説明

循環加熱式の抽出装置と抽出方法

【課題】たとえ抽出温度が高温であっても、加熱装置や循環経路内での処理液の沸騰を極力抑えて、抽出成分が加熱装置や循環経路の内壁に付着して焦げ付くのを抑制することのできる循環加熱式の抽出装置と抽出方法。
【解決手段】抽出原料Cに処理液Wを注いで抽出液を生成する抽出器本体1と、抽出液を加熱する加熱装置2を備え、抽出器本体1と加熱装置2が互いに接続されて、抽出液を加熱して抽出器本体1に循環させる密閉式の循環経路6が形成され、循環経路6内に加圧用流体を圧入して当該経路6内を加圧する加圧装置8が設けられ、抽出器本体1から排出される抽出液を加熱装置2により加熱して抽出器本体1に循環させて抽出を行う循環加熱運転中に、加圧装置8を作動させて、循環経路6内における処理液Wの飽和蒸気圧より高い圧力に循環経路6内を加圧する制御手段9を備えている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、抽出原料に処理液を注いで前記抽出原料から抽出される抽出成分を含む抽出液を生成する抽出器本体と、その抽出器本体から排出される抽出液を加熱する加熱装置を備えた抽出装置と抽出方法に関する。
【背景技術】
【0002】
このような抽出装置および抽出方法においては、抽出原料に処理液を注いで抽出液を生成する際の処理液の温度、つまり、抽出温度が重要な要素となる。
そこで、従来、処理液の温度を所定の抽出温度(60〜150℃)に予め調整し、その温度調整した処理液を抽出器本体に導入して抽出原料に注ぐように構成したものが知られている(例えば、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特許第3619448号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかし、上記特許文献1に記載の抽出装置および抽出方法では、処理液の温度を抽出温度よりもわずかに高い温度に予め調整しておいて、その後、その処理液を抽出器本体に導入して抽出を行う結果、抽出器本体内における抽出時の処理液の温度は、必ずしも所定の抽出温度になっているとは限らない。
また、近年、抽出温度を高くすることで、従来不可能であった有効成分(例えば、ポリフェノール)を抽出できることが判明して注目されている。
【0005】
ところが、上記特許文献1に記載の抽出装置および抽出方法では、処理液の温度を一度に200℃程度の抽出温度にまで上昇させる必要があるため、処理液の昇温に問題があり、また、抽出器本体内での抽出時において、処理液の温度を確実に抽出温度に維持するのもむずかしい。
このような問題を解消するには、抽出器本体と加熱装置を循環経路で接続して、抽出器本体から排出される抽出液を加熱装置により加熱して再び抽出器本体に循環させながら、処理液の温度を徐々に上昇させる循環加熱式の抽出装置および抽出方法を採用することが考えられる。
【0006】
しかし、循環加熱式の抽出装置および抽出方法では、抽出原料から抽出された抽出成分を含む高温の抽出液が循環経路を通流するため、循環経路内、特に加熱装置内で沸騰を起し、溶出した抽出成分が、抽出液の沸騰により過剰昇温して、加熱装置や循環経路の内壁に付着して焦げ付きを生じるおそれがある。
抽出成分が焦げ付いて加熱装置や循環経路の内壁に付着すると、当然、それを除去する作業が必要となる。特に、同じ抽出装置を使用して、異なる抽出原料からの抽出を行う場合には、焦げ付いた抽出成分を確実に除去する必要があり、この焦げ付いた抽出成分の除去が大きな問題となる。
【0007】
本発明は、このような従来の問題点に着目したもので、その目的は、たとえ抽出温度が高温であっても、加熱装置や循環経路内での処理液の沸騰を極力抑えて、抽出成分が加熱装置や循環経路の内壁に付着して焦げ付くのを抑制することのできる循環加熱式の抽出装置と抽出方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記目的を達成するための本発明に係る循環加熱式の抽出装置の特徴構成は、抽出原料に処理液を注いで前記抽出原料から抽出される抽出成分を含む抽出液を生成する抽出器本体と、その抽出器本体から排出される抽出液を加熱する加熱装置を備え、前記抽出器本体と前記加熱装置が互いに接続されて、前記抽出器本体から排出される抽出液を前記加熱装置により加熱して前記抽出器本体に循環させる密閉式の循環経路が形成されるとともに、その循環経路内に加圧用流体を圧入して当該経路内を加圧可能な加圧装置が設けられ、前記抽出器本体から排出される抽出液を前記加熱装置により加熱して前記抽出器本体に循環させる循環加熱運転を行うに、前記加圧装置を作動させて、前記循環経路内における前記処理液の飽和蒸気圧より高い圧力に前記循環経路内を加圧する制御手段を備えたところにある。
【0009】
本特徴構成によれば、抽出原料に処理液を注いで抽出原料から抽出される抽出成分を含む抽出液を生成する抽出器本体と、その抽出器本体から排出される抽出液を加熱する加熱装置を備え、抽出器本体と加熱装置が互いに接続されて、抽出器本体から排出される抽出液を加熱装置により加熱して抽出器本体に循環させる密閉式の循環経路が形成された、いわゆる、循環加熱式の抽出装置であるから、抽出液を循環させながら加熱する循環加熱運転を行うことにより、結果的に、処理液の温度を無理なく、例えば、200℃以上の高温にまで昇温して、その温度を容易に維持することができる。
そして、制御手段が、循環加熱運転を行うに、その循環経路内に加圧用流体を圧入して当該経路内を加圧可能な加圧装置を作動させて、循環経路内における処理液の飽和蒸気圧より高い圧力に循環経路内を加圧するように構成されているので、加熱装置を含む循環経路内において処理液が沸騰する可能性は少なく、加熱装置や循環経路の内壁に対する抽出成分の焦げ付きが抑制される。
【0010】
本発明に係る循環加熱式の抽出装置の更なる特徴構成は、前記制御手段が、前記循環加熱運転の開始時に、前記処理液の最高抽出温度における飽和蒸気圧より高い圧力に前記循環経路内を加圧するように構成されているところにある。
【0011】
本特徴構成によれば、制御手段が、抽出原料に処理液を注いで抽出液を生成する循環加熱運転の開始時に、加圧装置を作動させて、処理液の最高抽出温度における飽和蒸気圧より高い圧力に循環経路内を予め加圧しておくように構成されているので、抽出液の温度上昇に対応して循環経路内を徐々に加圧するための多数のセンサ類や複雑な制御を必要とせず、比較的簡単な装置で、抽出成分の焦げ付きを抑制することができる。
【0012】
本発明に係る循環加熱式の抽出装置の更なる特徴構成は、前記加熱装置内の抽出液の温度を検出する温度検出手段を備え、前記制御手段が、前記温度検出手段による抽出液の検出温度の温度上昇に対応して、前記循環経路内の圧力を、その検出温度下における前記処理液の飽和蒸気圧より高い圧力に上昇させるように構成されているところにある。
【0013】
本特徴構成によれば、加熱装置内の抽出液の温度を検出する温度検出手段を備え、前記制御手段が、温度検出手段による抽出液の検出温度の温度上昇に対応して加圧装置を制御し、前記循環経路内の圧力を、その検出温度下における処理液の飽和蒸気圧より高い圧力に上昇させるように構成されているので、加圧装置による循環経路内の加圧は、抽出液の温度上昇に対応して徐々に行うことが可能となり、抽出作業の効率化を図ることができる。また、循環経路が密閉式であることから加熱装置による加熱に伴い当該経路内の圧力が上昇するので、上記加圧装置は飽和蒸気圧に対して不足する分のみ加圧すればよく、加圧のためのエネルギ消費を抑制することができる。
【0014】
上記目的を達成するための本発明に係る循環加熱式の抽出方法の特徴構成は、抽出原料に処理液を注いで前記抽出原料から抽出される抽出成分を含む抽出液を生成する抽出器本体と、その抽出器本体から排出される抽出液を加熱する加熱装置を備え、前記抽出器本体と前記加熱装置との間に設けられた密閉式の循環経路を介して、前記抽出器本体から排出される抽出液を前記加熱装置により加熱して前記抽出器本体に循環させる循環加熱運転を行うに、前記循環経路内に加圧用流体を圧入して、前記循環経路内における前記処理液の飽和蒸気圧より高い圧力に前記循環経路内を加圧した状態で、前記抽出器本体から排出される抽出液を加熱しながら循環させて抽出を行うところにある。
【0015】
本特徴構成によれば、抽出原料に処理液を注いで抽出原料から抽出される抽出成分を含む抽出液を生成する抽出器本体と、その抽出器本体から排出される抽出液を加熱する加熱装置を備え、抽出器本体と加熱装置との間に設けられた密閉式の循環経路を介して、抽出器本体から排出される抽出液を加熱装置により加熱して抽出器本体に循環させて抽出を行う、いわゆる、循環加熱式の抽出方法であるから、抽出液を循環させながら加熱することにより、結果的に、処理液の温度を無理なく、例えば、200℃以上の高温にまで昇温して、その温度を容易に維持することができる。
そして、その循環経路内に加圧用流体を圧入して当該流路内を加圧可能な加圧装置によって、循環経路内における処理液の飽和蒸気圧より高い圧力に循環経路内を加圧した状態で、抽出器本体から排出される抽出液を加熱しながら循環させて抽出を行うので、加熱装置を含む循環経路内において処理液が沸騰する可能性は少なく、加熱装置や循環経路の内壁に対する抽出成分の焦げ付きが抑制される。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【図1】第1の実施形態による循環加熱式の抽出装置の概略構成図
【図2】水の温度と飽和蒸気圧の関係を示す図表
【図3】第2の実施形態による循環加熱式の抽出装置の概略構成図
【図4】エタノールの温度と飽和蒸気圧の関係を示す図表
【発明を実施するための形態】
【0017】
本発明による循環加熱式の抽出装置と抽出方法につき、その実施の形態を図面に基づいて説明する。
第1の実施形態による循環加熱式の抽出装置は、図1に示すように、高温と高圧に耐え得る高温高圧型の抽出器本体1と加熱装置2などを備えている。
抽出器本体1は、抽出原料の一例である粉砕されたコーヒー豆Cに処理液としての湯水Wを注いでコーヒー豆Cから抽出される抽出成分を含む抽出液を生成するもので、その上方開口部には、開閉自在な蓋体3が設けられ、その内部の抽出室4には、粉砕されたコーヒー豆Cを収納する固液分離用のメッシュなどからなる籠5が取り外し自在に配置されている。
【0018】
抽出器本体1の抽出室4には、湯水Wを供給するための第1配管L1が連通接続され、その第1配管L1には第1開閉弁V1が設けられ、第1配管L1の先端部には、図示はしないが、湯水Wをコーヒー豆Cに均等に注ぐための回転式のシャワーノズルと、コーヒー豆Cを平らに均すための回転式の均し羽根が設けられている。
抽出器本体1の底部には、抽出室4内から湯水Wや抽出液を排出するための第2配管L2が連通接続され、その第2配管L2に第2開閉弁V2が設けられて、第2配管L2が加熱装置2に連通接続されている。
その加熱装置2は、抽出器本体1から第2配管L2を通して排出される湯水Wや抽出液を加熱するためのもので、例えば、高温の蒸気や気体などと熱交換するタイプのものや、ヒータなどにより直接加熱するタイプのものなど、各種タイプの加熱装置を使用することができる。
【0019】
そして、その加熱装置2の入口側に第2配管L2が連通接続され、加熱装置2の出口側には、第1配管L1が連通接続されている。つまり、抽出器本体1と加熱装置2が、第1配管L1と第2配管L2により互いに連通接続されて、抽出器本体1から排出される抽出液を加熱装置2により加熱して抽出器本体1に循環させる密閉式の循環経路6が形成されている。
その循環経路6を形成する第2配管L2には、抽出液を循環させるための循環ポンプ7が、第2バルブV2と加熱装置2の間に位置して配設され、第1配管L1には、制御弁V3を有する第3配管L3が、加熱装置2と第1バルブV1の間に連通接続され、その第3配管L3には、窒素などの不活性ガスや空気などの加圧用ガス(加圧用流体の一例)を圧入(高圧で供給)して、抽出器本体1の抽出室4や循環経路6などを加圧可能なコンプレッサなどの加圧装置8が接続されている。尚、本実施形態において、加圧用ガスを圧入するための上記第3配管L3を、上記第1配管L1に接続した例を説明するが、当該第3配管は、循環経路6における如何なる部分に接続しても構わず、例えば蓋体3を介して抽出器本体1の抽出室4に接続しても構わない。
【0020】
また、抽出器本体1から排出される抽出液を加熱装置2により加熱して抽出器本体1に循環させる循環加熱運転を行う制御手段としての制御部9が設けられており、更に、上記加圧装置8と制御弁V3も、制御部9により制御されるように構成されている。抽出器本体1には抽出室4の圧力を検出する抽出室用圧力センサ10が、加熱装置2の出口近傍の第1配管L1には、加熱装置2内の抽出液の温度を検出する温度検出手段としての加熱装置用温度センサ11がそれぞれ設けられ、それら抽出室用圧力センサ10と加熱装置用温度センサ11からの信号が、制御部9に入力されるように構成されている。
そして、第1配管L1には、第4開閉弁V4を有する第4配管L4が、第3配管L3の接続箇所と第1開閉弁V1の間に連通接続され、第2配管L2には、第5開閉弁V5を有する第5配管L5が、第2開閉弁V2と循環ポンプ7の間に連通接続され、抽出器本体1には、抽出室4内の圧力が設定圧以上になるのを回避するためのリリーフ弁V6を有する第6配管L6が連通接続されている。
【0021】
つぎに、第1の実施形態による循環加熱式の抽出装置の動作を説明するとともに、循環加熱式の抽出方法について言及する。
例えば、抽出原料がコーヒー豆で、処理液が湯水であれば、抽出器本体1の蓋体3を開けて、籠5の中に粉砕されたコーヒー豆Cを仕込み、かつ、抽出室4内に湯水Wを仕込んで蓋体3を閉じ、第4開閉弁V4と第5開閉弁V5を閉じるとともに、第1開閉弁V1と第2開閉弁V2を開けて、抽出器本体1と加熱装置2を含む循環経路6を密閉する。
その後は制御部9が制御することになり、上記循環加熱運転を行うに、制御弁V3を開弁して加圧装置8を作動させ、不活性ガスなどの加圧用ガスにより湯水Wの最高抽出温度における飽和蒸気圧より高い圧力に循環経路6内を加圧する。
【0022】
例えば、水の場合であれば、温度と飽和蒸気圧(ゲージ圧)は、図2に示す関係にあるので、湯水Wによる最高抽出温度を200℃に設定した場合であれば、200℃における飽和蒸気圧(約1.5MPa)より高い圧力に循環経路6内を加圧し、抽出室用圧力センサ10からの信号により所定の圧力になったことを確認した後、循環ポンプ7を作動させて、抽出室4内の湯水Wを循環経路6に沿って循環させる。
それによって、抽出室4内の湯水Wは、加熱装置2により加熱されてコーヒー豆Cに注がれ、コーヒー豆Cから抽出される抽出成分を含む抽出液が生成され、さらに、その抽出液が加熱装置2により再び加熱されてコーヒー豆Cに注がれる。
なお、最高抽出温度を200℃に設定した場合、加熱装置用温度センサ11による検出温度は、第1配管L1を通流する際の外部への放熱分を上乗せした温度になるため、200℃よりも高くなる。したがって、循環経路6内での抽出液の沸騰を確実に防止するためには、例えば、2.0MPa程度にまで循環経路6内を加圧するのが望ましい。
【0023】
この抽出液の循環によって、抽出温度は、経時的に上昇して最終的に200℃の最高抽出温度にまで上昇し、その200℃の最高抽出温度に維持された状態で所定の時間にわたって循環抽出が行われ、その間、外部への放熱分が加熱装置2により補充加熱される。そして、抽出完了後の抽出液は、第1開閉弁V1を閉じ、第4開閉弁V4を開けて第4配管L4から排出され、図外の冷却装置により冷却された後に払い出される。
このように、本発明による循環加熱式の抽出方法によれば、コーヒー豆Cに湯水Wを注いで抽出液を生成する循環加熱運転の開始時に先立って、湯水Wの最高抽出温度における飽和蒸気圧より高い圧力に循環経路6内を予め加圧しておくので、循環経路6内における湯水Wの沸騰が防止され、抽出液中に含まれる抽出成分の焦げ付きが回避されるのである。
尚、本実施形態では、循環加熱運転の開始時に循環経路6内を上記飽和蒸気圧より高い圧力に加圧するべく、該運転に先立って該経路6内を予め加圧するように構成したが、初期の沸騰を防止できる範囲内で、循環加熱運転の開始と同時又は初期の沸騰を防止できる範囲内での開始直後に、該経路6内を上記飽和蒸気圧より高い圧力に加圧するように構成しても構わない。
【0024】
つぎに、第2の実施形態による循環加熱式の抽出装置について説明するが、重複説明を避けるため、第1の実施形態と同じ構成については、同じ符号を付すことによって説明を省略し、主として第1の実施形態と異なる構成について説明する。
第2の実施形態による循環加熱式の抽出装置では、図3に示すように、抽出室4内を流下する抽出液の温度を検出する抽出室用温度センサ12が抽出器本体1に設けられ、さらに、循環ポンプ7の出口における圧力を検出する循環ポンプ用圧力センサ13が第2配管L2に設けられ、加圧装置8の出口における圧力を検出する加圧装置用圧力センサ14が第3配管L3に設けられている。
そして、それら抽出室用温度センサ12と両圧力センサ13,14からの信号も、制御部9に入力されるように構成され、その制御部9には、例えば、図2に示す温度と飽和蒸気圧との関係がデータとして記憶されている。
【0025】
この第2の実施形態による循環加熱式の抽出装置の動作は、第1の実施形態の場合とほぼ同じであるが、循環加熱運転開始時に、湯水Wの最高抽出温度における飽和蒸気圧より高い圧力に循環経路6内を加圧するのではなく、抽出液の経時的な温度上昇に対応して、その時点、時点での飽和蒸気圧を越える圧力に循環経路6内の圧力を徐々に上昇させ、最終的に、湯水Wの最高抽出温度における飽和蒸気圧より高い圧力にまで加圧する点において、第1の実施形態とは異なる。
すなわち、籠5の中に粉砕されたコーヒー豆Cを仕込み、抽出室4内に湯水Wを仕込んで循環経路6を密閉した後、制御部9が、制御弁V3を開弁して加圧装置8を作動させ、その加圧装置8の作動と前後して、循環ポンプ7も作動させ、抽出室4内の湯水Wを循環経路6に沿って循環させる。
【0026】
この循環によって、湯水Wや抽出液は、加熱装置2により加熱されて徐々に温度上昇することになり、その湯水Wや抽出液の温度は、温度検出手段としての加熱装置用温度センサ11、さらには、抽出室用温度センサ12によりリアルタイムで検出されて制御部9に入力される。
制御部9は、図2に示す水の温度と飽和蒸気圧との関係をデータとして記憶しており、そのデータに基づいて、湯水Wや抽出液の経時的な温度上昇に対応して加圧装置8を制御し、その時々の検出温度下における湯水Wの飽和蒸気圧より高い圧力に循環経路6内を経時的に加圧し、最高抽出温度が200℃であれば、最終的に200℃の最高抽出温度に対応する飽和蒸気圧(約1.5MPa)より高い圧力に循環経路6内を加圧し、その状態で所定の時間にわたって循環抽出が行われるのである。
【0027】
〔別実施形態〕
第1と第2の実施形態では、抽出原料がコーヒー豆で、処理液が湯水の場合を例にして説明したが、抽出原料としては、コーヒー豆以外にも、ココアや各種のお茶類などが使用可能であり、その場合、処理液としては、主として湯水が使用される。
さらに、抽出原料として、畜肉系原料、水産系原料、食品・農産・水産廃棄物など、種々のものが使用可能であり、その抽出原料に応じて、処理液としては、エタノール(アルコール系有機溶剤)、アセトン(ケトン系有機溶剤)、ヘキサンなどが使用され、その使用される処理液によって、温度と飽和蒸気圧の関係も異なる。
【0028】
一例を挙げると、エタノールであれば、温度と飽和蒸気圧(ゲージ圧)の関係は、図4に示すようになる。
したがって、第2の実施形態の場合であれば、図4に示す温度と飽和蒸気圧との関係がデータとして制御部9に記憶されることになり、さらに、制御部9に水やエタノールを含めて、アセトンやヘキサンなどの温度と飽和蒸気圧との関係を全てデータとして記憶させておき、使用する処理液に応じて選択使用して実施することもできる。
【0029】
さらに、本願発明者らは、抽出温度を195℃程度とすることにより、処理液である水を使用して、抽出原料であるココアからルチンや抗アレルギー成分として有効なケルセチンなどを抽出できることを見出した。抽出温度が高いため、ケルセチンは、ルチンの加水分解により得られるものと解される。
【0030】
上記実施の形態では、加圧用流体としての加圧用ガスを密閉式の循環経路6内に圧入することで当該経路6内を加圧するように構成するが、別に、加圧用流体としての処理液である湯水Wなどの加圧用液体を密閉式の循環経路6内に圧入することで当該経路6内を加圧するように構成しても構わない。
【符号の説明】
【0031】
1 抽出器本体
2 加熱装置
6 循環経路
8 加圧装置
9 制御手段
11 温度検出手段
C 抽出原料
W 処理液

【特許請求の範囲】
【請求項1】
抽出原料に処理液を注いで前記抽出原料から抽出される抽出成分を含む抽出液を生成する抽出器本体と、その抽出器本体から排出される抽出液を加熱する加熱装置を備え、
前記抽出器本体と前記加熱装置が互いに接続されて、前記抽出器本体から排出される抽出液を前記加熱装置により加熱して前記抽出器本体に循環させる密閉式の循環経路が形成されるとともに、その循環経路内に加圧用流体を圧入して当該経路内を加圧可能な加圧装置が設けられ、
前記抽出器本体から排出される抽出液を前記加熱装置により加熱して前記抽出器本体に循環させる循環加熱運転を行うに、前記加圧装置を作動させて、前記循環経路内における前記処理液の飽和蒸気圧より高い圧力に前記循環経路内を加圧する制御手段を備えた循環加熱式の抽出装置。
【請求項2】
前記制御手段が、前記循環加熱運転の開始時に、前記処理液の最高抽出温度における飽和蒸気圧より高い圧力に前記循環経路内を加圧するように構成されている請求項1に記載の循環加熱式の抽出装置。
【請求項3】
前記加熱装置内の抽出液の温度を検出する温度検出手段を備え、
前記制御手段が、前記温度検出手段による抽出液の検出温度の温度上昇に対応して、前記循環経路内の圧力を、その検出温度下における前記処理液の飽和蒸気圧より高い圧力に上昇させるように構成されている請求項1に記載の循環加熱式の抽出装置。
【請求項4】
抽出原料に処理液を注いで前記抽出原料から抽出される抽出成分を含む抽出液を生成する抽出器本体と、その抽出器本体から排出される抽出液を加熱する加熱装置を備え、
前記抽出器本体と前記加熱装置との間に設けられた密閉式の循環経路を介して、前記抽出器本体から排出される抽出液を前記加熱装置により加熱して前記抽出器本体に循環させる循環加熱運転を行うに、
前記循環経路内に加圧用流体を圧入して、前記循環経路内における前記処理液の飽和蒸気圧より高い圧力に前記循環経路内を加圧した状態で、前記抽出器本体から排出される抽出液を加熱しながら循環させて抽出を行う循環加熱式の抽出方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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