説明

循環流動層システムにおける酸素流動燃焼装置

【課題】酸素燃焼によってアグロメレーションが発生する問題を防止する。
【解決手段】酸素流動燃焼装置1により燃料21を酸素燃焼して循環粒子3を加熱し、酸素流動燃焼装置1の上部からは加熱した循環粒子3を取り出して流動層ボイラ7へ供給することにより流動層ボイラ7に熱を付与するようにし、熱を付与して温度が低下した循環粒子3は再び酸素流動燃焼装置1に循環して加熱するようにした循環流動層システムの酸素流動燃焼装置であって、酸素流動燃焼装置1は、上部流動部8の下側に上部流動部8に対して断面積を小さくした噴き上げ流動部9が一体に形成された流動燃焼炉11を備えており、噴き上げ流動部9の下端部を包囲する粒子導入室12と、粒子導入室12の底部に設けた酸素吹込装置16と、流動層ボイラ7内の循環粒子3を粒子導入室12に循環する循環流路20と、噴き上げ流動部9の外側から燃料21を供給する少なくとも1段の燃料供給ノズル22とを有する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、酸素燃焼によってアグロメレーションが発生する問題を防止するようにした循環流動層システムにおける酸素流動燃焼装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来から空気により燃料を流動燃焼させるようにした流動燃焼装置が実施されており、このような流動燃焼装置では、石炭、オイルコークス、都市ゴミ、廃材、廃プラスチック、汚泥等の広範な燃料を専焼、混焼できることから注目されている。
【0003】
一方、上記流動燃焼装置において加熱した循環粒子を取り出して流動層式の受熱装置に供給することにより受熱装置に熱を付与するようにし、熱を付与して温度が低下した循環粒子は再び前記流動燃焼装置に循環して循環粒子を加熱するようにした循環流動層システムがある。
【0004】
上記循環流動層システムにおける受熱装置としては、前記流動燃焼装置で加熱した循環粒子を導入して蒸気を発生させるようにした流動層ボイラがあり(特許文献1参照)、又、前記流動燃焼装置で加熱した循環粒子を導入して原料のガス化を行うようにした流動層ガス化炉がある(特許文献2参照)。
【0005】
又、前記流動燃焼装置において酸素富化空気で燃焼を行うことにより排ガス量を減少して流動燃焼装置の熱効率を高めるようにしたものがあり、更に、近年では、二酸化炭素(CO)の排出を削減する要求が高まっていることから、流動燃焼装置に酸素を供給して酸素で燃料を燃焼させることにより、排ガス中のCOの濃度を高め、これによってCOの回収を容易にすることができる酸素燃焼技術の採用が検討されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開平10−253011号公報
【特許文献2】再公表WO2008/107928号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
従来の循環流動層システムの流動燃焼装置に酸素燃焼技術を採用した場合には、酸素で燃焼性が高まることによって燃焼温度が容易に1000℃以上の高温になってしまう問題がある。従って、酸素流動燃焼装置での安定運転を確保するためには、空気燃焼での実績がある従来の循環流動層システムでの燃焼温度(例えば800℃前後)と同程度になるように、酸素燃焼による燃焼温度を抑制(制御)する必要がある。ここで、循環流動層システムにおける酸素流動燃焼装置において、燃焼温度を抑制するための方法としては、循環粒子の循環量を増加する方法がある。即ち、循環粒子の循環量を増加すると熱容量が増加することにより燃焼温度を抑制することができる。
【0008】
循環粒子の循環量を増加するには、流動燃焼装置内の循環粒子の噴き上げ量を増加することが必要になるが、循環粒子の噴き上げを均一に行って循環粒子を均一に加熱すること(循環粒子によって流動燃焼装置内を均一に抜熱すること)は難しく、そのため、酸素による部分燃焼により局所的な高温部が発生し、このような高温部が発生すると、溶融灰が循環粒子と一体化して循環粒子の凝集化(アグロメレーション)を生成する虞れがある。
【0009】
上記アグロメレーションが発生すると、アグロメレーションは流動燃焼装置に供給する酸素によって浮上しなくなるために流動燃焼装置の底部に堆積するようになり、アグロメレーションが堆積すると循環粒子の流動が低下することにより、更に流動燃焼装置内に高温部が発生してアグロメレーションの発生が増加するようになる。このようなアグロメレーションが発生した場合には、循環流動層システムを停止し、燃焼装置内からアグロメレーションを除去する作業が必要となる。
【0010】
本発明は、このような課題に鑑みてなしたもので、酸素燃焼によってアグロメレーションが発生する問題を防止するようにした循環流動層システムにおける酸素流動燃焼装置を提供しようとするものである。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明は、酸素流動燃焼装置により燃料を酸素燃焼して循環粒子を加熱し、酸素流動燃焼装置の上部からは加熱した循環粒子を取り出して受熱装置へ供給することにより受熱装置に熱を付与するようにし、受熱装置に熱を付与して温度が低下した循環粒子は再び前記流動燃焼装置に循環して加熱する循環流動層システムの酸素流動燃焼装置であって、前記酸素流動燃焼装置は、上部流動部の下側に該上部流動部に対して断面積を小さくした噴き上げ流動部が一体に形成された流動燃焼炉を備えており、前記噴き上げ流動部の下端部を包囲する粒子導入室と、該粒子導入室の底部に設けた酸素吹込装置と、前記受熱装置内の循環粒子を前記粒子導入室に循環する循環流路と、前記噴き上げ流動部の外側から燃料を供給する少なくとも1段の燃料供給ノズルと、を有することを特徴とする循環流動層システムにおける酸素流動燃焼装置、に係るものである。
【0012】
上記循環流動層システムにおける酸素流動燃焼装置において、前記噴き上げ流動部の外側から前記酸素を分岐して供給する少なくとも1段の酸素供給ノズルを有することは好ましい。
【0013】
又、上記循環流動層システムにおける酸素流動燃焼装置において、前記噴き上げ流動部の下端が粒子導入室内の循環粒子内に没入しており、前記粒子導入室は、前記酸素吹込装置からの酸素が受熱装置へ吹き抜けるのを防止するシールポットの作用を有することは好ましい。
【0014】
又、上記循環流動層システムにおける酸素流動燃焼装置において、前記粒子導入室と受熱装置とを連通している循環流路に、前記粒子導入室の酸素が受熱装置へ吹き抜けるのを防止するシール構造を備えたことは好ましい。
【0015】
又、上記循環流動層システムにおける酸素流動燃焼装置において、前記酸素を、前記酸素流動燃焼装置下流の排ガスと混合して前記酸素吹込装置に供給する排ガス循環系路を有することは好ましい。
【0016】
又、上記循環流動層システムにおける酸素流動燃焼装置において、前記受熱装置が流動層ボイラ又は流動層ガス化炉であることは好ましい。
【発明の効果】
【0017】
本発明の循環流動層システムにおける酸素流動燃焼装置によれば、酸素流動燃焼装置は、流動空間の下側に該流動空間に対して断面積を小さくした噴き上げ空間が一体に形成された流動燃焼炉を備えており、噴き上げ空間の下端部を包囲する粒子導入室と、粒子導入室の底部に設けた酸素吹込装置と、受熱装置内の循環粒子を前記粒子導入室に循環する循環流路と、噴き上げ空間の外側から燃料を供給する少なくとも1段の燃料供給ノズルと、を有するので、粒子導入室によって循環粒子が噴き上げ流動部に均一且つ高濃度で導かれるようになり、且つ、断面積を小さくした噴き上げ流動部によって噴き上げ流速が高められることにより循環粒子の循環量が増加して高温部の発生が抑制され、しかも、流速が高められることにより燃焼熱が効率良く循環粒子に伝熱されて高温部の発生が抑制されるので、アグロメレーションの生成が抑制され、更に、噴き上げ流速が高いことによりアグロメレーションが生成しようとしてもアグロメレーションを破壊する作用が高まることによって、アグロメレーションの生成が効果的に抑制されるという優れた効果を奏し得る。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【図1−a】循環流動層システムの一例である循環流動層ボイラに適用した本発明の酸素流動燃焼装置の一実施例を示す概略正面図である。
【図1−b】図1−aの酸素流動燃焼装置をx−x方向から見た一例を示す切断平面図である。
【図1−c】図1−aの酸素流動燃焼装置をx−x方向から見た他の例を示す切断平面図である。
【図2】酸素流動燃焼装置内での石炭の燃焼状態を示すイメージ図である。
【図3】本発明の酸素流動燃焼装置の他の実施例を示す概略正面図である。
【図4】本発明の酸素流動燃焼装置の更に他の実施例を示す概略正面図である。
【図5】本発明の酸素流動燃焼装置に備える酸素吹込装置の他の例を示す概略正面図である。
【図6】循環流動層システムの他の例である循環流動層ガス化炉に適用した本発明の酸素流動燃焼装置の一実施例を示す概略正面図である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下、本発明の実施の形態を図示例と共に説明する。
【0020】
図1−aは循環流動層システムの一例である循環流動層ボイラBに適用した本発明の酸素流動燃焼装置の一実施例を示す概略正面図であり、図1−aに示す循環流動層ボイラBは、酸素燃焼を行って循環粒子3の加熱を行う酸素流動燃焼装置1(ライザー)と、該酸素流動燃焼装置1の上部から排出される高温流体を連通路2を介して導入し循環粒子3と排ガス4とに分離するサイクロンからなる分離装置5と、該分離装置5で分離した循環粒子3を導入して熱交換器6からなる熱利用部に熱を与えることにより対象物である水を加熱して蒸気を生成する流動層ボイラ7(受熱装置)とを有する。
【0021】
前記酸素流動燃焼装置1は、上側の上部流動部8の下側に、該上部流動部8に対して断面積を小さくした噴き上げ流動部9が絞り部10を介して一体に形成された流動燃焼炉11を備えている。該流動燃焼炉11は、図1−aをx−x方向から見た切断平面図である図1−bに示すように、矩形(正方形、長方形)を有していてもよく、或いは、図1−cに示すように円形を有していてもよい。
【0022】
前記酸素流動燃焼装置1には、前記流動燃焼炉11における噴き上げ流動部9の下端部外周を間隔Lを有して包囲する粒子導入室12が設けてあり、該粒子導入室12の底部には吹込室13を介して酸素供給管14からの酸素15を噴き出すようにした酸素吹込装置16が設けられている。
【0023】
前記流動層ボイラ7(受熱装置)の底部には流動用ノズル17が設けてあり、該流動用ノズル17の下部に備えた分散室18に流動用空気19が供給され、流動用ノズル17から流動用空気19が吹き出されることにより、流動層ボイラ7内に循環粒子3による流動層が形成されるようになっている。尚、上記流動用空気19に代えて流動用酸素を分散室18に供給するようにしてもよい。
【0024】
前記流動層ボイラ7と前記粒子導入室12との間には、流動層ボイラ7から下り傾斜を有して前記粒子導入室12に連通し、流動層ボイラ7内の循環粒子3を粒子導入室12に循環するようにした循環流路20を設けている。
【0025】
前記噴き上げ流動部9の周方向外部には、石炭等の燃料21を供給する燃料供給ノズル22が設けられている。燃料供給ノズル22は、噴き上げ流動部9に対して周方向から燃料21が均一に供給されるように、周方向均等間隔位置に複数個を備えていることが好ましい。
【0026】
前記分離装置5で分離した排ガス4は排ガス処理装置23によって煤塵の除去、硫黄酸化物の除去等を行った後、CO回収装置24に導かれて液化二酸化炭素等の形でCOを回収するようにしている。
【0027】
更に、前記酸素流動燃焼装置1の下流における前記排ガス処理装置23によって少なくとも煤塵が除去された排ガス4を取り出して混合器25に導くようにしており、該混合器25に前記酸素15を供給して前記排ガス4と混合することにより、前記酸素15と排ガス4が混合された混合気を前記酸素吹込装置16に供給するようにした排ガス循環系路26を設けている。27は排ガス循環系路26に設けた循環ファンである。従って、前記酸素吹込装置16には、純酸素による酸素15、或いは排ガス4の混合により酸素濃度を調整した酸素15を供給することができる。
【0028】
尚、前記粒子導入室12と流動層ボイラ7とを連通している循環流路20に、図6に示すように、粒子導入室12の酸素15が流動層ボイラ7へ吹き抜けるのを防止するためのU字状のシール構造20aを備えてもよい。
【0029】
次に、上記実施例の作動を説明する。
【0030】
前記酸素流動燃焼装置1の下部に備えた粒子導入室12の吹込室13に酸素15を供給して酸素吹込装置16から酸素15が噴き出すと、粒子導入室12内の循環粒子3は酸素15によって酸素流動燃焼装置1内を上方へ流動する。このとき、酸素流動燃焼装置1は上部流動部8に対して断面積を小さくした噴き上げ流動部9を形成しているので、粒子導入室12内の循環粒子3は、断面積が小さい噴き上げ流動部9内を高速で上昇するようになり、その高速上昇流に燃料供給ノズル22からの燃料21が混合されて酸素燃焼するので、循環粒子3は加熱されつつ酸素流動燃焼装置1内を高速で上昇する。
【0031】
酸素流動燃焼装置1の上部に到達した循環粒子3を含む高温流体は、連通路2により分離装置5に導かれて循環粒子3と排ガス4とに分離され、分離された高温の循環粒子3は流動層ボイラ7に供給されて熱交換器6からなる熱利用部に熱を与えることにより対象物である水を加熱して蒸気を生成する。
【0032】
前記流動層ボイラ7で熱交換器6に熱を付与して温度が低下した循環粒子3は、循環流路20により次々に前記粒子導入室12へ循環される。この時、前記噴き上げ流動部9の下端は、粒子導入室12に循環される循環粒子3内に没入しているため、前記粒子導入室12は、前記酸素吹込装置16から供給される酸素15が流動層ボイラ7へ吹き抜けるのを防止するシールポットの作用を果たしている。又、前記循環流路20に、例えば図6に示すようなU字状のシール構造20aを備えた場合には、前記粒子導入室12とシール構造20aによる二重のシール機能によって、粒子導入室12の酸素15が流動層ボイラ7へ吹き抜けるのを確実に防止することができる。
【0033】
上記した酸素流動燃焼装置1において、アグロメレーションの生成を防止するためには、前記酸素流動燃焼装置1内の温度を所定以下に抑制すること、及び、局所的な高温部が発生することを抑制することが重要である。
【0034】
又、図2に示すように、前記酸素流動燃焼装置1内においては、燃料21の粒子が酸素(O)と反応して燃焼することにより大量の燃焼熱を放出するため酸素流動燃焼装置1内の温度は上昇するが、このとき、燃料21の燃焼によって放出される熱を循環粒子3に効率良く伝達することができれば、酸素流動燃焼装置1内の温度は抑制することができる。
【0035】
ここで、前記したように、流動層ボイラ7の循環粒子3を循環流路20により粒子導入室12に戻し、粒子導入室12内の循環粒子3を酸素吹込装置16からの酸素15によって小断面積の噴き上げ流動部9の下端に導入して噴き上げるようにしているので、循環粒子3は噴き上げ流動部9の下端に周方向から均一に供給され、且つ高い濃度を保持して噴き上げられるので、循環粒子3の循環量は増加する。このように、循環粒子3の循環量が増加され且つ噴き上げ流動部9内の循環粒子3の濃度が均一になることにより、前記酸素流動燃焼装置1内における局所的な温度の上昇は抑制され、よって、アグロメレーションの生成は効果的に抑制される。更に、このとき、循環粒子3として粒径が小さいものを選定して用いると、循環粒子3の循環量は更に増加することができる。即ち、粒径が小さい循環粒子3は酸素吹込装置16からの酸素15の噴流によって更に上昇し易くなり、これによって循環量は増加する。
【0036】
尚、前記循環粒子3の循環量を増加するために、酸素15の供給量を増加する必要が生じた場合には、排ガス循環系路26からの排ガス4を混合器25に供給し、排ガス4と酸素15の混合気を酸素吹込装置16に供給することにより噴出速度を高めることができる。
【0037】
又、酸素流動燃焼装置1の下部に小断面積の噴き上げ流動部9を備えたことによって、噴き上げ流動部9内を流動する循環粒子3の流速が高められるので、燃料21が混合して燃焼することによって発せられる燃焼熱は、高速で流動する循環粒子3に効果的に伝達されるようになり、これによっても、酸素流動燃焼装置1内の温度が抑制されて、アグロメレーションの生成が防止される。
【0038】
更に、前記したように噴き上げ流動部9によって上昇流の流速が高まるため、アグロメレーションが生成しようとしてもアグロメレーションの破壊作用が高まることによって、アグロメレーションの生成は効果的に抑制される。
【0039】
前記噴き上げ流動部9を高速で上昇しながら燃焼を行った燃料21と循環粒子3は、噴き上げ流動部9に対して断面積が大きい上部流動部8に導入され、上部流動部8では流速が低化することにより所要の滞留時間を保持して燃料21の完全燃焼が行われる。
【0040】
上記したように、粒子導入室12によって循環粒子3が噴き上げ流動部9に均一且つ高濃度で導かれるようになり、且つ、断面積を小さくした噴き上げ流動部9によって噴き上げ流速が高められることにより循環粒子3の循環量が増加して高温部の発生が抑制され、しかも、流速が高められることにより燃焼熱が効率良く循環粒子3に伝熱されて高温部の発生が抑制されるので、アグロメレーションの生成が抑制され、更に、噴き上げ流速が高いことによりアグロメレーションが生成しようとしてもアグロメレーションを破壊する作用が高まることによって、アグロメレーションの生成が効果的に抑制される。
【0041】
図3は、本発明の酸素流動燃焼装置の他の実施例を示す概略正面図であり、図3では、噴き上げ流動部9における燃料供給ノズル22の上段に、前記酸素吹込装置16に供給する酸素15の一部を分岐して周方向の複数箇所から供給するようにした酸素供給ノズル28を設けている。29は酸素供給ノズル28に供給する酸素15を調節する調整弁である。
【0042】
図3の実施例によれば、前記酸素吹込装置16に供給する酸素15の一部を噴き上げ流動部9に吹き込むようにしたので、噴き上げ流動部9内での燃料21の燃焼による温度の上昇が平坦化され、局所的な高温部の発生が抑制されることによりアグロメレーションの生成を抑制することができる。
【0043】
図4は、本発明の酸素流動燃焼装置の更に他の実施例を示す概略正面図であり、図4では、噴き上げ流動部9における燃料供給ノズル22の上段に、前記酸素供給ノズル28を設けると共に、該酸素供給ノズル28の上段に、前記燃料供給ノズル22に供給する燃料21の一部を分岐して供給する燃料供給ノズル22'を設け、該燃料供給ノズル22'の上段に、前記酸素供給ノズル28に供給する酸素15の一部を分岐して供給する酸素供給ノズル28'を設けている。
【0044】
図4の実施例によれば、前記噴き上げ流動部9に、複数段の燃料供給ノズル22,22'と酸素供給ノズル28,28'を備えたので、噴き上げ流動部9内での燃料21の燃焼による温度の上昇が更に平坦化されるようになり、よって、局所的な高温部の発生が抑制されてアグロメレーションの生成を抑制することができる。
【0045】
図5は、本発明の酸素流動燃焼装置1に備える酸素吹込装置16の他の例を示す概略正面図であり、図1−aに示した酸素流動燃焼装置1の酸素吹込装置16において、前記噴き上げ流動部9の直下位置には噴流用ノズル29及び吹込室13aを設け、他方、噴き上げ流動部9の直下位置の外側には流動用ノズル30及び吹込室13bを設けており、噴流用ノズル29から噴出される酸素15に対して流動用ノズル30から噴出される酸素15の圧力を減じるための調節弁31を設けている。図5の実施例においても、図3、図4に示すように、少なくとも1段の燃料供給ノズル22と、少なくとも1段の酸素供給ノズル28を備えることができる。
【0046】
図5の実施例によれば、粒子導入室12内の循環粒子3は噴流用ノズル29によって噴き上げ流動部9内に高速で噴き上げられ、又、粒子導入室12内の循環粒子3は噴上げ流動部9の下端に安定して均一に供給されるようになる。
【0047】
図6は、循環流動層システムの他の例である循環流動層ガス化炉Gに適用した本発明の酸素流動燃焼装置の一実施例を示す概略正面図である。図6の実施例では、受熱装置である流動層ガス化炉32に前記分離装置5で分離した循環粒子3を導入すると共に、ガス化する原料33を供給しており、下部の分散室18にはガス化剤としての水蒸気34を供給し、流動用ノズル17から噴出する水蒸気34により流動層を形成して原料33のガス化を行い、生成したガス化ガス35は上部から取出すようにしている。又、流動層ガス化炉32内の未反応原料であるチャー36と前記循環粒子3は、前記循環流路20を介して前記粒子導入室12に供給するようにしている。
【0048】
従って、上記流動層ガス化炉32では、未反応原料であるチャー36が酸素流動燃焼装置1に供給されて燃焼するので、図6の実施例においては、酸素流動燃焼装置1でチャー36を燃焼させるのみでは循環粒子3を加熱するのに熱量が不足する場合に、前記燃料供給ノズル22から不足分の燃料21を供給するようにしている。
【0049】
更に、図6の実施例では、前記粒子導入室12内の酸素15が前記流動層ガス化炉32に吹き抜ける問題を確実に防止する必要があり、このために、前記循環流路20にはU字状のシール構造20aを設けている。これにより、前記粒子導入室12とシール構造20aによる二重のシール機能によって、粒子導入室12の酸素15が流動層ボイラ7へ吹き抜けるのを確実に防止している。図6の実施例においても、図3、図4に示すように、少なくとも1段の燃料供給ノズル22と、少なくとも1段の酸素供給ノズル28を備えることができる。
【0050】
上記した図6の実施例においても、酸素流動燃焼装置1内に局所的な高温部が発生する問題を防止して、アグロメレーションの生成を効果的に防止することができる。
【0051】
尚、本発明の循環流動層システムにおける酸素流動燃焼装置は、上述の実施例にのみ限定されるものではなく、図示例以外の酸素流動燃焼装置にも適用できること、その他、本発明の要旨を逸脱しない範囲内において種々変更を加え得ることは勿論である。
【符号の説明】
【0052】
1 酸素流動燃焼装置
3 循環粒子
4 排ガス
7 流動層ボイラ(受熱装置)
8 上部流動部
9 噴き上げ流動部
11 流動燃焼炉
12 粒子導入室
15 酸素
16 酸素吹込装置
20 循環流路
20a シール構造
21 燃料
22,22' 燃料ノズル
25 混合器
26 排ガス循環系路
28,28' 酸素供給ノズル
32 流動層ガス化炉(受熱装置)
B 循環流動層ボイラ
G 循環流動層ガス化炉

【特許請求の範囲】
【請求項1】
酸素流動燃焼装置により燃料を酸素燃焼して循環粒子を加熱し、酸素流動燃焼装置の上部からは加熱した循環粒子を取り出して受熱装置へ供給することにより受熱装置に熱を付与するようにし、受熱装置に熱を付与して温度が低下した循環粒子は再び前記流動燃焼装置に循環して加熱する循環流動層システムの酸素流動燃焼装置であって、前記酸素流動燃焼装置は、上部流動部の下側に該上部流動部に対して断面積を小さくした噴き上げ流動部が一体に形成された流動燃焼炉を備えており、前記噴き上げ流動部の下端部を包囲する粒子導入室と、該粒子導入室の底部に設けた酸素吹込装置と、前記受熱装置内の循環粒子を前記粒子導入室に循環する循環流路と、前記噴き上げ流動部の外側から燃料を供給する少なくとも1段の燃料供給ノズルと、を有することを特徴とする循環流動層システムにおける酸素流動燃焼装置。
【請求項2】
前記噴き上げ流動部の外側から前記酸素を分岐して供給する少なくとも1段の酸素供給ノズルを有することを特徴とする請求項1に記載の循環流動層システムにおける酸素流動燃焼装置。
【請求項3】
前記噴き上げ流動部の下端が粒子導入室内の循環粒子内に没入しており、前記粒子導入室は、前記酸素吹込装置からの酸素が受熱装置へ吹き抜けるのを防止するシールポットの作用を有することを特徴とする請求項1又は2に記載の循環流動層システムにおける酸素流動燃焼装置。
【請求項4】
前記粒子導入室と受熱装置とを連通している循環流路に、前記粒子導入室の酸素が受熱装置へ吹き抜けるのを防止するシール構造を備えたことを特徴とする請求項1〜3のいずれか1つに記載の循環流動層システムにおける酸素流動燃焼装置。
【請求項5】
前記酸素を、前記酸素流動燃焼装置下流の排ガスと混合して前記酸素吹込装置に供給する排ガス循環系路を有することを特徴とする請求項1〜4のいずれか1つに記載の循環流動層システムにおける酸素流動燃焼装置。
【請求項6】
前記受熱装置が流動層ボイラ又は流動層ガス化炉であることを特徴とする請求項1〜5のいずれか1つに記載の循環流動層システムにおける酸素流動燃焼装置。

【図1−a】
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【図1−b】
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【図1−c】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2012−37212(P2012−37212A)
【公開日】平成24年2月23日(2012.2.23)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−180673(P2010−180673)
【出願日】平成22年8月12日(2010.8.12)
【出願人】(000000099)株式会社IHI (5,014)
【Fターム(参考)】