す。第2光路(短路)の全長を、空気中で25mmとする。この場合の観測点でのビーム径は式(3)より250μmである。第1光路には、屈折率1.45で厚さ10mmの誘電体を配置する。第1光路の全長は、28mmとする。この場合、式(2)よりビーム径は250μmで、式(1)より、遅延量は25psecとなる。
【0044】
(比較例)
比較例では、誘電体を配置せず、第1光路の遅延量を空気中の伝播距離によって設ける。この場合、第1光路の全長は32.5mmとなり、合波時のビーム径D1は、325μmとなる。したがって、第2分岐光とのビーム径の比は、23.1%となる。この場合、消光比は11dB程度まで劣化する。
【0045】
図11は、以上の結果を説明するための図である。図11を参照して、比較例においてはビーム径の不一致が大きくなるのに対して、実施例ではビーム径の不一致が抑制される。以上のことから、第1光路に第2光路の平均屈折率以上の屈折率を有する誘電体を配置することによって、ビーム径の不一致が抑制され、消光比の劣化が抑制されることが確認される。
【0046】
以上、本発明の実施形態および実施例について詳述したが、本発明は係る特定の実施形態または実施例に限定されるものではなく、特許請求の範囲に記載された本発明の要旨の範囲内において、種々の変形・変更が可能である。
【符号の説明】
【0047】
10 光源
20 位相変調器
30 波長合波器
40 波長分波器
50 復調器
51 ハーフミラー
52 プリズムミラー
53 誘電体
54 プリズムミラー
60 受信機
61,62 フォトダイオード
100 光伝送システム
【技術分野】
【0001】
本発明は、復調器に関する。
【背景技術】
【0002】
復調器は、1ビット差の光の位相差を利用して信号を復調するために、光を分岐し1ビットに相当する時間差を設けて再び合波する(例えば、特許文献1参照)。マイクロオプティクスでは、空間を伝播する時間に差を設ける。この場合、空間を伝播する光は、回折によりビーム径が広がる。伝播する光は、波長が長い方が回折の影響を受けやすく、ビーム径が小さい方が回折の影響を受けやすい。
【0003】
しかしながら、光ファイバ通信に使用される波長には規定があり、自由に波長を選択することができない。そこで、ビームの広がりを抑えるために、ビーム径を大きくすることによって、並行光を維持できる距離を長くして対応することが考えられる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2007−67955号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、ビーム径が大きくなると、光学エレメントが大きくなってしまう。またファイバ端面とレンズの距離を大きくしなくてはならず、デバイス全体が大型化してしまう。
【0006】
近年、通信モジュールは小型化してきておりデバイスの小型化に強い要求がある。一方、小さいビーム径で復調器を構成して必要な遅延を設けるために伝播距離が違う光を合波する場合、ビーム径が異なるために光のパワーを0にしたい場合にも残留光が発生してしまう。それにより、オンオフ比である消光比を劣化させる要因になる。
【0007】
復調器において、消光比の劣化はそのままノイズの増加につながる。その結果、要求仕様により規定される重要な性能数値になる。また、異なるビーム径を一致させるためにレンズ等を利用した場合、位相波面が合波する二つのビームで異なってしまい、同様に消光比を劣化させる。したがって、細いビームを使い、ビーム径を一致させ、かつ位相波面も一致させることが求められている。
【0008】
本発明は上記課題に鑑みなされたものであり、デバイスの大型化を抑制しつつ消光比の劣化を抑制することができる復調器を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記課題を解決するために、明細書開示の復調器は、差動位相変調光信号を第1分岐光と第2分岐光とに分岐して第1分岐光を第1光路に出射し、第2分岐光を第2光路に出射する分岐手段と、記第1光路上に配置され、第2光路の平均屈折率よりも高い屈折率を有する第1誘電体と、第1光路を経由した第1分岐光と第2光路を経由した第2分岐光とを合波干渉させる合波干渉手段と、を備え、第2光路を経由した第2分岐光に対して第1光路を経由した第1分岐光が1ビット遅延するように、第1光路長と第2光路長との差、および、第1誘電体の屈折率が設定されているものである。
【発明の効果】
【0010】
明細書開示の復調器によれば、大型化を抑制しつつ消光比の劣化を抑制することができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【図1】第1の実施形態に係る復調器を含む差動位相変調光伝送システムの全体構成を説明するブロック図である。
【図2】光の回折による広がりについて説明するための図である。
【図3】ビーム径が異なる2つの光を干渉させた場合の残留光分布を説明するための図である。
【図4】干渉させる2つの光のビーム径の不一致(%)と消光比との関係を説明するための図である。
【図5】入力光のビーム径と伝播距離とビーム径の広がりとの関係の一例を説明するための図である。
【図6】第1の実施形態に係る復調器の詳細を説明するためのブロック図である。
【図7】フレネル領域とフラウンフォーファ領域との境界について説明するための図である。
【図8】第2の実施形態に係る復調器の詳細を説明するためのブロック図である。
【図9】第3の実施形態に係る復調器の詳細を説明するためのブロック図である。
【図10】第4の実施形態に係る復調器のブロック図である。
【図11】実施例および比較例の結果を説明するための図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、図面を参照しつつ、本発明の実施形態について説明する。
【0013】
(第1の実施形態)
図1(a)は、第1の実施形態に係る復調器50を含む差動位相変調(DPSK:Differential Phase Shift Keying)光伝送システム100の全体構成を説明するためのブロック図である。図1(b)は、差動位相変調信号を説明するための図である。
【0014】
図1(a)を参照して、光伝送システム100は、複数の光源10、複数の位相変調器20、波長合波器30、波長分波器40および複数の復調器50、および複数の受信機60を含む。
【0015】
各光源10は、互いに異なる波長の光信号を出射する。位相変調器20は、光源10から出射された光信号を受信する。位相変調器20は、受信した光信号から図1(b)で説明されるような位相変調信号を生成する。各位相変調器20によって生成された位相変調信号は、波長合波器30に入力される。波長合波器30は、入力された複数の位相変調信号を合波する。合波された位相変調信号は、光伝送路等を介して波長分波器40に入力される。
【0016】
復調器50は、分波された位相変調信号を復調する。この場合、復調器50は、位相変調信号とその変調レートの1周期(1ビット)遅延させた信号とを干渉させることによって、位相変調信号を復調する。各復調器50によって合波干渉された信号は、受信機60によって受信される。以上の過程により、DPSK光伝送が行われる。
【0017】
ここで、復調器50における分岐光のビーム径の広がりについて説明する。図2(a)を参照して、光信号を、実線で描かれる第1分岐光と破線で描かれる第2分岐光とに分岐し、第1分岐光を第2分岐光に対して1ビット遅延させるものとする。
【0018】
ところで、図2(b)で説明されるように、第1分岐光および第2分岐光のいずれも、伝播とともにビーム径が大きくなる。第1分岐光の伝播距離は長くなることから、第2分岐光に対して第1分岐光のビーム径が大きくなってしまう。そこで、図2(c)で説明されるようにビーム径の広がりを抑制しようとすれば、入力される光のビーム径を大きくするか波長を短くする必要がある。しかしながら、ビーム径を大きくすると、デバイスが大型化してしまう。そこで、入力される光のビーム径を小さくするか波長を長くすると、図2(d)で説明されるように、ビーム径の広がりが大きくなってしまう。
【0019】
図3(a)〜図3(c)は、ビーム径が異なる2つの光を干渉させた場合の残留光分布を説明するための図である。図3(a)で説明されるように、ビーム径が異なる2つの光を干渉させるとする。この場合、図3(b)および図3(c)で説明されるように、残留光に分布が生じ、複数のフェーズが発生する。この場合、消光比が劣化してしまう。
【0020】
図4は、干渉させる2つの光のビーム径不一致(%)と消光比との関係を説明するための図である。図4で説明されるように、ビーム径の不一致が大きくなると、消光比が劣化する。
【0021】
そこで、本実施形態においては、分岐光を1ビット遅延させるための光路途中に誘電体を配置することによって、ビーム径の広がりを抑制する。図5は、本実施形態に係る復調器50の詳細を説明するためのブロック図である。復調器50は、マイケルソン型の復調器である。図5を参照して、復調器50は、ハーフミラー51、プリズムミラー52、誘電体53およびプリズムミラー54を備える。
【0022】
ハーフミラー51は、入力される光を分岐する分岐手段として機能する。ハーフミラー51は、入力された光を、第1光路を経由する第1分岐光と第2光路を経由する第2分岐光とに分岐する。第1分岐光は、プリズムミラー52によって反射され、誘電体53を透過してハーフミラー51に再度入力される。本実施形態においては、第1光路は、ハーフミラー51とプリズムミラー52との間を往復する経路である。
【0023】
第2分岐光は、プリズムミラー54によって反射され、再度ハーフミラー51に入力される。本実施形態において、第2光路は、ハーフミラー51とプリズムミラー54との間を往復する経路である。本実施形態においては、第2光路を経由した第2分岐光に対して第1光路を経由した第1分岐光が1ビット遅延するように、第1光路長と第2光路長との差、および、誘電体53の屈折率が設定されている。
【0024】
ハーフミラー51は、合波干渉手段としても機能する。第1光路を経由してハーフミラー51に入力された第1分岐光は、第2光路を経由した第2光信号と合波干渉した後に出射されて受信機60のフォトダイオード61において受光される。第2光路を経由してハーフミラー51に入力された第2分岐光は、第1光路を経由した第1分岐光と合波干渉した後に出射されて受信機60のフォトダイオード62において受光される。
【0025】
本実施形態においては、誘電体53は、第2光路の平均屈折率よりも高い屈折率を有する透明媒質からなる。したがって、誘電体53を伝播する場合、第2光路を伝播する場合に比べて屈折率に反比例して波長が短くなる。そのため、第1分岐光の広がり角を抑制することができる。また、屈折率に比例して伝播速度が遅くなる。この二つの性質を利用して、誘電体53で遅延量を設けつつ、合波干渉の際の第1分岐光と第2分岐光とのビーム径の不一致を抑制することができる。その結果、消光比の劣化を抑制することができる。
【0026】
図6は、本実施形態の効果について説明するための図である。本実施形態によれば、図6で説明されるように、入力光のビーム径にかかわりなく、消光比の劣化を抑制することができる。それにより、入力光のビーム径を小さくすることができる。その結果、デバイスの大型化を抑制することができる。
【0027】
以下、誘電体53の具体例について説明する。第1光路(長路)の長さをL1、第2光路(短路)の長さをL2、誘電体53を第1分岐光が伝播する距離をLnとし、空気中の屈折率をnair、誘電体53の屈折率をnglassとすれば、復調器50に必要な遅延量Delayは、
と表される。なお、cは真空中の光速を表す。
【0028】
一方、信号光入力ファイバから出射された光の等位相波面をコリメートレンズで調整した直後(Z=0)のビーム径をD0、この界面から伝播方向にz離れた観測地点でのビーム径Dzは、z=0で理想的な平面ガウシアンビームに調整した場合には、
と表すことができる。ここで、λは入力信号光の波長である。
【0029】
伝播距離L1およびL2が、図7で説明されるフレネル領域とフラウンフォーファ領域との境界の目安となるD02/λより十分に大きい場合には、広がり角θが一定値に近づき、
となる。nは媒質の屈折率を示す。
【0030】
この場合のビーム径Dzは、
と表すことができるため、第1光路(長路)と第2光路(短路)を伝播後のビーム径D1、D2は、
と表すことができる。
【0031】
式(2)のビーム径D1と式(3)のビーム径D2とが等しくなるように第1光路長と第2光路長との差、および、誘電体53の屈折率を設定することによって、ビーム径の不一致をゼロにすることができる。それにより、消光比の劣化を抑制することができる。なお、図4を参照して、ビーム径の不一致を0.3%以下にすることによって、消光比を48dB程度まで向上させることができる。この場合、システム全体で必要な消光比を30dB以下とすれば、十分な効果が得られる。
【0032】
(第2の実施形態)
図8は、第2の実施形態に係る復調器50aの詳細を説明するためのブロック図である。図8を参照して、復調器50aにおいては、第2光路の途中に誘電体55が配置されている。ハーフミラー51において分岐した第2分岐光は、プリズムミラー54によって反射され、誘電体55を透過してハーフミラー51に再度入力される。本実施形態においては、第2光路を経由した第2分岐光に対して第1光路を経由した第1分岐光が1ビット遅延するように、第1光路長と第2光路長との差、および、誘電体53および誘電体55の屈折率が設定されている。このように、第2光路に誘電体を配置してもよい。
【0033】
本実施形態においても、誘電体53は、第2光路の平均屈折率よりも高い屈折率を有する透明媒質からなる。それにより、誘電体53で遅延量を設けつつ、合波干渉の際の第1分岐光と第2分岐光とのビーム径の不一致を抑制することができる。その結果、消光比の劣化を抑制することができる。
【0034】
(第3の実施形態)
図9は、第3の実施形態に係る復調器50bの詳細を説明するためのブロック図である。図9を参照して、復調器50bは、マッハツェンダ型の復調器である。図9を参照して、復調器50aは、ハーフミラー71、ミラー72、誘電体73、ミラー74、およびハーフミラー75を備える。
【0035】
ハーフミラー71は、入力される光を分岐する分岐手段として機能する。ハーフミラー71は、入力された光を、第1光路を経由する第1分岐光と第2光路を経由する第2分岐光とに分岐する。第1分岐光は、ミラー72によって反射し、誘電体73を透過してミラー74によって反射し、ハーフミラー75に入力される。したがって、第1光路は、ハーフミラー71から、ミラー72、誘電体73、およびミラー74を経由してハーフミラー75までの経路である。
【0036】
第2分岐光は、ミラー72、誘電体73およびミラー74を経由せずにハーフミラー75に入力される。第2光路は、ハーフミラー71とプリズムミラー74との間の経路である。本実施形態においては、第2光路を経由した第2分岐光に対して第1光路を経由した第1分岐光が1ビット遅延するように、第1光路長と第2光路長との差、および、誘電体73の屈折率が設定されている。
【0037】
ハーフミラー75は、合波干渉手段として機能する。第1光路を経由してハーフミラー75に入力された第1分岐光は、第2光路を経由した第2光信号と合波干渉した後に出射されて受信機60のフォトダイオード61において受光される。第2光路を経由してハーフミラー75に入力された第2分岐光は、第1光路を経由した第1分岐光と合波干渉した後に出射されて受信機60のフォトダイオード62において受光される。
【0038】
本実施形態においては、誘電体73は、第2光路の平均屈折率よりも高い屈折率を有する透明媒質からなる。それにより、誘電体73で遅延量を設けつつ、合波干渉の際の第1分岐光と第2分岐光とのビーム径の不一致を抑制することができる。その結果、消光比の劣化を抑制することができる。
【0039】
(第4の実施形態)
図10は、第4の実施形態に係る復調器50cのブロック図である。図10を参照して、復調器50cは、第1〜第3の実施形態に係る復調器が2つ(復調器50a1および復調器50a2)設けられた構造を有する。例えば、ハーフミラー58を用いて2つに分岐された光信号が各復調器に入力される。
【0040】
スキュー調整は復調器50a1と復調器50a2とに入力される光信号の光周波数(例えば、約200THz)における相対的位相差が0度になるように調整される。
【0041】
復調器50a1においては、第1光路と第2光路とが合波干渉される位置での光路長差が1ビットでかつ光周波数での位相差が−1/4πになるように設定される。復調器50a2にいては、第1光路と第2光路とが合波される位置での光路長差が1ビットでかつ光周波数での位相差が+1/4πになるように設定される。
【0042】
本実施例に係る復調器50cは、4相差動位相変調(DQPSK:Differential Quadrature Phase Shift Keying)された信号を復調する。このように、第1〜第3の実施形態に係る復調器は、DQSPK信号の復調器として用いることができる。
【実施例】
【0043】
(実施例)
実施例として、40GHzのFSR(自由スペクトル幅)の復調器で入射ビーム径を50μmとする場合の設計例を示す。第2光路(短路)の全長を、空気中で25mmとする。この場合の観測点でのビーム径は式(3)より250μmである。第1光路には、屈折率1.45で厚さ10mmの誘電体を配置する。第1光路の全長は、28mmとする。この場合、式(2)よりビーム径は250μmで、式(1)より、遅延量は25psecとなる。
【0044】
(比較例)
比較例では、誘電体を配置せず、第1光路の遅延量を空気中の伝播距離によって設ける。この場合、第1光路の全長は32.5mmとなり、合波時のビーム径D1は、325μmとなる。したがって、第2分岐光とのビーム径の比は、23.1%となる。この場合、消光比は11dB程度まで劣化する。
【0045】
図11は、以上の結果を説明するための図である。図11を参照して、比較例においてはビーム径の不一致が大きくなるのに対して、実施例ではビーム径の不一致が抑制される。以上のことから、第1光路に第2光路の平均屈折率以上の屈折率を有する誘電体を配置することによって、ビーム径の不一致が抑制され、消光比の劣化が抑制されることが確認される。
【0046】
以上、本発明の実施形態および実施例について詳述したが、本発明は係る特定の実施形態または実施例に限定されるものではなく、特許請求の範囲に記載された本発明の要旨の範囲内において、種々の変形・変更が可能である。
【符号の説明】
【0047】
10 光源
20 位相変調器
30 波長合波器
40 波長分波器
50 復調器
51 ハーフミラー
52 プリズムミラー
53 誘電体
54 プリズムミラー
60 受信機
61,62 フォトダイオード
100 光伝送システム
【特許請求の範囲】
【請求項1】
差動位相変調光信号を第1分岐光と第2分岐光とに分岐して前記第1分岐光を第1光路に出射し、前記第2分岐光を第2光路に出射する分岐手段と、
前記第1光路上に配置され、前記第2光路の平均屈折率よりも高い屈折率を有する第1誘電体と、
前記第1光路を経由した前記第1分岐光と前記第2光路を経由した前記第2分岐光とを合波干渉させる合波干渉手段と、を備え、
前記第2光路を経由した前記第2分岐光に対して前記第1光路を経由した前記第1分岐光が1ビット遅延するように、前記第1光路長と前記第2光路長との差、および、前記第1誘電体の屈折率が設定されていることを特徴とする復調器。
【請求項2】
前記第2光路上に配置され、前記第1誘電体と異なる屈折率を有する第2誘電体を備え、
前記第2光路を経由した前記第2分岐光に対して前記第1光路を経由した前記第1分岐光が1ビット遅延するように、前記第1光路長と前記第2光路長との差、および、前記第1誘電体および前記第2誘電体の屈折率が設定されていることを特徴とする請求項1記載の復調器。
【請求項3】
前記合波干渉手段における前記第1分岐光と前記第2分岐光とのビーム径の不一致は、0.3%以下であることを特徴とする請求項1または2記載の復調器。
【請求項1】
差動位相変調光信号を第1分岐光と第2分岐光とに分岐して前記第1分岐光を第1光路に出射し、前記第2分岐光を第2光路に出射する分岐手段と、
前記第1光路上に配置され、前記第2光路の平均屈折率よりも高い屈折率を有する第1誘電体と、
前記第1光路を経由した前記第1分岐光と前記第2光路を経由した前記第2分岐光とを合波干渉させる合波干渉手段と、を備え、
前記第2光路を経由した前記第2分岐光に対して前記第1光路を経由した前記第1分岐光が1ビット遅延するように、前記第1光路長と前記第2光路長との差、および、前記第1誘電体の屈折率が設定されていることを特徴とする復調器。
【請求項2】
前記第2光路上に配置され、前記第1誘電体と異なる屈折率を有する第2誘電体を備え、
前記第2光路を経由した前記第2分岐光に対して前記第1光路を経由した前記第1分岐光が1ビット遅延するように、前記第1光路長と前記第2光路長との差、および、前記第1誘電体および前記第2誘電体の屈折率が設定されていることを特徴とする請求項1記載の復調器。
【請求項3】
前記合波干渉手段における前記第1分岐光と前記第2分岐光とのビーム径の不一致は、0.3%以下であることを特徴とする請求項1または2記載の復調器。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【公開番号】特開2010−262239(P2010−262239A)
【公開日】平成22年11月18日(2010.11.18)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−114868(P2009−114868)
【出願日】平成21年5月11日(2009.5.11)
【出願人】(000005223)富士通株式会社 (25,993)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成22年11月18日(2010.11.18)
【国際特許分類】
【出願日】平成21年5月11日(2009.5.11)
【出願人】(000005223)富士通株式会社 (25,993)
【Fターム(参考)】
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