説明

微小位置決め用アクチュエータに接着されるヘッドスライダ、該ヘッドスライダを備えたヘッドジンバルアセンブリ、該ヘッドスライダとアクチュエータとの接着方法、該ヘッドスライダの製造方法及びヘッドジンバルアセンブリの製造方法

【課題】 アクチュエータとヘッドスライダとの接着処理が容易となり、接着強度、共振周波数及び変位量特性に劣化が少なくかつそれらのばらつきが少ない、微小位置決め用アクチュエータに接着されるヘッドスライダ、このヘッドスライダを備えたHGA、ヘッドスライダとアクチュエータとの接着方法、ヘッドスライダの製造方法及びHGAの製造方法を提供する。
【解決手段】 少なくとも1つのヘッド素子を有しており、この少なくとも1つのヘッド素子の微小位置決めを行うためのアクチュエータに接着されるヘッドスライダが、アクチュエータとの接着部に、接着剤を流し込むための少なくとも1つの凹部を備えている。

【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、薄膜磁気ヘッド素子又は光ヘッド素子等のヘッド素子の微小位置決め用アクチュエータに接着されるヘッドスライダ、このヘッドスライダを備えたヘッドジンバルアセンブリ(HGA)、このヘッドスライダとアクチュエータとの接着方法、ヘッドスライダの製造方法及びHGAの製造方法に関する。
【0002】
【従来の技術】磁気ディスク装置では、HGAのサスペンションの先端部に取り付けられた磁気ヘッドスライダを、回転する磁気ディスクの表面から浮上させ、その状態で、この磁気ヘッドスライダに搭載された薄膜磁気ヘッド素子により磁気ディスクへの記録及び/又は磁気ディスクからの再生が行われる。
【0003】近年、磁気ディスク装置の大容量化及び高密度記録化に伴い、ディスク半径方向(トラック幅方向)の密度の高密度化が進んできており、従来のごときボイスコイルモータ(以下VCMと称する)のみによる制御では、磁気ヘッドの位置を正確に合わせることが難しくなってきている。
【0004】磁気ヘッドの精密位置決めを実現する手段の一つとして提案されているのが、従来のVCMよりさらに磁気ヘッドスライダ側にもう1つのアクチュエータ機構を搭載し、VCMで追従しきれない微細な精密位置決めを、そのアクチュエータによって行う技術である(例えば、特開平6−259905号公報、特開平6−309822号公報、特開平8−180623号公報参照)。
【0005】この種のアクチュエータとして、ピギーバック構造のアクチュエータが存在する。このピギーバック構造のアクチュエータは、サスペンションに固定される一方の端部と、磁気ヘッドスライダに固定される他方の端部と、これら端部を連結するピラー状の変位発生部とをPZTによる圧電部材でI字形状に一体形成してなるものであり、サスペンション上にアクチュエータと磁気ヘッドスライダとが階段状に取り付けられる。即ち、サスペンションと磁気ヘッドスライダとの間にアクチュエータが挟まれた積上げ式の構造となっている。
【0006】このようなピギーバック構造のアクチュエータを用いたHGAは、(1)積上げた構造であるため、磁気ヘッドスライダ部分のHGAの厚みがアクチュエータの分だけ増大する、(2)アクチュエータ全体がもろい材質のPZT等の圧電部材で構成されていること、並びにアクチュエータ及び磁気ヘッドスライダが階段状に積上げたカンチレバー構造となるため、モーメントで衝撃が働き、耐衝撃性が非常に低い、(3)磁気ヘッドスライダの寸法によって、微小位置決め動作時のストロークが変わってしまい、十分なストロークを得られないことがある、(4)立体的で複雑な取り付け構造を有しているため、組み立て時の取り扱いが非常に困難であり、従来のHGA組み立て装置を適用できず、生産性が非常に悪い、(5)アクチュエータの動きを阻害しないために、磁気ヘッドスライダ及びアクチュエータ間、並びにアクチュエータ及びサスペンション間に間隙を置いて組み立てる必要があるが、このような間隙を設けることは、耐衝撃性をさらに悪化させるのみならず、組み立てにあたって間隙を一定としなければならないので、組み立て精度が低下する。特に、サスペンション、アクチュエータ及び磁気ヘッドスライダの平行度が正確に保つことが難しいので、ヘッド特性が悪化する、等の種々の問題点を有している。
【0007】このような従来技術の問題点を解消するべく、本願発明者等は、駆動信号に従って変位可能な1対の可動アーム部間にヘッドスライダを挟設するように構成したヘッド素子の微小位置決め用アクチュエータ及びHGAを既に提案している(特願2000−253930号)。また、同様の構造を有しており、可動アーム部を含むアクチュエータの主要部を金属板部材で構成したヘッド素子の微小位置決め用アクチュエータ及びHGAをも既に提案している(特願2000−332255号)。
【0008】
【発明が解決しようとする課題】しかしながら、このような可動アーム部間にヘッドスライダを挟みこんで固着する構造においては、ヘッドスライダをアクチュエータに接着するためにその可動アーム部を広げると、可動アーム部の付け根や可動アーム部に設けられている圧電素子にダメージを与えてしまう。このため、アクチュエータの可動アーム部の間隔は、ヘッドスライダの側面間の間隔(幅)よりも充分大きくして接着剤が両者間に回り込むように構成することが必要となる。
【0009】しかしながら、このように可動アーム部の間隔をヘッドスライダの幅より広くすると、(A)接着剤の層が厚くなりすぎて共振特性の劣化及び変位量の減少が起こる可能性があり、また、接着面間の中央部で接着剤がくびれてしまうことから接着強度が低下し、かつ共振周波数の低下及び変位量の減少が起こる可能性がある、(B)粘性の高い接着剤を用いると、可動アーム部及びヘッドスライダ側面の接着面に接着剤が充分に回り込まず、充分な接着強度が得られない、(C)可動アーム部とヘッドスライダ側面との間隔が左右等しくなるように制御することが非常に難しい、(D)接着剤を塗布した後にアクチュエータとヘッドスライダとを組み付けるため、接着剤が接着面からはみだして例えばヘッドスライダの浮上面(ABS)やアクチュエータの可動アーム部等に付着してしまい、このため、使用する接着剤の量を正確に制御することが難しい、(E)上述した(A)〜(D)に起因して、量産時における接着強度、共振周波数及び変位量特性等にばらつきが発生する、といった種々の問題が発生する。
【0010】従って本発明は、従来技術の上述した問題点を解消するものであり、その目的は、アクチュエータとヘッドスライダとの接着処理が容易となる、微小位置決め用アクチュエータに接着されるヘッドスライダ、このヘッドスライダを備えたHGA、ヘッドスライダとアクチュエータとの接着方法、ヘッドスライダの製造方法及びHGAの製造方法を提供することにある。
【0011】本発明の他の目的は、接着強度、共振周波数及び変位量特性に劣化が少なくかつそれらのばらつきが少ない、微小位置決め用アクチュエータに接着されるヘッドスライダ、このヘッドスライダを備えたHGA、ヘッドスライダとアクチュエータとの接着方法、ヘッドスライダの製造方法及びHGAの製造方法を提供することにある。
【0012】
【課題を解決するための手段】本発明によれば、少なくとも1つのヘッド素子を有しており、この少なくとも1つのヘッド素子の微小位置決めを行うためのアクチュエータに接着されるヘッドスライダであって、アクチュエータとの接着部に、接着剤を流し込むための少なくとも1つの凹部を備えているヘッドスライダが提供される。
【0013】アクチュエータと接着される部分に、接着剤を流し込むための少なくとも1つの凹部が設けられているため、接着剤を接着部に確実に挿入することができるから、安定したかつ充分な接着強度を得ることができる。また、接着剤がその他の部分にはみだしたりしないので、その量を正確に制御することができるから、量産時における接着強度、共振周波数及び変位量特性等にばらつき発生を防止できる。さらに、ヘッドスライダを把持するアクチュエータのアーム部の間隔を大きくとることなく、ヘッドスライダの幅にほぼ等しいかこれより僅かに大きい程度に設定できるため、接着剤の厚い層による影響が少なくなり、しかもヘッドスライダとアクチュエータとの接着部における左右の間隔差を最小限とすることができるから、共振特性及び変位特性の劣化を防止することができる。さらにまた、アクチュエータとヘッドスライダとを組み付けた後に接着剤を流し込めば良いため、接着処理が非常に容易となる。
【0014】少なくとも1つの凹部が、少なくとも1つの溝であることが好ましい。
【0015】アクチュエータによって挟設支持される2つの側面を有しており、少なくとも1つの溝が各側面に、ABSに沿って形成されていることも好ましい。
【0016】少なくとも1つの溝が、各側面のABS側のエッジに設けられた1つの溝であることが好ましい。溝が、エッジの全長に渡って形成されていることも好ましい。
【0017】少なくとも1つのヘッド素子が少なくとも1つの薄膜磁気ヘッド素子であることも好ましい。
【0018】本発明によれば、さらに、上述したヘッドスライダと、少なくとも1つの溝に流し込まれた接着剤によってこのヘッドスライダと接着されている微小位置決め用アクチュエータと、このアクチュエータが固着された支持機構とを備えたHGAが提供される。
【0019】ヘッドスライダのアクチュエータと接着される部分に、接着剤を流し込むための少なくとも1つの溝が設けられているため、接着剤が接着部に確実に挿入されるので安定したかつ充分な接着強度を得ることができる。また、接着剤がその他の部分にはみだしたりしないので、その量を正確に制御することができるから、量産時における接着強度、共振周波数及び変位量特性等にばらつき発生を防止できる。さらに、ヘッドスライダを把持するアクチュエータのアーム部の間隔を大きくとることなく、ヘッドスライダの幅にほぼ等しいかこれより僅かに大きい程度に設定できるため、接着剤の厚い層による影響が少なくなり、しかもヘッドスライダとアクチュエータとの接着部における左右の間隔差を最小限とすることができるから、共振特性及び変位特性の劣化を防止することができる。さらにまた、アクチュエータとヘッドスライダとを組み付けた後に接着剤を流し込めば良いため、接着処理が非常に容易となる。
【0020】アクチュエータが1対の可動アーム部を備えており、ヘッドスライダが1対の可動アーム部によって挟設支持される2つの側面を有していることが好ましい。
【0021】アクチュエータの1対の可動アーム部の間隔が、ヘッドスライダの2つの側面間の距離にほぼ等しいか僅かに大きいことも好ましい。
【0022】アクチュエータが基部を備えており、1対の可動アーム部が基部から突出しており駆動信号に従ってABSに沿って変位するように構成されていることも好ましい。
【0023】アクチュエータの可動アーム部及び基部が、弾性を有するセラミック焼結体又は金属板部材で形成されていることが好ましい。
【0024】アクチュエータの可動アーム部が、アーム部材と、アーム部材の面上に積層又は接着された圧電素子とを備えていることも好ましい。
【0025】本発明によれば、さらにまた、少なくとも1つのヘッド素子を有するヘッドスライダと、少なくとも1つのヘッド素子の微小位置決めを行うためのアクチュエータとの接着方法であって、ヘッドスライダの側面をアクチュエータの1対の可動アーム部で挟んだ後、ヘッドスライダの各側面に設けられた少なくとも1つの溝に接着剤を流し込むことにより、側面と可動アーム部とを接着するヘッドスライダとアクチュエータとの接着方法が提供される。
【0026】アクチュエータとヘッドスライダとを組み付けた後に、ヘッドスライダの側面に設けた少なくとも1つの溝に接着剤を流し込んでいる。このように接着剤を後で付与しているため、接着処理が非常に容易となる。しかも、接着剤が接着部に確実に挿入されるので安定したかつ充分な接着強度を得ることができ、接着剤がその他の部分にはみだしたりしないのでその量を正確に制御することができるから、量産時における接着強度、共振周波数及び変位量特性等にばらつき発生を防止できる。また、接着剤を溝に流し込めるため、アクチュエータの可動アーム部の間隔を接着剤用に大きくとる必要がなく、ヘッドスライダの幅にほぼ等しいかこれより僅かに大きい程度に設定できる。その結果、接着剤の厚い層による影響が少なくなり、しかもヘッドスライダとアクチュエータとの接着部における左右の間隔差を最小限とすることができるから、共振特性及び変位特性の劣化を防止することができる。
【0027】少なくとも1つの溝が、ヘッドスライダのABSに沿って形成されていることが好ましい。
【0028】少なくとも1つの溝が、ヘッドスライダの各側面のABS側のエッジに設けられた1つの溝であることも好ましい。
【0029】本発明によれば、各々が少なくとも1つのヘッド素子を有するヘッドスライダが複数互いに連接して配列されたバーの各ヘッドスライダ間に非貫通溝を形成し、非貫通溝の中央を非貫通溝の幅より狭い幅を有する切断刃によって切断してヘッドスライダを個々に分離するヘッドスライダの製造方法が提供される。
【0030】バーの状態において、非貫通溝を形成するのみで接着剤を流し込むための溝が得られるので、製造工程をさほど変える必要がないから工程が複雑化することを防止できる。
【0031】非貫通溝をABS側に形成することが好ましい。
【0032】本発明によれば、また、少なくとも1つのヘッド素子を有しており、側面に接着剤を流し込むための少なくとも1つの溝を備えたヘッドスライダを形成し、一方、基部及びこの基部から突出しており駆動信号に従って変位する1対の可動アーム部を備えており、少なくとも1つのヘッド素子の微小位置決め用のアクチュエータを形成し、アクチュエータの1対の可動アーム部間にヘッドスライダを挟んだ後、少なくとも1つの溝に接着剤を流し込むことにより、ヘッドスライダの側面とアクチュエータの可動アーム部とを接着し、アクチュエータの基部を支持機構に固着するHGAの製造方法が提供される。
【0033】アクチュエータとヘッドスライダとを組み付けた後に、ヘッドスライダの側面に設けた少なくとも1つの溝に接着剤を流し込んでいる。このように接着剤を後で付与しているため、接着処理が非常に容易となる。しかも、接着剤が接着部に確実に挿入されるので安定したかつ充分な接着強度を得ることができ、接着剤がその他の部分にはみだしたりしないのでその量を正確に制御することができるから、量産時における接着強度、共振周波数及び変位量特性等にばらつき発生を防止できる。また、接着剤を溝に流し込めるため、アクチュエータの可動アーム部の間隔を接着剤用に大きくとる必要がなく、ヘッドスライダの幅にほぼ等しいかこれより僅かに大きい程度に設定できる。その結果、接着剤の厚い層による影響が少なくなり、しかもヘッドスライダとアクチュエータとの接着部における左右の間隔差を最小限とすることができるから、共振特性及び変位特性の劣化を防止することができる。
【0034】少なくとも1つの溝が、ヘッドスライダのABSに沿って形成されていることが好ましい。
【0035】少なくとも1つの溝が、各側面のABS側のエッジに設けられた1つの溝であることも好ましい。溝が、エッジの全長に渡って形成されていることも好ましい。
【0036】アクチュエータの1対の可動アーム部の間隔を、ヘッドスライダの2つの側面間の距離にほぼ等しいか僅かに大きくすることも好ましい。
【0037】
【発明の実施の形態】図1は本発明の一実施形態として、磁気ディスク装置の要部の構成を概略的に示す斜視図であり、図2はHGA全体を表す斜視図であり、図3及び図4は本実施形態におけるHGAの先端部を互いに異なる方向から見た斜視図である。
【0038】図1において、10は軸11の回りを回転する複数の磁気ディスク、12は磁気ヘッドスライダをトラック上に位置決めするためのアセンブリキャリッジ装置をそれぞれ示している。アセンブリキャリッジ装置12は、軸13を中心にして角揺動可能なキャリッジ14と、このキャリッジ14を角揺動駆動する例えばボイスコイルモータ(VCM)からなる主アクチュエータ15とから主として構成されている。
【0039】キャリッジ14には、軸13の方向にスタックされた複数の駆動アーム16の基部が取り付けられており、各駆動アーム16の先端部にはHGA17が固着されている。各HGA17は、その先端部に設けられている磁気ヘッドスライダが、各磁気ディスク10の表面に対して対向するように駆動アーム16の先端部に設けられている。
【0040】図2〜図4に示すように、HGAは、サスペンション20の先端部に、磁気ヘッド素子を有する磁気ヘッドスライダ21の側面を挟持している精密位置決めを行うためのアクチュエータ22を固着して構成される。
【0041】図1に示す主アクチュエータ15はHGA17を取り付けた駆動アーム16を変位させてアセンブリ全体を動かすために設けられており、アクチュエータ22はそのような主アクチュエータ15では駆動できない微細な変位を可能にするために設けられている。
【0042】サスペンション20は、図2〜図4に示すように、第1及び第2のロードビーム23及び24と、これら第1及び第2のロードビーム23及び24を互いに連結する弾性を有するヒンジ25と、第2のロードビーム24及びヒンジ25上に固着支持された弾性を有するフレクシャ26と、第1のロードビーム23の取り付け部23aに設けられた円形のベースプレート27とから主として構成されている。
【0043】フレクシャ26は、第2のロードビーム24に設けられたディンプル(図示なし)に押圧される軟らかい舌部26aを一方の端部に有しており、この舌部26a上には、ポリイミド等による絶縁層26bを介してアクチュエータ22の基部22aが固着されている。このフレクシャ26は、この舌部26aでアクチュエータ22を介して磁気ヘッドスライダ21を柔軟に支えるような弾性を持っている。フレクシャ26は、本実施形態では、厚さ約20μmのステンレス鋼板(例えばSUS304TA)によって構成されている。なお、フレクシャ26と第2のロードビーム24及びヒンジ25との固着は、複数の溶接点によるピンポイント固着によってなされている。
【0044】ヒンジ25は、第2のロードビーム24にアクチュエータ22を介してスライダ21を磁気ディスク方向に押えつける力を与えるための弾性を有している。このヒンジ25は、本実施形態では、厚さ約40μmのステンレス鋼板によって構成されている。
【0045】第1のロードビーム23は、本実施形態では、約100μm厚のステンレス鋼板で構成されており、ヒンジ25をその全面に渡って支持している。ただし、ロードビーム23とヒンジ25との固着は、複数の溶接点によるピンポイント固着によってなされている。また、第2のロードビーム24も、本実施形態では、約100μm厚のステンレス鋼板で構成されており、ヒンジ25にその端部において固着されている。ただし、ロードビーム24とヒンジ25との固着も、複数の溶接点によるピンポイント固着によってなされている。なお、この第2のロードビーム24の先端には、非動作時にHGAを磁気ディスク表面から離しておくためのリフトタブ24aが設けられている。
【0046】ベースプレート27は、本実施形態では、約150μm厚のステンレス鋼又は鉄で構成されており、第1のロードビーム23の基部の取り付け部23aに溶接によって固着されている。このベースプレート27が駆動アーム16(図1)に取り付けられる。
【0047】フレクシャ26上には、積層薄膜パターンによる複数のリード導体を含む可撓性の配線部材28が形成又は載置されている。配線部材28は、フレクシブルプリント回路(Flexible Print Circuit、FPC)のごとく金属薄板上にプリント基板を作成するのと同じ公知のパターニング方法で形成されている。この配線部材28は、例えば、厚さ約5μmのポリイミド等の樹脂材料による第1の絶縁性材料層、パターン化された厚さ約4μmのCu層(リード導体層)及び厚さ約5μmのポリイミド等の樹脂材料による第2の絶縁性材料層をこの順序でフレクシャ26側から順次積層することによって形成される。ただし、磁気ヘッド素子、アクチュエータ及び外部回路と接続するための接続パッドの部分は、Cu層上にAu層が積層形成されており、その上に絶縁性材料層は形成されていない。
【0048】本実施形態においてこの配線部材28は、磁気ヘッド素子に接続される片側2本、両側で計4本のリード導体を含む第1の配線部材28aと、アクチュエータ22に接続される片側1本、両側で計2本のリード導体を含む第2の配線部材28bとから構成されている。
【0049】第1の配線部材28aのリード導体の一端は、フレクシャ26の先端部において、このフレクシャ26から切り離されており自由運動できる分離部26c上に設けられた磁気ヘッド素子用接続パッド29に接続されている。接続パッド29は、磁気ヘッドスライダ21の端子電極21aに金ボンディング、ワイヤボンディング又はステッチボンディング等により接続されている。第1の配線部材28aのリード導体の他端は外部回路と接続するための外部回路用接続パッド30に接続されている。
【0050】第2の配線部材28bのリード導体の一端は、フレクシャ26の舌部26aの絶縁層26b上に形成されたアクチュエータ用接続パッド31に接続されており、この接続パッド31はアクチュエータ22の基部22aに設けられたAチャネル及びBチャネル信号端子電極22b及び22cにそれぞれ接続されている。第2の配線部材28bのリード導体の他端は外部回路と接続するための外部回路用接続パッド30に接続されている。
【0051】本発明のHGAにおけるサスペンションの構造は、以上述べた構造に限定されるものではないことは明らかである。なお、図示されていないが、サスペンション20の途中にヘッド駆動用ICチップを装着してもよい。
【0052】図5は本実施形態におけるアクチュエータの構造を示す平面図であり、図6はこのアクチュエータの圧電素子部分の構造を示す断面図であり、図7はこのアクチュエータの動作を説明するための斜視図である。
【0053】図5に示すように、アクチュエータ22は、その平面形状が略コ字状となっており、サスペンションに固着される基部50(22a)の両端から1対の可動アーム部51及び52が垂直に伸びている。可動アーム部51及び52の先端部には、磁気ヘッドスライダ21の側面21b及び21cに固着されるスライダ固着部53及び54がそれぞれ設けられている。スライダ固着部53及び54間の間隔は、挟設すべき磁気ヘッドスライダの幅にほぼ等しいかこれより僅かに大きくなるように設定されている。アクチュエータ22の厚さは、アクチュエータ実装によりHGAの厚さを増大させないように、挟設すべき磁気ヘッドスライダの厚さ以下に設定されている。逆にいえば、アクチュエータ22の厚さを挟設すべき磁気ヘッドスライダの厚さまで大きくすることによって、HGAの厚さを増大させることなくアクチュエータ自体の強度を上げることができる。
【0054】スライダ固着部53及び54は、磁気ヘッドスライダ21方向に突出しており、これによって、この部分のみが磁気ヘッドスライダ21の側面と固着され、磁気ヘッドスライダ側面と可動アーム部51及び52との間の残りの部分が空隙となるようになされている。
【0055】可動アーム部51及び52は、それぞれ、アーム部材51a及び52aとこれらアーム部材51a及び52aの側面に形成された圧電素子51b及び52bとから構成されている。
【0056】基部50並びにアーム部材51a及び52aは、弾性を有するセラミック焼結体、例えばZrOで一体的に形成されている。このように、アクチュエータの主要部を剛性の高い即ちたわみに対して強いZrO等のセラミック焼結体とすることにより、アクチュエータ自体の耐衝撃性が向上する。
【0057】圧電素子51b及び52bの各々は、図6に示すように、逆圧電効果又は電歪効果により伸縮する圧電・電歪材料層60と信号電極層61とグランド電極層62とが交互に積層された多層構造となっている。信号電極層61は図3及び図4に示すAチャネル又はBチャネル信号端子電極22b又は22cに接続されており、グランド電極層62はグランド端子22d又は22eに接続されている。
【0058】圧電・電歪材料層60がPZT等のいわゆる圧電材料から構成されており、通常、変位性能向上のための分極処理が施されている。この分極処理による分極方向は、圧電素子の積層方向である。電極層に電圧を印加したときの電界の向きが分極方向と一致する場合、両電極間の圧電・電歪材料層はその厚さ方向に伸長(圧電縦効果)し、その面内方向では収縮(圧電横効果)する。一方、電界の向きが分極方向と逆である場合、圧電・電歪材料層はその厚さ方向に収縮(圧電縦効果)し、その面内方向では伸長(圧電横効果)する。
【0059】圧電素子51b及び52bに、収縮又は伸長を生じさせる電圧を印加すると、各圧電素子部分がその都度収縮又は伸長し、これによって可動アーム部51及び52の各々は、図7に示すようにS字状に撓みその先端部が横方向に直線的に揺動する。その結果、磁気ヘッドスライダ21も同様に横方向に直線的に揺動する。このように、角揺動ではなく、直線揺動であるため、磁気ヘッド素子のより精度の高い位置決めが可能となる。
【0060】両圧電素子に、互いに逆の変位が生じるような電圧を同時に印加してもよい。即ち、一方の圧電素子と他方の圧電素子とに、一方が伸長したとき他方が収縮し、一方が収縮したとき他方が伸長するような交番電圧を同時に印加してもよい。このときの可動アーム部の揺動は、電圧無印加時の位置を中央とするものとなる。この場合、駆動電圧を同じとしたときの揺動の振幅は、電圧を交互に印加する場合の約2倍となる。ただし、この場合、揺動の一方の側では圧電素子を伸長させることになり、このときの駆動電圧は分極の向きと逆となる。このため、印加電圧が高い場合や継続的に電圧印加を行う場合には、圧電・電歪材料の分極が減衰するおそれがある。従って、分極と同じ向きに一定の直流バイアス電圧を加えておき、このバイアス電圧に上述の交番電圧を重畳したものを駆動電圧とすることにより、駆動電圧の向きが分極の向きと逆になることがないようにする。この場合の揺動は、バイアス電圧だけを印加したときの位置を中央とするものとなる。
【0061】なお、圧電・電歪材料とは、逆圧電効果または電歪効果により伸縮する材料を意味する。圧電・電歪材料は、上述したようなアクチュエータの変位発生部に適用可能な材料であれば何であってもよいが、剛性が高いことから、通常、PZT[Pb(Zr,Ti)O]、PT(PbTiO)、PLZT[(Pb,La)(Zr,Ti)O]、チタン酸バリウム(BaTiO)等のセラミックス圧電・電歪材料が好ましい。
【0062】このように、アクチュエータ22は、可動アーム部51及び52間に磁気ヘッドスライダ21の側面を挟み込むように構成しているため、アクチュエータ22を設けてもその部分でHGAの厚みが増大しない。このため、アクチュエータ装着による磁気ディスク装置の寸法変更等は不要となる。また、アクチュエータ22及び磁気ヘッドスライダ21の複合体がカンチレバー構造とはなっていないため、耐衝撃性が大幅に向上する。しかも、可動アーム部51及び52間に磁気ヘッドスライダ21を挟設する構造としているため、変位を実際に与える可動アーム部51及び52の先端部が磁気ヘッドスライダ21の先端まで伸ばせることとなる。このため、磁気ヘッドスライダ21の寸法が変った場合にも微小位置決め動作時に同じ大きさのストロークを提供できるから必要十分なストロークを得ることができる。
【0063】本発明においては、磁気ヘッドスライダ21の形状に工夫が施されている。即ち、磁気ヘッドスライダ21の両側面21b及び21cに、アクチュエータ22との接着時に接着剤を流し込むための少なくとも1つの凹部が設けられている。以下、この点について詳細に説明する。
【0064】図8及び図9は本実施形態における磁気ヘッドスライダ21をアクチュエータ22に接着した状態を互いに異なる方向から見た斜視図であり、図10及び図11は本実施形態における磁気ヘッドスライダ21及びアクチュエータ22を互いに異なる方向から見た分解斜視図であり、図12は本実施形態における磁気ヘッドスライダ21をアクチュエータ22に接着した状態を磁気ヘッドスライダ21の素子形成面側ら見た立面図であり、図13は本実施形態における磁気ヘッドスライダ21及びアクチュエータ22を磁気ヘッドスライダ21の素子形成面側から見た分解立面図である。
【0065】これらの図、図1〜図5及び図7に示すように、磁気ヘッドスライダ21は、ABS21d、その反対側の面21e、側面21b及び21c、前面21f、磁気ヘッド素子21g及び端子電極21aが形成された素子形成面(後面)21hを備えた略直方体形状となっており、特に本実施形態では、側面21b及び21cのそれぞれのABS21d側のエッジの全長に渡って形成された溝21i及び21jを備えている。これら溝21i及び21jは、磁気ヘッドスライダ21をアクチュエータ22のスライダ固着部53及び54に接着する際に接着剤を流し込むために設けられている。このような溝21i及び21jを側面21b及び21cにそれぞれ設けることによって、種々の利点が得られる。以下この点について説明する。
【0066】図14はこのような溝を持たない従来の磁気ヘッドスライダ21´とアクチュエータとを接着する状況を説明する図であり、図15は本実施形態の磁気ヘッドスライダ21とアクチュエータ22とを接着する状況を説明する図である。
【0067】図14(A)に示すように、従来技術によると、接着剤を流し込むために、磁気ヘッドスライダ21´を把持するアクチュエータのスライダ固着部53´及び54´の間隔をあらかじめ大きくとっておく必要がある。このため、磁気ヘッドスライダ21´の側面とスライダ固着部53´及び54´との左右の間隔140及び141を均等に制御することが非常に難しく、また、接着剤の層が厚くなりすぎて共振特性の劣化及び変位量の減少が起こる可能性がある。さらに、同図(B)に示すように、接着面間の中央部で接着剤によるくびれ142が生じてしまうことから接着強度が低下し、かつ共振周波数の低下及び変位量の減少が起こる可能性がある。さらにまた、粘性の高い接着剤を用いると、可動アーム部及びヘッドスライダ側面の接着面に接着剤が充分に回り込まず、充分な接着強度が得られない。また、同図(B)に示すように、接着剤を塗布した後にアクチュエータと磁気ヘッドスライダ21´とを組み付けるため、接着剤が接着面からはみだして磁気ヘッドスライダのABSに付着143が生じたり、下方の面に付着144が生じてしまう。このため、使用する接着剤の量を正確に制御することが難しい。さらに、以上のことに起因して、量産時における接着強度、共振周波数及び変位量特性等にばらつきが発生するといった問題が生じる。
【0068】これに対して、図15に示すように、接着剤150及び151を流し込むための溝21i及び21jを磁気ヘッドスライダ21の側面21b及び21cにそれぞれ設けることによって、接着剤が接着個所に確実に挿入されるので安定したかつ充分な接着強度を得ることができる。また、接着剤がその他の部分にはみだしたりしないので、その量を正確に制御することができるから、量産時における接着強度、共振周波数及び変位量特性等にばらつき発生を防止できる。さらに、磁気ヘッドスライダ21を把持するアクチュエータ22のスライダ固着部53及び54の間隔を大きくとることなく、磁気ヘッドスライダ21の幅にほぼ等しいかこれより僅かに大きい程度に設定できるため、接着剤の厚い層による影響が少なくなり、しかも磁気ヘッドスライダ21とアクチュエータ22との接着部における左右の間隔差を最小限とすることができるから、共振特性及び変位特性の劣化を防止することができる。さらにまた、アクチュエータ22と磁気ヘッドスライダ21とを組み付けた後に接着剤を流し込めば良いため、接着処理が非常に容易となる。
【0069】なお、上述した実施形態では、溝21i及び21jを磁気ヘッドスライダ21の側面21b及び21cのABS21d側のエッジの全長に渡って形成しているが、接着部であるアクチュエータ22のスライダ固着部53及び54に対応する部分のみに溝を設けても良いことは明らかである。また、溝に代えて、その他の形状の凹部を設けても良い。さらに、各側面に設ける溝又は凹部の数は、複数であっても良い。
【0070】図16は本実施形態における磁気ヘッドスライダの製造工程の一部を説明する斜視図である。
【0071】まず、薄膜技術によって多数の磁気ヘッド素子がマトリクス状に形成されたウエハを切断することにより、複数のバーを得る。各バー160は、同図(A)に示すように、それぞれが磁気ヘッド素子161を有する磁気ヘッドスライダが複数互いに連接して配列されている。
【0072】次いで、同図(B)に示すように、砥石162によってバー160のABS側から溝加工を行う。この溝加工は、同図(C)に示すように、バー160を貫通させることなく途中で止めるように行い、これによって、砥石162の刃先形状に対応する形状の非貫通溝163を形成する。
【0073】次いで、同図(D)に示すように、非貫通溝163の中央をこの非貫通溝の幅より狭い幅を有する砥石164で溝加工することにより、バー160を切断し、同図(E)及び(F)に示すように、個々に分離された磁気ヘッドスライダ165を形成する。
【0074】従って、このようにして得られた磁気ヘッドスライダ165は、その両側面のABS側のエッジの全長に渡って溝166を有することとなる。
【0075】このように、本実施形態によれば、バー160の状態において、非貫通溝163を形成するのみで接着剤を流し込むための溝166が得られるので、溝形成のためにバー160を治具から張り替える等の工程が不用となるから、製造工程を現行のものからさほど変える必要がなく、工程が複雑化しない。
【0076】図17は、本発明の他の実施形態において磁気ヘッドスライダをアクチュエータに接着した状態を示す斜視図である。
【0077】本実施形態における磁気ヘッドスライダ21の構成は、上述した図1の実施形態の場合と全く同様である。
【0078】しかしながら、本実施形態においては、アクチュエータ22´の主要部が、1枚の金属板をコ字状に切り抜いたものを立体的に折り曲げて形成されている。即ち、コ字状に切り出した個々のアクチュエータ部材を、図にて上側の面がサスペンションへの固着面となる平板状の基部170の両側端が略垂直に折り曲げ、その部分から基部170に対して略垂直を保った状態で1対の可動アーム部171及び172が前方に伸びているように形成している。可動アーム部171及び172は、磁気ヘッドスライダ21の側面に平行となるような平板状に形成されている。
【0079】可動アーム部171及び172の先端部は、内側に(磁気ヘッドスライダ21の方向に)クランク状に折り曲げられて磁気ヘッドスライダ21の側面に固着されるスライダ固着部173及び174をそれぞれ形成している。スライダ固着部173及び174間の間隔は、挟設すべき磁気ヘッドスライダ21の幅とほぼ等しいかこれより僅かに大きくなるように設定されている。このように、スライダ固着部173及び174が磁気ヘッドスライダ21方向に折り曲げられて突出しているので、この部分のみが磁気ヘッドスライダ21の側面と固着され、磁気ヘッドスライダ側面と可動アーム部171及び172との間の残りの部分に空隙が生じる。
【0080】可動アーム部171及び172は、それぞれ、アーム部材(171a)とこれらアーム部材の側面に形成された圧電素子(171b)とから構成されている。
【0081】基部170並びにアーム部材は、弾性を有する1枚の金属板、例えばステンレス鋼板、を折り曲げて一体的に形成されている。このように、アクチュエータの主要部を金属板とすることにより、アクチュエータが軽量化されかつアクチュエータ自体の耐衝撃性が大幅に向上する。金属板としては、ステンレス鋼板等の合金鋼ばねの他に、炭素鋼ばねや、銅チタン板、リン青銅板又はベリリウム銅板等の銅合金ばねや、チタン板等、弾性を有する板ばね部材が用いられる。なお、圧電素子を印刷及び焼成によって形成する場合には、耐熱性の高い板部材を用いることが望ましい。
【0082】このように、本実施形態におけるアクチュエータ22´は、主要部が金属板で形成されているため、アクチュエータ全体の軽量化を図ることができ、その結果、機械的振動周波数を高めることができる。また、強度があり軽量である金属板を基材として用いることにより、特に衝撃に弱い可動アーム部171及び172の耐衝撃性を大幅に向上させることができる。しかも、強度の高い金属板を用いることから、HGAへの組み立て時の取り扱いが非常に容易になる。さらに、金属板を用いれば、その形状や寸法等で設計上の自由度が向上するので、充分なストロークを確保することが可能となる。また、アクチュエータ形状や寸法等の設計上の自由度が増すことによって、アクチュエータ22´の中心位置に磁気ヘッドスライダ21の中心及び荷重点(ディンプル位置)を合わせることが可能となり、その結果、磁気ヘッドスライダ21の浮上特性が著しく安定化する。しかも、高精度に加工できる金属板を用いることによって、アクチュエータ22´自体の寸法精度を大幅に高めることが可能となる。さらに、可動アーム部171及び172間に磁気ヘッドスライダ21の側面を挟み込むように構成しているため、アクチュエータ22´を設けてもその部分でHGAの厚みが増大しない。このため、アクチュエータ装着による磁気ディスク装置の寸法変更等は不要となる。また、アクチュエータ22´及び磁気ヘッドスライダ21の複合体がカンチレバー構造とはなっていないため、耐衝撃性が大幅に向上する。しかも、可動アーム部171及び172間に磁気ヘッドスライダ21を挟設する構造としているため、変位を実際に与える可動アーム部171及び172の先端部が磁気ヘッドスライダ21の先端まで伸ばせることとなる。このため、磁気ヘッドスライダ21の寸法が変った場合にも微小位置決め動作時に同じ大きさのストロークを提供できるから必要十分なストロークを得ることができる。
【0083】磁気ヘッドスライダ21に接着剤を流し込むための溝を設けることなど、本実施形態のその他の構成及び作用効果、さらに変更態様は、図1の実施形態の場合と全く同様であるため、説明を省略する。
【0084】以上、薄膜磁気ヘッド素子の微小位置決め用アクチュエータ及びこのアクチュエータを備えたHGAを用いて本発明を説明したが、本発明は、このようなアクチュエータにのみ限定されるものではなく、薄膜磁気ヘッド素子以外の例えば光ヘッド素子等のヘッド素子の微小位置決め用アクチュエータ及びこのアクチュエータを備えたHGAにも適用可能である。
【0085】以上述べた実施形態は全て本発明を例示的に示すものであって限定的に示すものではなく、本発明は他の種々の変形態様及び変更態様で実施することができる。従って本発明の範囲は特許請求の範囲及びその均等範囲によってのみ規定されるものである。
【0086】
【発明の効果】以上詳細に説明したように本発明によれば、ヘッドスライダのアクチュエータと接着される部分に、接着剤を流し込むための少なくとも1つの凹部が設けられているため、接着剤を接着部に確実に挿入することができるから、安定したかつ充分な接着強度を得ることができる。また、接着剤がその他の部分にはみだしたりしないので、その量を正確に制御することができるから、量産時における接着強度、共振周波数及び変位量特性等にばらつき発生を防止できる。さらに、ヘッドスライダを把持するアクチュエータのアーム部の間隔を大きくとることなく、ヘッドスライダの幅にほぼ等しいかこれより僅かに大きい程度に設定できるため、接着剤の厚い層による影響が少なくなり、しかもヘッドスライダとアクチュエータとの接着部における左右の間隔差を最小限とすることができるから、共振特性及び変位特性の劣化を防止することができる。さらにまた、アクチュエータとヘッドスライダとを組み付けた後に接着剤を流し込めば良いため、接着処理が非常に容易となる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の一実施形態として、磁気ディスク装置の要部の構成を概略的に示す斜視図である。
【図2】図1の実施形態におけるHGA全体を表す斜視図である。
【図3】図1の実施形態におけるHGAの先端部の斜視図である。
【図4】図1の実施形態におけるHGAの先端部を図3とは異なる方向から見た斜視図である。
【図5】図1の実施形態におけるアクチュエータの構造を示す平面図である。
【図6】図5のアクチュエータの圧電素子部分の構造を示す断面図である。
【図7】図5のアクチュエータの動作を説明するための斜視図である。
【図8】図1の実施形態における磁気ヘッドスライダをアクチュエータに接着した状態を示す斜視図である。
【図9】図1の実施形態における磁気ヘッドスライダをアクチュエータに接着した状態を図8とは異なる方向から見た斜視図である。
【図10】図1の実施形態における磁気ヘッドスライダをアクチュエータに接着した状態を示す分解斜視図である。
【図11】図1の実施形態における磁気ヘッドスライダをアクチュエータに接着した状態を図10とは異なる方向から見た分解斜視図である。
【図12】図1の実施形態における磁気ヘッドスライダをアクチュエータに接着した状態を磁気ヘッドスライダの素子形成面側ら見た立面図である。
【図13】図1の実施形態における磁気ヘッドスライダをアクチュエータに接着した状態を磁気ヘッドスライダの素子形成面側ら見た分解立面図である。
【図14】接着剤を流し込むための溝を持たない従来の磁気ヘッドスライダとアクチュエータとを接着する状況を説明する図である。
【図15】図1の実施形態の磁気ヘッドスライダとアクチュエータとを接着する状況を説明する図である。
【図16】図1の実施形態における磁気ヘッドスライダの製造工程の一部を説明する斜視図である。
【図17】本発明の他の実施形態において磁気ヘッドスライダをアクチュエータに接着した状態を示す斜視図である。
【符号の説明】
10 磁気ディスク
11、13 軸
12 アセンブリキャリッジ装置
14 キャリッジ
15 主アクチュエータ
16 駆動アーム
17 HGA
20 サスペンション
21、21´、165 磁気ヘッドスライダ
21a 端子電極
21b、21c 側面
21d ABS
21e 反対側の面
21f 前面
21g、161 磁気ヘッド素子
21h 素子形成面(後面)
21i、21j、166 溝
22、22´ アクチュエータ
22a、50、170 基部
22b、22c 信号端子電極
22d、22e グランド端子電極
23 第1のロードビーム
23a 取り付け部
24 第2のロードビーム
24a リフトタブ
25 ヒンジ
26 フレクシャ
26a 舌部
26b 絶縁層
26c 分離部
27 ベースプレート
28 配線部材
28a 第1の配線部材
28b 第2の配線部材
29 磁気ヘッド素子用接続パッド
30 外部回路用接続パッド
31 アクチュエータ用接続パッド
51、52、171、172 可動アーム部
51a、52a、171a アーム部材
51b、52b、171b 圧電素子
53、54、53´、54´、173、174 スライダ固着部
60 圧電・電歪材料層
61 信号電極層
62 グランド電極層
142、143、144、150、151 接着剤
160 バー
162、164 砥石
163 非貫通溝

【特許請求の範囲】
【請求項1】 少なくとも1つのヘッド素子を有しており、該少なくとも1つのヘッド素子の微小位置決めを行うためのアクチュエータに接着されるヘッドスライダであって、前記アクチュエータとの接着部に、接着剤を流し込むための少なくとも1つの凹部を備えていることを特徴とするヘッドスライダ。
【請求項2】 前記少なくとも1つの凹部が、少なくとも1つの溝であることを特徴とする請求項1に記載のヘッドスライダ。
【請求項3】 前記アクチュエータによって挟設支持される2つの側面を有しており、前記少なくとも1つの溝が該各側面に、浮上面に沿って形成されていることを特徴とする請求項2に記載のヘッドスライダ。
【請求項4】 前記少なくとも1つの溝が、前記各側面の前記浮上面側のエッジに設けられた1つの溝であることを特徴とする請求項2又は3に記載のヘッドスライダ。
【請求項5】 前記溝が、前記エッジの全長に渡って形成されていることを特徴とする請求項4に記載のヘッドスライダ。
【請求項6】 前記少なくとも1つのヘッド素子が少なくとも1つの薄膜磁気ヘッド素子であることを特徴とする請求項1から5のいずれか1項に記載のヘッドスライダ。
【請求項7】 請求項2から6のいずれか1項に記載のヘッドスライダと、前記少なくとも1つの溝に流し込まれた接着剤によって該ヘッドスライダと接着されている微小位置決め用アクチュエータと、該アクチュエータが固着された支持機構とを備えたことを特徴とするヘッドジンバルアセンブリ。
【請求項8】 前記アクチュエータが1対の可動アーム部を備えており、前記ヘッドスライダが該1対の可動アーム部によって挟設支持される2つの側面を有していることを特徴とする請求項7に記載のヘッドジンバルアセンブリ。
【請求項9】 前記アクチュエータの前記1対の可動アーム部の間隔が、前記ヘッドスライダの前記2つの側面間の距離にほぼ等しいか僅かに大きいことを特徴とする請求項8に記載のヘッドジンバルアセンブリ。
【請求項10】 前記アクチュエータが基部を備えており、前記1対の可動アーム部が該基部から突出しており駆動信号に従って前記ヘッドスライダの前記浮上面に沿って変位するように構成されていることを特徴とする請求項8又は9に記載のヘッドジンバルアセンブリ。
【請求項11】 前記アクチュエータの前記可動アーム部及び前記基部が、弾性を有するセラミック焼結体で形成されていることを特徴とする請求項10に記載のヘッドジンバルアセンブリ。
【請求項12】 前記アクチュエータの前記可動アーム部及び前記基部が、金属板部材で形成されていることを特徴とする請求項10に記載のヘッドジンバルアセンブリ。
【請求項13】 前記アクチュエータの前記可動アーム部が、アーム部材と、該アーム部材の面上に積層又は接着された圧電素子とを備えていることを特徴とする請求項8から12のいずれか1項に記載のヘッドジンバルアセンブリ。
【請求項14】 少なくとも1つのヘッド素子を有するヘッドスライダと、該少なくとも1つのヘッド素子の微小位置決めを行うためのアクチュエータとの接着方法であって、前記ヘッドスライダの側面を前記アクチュエータの1対の可動アーム部で挟んだ後、前記ヘッドスライダの前記各側面に設けられた少なくとも1つの溝に接着剤を流し込むことにより、該側面と前記可動アーム部とを接着することを特徴とするヘッドスライダとアクチュエータとの接着方法。
【請求項15】 前記少なくとも1つの溝が、前記ヘッドスライダの浮上面に沿って形成されていることを特徴とする請求項14に記載の方法。
【請求項16】 前記少なくとも1つの溝が、前記各側面の前記浮上面側のエッジに設けられた1つの溝であることを特徴とする請求項14又は15に記載の方法。
【請求項17】 各々が少なくとも1つのヘッド素子を有するヘッドスライダが複数互いに連接して配列されたバーの各ヘッドスライダ間に非貫通溝を形成し、該非貫通溝の中央を該非貫通溝の幅より狭い幅を有する切断刃によって切断して前記ヘッドスライダを個々に分離することを特徴とするヘッドスライダの製造方法。
【請求項18】 前記非貫通溝を浮上面側に形成することを特徴とする請求項17に記載の製造方法。
【請求項19】 少なくとも1つのヘッド素子を有しており側面に接着剤を流し込むための少なくとも1つの溝を備えたヘッドスライダを形成し、一方、基部及び該基部から突出しており駆動信号に従って変位する1対の可動アーム部を備えており前記少なくとも1つのヘッド素子の微小位置決め用のアクチュエータを形成し、該アクチュエータの前記1対の可動アーム部間に前記ヘッドスライダを挟んだ後、前記少なくとも1つの溝に接着剤を流し込むことにより、前記ヘッドスライダの前記側面と前記アクチュエータの前記可動アーム部とを接着し、前記アクチュエータの前記基部を支持機構に固着することを特徴とするヘッドジンバルアセンブリの製造方法。
【請求項20】 前記少なくとも1つの溝が、前記ヘッドスライダの浮上面に沿って形成されていることを特徴とする請求項19に記載の製造方法。
【請求項21】 前記少なくとも1つの溝が、前記各側面の前記浮上面側のエッジに設けられた1つの溝であることを特徴とする請求項18又は19に記載の製造方法。
【請求項22】 前記溝が、前記エッジの全長に渡って形成されていることを特徴とする請求項21に記載の製造方法。
【請求項23】 前記アクチュエータの前記1対の可動アーム部の間隔を、前記ヘッドスライダの前記2つの側面間の距離にほぼ等しいか僅かに大きくすることを特徴とする請求項19から22のいずれか1項に記載の製造方法。

【図1】
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【図2】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図17】
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【図16】
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【公開番号】特開2003−36616(P2003−36616A)
【公開日】平成15年2月7日(2003.2.7)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2001−207988(P2001−207988)
【出願日】平成13年7月9日(2001.7.9)
【出願人】(500393893)新科實業有限公司 (361)
【Fターム(参考)】