説明

循環する癌細胞におけるHer−2/neuタンパク質のレベルの上昇の検出および処置

血液サンプル中の循環する癌細胞におけるHer−2/neuタンパク質の発現が、この血液サンプルから癌細胞を単離し、次いで、この単離された癌細胞において感度の高いHer−2/neuイムノアッセイを実施することによって、検出される。陽性の結果は、血液サンプル中の癌細胞におけるHer−2/neuの発現を示す。この方法は、Her−2/neuを標的化する抗癌剤(例えばトラスツズマブ(HERCEPTIN))による処置から利益を得る可能性の高い癌患者を同定するために使用され得る。

【発明の詳細な説明】
【背景技術】
【0001】
(発明の背景)
現在、乳癌患者の25〜30%しか、HERCEPTIN治療を受けていない。このHERCEPTIN治療は、原発性腫瘍の生検におけるHer−2/neu(Her2/neu;HER2;c−erbB−2およびerbB2とも呼ばれる)タンパク質もしくはHer−2/neu遺伝子の上昇したレベルの知見にに基づく。文献におけるデータは、その原発性生検においてHer2/neuについて陰性の結果を有する有意な数(試験した26人中11人)の女性が、その循環する癌細胞においてHer2/neu陽性性を発症するようになることを示唆する(非特許文献1;非特許文献2)。また、乳癌を有する女性の考慮すべき人数は、Her−2−neu状態について検査するために容易に利用可能である生検材料を有さない。Hayesらによる論文(非特許文献1)およびMengらによる論文(非特許文献2)において使用されるアプローチは、面倒でありかつ時間がかかり、迅速でありかつより簡便な検査(特に、医師のオフィスにおいて行われ得る検査)が、必要とされている。Hayesらの方法は、フローサイトメトリーアッセイを必要とし、そしてMengらの方法は、蛍光インサイチュハイブリダイゼーション(FISH)を必要とする。これらは、本発明において記載されるようなHer−2/neuタンパク質の(例えば、ECLによる)直接検出よりもよりも複雑であり、かつ時間がかかる。
【0002】
(Her2/neuおよびHERCEPTIN処置)
Her2/neuオンコジーンの過剰発現は、乳癌を有する女性由来の生検サンプルの約25%において観察され、そして予後の不良に関係している。トラスツズマブ(HERCEPTIN)は、Her2/neuレセプターの細胞外ドメイン(ECD)を指向し、そしてこのレセプターを過剰発現するヒト乳癌細胞の増殖を阻害する、ヒト化モノクローナル抗体である(最近の概説については、非特許文献3を参照されたい)。乳癌細胞におけるHer−2/neuのタンパク質発現は、SK−BR−3と呼ばれるHer−2/neu過剰発現ヒト乳癌細胞株の場合と同様に、細胞1個あたり500,000分子以上のレベルに容易に達し得る。Her2/neuについての現行の検査は、このタンパク質の過剰発現についてまたは遺伝子増幅についての患者生検の組織切片の検査に基づく。遺伝子増幅もしくはタンパク質についての少なくとも2+の免疫染色を有する女性において、1種の薬剤トラスツズマブ、またはパクリタキセルのような化学治療剤と組み合わせたトラスツズマブによる、有意な反応が実証されている。Her−2/neuを標的化し得る他の薬剤は、開発中であり、そして本発明について、HERCEPTINと類似する適用性を有する。これらの薬剤としては、以下が挙げられるが、これらに限定されない:Genentechによって開発されているOMNITARG(ペルツズマブ(pertuzumab));GlaxoSmithKline(非特許文献4)によって開発されているGW−572016;Pfizerによって開発されているCP−654577(非特許文献5);Wyethによって開発されているHKI−272(非特許文献6)。Her−2/neuを含む他の抗癌剤の間の特異性は、JanmaatおよびGiaccone,2003年(非特許文献7)において記載される。乳癌に加えて、Her−2/neuは、卵巣癌腫を含む他の癌腫において過剰発現される。
【0003】
(ECL)
電気化学発光(electrochemiluminescence)は、電気化学的に刺激される際に光を発するように設計されている標識を用いるプロセスである(ECLの概説については非特許文献8を参照のこと;また、非特許文献9も参照のこと)。これらの標識は、適切な装置(例えば、BioVerisによって開発された装置)と共に、種々の生物学的分子(例えば、タンパク質、mRNAおよびDNA)を検出する非常に感度の高い方法を提供する。Martinら(2003年,特許文献1)は、ECLベースの酵素イムノアッセイを記載する;しかし、血液中の循環する癌細胞におけるHer−2/neuのようなタンパク質の検出への適用は、記載されていない。
【0004】
(ECLおよび真核生物細胞全体)
真核生物細胞全体を用いるECL方法は、Chinnら(特許文献2)によって開示されている。しかし、Chinnらによる方法は、細胞表面上のレセプター分子の相対数の検出よりもむしろ、細胞表面抗体の結合親和性を測定するための方法である。また、Chinnらによる方法は、多数(1mlあたり167,000個の細胞)の細胞の精製細胞集団で開始される。このことは、全血において見出される不純物の混合物から最初に選択された細胞集団を単離することとは対照的である。ここでこの選択された細胞集団は、少数(代表的に、1mlあたり1〜200個の細胞;非特許文献1)であってもよい。
【0005】
(Her−2/neuもしくは関連分子についてのアッセイ)
HERCEPTIN(トラスツズマブ)を用いる処置について患者を選択するための、現在、米国食品医薬品局(FDA)に認可されているアッセイは、以下である:(1)Her−2/neuタンパク質過剰発現についての免疫組織化学(DAKOによるHERCEPTEST)、および(2)Her−2/neu遺伝子の増幅についてのFISH(蛍光インサイチュハイブリダイゼーション)アッセイ(VYSISによるPATHVISIONキット)。これらの検査は、HERCEPTINに反応し、これによって利益を得る患者を予測することが示されている(非特許文献10)。しかし、これらのアッセイはどちらも、以下の4つの制限を有する:
(1)これらのアッセイは、生検組織を必要とする。全ての患者が、検査のために容易に利用可能な保存された材料を有するわけではない。このような場合、唯一の選択肢は、腫瘍生検を得ることである。血液のサンプルのアッセイは、よりずっと簡便であり、実施がより容易であり、かつより迅速な答えを提供する可能性を有する。
(2)非常に多くの場合、乳癌の最初の診断の時点で採取された生検サンプルが、何年も後になって、患者がこの疾患を再発した際に使用される。したがって、古い組織材料を検査するアッセイを用いると、患者のHer−2/neuに対する腫瘍状態は、この患者をHERCEPTINで処置するか否かの臨床的決定を行う時点の何年も前の時点において決定される。文献におけるデータは、その原発性生検においてHer2/neuについて陰性の結果を有する女性の有意な数(試験した26人中11人)が、その循環する癌細胞においてHer2/neu陽性性を発症するようになる(したがって、HERCEPTIN処置の候補である)ことを示唆する(非特許文献1;非特許文献2)。血液サンプルからのこのような循環する乳癌細胞に対するそのHer−2/neu状態のアッセイは、現行のHer−2/neu状態のより実際的かつより迅速な決定を提供する。
(3)これらのアッセイにおけるスコアリングの主観性に起因して、両方の型のアッセイについて、近年、地方の研究室対中央研究室で、結果についての有意な量の不一致が示されており、そして25%もの高い擬陽性率が生じ得、いくつかの地方研究室において見出されている(非特許文献10)。より一般的な免疫組織化学検査を用いると、FISHと比較して推定14%〜17%の擬陰性率が存在する(非特許文献10;非特許文献11)。免疫組織化学を用いた14%〜17%の擬陰性率は、米国で年間数千人ものこのような女性が、HERCEPTIN治療のさらなる候補であることを示す。
(4)最後に、これらの方法は、(a)採取された場所における保管から回収されるべき組織ブロック(tissue block)、(b)薄切されるべき切片、(c)広範囲の処理、および最も多くの場合(d)訓練された人材による時間がかかりかつ主観的なスコアリング、を必要とするので、遅い。サンプルをスコアリングするために必要である、免疫組織化学による細胞染色の程度を示すため、または陽性FISH位置の数を示すために使用される、これらの手動分析は、面倒である。処置する医師へのより速いフィードバックを提供するより迅速なアッセイが、望ましい。さらに、FISHは、非常に高価であり、かつ広範に利用可能なわけではない(非特許文献10)。
【0006】
Koski(1998年,特許文献3)は、Her−2/neuタンパク質の特異的部分の変性したエピトープを認識するモノクローナル抗体を用いる、乳癌細胞および乳癌組織のHer−2/neuタンパク質についての免疫組織化学アッセイを記載する。しかし、これらのアッセイは、乳癌細胞の純粋な集団の設定における、または乳癌組織におけるような、非常に高い割合の乳癌細胞におけるアッセイである。Koskiは、血液のような複合マトリックス中の少数のHer−2/neu発現性乳癌細胞の検出の場合を指向しない。
【0007】
Slamonら(1990年,特許文献4)は、Her−2/neu遺伝子の増幅についてのアッセイおよび患者のスクリーニングにおいての使用を記載する。Her−2/neuタンパク質を検出するためのアッセイの例は、与えられていない。さらに、この特許は、血液のような複合マトリックス中の少数のHer−2/neu発現性乳癌細胞の検出の場合を指向しない。Her−2/neuタンパク質に対するモノクローナル抗体(例えばHERCEPTIN)による乳癌患者の処置のための患者の同定のための適用は、示されていない。
【0008】
Carneyら(1995年,特許文献5)は、neu関連タンパク質であるp100(ヒトneu遺伝子産物の細胞外ドメイン(ECD)からなる全長Her−2/neuタンパク質の短縮型からなる)の検出のためのヒト血清もしくはヒト血漿のイムノアッセイを記載する。このCarney特許は、細胞関連Her−2/neuタンパク質もしくは全長Her−2/neuタンパク質の、特に全血のような複合混合物中の検出を指向しない。Carneyに基づく、(オンコジーンに由来する)市販ベースのアッセイは、存在し得る少数(pg量)のHer−2/neuタンパク質を検出するために使用されるためには感度が低すぎる(血清1mLあたり1.5ngの短縮型Her−2/neu)。存在し得る少数(pg量)のHer−2/neuタンパク質が、本発明に従って検出され得、そして本発明に従う検出のために必要とされる。本発明におけるように、細胞関連Her−2/neuについてのアッセイは、非常に有利である。なぜなら、患者生検組織の免疫組織化学は、HERCEPTIN処置への反応についての、細胞関連発現の予測性を示しているからである。Bursteinらによる最近の報告(非特許文献12)は、短縮型p100タンパク質(HER2 ECD)についての血清アッセイの有用性の制限を示している。Bursteinらは、「HER2 ECDの基線レベルも、治療によるHER2 ECDにおける減少も、1サイクル後のトラスツズマブに対する臨床的反応を予測しない」ことを報告している。HERCEPTINで処置された乳癌患者の研究において、Cobleighら(非特許文献13)は、血清ECDレベルとHERCEPTIN反応状態との間に実証可能な有意な相関は存在しないという、同様の結論に達している。
【0009】
Carneyら(1997年,特許文献6)は、細胞溶解物中の全長p185 Her−2/neuタンパク質を検出するためのイムノアッセイを記載する。しかし、Carneyに基づく市販ベースのELISAアッセイは、本明細書中で記載される適用のために必要とされる少数(pg量)のHer−2/neuタンパク質を検出するために使用するには低すぎる規模の感度を有する。上述のように、Her−2/neuタンパク質の定量のためのこのアッセイは、血清1mLあたり1.5ngの短縮型Her−2/neuであると報告されている。この感度は、全血のような複合混合物中ではより悪いと推定される。さらに、Carneyらは、全血を用いるHer−2/neuアッセイを指向していない。それどころか、短縮型Her−2/neu(p100と呼ばれる)のレベルは、細胞関連成分中ではなく、血液の血漿成分中で検出されている。短縮型タンパク質の血漿レベルを測定するアッセイよりも、本発明におけるアッセイのような細胞関連全長タンパク質を測定するアッセイの方が好ましい理由は、上で考察されている。また、Carneyらは、細胞全体の使用を示さず、細胞溶解物の使用を示している。
【0010】
Hudziakら(1998年,特許文献7)は、哺乳動物の体内で細胞をモノクローナル抗体に曝すことによって、Her−2/neuタンパク質の過剰発現を決定するインビボアッセイを特許請求する。しかし、身体の外で腫瘍細胞をアッセイする方法は、記載されていない。
【0011】
(血液中の循環する癌細胞の単離)
Terstappenら(2002年,特許文献8)は、患者血液サンプルからの乳癌細胞の単離のための、上皮細胞付着分子(EpCAM)に対する抗体を有する免疫磁気ビーズの使用を記載する。Terstappenアッセイは、免疫磁気濃縮とフローサイトメトリー分析および免疫サイトメトリー分析(immunocytometric analysis)とを組み合わせる。しかし、フローサイトメトリーおよび免疫サイトメトリーは、面倒でありかつ時間のかかる技術であるという問題がある。
【特許文献1】米国特許第6,524,865号明細書
【特許文献2】米国特許第6,300,143号明細書
【特許文献3】米国特許第5,783,404号明細書
【特許文献4】米国特許第4,968,603号明細書
【特許文献5】米国特許第5,401,638号明細書
【特許文献6】米国特許第5,604,107号明細書
【特許文献7】米国特許第5,720,937号明細書
【特許文献8】米国特許第6,365,362号明細書
【非特許文献1】Hayes DF,ら,Int J Oncol,2002年,第21巻,p.1111−7
【非特許文献2】Meng Sら,Proc Natl Acad Sci USA,2004年,第101巻,p.9393−98
【非特許文献3】Esteve FJ,The Oncologist,2004年,第9巻(第3補遺),p.4−9
【非特許文献4】Xiaら,Oncogene,2004年,第23巻,p.646−653
【非特許文献5】Barbacciら,Cancer Res,2003年,第63巻,p.4450−4459
【非特許文献6】Rabindranら,Cancer Res,2004年,第64巻,p.3958−65
【非特許文献7】JanmaatおよびGiaccone,The Oncologist,2003年,第8巻,p.576−86
【非特許文献8】Yangら,Biotechnology,1994年,第12巻,p.193−194
【非特許文献9】Blackburnら,Clin Chem,1991年,第37巻,p.1534−1539
【非特許文献10】Fornier M,ら,「HER2 testing and correlation with efficacy of trastuzumab therapy.」,Oncology,2002年,第16巻,p.1340−58
【非特許文献11】Seidmanら,J Clin Oncol,2001年,第19巻,p.2587−95
【非特許文献12】Bursteinら,J Clin Oncol,2003年,第21巻,p.2889−2895
【非特許文献13】Cobleighら,J Clin Oncol,1999年,第9巻,p.2639
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0012】
したがって、循環する乳癌細胞におけるHer−2/neuタンパク質の過剰発現を有する(したがって例えばトラスツズマブのようなHer−2/neu標的化治療から利益を得る可能性の高い)乳癌を有する女性を全血サンプルによって同定するために使用するために十分に感度の高い、迅速かつ簡便なアッセイの医学的実施の需要が存在する。
【課題を解決するための手段】
【0013】
(発明の要旨)
本発明は、血液サンプル中の循環する癌細胞におけるHer−2/neuタンパク質の発現を検出する方法を提供する。この方法は、癌細胞を血液サンプルから単離し、その後、この単離された癌細胞において癌細胞関連Her−2/neuを検出することが可能であるイムノアッセイを実施する工程であって、この工程において、陽性のイムノアッセイ結果は、この癌細胞におけるHer−2/neuの存在を示す工程を包含する。本発明に従うアッセイは、以下:(a)癌細胞関連Her−2/neuを、この血液サンプル1mlあたりHer−2/neuの1/10pgと20pgとの間のレベルで検出可能であること;または(b)血液1mlあたりSK−BR−3細胞100個もしくは100個未満の濃度で血液中にスパイクする場合、SK−BR−3乳癌細胞からHer−2/neuを検出可能であること、によって規定される感度を有する。
【0014】
本発明は、Her−2/neuを標的化する抗癌剤による処置から利益を得る可能性が高い癌患者を同定する方法を提供し、この方法は、上述の検出方法を包含する。このような患者を同定するために使用される場合、この癌細胞含有血液サンプルは、この患者から取り出される。本発明は、このようにして同定された癌患者を処置する方法を提供し、この方法は、Her−2/neu標的化抗癌剤をこの患者に投与する工程を包含する。
【発明を実施するための最良の形態】
【0015】
(発明の詳細な説明)
本明細書中で使用される場合、移行用語(transitional term)「含む(comprising)」は、自由に変更可能である。この用語を用いる特許請求の範囲は、その特許請求の範囲に挙げられている要素に加えて、要素を含み得る。したがって、例えば、特許請求の範囲は、挙げられた要素またはその均等物が存在する限り、その特許請求の範囲に特定に挙げられていない他の工程をも含む方法を言及し得る。
【0016】
本発明は、血液サンプル中の循環する乳癌細胞におけるHer−2/neuタンパク質のレベルを定量するために十分な感度を有する方法を提供し、そしてHERCEPTINもしくはHer−2/neuを標的化する他の薬剤を使用する治療から利益を受ける可能性が高い乳癌を有する女性を同定するための方法を提供する。血液サンプルを検査して、HERCEPTIN治療から利益を受けるさらなる患者を同定するための、簡便で、非常に感度が高くかつ迅速な手段は、乳癌処置分野における重要な進歩である。以下で示されるように、循環する乳癌細胞の表面におけるHer−2/neuタンパク質を検出するための、迅速かつ非常に感度の高い免疫学的アッセイ(例えば電気化学発光(ECL)検出)は、これを達成するために好ましい手段である。
【0017】
本発明は、血液からの循環する癌腫細胞を単離するために使用される高い特異性の手順と、高い感度の特定の免疫学的ベースアッセイ(例えば、ECL)とを組み合わせることに基づく。好ましくは、そして有利にも、免疫磁気ビーズが、本発明の両局面のために使用され、したがって、新規な二重の機能を果たす:免疫磁気ビーズは、血液からの循環する癌細胞を単離しそして精製するために使用され、そして、異なるビーズであっても同じビーズであっても、ECLを実施するための支持相として使用され得、磁石にこれらのビーズを捕獲させ、そして標的抗原をタグ化抗体(例えば、ルテニウムタグ標識化抗体)と共に濃縮することを可能にする。
【0018】
本発明の検出方法の実施形態において、感度レベルは、(a)血液サンプル1mlあたり、Her−2/neuの、1pgと20pgとの間より上、1pgと10pgとの間より上、または1pgと5pgとの間より上である。本発明の検出方法の別の実施形態において、感度レベルは、(b)血液1mlあたりSK−BR−3細胞10個もしくは10個未満の濃度で血液中にスパイクする場合、SK−BR−3乳癌細胞からHer−2/neuを検出可能であることより上である。本発明の検出方法のさらなる実施形態において、感度レベルは、(b)血液1mlあたりSK−BR−3細胞3個もしくは3個未満の濃度で、および血液1mlあたりSK−BR−3細胞1個もしくは1個未満の濃度で、血液中にスパイクする場合でさえ、SK−BR−3乳癌細胞からHer−2/neuを検出可能であることより上である。
【0019】
癌(特に乳癌)を有する患者由来の血液のサンプル(通常、約8〜20mlの範囲)が、採取される。工程としては、以下に説明されるようなものが挙げられる:
1.赤血球の除去
2.正常な白血球のさらなる枯渇のための必要に応じたネガティブ選択。好ましい実施形態は、この工程を包含する。
【0020】
3.循環する癌腫細胞についてのポジティブ選択
4.循環する癌腫細胞からのHer−2/neuタンパク質の検出および定量
(1.赤血球の除去。)
赤血球を除去するために種々の方法が使用可能であり、これらの方法としては、以下が挙げられるが、これらに限定されない:密度に基づく分離(例えば、BECTON DICKINSON BD Vacutainer CPT管への血液の直接的な収集およびその後の遠心分離)、ならびに市販の溶解緩衝液(例えばPURESCRIPT RBC溶解緩衝液(GENTRA,Minneapolis)、FACS溶解溶液(BDIS)、IMMUNOLYSE(COULTER)、OPTILYSE B (IMMUNOTECH)、およびACK溶解緩衝液(BIOSOURCE,Rockville,MD)。
【0021】
好ましい方法は、抗凝固薬(EDTAもしくはクエン酸塩)と共に、BD Vacutainer CPT管を用いる。これらの管は、材料を含み、正確な遠心分離(1,100×g、10分間、スイングアウトバケットローター(swing−out bucket rotor))にかけられる。この遠心分離は、赤血球および好中球の排除を可能にする。遠心分離後、この管の底は、赤血球(erythrocyte、red blood cell)および好中球の細胞ペレットを含む。細胞ペレットの上は、ゲル境界(gel barrier)であり、そしてこのゲル境界の上は、血漿の底にある腫瘍細胞、リンパ球および単球のバンドである。次いで、腫瘍細胞、リンパ球および単球は、ゲル境界の上から容易に回収され得る。この方法は、赤血球のみならず、好中球をも除去するので、好ましい。
【0022】
(2.正常な白血球のさらなる枯渇のためのネガティブ選択。)
本発明の好ましい実施形態は、腫瘍細胞の単離のためのネガティブ選択工程を使用する。ネガティブ選択は、白血球(特にリンパ球および単球)のさらなる枯渇を可能にする。この工程は、白血球抗原(特に共通の白血球抗原であるCD45)と赤血球抗原(例えばグリコホリンA)との両方に対して二重特異的である抗体の使用を包含する。市販されているこのような二重特異性抗体のカクテルは、STEMCELL TECHNOLOGIESから購入可能である(Rosettesepカタログ番号15127およびカタログ番号15167)。このカクテルは、グリコホリンAとヒト造血細胞上の種々の細胞表面抗原(CD2、CD16、CD19、CD36、CD38、CD45、CD66b)とに対する二重特異性抗体を含む。これらの二重特異性抗体の1種以上が、血液収集の前に、BD Vacutainer CPT管に添加される。好ましい実施形態において、1種より多い白血球関連CD分子に対する二重特異性抗体のカクテルが、使用される。血液がCPT vacutainer管内に導入される場合、この二重特異性抗体は、イムノロゼット(immunorosette)を形成し、このイムノロゼットの各々は、白血球および多くの赤血球を含む。これらのイムノロゼットは、およそ赤血球の密度の密度を有し、そして遠心分離される際、赤血球細胞ペレット中に見出される。したがって、細胞ペレットおよびゲル境界より上に見出される腫瘍細分画分からさらに白血球を除去する。血漿中に腫瘍細胞を含む画分が、さらなる処理のために収集される。
【0023】
(3.循環する癌腫細胞についてのポジティブ選択。)
循環する癌腫細胞を単離する好ましい方法は、免疫磁気ビーズを使用する。循環する癌細胞の単離の他の方法は、濾過を包含する(Vona Gら,2000,Am J Pathol.2000 156:57−63)。好ましい実施形態において、免疫磁気ビーズは、癌腫細胞の表面上に選択的に見出される抗原(例えば、上皮細胞付着分子(EpCAM)、サイトケラチン(例えばサイトケラチン−19)、および特に、サイトケラチンに対する抗体と他の表面マーカーとのカクテル)に対する抗体を有する。Her2/neuに対する抗体を有する免疫磁気ビーズもまた、使用され得る。この免疫磁気ビーズは、種々の大きさ(50μmから200nm未満まで)のビーズであり得、EpCAMに対する抗体(市販されている)またはHer2/neuに対する抗体を有するDYNALビーズ(1.5μmより大きく、約50μmまで)を含み得る。好ましい実施形態において、ナノ粒子ビーズが使用され、それによって、ビーズへの腫瘍細胞のより迅速かつより効率的な結合が可能になる。本発明の実施形態において、EasySepTMヒトEpCAMポジティブ選択カクテルおよびEasySepTM磁気ナノ粒子(STEMCELL TECHNOLOGIES)が、上記工程からの血漿中に腫瘍細胞を有する画分に添加される。次いで、磁石が使用されて腫瘍細胞を他の材料から分離し、そしてこの腫瘍細胞を、水溶液で洗浄する。このようにして、精製腫瘍細胞が、次の工程で抗原の検出のために準備される。
【0024】
(4.循環する癌腫細胞からのHer−2/neuタンパク質の検出および定量)
次いで、Her−2/neuの検出が、検出分子に連結されたHERCEPTINもしくはmAb 191924(R&D systemsカタログ番号MAB 1129)のようなモノクローナル抗体(mAb)またはHer−2/neuに対するポリクローナル抗体(例えば、R&D systemsからのヤギポリクローナル抗体、カタログ番号AF1129)の使用によって達成され得る。電気化学発光(ECL)の場合において、この検出分子は、ルテニウムである。ルテニウムを抗体に連結させ(例えば、Leeら,Am J Trop Med Hyg 2001,65:1−9)、その後、トリプロピルアミンを含有する溶液中の磁気ビーズ上の抗原のECL検出を行うための十分に有用な方法を提供する、十分な文献が、パブリックドメインに存在する。電位の適用により、ルテニウム標識は励起し、そして光が発され、そしてECL検出装置(例えば、ORIGENアナライザーまたはBIOVERIS Corporation,Gaithersburg,MDからのM−Series(登録商標)384のような市販の装置)を用いて検出される。
【0025】
本発明にしたがって使用されるイムノアッセイは、Her−2/neuに対するポリクローナル抗体であっても、モノクローナル抗体であってもよい。好ましくは、このモノクローナル抗体は、ヒト化マウスモノクローナル抗体(例えば、トラスツズマブ)である。トラスツズマブは、本発明に従うイムノアッセイおよび処置方法のために、好ましい。
【0026】
Her−2/neuの検出の目的のために、Her−2/neuに対する種々のモノクローナル抗体およびポリクローナル抗体、ならびに細胞外ドメインに対する抗体および細胞質ドメインに対する抗体は、R&D Systems(Minneapolis,MN Biosource(Camarillo,CA)およびBD Biosciences,San Diego,CA)のような供給源から市販されている。ウサギポリクローナル抗体はまた、ABVISION Corp,Fremont.CA;例えばneu Ab−21)およびUPSTATE CELL SIGNALING SOLUTIONS(Lake Placid,NY;例えばカタログ番号06−562)から得られる。Her−2/neuからの細胞外ドメインに対するヤギポリクローナル抗体は、R&D systems(カタログ番号AF1129)から得られる。全長組換えHer−2/neuに対するヤギポリクローナル抗体は、EXALPHA BIOLOGICS(Rosedale,MA;カタログ番号M100P)から得られる。全長Her−2/neuに対するこのようなポリクローナル抗体は、Her−2/neuの細胞外ドメインおよび細胞質ドメインに結合し得、細胞外ドメインに特異的ではないことが予測される。モノクローナル抗体は、細胞外ドメイン(例えば、R&D Systemsカタログ番号MAB1129)および細胞質ドメイン(例えば、LABVISION neuAB−8)の両方に対して得られ得る(C末端ペプチド(例えば、LABVISION neuAB−15)に対する抗体を含む)。Her−2/neuに対するモノクローナル抗体はまた、Hudziakら(1997年,米国特許第5,677,171号)において開示されている。1つの改善された実施形態は、HERCEPTINを用いる。なぜなら、この抗体による結合は、患者における処置としてのHERCEPTINの結合を最も予測可能だからである。別の有利な実施形態は、ウサギポリクローナル抗体もしくはHer−2/neuタンパク質上の多くのエピトープに結合する抗体のカクテルを使用し、より高い感度を可能にする。
【0027】
本発明の1つの実施形態において、この意味のアッセイは、インタクトな癌細胞上で、そしてHer−2/neuの細胞外ドメインに選択的に結合する抗体を使用して実施される。あるいは、単離された癌細胞は、イムノアッセイの前に溶解され、そしてこのイムノアッセイは、細胞溶解物上で実施される。この場合、イムノアッセイは、Her−2/neuの細胞外ドメインもしくは細胞質ドメインのどちらかに選択的に結合する抗体を使用し得る。本発明のより特定の実施形態において、このイムノアッセイは、Her−2/neuの細胞質ドメインに選択的に結合する、1種もしくは2種の抗体を使用する。
【0028】
本発明のイムノアッセイは、より迅速であり、そしてHer−2/neuについての任意の以前に開発されたイムノアッセイよりもかなり高い感度を有する。本発明のイムノアッセイは、癌を有さないヒト志願者由来の血液1mlあたり100個以下のSK−BR−3乳癌細胞からHer−2/neu発現を検出可能である。本発明のイムノアッセイは、血液サンプル1mlあたり、20pg以下のHer−2/neuのレベルで癌細胞関連Her−2/neuを検出可能である。
【0029】
電気化学発光に加えて、本出願のための高い感度を生じ得る他のイムノアッセイとしては、以下が挙げられるが、これらに限定されない:
(a)Liu Yら,2003(J Food Protection 66:512−7)によって記載されるような化学発光。
【0030】
(b)Yu Hら,2000(Biosens Bioelectron 14:829−40)によって記載される蛍光発生化学発光(FCL)
(c)蛍光偏光イムノアッセイ(Howanitz JH,1988 Arch Pathol Lab Med 112:775−9参照)
(d)時間分解蛍光イムノアッセイ(Butcher Hら,2003,J Immunol Methods 272:247−56;Soukkaら,2001,Clin Chem 47:1269−78;Howanitz JH,1988 Arch Pathol Lab Med 112:775−9)
好ましい実施形態において、アッセイにおいて使用される乳癌細胞の相対量が、推定される。この相対量は、1細胞あたりの全Her−2/neuタンパク質の割合を得ることを可能にし、そしてこの相対量は、1細胞あたりの高レベル、中程度のレベルおよび低レベルのHer−2/neuタンパク質を有する乳癌細胞のコントロール標準と比較され得る。これは、好ましい実施形態である。なぜなら、この実施形態は、擬陽性の状況を排除するからである。この擬陽性の状況において、低レベルのHer−2/neuタンパク質発現を有する多くの循環する乳癌細胞が存在し、これらの細胞は、高レベルの発現を有する少数の乳癌細胞から得られたシグナルを模倣するシグナルを生じ得る。この実施形態において、種々のアプローチが、相対的細胞数を推定するために使用され得、これらのアプローチとしては、フローサイトメトリー分析、溶解細胞からの全DNAもしくはDNA関連抗原(例えば、ヒストン)の定量(二倍体細胞あたり6pgのDNAが存在する)、および混濁度測定もしくは吸光度測定が挙げられる。
【0031】
その感度に起因して、本発明に従う、Her−2/neuを標的化する抗癌剤による処置から利益を得る可能性が高い患者を同定するための方法が、腫瘍生検組織が以前にHer−2/neuについての組織アッセイによってHer−2/neu発現についてネガティブであることが決定されている患者に対して、有効に適用され得る。
【0032】
本発明は、以下の実施例を参照することにより、よりよく理解される。これらの実施例は、例示であり、本明細書中に記載される本発明を限定しない。
【実施例】
【0033】
(実施例1)
転移性乳癌を有する患者がオフィスを訪れる。そして血液サンプル(8〜40mL)を、抗凝集剤(例えばクエン酸)および添加したネガティブ選択産物であるROSETTESEP(STEMCELL TECHNOLOGIESより)を含むBD Vacutainer CPT管内に直接取り出される。ROSETTESEPは、赤血球抗原を指向し、かつ白血球表面抗原を指向する、二重特異性抗体を含む。この材料を、1500〜1800RCF(相対遠心力)で20分間遠心分離する。ゲル境界より上の細胞層を、除去する。EasySepTMヒトEpCAMポジティブ選択カクテルおよびEasySepTM磁気ナノ粒子(StemCell Technologies)を添加し、そして腫瘍細胞を単離し、そして磁場を用いて洗浄する。Her−2/neuに対するルテニウム標識化ポリクローナル抗体を、トリプロピルアミンの溶液と共に、電極に結合した磁気ビーズに結合した腫瘍細胞に加える。抗体をルテニウム標識する慣用的方法は、当該分野で記載されている(例えば、Leeら,Am J Trop Med Hyg 2001,65:1−9)。電流を加え、そして電気化学発光(ECL)を、市販のECL検出デバイス(BIOVERIS Corporation)のようなECL検出デバイスを用いて検出する。これらの装置において、光電子増倍管(PMT)は、効率的な光捕獲のために作動電極のすぐ上に配置される。作動電極の下には、磁石が、標的抗原でコーティングされたビーズを捕獲するために配置される。このシグナルは、循環する腫瘍細胞の表面上に結合して見出されるHer−2/neuの量に比例する。
【0034】
(実施例2)
Her−2/Neuに対するポリクローナル抗体ではなくHer−2/Neuに対するモノクローナル抗体を検出のために用いるほかは、実施例1で使用した方法と同じ方法を、提供する。
【0035】
(実施例3)
単離した乳癌細胞を、磁気ビーズに結合したHer−2/neuに対する抗体を添加する前のいずれかで溶解する。溶解を、当該分野で記載されている任意の数の細胞溶解試薬によって達成し得る。これらの試薬は、例えば、溶解溶液A[1% NP−40、20mM Tris(pH8.0)、137mM NaCl、10%グリセロール、2mM EDTA、1mMオルトバナジウム酸ナトリウム、10μg/mLアプロチニン、10μg/mLロイペプチン]およびRIPA緩衝液(PapettiおよびHerman,2001,Am J Pathology 159:165−178)であるが、これらに限定されない。このサンドイッチ型のECL(Yangら,1994,ECLを用いた「サンドイッチ」イムノアッセイの例について)において、2組のHer−2/neuに対する抗体を使用する:1種の抗体は、ビオチン化され、そしてストレプトアビジン(strepavidin)コーティングした磁気ビーズに結合するが、第2の抗体は、ルテニウム標識される。
【0036】
(実施例4)
患者が、原発性腫瘍の分析に基づいてHer2/neuについて以前に陰性の結果を有するか、または分析のために容易に使用可能である腫瘍組織を有さないことを除いて、実施例1〜実施例3において使用される方法と同一の方法を、提供する。
【0037】
(実施例5)
分析において使用される乳癌細胞の相対数を定量する工程を追加して、実施例1〜実施例4において使用される方法と同一の方法を、提供する。DNA含量によって細胞を定量するELISA(二倍体の核1つあたり6pgのDNAが存在する(www.gentra.com/calcularing.asp))が、Friisらによって記載されている(2003;APMIS 111:658−68)が、本発明のために必要な感度は有さない。本発明に必要な少数の数の検出のためのより感度の高いアッセイを、高度に感度の高いイムノアッセイを用いて達成する。これらのイムノアッセイは、例えば、ECLを用いることによるアッセイであり、そして同じ装置を、Her−2/neuを定量するために使用する。
【0038】
細胞をECLによって定量するために、これらを、まず(例えば、これに限定されないが、上述の溶解緩衝液Aのような溶解緩衝液によって)溶解し、次いで、二本鎖DNAを指向する2種の異なる抗体(例えば、STATENS SERUM INSTITUT(Copenhagen,Denmark)から入手可能であるマウスモノクローナル抗体HYB 33−01;CHEMICON(Temecula,CA,USA)から入手可能であるマウスモノクローナル抗体MAB3032;ALPHA DIAGNOSTICS INTERNATIONAL(San Antonio,TX,USA)から入手可能であるマウスモノクローナル抗体、カタログ番号DNA11−Mを添加する;そのうちの1種は、ルテニウムで標識化されており(抗体をルテニウム標識化する慣用的方法は、当該分野で記載されている。例えば、Leeら,Am J Trop Med Hyg 2001,65:1−9)、そして他は、ストレプトアビジン(strepavidin)コーティングされた磁気ビーズへの結合のために、ビオチンで標識されている。抗原(この場合、dsDNA(二本鎖DNA))の定量を、トリプロピルアミンおよび磁場の使用によって電極に結合させた磁気ビーズを用いるECLによって達成する。電流を加え、そして電気化学発光(ECL)を、市販のECL検出デバイス(BIOVERIS Corporation)のようなECL検出デバイスを用いて検出する。これらの装置において、光電子増倍管(PMT)は、効率的な光捕獲のために作動電極のすぐ上に配置される。作動電極の下には、磁石が、標的抗原でコーティングされたビーズを捕獲するために配置される。このシグナルは、dsDNAの量に比例し、したがって、細胞数に比例する。次いで、これは、細胞数あたりのHer−2/neuの割合を得ることを可能にする。この割合は、血液1mlあたりの腫瘍細胞関連Her−2/neuの絶対数よりも、HERCEPTIN処置に対する患者の感受性を決定するために、本発明において有利である。
【0039】
(実施例6)
実施例1〜実施例5において示されるように、コントロールサンプルより高いHer−2/neuレベルを有する患者は、Her−2/neuについて陽性である腫瘍細胞を有すると考えられ、したがって、Her2/neuに対するモノクローナル抗体(例えば、HERCEPTIN)を含むレジメンによる処置に対して陽性であると考えられる。好ましい処置は、90分間の注入によって投与される4mg/kgの初回負荷投与量、および30分間の注入としての2mg/kgの毎週の維持投与量からなる。
【0040】
(実施例7)
本実施例において、精製組換えHer−2/neu(細胞外ドメイン)を、電気化学発光を用いるサンドイッチイムノアッセイの感度を試験するための標準として使用した。
【0041】
4種の異なるPBSアッセイ緩衝液を、調製した:
●アッセイ緩衝液1:PBS(リン酸緩衝化生理食塩水)中の0.5% Tween−20および0.5%ウシ血清アルブミン(BSA)
●アッセイ緩衝液2:PBS中の1.0% Tween−20および0.5% BSA
●アッセイ緩衝液3:PBS中の0.5% Tween−20および1.0% BSA
●アッセイ緩衝液4:PBS中の1.0% Tween−20および1.0% BSA
Her−2/neu標準(組換えHer−2/neu細胞外ドメイン)を、DakoCytomation(Carpinteria,CA 93013 USA;製品EL541)から得た。ヤギ抗ヒトHer−2/neuポリクローナル抗体を、R&D Systems,Inc.(Minneapolis,MN 55413 USA)から、ビオチン化形態および非ビオチン化形態で得た(それぞれ、カタログ番号BAF1129およびカタログ番号AF1129)。モノクローナル抗体MAB1129も、同様に、R&D Systems,Incから得た(R&D Systemsカタログ番号191924)。ポリクローナル抗体AF1129およびモノクローナル抗体MAB1129を、以下のようにルテニウム標識化(「TAG標識化」)した:
●1.5μg/μlのルテニウム標識(BV−TAG−NHS Ester,カタログ番号110034;BioVeris Corporation,Gaithersburg,MD,USA)を、DMSO中で調製した。
●500μlのモノクローナル抗体(1mg/mlのタンパク質濃度)について、18.8μl BV−TAG−NHSを添加し、そして、200μlのポリクローナル抗体(0.5mg/mlのタンパク質濃度)について、3.8μlのBV−TAG−NHSを、添加した。各々の場合において、溶液を1時間インキュベートし、そして反応を、20μlの2Mグリシンの添加によって停止した。
●各反応混合物中の未結合BV−TAG−NHS Esterを、PBS(0.08%アジ化ナトリウム含有)で事前平衡化したPD−10ゲル濾過カラムによって除去し、このPBSを溶出にも使用した。各抗体について、各画分中のタンパク質濃度を、タンパク質アッセイによって決定し、そして高タンパク質含量の画分を、この後の実施例において使用した。
【0042】
ルテニウム標識化ポリクローナル抗体AF1129およびビオチン化ポリクローナル抗体BAF1129を、本明細書中の本実施例中で以後、「TAG−pAb」および「ビオチン−pAb」と呼ぶ。ルテニウム標識化モノクローナル抗体MAB1129を、本明細書中の本実施例中で以後、「TAG−mAb」と呼ぶ。
【0043】
電気化学発光アッセイを、以下のように実施した:
●連続的に、25μl/ウェル中のHer−2/neu標準、次いで50μl/ウェルのTAG−Abとビオチン−Abとの混合物(例えば、各1μg/mlの濃度;4 PBSアッセイ緩衝液で希釈した)を、96−ウェルU底ポリプロピレンプレートのウェルに加え、そして室温で継続的に撹拌しながら(例えば、2時間)インキュベートした。
●25μl中10μgの磁気ストレプトアビジンビーズ(例えば、Dynabeads M−280 Streptavidin,カタログ番号110028,BioVeris,Corporation,Gaithersburg,MD)を、各ウェルに添加し、そして継続的に撹拌しながら、(例えば、30分間)インキュベートした。
●PBSアッセイ緩衝液を、各ウェルに添加し、1ウェルあたりの最終容量を250μlにした。アッセイ中の分析物(組換えHer−2/neu細胞外ドメイン)の量を、1ウェルあたり16〜1600pgで変えた。分析物非含有のコントロールウェルもまた、含めた。全ての条件を、少なくとも2連のウェルで試験した。次いで、96ウェルプレートを、M8 M−Series(登録商標)Analyzer(カタログ番号310800,BioVeris,Corporation,Gaithersburg,MD)を用いて分析した。
【0044】
結果は、TAG−pAbおよびビオチン−pAbによるサンドイッチイムノアッセイを用いて、全ての試験した組換えHer−2/neu細胞外ドメインのレベル(16、160および1600pg/ウェル)が、検出可能であり、かつ4種全ての異なるアッセイ緩衝液を用いた基線よりも上であったことを示した(表1)。組換えHer−2/neu細胞外ドメインはまた、AG−mAbおよびビオチン−pAbによるサンドイッチイムノアッセイを用いても検出可能であった(表2)。
【0045】
表1.ルテニウム標識化ポリクローナル抗体(TAG−pAb)およびビオチン化ポリクローナル抗体(ビオチン−pAb)を用いるイムノアッセイによる、組換えHer−2/neuの電気化学発光(ECL)検出。
【0046】
【表1】

*抗原非含有のコントロールウェルからの平均シグナルより上の平均ECLシグナル。
【0047】
表2.ルテニウム標識化モノクローナル抗体(TAG−mAb)およびビオチン化ポリクローナル抗体(ビオチン−pAb)を用いるイムノアッセイによる、組換えHer−2/neuの電気化学発光(ECL)検出。
【0048】
【表2】

*抗原非含有のコントロールウェルからの平均シグナルより上の平均ECLシグナル。
**抗原非含有のコントロールウェルからの平均シグナルより上ではないシグナル。
【0049】
(実施例8)
以下を除き、実施例7において使用した方法を使用した:
●本実施例を通して使用したPBSアッセイ緩衝液は、PBSアッセイ緩衝液1であった。
●ルテニウム標識化抗体は、Tag−pAbのみを使用した。添加したTag−pAbの濃度は、1μg/mlの代わりに、50μl中2μg/mlであった。
●組換えHer−2/neu(細胞外ドメイン)の量を、4〜64pg/mlで変えた。
【0050】
結果は、組換えHer−2/neu細胞外の全ての試験したレベル(4、16および64pg/ウェル)は、明らかに検出可能であり、基線より上であったことを示す(図1参照)。
【0051】
(実施例9)
以下を除き、実施例8において使用した方法を使用した:
●組換えHer−2/neu(細胞外ドメイン)の量を、16pg/ウェルから4096pg/ウェルまで変えた。
【0052】
Her−2/neuを検出する能力を、0.02μl/ウェルの細胞溶解緩衝液の存在下もしくは非存在下で試験した。Pierce Lysis Buffer[M−PER(登録商標)Extraction Reagent(Pierce Biotechnology,Inc.,Rockford,ILからの製品番号78501)]およびSigma Lysis Buffer[Sigma CelLyticTM−M(Sigma製品番号C 2978,Sigma−Aldrich,Inc.,St.Louis,MO 63103)]を、別々のウェルで試験した。
【0053】
この結果を、表3に示す。この実験におけるHer−2/neuの全量(最低量16pg/ウェルを含む)は、検出可能であり、かつ基線よりも上であった(表3)。この知見を、各細胞緩衝液(Pierce Lysis BufferもしくはSigma Lysis Buffer)の存在下もしくは非存在下で観察した。
【0054】
表3.組換えHer−2/neuのECLイムノアッセイ。
【0055】
【表3】

(実施例10)
イムノアッセイ方法は、以下を除き、実施例8で使用した通りであった:
●SK−BR−3乳癌腫細胞からの細胞抽出物を、分析した。
【0056】
SK−BR−3細胞(ATCC,Manassas,VAより)を、6−ウェル組織培養プレート中でATCC推奨条件により増殖させ、PBSで2回洗浄し、そしてアリコートを、血球計を使用して計数した。SK−BR−3細胞の溶解を、Pierce Lysis BufferもしくはSigma Lysis Bufferのどちらかを用いて実施した。これらの2種の溶解緩衝液を、上記の実施例9において記載する。
SK−BR−3細胞を溶解させるために、1000,000個の細胞あたり200μlの溶解緩衝液を添加した。細胞溶解を、各製造業者の推奨の通りに、5分間の激しいボルテックスを細胞屑の除去の前に加えて、実施した。細胞屑を、細胞溶解物から、Eppendorf Centrifuge(Model 5415C)において、14,000rpmの30分間の遠心分離によって除去した。1ウェルあたりの溶解物上清の量を、10個〜1000個のSK−BR−3細胞からの抽出で変化させ、そしてPBSアッセイ緩衝液1による実施例7に記載のイムノアッセイを用いて、Her−2/neuについて分析した。
【0057】
この実験からの結果を、表4に示す。この実験において、SK−BR−3細胞からの溶解物からのHer−2/neuは、この実験における最低量のSK−BR−3溶解物を用いたウェルを含め、検出可能であり、かつ基線よりも上であった(1ウェルあたり、10個の細胞からの溶解物を添加した;表4)。この結果は、使用した細胞溶解緩衝液(Pierce Lysis BufferもしくはSigma Lysis Buffer)にかかわらず観察された。図2および図3は、それぞれSigma Lysis BufferおよびPierce Lysis Bufferを用いた、3種の最低量(1ウェルあたり10個、30個および100個のSK−BR−3細胞)のSK−BR−3細胞からの溶解物についての結果のグラフ図であり、このイムノアッセイを用いる細胞からのHer−2/neu検出の線形性を実証する。
【0058】
表4.SK−BR−3乳癌細胞溶解物中のHer−2/neuのECLイムノアッセイ検出。
【0059】
【表4】

(実施例11)
この実験において、イムノアッセイ方法は、以下の細胞からのSigma Lysis Bufferを用いた溶解物を試験したことを除き、実施例10において使用した方法と同様であった:
●SK−BR−3ヒト乳癌腫細胞(Her−2/neuの高発現;Goebel SU,ら,2002,Cancer Res 62:3702−10);調製については実施例10を参照のこと。このSK−BR−3細胞株は、Her−2/neuタンパク質の乳癌発現についての適切なポジティブコントロールである。
●MDA−MB−468ヒト乳癌腫は、Her−2/neuの過剰発現についての、適切なネガティブコントロール乳癌細胞株である(Goebel SU,ら,2002,Cancer Res 62:3702−10)。細胞増殖およびSigma Cell Lysis Bufferを用いた細胞溶解を、MDA−MB−468細胞について、実施例10でSK−BR−3細胞について記載のように実施した。
【0060】
この実験における結果を、図4に示す。SK−BR−3細胞からの溶解物(Her−2/neu過剰発現についてのポジティブコントロール)は、Her−2/neuについてのイムノアッセイにおいて、MDA−MB−468細胞(Her−2/neu過剰発現についてのネガティブコントロール)からの溶解物よりも、ずっと高いシグナルを生じ、これは、Her−2/neu検出についての結果の特異性を示す(図4)。
【0061】
(実施例12)
この実験において、イムノアッセイ方法は、以下を除き、実施例11における方法と同様であった:50μl中に添加したTag−pAbおよびビオチン−pAbの両方についての濃度は、各1μg/mlの代わりに、各0.5μg/mlであった。再び、SK−BR−3細胞由来の細胞溶解物を、Her−2/neu発現に関して、MDA−MB−468細胞由来の細胞溶解物と比較した。この実験における結果を、図5に示す。SK−BR−3細胞からの溶解物(Her−2/neu過剰発現についてのポジティブコントロール)は、Her−2/neuについてのイムノアッセイにおいて、MDA−MB−468細胞からの溶解物(Her−2/neu過剰発現についてのネガティブコントロール)よりもずっと高いシグナルを生じ、このことは、Her−2/neu検出の結果の特異性を示す(図5)。また、Her−2/neuは、1ウェルあたり0.9個のSK−BR−3細胞ほどの少量の溶解物材料から検出可能であった;1ウェルあたり0.9個のSK−BR−3細胞の溶解物材料は、バックグラウンドより高いECLシグナルを生じ、そしてまた、100 MDA−MB−468細胞からの溶解物材料からのシグナルよりも上であった(図5)。
【0062】
(実施例13)
この実験において、イムノアッセイ方法は、以下を除き、実施例12における方法と同様であった:さらなる細胞溶解物(マウス抹消血単核細胞PBMC)を、Sigma Lysis Bufferを用いて得た。PMBCは、リンパ球および単球からなり、そして血液からの循環する乳癌細胞の単離をもたらす最初の工程の間に、同時精製され得る。
【0063】
4mlのマウス血液を、4ml BECTON DICKINSON BD Vacutainer CPT管中に収集し、そして3000rpmで30分間、Jouan CR412遠心分離機中で遠心分離した。PBMCを、ゲルより上の細胞画分から収集し、そしてPBSで4回洗浄した。計1000,000個のPBMCを、4mlの血液から収集した。細胞溶解を、SK−BR−3細胞についてと同様に実施した。細胞屑を、14,000rpmで30分間の、Eppendorf Centrifuge(Model 5415C)中での遠心分離によって、細胞溶解物から除去した。次いで、上清を、この実験における分析のために使用した。
【0064】
試験するためのサンプルを、各ウェルに以下を添加することによって調製した:
●12.5μl中1個〜10個のSK−BR−3細胞からの細胞溶解物。
● やはり12.5μl中の、100個〜10,000個のPBMCからの細胞溶解物もしくはコントロールPBSアッセイ緩衝液1。
● Tag−pAbおよびビオチン−pAb(50μl中0.5μg/mlの各抗体)を含有する50μlの溶液を、1ウェルあたりに添加し、そしてこの96ウェルプレートを、継続して撹拌しながら、2時間室温でインキュベートした。
●25μl中 10μgの磁気ストレプトアビジンビーズ(例えば、Dynabeads M−280 Streptavidin,カタログ番号110028,BioVeris,Corporation,Gaithersburg,MD)を、各ウェルに添加し、そして継続して撹拌しながら、30分間インキュベートした。
●PBSアッセイ緩衝液−1を、各ウェルに添加し、1ウェルあたり250μlの最終容量にした。全ての条件を、少なくとも3連のウェルで試験した。次いで、96ウェルプレートを、M8 M−Series(登録商標)Analyzer(カタログ番号310800,BioVeris,Corporation,Gaithersburg,MD)を用いた電気化学発光について分析した。
【0065】
この実験における結果を、表5および表6ならびに図6において示す。Her−2/neuは、100個、1000個および10,000個のPBMCから検出不可能であった(表5)。対照的に、Her−2/neuは、使用した最少量のSK−BR−3乳癌細胞溶解物(1ウェルあたり1個のSK−BR−3細胞;表6参照)からさえも検出可能であった。さらに、100個、1000個および10,000個のPBMCの細胞溶解物の添加でさえ、乳癌細胞におけるHer−2/neuの検出に干渉しなかった(表6および図6)。PMBC(循環する乳癌細胞の単離をもたらす最初の工程の間に同時精製され得る)は、検出不可能なHer−2/neu発現を有し、また、K−BR−3細胞におけるHer−2/neuの検出に干渉しなかった。
【0066】
表5.ECLイムノアッセイによって決定される場合、Her−2/neuは、大量(例えば10,000個)のPBMCにおいて検出不可能であった。
【0067】
【表5】

*ネガティブ:ECLシグナルは、バックグラウンドレベルよりわずかに下であった。
【0068】
表6.PBMCからの溶解物の存在下もしくは非存在下における、SK−BR−3乳癌細胞溶解物におけるHer−2/neuのECLイムノアッセイ検出。
【0069】
【表6】

NT:試験せず。
【図面の簡単な説明】
【0070】
【図1】ECLイムノアッセイによる、組換えHer−2/neu(4pg/ウェル、16pg/ウェルおよび64pg/ウェル)の検出。
【図2】SK−BR−3ヒト乳癌腫細胞の抽出物(1ウェルあたり10個、30個および100個の細胞溶解物材料)からのHer−2/neuの検出。使用した細胞溶解試薬は、Sigma Lysis Bufferであった。
【図3】SK−BR−3ヒト乳癌腫細胞の抽出物(1ウェルあたり10個、30個および100個の細胞溶解物材料)からのHer−2/neuの検出。使用した細胞溶解試薬は、Sigma Lysis Bufferであった。
【図4】SK−BR−3乳癌細胞(pHer−2/neu過剰発現についてのポジティブコントロール)対MDA−MB−468乳癌細胞(pHer−2/neu過剰発現についてのネガティブコントロール)からの溶解物中のHer−2/neuのイムノアッセイ検出についてのECLシグナルの比較。各細胞株について、1ウェルあたり10個、30個および100個の細胞からの溶解物材料を使用した。
【図5】SK−BR−3乳癌細胞(pHer−2/neu過剰発現についてのポジティブコントロール)(1ウェルあたり0.9個、3個および10個の細胞からの溶解物材料を使用する)対MDA−MB−468乳癌細胞(pHer−2/neu過剰発現についてのネガティブコントロール)(1ウェルあたり0.9個、3個および10個の細胞からの溶解物材料を使用する)からの溶解物中のHer−2/neuのイムノアッセイ検出についてのECLシグナルの比較。
【図6】1ウェルあたり1個、3個および10個のSK−BR−3細胞からの溶解物材料を使用する、SK−BR−3乳癌細胞(pHer−2/neu過剰発現についてのポジティブコントロール)からの溶解物中のHer−2/neuのイムノアッセイ検出についての、PBMC(1ウェルあたり100個〜10,000個の細胞)の溶解物による干渉の欠如。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
血液サンプル中の循環する癌細胞におけるHer−2/neuタンパク質の発現を検出する方法であって、該方法は、該癌細胞を該血液サンプルから単離し、その後、該単離された癌細胞において癌細胞関連Her−2/neuを検出することが可能であるイムノアッセイを実施する工程であって、該工程において、陽性のイムノアッセイ結果は、該癌細胞におけるHer−2/neuの存在を示す工程を包含し、ここで、該イムノアッセイは、以下:
(a)癌細胞関連Her−2/neuを、該血液サンプル1mlあたりHer−2/neuの1/10pgと20pgとの間のレベルで検出可能であること;または
(b)血液1mlあたりSK−BR−3細胞100個もしくは100個未満の濃度で血液中にスパイクする場合、SK−BR−3乳癌細胞からHer−2/neuを検出可能であること
によって規定される感度を有する、方法。
【請求項2】
(a)における前記感度のレベルは、前記血液サンプル1mlあたりHer−2/neuの1pgと20pgとの間である、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
(a)における前記感度のレベルは、前記血液サンプル1mlあたりHer−2/neuの1pgと10pgとの間である、請求項2に記載の方法。
【請求項4】
(a)における前記感度のレベルは、前記血液サンプル1mlあたりHer−2/neuの1pgと5pgとの間である、請求項3に記載の方法。
【請求項5】
(b)における前記感度のレベルは、血液1mlあたりSK−BR−3細胞10個もしくは10個未満の濃度である、請求項1に記載の方法。
【請求項6】
(b)における前記感度のレベルは、血液1mlあたりSK−BR−3細胞3個もしくは3個未満の濃度である、請求項5に記載の方法。
【請求項7】
(b)における前記感度のレベルは、血液1mlあたりSK−BR−3細胞1個もしくは1個未満の濃度である、請求項6に記載の方法。
【請求項8】
前記イムノアッセイは、検出のために電気化学発光を用いる、請求項1に記載の方法。
【請求項9】
前記イムノアッセイは、化学発光、蛍光発生化学発光、蛍光偏光および時間分解蛍光より選択される技術を検出のために用いる、請求項1に記載の方法。
【請求項10】
前記イムノアッセイは、インタクトな癌細胞において実施され、そしてHer−2/neuの細胞外ドメインに選択的に結合する抗体を用いる、請求項1に記載の方法。
【請求項11】
前記単離された癌細胞を、イムノアッセイの前に溶解させる工程をさらに包含し、ここで、該イムノアッセイは、細胞溶解物において実施される、請求項1に記載の方法。
【請求項12】
前記イムノアッセイは、Her−2/neuの細胞質ドメインに選択的に結合する1種または2種の抗体を用いる、請求項11に記載の方法。
【請求項13】
前記イムノアッセイは、Her−2/neuの細胞質ドメインに選択的に結合する2種の抗体を用いる、請求項12に記載の方法。
【請求項14】
前記イムノアッセイは、Her−2/neuに対するポリクローナル抗体を使用する、請求項1に記載の方法。
【請求項15】
前記イムノアッセイは、Her−2/neuに対するモノクローナル抗体を使用する、請求項1に記載の方法。
【請求項16】
前記モノクローナル抗体は、ヒト化マウスモノクローナル抗体である、請求項15に記載の方法。
【請求項17】
前記モノクローナル抗体は、トラスツズマブである、請求項16に記載の方法。
【請求項18】
前記癌細胞は、癌細胞に選択的に結合することが可能である免疫磁気ビーズと前記血液とを接触させる工程によって単離される、請求項1に記載の方法。
【請求項19】
前記免疫磁気ビーズは、上皮細胞に選択的に結合する、請求項18に記載の方法。
【請求項20】
Her−2/neuを標的化する抗癌剤による処置から利益を得る可能性が高い癌患者を同定する方法であって、該方法は、請求項1〜請求項19のいずれか1項に記載の方法を包含し、ここで、前記癌細胞含有血液サンプルは、該患者から取り出される、方法。
【請求項21】
前記患者からの腫瘍生検組織が、Her−2/neuについての組織アッセイによって、Her−2/neu発現について陰性であることが以前に決定されている、請求項20に記載の方法。
【請求項22】
前記組織アッセイは、免疫組織化学およびFISH分析からなる一覧より選択される、請求項21に記載の方法。
【請求項23】
Her−2/neuを標的化する抗癌剤による処置から利益を得る可能性が高い癌患者を処置する方法であって、該方法は、該Her−2/neu標的化抗癌剤を、請求項16に記載の方法に従って同定された患者に投与する工程を包含する、方法。
【請求項24】
前記抗癌剤は、トラスツズマブである、請求項23に記載の方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公表番号】特表2008−517253(P2008−517253A)
【公表日】平成20年5月22日(2008.5.22)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−535785(P2007−535785)
【出願日】平成17年10月6日(2005.10.6)
【国際出願番号】PCT/US2005/035894
【国際公開番号】WO2006/041959
【国際公開日】平成18年4月20日(2006.4.20)
【出願人】(504397480)ウェルスタット バイオロジクス コーポレイション (13)
【Fターム(参考)】