説明

循環的波エネルギー変換システム

【課題】より効率的な波力エネルギー変換装置を提供する。
【解決手段】波から動力を抽出するために羽根角を動的に制御できる循環プロペラを使用したシステムを提供する。このような実施形態のための制御装置は、エネルギー抽出効率を高めるために及び/又は反力を制御するために、循環プロペラの羽根のためのピッチスケジュールを調節することができる。循環プロペラは、水若しくは他の液体の水底、水中、又は水面の位置するフロートに設置される。そして、羽根は、波の性質に応じて、垂直又は水平方向に延びる。ある循環プロペラは、反力及びトルクを最小化するために作動する単一のユニットと組み合わせられ、前記ユニットを水平又は垂直方向に推進させる及び/又は前記ユニットを安定させる。このようなユニットは、係留装置を最小限で使用して又は使用せずに設置することができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、波エネルギー変換システムに関するものである。
【背景技術】
【0002】
推進力として使用される循環プロペラは、通常は、フォイト・シュナイダー・プロペラとしてしられている。また、風車として使用される循環プロペラは、一般的には、垂直軸風車(vertical axis wind turbine:VAWT)又はダリウスロータ(Darrieus rotor)として知られている。他の一般的に使用される用語は、サイクロイド・プロペラであり、その名前は、装置の羽根の経路が、流速とプロペラ回転速度との比率のある特定の範囲に従うことを由来とする。本明細書では、回転中に周期的又は可変的なピッチ変化を示す1つ又は複数の羽根を有するプロペラ及びタービンを意味する、より一般的な用語である循環プロペラを採用する。
【0003】
循環プロペラの最初の文献の1つである特許文献1(米国特許第1,835,018号(Darrieus))は、プロペラのシャフトから放射状にオフセットされて取り付けられた1つ又は複数の羽根を有する回転ディスクを開示している。図1は、特許文献1に開示されている、羽根110のピッチ角を機械的に変化させるプロペラ100を示す。プロペラ100の羽根110は、基部115に対して垂直であり、中心シャフト130に対して平行である旋回軸120を有する。中心シャフト130により駆動される、かつ羽根110に取り付けられた機構140は、羽根のピッチ(即ち、各羽根110と、シャフト130から羽根110の旋回軸120へと延びる線との間の角度)を循環的に変化させる。
プロペラ100では、羽根110の全てが流体内に位置している場合は、羽根110の様々な迎え角がプロペラ100に推進の方向を与える。このタイプのプロペラは、シャフト130で、基部115に対して平行に通過するあらゆる液体流れ方向に対するトルクを生成することができ、垂直軸風力タービン設備において成功的に使用されている。
【0004】
プロペラの主軸に対して垂直なあらゆる方向を通過する液体流れからエネルギーを抽出する能力は非常に重要であり、流体流れの方向が変化し得る場合は、動力抽出のための望ましい性質である。ダリウス循環プロペラはこの能力を有している及び比較的単純であるため、作成及び作動させるのには安価である。しかしながら、ダリウス循環プロペラは制御装置を欠いており、通常は、停止した状態からは自力では回転を開始せず、回転を開始するためには外部電源を必要とする。そのため、このプロペラは、各波力伝搬経路において、流速がゼロから最大速度までの間で変化する波力抽出には不適切である。さらに、これらのプロペラの羽根の最大ピッチは、機構140と主軸130との間の偏心によって固定されるので、このダリウスプロペラは、様々な流速の流れの場に適応又は適合することができない。したがって、このプロペラは、ある流速に対してのみ最適なエネルギー転換率を有し、最適な流れとは異なる流速で作動した場合は、効率は大幅に減少する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】米国特許第1,835,018号明細書
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
波から動力を抽出する現在のシステムは、大抵の場合は、波が通過するたびに上下動する、振動ウォーターカラム(oscillating water column)、ブイ、又は同様のフロートに設置されている。一般的に、これらの波力変換装置のエネルギー変換効率は、理論的には50%未満である。そのため、100%に近づけることができる、より効率的な波力エネルギー変換装置が求められている。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の一態様では、水波から軸動力を抽出するシステムは、動的な羽根角の制御ができる1つ以上の循環プロペラを用いることができる。前記システムのための能動的制御装置は、波サイクルの間に液体流れの方向や速度が変化する場合でも、エネルギーを効率的に抽出するために必要な、循環プロペラの羽根のためのピッチスケジュールを生成及び調節することができる。さらに、ある実施形態では、高変換効率を実現するために、前記循環プロペラは、垂直方向及び水平方向の両方の流体流れからエネルギーを抽出することができる。
【0008】
前記循環プロペラは、エネルギーが抽出される波の性質に応じて、様々な設置方法を用いることができる。前記循環プロペラは、例えば、水域の水底、水中に完全に沈められたフロート、又は水面に浮かぶフロート又は船舶に設置される。プロペラの軸を垂直方向に向ける設置方法は、特に、波エネルギーの大部分が水平方向の流体流れである浅水波からのエネルギー抽出に適している。プロペラの軸を水平方向に向ける設置方法は、水平及び垂直方向の両方の流体流れが重要である深水波に最適である。
【0009】
いくつかの循環プロペラは、反力及びトルクを最小化するために機能する、単一のユニット又はプロペラ群と組み合わせることができる。このようなユニットは、係留索又は他の水底への連結部を最小限で使用して又は使用せずに設置することができる。このことは、高価な及び/又は環境上望ましくない設備が不要となるので、好適である。また、この設置方法は、ユニットの配備及びメンテナンスに関するコストを大幅に減少させることができる。また、プロペラ群の作動は、波動に起因する揺れを減少させるために、浮かんでいる又は水中に沈められているプラットホームを安定させることができる(このことは、本発明の他の用途を提供する)。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【図1】機械的リンク機構によって固定されたピッチスケジュールを有する従来の循環プロペラを示す図である。
【図2A】本発明の一実施形態に係る、ピッチスケジュールの動的制御を含む循環プロペラシステムの側面図である。
【図2B】本発明の一実施形態に係る、ピッチスケジュールの動的制御を含む循環プロペラシステムの軸方向図である。
【図3A】羽根の一端部のみが基部に取り付けられた循環プロペラの実施形態を示す図である。
【図3B】羽根の両端部が基部に取り付けられた循環プロペラの実施形態を示す図である。
【図3C】羽根の両端にサーボモータが取り付けられた実施形態で実施される羽根のねじれを示す図である。
【図4】プロペラユニットの動的制御に好適に使用される2軸流れセンサを示す図である。
【図5】深水波及び浅水波用の波エネルギー変換システムの概略図である。
【図6】エネルギー抽出及び反力のバランスを取るための2つの垂直な循環プロペラが設置された、浮いているプロペラユニットを示す図である。
【図7A】浮いている、浅水波からエネルギーを抽出するための複数の垂直な軸循環プロペラが設置された波エネルギー変換システムを示す図である。
【図7B】水中に沈められている、浅水波からエネルギーを抽出するための複数の垂直な軸循環プロペラが設置された波エネルギー変換システムを示す図である。
【図7C】水底に設置されている、浅水波からエネルギーを抽出するための複数の垂直な軸循環プロペラが設置された波エネルギー変換システムを示す図である。
【図8】深水波からエネルギーを抽出するための複数の水平な循環プロペラが設置された波エネルギー変換システムを示す図である。
【図9】ピッチスケジュールを調節することにより、変換装置を回転又は移動させることができる波エネルギー変換システムを示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
本発明の一態様によれば、ピッチング(pitching)が動的に制御される循環プロペラ(cyclical propellers)は、例えば発電又は浮プラットホーム(floating platform)の安定化のために使用されるエネルギーを水波から効率的に抽出することができる。
【0012】
図2A及び2Bは、本発明の一実施形態に係る循環プロペラシステム200を示している。プロペラシステム200が使用する羽根210のサイズ及び数は、プロペラシステム200からの伝達される目的とする出力、及び、ユニットに含まれる同様の循環プロペラシステムの数に応じて選択される。作動中は、各羽根210は、少なくとも部分的に水中に沈められる、又は水に囲まれる(好ましくは、完全に水中に沈められる)。羽根210は、好ましくは、波サイクルの間における流体流れ(fluid flow)の平均方向の大部分が、羽根シャフト212と垂直となるように方向付けられる。
【0013】
各羽根210は、波の作用の間の予想される水の流れに必要な性質を有するフォイル(foil)を提供するように選択された断面を持つ。一般に、任意の種類のフォイルを羽根210に用いることができるが、フォイルの種類は、システム200で用いられる特定のピッチ変化プロセスに影響を及ぼす。ほとんどの天然の水波で一般的な低流速では、特定のフォイル形状は重要ではなく、平板でさえも羽根210として作用することができるような適切なピッチングスケジュール(pitching schedule)を有する。
【0014】
システム200は、オフセットして設置された羽根210を使用する。各羽根210は、ディスク又は他の基部215に、プロペラシステム200のメインシャフト220から放射状にオフセットして設置される。各羽根210は、例えば対応するサーボ装置230によって、羽根210の制御された回転を可能にするピボットマウント(pivot mounting)を備える。各サーボ装置230は、これらに限定されるものではないが、例えばAC若しくはDCサーボモータ又は油圧若しくは空圧装置などの様々な装置を使用して構成される。サーボ装置230は、基部215に対して、羽根210を個別に回転させることができる。図2Aの実施形態では、各サーボ装置230は、対応する羽根210のシャフト212を回転させるためのトランスミッション、ギア装置、ベルト及びプーリー装置などの関連機構235を使用する。あるいは、サーボ装置230のシャフト(例えば、電気サーボモータのシャフト)が、トランスミッション又は他の付加機構235を介さずに、シャフト212に直接的に取り付けられる直接駆動装置を用いることも可能である。また、羽根210の基部215に対する角度を示す信号を生成する角度センサ252を、羽根210のシャフト212に連結させることもできる。
【0015】
図2A及び2Bのシステム200における羽根210は、その一端又は両端を基部に取り付けることができる。図3Aは、羽根210の一端のみが基部215に取り付けられた循環プロペラ310の一実施形態を示す。図3Bは、羽根210の両端が基部215,215に取り付けられた循環プロペラ320の一実施形態を示す。プロペラ320については、羽根のピッチ角度を制御するために、1つの羽根210当たり、1つ又は2つのサーボモータ320を使用することができる。同一の羽根210に作用する2つのサーボモータ230,230は、羽根210を回転させるときに一致して作動するように同期化させることができる。あるいは、図3Cに示すように、1つの羽根210のための2つのサーボモータ230,230は、羽根210をねじるために、ある範囲内で独立して作動することができる。その結果、羽根210の他端における羽根角(blade angle)は、ねじれ角θだけ変化しうる。羽根のねじれを使用する場合は、羽根210は、曲げに対して剛性を有しているが、柔軟なねじれであることが好ましい。
【0016】
図3Bの循環プロペラ320における各羽根210の両端でのサーボ装置230の使用は、様々な流れ条件に対しての、プロペラ320の両端での羽根角の調節を可能にする。そのため、プロペラ320は、羽根の幅に沿った流体流れの変化の大きさに対して、比較的長くすることができる。各羽根210に沿った流れ条件が同一の場合でも、波とのずれを相殺するために、循環プロペラ320は羽根のねじりを使用することができる。また、羽根210の他端で様々な迎え角を使用することによって、プロペラ320と波を効果的に位置合わせすることができる。したがって、例えば波の方向の変化に起因して斜め波を受けた場合でも、循環プロペラ320は、システム全体を回転させることなくプロペラの位置合わせを回復させることができる。
【0017】
図2Aのシステム200のメインシャフト220は、羽根210が連結される1つ又は複数の基部215に取り付けられる。このことにより、メインシャフト220が、羽根210と装置(例えば、発電装置、又は軸動力を使用する他の装置)240との間のエネルギー伝達を行うことを可能にする。メインシャフト220と装置240との間には、随意的なトランスミッション(例えば、単一ステージギア装置、又は同様の機械駆動装置)245が設けられる。あるいは、装置240をメインシャフト220に直接的に結合させることもできる。作動時は、流体流れが引き起こす羽根210の揚力が、基部215、メインシャフト220、及び機構245を回転させるトルクを生成する。このことにより、例えば、発電、又は他の有用な仕事のための装置240を駆動させる。
【0018】
図2Bは、基部215上の4つの羽根210を、メインシャフト220の方向に沿って示す。上述したように、他の実施形態は、任意の数の羽根210を含むことができ、羽根210の一端又は両端が基部215に取り付けられる。図2Bに示すように、羽根角αは、基部215及びメインシャフト220の回転に追随する各シャフト212の円の正接(タンジェント)に対する羽根210の相対角を規定する。回転角θは、基部215の回転角を規定する。このことにより、基部215が回転したときの羽根210の位置が規定される。図2Bでは、基部215上に90°の間隔で配置された4つの羽根210を示す。羽根角αは、流体流れνの図示する方向に対して設定される。
【0019】
各羽根210の迎え角は、一般に、対応する羽根角α、回転角θ、基部215の角速度ω、及び、自由流の流体流れνの方向及び速度に依存する。さらに具体的に言うと、羽根210のフォイルの基線の方向は、羽根角α及び回転角θに依存する。また、前記迎え角は、前記フォイルの基線と、前記フォイルでの前記流体流れの方向との間の角度である。フォイルでの流速は、羽根の速度と自由流の流体流れνとのベクトルの和であり、自由流の流体流れν、回転角θ、及び基部215の角速度ωに依存する。システム200は、迎え角を変化させるために必要な羽根角αを変化させて、フォイルの周囲に効率的な流体流れを提供することができる。このことによって、最適なエネルギー伝達が得られる。
【0020】
メインシャフト220及び羽根シャフト212は、シャフト220及び212の方向(例えば、回転角θ及び羽根角αを測定する)を測定する角度位置センサ254及び252(図2A)を備えている。付加的なセンサ256は、流体の性質(例えば、平均速度、自由流体流れの方向など)を検出するのに使用することができる。このことにより、サーボモータ230を制御する制御装置250は、どの時点でも、現在の流れ場(flow field)に応じて角羽根210の羽根角αを変化させるための目的とするピッチングスケジュールを決定することができる。センサ252及び254は、例えば、レゾルバ、タコメータ、又はエンコーダなどの角度を示すことができる任意の種類の標準的な装置を使用して実施することができる。センサ256は、流体の任意の所望する性質(これらに限定されるものではないが、例えば、流体流れの方向及び大きさ)を測定することができる。流体の流れ場は、例えば、好ましくは、メインシャフト220に垂直なあらゆる方向に方向付けられ、任意の種類及び/又は風向計型の装置を使用して測定することができる。センサ256に適した付加的なセンサ装置については後述する。
【0021】
図2の制御装置250は、特定用途向けのハードウエア、又は汎用処理装置(例えば、羽根210の角度を変化させるためにピッチングスケジュールを選択及び制御するようにプログラムされたパーソナル・コンピュータ)を使用して実施することができる。制御装置250は、基部215に取り付けることができる。あるいは、制御装置250は、基部215から分離することができ、回転基部215上の装置230及び/又は252とは有線又は無線接続を介して通信することできる。具体的には、制御装置250は、センサ252、254及び256から伝達された情報を使用して、ピッチングスケジュールを決定することができる。また、制御装置250は、サーボモータ装置230に命令して、各羽根210のピッチを個別に変更することができる。また、制御装置250は、角度センサ252及び254をモニタして、羽根210が(例えば、効率的なエネルギー伝達を提供する、目的とする渦巻き生成パターンを生成するために)要求どおりにピッチングしているかを判断することができる。自由流速度と羽根位置での回転速度との比である先端速度比λの値は、波が通過する間に受ける全ての流れ状態をカバーする、ゼロから非常に大きい値の間となるように選択することができる(詳細については後述する)。
【0022】
図2Aのシステム200におけるセンサ256は、上述したように、ピッチングスケジュールを選択する際に制御装置250で使用される瞬時の流体状態を検出することができる。流体状態を検出するための様々な方法を用いることができる。従来は、風車と風向きを一致させるためには、風向計が使用されていた。風向計は、流れの方向が徐々に変化する場合には良好に作動するが、波によって生じた流動場(特に、浅水波の場合)でよくあるように、流れの方向が瞬時に反転する場合には流れを効率的に測定することができない。複数の波がある場合は、一般に、波が通過するたびに流れの方向が180°変化することが2回生じる。方向が瞬間的に変化する場合は、方向が変化する瞬間の流速は小さく、反転後の流れは風向計の方向であり、風向計を反転させるモーメントの生成は小さい又はほとんどないので、風向計の方向反転の検出は非常に遅い及び不安定である。したがって、風向計方の装置は、波流れの方向の測定には不適である。
【0023】
旋回点に取り付けられる物体を備える中立浮遊抗力(neutrally buoyant drag)は、瞬間的な流速を測定する作業により適している。図4は、例えば球体410などの中立浮遊物体を使用する例示的なセンサ400を示す。球体410は、球体410の許される動作を含んでいる表面に対する正接する面における、流速の大きさ及び方向に比例する及び対応する方向の抗力を受ける。センサ400は、例えば、図2Aのシステム200の基部215に平行な平面における液体流れを測定するために方向付けられる。センサ400では、ロッド412は、球体410を、旋回点414及び2つの力変換器422,424に連結する。あるいは、一般的な2軸力平衡によって、球体410に作用する抗力を直接的に検出する。どちら場合でも、2次元流れベクトルの方向及び大きさの両方が測定される。さらに、第三の軸に沿った流れ情報が必要な場合は、ロッド412の長さに沿った応力が測定される。
【0024】
プロペラのサイズが、波によって生じた流れ場の空間分布と比較して小さい場合は、プロペラシステムは、ピッチ変化を選択するためのプロペラ制御装置に必要な流れ情報を提供するために、図4に示した種類の単一のセンサを使用することができる。センサ400は、回転プロペラ座標系における流速を測定するために、プロペラ自体に据え付けられている又は取り付けられる。長い羽根を有する又は羽根のねじれを用いる循環プロペラの場合は、センサ400はプロペラの一方の端部に設けられる。一方、プロペラの直径が流体性質と比較して大きい場合は、各羽根に(羽根のねじりを使用する場合は各羽根の端部に)分離流れ方向検出センサ400が必要である。
【0025】
上述した循環プロペラシステムのある実施形態では、電子センシング、信号伝達、及び制御装置を使用する。しかしながら、図4に示したような抵抗生成物体と、偏心性羽根制御機構との間の機械的リンク機構は、波力抽出のための可変羽根ピッチを有する、簡潔な機構の可変ピッチ制御された循環プロペラを可能にする。
【0026】
流れ場をセンシングするための他の方法では、各羽根が受けた反力を使用する。一般的なフォイルが受けたピッチングモーメント、揚力、及び抗力は、羽根の迎え角及び速度の大きさである。したがって、羽根のシャフトが受けたトルク、又は羽根の旋回点に作用する力が測定されれば、力の測定結果は、羽根の瞬間的な流れ方向を直接的に推定するのに使用される。例えば、図2Aのシステム200がサーボ装置230に使用される一般的なDCサーボモータセットアップを使用する場合は、シャフト212に回転トルクはモータ電流に比例する。したがって、羽根の角度が制御されている場合は(例えば、フィードバック制御装置を使用して一定に保たれている場合は)、羽根のピッチングモーメントは、サーボモータの電流から推定することができる。このようにして、サーボ装置230は、付加的なセンサハードウエアを用いることなく、ピッチングモーメントを測定することができる。ピッチングモーメント、揚力、又は抗力が判明すると、センサ256は、例えば単純な風速計を使用して流速の大きさを決定することができる。
【0027】
流れの方向を測定する別の方法は、迎え角を推定するのに、羽根210のフォイルの周囲の表面圧力分布を用いる。羽根210の表面に沿ったある位置における絶対圧力、又は少なくとも2つの位置の間における相対圧力を測定することにより、瞬間的な揚力が導き出される。そして、風速計を使用して再び測定して流速の大きさが分れば、揚力から迎え角が導き出される。
【0028】
流れ方向のセンシングは、一般に、基部215の各周期の間中、各羽根210の羽根角を正確に制御するために使用される。例えば、羽根角αは、一般に、循環的に変化する、かつ、羽根の回転速度が流体流れの方向に対して平行又は垂直である場合、最小及び最大幅を有する。液体流れの大きさは、羽根の最大迎え角を制御するために検出される。一般に、プロペラのサイクルの間における羽根角の変化の大きさは、低速の自由液体流れのために大きくすべきである。上述した検出方法は、付加的な装置を用いることなく、流体の方向及び速度の両方を測定することができる。そして、制御装置が、波エネルギーを効率的に抽出するために、羽根角αを変化させるピッチングスケジュールを選択することを可能にする。
【0029】
従来、羽根の迎え角の制御は、液体流れが羽根の吸引側から分離される、失速と呼ばれている作用を防止することを第一の目的としていた。失速が生じると、静的状態下では揚力の損失に至り、その結果、効率が損なわれる。しかしながら、最近の研究では、循環プロペラは、迎え角が失速角を超えた場合に、揚力係数を高めるために、動的揚力として一般に知られている現象を使用できることを発見した。この機構は、例えば波の流れで見られる低速の流れに対して非常に効果がある。共有に係る米国特許出願第11/375,817号(この参照により本発明に含まれるものとする)には、本発明の実施形態において効率的な波エネルギー抽出を提供する動的揚力を実現することができる、循環プロペラの作動についてのさらなる説明がなされている。
【0030】
上記の循環プロペラの変形例は、基本的な運動量理論(momentum theory)の制限及び法則に従うと依然として考えられている。運動量理論は、プロペラが取り付けられた装置が、抽出されたエネルギーの量に比例する力を受け、前記力は流体流れの方向に作用することを特に示す。一般にプロペラの支持構造が負担するこの反力は、一般に、前記支持構造が必要な強度(例えば、従来の風車を支持する塔の強度)を決定する。安定した海流からエネルギーを抽出する従来の水車の場合、海底の基部又はアンカーポイントは反力に耐えるため、そのような水車は多大なコストを要する。しかし、水波の非定常性は、支持構造を最小化するためのまたとない機会を提供する。本発明の他の態様では、波エネルギー変換システムは、様々な種類の波のために様々な環境に配置するための独自のシステムである複数の循環プロペラを用いることができる。
【0031】
運動量理論にしたがいながら、波エネルギー変換システムは線形波理論との関連で、到来波に対して逆位相で作動する波発生器として作用する。このようにして、波エネルギー変換システムで生成された波を重ね合わせることによって、到来波を相殺し、そのエネルギーを抽出する。したがって、波エネルギー変換システムが到来波に対して同一の逆位相を作成することができれば、波エネルギー変換システムは、理論上は、到来波のエネルギーの抽出を100%達成することができる。本発明で説明した2次元の装置は、(少なくとも理論上は)2次元波に対して上記のことを実現することができる。しかし、波が波高点(wave crest)の方向に放射されるため、二次元波においては振動水カラムやブイなどの装置は、理論上は最大50%のエネルギー抽出効率しか得られない。したがって、本発明に係る波エネルギー抽出装置は、従来の振動水カラムやブイよりも優れている。
【0032】
2つの本質的に異なる種類の水波は、一般的に、浅水波及び深水波と呼ばれている。浅水波は、水深に対する波長の比が小さいことを特徴とし、深水波は、水深に対する波長の比が大きいことを特徴とする。これらは、2つの極端な場合であり、これらの間に、すべての可能性がある水深に対する波長の比が入る。図5は、両方の波の種類を概略的に示し、図5中の矢印は、1つの波伝播経路における水粒子の流路510及び520を示す。両方の場合で、水粒子及び流れは、閉ざされた経路510及び520を流れる。しかし、深水波の流路510はほぼ円形であり、浅水波では水粒子が逆流して水平となり、ほぼ直線経路520となる。本発明の実施形態は、浅水波及び深水波の両方から、並びに、浅水波及び深水波の中間の全ての場合から、波力エネルギーを抽出することができる。しかしながら、異なる実施形態及び実施例では、異なる種類の波からエネルギーを抽出するために最適化することができる。
【0033】
浅水波の流路520は、水平運動の波力エネルギーの大部分を含んでいる。さらに、流路520の流体エネルギーは、海底と海面との間で、垂直方向により均一に分布する。したがって、循環プロペラは、水面と海底との間の任意の位置に配置することができ、浅水波から同量のエネルギーを抽出することができる。浅水波の伝播方向の流れ場は一次元に近いので、垂直方向に回転する軸を有する循環プロペラ540は、エネルギーを最大限に抽出することができる。波伝播の方向は、多くの場合は風向きに依存する。しかし、垂直な羽根を有するプロペラ540は、水面に沿ってあらゆる方向に伝播される波は、プロペラ540の垂直羽根に対して常に垂直に伝播されるので、波伝播の方向が変化した際に位置合わせさせる必要はない。このことにより、例えば図5に示すようにプロペラ540を海底に設置することによって、プロペラ540を波エネルギー変換システムとして簡潔に設置することが可能となる。したがって、プロペラ540の支持構造は、動力抽出によって生じた反力を海底に直接的に伝達させることができる。他の可能性のある設置としては、循環プロペラを、水上の船舶、又は、潜水艦型の船舶の表面又は底面の任意の位置に取り付けることがある。しかし、1つの循環プロペラのみを使用する場合は、水上のフローティングは、一般に、反力を海底に伝達させるためのある種のアンカーポイント及び係留索を必要とする。
【0034】
本発明の他の実施形態では、フロート、水中又は海底構造に、2つ又はそれ以上のプロペラを設置する。図6は、例として、2つのプロペラ620,630が設置されたフロート610を備える波エネルギー変換システム600を示す。図示した実施形態では、プロペラ620及び630は、浅水波の略水平な流路640からの効率的なエネルギー抽出を可能にする垂直な羽根を有する。フロート610に設置された循環プロペラ620及び630は1/2波長離れており、そのことによって、波の全期間に渡って、プロペラ620はプロペラ630の周囲の流体と反対方向の流れの中にある。その結果、プロペラ620及び630が受ける反力は反対方向であり、相殺することができる。特に、流速が等しい場合は、各プロペラ620又は630の反力の大きさはほぼ等しく、反力の方向は他方のプロペラ630又は620の反力の方向と反対方向である。この構成は、フロート610は、海底に伝達させる必要がある反力を少ししか又はほとんど受けないので、特に好適である。実際は、比較的小さいアンカー(図示せず)で風及び/又は海流などの影響並びに正味反力を相殺することによって、フロート610の定位置を維持することができる。しかし、プロペラ620及び630の羽根角のピッチングスケジュールの選択による各プロペラ620及び630によるエネルギー抽出量の能動的制御によって、風及び海流の影響を相殺してフロート610の位置を維持するための波エネルギー変換システム600における正味反力を生成することができる。さらに、波力を使用してフロート610を所望する方向へ推進するために、循環プロペラ620及び630のピッチングスケジュールの変化を調節することができる。
【0035】
循環プロペラの間隔が波の波長と完全に一致する場合は、2つの循環プロペラ620及び630は力を相殺するのに十分である。プロペラ620及び630の一方又は両方は移動可能に設置されており、変換装置610が異なる波長の水波に適応することを可能にする。また、波エレルギー変換装置は、波長が変化する波の存在下で、より効率的なエネルギー抽出及び反力の解消を可能にする大きな柔軟性を得るために、3つ又はそれ以上のプロペラを用いることができる。図7Aは、例として、3つの循環プロペラ720,730及び740を備えるフロート710を使用した波エネルギー変換システム700を示す。全てのプロペラ720,730及び740は、波エネルギー変換率を最大化するために作動する。そして、反力の不均衡を補う係留索及びアンカー750によってフロート710の静止を保つ。この場合、反力の不均衡は、プロペラの数が奇数であること、及び、波の波長と循環シリンダの間隔との間の可能性のある不一致に起因する。あるいは、波エネルギー変換システム700又は同様の装置のための制御装置(図示せず)が、プロペラ720、730及び740のピッチングスケジュールを制御することができる。このことにより、フロート710の静止を保つ又はフロート710を所望する方向へ移動させせるための外力に打ち勝つために、プロペラ720、730及び740の個々のエネルギー抽出によって生じた反力のベクター和によって、フロート700における外力(例えば、風又は海流)のバランスを取ることができる。プロペラの間隔が半波長以下の場合でも、様々なエネルギー変換率を、複数のプロペラを備えるエネルギー変換ユニットに使用することができる。
【0036】
図7Aの波エネルギー変換システム700は、本発明を保ちながら、様々な方法で変更することができる。例えば、フローティング波エネルギー変換システムは、プロペラを一次元又は二次元配列に配置する複数プロペラ構造において、任意の数の及び任意の種類の循環式プロペラを用いることができる。さらに、異なる循環又は非循環プロペラの種類を組み合わせることも可能である。例えば、波エネルギー変換システムは、主にエネルギー抽出のための多数の固定ピッチプロペラ、及び、位置の維持のための少数の可変ピッチプロペラを含むことができる。1つのフロートは、2つ又はそれ以上のユニットを用いることができる(事実上、上限はない)。3つ又はそれ以上の循環プロペラにより、前記プロペラは、直線上に配置される又は2次元パターンで配置される。フロートは、大規模なエネルギー抽出を行うべく、波エネルギー農場を形成するために、集団化される。
【0037】
反力を減少させる利益は、フローティング装置に限定されるものではない。例えば、複数の循環プロペラ720、730及び740は、図7Bに示す水中構造や、図7Cに示す海底構造に設置することもできる。図7Bの水中構造では、循環プロペラ720、730及び740は、ウインチ装置765を介してアンカー750に取り付けられた浮遊プラットホーム760に設置される。ウインチ765を作動させることにより、メンテナンスのために、プラットホーム760を海面まで上昇させることができる。また、ウインチ765を作動させることにより、エネルギー抽出を最適化するために、プロペラ720、730及び740の深さを調節することができる。図7Cの海底構造では、循環プロペラ720、730及び740が、一般的な海底のプラットホームに設置される。全てのプロペラ720、730及び740が、最大の波エネルギー変換率で作動し、プロペラの数が奇数のために反力が相殺されない場合でも、個々のユニットの3倍の力を提供する間に、プラットホーム760及び770が必要とするのは、1つのユニットの反力を支持することができる海底取り付けケーブルのみである。
【0038】
上述したように、複数プロペラユニットにおいて可変ピッチングスケジュールが使用される場合は、反力のバランスを取るために、ピッチ制御機構が、個々のユニットによるエネルギー抽出量を一時的に減少させることができる。この方法は、係留索及びアンカーを免除するのにのみ使用できるのではなく、取り付けられたフロート又は水中型フロート(submarine)を波に対してあらゆる方向に推進させることができる。したがって、フロート又は水中型フロートに設置される波エネルギー変換システムは、自身で推進することができる。したがって、外部エネルギー入力を用いることなく、海岸から離れ、ユニットを再配置する、さらには物資又は人間を輸送することができる。
【0039】
水平方向の軸を有する循環プロペラは、浅水波又は深水波でのエネルギー抽出に使用することができるが、波面を羽根に平行に保つための能動的な位置合わせ装置を必要とする。上述したように、流体流れがほぼ水平である浅水波に対して垂直羽根を使用すると、位置合わせ装置は不要となる。図5における左側に示した深水波では、水粒子の動きは円形なので、水の動きのエネルギーは垂直及び水平方向の水の動きに均等に含まれる。したがって、流れ方向の半分はプロペラの軸方向に沿っているので、深水波でのエネルギーの半分は、垂直方向の軸を有する循環プロペラではアクセスすることができない。到来波に対して水平及び平行な軸を有する循環プロペラは、深水波からエネルギーをより効率的に抽出することができる。また、図5は、水面から遠ざかるにつれて速度が減少し、海底では速度がゼロになる流動を引き起こす深水波を示している。このことは、波エネルギー変換システムの好ましい配置位置は、水面の近くであることを示す。上述した局所的な流れ分析に基づく効率については、一方向の直線運動のみを使用する波変換装置の効率を深水波の波エネルギーの50%までに制限する遠距離直線的2D波理論(far field linear 2D wave theory)によって裏付けられている。これとは対照的に、ここで説明した2次元の循環波エネルギー変換システムは、理論上は、波エネルギーを100%抽出することができる。
【0040】
図8は、深水波に好適な波エネルギー変換システム800を示す。変換装置800では、フロート810に4つの循環プロペラが設置されている。図8に示すように、個々の循環プロペラ820が受けた反力は、波サイクルの間にプロペラを通過する流れに対応する2次元平面内にある。プロペラ820は、1/4の波長の中心に位置する。その結果、各プロペラ820は、各隣接プロペラ820が受けた反作用に対して垂直な反力を受け、1つの全体波長の内に設置された場合は、4つのプロペラ820は全ての反力を相殺するのに十分である。図示された4つのプロペラを有する構造は、フロート810を揺らす不安定なトルクを生成し得る。しかしながら、力及びモーメントのバランスを取るためにより多くのプロペラを用いることができる。または、上述したのと同様な方法で、可変ピッチユニットによって、全ての力及びモーメントのバランスを制御することができる。
【0041】
また、図8は、変換装置800における正味反力を制御するためのフィードバックシステムの実施例を示している。フィードバックシステムは、加速フロート810の方向及び大きさを測定可能な、加速度計を含む慣性計測装置又は他の装置を含んでいる。作動中は、制御装置850は、測定ユニット840からの加速度計測を受信し、プロペラ820のピッチングスケジュールを変化させることによって応答する。具体的には、制御装置850は、どのプロペラが現在、測定された加速度に沿って又は反対の方向の成分の反力を受けているかを判断するために、各プロペラ820のセンサ及び制御装置と通信する。具体的には、循環プロペラ820の各メインシャフトは、プロペラに作用する力の水平及び垂直方向の成分を測定するセンサを具備する。制御装置850は、それらの測定結果を処理し、総体的な力の量のバランスを取るための反作用力を生成すべく、各プロペラ820に制御信号を送信する。具体的には、制御装置850は、加速方向の反力成分によってプロペラ820の変換率を減少させるために、及び/又は、加速方向とは反対方向の反力成分によってプロペラの変換率を増加させるために、ピッチングスケジュールを変化させることができる。一定の動作環境を得るために、各プロペラにおける反力の方向は、波周波数によって回転する。各プロペラ820は、プロペラの回転周波数と振動する第1の成分と、波周波数と振動する第2の成分とを含むピッチングスケジュールで作動する。
【0042】
図示した例では、プロペラ820(1番目)では小さい上向きの力が、他のプロペラ820(3番目)では下向きの大きな力が、正味の下向きの力に加えられ、プラットホーム810を水中深くに沈めさせる。また、力は、フロートの長さ方向における重心の推定される中心に対して左右対称ではないので、フロートは上向きに縦揺れする。制御装置850は、したがって、力及びモーメントの両方のバランスを取るために、4番目のプロペラに対して積極的な下向きの力を生成する必要がある。制御装置850は、例えば衝突する風又は表面波によって生じたプラットホーム810に作用する第2の力を検出するために、プロペラ820で測定された力を使用することができない。前記構成を改善するために、慣性計測装ユニット840が、プラットホームのピッチ率及び垂直又は水平加速度を検出する。ユニット840からの入力を、制御装置850で処理された情報に加えることによって、制御装置850は、プラットホームに作用する全ての力のバランスを取ることができる。慣性計測装置840は、プラットホーム810に作用する正味力を検出することができるので、プロペラ820の力センサの代わりに使用することができる。しかし、センサノイズ考慮と同様に冗長性により、この組み合わせたシステムは好適である。この例では、抽出面への水平軸の周囲のプラットホームの安定性のみが示されている。しかし、一般的に6自由度位置制御と呼ばれる、全ての3空間方向の位置保持と同様に、このコンセプトは、全ての3空間軸の周囲の安定を実現するために、拡張することが可能である。
【0043】
深水波で使用される循環プロペラの水平軸は、中間水波からエネルギーを抽出することができる。中間水波は、水粒子の経路が楕円の短径方形(垂直方向)であり、楕円の長径は水平方向なので、垂直方向にはエネルギーをあまり含んでいない。だが、全てのエネルギーはプロペラ軸に垂直に向かうので、変換可能である。
【0044】
エネルギー抽出を最適化するために、水平方向のプロペラの軸は、波高点の方向と平行に位置合わせされる。位置合わせはユニットを正確に係留することにより実現されるが、波の方向が変わると係留索を再調整する必要がある。上述した別の方法では、羽根のねじりを用いる循環プロペラを使用する。また、さらなる別の実施形態では、軸が位置合わせされたプロペラを少なくとも2つ含む集団を使用する。図9は、例として、平行な軸の循環プロペラ920を6つ備えている波エネルギー変換システム900を示す。6つの循環プロペラ920は、波伝播方向に3つのプロペラが並ぶ構造(幅方向に2列)であり、3つのフロート又はポンツーン910に設置されている。変換装置900は、適切に左側及び右側の反力のバランスを取ることにより、波高点と平行になるように再度位置合わせをすることができる(例えば、回転により)。同様にして、図7A及び7Bに示すように、プロペラ920の端部にポンツーン910を使用して、変換装置900が水面上に浮遊するのを維持する、又は嵐の場合の砕ける表面波及ぶ風による損傷から保護するために変換装置900を水中に沈められた状態を維持することができる。同様の方法によって、浅水波の集団のためには、循環プロペラのエネルギー変換率を調節すべくピッチングスケジュールを制御することにより、変換装置900は配備及び再配置のために自身を推進させることができる。
【0045】
波エネルギー変換システムを、水面、水中、及び水底に配置した場合は、相対的な長所及び短所がある。メンテナンスの容易さに関しては、水面に浮かせて配置した波エネルギー変換システムが最適である。水面に浮かせて配置した波エネルギー変換システムの短所は、ときおり、暴力的な空気−水界面に晒されることであり、特に嵐の存在下では、風又は砕ける表面波に対して前記変換装置を無防備にする。一方、水底に配置された場合は、環境影響についての問題が生じる、及び、全ての深水波エネルギー抽出に適用可能ではない。これらの問題は、中間又は水中に配置することがもっとも良いことを示す。このことを実現する簡潔な方法は、図7Bに示すように及び上述したように、その長さが水深以下の長さに短くされたケーブルを使用して、若干陽性な浮力を有するアッセンブリに重いアンカーを取り付けることである。この構成により、波エネルギー変換システムを、水面から所定の深さに維持することができる。そして、鋼線ケーブルを切断することによって、損失を防止しつつユニットを水面に戻すことができる。また、このユニットは、メンテナンス及び移動のために、水面に浮くことができる。
【0046】
おおよそ中立的な浮力を有する、水平軸を有する循環プロペラアセンブリは、上述した位置フィードバック制御を使用して、垂直方向の反力のバランスを取ることによって、所定の又は調節された深さに動的に維持することができる。前記変換装置を嵐から保護するために、又は、変わりやすい波条件からエネルギーを最大限に抽出するために、水深は例えば波高に応じて調節することができる。技術的にはより複雑であるが、これらの進歩した係留オプションは、注目すべき利点を提供し、水面上の気象の悪条件を乗り越えることができる。図8の変換装置800は、4つの水平に設置された循環プロペラ820を使用することにより、例えば、フロート810を安定させる、又は、変換装置800の位置若しくは深さを変更すべく横方向若しくは垂直方向の反力を生成することができる。
【0047】
上述した水平軸を集合させる機能に加えて、垂直反力の制御を使用することにより、全体ユニットを所定の水深で動的に安定させ、波の存在下でプラットホームが傾いたり揺れたりすることを防止することができる。この特徴は、エネルギー抽出以外にも、外部電源を必要とすることなく、航空母艦型の動作、石油採掘、又は、大洋の真ん中に浮かぶ有人若しくは無人の人工島にも使用することができる。
【0048】
以上、本発明の様々な実施形態を説明したが、これらの実施形態は例示的なものであり、本発明を限定するものではない。本発明の細部の実施にあたっては、当業者は、開示された実施例に様々な改良を加えることが可能である。従って、本発明の範囲は、特許請求の範囲及びその均等範囲によってのみ規定されるものである。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
波エネルギー変換システムであって、
メインシャフト、
前記メインシャフトと共に回転すべく該メインシャフトに取り付けられた第1の基部、
各羽根が前記メインシャフトからオフセットして配置された、一枚以上の羽根からなる羽根群とを含む循環プロペラ、及び
前記各羽根の羽根角を調節すべく前記羽根を該羽根の軸の周りに回転させために、前記羽根の第1の端部を前記第1の基部に取り付ける第1の回転装置を含む循環プロペラと、
波が伝播される水の性質をセンシングするセンサ装置と、
前記センサ装置及び前記第1の回転装置に作動可能に接続された、前記羽根のピッチサイクルを制御するための制御装置とを備えることを特徴とするシステム。
【請求項2】
請求項1に記載のシステムであって、
前記第1の回転装置は、前記制御装置の制御下で前記対応する羽根を回転させるべく該羽根に連結されたサーボモータを含むことを特徴とするシステム。
【請求項3】
請求項1に記載のシステムであって、
前記各羽根は、水中で垂直方向に延びることを特徴とするシステム。
【請求項4】
請求項1に記載のシステムであって、
前記各羽根は、水中で水平方向に延びることを特徴とするシステム。
【請求項5】
請求項1に記載のシステムであって、
前記センサ装置が水中での流体流れの方向及び大きさを測定し、
前記制御装置が前記流体流れの測定結果に基づいて前記各ピッチサイクルの大きさ及び回転数を調節することを特徴とするシステム。
【請求項6】
請求項1に記載のシステムであって、
前記センサ装置は、
流体流れの抗力を受ける物体と、
前記物体に作用する抗力を測定すべく前記物体に連結された力トランスデューサとを含むことを特徴とするシステム。
【請求項7】
請求項1に記載のシステムであって、
前記センサ装置は、前記羽根群の内の対応する1つの羽根を回転させるのに必要な力を測定することを特徴とするシステム。
【請求項8】
請求項1に記載のシステムであって、
前記センサ装置は、前記羽根群の内の1つの羽根の表面の圧力を検出すべく該羽根に取り付けられた圧力センサを含むことを特徴とするシステム。
【請求項9】
請求項1に記載のシステムであって、
第2の基部と、
前記各羽根の第2の端部を前記第2の基部に取り付ける第2の回転装置とをさらに備えることを特徴とするシステム。
【請求項10】
請求項9に記載のシステムであって、
前記制御装置は、前記各羽根を個別にねじるために、前記第1及び第2の回転装置を制御することができることを特徴とするシステム。
【請求項11】
請求項1に記載のシステムであって、
前記循環プロペラが設置される、水面に浮かぶプラットホームをさらに備えることを特徴とするシステム。
【請求項12】
請求項1に記載のシステムであって、
循環プロペラが設置される、水域の水底に設置されたプラットホームをさらに備えることを特徴とするシステム。
【請求項13】
請求項1に記載のシステムであって、
循環プロペラが設置される、水中に沈められ水面と水域の水底との間に配置されたプラットホームをさらに備えることを特徴とするシステム。
【請求項14】
液体中で使用されるプラットホームと、
前記プラットホームに設置された複数の循環プロペラと、
前記各循環プロペラのピッチサイクルを制御すべく該循環プロペラに接続された制御装置とを備え、
前記制御装置は、前記循環プロペラが前記液体中で波からエネルギーを抽出する変換率を設定するために、及び、そのことによって前記循環プロペラの反力を制御するために、前記ピッチサイクルを調節することを特徴とするシステム。
【請求項15】
請求項14に記載のシステムであって、
前記制御装置は、前記循環プロペラの正味反力を制御するために、前記循環プロペラの前記変換率を設定することを特徴とするシステム。
【請求項16】
請求項15に記載のシステムであって、
前記制御装置は、前記正味反力を最小化することを特徴とするシステム。
【請求項17】
請求項15に記載のシステムであって、
前記制御装置は、前記循環プロペラに作用する外力に対抗するために、前記正味反力を制御することを特徴とするシステム。
【請求項18】
請求項15に記載のシステムであって、
前記制御装置は、前記プラットホームを推進するために、前記正味反力を制御することを特徴とするシステム。
【請求項19】
請求項15に記載のシステムであって、
前記制御装置は、前記循環プロペラの深度を変更するために、前記正味反力を制御することを特徴とするシステム。
【請求項20】
請求項14に記載のシステムであって、
前記制御装置は、前記プラットホームを安定させるために、前記反力を制御することを特徴とするシステム。
【請求項21】
請求項14に記載のシステムであって、
前記プラットホームは、前記液体の水面に浮かぶことを特徴とするシステム。
【請求項22】
請求項14に記載のシステムであって、
前記プラットホームは、水域の水底に設置されることを特徴とするシステム。
【請求項23】
請求項14に記載のシステムであって、
前記プラットホームは、前記液体中に沈められ前記液体の水面と水域の水底との間に配置されることを特徴とするシステム。
【請求項24】
請求項14に記載のシステムであって、
少なくとも1つの前記循環プロペラは、前記液体中で垂直方向に延びる羽根を有することを特徴とするシステム。
【請求項25】
請求項14に記載のシステムであって、
少なくとも1つの前記循環プロペラが、前記液体中で水平方向に延びる羽根を有することを特徴とするシステム。
【請求項26】
請求項25に記載のシステムであって、
前記複数のプロペラは、複数列の、水平な羽根を有する前記循環プロペラを含み、
前記制御装置は、前記循環プロペラの羽根を前記液体の波高点と位置合わせさせるのに必要な前記循環プロペラの変換率を設定することを特徴とするシステム。
【請求項27】
請求項14に記載のシステムであって、
前記プラットホームは、複数のプラットホームの内の中心のプラットホームであり、
前記複数の循環プロペラは、
前記中心のプラットホームと、前記複数のプラットホームの内の第1のプラットホームとの間に設置される第1の循環プロペラ群と、
前記中心のプラットホームと、前記複数のプラットホームの内の第2のプラットホームとの間に設置される第2の循環プロペラ群とを含むことを特徴とするシステム。
【請求項28】
波からエネルギーを抽出する方法であって、
循環プロペラの羽根を、波が伝播される液体中に設置するステップと、
前記波によって生じた流体流れを測定するステップと、
前記流体流れの測定結果に基づいて、前記循環プロペラのピッチサイクルを調節するステップとを含むことを特徴とする方法。
【請求項29】
請求項28に記載の方法であって、
前記羽根を設置するステップは、
前記羽根が前記液体中で垂直方向に延びるように該羽根を設置することを特徴とする方法。
【請求項30】
請求項28に記載の方法であって、
前記羽根を設置するステップは、
前記羽根が前記液体の水面と平行に延びるように該羽根を設置することを特徴とする方法。
【請求項31】
複数の循環プロペラが設置されたプラットホームを含むシステムを作動させる方法であって、
前記循環プロペラの羽根を、波が伝播される液体中に設置するステップと、
前記循環プロペラが前記波からエネルギーを抽出する変換率を設定するために、及び、そのことによって前記循環プロペラ上の反力を制御するためにピッチサイクルを調節するステップとを含むことを特徴とする方法。
【請求項32】
請求項31に記載の方法であって、
前記反力は、前記システムを推進するために制御されることを特徴とする方法。
【請求項33】
請求項31に記載の方法であって、
前記反力は、前記プラットホームを安定させるために制御されることを特徴とする方法。

【図1】
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【図2A】
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【図2B】
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【図3A】
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【図3B】
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【図3C】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7A】
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【図7B】
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【図7C】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2013−64406(P2013−64406A)
【公開日】平成25年4月11日(2013.4.11)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−263989(P2012−263989)
【出願日】平成24年12月3日(2012.12.3)
【分割の表示】特願2007−178464(P2007−178464)の分割
【原出願日】平成19年7月6日(2007.7.6)
【出願人】(511057928)アターギス エナジー コーポレイション (1)
【Fターム(参考)】