説明

微多孔膜ならびにかかる膜の作製方法および使用方法(関連出願の相互参照)

本発明は、ポリオレフィンを含む微多孔膜、バッテリーセパレーターとしてのかかる膜の使用、およびかかる微多孔膜の製造方法に関する。特に、本発明は、120.0℃〜130.0℃の範囲のシャットダウン温度および30.0%以下の最大固体熱収縮を有する微多孔膜に関する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本出願は、2009年5月11日出願の米国特許仮出願第61/177,060号および2009年6月25日出願の欧州特許出願公開第091636985号;2009年3月30日出願の米国特許仮出願第61/164,824号および2009年5月25日出願の欧州特許出願公開第091609644号;2009年3月30日出願の米国特許仮出願第61/164,817号および2009年5月25日出願の欧州特許出願公開第091609651号;2009年3月30日出願の米国特許仮出願第61/164,833号および2009年5月25日出願の欧州特許出願公開第091609669号;2009年3月30日出願の米国特許仮出願第61/164,827号および2009年5月25日出願の欧州特許出願公開第091609677号;2009年6月24日出願の米国特許仮出願第61/220,094号および2009年8月19日出願の欧州特許出願公開第091681940号の優先権を主張し、それぞれの内容を全体として参照により組み入れるものとする。
【0002】
本発明は、ポリオレフィンを含む熱的に安定な微多孔膜、バッテリーセパレーターとしてのかかる膜の使用、およびかかる微多孔膜の製造方法に関する。
【背景技術】
【0003】
微多孔膜は、例えばバッテリーセパレーターおよび電解コンデンサセパレーター等の分離膜として用いることができる。リチウムイオン電池は、負極、正極、電解質溶媒としての非プロトン性極性有機溶媒、電解質としてのリチウム塩、および負極と正極の間に位置するバッテリーセパレーターを含有する。一般的なバッテリーセパレーターの1つとしては、微多孔膜または不織フィルム等の、ポリオレフィンを含むバッテリーセパレーターフィルムがある。ポリオレフィンは有機溶媒に不溶であり、かつ電解質にも電極にも反応しないため、ポリエチレンおよび/またはポリプロピレン等のポリオレフィンを含むバッテリーセパレーターフィルムは望ましい。
【0004】
最近、超高分子量ポリオレフィンを使用することによって高強度および高弾性を有する微多孔膜が開発されている。例えば特開60−242035号公報(特許文献1)には、ゲル状シートを成型することにより製造される膜が開示されているが、このゲル状シートは、溶媒と7×10以上の平均分子量を有するポリオレフィンとを含有する溶液から押し出される。次にゲル状シートは延伸され、溶媒が除去されて膜が製造される。特開03−064334号公報(特許文献2)には、高濃度のポリオレフィン溶液から微多孔膜を製造するために特定のポリオレフィンの分子量分布を有する微多孔膜が開示されている。
【0005】
バッテリーセパレーターフィルムとして使用される微多孔膜に関しては、微多孔膜の細孔が、過充電または短絡条件下で発生し得る高温下にて自動的に閉じることが望ましい。この特性は「シャットダウン」と呼ばれるが、溶融ポリマーが膜の微細孔を閉じることによって起こる。シャットダウンは、膜が構造的完全性を失う温度(「メルトダウン」温度)よりも低い温度で起こることが望ましい。シャットダウン温度とメルトダウン温度の差を大きくし、かつ膜の細孔がシャットダウン温度よりも高い温度で閉じる速度(シャットダウン速度)を上げると、電池の安全域が向上する。130℃以下のシャットダウン温度が望ましい。分岐状低密度ポリエチレン(LDPE)(および/または)直鎖状低密度ポリエチレン(LLDPE)を用いて膜のシャットダウン温度を下げることが特開60−023954号公報(特許文献3)、特開03−201360号公報(特許文献4)および特開05−025305号公報(特許文献5)に開示されている。
【0006】
特開11−269289号公報(特許文献6)には、向上した(より低い)シャットダウン温度を有するポリエチレン微多孔膜が開示されている。膜は、20〜98質量%の、5×10以上の重量平均分子量を有するポリエチレン、ならびに2〜80質量%の、95℃〜125℃の融点およびほぼ直鎖状の構造を有するエチレン−α−オレフィンコポリマーを含む。特開2002−338730号公報(特許文献7)には、1×10〜4×10の範囲の粘度平均分子量を有する高密度ポリエチレン(HDPE)および125℃〜132℃の範囲の融点を有するポリエチレン(PE)を含むポリエチレン微多孔膜が開示されている。PEはエチレン−α−オレフィンコポリマーであってもよく、ここでのα−オレフィンは4個以上の炭素を有するオレフィンである。
【0007】
国際公開第2007/060990号(特許文献8)および同第2007/060991号(特許文献9)には、シングルサイト触媒を用いて製造されるポリエチレンを含有する微多孔膜が開示されている。これらの文献には、熱収縮が向上した、すなわち膜が高温で平面方向に収縮する傾向が低下した膜が開示されている。リチウムイオン電池内の電極間隔は非常に小さい(数分の1ミリメートル)ため、セパレーターの熱収縮が電極の直接的接触(短絡)の原因となる可能性がある。これらの文献には向上したシャットダウン温度を有する膜も開示されているが、130℃以下のシャットダウン温度を有する膜はどちらにも開示されていない。
【特許文献1】特開60−242035号公報
【特許文献2】特開03−064334号公報
【特許文献3】特開60−023954号公報
【特許文献4】特開03−201360号公報
【特許文献5】特開05−025305号公報
【特許文献6】特開11−269289号公報
【特許文献7】特開2002−338730号公報
【特許文献8】国際公開第2007/060990号
【特許文献9】国際公開第2007/060991号
【0008】
バッテリーセパレーターフィルムのシャットダウン性能において改善はされてきてはいるが、さらなる改善が望まれている。熱収縮が少なく130℃以下のシャットダウン温度を有するバッテリーセパレーターフィルムを製造することが特に望まれている。
【発明の概要】
【0009】
ある実施形態においては、本発明は、ポリマーを含み、かつ130.0℃以下のシャットダウン温度および30.0%以下の最大固体熱収縮を有する微多孔膜に関する。
【0010】
別の実施形態においては、本発明は、
(a)ポリマーと希釈剤との混合物を押し出してシートを形成する工程、
(b)シートを延伸すること、
(c)希釈剤の少なくとも一部を延伸シートから除去して微多孔性シートを形成する工程、
(d)微多孔性シートを延伸する工程、次いで
(e)延伸微多孔性シートを高温にさらして130.0℃以下のシャットダウン温度および30.0%以下の最大固体熱収縮を有する微多孔膜を製造する工程
により調製される微多孔膜に関する。
【0011】
別の実施形態においては、本発明は、ポリオレフィンを含む微多孔膜であって、膜が、120.0℃〜130.0℃の範囲のシャットダウン温度、30.0%以下の最大固体熱収縮、10000.0秒/100cm/℃以上のシャットダウン速度、および5N/25μm以上の突刺強度を有する、微多孔膜に関する。以下、この実施形態を「第1の実施形態」と呼ぶ。
【0012】
別の実施形態においては、本発明は、ポリオレフィンを含む微多孔膜であって、膜が、120.0℃〜130.0℃の範囲のシャットダウン温度、30.0%以下の最大固体熱収縮、50.0秒/100cm/20μm〜500.0秒/100cm/20μmの範囲の透気度、および5.0N/25μm以上の突刺強度を有する、微多孔膜に関する。以下、この実施形態を「第2の実施形態」と呼ぶ。
【0013】
別の実施形態においては、本発明は、微多孔膜の製造方法であって、
(a)ポリマーと希釈剤との混合物を押し出す工程、
(b)押出物を延伸する工程、
(c)希釈剤の少なくとも一部を延伸押出物から除去する工程、
(d)希釈剤を除去した押出物を延伸する工程、および
(e)延伸した希釈剤を除去した押出物を高温にさらす工程
を含む方法に関する。ある実施形態においては、このプロセスにより製造される微多孔膜は、130.0℃以下のシャットダウン温度および30.0%以下の最大固体熱収縮を有する。
【0014】
別の実施形態においては、本発明は、微多孔膜の製造方法であって、
(1)希釈剤と、(A)第1のポリエチレン、(B)第2のポリエチレン、および(C)第3のポリエチレンとの混合物を押し出す工程、
(2)押出物を、第1の平面方向に4倍以上である第1の倍率に、かつ第1の平面方向に略垂直である第2の平面方向に4倍以上である第2の倍率に延伸する工程(第1の倍率と第2の倍率の積は、面積で20倍〜60倍の範囲である)、
(3)希釈剤の少なくとも一部を延伸押出物から除去する工程、
(4)希釈剤を除去した押出物を、116℃〜125℃の範囲の温度にさらしながら、少なくとも1つの方向に、1.5倍〜2.5倍の範囲である第3の倍率に延伸する工程、および
(5)延伸した希釈剤を除去した押出物の、工程(4)の延伸方向への大きさを、延伸した希釈剤を除去した押出物を116℃〜125℃の範囲の温度にさらしながら、1.2倍〜1.5倍の範囲である第4の倍率に縮小する工程
を含む方法に関する。ある実施形態においては、このプロセスにより製造される微多孔膜は、120℃〜130℃の範囲のシャットダウン温度、30.0%以下の最大固体熱収縮、10000.0秒/100cm/℃以上のシャットダウン速度、および5.0N/25μm以上の突刺強度を有する。
【0015】
別の実施形態においては、本発明は、微多孔膜の製造方法であって、
(1)希釈剤と、(A)第1のポリエチレン、(B)第2のポリエチレン、および(C)第3のポリエチレンとの混合物を押し出し、押出物を冷却する工程、
(2)押出物を、20℃〜90℃の範囲の温度にさらしながら、少なくとも1つの方向に延伸する工程、
(3)延伸押出物を、110℃〜125℃の範囲の温度にさらしながら、少なくとも1つの方向に延伸する工程(工程(2)および(3)の延伸の結果、20倍〜60倍の範囲の面積倍率になる)、
(4)希釈剤の少なくとも一部を延伸押出物から除去する工程、
(5)希釈剤を除去した押出物を、116℃〜125℃の範囲の温度にさらしながら、少なくとも1つの方向に、1.5倍〜2.5倍の範囲である第1の倍率に延伸する工程、次いで
(6a)延伸した希釈剤を除去した押出物の、工程(5)の延伸方向への大きさを、延伸した希釈剤を除去した押出物を116℃〜125℃の範囲の温度にさらしながら、1.2倍〜1.5倍の範囲である第2の倍率に縮小する工程、または
(6b)延伸した希釈剤を除去した押出物を、第1の倍率は実質的に変化させることなく、116℃〜125℃の範囲の温度にさらす工程のいずれか
を含む方法に関する。
ある実施形態においては、このプロセスにより製造される微多孔膜は、120.0℃〜130.0℃の範囲のシャットダウン温度、30.0%以下の最大固体熱収縮、10000.0秒/100cm/℃以上のシャットダウン速度、および5.0N/25μm以上の突刺強度を有する。
【0016】
別の実施形態においては、本発明は、ポリマーを含みかつ120.0℃〜130.0℃の範囲のシャットダウン温度および30.0%以下の最大固体熱収縮を有する微多孔膜、を含むバッテリーセパレーターに関する。
【0017】
別の実施形態においては、本発明は、負極と、正極と、電解質と、負極と正極の間に位置する微多孔膜とを含む電池であって、微多孔膜が、120.0℃〜130.0℃の範囲のシャットダウン温度および30.0%以下の最大固体熱収縮を有する、電池に関する。
【0018】
さらに別の実施形態においては、本発明は、115.0℃〜127.0℃の範囲の融解ピークおよび1.0×10〜5.0×10の範囲の重量平均分子量を有するエチレン−α−オレフィンコポリマーを含む微多孔膜に関する。
【発明を実施するための形態】
【0019】
本発明は、高密度ポリエチレンまたは超高分子量ポリエチレン等の低結晶性ポリマーおよび高結晶性ポリマーを含むバッテリーセパレーターフィルムは比較的低いシャットダウン温度を示すが熱収縮は比較的不十分である、という発見に一部基づいている。低結晶性ポリマーが1.0×10〜5.0×10の範囲の重量平均分子量(「Mw」)および115.0℃〜127.0℃の範囲の融解ピーク(「Tm」)を有するポリエチレンを含むとこの難点は克服できる、ということがわかっている。このような低結晶性ポリマーを使用して製造される微多孔膜は、120.0℃〜130.0℃の範囲のシャットダウン温度および30.0%以下の最大固体熱収縮を有する。以下、第1および第2の実施形態についてさらに詳細に説明する。本発明を第1および第2の実施形態に関して記載するが、それらに限定されるものではなく、これらの実施形態についての説明は、本発明のより広い範囲内にある他の実施形態を除外することを意図するものではない。
第1の実施形態
ポリマー樹脂出発物質
【0020】
この実施形態においては、微多孔膜は、第1、第2、および第3のポリエチレンから製造される。第1、第2、および第3のポリエチレンは、構成成分のポリエチレンから混合することができるか、あるいは反応器ブレンドであってもよい。
第1のポリエチレン
【0021】
第1のポリエチレンは、例えば1.0×10〜15×10、例えば1.1×10〜5×10、または1.1×10〜3×10の範囲といった、1.0×10以上のMwを有する。いかなる理論またはモデルにも拘束されることを望まないが、第1のポリエチレンを使用することによって機械的強度がより強い微多孔膜がもたらされると考えられる。ある実施形態においては、微多孔膜は、微多孔膜の質量を基準として、例えば5質量%〜40質量%、例えば5質量%〜30質量%といった、5質量%〜70質量%の範囲の量の第1のポリエチレンを含有する。微多孔膜中の第1のポリエチレンの量が70質量%以上であると、向上したシャットダウン特性(高速のシャットダウン速度および低いシャットダウン温度)と小さい熱収縮の両方を達成するすることがより困難になり得る。第1のポリエチレンは、超高分子量ポリエチレン(「UHMWPE」)であってもよい。第1のポリエチレンは、(i)ホモポリマー、または(ii)エチレンと、プロピレン、ブテン−1、ペンテン−1、ヘキセン−1、4−メチルペンテン−1、オクテン−1、ビニル酢酸塩、メタクリル酸メチル、スチレン、他のモノマー、またはそれらの組合せより選択されるコモノマーとのコポリマーであってもよい。コモノマーを使用する場合、そのコポリマー中の含有量は10モル%以下である。第1のポリエチレンは、ブレンド(例えば、ポリエチレン(1種または複数)とポリオレフィン等の他のポリマーとの混合物を含む、ポリエチレンの混合物)または単一成分であってもよい。第1のポリエチレンは、一段階重合または多段階重合により調製することができる。所望により第1のポリエチレンは、3〜10の範囲の分子量分布(「MWD」:重量平均分子量と数平均分子量の比と定義)を有する。
第2のポリエチレン
【0022】
第2のポリエチレンは、例えば1×10〜0.95×10の範囲といった1.0×10未満のMwを有し、かつ127.0℃超のTmを有する。決定的な因子ではないが、第2のポリエチレンは、例えば1×10〜8×10、または1.5×10〜7.5×10といった、1×10〜1×10の範囲のMwを有してもよい。出発物質として第2のポリエチレンを用いることによって、より成型がしやすいポリマーシートがもたらされる。第2のポリエチレンは膜のシャットダウン特性を向上させるのに有用であるとも考えられる。Tmは、JIS K7122に従って次のようにして測定する。第1のポリエチレンの試料を、210℃で溶融プレスされた厚さ0.5mmの成形物として調製し、次いで約25℃の温度にさらしながら約24時間保存する。次いで試料を、示差走査熱量計(パーキンエルマー社製Pyris Diamond DSC)の試料ホルダーに入れ、窒素雰囲気中にて25℃の温度にさらす。次いで試料を、230℃の温度に達するまで10℃/分の速度で上昇する温度にさらす(第1の加熱サイクル)。試料を230℃の温度に1分間さらし、次いで30℃の温度に達するまで10℃/分の速度で低下する温度にさらす。試料を30℃の温度に1分間さらし、次いで230℃の温度に達するまで10℃/分の速度で上昇する温度にさらす(第2の加熱サイクル)。DSCによって、第2の加熱サイクル中に試料へと流れる熱の量が記録される。Tmは、30℃〜200℃の温度範囲内の、DSCによって記録される試料への熱流量が最大の時の温度である。ポリエチレンは、主ピークに隣接する副融解ピーク、および/または溶融終点転移(end-of-melt transition)を示すことがあるが、本明細書においては、そのような副融解ピークはまとめて一つのの融点と見なし、これらのピークの中で最も高いものをTmと見なす。ある実施形態においては、第2のポリエチレンのTmは第3のポリエチレンのTmより高い。一実施形態においては、第2のポリエチレンは直鎖状の構造を有する。第2のポリマーが直鎖状の構造を有すると微多孔膜の機械的強度が向上すると考えられる。一実施形態においては、第2のポリエチレンは、例えば炭素原子10,000個当たり0.19以下といった、炭素原子10,000個当たり0.20以下の末端ビニル基含有量を有する。末端ビニル基の量は、例えばPCT公開WO97/23554に記載の手順に従って測定することができる。第2のポリエチレンの末端ビニル基含有量が炭素10,000個当たり0.20以下であると、向上したシャットダウン速度を有する微多孔膜を製造することがさほど困難ではないと考えられる。ある実施形態においては、微多孔膜中の第2のポリエチレンの量は、膜の質量を基準として、例えば30質量%〜90質量%、または40質量%〜90質量%といった、5質量%〜90質量%の範囲である。第2のポリエチレンは、高密度ポリエチレン(HDPE)、中密度ポリエチレン(MDPE)、分岐状低密度ポリエチレン(LDPE)、直鎖状低密度ポリエチレン(LLDPE)、またはそれらの組合せより選択することができる。一実施形態においては、第2のポリエチレンはHDPEである。第2のポリエチレンは、(i)ホモポリマー、または(ii)エチレンと、プロピレン、ブテン−1、ペンテン−1、ヘキセン−1、4−メチルペンテン−1、オクテン−1、ビニル酢酸塩、メタクリル酸メチル、スチレン、他のモノマー、またはそれらの組合せより選択されるコモノマーとのコポリマーであってもよい。コモノマーを使用する場合、そのコポリマー中の含有量は10モル%以下であるべきである。第2のポリエチレンは、ブレンド(例えば、ポリエチレン(1種または複数)とポリオレフィン等の他のポリマーとの混合物を含む、ポリエチレンの混合物)または単一成分であってもよい。ある実施形態においては、第2のポリエチレンは、3〜15の範囲のMWDを有する。
第3のポリエチレン
【0023】
第3のポリエチレンは、1.0×10〜5.0×10の範囲のMw、および例えば115.0℃〜127.0℃の範囲といった、127.0以下のTmを有する。第3のポリエチレンを使用することによって膜のシャットダウン温度が向上すると考えられる。
【0024】
決定的な因子ではないが、第3のポリエチレンは、メタロセン触媒等のシングルサイト触媒を用いることにより製造できる。第3のポリエチレンは、例えば特開昭58−019309号公報、特開昭59−095292号公報、特開昭60−035005号公報、特開昭60−035006号公報、特開昭60−035007号公報、特開昭60−035008号公報、特開昭60−035009号公報、特開昭61−130314号公報、特開平03−163088号公報、欧州特許出願公開第0420436号、米国特許出願公開第5055438号、および国際公開第91/004257号に開示されている方法により調製することができる。
【0025】
所望により第3のポリエチレンは、例えば2×10〜1×10といった、1×10〜2×10の範囲のMwを有する。第3のポリエチレンが1×10〜5×10の範囲のMwを有すると、比較的速いシャットダウン速度を有する微多孔膜を製造することがより容易である。ある実施形態においては、第3のポリエチレンは、エチレンと、ブテン−1、ヘキセン−1、オクテン−1、またはそれらの組合せより選択されるコモノマーとのコポリマーである。コポリマーのコモノマー含有量は、例えば1.2モル%〜10モル%、または1.5モル%〜8モル%といった、1.2モル%〜20.0モル%の範囲であってもよい。コモノマー含有量が1.2モル%未満であると、向上したシャットダウン温度および向上したシャットダウン速度を有する微多孔膜を製造することがより困難となり得る。コモノマー含有量が20.0モル%超であると、良好な突刺強度を有する微多孔膜を製造することがより困難となり得る。所望により、微多孔膜中の第3のポリエチレンの量は、膜中の第1、第2、および第3のポリエチレンの総量を基準として、例えば5〜20質量%、例えば10〜20質量%といった、5〜30質量%の範囲である。膜中の第3のポリエチレンの量が5質量%未満であると、膜のシャットダウン温度を改善することがより困難となり得る。第3のポリエチレンの含有量が30質量%超であると、膜のシャットダウン温度を下げることはさほど困難ではないが、膜の突刺強度を維持することがより困難である。所望により、第3のポリエチレンは、116℃〜125℃の範囲のTmを有する。第3のポリエチレンのTmが127.0℃超であると、シャットダウン温度を改善することがより困難となり得る。第3のポリエチレンのTmが115.0℃未満であると、より高い温度(例えば120℃)にて十分に小さい熱収縮を有する膜を製造することがより困難となり得る。所望により第3のポリエチレンは、1.5〜5、または1.7〜3の範囲のMWDを有する。いかなる理論またはモデルにも拘束されることを望まないが、第3のポリエチレンのMWDが5より大きいと膜のシャットダウン速度を改善することがより困難となり得る、と考えられる。
第4のポリマー
【0026】
一実施形態においては、膜は、第3のポリエチレンおよび第4のポリマーを含む。所望により膜は、第2および第3のポリエチレンをさらに含む。第4のポリマーは、ポリプロピレン(PP)、ポリブテン−1(PB−1)、ポリペンテン−1、ポリ(4−メチル−ペンテン−1)(PMP)、ポリヘキセン−1、ポリオクテン−1、ポリ(ビニル酢酸塩)、ポリメタクリル酸メチル等のポリオレフィン;ポリエステル、ポリアミド、ポリアリーレンスルフィド等の耐熱性ポリマー;およびそれらの混合物であってもよい。ある実施形態においては、第4のポリマーは、ポリプロピレン等のポリオレフィンである。ポリプロピレンを使用する場合は、ホモポリマー、またはプロピレンと、10モル%以下の、エチレン、ブテン−1、ペンテン−1、ヘキセン−1、4−メチルペンテン−1、オクテン−1、酢酸ビニル、メタクリル酸メチル、およびスチレン等のα−オレフィン、ならびにブタジエン、1,5−ヘキサジエン、1,7−オクタジエン、1,9−デカジエン等のジオレフィンより選択されるコモノマーとのコポリマーであってもよい。
【0027】
第1、第2、および第3のポリエチレンのMwおよびMWDは、示差屈折計(DRI)を備えた高温サイズ排除クロマトグラフ、すなわち「SEC」(GPC PL 220、ポリマーラボラトリーズ社製)を用いて決定する。測定は、"Macromolecules, Vol. 34, No. 19, pp. 6812-6820 (2001)"に開示されている手順に従って行う。MwおよびMWDの決定には、3本のPLgel Mixed-Bカラム(ポリマーラボラトリーズ社製)を用いる。公称流量は0.5cm/分であり、公称注入量は300μLであり、トランスファーライン、カラム、およびDRI検出器が、145℃に維持されたオーブン内に含まれている。
【0028】
使用するGPC溶媒は、約1000ppmのブチル化ヒドロキシトルエン(BHT)を含有する、濾過済みの、アルドリッチ社製の、試薬グレードの1,2,4−トリクロロベンゼン(TCB)である。TCBを、SECに導入する前にオンライン脱気装置で脱気する。SEC溶離液として同じ溶媒を用いる。乾燥ポリマーをガラス容器に入れ、所望の量のTCB溶媒を加え、次いでこの混合物を160℃で継続的に撹拌しながら約2時間加熱することにより、ポリマー溶液を調製した。ポリマー溶液の濃度は0.25〜0.75mg/mlである。試料溶液は、GPCに注入する前に、モデルSP260 Sample Prep Station(ポリマーラボラトリーズ社製)を用いて2μmフィルターでオフラインろ過する。
【0029】
Mp(「Mp」はMwにおけるピークと定義する)が約580〜約10,000,000の範囲の17種のそれぞれのポリスチレン標準を用いて作成した検量線でカラムセットの分離効率を較正する。ポリスチレン標準はポリマーラボラトリーズ社(マサチューセッツ州アマースト)より入手する。各PS標準についてDRI信号のピークにおける保持容量を記録し、このデータセットを二次多項式に当てはめることによって、検量線(logMp対保持容量)を作成する。ウェーブメトリクス社(Wave Metrics, Inc.)製IGOR Proを用いて試料を分析する。
微多孔膜の製造方法
【0030】
第1の実施形態の微多孔膜は、
(1)希釈剤(例えば溶媒)と第1、第2、および第3のポリエチレンとを混合してポリマー混合物(例えばポリエチレン溶液)を形成する工程;
(2)混合物をダイから押し出し、押出物を冷却してゲル状シートを形成する工程;
(3)ゲル状シートを、機械方向(「MD」)に、4倍以上である第1の倍率に、かつ横方向(「TD」)に、4倍以上である第2の倍率に延伸して、20倍〜60倍の範囲の面積倍率とする工程;
(4)希釈剤の少なくとも一部を延伸シートから除去して微多孔性シートを形成する工程;
(5)微多孔性シートを、116℃〜125℃の範囲の温度にさらしながら、少なくとも1つの方向に、第1の大きさから、1.5倍〜2.5倍の範囲である第3の倍率で第1の大きさより大きい第2の大きさに延伸する工程;および
(6)第2の大きさを、微多孔性シートを116℃〜125℃の範囲の温度にさらしながら、第2の大きさよりも小さいが第1の大きさよりは1.2倍〜1.5倍の範囲の倍率で大きい第3の大きさに縮小する工程
により調製することができる。
【0031】
加熱処理工程(7)、電離放射線による架橋工程(8)、親水性処理工程(9)、および表面被覆工程(10)等の随意である工程を、所望により1つまたは複数行ってもよい。このような随意である工程は、例えばPCT公開WO2007/052663Aおよび同WO2007/117042Aに開示されている。
【0032】
以下、プロセスについてさらに詳細に説明する。
ポリマーと希釈剤との混合
【0033】
ある実施形態においては、希釈剤(溶媒等)を、第1、第2、および第3のポリエチレン、ならびに所望により第4のポリマーと混合して、混合物を形成する。混合物がポリエチレンおよびポリエチレン用の溶媒を含有する場合、混合物はポリエチレン溶液と呼ぶことができる。ポリマーと希釈剤とを混合して押し出すことができる限り、希釈剤の選択は決定的な要因ではない。溶融ブレンドを用いて、希釈剤を加える前にポリマーの少なくともいくつかを混合することができるが、これは必須ではない。所望により、ポリマーと希釈剤との混合物は、1種または複数の酸化防止剤等の種々の添加剤、無機材料(細孔形成材料等)等を含有するが、ただしこれらは、微多孔膜の望ましい特性を有意に低下させない濃度範囲で使用する。好適な添加剤は、その全体が参照により本明細書に組み込まれる、PCT公開WO2008/140835A1に記載されている。
【0034】
希釈剤は、好ましくは室温で液体である溶媒である。ある実施形態においては、溶媒は、ノナン、デカン、デカリン、p−キシレン、ウンデカン、ドデカン、流動パラフィン等の脂肪族、脂環式、または芳香族炭化水素、上記の炭化水素と同程度の沸点を有する鉱油蒸留物;およびフタル酸ジブチル、フタル酸ジオクチル等の室温で液体であるフタル酸エステルの少なくとも1つであってもよい。好適な希釈剤は、その全体が参照により本明細書に組み込まれる、WO2007/132942Aに記載されている。
【0035】
ポリマーの混合に溶融ブレンドを用いる場合、溶融ブレンド温度は決定的な要因ではないが、例えば、溶融ブレンド中のポリマー溶液の温度(溶融ブレンド温度)は、例えば、混合物の中で最も低いTmを有するポリエチレンのTmより約10℃上〜Tmより約120℃上の範囲であってもよい。このような範囲は、Tm+10℃〜Tm+120℃と表すことができる。Tmが約130℃〜約140℃の範囲である実施形態においては、溶融ブレンド温度は、約140℃〜約250℃、または約170℃〜約240℃の範囲であってもよい。希釈剤は、ポリエチレンの溶融ブレンドの前、後、または間に供給してもよい。
【0036】
ポリマー−希釈剤混合物中のポリマーの量は決定的な要因ではない。ある実施形態においては、ポリマーの量は、ポリマー−希釈剤混合物の質量を基準として約1質量%〜約75質量%であり、例えば約20質量%〜約70質量%の範囲である。
ポリマー−希釈剤混合物の押出し
【0037】
ある実施形態においては、ポリマー−希釈剤混合物をダイから押し出して押出物を形成し、次いでこれを冷却してシートを形成する。冷却したシートがゲルの外観を有する場合、ゲル状シートと呼ぶことができる。ポリマー−希釈剤混合物は、押し出した後に第1の押出機からダイへと直接導いてもよい。ポリマー−希釈剤混合物は、押出し中は通常は溶融状態であり、押出し中に約140℃〜約250℃の範囲の温度にさらしてもよい。典型的には、押出物を、例えば約50℃/分以上の冷却速度で、押出物が押出物のゲル化温度(すなわち押出物シートがゲル化し始める温度)以下の温度に達するまで冷却する。押出しの実行に好適な処理条件は、PCT公開WO2007/132942に開示されている。
ポリマーと希釈剤とを含むシートの延伸
【0038】
ある実施形態においては、シート(すなわち冷却押出物)を少なくとも1つの方向に延伸して延伸シートを形成する。シートがポリマーと希釈剤とを含むため、これは、プロセスの後半に希釈剤の一部を除去した後に行われる延伸(「乾燥延伸」)と区別するために、「湿式延伸」と呼ぶことができる。延伸方法の選択は決定的な要因ではない。ある実施形態においては、延伸は、テンター延伸、ローラー延伸、または(例えば空気による)インフレーション延伸の1つまたは複数により行われる。二軸延伸では、2つの平面方向、例えば機械方向と横方向の両方への冷却押出物の延伸を行う。この文脈においては、機械方向(「MD」)は、フィルムが形成される時の進行方向、すなわち製造中におけるフィルムの最長軸、にほぼ沿った方向である、フィルム(この場合は冷却押出物)の平面の方向である。横方向(「TD」)もまたフィルムの平面にあり、機械方向とフィルムの厚さにほぼ平行である第3の軸との両方にほぼ垂直である。二軸延伸(二軸方向延伸(biaxial orientation)とも言う)の場合、延伸は、同時二軸延伸、一方の軸の後に他方の軸に沿って行う逐次延伸、または多段階延伸(例えば同時二軸延伸と逐次延伸の組合せ)であってもよい。一実施形態においては、同時二軸延伸を用いる。冷却押出物を二軸に延伸することによって最終膜の突刺強度が向上すると考えられる。
【0039】
ある実施形態においては、冷却押出物を、湿式延伸中に約90℃〜125℃の範囲の温度にさらす。湿式延伸温度が125℃超であると冷却押出物中のポリエチレンの分子鎖を配向することがより困難になり得る、と考えられる。また湿式延伸温度が90℃未満であると、破損や引裂きを起こさずに冷却押出物を延伸することがより困難になり得、その結果所望の湿式延伸倍率を達成することができなくなる可能性がある。
【0040】
二軸延伸を用いる場合、一軸方向の延伸倍率は、約20倍〜約60倍の範囲の面積の倍率を達成するために、例えば、少なくとも2つのほぼ垂直な平面方向、例えばMDとTDに、少なくとも約4倍であってもよい。4倍以上の一軸方向延伸倍率および約16倍以上の面積倍率を用いることによって比較的高い突刺強度を有する微多孔膜が製造される、と考えられる。延伸を行って約60倍以下の面積倍率を達成することによって比較的小さい熱収縮を有する微多孔膜が製造される、と考えられる。倍率はフィルムの大きさに乗法的に影響する。例えば、TDに4倍の倍率に延伸する、最初の幅(TD)が2.0cmであるフィルムは、最終幅が8.0cmとなる。
【0041】
所望により延伸は、押出物の厚さ方向(すなわち、微多孔性ポリオレフィン膜の平坦面にほぼ垂直な方向)に温度勾配が存在する中で行ってもよい。この場合、機械的強度が向上した微多孔性ポリオレフィン膜を製造することがより容易になり得る。この方法の詳細は、特許第3347854号に記載されている。
希釈剤除去工程
【0042】
ある実施形態においては、微多孔性シートを形成するために、希釈剤の少なくとも一部を延伸シートから除去(または置換)する。この目的のために第2の希釈剤を使用する場合、ポリマー−希釈剤混合物の製造に用いる希釈剤(第1の希釈剤)と区別するために第2の希釈剤と呼ぶ。第2の希釈剤は、第1の希釈剤に可溶であるか、または第1の希釈剤と混和すべきである。例えばPCT公開第WO2008/016174号等を参照されたい。
【0043】
ある実施形態においては、残留したいずれかの揮発性種の少なくとも一部(例えば、第2の希釈剤の一部)を、希釈剤除去後に延伸シートから除去する。加熱乾燥、風乾(空気を動かすこと)等の従来の方法を含む、揮発性種を除去することが可能ないずれの方法を用いてもよい。第2の希釈剤(第1の希釈剤を洗い流すため「洗浄溶媒」と呼ぶことができる)等の揮発性種を除去するための処理条件は、例えばPCT公開第WO2008/016174号に開示されているものと同じであってもよい。
微多孔性シートの延伸
【0044】
第1の希釈剤の少なくとも一部を除去した後、加熱処理の少なくとも2つの段階、すなわち第2の延伸処理とそれに続く熱緩和処理の間、微多孔性シートに延伸を施す。第2の延伸を始める前に第1の希釈剤の少なくとも一部を除去するため、第2の延伸は「乾燥」延伸または乾燥配向と呼ぶことができる。
【0045】
乾燥延伸中、微多孔性シートを少なくとも1つの方向に延伸する。乾燥延伸によって膜透気度と突刺強度の両方が向上すると考えられる。乾燥延伸は、微多孔性シートを116.0℃〜125.0℃の範囲の温度にさらしながら行ってもよい。
【0046】
乾燥延伸中に微多孔性シートがさらされる温度は最終膜の特性に影響する。乾燥延伸中に膜を116.0℃未満の温度にさらすと、得られる膜は望ましくないほどに熱収縮が大きい場合がある。乾燥延伸中に膜を125.0℃超の温度にさらすと、通常は膜透気度の喪失につながる。
【0047】
ある実施形態においては、微多孔性シートを、少なくとも1つの方向に、第1の大きさから、第1の大きさより1.5倍〜2.5倍の範囲の線倍率で大きい第2の大きさに延伸する。乾燥延伸中に達成される倍率は最終膜の特性に影響する。例えば線倍率が1.5倍未満であると、透気度および突刺強度が向上した微多孔膜を製造することがより困難である。線倍率が2.5倍超であると、(突刺強度は悪影響を受けないように思われるが)熱収縮が向上した微多孔膜を製造することがより困難となり得る。所望により、乾燥延伸を行って1.5倍〜3倍の範囲の面積倍率を達成する。乾燥延伸には、従来の延伸方法、例えば、テンター延伸、ローラー延伸、または(例えば空気による)インフレーション延伸の1つまたは複数を用いることができる。例えば、公開第WO2008/016174号および同WO2007/132942号に記載の方法を用いることができる。
微多孔性シートの熱緩和
【0048】
ある実施形態においては、工程(5)の延伸方向に沿った微多孔性シートの大きさを、微多孔性シートを116.0℃〜125.0℃の範囲の温度にさらしながら、第2の大きさから、第2の大きさよりも小さいが第1の大きさよりは1.2倍〜1.5倍の範囲の倍率で大きい第3の大きさに縮小する。この工程は(「熱緩和」)と呼ぶことができる。サイズの縮小中に微多孔性シートがさらされる温度は最終膜の特性に影響し得る。例えば、サイズの縮小中に微多孔性シートを116.0℃未満の温度にさらすと、シート中のひずみ集中が熱収縮性の悪化につながる恐れがある。微多孔性シートを125.0℃超の温度にさらすと、望ましい透気度を有する膜を製造することがより困難となり得る。
【0049】
所望により熱緩和は、例えば10秒〜5時間の範囲の時間行う。熱緩和方法の選択は決定的な要因ではない。ある実施形態においては、熱緩和はテンター機を使用して行われ、そこでは、対向するテンタークリップ間の距離がTDに徐々に縮まっていく。熱緩和によって、低いシャットダウン温度、速いシャットダウン速度、高い突刺強度、および小さい熱収縮を有する最終微多孔膜が製造される。
第2の実施形態
【0050】
以下、第2の実施形態の微多孔膜について説明する。
第2の実施形態の微多孔膜の製造に用いるポリマー
【0051】
第2の実施形態の微多孔膜は、第1、第2、および第3のポリエチレン、ならびに所望により第4のポリマーから製造することができる。第1および第3のポリエチレンならびに第4のポリマーは、第1の実施形態で使用したものと同じであってもよい。第2のポリエチレンは、第2の実施形態の第2のポリエチレンが1×10〜1×10の範囲のMwを有し、末端ビニル基含有量が関係ないこと以外は、第1の実施形態の微多孔膜の製造に用いる第2のポリエチレンと同様である。
微多孔膜の製造方法
【0052】
第2の実施形態の微多孔膜は、第1の実施形態の微多孔膜の製造に用いる方法と同様の方法により製造することができる。混合工程(1)および押出し工程(2)は、第1の実施形態と同じである。湿式延伸工程(3)は第1の実施形態とは異なる。第2の実施形態においては、シート(冷却押出物)を、20.0℃〜90.0℃の範囲の温度にさらしながら少なくとも1つの方向に延伸する(一次湿式延伸)。一次湿式延伸に続いて、一次延伸開始時のシートの面積を基準として20倍〜60倍の範囲の面積倍率を達成するために、延伸シートを、110.0℃〜125.0℃の範囲の温度にさらしながら少なくとも1つの方向(同じ方向または一次延伸の方向とは異なる方向)に延伸する(二次湿式延伸)。希釈剤除去、乾燥延伸、熱緩和、および随意の工程は、第1の実施形態と同じである。微多孔性シートの大きさをほぼ一定に保ちながら膜を116.0℃〜125.0℃の範囲の温度にさらす熱処理工程(熱固定)を、下記の通り、熱緩和工程の代わりに行ってもよい。
【0053】
以下、一次湿式延伸工程についてさらに詳細に説明する。
一次湿式延伸工程
【0054】
一次湿式延伸工程は、テンター延伸、ローラー延伸、または(例えば空気による)インフレーション延伸の1つまたは複数により行うことができる。これまでに引用したPCT公開公報に記載のもの等の従来の延伸方法を用いることができる。第1の実施形態と同様、延伸は1つの方向(例えば、MDまたはTD等の平面方向)または2つの方向(例えば、MDおよびTD等の略垂直な平面方向)に沿ったものであってもよい。延伸が二軸の場合、延伸は逐次(最初に一つの方向へ、次いでもう一つの方向へ延伸する)または同時であってもよい。一実施形態においては、同時二軸延伸を用いる。
【0055】
一次延伸中に、冷却押出物を20.0℃〜90.0℃の範囲の温度にさらす。90.0℃より高い温度であるとゲル状シートのひび割れが起こる可能性があり、最終膜において望ましくない透気度および孔径につながるおそれがある。20.0℃より低い温度であるとシートの張りが増す可能性があり、所望の倍率を達成することがより困難になる。
【0056】
ある実施形態においては、一次延伸には同時二軸延伸を用いる。冷却押出物を、略垂直な平面方向、例えばMDおよびTDに、各平面方向に例えば1.05〜4倍といった1.01〜5倍の範囲の倍率に延伸する。1.01倍未満の倍率であると、望ましくない孔径および透気度を有する最終膜になる可能性がある。5倍超の倍率であると、望ましくないほどに熱収縮が大きい最終膜になる可能性がある。所望により、一次二軸延伸で得られる面積倍率は、一次延伸開始時の膜の面積を基準として、1.1〜20倍または1.2〜16倍の範囲である。1.1未満の面積倍率であると、望ましくない孔径および透気度を有する最終微多孔膜になる可能性がある。20倍を超えるの面積倍率であると、望ましくないほどに熱収縮が大きい最終膜になる可能性がある。二次湿式延伸は、一次湿式延伸の後、所望により他にプロセスを挟まずに行われる。
【0057】
二次湿式延伸の結果、フィルムの大きさの増加は合計で20倍〜60倍の範囲の面積倍率になる。20倍未満の面積倍率であると、望ましくない突刺強度を有する最終膜になる可能性がある。60倍超の面積倍率であると、望ましくないほどに熱収縮が大きい最終膜になる可能性がある。延伸方法は、例えばテンター延伸、ローラー延伸等の1つまたは複数等の、一次延伸で用いたものと同じであってもよい。
【0058】
二次湿式延伸中に、膜を110.0℃〜125.0℃の範囲の温度にさらす。温度が125.0℃超であると、シートの溶解によって所望の倍率を達成することがより困難になり得る。温度が110.0℃未満であると、冷却押出物を均一に延伸することがより困難になり得る。
【0059】
所望により二次湿式延伸は、冷却押出物を、2つの略垂直な平面方向に、それぞれ例えば2.5〜8倍といった2.0〜10.0倍の範囲の倍率に同時に延伸することにより行われる。2.0倍未満の線延伸倍率であると、望ましくない突刺強度を有する最終微多孔膜になる可能性がある。10.0倍超の線延伸倍率であると、望ましくない熱収縮率を有する最終微多孔膜になる可能性がある。所望により、二次延伸を行って、例えば2.5倍〜45倍といった、2.0倍〜50.0倍の範囲の面積倍率を達成する。
熱緩和および/または熱固定
【0060】
希釈剤除去に続いて、微多孔性シートに、熱緩和、熱固定、またはその両方を施す。熱緩和を用いる場合、第1の実施形態と同じ条件下で行ってもよい。好適な熱固定条件としては、これまでに引用したPCT公開公報に記載のものが挙げられる。所望により、熱固定中に、微多孔性シートを116.0℃〜125.0℃の範囲の温度にさらす。116.0℃未満の温度であると最終膜において望ましくない熱収縮値になる可能性があるが、これは内部のひずみ集中が原因と考えられる。125.0℃超の温度であると、膜透気度の喪失が起こる可能性がある。
微多孔膜
【0061】
最終微多孔膜は、120.0℃〜130.0℃の範囲のシャットダウン温度および30.0%以下の最大固体熱収縮を有する。ある実施形態においては、膜の厚さは、通常は例えば約5μm〜約30μmといった、約1μm〜約100μmの範囲である。微多孔膜の厚さは、縦方向に1cm間隔で20cmの幅にわたって接触式厚さ計により測定することができ、次いで平均値を出して膜厚さを得ることができる。株式会社ミツトヨ製ライトマチック等の厚さ計が好適である。光学的厚さ測定法等の、非接触式厚さ測定もまた好適である。
【0062】
微多孔膜は単層膜であってもよい。ある実施形態においては、微多孔膜は、第2の膜をさらに含む。第2の膜は、例えば微多孔層であってもよい。
シャットダウン温度
【0063】
微多孔膜のシャットダウン温度は、その全体が参照により本明細書に組み込まれる、PCT公開WO2007/052663に開示されている方法によって測定する。この方法に従い、微多孔膜を上昇していく温度(30℃で開始して5℃/分)にさらし、その間に膜の透気度を測定する。微多孔膜のシャットダウン温度は、微多孔膜の透気度が最初に100,000秒/100cmを超える時の温度と定義される。微多孔膜の透気度は、透気度計(旭精工株式会社製、EGO-1T)を用いてJIS P8117に従って測定する。
【0064】
ある実施形態においては、膜は、例えば124℃〜129℃の範囲といった、120.0℃〜130.0℃の範囲のシャットダウン温度を有する。
最大固体収縮
【0065】
微多孔膜の最大固体熱収縮は、熱機械分析装置、(セイコーインスツル株式会社製TMA/S S6000)を用いて測定する。TD最大収縮を測定する場合は、3mm×50mmの長方形の試料を、試料の長軸がTDと一直線になり、かつ短軸がMDと一直線になるように微多孔膜から切り出す。MD最大収縮を測定する場合、使用した3mm×50mmの長方形の試料を、試料の長軸がMDと一直線になり、かつ短軸がTDと一直線になるように微多孔膜から切り出す。
【0066】
試料を、試料の長軸が分析装置のチャックの間になるように熱機械分析装置にセットする。チャック間距離を10mmにセットする、すなわち、上部チャックから下部チャックまでの距離が10mmである。下部チャックを固定し、上部チャックで試料に19.6mNの荷重をかける。両チャックおよび試料を加熱可能な管に封入して、微多孔膜試料を高温にさらす。30℃で開始し、管の内部の温度を5℃/分の速度で上昇させ、19.6mNの荷重下における試料の長さの変化を0.5秒間隔で測定し、温度の上昇とともに記録する。最大固体熱収縮は、23℃で測定したチャック間の試料の最大長さ(L1:10mmに等しい)から約125℃〜約135℃の範囲で測定した最小長さ(L2に等しい)を引き、L1で割ったもの、すなわち、[L1−L2]/L1*100%、と定義される率である。
【0067】
ある実施形態においては、微多孔膜の最大TD固体熱収縮および最大MD固体熱収縮はそれぞれ、例えば25%以下といった、30.0%以下である。所望によりTD最大固体熱収縮は、例えば10%〜25%といった、5.0%〜30.0%の範囲である。所望によりMD最大固体熱収縮は、例えば10%〜25%といった、5.0%〜30.0%の範囲である。
【0068】
最終微多孔膜は、通常は押出物の製造に用いるポリマーを含む。処理中に導入する少量の希釈剤または他の種もまた、微多孔性ポリオレフィン膜の質量を基準として、通常は1質量%未満の量で存在してもよい。処理中にポリマーの分子量が少量低下することがあるが、これは許容可能なものである。ある実施形態においては、処理中に分子量の低下があったとしても、膜中のポリマーのMWDの値と膜の製造に用いるポリマーのMWDとの違いは、例えば、わずか約10%、わずか約1%、またはわずか約0.1%にしかならない。
【0069】
押出物および微多孔膜は、無機種(ケイ素および/またはアルミニウム原子を含有する種等)ならびに/またはPCT公開WO2007/132942および同WO2008/016174に記載のポリマー等の耐熱性ポリマーを含有してもよいが、これらは必須ではない。ある実施形態においては、押出物および膜は、かかる物質を実質的に含まない。この文脈における実質的に含まないとは、微多孔膜中のかかる物質の量が、押出物の製造に用いるポリマーの全質量を基準として1質量%未満であることを意味する。
【0070】
所望により微多孔膜は、以下の1つまたは複数を有してもよい。
シャットダウン速度
【0071】
所望により微多孔膜は、例えば12000秒/100cm/℃以上、例えば15000秒/100cm/℃以上といった、10000秒/100cm/℃以上のシャットダウン速度を有する。ある実施形態においては、微多孔膜は、10000秒/100cm/℃〜50000秒/100cm/℃の範囲のシャットダウン速度を有する。シャットダウン速度は次のようにして測定する。微多孔膜を上昇していく温度(30℃で開始して5℃/分)にさらし、その間に膜の透気度を測定する。微多孔膜のシャットダウン速度は、加熱中に測定した時の、10000秒/100cmのガーレー値における温度を定数とした透気度(ガーレー値)の勾配と定義される。
突刺強度
【0072】
微多孔膜の突刺強度は、25μmの厚さを有する膜の同等の突刺強度として表す。言い換えれば、測定した微多孔膜の突刺強度を膜厚25μmでの同等の値に標準化し、[力/25μm]の単位で表す。
【0073】
所望により微多孔膜の突刺強度は、例えば6N/25μm以上、例えば6.2N/25μm以上、または6.5N/25μm以上といった、5N/25μm以上である。ある実施形態においては、微多孔膜の突刺強度は、5.0N/25μm〜10.0N/25μmの範囲である。突刺強度は次のようにして測定する。厚さTを有する微多孔膜を、末端が球面(曲率半径R:0.5mm)である直径1mmの針で2mm/秒の速度で突き刺した時に、最大荷重を測定する。突刺強度(「S」)は、式:S=25μm*(S)/T(式中、Sは突刺強度の実測値であり、Sは25μmの同等の膜厚の突刺強度に標準化した突刺強度であり、Tは膜の平均厚さである)を用いて定義する。
透気度
【0074】
所望により微多孔膜は、50.0秒/100cm/20μm以上の透気度(ガーレー値:20μmの同等の膜厚の透気度に標準化)を有する。透気度値は、20μmのフィルム厚さを有する同等の膜の透気度値に標準化するため、透気度値は、[秒/100cm/20μm]の単位で表す。ある実施形態においては、膜は、50.0秒/100cm/20μm〜500.0秒/100cm/20μmの範囲の透気度を有する。微多孔膜の透気度が50.0秒/100cm/20μmより低いと、膜をバッテリーセパレーターフィルムとして使用した時に、微多孔膜内でのリチウムデンドライトの形成を抑制することがより困難である。
【0075】
標準化透気度は、JIS P8117に従って測定し、その結果を、A=20μm*(X)/T(式中、Xは、実厚さTを有する膜の透気度の実測値であり、Aは、厚さ20μmにおける標準化透気度である)の式を用いて、20μmの同等の膜厚における値に標準化する。
空孔率
【0076】
所望により微多孔膜は、例えば30%〜95%の範囲といった、30.0%以上の空孔率を有する。空孔率は以下の式を用いて求める:空孔率%=100×(w2−w1)/w2。式中、「w1」は微多孔膜の実質量であり、「w2」は、同じ大きさおよび厚さを有する、同等の非多孔膜の質量である。
メルトダウン温度
【0077】
微多孔膜は、所望により、例えば150℃以上といった、145.0℃以上のメルトダウン温度を有する。メルトダウン温度は、次のようにして測定することができる。5cm×5cmの微多孔膜の試料を、それぞれが直径12mmの円形の開口部を有する金属ブロックの間に挟むことによって、その外周に沿って固定する。次いでこれらのブロックを、膜の平面が水平になるような配置にする。直径10mmの炭化タングステンの球を、上側のブロックの円形の開口部内の微多孔膜上に置く。30℃で開始した後、膜を、5℃/分の速度で上昇する温度にさらす。球によって微多孔膜が破れる温度を、膜のメルトダウン温度と定義する。
【0078】
ある実施形態においては、膜は、145℃〜200℃の範囲のメルトダウン温度を有する。
バッテリーセパレーターフィルム
【0079】
本発明の微多孔膜は、例えばリチウムイオン一次電池および二次電池等における、バッテリーセパレーターフィルムとして有用である。かかる電池はPCT公開WO2008/016174に記載されている。
【0080】
電池は、1つまたは複数の電気部品または電子部品用の電力源として有用である。かかる部品としては、例えば変圧器等を含む、抵抗器、コンデンサ、誘導器等の受動素子、電動機および発電機等の電動デバイス、ならびにダイオード、トランジスタ、および集積回路等の電子デバイスが挙げられる。これらの部品を、直列および/または並列電気回路にて電池に接続して電池システムを形成することができる。回路は、直接的または間接的に電池に接続してもよい。例えば、電池から流れる電気は、これらの部品の1つまたは複数の中で電気が消散または蓄積される前に、(例えば二次電池または燃料電池によって)電気化学的に、かつ/または(例えば発電機を動かしている電動機によって)電気機械的に変換することができる。電池システムは、電動工具における電動機等の比較的高出力のデバイスに動力を供給するための電力源として用いることができる。
【0081】
本発明は、リチウムイオン二次電池におけるバッテリーセパレーターフィルムとしての微多孔膜の使用に限定されるものではない。本発明の微多孔膜は、比較的低いシャットダウン温度、比較的高速のシャットダウン速度、比較的高い突刺強度、および比較的小さい熱収縮等のバランスの良い特性を有するため、微多孔膜は、ニッケル水素電池、ニッケルカドミウム電池、ニッケル亜鉛電池、銀亜鉛電池、リチウムイオン電池、リチウムイオンポリマー電池等の一次電池および二次電池におけるバッテリーセパレーターフィルムとして有用である。膜は、濾過および分離にもまた有用である。
実施例
【0082】
以下の例で、本発明の実施形態をさらに説明する。下記実施例および比較例で使用した第3のポリエチレンは、その全体が参照により本明細書に組み込まれる、PCT公開WO2000/068279Aに記載の方法により製造した。
【0083】
まず初めに、第1の実施形態の例を説明する。
実施例1
【0084】
100質量部のポリエチレン組成物を調製する。ポリエチレン組成物は、上記の第1、第2、および第3のポリエチレンを以下の量で含む:30質量%の1.95×10のMwを有するUHMWPE(第1のポリエチレン−「成分A」)、57質量%の5.6×10のMw、135.0のTm、および炭素10000個当たり0.15の末端ビニル基含有量を有するHDPE(第2のポリエチレン−「成分B」)、ならびに13質量%の2.0×10のMwを有し、4.0モル%のオクテンコモノマーを含有し、かつ120.0のTmおよび2.0のMWDを有するエチレン−オクテンコポリマー(m−PE)(シングルサイト触媒で調製)(第3のポリエチレン−成分C)。ポリエチレン組成物を、酸化防止剤としての、0.375質量部のテトラキス[メチレン−3−(3,5−ジ−tert−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)−プロピオネート]メタンと乾式混合する。
【0085】
30質量部の酸化防止剤とポリエチレン組成物との混合物を、58mmの内径および42のL/Dを有する強混合型二軸スクリュー押出機内に充填し、70質量部の流動パラフィン(40℃で50cst)を、サイドフィーダーを介して二軸スクリュー押出機に供給する。210℃および200rpmにて溶融ブレンドを行い、ポリエチレン溶液を調製する。
【0086】
ポリエチレン溶液を、二軸スクリュー押出機の先端に付設されたTダイから押し出し、50℃に制御された冷却ロールで、巻き上げながら引き出して冷却し、1.0mmの厚さを有するゲル状シートを形成する。テンター延伸機を用い、ゲル状シートを、116℃の温度にさらしながら同時に二軸延伸し(湿式延伸)、延伸倍率がMDおよびTDの両方に5倍になるようにする。延伸したゲル状シートを、20cm×20cmのアルミニウムフレームに固定し、25℃に制御された塩化メチレンの洗浄浴に浸漬し、3分間の100rpmの振動で洗浄して流動パラフィンを除去する。
【0087】
洗浄したゲル状シートを室温で空気乾燥させて微多孔膜を形成し、バッチ延伸機により、MDおよびTDの両方に1.5倍に、118℃で同時に二軸に再延伸する(乾燥延伸)。次いで、乾燥延伸微多孔膜に熱緩和を行って、MDおよびTDの両方に、乾燥配向開始時のMDおよびTDの膜のサイズを基準として1.4倍の倍率に膜のサイズを縮小する。言い換えれば、熱緩和の量は6.7%である。選択した膜の特性を表1に示す。
実施例2
【0088】
成分(A)として30質量%のUHMWPEを、成分(B)として55質量%のHDPEを、また成分(C)として15質量%のエチレン−オクテンコポリマーを用いること以外は、実施例1と同様にして微多孔性ポリエチレン膜を製造する。
実施例3
【0089】
成分(C)として、3.7モル%のオクテンコモノマー含有量を含有し、3.0×10のMw、121.4℃の融点、および2.5のMWDを有するエチレン−ヘキセンコポリマーを用いること以外は、実施例1と同様にして微多孔性ポリエチレン膜を製造する。
実施例4
【0090】
ゲル状シートを、テンター延伸機を用いて、延伸倍率がMDおよびTDの両方向に6倍になるように115℃で同時に二軸延伸すること(一次延伸)、微多孔膜を、バッチ延伸機で、MDおよびTDの両方に1.8倍に119℃で同時に二軸に乾燥延伸すること、および膜を119℃の温度にさらしながら熱緩和を行って、1.6倍のMDおよびTDへの最終倍率(乾燥延伸開始時の膜の大きさが基準)を達成すること以外は、実施例1と同様にして微多孔性ポリエチレン膜を製造する。言い換えれば、熱緩和によって、膜のTdおよびMDの大きさが11.1%縮小する。
実施例5
【0091】
ゲル状シートを、延伸倍率がMDに7倍およびTDに5倍になるように膜を115℃の温度にさらしながら同時に二軸延伸すること(一次延伸)、微多孔膜を、119℃の温度にさらしながら1.5倍のMD倍率およびTDに2.1倍に同時に二軸に乾燥延伸すること、および膜を119℃の温度にさらしながら乾燥延伸微多孔膜に熱緩和を行って、1.4倍のMDへの最終倍率(乾燥延伸開始時の膜のMDの大きさが基準)および1.8倍の最終TD倍率(乾燥延伸開始時の膜のTDの大きさが基準)を達成すること以外は、実施例1と同様にして微多孔性ポリエチレン膜を製造する。言い換えれば、熱緩和によって、MDの大きさが6.7%減少し、TDの大きさが14.3%減少する。
実施例6
【0092】
成分(B)として、7.5×10のMwおよび炭素10000個当たり0.85の末端ビニル基を有するHDPEを用いること以外は、実施例1と同様にして微多孔性ポリエチレン膜を製造する。
実施例7
【0093】
成分(A)としてのUHMWPEを用いず、成分(B)として、85質量%の5.6×10の質量平均分子量および炭素10000個当たり0.15の末端ビニル基を有するHDPEを用いること以外は、実施例1と同様にして微多孔性ポリエチレン膜を製造する。
実施例8
【0094】
10質量%の2.0×10のMw、5.0のMWD、120℃の融点を有し、8.0モル%のオクテンコモノマー含有量を含有するエチレン−オクテンコポリマーを用いること以外は、実施例1と同様にして微多孔性ポリエチレン膜を製造する。
実施例9
【0095】
微多孔膜を、MDおよびTDの両方に1.3倍の倍率に同時に二軸に乾燥延伸し、乾燥延伸微多孔膜に熱緩和を行って1.2倍のMDおよびTDへの最終倍率(乾燥延伸開始時の膜の大きさが基準)を達成すること以外は、実施例1と同様にして微多孔性ポリエチレン膜を製造する。言い換えれば、熱緩和によって、MDおよびTDの大きさが7.7%減少する。
実施例10
【0096】
乾燥延伸微多孔膜に熱緩和を行って、乾燥延伸開始時の膜の大きさを基準として1.1倍のMDおよびTDへの最終倍率を達成すること以外は、実施例1と同様にして微多孔性ポリエチレン膜を製造する。言い換えれば、熱緩和によって、MDおよびTDの大きさが26.7%減少する。
比較例1
【0097】
成分(B)として、80質量%の5.6×10のMw、135.0℃の融点、および炭素10000個当たり0.15の末端ビニル基を有するHDPE、ならびに成分(C)として、20質量%の7.0×10のMwを有し、1.0モル%のオクテンコモノマー量を含有し、かつ127.0℃の融点および4.2のMWDを有するエチレン−ヘキセンコポリマー(m−PE)(シングルサイト触媒で調製)を含む100質量部のポリエチレン組成物を、酸化防止剤としての、0.3質量部のテトラキス[メチレン−3−(3,5−ジ−tert−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)−プロピオネート]メタンと乾式混合した。
【0098】
45質量部の得られた混合物を、58mmの内径および42のL/Dを有する強混合型二軸スクリュー押出機内に充填し、55質量部の流動パラフィン(40℃で50cst)を、サイドフィーダーを介して二軸スクリュー押出機に供給する。240℃および200rpmにて溶融ブレンドを行ってポリエチレン溶液を調製する。ポリエチレン溶液を、二軸スクリュー押出機の先端に付設されたTダイから押し出し、50℃に制御された冷却ロールで、巻き上げながら引き出して冷却し、1.0mmの厚さを有するゲル状シートを形成する。テンター延伸機を用い、ゲル状シートを、116℃で同時に二軸延伸し(湿式延伸)、延伸倍率がMDおよびTDの両方に7倍になるようにする。延伸したゲル状シートを、20cm×20cmのアルミニウムフレームに固定し、25℃に制御されたメチルエチルケトン(MEK)の洗浄浴に浸漬し、3分間の100rpmの振動で洗浄して流動パラフィンを除去する。
【0099】
洗浄したゲル状シートを室温で空気乾燥させて微多孔膜を形成し、バッチ延伸機を用いて、膜を118℃の温度にさらしながら、MDおよびTDに1.3倍の倍率に同時に二軸に乾燥延伸する。次いで、膜のMDおよびTDの大きさをほぼ一定に保ちながら乾燥延伸微多孔膜を118℃の温度にさらすことによって熱固定を行う。この比較例は、特開2002−338730号公報に開示されている方法に従って行う。
比較例2
【0100】
熱緩和を行わないこと以外は、実施例4と同様にして微多孔性ポリエチレン膜を製造する。
比較例3
【0101】
シートを110℃の温度にさらしながら湿式延伸を行うこと以外は、実施例1と同様にして微多孔性ポリエチレン膜を製造する。
比較例4
【0102】
127℃の温度で湿式延伸を行うこと以外は、実施例1と同様にして微多孔性ポリエチレン膜を製造する。
比較例5
【0103】
微多孔膜を、118℃の温度にさらしながらMDとTDの両方に3倍に同時に二軸に乾燥延伸すること以外は、実施例1と同様にして微多孔性ポリエチレン膜を製造する。
比較例6
【0104】
成分(C)として、15.0モル%のオクテンコモノマー含有量を含有し、110℃の融点および2.0のMWDを有するエチレン−オクテンコポリマー(シングルサイト触媒で調製)を用いること以外は、実施例1と同様にして微多孔性ポリエチレン膜を製造する。
【0105】
実施例1〜10および比較例1〜5で製造したポリエチレン微多孔膜の特性を、上記のように測定した。選択した膜特性を表1および2に示す。膜厚さは、接触式厚さ計を用いて、選択したMD位置で測定した。測定は、膜のTD(幅)に沿った点で、30cmの距離にわたって5mm間隔で行った。測定値の算術平均が試料の厚さである。他の膜特性は上記のように測定する。
【表1】

【表2】

【0106】
表1から、実施例1〜10の微多孔膜は比較的低い熱収縮率および比較的低い120℃〜130℃の範囲のシャットダウン温度の両方を有することがわかる。さらに表1から、実施例1〜5のポリエチレン微多孔膜は比較的高速のシャットダウン速度および比較的高い突刺強度を有することがわかる。実施例1〜5の微多孔膜は、上記の第1の実施形態に相当している。表2は、比較例1〜6のポリエチレン微多孔膜を示している。比較例1は比較的高い熱収縮率を有するが、それは、第3のポリエチレンがより高い融点および比較的広いMWDを有するからだと考えられる。さらに、比較例1はより低い突刺強度を有するが、それは、膜がUHMWPEを含有していないからだと考えられる。比較例2は、熱緩和工程(アニーリング)を省略しているため、高い熱収縮率を示した。比較例3は、湿式延伸温度が低過ぎるために比較的高い熱収縮率を示していると考えられる。比較例4は、湿式延伸温度が高過ぎるために比較的高いシャットダウン温度および比較的低い透気度を示していると考えられる。比較例5は、乾燥延伸倍率が大き過ぎるために比較的高いシャットダウン温度および比較的高い熱収縮率を示していると考えられる。比較例6は、第3のポリエチレンが低過ぎる融点を有するために比較的大きな高い熱収縮率を示していると考えられる。
【0107】
以下の例は、第2の実施形態に関する。
実施例11
【0108】
成分(A)として、30質量%の1.95×10のMwを有するUHMWPE、成分(B)として、57質量%の5.6×10のMw、135.0℃の融点、および炭素10000個当たり0.15の末端ビニル基含有量を有するHDPE、ならびに成分(C)として、13質量%の8.0モル%のオクテンコモノマー量を含有し、2.0×10のMwを有し、かつ120℃の融点、および2.0のMWDを有する、シングルサイト触媒で調製したエチレン−オクテンコポリマー(m−PE)を含む100質量部のポリエチレン(PE)組成物を、酸化防止剤としての、0.375質量部のテトラキス[メチレン−3−(3,5−ジ−tert−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)−プロピオネート]メタンと乾式混合した。
【0109】
30質量部の得られた混合物を、58mmの内径および42のL/Dを有する強混合型二軸スクリュー押出機内に充填し、70質量部の流動パラフィン(40℃で50cst)を、サイドフィーダーを介して二軸スクリュー押出機に供給する。210℃および200rpmにて溶融ブレンドを行ってポリエチレン溶液を調製する。
【0110】
ポリエチレン溶液を、二軸スクリュー押出機の先端に付設されたTダイから押し出し、50℃に制御された冷却ロールで、巻き上げながら引き出して冷却し、1.0mmの厚さを有するゲル状シートを形成する。テンター延伸機を用い、ゲル状シートを、80℃の温度にさらしながら同時に二軸延伸して(一次湿式延伸)、MDおよびTDの両方に2倍の一次湿式延伸倍率を達成する。次いでシートを、116℃の温度にさらしながら同時に二軸延伸して(二次湿式延伸)MDおよびTDの両方に3.5倍の二次湿式延伸倍率を達成する。一次および二次湿式延伸終了時の総倍率は49倍である。延伸したゲル状シートを、20cm×20cmのアルミニウムフレームに固定して25℃に制御された塩化メチレンの洗浄浴に浸漬し、3分間の100rpmの振動で洗浄して流動パラフィンを除去する。
【0111】
洗浄したゲル状シートを室温で空気乾燥させて微多孔膜を形成し、膜を120°の温度にさらしながら、MDおよびTDの両方に2.0倍の倍率に同時に二軸に乾燥延伸した。次いで、膜を122℃の温度にさらしながら乾燥延伸微多孔膜に熱緩和を行って1.4倍の最終TD倍率および最終MD倍率(乾燥延伸開始時の膜の大きさが基準)を達成する。言い換えれば、熱緩和によって、MDおよびTDの大きさがMDおよびTDの両方に30%減少する。
実施例12
【0112】
成分(B)として、7.46×10のMwおよび炭素10000個当たり0.88の末端ビニル基含有量を有するHDPEを用いること以外は、実施例11と同様にして微多孔性ポリエチレン膜を製造する。
実施例13
【0113】
ゲル状シートを、一次湿式延伸中に85℃の温度にさらしながら同時に二軸延伸し、一次湿式延伸倍率がMDおよびTDの両方に3.5倍であり、次いでシートを114℃の温度にさらしながら二次湿式延伸を行ってMDおよびTDの両方に2倍の二次湿式延伸倍率を達成すること以外は、実施例11と同様にして微多孔性ポリエチレン膜を製造する。
実施例14
【0114】
微多孔膜を、バッチ延伸機で、膜を118℃の温度にさらしながらMDおよびTDの両方に1.7倍の倍率に二軸に乾燥延伸し(乾燥延伸)、次いで膜を122℃の温度にさらしながら乾燥延伸微多孔膜の熱緩和を行って1.4倍のMDおよびTDへの最終倍率を達成すること以外は、実施例11と同様にして微多孔性ポリエチレン膜を製造する。言い換えれば、熱緩和によって、MDおよびTDの大きさが17.6%減少する。
実施例15
【0115】
ゲル状シートを、80℃の温度にさらしながら同時に二軸延伸して(一次湿式延伸)、延伸倍率がMDおよびTDの両方に2.5倍になるようにし、次いでシートを116℃の温度にさらしながら同時に二軸に延伸して(二次湿式延伸)MDおよびTDの両方に2倍の二次延伸倍率を達成すること以外は、実施例11と同様にして微多孔性ポリエチレン膜を製造する。膜を、バッチ延伸により、膜を120℃の温度にさらしながら、MDおよびTDの両方に1.5倍の倍率に同時に二軸に乾燥延伸し、次いで膜のMDおよびTDの大きさをほぼ一定に保ちながら膜を121℃の温度にさらして、膜を熱硬化する。熱緩和は用いなかった。
実施例16
【0116】
一次湿式延伸を行わないこと以外は、実施例11と同様にして微多孔性ポリエチレン膜を製造する。
実施例17
【0117】
成分A(UHMWPE)を省略し、成分(B)として、87質量%の3.0×10のMwおよび炭素10000個当たり0.15の末端ビニル基含有量を有するHDPEを用いること以外は、実施例11と同様にして微多孔性ポリエチレン膜を製造する。
実施例18
【0118】
微多孔膜を、テンター延伸機を用いて、MDおよびTDの両方に1.3倍に同時に二軸に乾燥延伸し(乾燥延伸)、次いで膜に熱緩和を施して、乾燥延伸開始時の膜のサイズを基準として1.2倍の最終MD倍率および最終TD倍率を達成すること以外は、実施例11と同様にして微多孔性ポリエチレン膜を製造する。言い換えれば、熱緩和によって、MDおよびTDの大きさが7.7%減少する。
比較例7
【0119】
ゲル状シートを80℃で同時に二軸延伸して(一次湿式延伸)MDおよびTDの両方に2倍の一次湿式延伸倍率を達成し、次いでシートを116℃の温度にさらしながら同時に二軸延伸して(湿式二次延伸)MDおよびTDの両方に4倍の二次湿式延伸倍率を達成すること以外は、実施例11と同様にして微多孔性ポリエチレン膜を製造する。
比較例8
【0120】
成分(B)(HDPE)を省略し、成分(A)として30質量%のUHMWPEを、また成分(C)として70質量%のm−PEを用いること以外は、実施例11と同様にして微多孔性ポリエチレン膜を製造する。
比較例9
【0121】
微多孔膜を、118℃の温度にさらしながらMDおよびTDの両方に3倍の倍率に同時に二軸に乾燥延伸すること以外は、実施例16と同様にして微多孔性ポリエチレン膜を製造する。
比較例10
【0122】
熱緩和も熱固定もいずれも行わないこと以外は、実施例16と同様にして微多孔性ポリエチレン膜を製造する。
【0123】
実施例11〜18および比較例7〜10で製造したポリエチレン微多孔膜の特性を上記の方法により測定した。選択したポリエチレン微多孔膜の特性を表3および4に示す。
【表3】

【表4】

【0124】
表3から、実施例11〜18のポリエチレン微多孔膜は比較的低い熱収縮率および120℃〜130℃の範囲のシャットダウン温度を有することがわかる。さらに表3から、実施例11〜15のポリエチレン微多孔膜は、比較的高い突刺強度、向上した透気度、および比較的小さい熱収縮を有することがわかる。
【0125】
表4は、比較例7〜10の微多孔膜を示している。比較例7の微多孔膜は、総湿式延伸倍率(64倍)が60倍超であるために比較的高い収縮率および比較的高いシャットダウン温度を有すると考えられる。比較例8の微多孔膜は、HDPEを含有せず、第3のポリエチレンの含有量が30質量%を超えるため比較的大きい熱収縮を有すると考えられる。比較例9の微多孔膜は、再延伸の倍率が大き過ぎるために比較的高い収縮率を有すると考えられる。比較例10の微多孔膜は、熱緩和工程も熱固定工程もいずれも行わないために比較的高い熱収縮率を有すると考えられる。
【0126】
本発明を、以下の実施形態でさらに例示する。
1.ポリオレフィンを含み、かつ120℃以上であるが130℃未満のシャットダウン温度および固体における30%以下の最大熱収縮を有するポリマー微多孔膜。
2.以下の工程により調製されるポリマー微多孔膜:
(a)ポリオレフィンを含むポリマーと希釈剤とを混合してポリマー溶液を調製する工程、
(b)ポリマー溶液を押し出してゲル状シートを形成する工程、
(c)ゲル状シートを延伸する工程、
(d)延伸シートから希釈剤を除去する工程、
(e)希釈剤を除去したシートを熱延伸する工程、および
(f)熱延伸した希釈剤を除去したシートを熱緩和して、ポリオレフィンを含み、かつ120℃以上であるが130℃未満のシャットダウン温度および固体における30%以下の最大熱収縮を有する膜を形成する工程。
3.10000秒/100cm/℃以上のシャットダウン速度および5N/25μm以上の突刺強度をさらに有する、実施形態1または2のポリマー微多孔膜。
4.50秒/100cm/20μm〜500秒/100cm/20μmの透気度および5N/25μm以上の突刺強度をさらに有する、実施形態1または2のポリマー微多孔膜。
5.ポリオレフィンを含み、かつ120℃以上であるが130℃未満のシャットダウン温度および固体における30%以下の最大熱収縮を有する、ポリマー微多孔膜を含むバッテリーセパレーター。
6.10000秒/100cm/℃以上のシャットダウン速度および5N/25μm以上の突刺強度をさらに有する、実施形態5のポリマー微多孔膜を含むバッテリーセパレーター。
7.50秒/100cm/20μm〜500秒/100cm/20μmの透気度および5N/25μm以上の突刺強度をさらに有する、実施形態5のポリマー微多孔膜を含むバッテリーセパレーター。
8.バッテリーセパレーターとしてポリオレフィンを含む微多孔膜を用いる電池であって、膜が、120℃以上であるが130℃未満のシャットダウン温度および固体における30%以下の最大熱収縮を有する、電池。
9.膜が、10000秒/100cm/℃以上のシャットダウン速度および5N/25μm以上の突刺強度をさらに有する、実施形態8のバッテリーセパレーターとしてポリオレフィンを含む微多孔膜を用いる電池。
10.膜が、50秒/100cm/20μm〜500秒/100cm/20μmの透気度および5N/25μm以上の突刺強度をさらに有する、実施形態8のバッテリーセパレーターとしてポリオレフィンを含む微多孔膜を用いる電池。
【0127】
優先権書類を含む、本明細書で引用した全ての特許、試験手順、およびその他の文献は、参照により、かかる開示が本発明に矛盾しない範囲で完全に組み込まれ、またかかる組込みが許容される全ての管轄について、完全に組み込まれる。
【0128】
本明細書中に開示した例示的形態は特定のものについて記載しているが、種々の他の変形態様が、当業者にとっては明らかであり、かつ当業者によって本開示の精神および範囲から逸脱することなく容易に行われ得ることが理解されるであろう。したがって、本明細書に添付した特許請求の範囲の範囲は本明細書中に示した実施例および説明に限定されるものではなく、特許請求の範囲は、本開示が属する分野の当業者によってその等価物として扱われる全ての特徴を含む、本明細書に備わる特許可能な新規性のある特徴の全てを包含するものとして解釈されることが意図されている。
【0129】
数値の下限および数値の上限が本明細書中に列挙されている場合、あらゆる下限からあらゆる上限までの範囲が想定されている。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ポリオレフィンを含み、かつ130.0℃以下のシャットダウン温度および30.0%以下の最大固体熱収縮を有することを特徴とする微多孔膜。
【請求項2】
膜が、25.0%以下の最大固体熱収縮、10000.0秒/100cm/℃以上のシャットダウン速度、および5.0N/25μm以上の突刺強度を有することを特徴とする請求項1に記載の微多孔膜。
【請求項3】
膜が、50.0秒/100cm/20μm〜500.0秒/100cm/20μmの範囲の透気度を有することを特徴とする請求項1または2に記載の微多孔膜。
【請求項4】
ポリオレフィンが、1.0×10以上のMwを有する第1のポリエチレン;1.0×10〜0.95×10の範囲のMwおよび127.0℃を超えるTmを有する第2のポリエチレン;ならびに1.0×10〜5.0×10の範囲のMwを有しかつ115.0℃〜127.0℃の範囲のTmを有するエチレン−α−オレフィンコポリマーである第3のポリエチレンを含むことを特徴とする請求項1〜3のいずれかに記載の微多孔膜。
【請求項5】
第2のポリエチレンが、炭素10,000個当たり0.20以下の末端ビニル基含有量を有することを特徴とする請求項4に記載の微多孔膜。
【請求項6】
膜が、膜の質量を基準として5質量%〜40質量%の範囲の量の第1のポリエチレンを含有することを特徴とする請求項4または5に記載の微多孔膜。
【請求項7】
膜が、膜の質量を基準として5質量%〜30質量%の範囲の量の第3のポリエチレンを含有することを特徴とする請求項4〜6のいずれかに記載の微多孔膜。
【請求項8】
膜が、膜の質量を基準として5質量%〜90質量%の範囲の量の第2のポリエチレンを含有することを特徴とする請求項4〜7のいずれかに記載の微多孔膜。
【請求項9】
請求項1〜8のいずれかに記載の微多孔膜を含むことを特徴とするバッテリーセパレーターフィルム。
【請求項10】
負極と、正極と、電解質と、負極と正極の間に位置するセパレーターとを含む電池であって、セパレーターが、請求項1〜9のいずれかに記載の微多孔膜を含むことを特徴とする電池。
【請求項11】
微多孔膜の製造方法であって、
(a)希釈剤と、1.0×10〜5.0×10の範囲のMwを有しかつ115.0℃〜127.0℃の範囲の融点を有するポリオレフィンコポリマーとの混合物を押し出す工程、
(b)押出物を延伸する工程、
(c)希釈剤の少なくとも一部を延伸押出物から除去する工程、
(d)希釈剤を除去した押出物を延伸する工程、次いで
(e)延伸した希釈剤を除去した押出物を高温にさらす工程
を含むことを特徴とする微多孔膜の製造方法。
【請求項12】
コポリマーが、エチレン−α−オレフィンコポリマーを含むことを特徴とする請求項11に記載の方法。
【請求項13】
混合物が、1.0×10以上のMwを有する第1のポリエチレン、1.0×10未満のMwおよび127.0℃超のTmを有する第2のポリエチレンをさらに含むことを特徴とする請求項11または12に記載の方法。
【請求項14】
コポリマーが、1.5〜5の範囲のMWDを有する、請求項11〜13のいずれか一項に記載の方法。
【請求項15】
希釈剤と、ポリプロピレン、ポリブテン−1、ポリペンテン−1、ポリ(4−メチル−ペンテン−1)、ポリヘキセン−1、ポリオクテン−1、ポリ(ビニル酢酸塩)、ポリメタクリル酸メチル、ポリエステル、ポリアミド、ポリアリーレンスルフィド、およびそれらの混合物の群より選択される第4のポリマーとを混合することをさらに含むことを特徴とする請求項11〜14のいずれかに記載の方法。
【請求項16】
工程(d)の延伸が、膜を116.0℃〜125.0℃の範囲の温度にさらしながら行われ、かつ少なくとも1つの平面方向に1.5倍〜2.5倍の範囲の倍率を達成することを特徴とする請求項11〜15のいずれかに記載の方法。
【請求項17】
工程(e)中に、膜が、116.0℃〜125.0℃の範囲の温度にさらされ、かつ熱緩和を施されて、少なくとも1つの平面方向に、工程(d)の開始時の膜のサイズを基準として1.2倍〜1.5倍の範囲の倍率となることを特徴とする請求項11〜16のいずれかに記載の方法。
【請求項18】
工程(b)の延伸が、シートを110.0℃〜125.0℃の範囲の温度にさらしながら行われ、20倍〜60倍の範囲の面積倍率で延伸することを特徴とする請求項11〜17のいずれかに記載の方法。
【請求項19】
工程(b)の延伸が、シートを20.0℃〜90℃の範囲の温度にさらしながら少なくとも1つの平面方向に行われ、かつ膜を110.0℃〜125.0℃の範囲の温度にさらしながら延伸シートを少なくとも1つの方向に延伸する第2の延伸をさらに含み、第1および第2の延伸によって20倍〜60倍の範囲の面積倍率で行われることを特徴とする請求項11〜17のいずれかに記載の方法。
【請求項20】
膜を熱固定することをさらに含むことを特徴とする請求項11〜19のいずれかに記載の方法。
【請求項21】
請求項11〜19のいずれかに記載のプロセスにより作製されることを特徴とする膜。
【請求項22】
請求項11〜19のいずれかに記載のプロセスにより作製される膜を含むことを特徴とするバッテリーセパレーターフィルム。
【請求項23】
1.0×10〜5.0×10の範囲のMwを有しかつ115.0℃〜127.0℃の範囲のTmを有するポリオレフィンコポリマーを含むことを特徴とする微多孔膜。
【請求項24】
膜が、130.0℃以下のシャットダウン温度および30.0%以下の最大固体熱収縮を有することを特徴とする請求項23に記載の微多孔膜。
【請求項25】
請求項23に記載の微多孔膜、および第2の膜。

【公表番号】特表2012−522106(P2012−522106A)
【公表日】平成24年9月20日(2012.9.20)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−503461(P2012−503461)
【出願日】平成22年3月5日(2010.3.5)
【国際出願番号】PCT/US2010/026425
【国際公開番号】WO2010/114674
【国際公開日】平成22年10月7日(2010.10.7)
【出願人】(510157580)東レバッテリーセパレータフィルム株式会社 (31)
【Fターム(参考)】