説明

微小循環障害に起因する疾患を予防及び治療するための医薬の調製におけるダンシェンス、ノトギンセノシドR1又はそれらの組み合わせの使用

本発明は、伝統的な漢方製剤であるダンシェンス(DLA)、ノトギンセノシドR1(R1)、及びそれらの組み合わせの新規な使用に関し、特に微小循環障害に起因する疾患に対するDLA、R1、及びそれらの組み合わせの治療効果及び予防効果に関する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、伝統的な漢方製剤であるダンシェンス、ノトギンセノシドR1、及びそれらの組み合わせの新規な使用に関し、特に、微小循環障害に起因する疾患に対するダンシェンス、ノトギンセノシドR1、及びそれらの組み合わせの治療効果及び予防効果に関する。
【背景技術】
【0002】
虚血再灌流(I/R)障害は、介入療法、外科手術及び血栓溶解の後に起こる障害の主な病理学的根拠であると考えられている。多くの研究で見出されるように、I/R後の、血管内皮細胞への白血球の接着とマスト細胞の脱顆粒は、血管損傷の主な病理学的要因を構成する。
【0003】
微小循環は血管床であり、これは細動脈、毛細管及び細静脈等を包含するインビボ血管の90%を占める。これは代謝を維持するための重要な部分であると考えられる。アレルギー性疾患、高脂血症、高血圧、感染症、精神的刺激、外傷、手術及び介入療法等の様々な種類の要因が微小循環障害を誘発し得る。微小循環障害は次のような一連の症状:血管直径の変化;過酸化物の生成;血管内皮接着因子ICAM−1と白血球接着因子CD11b/CD18の発現;白血球の血管内皮細胞への接着;血漿アルブミンの漏出;血管外マスト細胞の脱顆粒を介する血管作用性物質、例えば、TNF−α、ヒスタミン、5−HT、炎症因子の放出;血栓の形成及び出血、を含む複雑なプロセスである。
【0004】
マスト細胞の脱顆粒はI型アレルギーの主な病理学的要因であり、このマスト細胞の脱顆粒は、花粉症、皮膚疾患、喘息及び下痢の主な病理学的根拠であると考えられる。
【0005】
ダンシェンス(3,4−ジヒドロキシフェニル乳酸、DLA)及びノトギンセノシドR1(R1)は、それぞれ、複合サルビア滴下剤(Compound Salvia drop pills)(Cardiotonic Pills(登録商標)、CP)におけるラディックス・サルビア・ミルチオリジ(Radix Salviae Militiorrhizae)(ダンシェン(Danshen))とパナックス・ノトジンセン(Panax Notoginseng)(サンキ(Sanqi))の主な活性成分の1つである。以前の研究で、我々は、I/Rに起因するラットの心臓、肝臓及び腸間膜の微小循環障害に対し、CPが寛解効果を有することを実証した。故に、サルビアノリン酸(ダンシェンの主な活性成分)とパナックス・ノトジンセン・サポニン(Panax notoginseng saponins)(サンキの主な活性成分)の全体が、I/Rに起因するラットの腸間膜の微小循環障害に寛解効果を有することが証明された。しかし、微小循環障害のどの因子にDLAとR1(それぞれ、CPにおけるダンシェンとサンキの主な活性成分)が作用するのか、また上記2つ成分の様々な比率の組み合わせが相乗作用を有するのか否かは、現在まだ知られていない。これにより、現在の研究では、どの因子において、DLA、R1及びそれらの組み合わせが、I/Rに起因するラットの腸間膜の微小循環障害を寛解できるのかを分析するために、動力学的で視覚的な方法が使用されている。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
実験の後、本発明者らは、DLA、R1及びそれらの組み合わせが、微小循環障害が引き起こす疾患に対する治療効果及び/又は予防効果が示されるように、I/Rに起因する腸間膜の微小循環障害を寛解でき、そのため伝統的な漢方薬処方も提供されることを見出した。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明者らは、DLA、R1及びそれらの組み合わせの新たな使用を見出した。特に、本発明は、I/Rに起因する腸間膜の微小循環障害に対するDLA、R1及びそれらの組み合わせの治療効果及び予防効果に関し、従って、微小循環障害が引き起こす疾患、例えば、アレルギー性疾患、高脂血症、高血圧、感染症、精神的刺激、外傷、花粉症、皮膚疾患、喘息、下痢、手術又は介入療法等に起因する微小循環障害を治療及び/又は予防する際に、DLA、R1及びそれらの組み合わせを使用することができる。
【0008】
本発明者らは、DLA、R1及びそれらの組み合わせの事前投与及び事後投与が、細静脈における白血球のローリングと接着を阻害する場合があり、I/R後のマスト細胞の脱顆粒を阻害することもできることを見出した。
【0009】
特に、本発明者らは、DLAの事前投与が、I/Rに起因する以下の症状:細静脈壁に沿ってローリングする白血球数の増加、細静脈の内壁に接着する白血球数の増加、細静脈から遊出する白血球数の増加、細静脈壁における過酸化物の生成、細静脈からの血漿アルブミンの漏出、及びマスト細胞の脱顆粒パーセンテージの増加、を阻害できることを見出した。DLAの事後投与は、I/Rに起因する以下の症状:細静脈の内壁に接着する白血球数の増加、細静脈から遊出する白血球数の増加、細静脈壁における過酸化物の生成、及び細静脈からの血漿アルブミンの漏出、を阻害することができる。
【0010】
特に、本発明者らは、R1の事前投与又は事後投与が、I/Rに起因する以下の症状:細静脈の内壁に接着する白血球数の増加、細静脈から遊出する白血球数の増加、及びマスト細胞の脱顆粒パーセンテージの増加、を阻害できることを見出した。
【0011】
本発明者らは、DLAとR1の組み合わせの事前投与又は事後投与が、I/Rに起因する以下の症状:細静脈の内壁に接着する白血球数の増加、細静脈から遊出する白血球数の増加、細静脈壁における過酸化物の生成、細静脈からの血漿アルブミンの漏出、及びマスト細胞の脱顆粒パーセンテージの増加、を阻害できることを見出した。
【0012】
本発明者らは、重量比4:1におけるDLAとR1の組み合わせの事後投与が、I/Rに起因する細静脈からの血漿アルブミンの漏出に対し、特に有意な阻害効果を有することを見出した。
本発明者らは、重量比4:1におけるDLAとR1の組み合わせの事前投与が、I/Rに起因する細静脈壁における過酸化物の生成に対し、特に有意な阻害効果を有することを見出した。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【図1】図1は、DLA、R1及びそれらの組み合わせの、I/R後のラットの腸間膜細静脈の直径に対する効果を示す。観察の全期間の間、I/R群においては、ラットの腸間膜細静脈の直径の有意な変化は検出されなかった。DLA、R1及びそれらの組み合わせの事前投与又は事後投与は、血流再開後のラットの腸間膜細静脈の直径に有意な変化をもたらすことはなかった。図1において、偽(Sham)は偽手術群を示し;I/RはI/R群を示し;DLA+I/Rは、DLAの事前投与群を示し;R1+I/Rは、R1の事前投与群を示し;DR(4:1)+I/Rは、重量比4:1におけるDLAとR1の配合剤事前投与群を示し;DR(1:1)+I/Rは、重量比1:1におけるDLAとR1の配合剤の事前投与群を示し;DR(1:4)+I/Rは、重量比1:4におけるDLAとR1の配合剤の事前投与群を示し;I/R+DLAは、DLAの事後投与群を示し;I/R+R1は、R1の事後投与群を示し;I/R+DR(4:1)は、重量比4:1におけるDLAとR1の配合剤の事後投与群を示し;I/R+DR(1:1)は、重量比1:1におけるDLAとR1の配合剤の事後投与群を示し;I/R+DR(1:4)は、重量比1:4におけるDLAとR1の配合剤の事後投与群を示す。結果を±SEの平均値として表す。*は、偽群と比較したP<0.05を表し、#は、I/R群と比較したP<0.05を表す。
【図2】図2は、DLA、R1及びそれらの組み合わせの、I/Rに起因するラットの腸間膜細静脈における白血球ローリングに対する効果を示す。I/R後のラットの腸間膜細静脈壁に沿ってローリングする白血球の数は有意に増加した。DLAの事前投与が、I/Rに起因する腸間膜細静脈壁に沿った白血球ローリングを抑制できることは明らかである。R1又はDLAとR1の配合剤の事前投与又は事後投与は、I/Rに起因する腸間膜細静脈壁に沿った白血球ローリングに対し有意な阻害効果を有しなかった。図2において、偽(Sham)は偽手術群を示し;I/RはI/R群を示し;DLA+I/RはDLAの事前投与群を示し;R1+I/Rは、R1の事前投与群を示し;DR(4:1)+I/Rは、重量比4:1におけるDLAとR1の配合剤の事前投与群を示し;DR(1:1)+I/Rは、重量比1:1におけるDLAとR1の配合剤の事前投与群を示し;DR(1:4)+I/Rは、重量比1:4におけるDLAとR1の配合剤の事前投与群を示し;I/R+DLAは、DLAの事後投与群を示し;I/R+R1は、R1の事後投与群を示し;I/R+DR(4:1)は、重量比4:1におけるDLAとR1の配合剤の事後投与群を示し;I/R+DR(1:1)は、重量比1:1におけるDLAとR1の配合剤の事後投与群を示し;I/R+DR(1:4)は、重量比1:4におけるDLAとR1の配合剤の事後投与群を示す。結果を±SEの平均値として表す。*は、偽群と比較したP<0.05を表し、#は、I/R群と比較したP<0.05を表す。
【図3】図3は、DLA、R1及びそれらの組み合わせの、I/Rに起因するラットの腸間膜細静脈に接着する白血球に対する影響を示す。偽群の観察の全期間の間に観察された腸間膜細静脈に接着した白血球は、ほんのわずかであった。血流再開の初期には、I/R群では、多数の白血球がラットの腸間膜細静脈に接着した。血流再開が進行する過程では、接着した白血球はゆっくりと増加した。DLA、R1及びそれらの組み合わせの事前投与又は事後投与は、I/Rに起因するラットの腸間膜細静脈に接着した白血球の数の増加に対し有意な阻害効果を有した。図3において、偽(Sham)は偽手術群を示し;I/RはI/R群を示し;DLA+I/RはDLAの事前投与群を示し;R1+I/RはR1の事前投与群を示し;DR(4:1)+I/Rは、重量比4:1におけるDLAとR1の配合剤の事前投与群を示し;DR(1:1)+I/Rは、重量比1:1におけるDLAとR1の配合剤の事前投与群を示し;DR(1:4)+I/Rは、重量比1:4におけるDLAとR1の配合剤の事前投与群を示し;I/R+DLAは、DLAの事後投与群を示し;I/R+R1は、R1の事後投与群を示し;I/R+DR(4:1)は、重量比4:1におけるDLAとR1の配合剤の事後投与群を示し;I/R+DR(1:1)は、重量比1:1におけるDLAとR1の配合剤の事後投与群を示し;I/R+DR(1:4)は、重量比1:4におけるDLAとR1の配合剤の事後投与群を示す。結果を±SEの平均値として表す。*は、偽群と比較したP<0.05を表し、#は、I/R群と比較したP<0.05を表す。
【図4】図4は、DLA、R1及びそれらの組み合わせの、I/Rに起因するラットの腸間膜細静脈からの白血球の遊出に対する影響を示す。観察の全期間の間には、腸間膜細静脈から遊出した白血球は観察されなかった。I/R群の血流再開後30分以内には、腸間膜細静脈から遊出した白血球は明らかに増加し、観察の終了まで増え続けた。DLA、R1及びそれらの組み合わせの事前投与又は事後投与は、I/R後のラットの腸間膜細静脈からの白血球の遊出に対し有意な阻害効果を有した。図4において、偽(Sham)は偽手術群を示し;I/RはI/R群を示し;DLA+I/RはDLAの事前投与群を示し;R1+I/RはR1の事前投与群を示し;DR(4:1)+I/Rは、重量比4:1におけるDLAとR1の配合剤の事前投与群を示し;DR(1:1)+I/Rは、重量比1:1におけるDLAとR1の配合剤の事前投与群を示し;DR(1:4)+I/Rは、重量比1:4におけるDLAとR1の配合剤の事前投与群を示し;I/R+DLAは、DLAの事後投与群を示し;I/R+R1は、R1の事後投与群を示し;I/R+DR(4:1)は、重量比4:1におけるDLAとR1の配合剤の事後投与群を示し;I/R+DR(1:1)は、重量比1:1におけるDLAとR1の配合剤の事後投与群を示し;I/R+DR(1:4)は、重量比1:4におけるDLAとR1の配合剤の事後投与群を示す。結果を±SEの平均値として表す。*は、偽群と比較したP<0.05を表し、#は、I/R群と比較したP<0.05を表す。
【図5】図5Aは、DLA、R1又はそれらの組み合わせの事前投与の、I/R後のラットの腸間膜細静脈壁における過酸化物の生成動態に対する影響を示す。観察の全期間の間には、偽群において細静脈壁のDHR蛍光強度の明らかな変化は存在しない。血流再開の開始後には、I/R群において細静脈壁のDHR蛍光強度が増加し始め、増加し続けた。R1の事前投与は、I/R後のラットの腸間膜細静脈壁における過酸化物の生成に対し有意な阻害効果を有しなかった。対照的に、DLA又は各々の配合剤の事前投与は、I/R後の腸間膜細静脈壁における過酸化物の生成に対し有意な阻害効果を有した。ここで、重量比4:1におけるDLAとR1の配合剤の事前投与は、最も強い阻害効果を有した。図5Bは、DLA、R1及びそれらの組み合わせの事後投与の、I/R後のラットの腸間膜細静脈壁における過酸化物の生成に対する影響を示す。R1の事後投与は、I/R後の腸間膜細静脈壁における過酸化物の生成に対し有意な阻害効果を有しなかった。対照的に、DLA又は各々の配合剤の事後投与は、I/R後のラットの腸間膜細静脈壁における過酸化物の生成に対し有意な阻害効果を有した。図5において、偽(Sham)は偽手術群を示し;I/RはI/R群を示し;DLA+I/RはDLAの事前投与群を示し;R1+I/RはR1の事前投与群を示し;DR(4:1)+I/Rは、重量比4:1におけるDLAとR1の配合剤の事前投与群を示し;DR(1:1)+I/Rは、重量比1:1におけるDLAとR1の配合剤の事前投与群を示し;DR(1:4)+I/Rは、重量比1:4におけるDLAとR1の配合剤の事前投与群を示し;I/R+DLAは、DLAの事後投与群を示し;I/R+R1は、R1の事後投与群を示し;I/R+DR(4:1)は、重量比4:1におけるDLAとR1の配合剤の事後投与群を示し;I/R+DR(1:1)は、重量比1:1におけるDLAとR1の配合剤の事後投与群を示し;I/R+DR(1:4)は、重量比1:4におけるDLAとR1の配合剤の事後投与群を示す。結果を±SEの平均値として表す。*は、偽群と比較したP<0.05を表し、#は、I/R群と比較したP<0.05を表す。
【図6】図6は、DLA、R1及びそれらの組み合わせの、I/R後のラットの腸間膜細静脈からの血漿アルブミン漏出に対する影響を示す。60分の観察終了時には、偽群において、ごくわずかの量の血漿アルブミンがラットの腸間膜細静脈から漏出したことが観察された。明らかに、血流再開開始後には、I/R群のラットの腸間膜細静脈からの血漿アルブミン漏出が増加し、血流再開の連続的な進行につれてこれは更に増加した。DLA:R1(1:4)の事前投与は、細静脈からの血漿アルブミン漏出に対し有意な阻害効果を有しなかった。しかし、DLA、R1、DR(4:1)又はDR(1:1)の事前投与は、細静脈からの血漿アルブミン漏出に対し有意な阻害効果を有した。DR(1:1)又はDR(1:4)の事後投与は、血流再開後の細静脈からの血漿アルブミン漏出に対し有意な阻害効果を有しなかったが、一方DLA、R1又はDR(4:1)の事後投与は、血流再開後の細静脈からの血漿アルブミン漏出に対し有意な阻害効果を有した。DR(4:1)の事後投与は、最も強い阻害効果を有することを確認した。図6において、偽(Sham)は偽手術群を示し;I/RはI/R群を示し;DLA+I/RはDLAの事前投与群を示し;R1+I/RはR1の事前投与群を示し;DR(4:1)+I/Rは、重量比4:1におけるDLAとR1の配合剤の事前投与群を示し;DR(1:1)+I/Rは、重量比1:1におけるDLAとR1の配合剤の事前投与群を示し;DR(1:4)+I/Rは、重量比1:4におけるDLAとR1の配合剤の事前投与群を示し;I/R+DLAは、DLAの事後投与群を示し;I/R+R1は、R1の事後投与群を示し;I/R+DR(4:1)は、重量比4:1におけるDLAとR1の配合剤の事後投与群を示し;I/R+DR(1:1)は、重量比1:1におけるDLAとR1の配合剤の事後投与群を示し;I/R+DR(1:4)は、重量比1:4におけるDLAとR1の配合剤の事後投与群を示す。結果を±SEの平均値として表す。*は、偽群と比較したP<0.05を表し、#は、I/R群と比較したP<0.05を表す。
【図7】図7は、DLA、R1及びそれらの組み合わせの、I/R後のラットの腸間膜間質におけるマスト細胞の脱顆粒に対する影響を示す。偽群と比較して、I/R群においては、血流再開後60分でマスト細胞の脱顆粒パーセンテージが有意に増加した。DLA、R1又はそれらの組み合わせの事前投与は、I/Rに起因するラットの腸間膜間質におけるマスト細胞の脱顆粒パーセンテージの増加を有意に阻害することができる。血流再開後には、DLAの事後投与は、マスト細胞の脱顆粒パーセンテージに対し有意な阻害効果を示さず、一方R1又はDRの各々の配合剤の事後投与は、I/Rに起因するラットの腸間膜間質におけるマスト細胞の脱顆粒パーセンテージの増加を有意に阻害することができる。図7において、偽(Sham)は偽手術群を示し;I/RはI/R群を示し;DLA+I/RはDLAの事前投与群を示し;R1+I/RはR1の事前投与群を示し;DR(4:1)+I/Rは、重量比4:1におけるDLAとR1の配合剤の事前投与群を示し;DR(1:1)+I/Rは、重量比1:1におけるDLAとR1の配合剤の事前投与群を示し;DR(1:4)+I/Rは、重量比1:4におけるDLAとR1の配合剤の事前投与群を示し;I/R+DLAは、DLAの事後投与群を示し;I/R+R1は、R1の事後投与群を示し;I/R+DR(4:1)は、重量比4:1におけるDLAとR1の配合剤の事後投与群を示し;I/R+DR(1:1)は、重量比1:1におけるDLAとR1の配合剤の事後投与群を示し;I/R+DR(1:4)は、重量比1:4におけるDLAとR1の配合剤の事後投与群を示す。結果を±SEの平均値として表す。*は、偽群と比較したP<0.05を表し、#は、I/R群と比較したP<0.05を表す。
【発明を実施するための形態】
【0014】
本発明によれば、前記DLAは伝統的な漢方薬であるダンシェンの1成分である。DLAは市販品であるか、又は先行技術中の公知の方法に照らして調製することができる。前記R1は、別の伝統的な漢方薬であるサンキの1成分である。R1は市販品であるか、又は先行技術中の公知の方法に照らして調製することができる。この2つの成分のいずれも先行技術において周知である。本発明で使用されるDLAとR1は、好ましくは50wt%を超える純度、より好ましくは90wt%を超える純度、最も好ましくは98wt%を超える純度の医薬品基準(pharmaceutical standards)に従う製品である。
【0015】
本発明によれば、前記医薬は、前述したDLA、R1又はそれらの組み合わせを活性成分として用いることにより調製された医薬組成物である。
必要に応じて、本発明の医薬組成物は薬学的に許容可能な担体を含有し得る。ここで、前記DLA、R1又はそれらの組み合わせは、製剤全体の0.1〜99.9wt%の重量比を有する、医薬の活性成分として使用することができ、残りは薬学的に許容可能な担体である。本発明の医薬組成物は単位剤形として提示される。前記単位剤形は製剤の単位、例えば、一錠剤、一カプセル剤、経口液剤一瓶、顆粒剤一袋、及び一注射剤を指す。
【0016】
前記組み合わせとは、DLAとR1の重量比が(1〜4):(4〜1)、好ましくは(1〜2):(2〜1)、最も好ましくは1:1の組み合わせを指す。
本発明によれば、前記医薬組成物は、薬学的に許容可能な剤形のうちのいずれか1つに調製することができる。剤形には、錠剤、例えば、糖衣錠、フィルムコート錠、及び腸溶錠;カプセル剤、例えば、硬カプセル剤及び軟カプセル剤;経口液剤;バッカル錠;顆粒剤;沸騰水溶解後に摂取した顆粒剤;丸剤;粉末剤、ペースト剤、例えば、軟膏剤、硬膏剤;ペレット剤;懸濁剤;散剤;液剤(liquors)、例えば、注射剤;座剤;クリーム剤;噴霧剤;滴下剤及び貼剤(patches)が包含される。
【0017】
本発明によれば、経口投与された製剤は、従来の賦形剤、例えば、結合剤、充填剤、希
釈剤、錠剤圧縮剤(tablet-pressing agents)、潤滑剤、崩壊剤、着色剤、香味剤、湿潤剤、また必要に応じて、錠剤をコーティングできるようなコーティング剤を含有することができる。
【0018】
適切な充填剤には、セルロース、マンニトール、ラクトース、及びその他の類似する充填剤が包含される。適切な崩壊剤には、デンプン、ポリビニルピロリドン(PVP)、及びデンプン誘導体(デンプングリコール酸ナトリウム等)が包含される。適切な潤滑剤には、ステアリン酸マグネシウム等が包含される。適切な薬学的に許容可能な湿潤剤には、ドデシル硫酸ナトリウムが包含される。
【0019】
通常、経口固形製剤は、混合(blending)、充填及び錠剤圧縮(tablet-pressing)等の従来法により調製することができる。繰り返し混合することにより、充填剤を多量に有するそれらの組成物中に活性物質を均一に分配させることができる。
【0020】
本発明によれば、経口液状製剤は、例えば、水溶性又は油溶性の懸濁剤、液剤、乳剤、シロップ剤若しくはエリキシル剤、又は、使用前に水若しくは他の適切な担体を用いて再構成することができる乾製品であり得る。液状製剤は、従来の添加剤、例えば、懸濁剤、例えば、ソルビトール、シロップ、メチルセルロース、ゼラチン、ヒドロキシエチルセルロース、カルボキシメチルセルロース、ステアリン酸アルミニウムゲル又は食用硬化油脂;乳化剤、例えば、レシチン、モノオレイン酸ソルビタン又はアラビアゴム;食用油、例えば、アーモンド油、ヤシ油、グリセロール、プロピレングリコール又はエタノールのエステルであり得る非水性担体;及び保存剤、例えば、メチルパラベン、ニパソール又はソルビン酸であり得る。また必要に応じて、従来の芳香剤(scenting agent)又は着色剤を包含し得る。
【0021】
注射剤に関しては、調製された液状単位剤形は、本発明の活性成分と無菌担体を含有する。前記活性成分は、担体の種類と活性成分の濃度に応じて溶解又は懸濁させることができる。一般に、液剤は、担体中に活性成分を溶解させ、フィルタリングにより無菌化し、適切なバイアル又はアンプルに入れ、密封することにより調製される。いくつかの薬学的に許容可能な賦形剤、例えば、局所麻酔薬、保存剤及び緩衝剤も担体に添加することができる。安定性を改良するために、本発明の組成物をバイアルに入れた後に凍結させ、次いで真空中で処理して水を除去することができる。
【0022】
本発明によれば、前記組成物を製剤に調製する際に、その中に薬学的に許容可能な担体を添加することができる。前記担体は、糖アルコール、例えば、マンニトール、ソルビトール、キシリトール;アミノ酸、例えば、システイン塩酸塩、メチオニン、グリシン;ビタミンC;EDTA二ナトリウム塩、EDTAカルシウムナトリウム塩;無機塩、例えば、一価アルカリ金属の炭酸塩、酢酸塩、リン酸塩又はそれらの水溶液、塩化ナトリウム、塩化カリウム、ピロ亜硫酸ナトリウム、亜硫酸水素ナトリウム、チオ硫酸ナトリウム、炭酸カルシウム、炭酸水素カルシウム、;ステアリン酸塩、例えば、ステアリン酸カルシウム、ステアリン酸マグネシウム;無機酸、例えば、塩酸、硫酸、リン酸;有機酸、例えば、酢酸;有機酸塩、例えば、乳酸ナトリウム;少糖、多糖、セルロース、及びそれらの誘導体、例えば、マルトース、グルコース、フルクトース、デキストラン、スクロース、ラクトース、シクロデキストリン(β−シクロデキストリン等)、デンプン;ケイ素誘導体;アルギン酸塩;ゼラチン;PVP、グリセロール;ツウィーン−80;寒天;界面活性剤;ポリエチレングリコール;リン脂質物質;カオリン;タルク粉末等から選択される。
【0023】
本発明によれば、前記組成物の医学的用途と投与量は患者の状態により決定される。
本発明の治療的及び予防的な使用は以下の実験を通して確認される。
【0024】
材料及び方法
1.試薬
DLAとR1は、Fengshanjian Pharmaceutical Inc.(昆明、中国)により提供された。トルイジンブルー(TB)、ジヒドロローダミン(DHR)、及びFITC標識アルブミンは、シグマ社(Sigma Inc.)より購入した。
【0025】
2.動物
体重200〜250gのウィスター雄ラットを、埼玉実験動物センター(Saitama Laboratory Animal Center)(日本)から入手した。ラットは、従来の飼育環境下(温度:24±1℃、相対湿度:50±5%、12時間毎の選択的照明(alternative lighting per 12 hours))に置いた。全て動物を、慶応義塾大学医学部(日本)の指示による動物の飼育と倫理のガイドライン(Animal Handling and Ethical Guidelines)に従い処理した。実験の前には、動物を絶食させたが、水を12時間補給した。
【0026】
3.I/Rモデルの確立と投与
I/R群:
ペントバルビタールナトリウム(30mg/体重(BW)kg)の腹腔内注射によりラットを麻酔した。PE静脈カニューレ(#3)をラットの右頸静脈に挿入し、留置した。各々のラットの腹部を正中線に沿って20〜30mmの長さに切開した。回盲部近くの回腸を静かに取り出し、スライド・ガラス上に載せた対物台(object stage)上に広げた。この広げた腸間膜に、クレブスリンガー緩衝液を37℃で連続的に滴下した。腸間膜の微小循環動力学を、37℃のサーモスタット中に設置した倒立生体顕微鏡(Diaphot TMD−2S、ニコン、東京)を用い、白色光下(12V、100W)で観察した。観察部位は20倍の対物レンズの下で選択し、時間表示機能を有するビデオ記録システムを用いて、S−VHSテープに観察され保存されたものを記録した。25μm〜35μmの範囲の直径をもつ細静脈の非分枝領域を有する微小循環血管床を観察部位として選択し、細静脈の前記非分枝領域は200μm以上の長さを有した。通常の生理食塩水を、虚血20分前に、頸静脈を経由する投与量5mg/kg/hの連続的な静脈内滴下による観察が終了するまで投与した。動脈と静脈を10分間観察するため、PEカニューレを使用して非循環性腸間膜の動脈と静脈を結紮し、次いで結紮部を持ち上げた。時間をゼロに調節し、同一視野における微小循環動力学を60分間連続的に観察した。
【0027】
偽手術群(偽群):
I/Rラットの麻酔と開腹手術と同じ方法で、この群のラットに対し麻酔と開腹手術を行った。I/R処置なしの場合を観察するために、腸間膜を取り出した。通常の生理食塩水を、虚血20分前に、頸静脈を経由する投与量5mg/kg/hの連続的な静脈内滴下による観察が終了するまで投与した。
【0028】
DLA事前投与群(DLA+I/R群):
DLAを、虚血20分前に、頸静脈を経由する投与量5mg/kg/hの連続的な静脈内滴下による観察が終了するまで投与した。
【0029】
R1事前投与群(R1+I/R群):
R1を、虚血前20分に、頸静脈を経由する投与量5mg/kg/hの連続的な静脈内滴下による観察が終了するまで投与した。
【0030】
DR(DLA+R1)(4:1)事前投与群(DR(4:1)+I/R群):
重量比4:1におけるDLAとR1の配合剤を、虚血20分前に、頸静脈を経由する投与量5mg/kg/hの連続的な静脈内滴下による観察が終了するまで投与した。
【0031】
DR(1:1)事前投与群(DR(1:1)+I/R群):
重量比1:1におけるDLAとR1の配合剤を、虚血20分前に、頸静脈を経由する投与量5mg/kg/hの連続的な静脈内滴下による観察が終了するまで投与した。
【0032】
DR(1:4)事前投与群(DR(1:4)+I/R群):
重量比1:4におけるDLAとR1の配合剤を、虚血20分前に、頸静脈を経由する投与量5mg/kg/hの連続的な静脈内滴下による観察が終了するまで投与した。
【0033】
DLA事後投与群(DLA+I/R群):
DLAを、I/Rの10分後に、頸静脈を経由する投与量5mg/kg/hの連続的な静脈内滴下による観察が終了するまで投与した。
【0034】
R1事後投与群(R1+I/R群):
R1を、虚血20分後に、頸静脈を経由する投与量5mg/kg/hの連続的な静脈内滴下による観察が終了するまで投与した。
【0035】
DR(4:1)事後投与群(DR(4:1)+I/R群):
重量比4:1におけるDLAとR1の配合剤を、虚血20分後に、頸静脈を経由する投与量5mg/kg/hの連続的な静脈内滴下による観察が終了するまで投与した。
【0036】
DR(1:1)事後投与群(DR(1:1)+I/R群):
重量比1:1におけるDLAとR1の配合剤を、虚血20分後に、頸静脈を経由する投与量5mg/kg/hの連続的な静脈内滴下による観察が終了するまで投与した。
【0037】
DR(1:4)事後投与群(DR(1:4)+I/R群):
重量比1:4におけるDLAとR1の配合剤を、虚血20分後に、頸静脈を経由する投与量5mg/kg/hの連続的な静脈内滴下による観察が終了するまで投与した。
【0038】
ここで、各群中の6匹のラットを取り出し、これらのラットを以下の態様:細静脈の直径;白血球のローリング、接着及び遊出、並びに細静脈壁のDHR蛍光強度、を観察するために使用した。更に、各群中の別のラット6匹を、血漿アルブミンの漏出とマスト細胞の脱顆粒を観察するために使用した。
【0039】
4.微小循環動力学の観察
倒立生体顕微鏡CCD記録システム(CC−090、フローベル、東京)と、SIT蛍光カメラ(C−2400−08、浜松ホトニクス、浜松)を用いて、微小循環動力学を連続的に記録した。
【0040】
血管直径の測定
腸間膜細静脈の3つの部位を以下の時点:虚血前、並びに血流再開開始の1分後、10分後、20分後、30分後、40分後、50分後及び60分後において再現したCD記録から、Image−Pro Plus 5.0 ソフトウェアを用いて測定した。その平均直径を計算した。
【0041】
細静脈の内壁に沿ってローリングする白血球の計数
200μmの長さの細静脈の内壁に沿って10秒以内にローリングする白血球を、以下の時点:虚血前、並びに血流再開開始の1分後、10分後、20分後、30分後、40分後、50分後及び60分後において再現した画像から計数した。
【0042】
細静脈壁に接着した白血球の計数
少なくとも30秒間細静脈壁の一部位に留まった、細静脈に接着した白血球(即ち、接着白血球)を、以下の時点:虚血前、並びに血流再開開始の1分後、10分後、20分後、30分後、40分後、50分後及び60分後において再現した画像から計数した。100μmの長さの細静脈に接着した白血球の数を算出した。
【0043】
細静脈から遊出した白血球の計数
腸間膜の細静脈から遊出する白血球の数を観察し、以下の時点:虚血前、及び血流再開開始の1分後、10分後、20分後、30分後、40分後、50分後及び60分後において再現した画像から計数した。
【0044】
細静脈壁のDHR蛍光強度の測定
22感受性蛍光プローブDHR(10μM)を、観察するラットの腸間膜の表面に連続的に滴下した。455nmの励起波長と励起光源(100W)としての水銀ランプを有する倒立蛍光顕微鏡(DM−IRB、ライカ、ドイツ)を使用した。以下の時点:虚血前、並びに血流再開開始の1分後、10分後、20分後、30分後、40分後、50分後及び60分後において、CDカメラで画像を記録した。Image−Pro Plus 5.0 ソフトウェアを用いて、細静脈壁と血管外間質の蛍光強度を測定した。虚血前の細静脈壁の蛍光強度と血管外間質の蛍光強度の間の差(changing value)をベースラインとした。各時点での差のベースラインに対する比率を計算し、これをラットの腸間膜細静脈壁のDHR蛍光強度の変化率(changing rate)を示すために使用した。
【0045】
細静脈からのアルブミン漏出の測定
各群の別のラット6匹を取り出し、FITC標識ウシ血清アルブミン(50mg/kg)を、ゆっくりとした静脈内ボーラスにより、ラット頸静脈を通して与えた。基礎観察(basic observation)の10分後に、455nmの励起波長と励起光源(100W)としての水銀ランプを有する倒立蛍光顕微鏡(DM−IRB、ライカ、ドイツ)を使用した。細静脈と血管外間質のFITC蛍光画像を、以下の時点:虚血前、並びに血流再開開始の1分後、10分後、20分後、30分後、40分後、50分後及び60分後において、CDカメラを用いて連続的に記録した。細静脈壁と隣接する血管外間質の蛍光強度をImage−Pro Plus 5.0 ソフトウェアを用いて測定した。虚血前の細静脈壁のFITC蛍光強度の、血管外間質のFITC蛍光強度に対する比率を、ベースラインとした。各時点での値のベースラインに対する比率を計算し、ラットの腸間膜細静脈におけるアルブミン漏出の変化率を示した。各時点での値は以下の式により表すことができる:Rt=Pt/P0、式中、Rtはある時点でのPtのP0に対する比率を表し、Ptはこの時点での細静脈壁の蛍光強度の、血管外間質の蛍光強度に対する比率を表し、P0は0分での細静脈壁の蛍光強度の、血管外間質の蛍光強度に対する比率を表す。
【0046】
マスト細胞の脱顆粒パーセンテージ
血流再開開始の60分後に、0.1%トルイジンブルー(TB)を観察部位上に滴下し、CCDカメラで記録した。5視野における脱顆粒されていないマスト細胞と脱顆粒されたマスト細胞の数を20倍対物レンズを用いて計数し、全マスト細胞に対する脱顆粒されたマスト細胞のパーセンテージを計算し、これをマスト細胞の脱顆粒パーセンテージと見なした。
【0047】
5.統計分析
全ての測定値を一元配置分散分析(ANOVA)により分析した。各群の進行中の変化をT検定により分析し、上記群内の任意の2群間の比較をF検定により実施した。全ての測定値を±SEの平均値として示し、P<0.05は統計的有意性を示す。
【0048】
結論:
1.I/R後には、ラットの腸間膜細静脈の直径には明確な変化はなく;細静脈壁に沿ってローリングする白血球の数が増加し;細静脈に接着した白血球数が増加し;細静脈から遊出した白血球数が増加し;細静脈壁のDHR蛍光強度が増加し;FITC標識血漿アルブミンの漏出パーセンテージとマスト細胞の脱顆粒パーセンテージが有意に増加した。
【0049】
2.DLAの事前投与は、I/Rに起因する以下の症状:細静脈壁に沿ってローリングする白血球の数の増加、細静脈の内壁に接着した白血球数の増加、細静脈から遊出した白血球数の増加、細静脈壁における過酸化物の生成、細静脈からの血漿アルブミン漏出、及びマスト細胞の脱顆粒パーセンテージの増加、を阻害することができる。しかし、DLAの事後投与は、マスト細胞の脱顆粒率を有意に阻害しないことを除き、事前投与の効果と同じ効果を有する。
【0050】
3.R1の事前投与と事後投与は、I/Rに起因する以下の症状:細静脈の内壁に接着した白血球数の増加、細静脈から遊出した白血球数の増加、細静脈からの血漿アルブミンの漏出、及びマスト細胞の脱顆粒パーセンテージの増加、を阻害することができる。R1の事前投与と事後投与は、I/R後の腸間膜細静脈の直径と腸間膜細静脈に沿った白血球ローリングに対し有意な阻害効果を有しない。R1は、I/Rに起因するラットの腸間膜細静脈壁のDHR蛍光強度の増加に対し阻害効果を有しない。
【0051】
4.重量比4:1におけるDLAとR1の配合剤の事後投与は、I/Rに起因する細静脈からの血漿アルブミン漏出の阻害に対し特に有意な効果を有する。
5.重量比4:1におけるDLAとR1の配合剤の事前投与は、I/Rに起因する細静脈壁における過酸化物の生成の阻害に対し特に有意な効果を有する。
【0052】
要約すると、本研究により、DLA、R1又はそれらの組み合わせは、I/Rに起因する微小循環障害を治療及び予防できることが明らかとなった。故に、これらは、微小循環障害に起因する疾患、例えば、アレルギー性疾患(花粉症、皮膚疾患、喘息及び下痢)、高脂血症、高血圧、感染症、精神的刺激、外傷、手術及び介入療法等に起因する微小循環障害を治療及び/又は予防するために使用することができる。
【実施例】
【0053】
以下の実施例は説明目的のためのみ与えられるものであり、本発明の範囲を限定することを何ら意図するものではない。
【0054】
実施例1 錠剤
処方:
DLA:R1=1:1(重量比)、DLAとR1の総量105g;微結晶性セルロース55g;アエロジル3g;ステアリン酸マグネシウム1.5g
方法:
全ての原材料と賦形剤を100メッシュの篩にかけた。DLAとR1(1:1重量比)及び微結晶性セルロースを十分に混合し、60%エタノール水溶液を結合剤として用いて調製し軟質材料を得た。得られた軟質材料を20メッシュの篩に通して顆粒を調製し、この顆粒を60℃で乾燥させて取り出し、30メッシュの篩を用いて顆粒を選別した。次いで、アエロジルとステアリン酸マグネシウムを添加し、十分に混合して加圧し1000個の錠剤とした。
【0055】
実施例2 錠剤
処方:
DLA:R1=1:4(重量比)、DLAとR1の総量85g;硫酸カルシウム118g、微結晶性セルロース37g;アエロジル2.4g;ステアリン酸マグネシウム1.2g
方法:
全ての原材料と賦形剤を100メッシュの篩にかけた。DLAとR1(重量比1:4)、微結晶性セルロース及び硫酸カルシウムを十分に混合し、60%エタノール水溶液を結合剤として用いて調製し軟質材料を得た。得られた軟質材料を20メッシュの篩に通して顆粒を調製し、この顆粒を60℃で乾燥させて取り出し、30メッシュの篩を用いて顆粒を選別した。次いで、アエロジルとステアリン酸マグネシウムを添加し、十分に混合して加圧し1000個の錠剤とした。
【0056】
実施例3 錠剤
処方:
DLA:R1=4:1(重量比)、DLAとR1の総量133g;硫酸カルシウム208g、微結晶性セルロース68g;アエロジル5g;ステアリン酸マグネシウム2.5g
方法:
全ての原材料と賦形剤を100メッシュの篩にかけた。DLAとR1(重量比4:1)、微結晶性セルロース及び硫酸カルシウムを十分に混合し、60%エタノール水溶液を結合剤として用いて調製し軟質材料を得た。得られた軟質材料を20メッシュの篩に通して顆粒を調製し、この顆粒を60℃で乾燥させて取り出し、30メッシュの篩を用いて顆粒を選別した。次いで、アエロジルとステアリン酸マグネシウムを添加し、十分に混合して加圧し1000個の錠剤とした。
【0057】
実施例4 カプセル剤
60gのDLAを秤量し、これに適量のデンプンとステアリン酸マグネシウム等を添加し、顆粒化させて選別し、#1カプセルに添加してカプセル剤を得た。
【0058】
実施例5 経口液剤
8gのDLAを秤量し、これに適量のスクロースとソルビン酸を添加し、水を1000mlの量まで添加し、10ml/瓶に別々に詰め、これにより経口液剤を得た。
【0059】
実施例6 顆粒剤
80gのR1を秤量し、これに適量のデキストリンとステビオシドを添加し、乾式法により顆粒化し、選別し、別々に包装して顆粒剤を得た。
【0060】
実施例7 注射剤
7gのR1を水に溶解させた。塩化ナトリウムとエチルパラベンを熱水に溶解させた。両方の溶液を十分に混合し、pH値を調整し、注射剤用に水で1000mlの量まで希釈し、中空糸膜でろ過し、充填し、無菌化して注射剤を得た。
【0061】
実施例8 注射剤
総量2gのDLA:R1=4:1(重量比)を水に溶解させた。塩化ナトリウムとエチルパラベンを熱水に溶解させた。両方の溶液を十分に混合し、pH値を調整し、注射剤用に水で1000mlの量まで希釈し、中空糸膜でろ過し、充填し、無菌化して注射剤を得た。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
微小循環障害に起因する疾患を治療及び予防するための医薬の調製におけるDLA、R1及びそれらの組み合わせの使用。
【請求項2】
DLAの事前投与が、I/Rに起因する以下の症状:細静脈壁に沿ってローリングする白血球数の増加、細静脈の内壁に接着する白血球数の増加、細静脈から遊出する白血球数の増加、細静脈壁における過酸化物の生成、細静脈からの血漿アルブミンの漏出、及びマスト細胞の脱顆粒パーセンテージの増加、を阻害する請求項1記載の使用。
【請求項3】
DLAの事後投与が、I/Rに起因する以下の症状:細静脈の内壁に接着する白血球数の増加、細静脈から遊出する白血球数の増加、細静脈壁における過酸化物の生成、及び細静脈からの血漿アルブミンの漏出、を阻害する請求項1記載の使用。
【請求項4】
R1の事前投与又は事後投与が、I/Rに起因する以下の症状:細静脈の内壁に接着する白血球数の増加、細静脈から遊出する白血球数の増加、細静脈からの血漿アルブミンの漏出、及びマスト細胞の脱顆粒パーセンテージの増加、を阻害する請求項1記載の使用。
【請求項5】
DLAとR1の組み合わせの事前投与又は事後投与が、I/Rに起因する以下の症状:細静脈の内壁に接着する白血球数の増加、細静脈から遊出する白血球数の増加、細静脈壁における過酸化物の生成、細静脈からの血漿アルブミンの漏出、及びマスト細胞の脱顆粒パーセンテージの増加、を阻害する請求項1記載の使用。
【請求項6】
前記DLAとR1の組み合わせが、DLAとR1の重量比が(1〜4):(4〜1)、好ましくは(1〜2):(2〜1)、最も好ましくは1:1の組み合わせである請求項1又は5記載の使用。
【請求項7】
DLAとR1の重量比が4:1の組み合わせの事後投与が、I/Rに起因する細静脈からの血漿アルブミンの漏出を阻害し、DLAとR1の重量比が4:1の組み合わせの事前投与が、I/Rに起因する細静脈壁における過酸化物の生成を阻害する請求項5記載の使用。
【請求項8】
微小循環障害に起因する疾患が、アレルギー性疾患、高脂血症、高血圧、感染症、精神的刺激、外傷、手術及び介入療法に起因する微小循環障害を包含し、前記アレルギー性疾患がI型アレルギー性疾患を包含し、前記I型アレルギー性疾患が花粉症、皮膚疾患、喘息及び下痢からなる群から選択される請求項1記載の使用。
【請求項9】
前記医薬が、活性成分としてDLA、R1、又はDLAとR1の組み合わせを使用して調製された医薬組成物である請求項1記載の使用。
【請求項10】
前記DLA又は前記R1の純度が、50wt%を超え、好ましくは90wt%を超え、最も好ましくは98wt%を超える請求項1記載の使用。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公表番号】特表2013−510099(P2013−510099A)
【公表日】平成25年3月21日(2013.3.21)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−537291(P2012−537291)
【出願日】平成22年11月4日(2010.11.4)
【国際出願番号】PCT/CN2010/078411
【国際公開番号】WO2011/054301
【国際公開日】平成23年5月12日(2011.5.12)
【出願人】(509346243)テースリー ファーマシューティカル グループ カンパニー リミテッド (4)
【Fターム(参考)】