説明

循環恒温式ウエットエッチング装置及びウエットエッチング処理槽

【課題】 エッチング液の蒸発を抑制し温調し、均一にエッチングが出来る循環恒温式ウエットエッチング装置およびエッチング処理槽を提供することを目的とする。
【解決手段】 ウエットエッチング処理槽と、温度調節器と、薬液循環系とが備えられた循環恒温式ウエットエッチング装置において、ウエットエッチング処理槽はウエットエッチング処理対象物を配する内槽と、この内槽に沿ってその外方に設けられた外槽とを備え、内槽2からオーバーフローしたエッチング液が内槽外側壁面溝8内を通り循環する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、化学エッチング技術を利用した循環恒温式ウエットエッチング装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来の循環恒温式ウエットエッチング装置は、ウエットエッチング処理槽とエッチング速度を一定に保つ為に薬液温度を一定に保つ恒温器と、薬液内の微粒子を除去する循環濾過器の構成からなっている。
【0003】
以下図面を参照しながら、上記した従来の循環恒温式ウエットエッチング装置の一例について説明する。図2は、従来の循環恒温式ウエットエッチング装置の全体構成図を示すものである。図3は従来の循環恒温式ウエットエッチング装置のウエットエッチング処理槽構造を説明するための図である。図2および図3において、1はエッチング処理槽の外槽、2はエッチング処理槽の内槽、3は循環ポンプ、4は温調器、5はフィルター、6は循環用配管、7は測温抵抗体、9は内槽外側壁面、10は切り込みである。以上のように構成された循環恒温式ウエットエッチング装置について以下にその動作について説明する。
【0004】
まず、エッチング処理槽の内槽2、エッチング処理槽の外槽1に、所望のエッチング液を所定量満たしておく。エッチング液は循環用配管6を通り、循環ポンプ3を経て温調器4を通り、フィルター5により微粒子を除去した後エッチング処理槽の内槽2へ戻る。このとき予めエッチング液の濃度によって、所望とするエッチング速度になるように温調器4によってエッチング液の温度を設定する。エッチング液の温度が所望になり、かつ一定になった後、エッチングを行うことが出来る。
【0005】
また、槽内均一な噴流を作る為、エッチング槽の内槽2の上部の辺に、エッチング液を均等に溢れさせる為の切り込み10を設けておく。これにより内槽2内に浸漬したウエハ等を均一にエッチングすることが出来る。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開平5−243206号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら上記のような構成では、エッチング槽の内槽2から溢れたエッチング液が切り込み10から内槽外側壁面9を伝って外槽1に流れるが、切り込み10から流れる出るエッチング液は内槽外側壁面9を拡散して流れてしまうために、エッチング液が空気と接触する表面積が多くなってしまう。特に、エッチングレートを上げるために高温でエッチングを行う場合において、温調する際に空気と接触する表面積を小さくし外気等の影響を極力抑えないと安定したエッチングができないという問題点を有していた。
【0008】
また、長時間エッチングを行う場合、蒸発量が多くなってしまうと液面低下分の薬液補充などをしなければならないので、薬液コストが余計に掛かかる問題も有していた。
【0009】
本発明は、上記課題を鑑み、エッチング液の蒸発を抑制し温調し、均一にエッチングが出来る循環恒温式ウエットエッチング装置及びウエットエッチング処理槽を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
ウエットエッチング処理対象物を配する内槽と、この内槽に沿ってその外方に設けられた外槽とを有するウエットエッチング処理槽において、前記内槽からオーバーフローして前記外槽へ流入する経路に溝を有するウエットエッチング処理槽とする。
【0011】
ウエットエッチング処理槽と、温度調節器と、薬液循環系を有する循環恒温式ウエットエッチング装置において、前記ウエットエッチング処理槽は、ウエットエッチング処理対象物を配する内槽と、該内槽に沿ってその外方に設けられた外槽とを備え、前記内槽内でウエットエッチング処理対象物をエッチング液に浸漬してウエットエッチングし、前記内槽からオーバーフローして前記外槽へ流入する経路に溝を有する循環恒温式ウエットエッチング装置とする。
【発明の効果】
【0012】
本発明によって、エッチング液の蒸発量を抑制し、エッチング液の温度を安定化させることができ、安定したエッチング処理が出来る循環恒温式ウエットエッチング装置及びウエットエッチング処理槽を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【図1】本実施例における循環恒温式ウエットエッチング装置のウエットエッチング処理槽構造を説明するための図
【図2】従来の循環恒温式ウエットエッチング装置の概略図
【図3】従来の循環恒温式ウエットエッチング装置のウエットエッチング処理槽構造を説明するための図
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、本発明を実施する為の最良の形態を図面を用いて説明する。図1は本実施例における循環恒温式ウエットエッチング装置のウエットエッチング処理槽構造を説明するための図である。
【0015】
循環恒温式ウエットエッチング装置の基本的な構成は、従来と同等であり、図2を用いて説明する。ウエットエッチング処理槽は2槽構造で、ウエットエッチング処理槽の外槽1、ウエットエッチング処理槽の内槽2からなる。7は測温抵抗体である。5はフィルタである。4は温調器で測温抵抗体7でウエットエッチング処理槽の内槽2内のエッチング液の温度を測定しエッチング液の温度を設定値に保つためにある。3はエッチング液を循環させる為のポンプであり、6の配管によってウエットエッチング処理槽の内槽2とウエットエッチング処理槽の外槽1に接続されている。
【0016】
以上のように構成された循環恒温式ウエットエッチング装置について、以下図1を用いてその動作を説明する。
【0017】
ウエットエッチング処理槽の内槽2、外槽1の2槽にエッチング液を、内槽2には上限まで、外槽1は循環可能な液量までの所定量満たしておく。次に循環恒温式ウエットエッチング装置の循環ポンプ3、温調器4を作動させる。このことによりウエットエッチング処理槽内のエッチング液は、おのずとフィルタ5を通り循環恒温することができる。
【0018】
この時、エッチング液の循環経路は、ウエットエッチング処理槽の内槽2からオーバーフローされ、切り込み10から内槽外側壁面溝8を通りウエットエッチング処理槽の外槽1へ到り循環する。
【0019】
従来の方式では、ウエットエッチング処理槽の内槽2よりオーバーフローによって切り込み10から内槽外側壁面9を通りウエットエッチング処理槽の外槽1へ循環するが、内槽外側壁面9を広がりながらエッチング液が流れるため、空気に触れる表面積が大きく放熱・蒸発があり、エッチングレート変動が生じていた。これを解決する手段として、エッチング処理槽の内部に外槽に代わる穴を設け、内槽だけで循環する方式があるが、この場合循環する流量に応じ口径を大きくしなければならず、また加工するには不向きである。
【0020】
それに対して、本発明では、エッチング処理槽の内槽2よりオーバーフローされたものが選択的に内槽外側壁面溝8内を通りウエットエッチング処理槽の外槽1へ循環することで、空気に触れる面積を小さく抑えることができ、放熱・蒸発量を抑制し安定したエッチング処理を行うことができる。
【0021】
上記構成において、処理槽に蓋を設け、密閉させてもよい
【0022】
この場合、エッチング液を高温にすると内部圧力が高まってしまい処理槽破損の危険が伴うので、できるだけ外気の影響を受け難い状態が好ましい。
【0023】
また、オーバーフロー量と内槽外側壁面溝8を流れる量を予め考慮し、最適な溝口径を選定し設けるのが好ましい。
【符号の説明】
【0024】
1 外槽
2 内槽
3 循環ポンプ
4 温調器
5 フィルタ
6 循環用配管
7 測温抵抗体
8 内槽外側壁面溝
9 内槽外側壁面
10 切り込み

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ウエットエッチング処理対象物を配する内槽と、この内槽に沿ってその外方に設けられた外槽とを有するウエットエッチング処理槽において、
前記内槽からオーバーフローして前記外槽へ流入する経路に溝を有することを特徴とするウエットエッチング処理槽。
【請求項2】
ウエットエッチング処理槽と、温度調節器と、薬液循環系を有するウエットエッチング装置において、
前記ウエットエッチング処理槽は、ウエットエッチング処理対象物を配する内槽と、この内槽に沿ってその外方に設けられた外槽とを備え、
前記内槽内でウエットエッチング対象物をエッチング液に浸漬してウエットエッチングし、
前記内槽からオーバーフローして前記外槽へ流入する経路に溝を有することを特徴とする循環恒温式ウエットエッチング装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2012−243827(P2012−243827A)
【公開日】平成24年12月10日(2012.12.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−109955(P2011−109955)
【出願日】平成23年5月17日(2011.5.17)
【出願人】(000166948)シチズンファインテックミヨタ株式会社 (438)
【出願人】(000001960)シチズンホールディングス株式会社 (1,939)
【Fターム(参考)】