説明

循環流動層炉の起動方法

【課題】起動時における砂上バーナの消炎、或いは火炎の不安定化によるCO発生を防止し、迅速で安定した起動を可能とした循環流動層炉の起動方法を提供する。
【解決手段】被燃焼物を流動媒体と混合しながら燃焼させる循環流動層炉の起動方法において、流動層2aより上方に設けられた砂上バーナ24と、該流動層内に設けられた砂中バーナ25とを有し、炉の起動時、砂中バーナ25を停止した状態で砂上バーナ24を着火するとともに、空塔速度が2.0m/s未満となるように一次空気量及び二次空気量を制御する第1制御工程と、流動層温度が砂中バーナ25に供給する燃料の自燃温度以上になった時、砂上バーナ24を停止して砂中バーナ25から燃料を噴出させるとともに、空塔速度が2.0m/s以上となるように制御する第2制御工程とを備えた。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、被燃焼物を流動媒体と混合しながら燃焼処理する循環流動層炉の起動方法に関し、特に、流動層より上方に設けられた第1バーナと、該流動層内に設けられた第2バーナと有する循環流動層炉にて、安定的に且つ迅速に起動を行うことを可能とした循環流動層炉の起動方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、下水汚泥、都市ごみ、産業廃棄物、石炭等の被燃焼物の燃焼処理において、循環流動層炉が広く用いられている。図6に、特許文献1(特開2000−18538号公報)等に示される一般的な循環流動層炉61の構成を示す。ライザ62の底部には流動媒体が充填されており、一次空気導入口65より一次空気を導入し、流動媒体を流動化させることにより流動層62aが形成される。被燃焼物を、流動層62a内で流動媒体と混合しながら燃焼して飛散させ、該飛散した流動媒体をフリーボード62bへ同伴して二次空気導入口66から導入される二次空気により排ガス中の未燃分を完全燃焼させ、燃焼排ガスからサイクロン63により流動媒体を分離し、該流動媒体を、シールポット64を経由してライザ52に返送し、流動媒体を循環利用する。
【0003】
このような循環流動層炉は、被燃焼物を瞬時に乾燥、焼却できるものであり、これにより流動媒体を高温に維持して連続燃焼を可能としている。また、流動媒体が保有する熱容量が非常に大きいため、停止時の放熱が少なく間欠運転にも適しており、下水汚泥のような含水率の高い被燃焼物にも好適に用いられる。
また、循環流動層炉には炉内の昇温又は温度維持を目的として複数のバーナが設置されており、流動層62aの上方に設けられる砂上バーナ67、流動層62aの中に設けられる砂中バーナ68がある。一般的に砂上バーナ67は、炉の起動時等の昇温時に用いられ、砂中バーナ68は被燃焼物を投入して燃焼を行う通常運転時の温度維持に用いられる。
【0004】
従来の一般的な循環流動層炉の起動方法は、ライザ下部に流動媒体を供給し、一次空気導入口65より一次空気を導入するとともに二次空気導入口66より二次空気を導入し、流動媒体を流動化させる。同時に、流動媒体を砂上バーナ67の火炎により昇温する。尚、砂上バーナ67は、その火炎が流動層に向かうように下方に向けて設置されている。炉内が所定温度まで昇温されて助燃料が着火可能となったら砂上バーナ67は停止し、通常運転時には砂中バーナ68により助燃料を噴出させ、これを燃焼させて炉内温度を維持する。
また、別の起動方法として、特許文献2(特開平6−2811号公報)には、一次空気ダクト内に設置した起動バーナにより一次空気を所定温度まで上昇させ、高温の一次空気により流動媒体を昇温させる方法が開示されている。
【0005】
しかしながら、起動時に砂上バーナにより昇温する方法では、流動化した流動媒体が砂上バーナに衝突し、砂上バーナが消炎してしまうことがある。また、火炎が不安定化するため、COが発生し易くなってしまう。そこで、砂上バーナの位置を高くすることにより消炎を防ぐ方法や一次空気量を少なくすることにより流動媒体の吹き上げを小さくする方法が考えられるが、どちらの場合も、流動層への供給熱量が減少するため、流動媒体の温度上昇に時間がかかってしまうという問題があった。
【0006】
一方、上記したような循環流動層炉を含む各種焼却炉において、一次空気や二次空気等に用いられる燃焼空気は、大気の他に、汚泥やごみ等の被燃焼物が貯められるピット内の臭気ガスが用いられている。例えば特許文献3(特開平8−338619号公報)には、ゴミピット内の臭気ガスを、押し込み送風機によって炉内に供給して脱臭する構成が開示されている。これは、臭気ガスを高温の炉内に供給して臭気成分を燃焼させることを目的としている。
しかしながら、焼却炉を長期間停止していた場合、ピット内にメタン等の可燃ガスが溜まる場合があり、起動時にそのガスを燃焼ガスとして焼却炉に導くと爆発を起こす惧れがあった。
【0007】
【特許文献1】特開2000−18538号公報
【特許文献2】特開平6−2811号公報
【特許文献3】特開平11−82975号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
上記したように、循環流動層炉の起動時の問題点として、流動媒体の吹き上げによる砂上バーナの消炎、或いは火炎の不安定化によるCO発生が挙げられる。また、砂上バーナに流動媒体が衝突しないように一次空気量を少なくすると流動媒体の昇温に時間がかかり、迅速な起動が行えないという問題があった。また、特許文献2のように起動バーナにより一次空気を昇温させる方法では、一次空気量が限られているため昇温に時間がかかるとともに、炉内の温度制御が精度よく行えないという問題があった。さらに、特許文献3のように、起動時にピット内の臭気ガスを炉内に導くと、ピット内に溜まった可燃ガスにより安全性が確保できないという問題があった。
従って、本発明は上記従来技術の問題点に鑑み、流動媒体の吹き上げによる砂上バーナの消炎、或いは火炎の不安定化によるCO発生を防止し、迅速で安定した起動を可能とした循環流動層炉の起動方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
そこで、本発明はかかる課題を解決するために、ライザ下部より導入される一次空気により流動媒体を流動化させ流動層を形成するとともに、該一次空気及び流動層上方より導入される二次空気により流動媒体を吹き上げて燃焼ガスとともにライザ上部より排出し、該燃焼ガスから流動媒体を分離捕集して前記ライザに還流させるようにした循環流動層炉の起動方法において、
前記流動層より上方に設けられた第1バーナと、該流動層内に設けられた第2バーナとを有しており、
前記循環流動層炉の起動に際して、前記第2バーナを停止した状態で前記第1バーナを着火するとともに、前記ライザの空塔速度が2.0m/s未満となるように一次空気量及び二次空気量を制御する第1制御工程と、
前記ライザ内の温度を測定し、該温度が前記第2バーナに供給する燃料の自燃温度以上になった時、前記第1バーナを停止して前記第2バーナから燃料を噴出させるとともに、前記空塔速度が2.0m/s以上となるように一次空気量及び二次空気量を制御する第2制御工程とを備えたことを特徴とする。
【0010】
本発明によれば、起動時で砂上バーナの着火時には空塔速度を2.0m/s未満にすることによって、流動媒体の砂上バーナへの衝突による消炎を回避し、砂上バーナの火炎の安定化によるCO低減を可能としている。また、低空気量で昇温することにより空気による冷却を回避し、昇温速度の向上を可能としている。さらに、低い空気量で起動することによりNOxの低減が可能である。
一方、砂中バーナへの切替後、空塔速度を2.0m/s以上とすることにより、流動媒体の循環開始による昇温速度の増加が可能であり、また炉内のガス量増加により、一次空気及び二次空気を循環流動層炉の排ガスにより加熱する空気予熱器において熱交換量が増加し、流動空気温度が増加することで昇温速度の増加が可能となる。尚、自燃温度とは、燃料に着火することなく該燃料が燃焼を開始する温度である。
【0011】
また前記第1制御工程にて、一次空気量が二次空気量より小さくなるようにし、前記第2制御工程にて、前記第1制御工程よりも二次空気量に対する一次空気量の比率を上げることを特徴とする。
このように、第1制御工程では、一次空気量をより小さい値とすることにより、砂上バーナが消炎したり火炎が不安定になることを防止し、起動時のCO発生を低減させ、砂上バーナの失火頻度を低下させることを可能としている。また、第2制御工程では、一次空気量の増加量を二次空気の増加量より多くすることにより、流動媒体の流動化を促進し、昇温を迅速に行うことを可能としている。
【0012】
また、前記ライザ内温度が流動層温度であり、該流動層温度が600℃となった時に前記第1制御工程から前記第2制御工程に切り替えることを特徴とする。
このように、砂中バーナが存在する流動層の温度を1工程と第2制御工程の切り替えの基準とすることにより、砂中バーナから噴出する燃料が確実に自燃する温度にて砂上バーナから砂中バーナに切り替えることができる。また、切替温度を600℃とすることにより、大部分の種類の燃料が自燃する温度にて砂中バーナを起動することとなり、炉の起動が確実に行える。
【0013】
さらに、前記一次空気及び前記二次空気は、前記ライザ内温度が800℃未満の時は大気から導いた空気とし、前記ライザ内温度が800℃以上の時は被燃焼物を貯留するピットから導いた臭気ガスとすることを特徴とする。
このように、流動層温度が800℃未満のときは、臭気ガスが完全に燃焼せず脱臭が不十分となる惧れがあるため、流動層温度が800℃以上のときにのみ臭気ガスを燃焼空気として用いることにより、臭気成分が完全に燃焼して十分な脱臭処理を行うことが可能となる。
【0014】
さらにまた、前記ピット内の臭気ガスの可燃成分濃度を測定し、該測定した可燃成分濃度が、予め設定された爆発下限界以上の時は、前記ライザ内温度に関わらず前記一次空気及び前記二次空気として大気を導入することを特徴とする。
炉を長期間運転していないとき等は、ピット内にメタン等の可燃ガスが充満する可能性がある。そこで、ピット内の可燃成分濃度を測定し、該測定された可燃成分濃度が爆発下限界以上である場合には、常に炉内に大気を導入することにより、一次空気又は二次空気を送給するダクト内、或いは炉内での可燃ガスの爆発を防ぎ、安全性を高く保つことが可能である。
【発明の効果】
【0015】
以上記載のごとく本発明によれば、流動媒体の砂上バーナへの衝突による消炎を回避し、砂上バーナの火炎の安定化によるCO低減を可能とするとともに昇温速度を向上させ、安定で且つ迅速な起動を可能としている。
また、第1制御工程にて、一次空気量を二次空気量より小さい値とすることにより、砂上バーナが消炎したり火炎が不安定になることを防止し、起動時のCO発生を低減させ、砂上バーナの失火頻度を低下させることを可能としている。また、第2制御工程では、一次空気量の増加量を二次空気の増加量より多くすることにより、昇温を迅速に行うことを可能としている。
【0016】
さらに、砂中バーナが存在する流動層の温度を1工程と第2制御工程の切り替えの基準とすることにより砂上バーナから砂中バーナへの切り替えを円滑に行い、また切替温度を600℃とすることにより大部分の種類の燃料が自燃する温度にて砂中バーナを起動することができ炉の起動が確実に行える。
また、流動層温度が800℃以上のときにのみピット内の臭気ガスを燃焼空気として用いることにより、臭気成分が完全に燃焼して十分な脱臭処理を行うことが可能となる。
さらにまた、ピット内の臭気ガスの可燃成分濃度が爆発下限界以上である場合には、常に炉内に大気を導入することにより、一次空気又は二次空気を送給するダクト内、或いは炉内での可燃ガスの爆発を防ぎ、安全性を高く保つことが可能である。
【発明を実施するための最良の形態】
【0017】
以下、図面を参照して本発明の好適な実施例を例示的に詳しく説明する。但しこの実施例に記載されている構成部品の寸法、材質、形状、その相対的配置等は特に特定的な記載がない限りは、この発明の範囲をそれに限定する趣旨ではなく、単なる説明例に過ぎない。
本実施形態の循環流動層炉は、下水汚泥、都市ごみ、産業廃棄物、石炭等の被燃焼物を流動媒体と混合しながら燃焼処理する炉であり、特に本実施形態の循環流動層炉は下水汚泥の処理に好適に用いられる。
【0018】
図1を参照して、本実施形態の循環流動層炉につき説明する。同図において、循環流動層炉1は、炉底に充填されたけい砂等の流動媒体が流動化して形成される流動層2aとその上方に位置するフリーボード2bを有するライザ2と、該ライザ2の上部に接続され、フリーボード2bから吹き上げられた流動媒体を捕集するとともに、流動媒体を分離した排ガスを煙道へ排出するサイクロン3と、ダウンカマー4を介してサイクロン3に接続され、炉内未燃ガスのサイクロン3への吹き抜けを防止するシールポット5と、シールポット5に貯留された流動媒体をライザ2に返送する流動媒体戻し管6と、を備える。
【0019】
ライザ2の炉壁には被燃焼物投入手段21が設けられている。該被燃焼物投入手段21は、投入ホッパより受け入れた被燃焼物を、供給フィーダにより適宜量ずつ炉内に投入する構成を備える。
ライザ2の底部には一次空気導入口22が設けられ、該一次空気導入口22から導入される一次空気により流動媒体を流動化し、流動層2aを形成している。該流動層2a上方のライザ炉壁には、二次空気導入口23が設けられ、ここから導入される二次空気によりフリーボード2bの空塔速度が維持されるとともに、燃焼排ガス中の未燃分が燃焼される。
一次空気導入口22及び二次空気導入口23には、夫々ブロワ32、34により空気が導かれ、空気流量調整バルブ31、33により、夫々の導入口22、23に導入される空気流量が調整される。尚、各導入口22、23に導かれる空気は、不図示の空気予熱器により加熱され所定温度まで昇温された後、各導入口22、23より炉内に導入される。空気予熱器は、循環流動層炉1から排出された燃焼排ガスの熱により空気を加熱する装置である。
【0020】
さらにライザ2の炉壁には、炉内の昇温或いは温度維持のために助燃用のバーナが複数設けられている。このうち砂上バーナ(第1バーナ)24は、流動層2aより上方に設けられるとともにノズル先端が下方に向けて配置され、該砂上バーナ24からの火炎が流動層2aの流動媒体を直接熱するようになっている。砂中バーナ(第2バーナ)25は、流動層2a内に設けられる。尚、砂中バーナ25は、一次空気が導入されず流動媒体が流動化していない時にも、流動媒体の堆積層内に埋設される位置に配設されるとよい。
砂上バーナ24及び砂中バーナ25には、メタンガス(消化ガスを含む)や都市ガス、重油等の助燃料が供給されるが、この助燃料の供給は助燃料流量調整バルブ35、36によって夫々調整される。
【0021】
また、流動層2aの温度を測定する温度測定手段38を備える。該温度測定手段38は熱電対が好適に用いられる。本実施形態では、炉内温度を流動層2aの温度としたが、フリーボード2bの温度等、ライザ内の他の部位であってもよく、その場合は各温度設定を適宜調整するとよい。
さらに本実施形態では、循環流動層炉1の起動時に際して、温度測定手段38にて測定した温度に基づいて、炉内に導入する一次空気量及び二次空気量を空気流量調整バルブ31、33によって制御するとともに、助燃料流量調整バルブ35、36によって砂上バーナ24と砂中バーナ25の起動/停止を制御する制御装置40を備える。
【0022】
制御装置40による起動制御を含む循環流動層炉の起動方法について図4に示す。
まず、ライザ2内に流動媒体を供給し、流動媒体を所定高さまで充填する(S1)。一次ブロワ32を起動して一次空気導入口22より一次空気を炉内に導入するとともに、二次ブロワ34を起動して二次空気導入口23より二次空気を炉内に導入する(S2)。そして、ライザ2内の砂上バーナ24近傍の空塔速度が2.0m/s未満となるように空気流量調整バルブ31、33を制御して一次空気量及び二次空気量を調整する(S3)。
同時に、助燃料流量調整バルブ35を開にして砂上バーナ24を着火する(S4)。ここまでの起動フローを第1制御工程とする。
【0023】
温度測定手段38により温度を連続的に或いは断続的に測定し(S5)、該測定した流動層温度が、予め設定した切替基準温度より高いか否かを判定する(S6)。切替基準温度とは、砂中バーナ25に供給される助燃料の自燃温度より高い所定温度であり、この切替基準温度は予め制御装置40内に設定されている。また自燃温度とは、助燃料に着火することなく該助燃料が燃焼を開始する温度である。好適には、切替基準温度は550〜650℃で、さらに好適には600℃とする。
【0024】
流動層温度が切替基準温度より低い場合には、第1制御工程を続行する。
流動層温度が切替基準温度より高い場合には、助燃料流量調整バルブ35を閉にして砂上バーナ24への燃料供給を停止し、助燃料流量調整バルブ36を開にして砂中バーナ25への燃料供給を開始し、該バーナ25を起動する(S7)。同時に、空塔速度が2.0m/s以上となるように、空気流量調整バルブ31、33によって一次空気量及び二次空気量を制御する(S8)。
そして、炉内が燃焼温度まで昇温したら起動を終了し(S9)、通常運転に入る。通常運転に入る前段までの起動フローを第2制御工程とする。尚、通常運転とは、炉内を所定の空塔速度に維持するとともに、被燃焼物を投入して燃焼を行う運転である。例えば、燃焼温度は800℃である。
【0025】
ここで、起動制御の第1制御工程から第2制御工程までの空塔速度と各空気量の制御の具体例を図2及び図3に示す。図2は流動層温度に対する空塔速度を示すグラフで、図3は流動層温度に対する一次空気量と二次空気量を示すグラフである。ここでは一例として、切替基準温度を600℃に設定している。
図2に示すように、砂上バーナ24のみを起動させた第1制御工程では、空塔速度を2.0m/s未満に設定している。また、空塔速度2.0m/s未満の範囲内で徐々に空塔速度が増加するように一次空気量及び二次空気量を制御している。
砂中バーナ25のみを起動させた第2制御工程では、空塔速度を2.0m/s以上に設定し、通常運転時の空塔速度に近づくように徐々に空塔速度を増加させている。同図に示すように、空塔速度の増加率は、第1制御工程よりも第2制御工程の方が大きい。尚、ここでは直線的に空塔速度を増加させているが、段階的に増加させてもよい。
【0026】
このように本実施形態によれば、循環流動層炉1の起動に際して、砂上バーナ24の着火時には空塔速度を2.0m/s未満にすることによって、流動媒体の砂上バーナ24への衝突による消炎を回避し、砂上バーナ24の火炎の安定化によるCO低減を可能としている。また、低空気量で昇温することにより空気による冷却を回避し、昇温速度の向上を可能としている。さらに、低い空気量で起動することによりNOxの低減が可能である。
一方、砂中バーナへの切替後、空塔速度を2.0m/s以上とすることにより、循環開始による昇温速度の増加が可能であり、また炉内のガス量増加により、一次空気及び二次空気を加熱する空気予熱器における熱交換量が増加し、流動空気温度が増加することで昇温速度の増加が可能となる。
【0027】
また図3に示すように、第1制御工程では、一次空気量が二次空気量よりも小さくなるようにし、第2制御工程では、第1制御工程よりも二次空気量に対する一次空気量の比率を上げることが好ましい。即ち、第1制御工程では、一次空気量をより小さい値とすることにより、砂上バーナ24が消炎したり火炎が不安定になることを防止し、起動時のCO発生を低減させ、砂上バーナの失火頻度を低下させることを可能としている。また、第2制御工程では、一次空気量の増加量を二次空気の増加量より多くすることにより、流動媒体の流動化を促進し、昇温を迅速に行うことを可能としている。
【0028】
図5に、本発明の実施形態を応用させた循環流動層炉を示す。
一例として、循環流動層炉1に供給される被燃焼物は汚泥とする。搬送車で回収された汚泥は、一旦ピット50に貯留される。ピット50内の汚泥はクレーンで移送されてピット50から排出され、循環流動層炉1に供給される。ピット50内の臭気ガスは、排気部51から吸引されて一次空気又は二次空気として炉内に導かれ、炉内で燃焼して脱臭される。
【0029】
本実施形態では、ピット50から炉に導かれる臭気ガスラインと、大気から炉に導かれる大気ラインとを切り替える切替手段53、54を備えている。この切替手段53、54は、温度測定手段38にて測定される流動層温度に基づいて制御装置40により切替制御される。流動層温度が800℃未満のときは、切替手段53、54を大気側に切り替えて大気を一次空気導入口22又は二次空気導入口23に導入する。一方、流動層温度が800℃以上のときは、切替手段53、54を臭気ガス側に切り替えて、ピット50からの臭気ガスを一次空気導入口22又は二次空気導入口23に導入する。
このように、流動層温度が800℃未満のときは、臭気ガスが完全に燃焼せず脱臭が不十分となる惧れがあるため、流動層温度が800℃以上のときにのみ臭気ガスを燃焼空気として用いることにより、臭気成分が完全に燃焼して十分な脱臭処理を行うことが可能となる。
【0030】
また、循環流動層炉1を長期間運転していないとき等は、ピット50内で汚泥の発酵が進むため、ピット50内にメタン等の可燃ガスが充満する可能性がある。そこで、ピット50内のメタン濃度を測定するメタン濃度計52を設置し、該測定されたメタン濃度が爆発下限界以上である場合には、流動層温度に関わらず、切替手段53、54を切り替えないで常時大気を炉内に導入する。好適には、測定したメタン濃度が25%LEL以上のときは流動層温度が800℃以上になっても大気を導入するようにする。
これにより、一次空気又は二次空気を送給するダクト内、或いは炉内での可燃ガスの爆発を防ぎ、安全性を高く保つことが可能である。
【産業上の利用可能性】
【0031】
本発明は、循環流動層炉の起動に際して、流動媒体の吹き上げによる砂上バーナの消炎、或いは火炎の不安定化によるCO発生を防止し、迅速で安定した起動を可能としたため、下水汚泥、都市ごみ、産業廃棄物、石炭等の被燃焼物を焼却処理する循環流動層炉全般に好適に適用できる。
【図面の簡単な説明】
【0032】
【図1】本発明の実施形態に係る循環流動層炉を示す構成図である。
【図2】流動層温度に対する空塔速度を示すグラフである。
【図3】流動層温度に対する一次空気量と二次空気量を示すグラフである。
【図4】本発明の実施形態に係る起動制御を示すフロー図である。
【図5】本発明の実施形態を応用させた循環流動層炉を示す構成図である。
【図6】従来の循環流動層炉を示す構成図である。
【符号の説明】
【0033】
1 循環流動層炉
2 ライザ
2a 流動層
2b フリーボード
3 サイクロン
5 シールポット
22 一次空気導入口
23 二次空気導入口
24 砂上バーナ(第1バーナ)
25 砂中バーナ(第2バーナ)
31、33 空気流量調整バルブ
32、34 ブロワ
35、36 助燃料流量調整バルブ
40 制御装置
50 ピット
51 排気部
52 メタン濃度計
53、54 切替手段

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ライザ下部より導入される一次空気により流動媒体を流動化させ流動層を形成するとともに、該一次空気及び流動層上方より導入される二次空気により流動媒体を吹き上げて燃焼ガスとともにライザ上部より排出し、該燃焼ガスから流動媒体を分離捕集して前記ライザに還流させるようにした循環流動層炉の起動方法において、
前記流動層より上方に設けられた第1バーナと、該流動層内に設けられた第2バーナとを有しており、
前記循環流動層炉の起動に際して、前記第2バーナを停止した状態で前記第1バーナを着火するとともに、前記ライザの空塔速度が2.0m/s未満となるように一次空気量及び二次空気量を制御する第1制御工程と、
前記ライザ内の温度を測定し、該温度が前記第2バーナに供給する燃料の自燃温度以上になった時、前記第1バーナを停止して前記第2バーナから燃料を噴出させるとともに、前記空塔速度が2.0m/s以上となるように一次空気量及び二次空気量を制御する第2制御工程とを備えたことを特徴とする循環流動層炉の起動方法。
【請求項2】
前記第1制御工程にて、一次空気量が二次空気量より小さくなるようにし、前記第2制御工程にて、前記第1制御工程よりも二次空気量に対する一次空気量の比率を上げることを特徴とする請求項1記載の循環流動層炉の起動方法。
【請求項3】
前記ライザ内温度が流動層温度であり、該流動層温度が600℃となった時に前記第1制御工程から前記第2制御工程に切り替えることを特徴とする請求項1若しくは2記載の循環流動層炉の起動方法。
【請求項4】
前記一次空気及び前記二次空気は、前記ライザ内温度が800℃未満の時は大気から導いた空気とし、前記ライザ内温度が800℃以上の時は被燃焼物を貯留するピットから導いた臭気ガスとすることを特徴とする請求項1乃至3の何れかに記載の循環流動層炉の起動方法。
【請求項5】
前記ピット内の臭気ガスの可燃成分濃度を測定し、該測定した可燃成分濃度が、予め設定された爆発下限界以上の時は、前記ライザ内温度に関わらず前記一次空気及び前記二次空気として大気を導入することを特徴とする請求項4記載の循環流動層炉の起動方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2009−250571(P2009−250571A)
【公開日】平成21年10月29日(2009.10.29)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−101504(P2008−101504)
【出願日】平成20年4月9日(2008.4.9)
【出願人】(501370370)三菱重工環境エンジニアリング株式会社 (175)
【Fターム(参考)】