説明

微小材料試験装置

【課題】アクチュエータの変化に精度よく追随するように、微小試験片を変化させることができる微小材料試験装置を提供すること。
【解決手段】微小材料試験装置は、アーム(12)と、アームの一端に接続され、変形量に応じた復元力を生じる第1弾性部(15)を有する第1振動部(13)と、アームの他端に接続され、変形量に応じた復元力を生じる第2弾性部を有する第2振動部と、支点部(14)を挟む2つの力点のうち、第1振動部が位置する側の第1力点に変位端(21a)が接する第1アクチュエータ(2a)と、2つの力点のうち、第2振動部が位置する側の第2力点に変位端(21b)が接する第2アクチュエータ(2b)とを備え、第1及び第2アクチュエータの変位端がアームに接したまま、第1アクチュエータの変位端と第2アクチュエータの変位端とを、逆方向に同じ変位量だけ変化させ、2つの試験片(S)に荷重する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、マイクロ・ナノ寸法の微小試験片に対して疲労試験を行う微小材料試験装置に関する。
【背景技術】
【0002】
マイクロテクノロジ、ナノテクノロジの発達により、マイクロメートル又はナノメートルオーダーの寸法の材料を利用したマイクロマシン、ナノマシンの実現が期待されている。これらの微小寸法の構造体の設計においては、微小寸法の材料の引張特性などの力学特性を高精度で測定、評価することが必要である。
【0003】
そのために、例えば、下記特許文献1には、微小試験片の力学的特性を評価するための材料試験機が開示されている。下記特許文献1の材料試験機では、1つのピエゾアクチュエータの変位出力によって与えられる引張り荷重と、バネ機構による予荷重によって試験片に微小な変位を加え、試験することができる。
【0004】
また、下記特許文献2には、マイクロ・ナノ材料用疲労試験装置が開示されている。特許文献2の図6には、てこの原理を用いた振動アクチュエータが開示されている。この振動アクチュエータは、ピエゾ式アクチュエータの先端の動作部がアームの1点を押し、それによって第1連結部を支点として第2連結部が変位し、振動体を移動させる。これにより、小型のピエゾ式アクチュエータでも比較的大きなストローク量を得ることができる。
【特許文献1】特開2001−108586号公報
【特許文献2】特開2005−373361号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
上記した特許文献1及び2のいずれも、バネ機構から一定の予荷重が加えられた1つのピエゾアクチュエータを駆動し、試験片に微小変位を与える。しかし、これらの試験装置では、バネ機構による予荷重を精度良く安定的に加えることが困難であり、応答性、追従性の制御ができず、引張り荷重の安定性悪化による精度低下を招く。例えば、特許文献1には、剪断試験の往復変位周波数を、0.1〜20Hzの範囲で可変設定することができることが記載されているが、それよりも高い周波数の電圧が印加された場合、十分に追随することができなくなる。
【0006】
図8はこの問題を具体的に示すためのグラフである。ピエゾアクチュエータに印加される周期的に変化する電圧によって、図8に実線で示すように、ピエゾアクチュエータの先端部が変位する。ピエゾアクチュエータが伸長し、先端部の変位が増大する間は、この変化に追随して試験片も変化する。しかし、ピエゾアクチュエータが縮小し、先端部の変位が減少する場合、試験片の実際の変化は、図8に破線で示したように、ピエゾアクチュエータの先端部の変位から遅れて変化する。これは、ピエゾアクチュエータの先端部の戻る速度が速いのに対し、バネ機構による復元(弾性回復)速度が遅いからである。
【0007】
この対策として、バネの剛性を高く、固有振動数を高く設計することも可能ではあるが、その場合、ピエゾアクチュエータの先端部を十分に変位させることが困難になる。即ち、バネの剛性を高くするには限界がある。このように、従来の微小試験片用疲労試験装置では、高周波で精度よく疲労試験を行うことが困難であった。
【0008】
本発明の目的は、上記の課題を解決すべく、アクチュエータの変化に精度よく追随するように、微小試験片を変化させることができる微小材料試験装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明の目的は、以下の手段によって達成される。
【0010】
即ち、本発明に係る微小材料試験装置は、アームと、該アームの長手方向の一端に接続され、変形量に応じた復元力を生じる第1弾性部を有する第1振動部と、前記アームの長手方向の他端に接続され、変形量に応じた復元力を生じる第2弾性部を有する第2振動部と、前記アームの長手方向に沿った側面に形成された支点部を挟む2つの力点のうち、前記第1振動部が位置する側の第1力点に変位端が接する第1アクチュエータと、2つの前記力点のうち、前記第2振動部が位置する側の第2力点に変位端が接する第2アクチュエータとを備え、前記第1アクチュエータの変位端を周期的に変位させ、前記第1及び第2アクチュエータの変位端が前記アームに接した状態を維持するように、前記第2アクチュエータの変位端を、前記第1アクチュエータの変位端の平衡状態からの変位方向と逆方向に、前記第1アクチュエータの変位端の平衡状態からの変位量に応じて変化させ、一端が前記支点部に対して変位しないように固定された2つの試験片の他端に、それぞれ前記第1振動部及び前記第2振動部を介して荷重することを特長としている。
【0011】
また、本発明に係る微小材料試験装置は、前記試験片の各々に加えられる荷重を測定する荷重測定手段をさらに備えることができる。
【0012】
また、本発明に係る微小材料試験装置は、前記試験片の各々に加えられる荷重による前記試験片の変位を測定する変位測定手段をさらに備えることもできる。
【0013】
また、前記第1及び第2力点は前記支点部から等距離に位置し、前記第1及び第2振動部は前記支点部から等距離に位置し、前記第1及び第2アクチュエータはピエゾアクチュエータであり、前記第1アクチュエータに周期的に変化する第1電圧を印加し、前記第2アクチュエータに、前記第1電圧と振幅が同じであり、逆の極性を有する第2電圧を印加することができる。
【0014】
また、前記第1電圧は、振幅が一定のサイン波であることができる。
【0015】
また、前記アームと、前記支点部と、前記第1及び第2弾性部と、前記第1及び第2振動部とは、1つの直方体の部材からワイヤーカット加工法によって一体に形成され、前記第1及び第2アクチュエータの変位端の各々を前記第1及び第2力点に当接させる場合に、前記アームが平行移動可能なように、前記支点部が弾性変形し得る形状であることができる。
【0016】
また、前記支点部は、筒状部と、該筒状部の外壁面の一部を前記アームに接続する第1接続部と、該筒状部の前記外壁面の前記一部に対向する部分に、一端が接続された第2接続部とを備え、前記第2接続部の他端は、2つの前記試験片の前記一端に対して変位しないように固定されていることができる。
【発明の効果】
【0017】
本発明の微小材料試験装置によれば、一対のピエゾアクチュエータを用いて、引張り荷重、予荷重を与えることにより、試験片に与える荷重を安定的に制御することができ、精度よく荷重測定、変位測定を行うことができる。
【0018】
また、本発明の微小材料試験装置は、0.5kHz〜1kHz程度の高周波数で駆動されても追従することができるので、応答性、追従性の高い繰り返し引張り試験を行うことができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0019】
以下、本発明に係る実施の形態を、添付した図面に基づいて説明する。図1は、本発明の実施の形態に係る微小材料試験装置の概略構成を示す図であり、(a)は平面図、(b)は側面図である。
【0020】
本微小材料試験装置は、荷重機構部1と、荷重機構部1内の2つの空孔部にそれぞれ収容された2つのピエゾアクチュエータ2a、2bと、試験片Sの両端部を固定する固定部3、4と、荷重機構部1及び固定部3を連結する連結部5と、固定部4の上に設置された荷重測定手段6とを備えている。ここでは、荷重測定手段としてロードセルを使用している。試験片Sの一方の端部は固定部3に直接固定されているが、試験片Sの他方の端部は、試験片Sに加えられる荷重を測定するために、ロードセル6を介して固定部4に間接的に固定されている。図1の(a)では、右側にのみ、固定部3、4、連結部5、ロードセル6及びこれらに取り付けられた試験片Sを示しているが、試験時には同様に左側にも固定部、連結部、ロードセル及び試験片が取り付けられる。また、図1では省略しているが、ピエゾアクチュエータ2a、2bに、内部のピエゾ素子を伸縮させて先端部を変位させるための電圧を印加する電源を備えている。
【0021】
図2は、荷重機構部1を示す斜視図であり、図3はその一部を拡大した平面図である。荷重機構部1は左右対称な形状をしており、フレーム11と、アーム12と、振動部13と、支点部14と、弾性部15と、ピエゾアクチュエータ2a、2bを収容する空孔部16とを備えている。ここでは右側の構成要素にのみ符号を付している。図1及び図2に示したように、フレーム11、アーム12、振動部13、支点部14、及び弾性部15の周囲にはスリット17が形成されている。即ち、荷重機構部1は、寸法精度を確保するために、公知のワイヤーカット加工法によって、1つの直方体の部材(例えば、Al7075/T6などのアルミ)に貫通したスリット17を形成する加工を行うことによって、形成されている。スリット17の幅は、例えば約0.5mmである。なお、フレーム11は、一定の厚さではなく、固定部4にロードセル6を設置するので、試験片Sが荷重方向に平行に配置されるように、使用するロードセル6の高さに応じて、固定部4を取り付ける部分が切削され、その他の部分よりも薄く形成されている。
【0022】
従って、アーム12は、支点部14を介してフレーム11と連結し、作用点部18を介して振動部13と連結している。また、振動部13は、4つの弾性部15を介してフレーム11と連結している。また、支点部14は、スリット17aを有する矩形の筒部19と、2つの第1及び第2接続部19a、19bとを備えて形成されている。矩形の筒部19の対向する2つの外壁面のうち、一方の外壁面が第1接続部19aによってアーム12に接続され、他方の外壁面が第2接続部19bによってフレーム11に接続されている。従って、支点部の第2接続部19bの一端(筒部19の外壁面に接続していない側)はフレーム11、固定部4、ロードセル6を介して、試験片Sの一端(固定部4によって間接的に固定される側)に対して変位しないようになっている。即ち、使用するロードセル6自体の荷重による微小変形は十分に小さく無視できる。図2に示した荷重機構部1は、このように一体に形成されている。
【0023】
ピエゾアクチュエータ2a、2bを荷重機構1の空孔部16に設置する場合、アーム12を上方に平行移動させ、空孔部16の長手方向の壁面間隔をピエゾアクチュエータ2a、2bの長さよりも大きくした状態で、設置する。このとき、支点部14の、内側にスリット17aを有する矩形の筒部19は、図4の平面図に実線で示したように弾性変形する。図4において、変形前の筒部19を破線で示している。従って、荷重機構1に搭載されたピエゾアクチュエータ2a、2bの各々は、支点部14及び弾性部15によって、アーム12に点接触する先端部(以下、変位端とも記す)21a、21b(図1参照)を介して予荷重された状態である。
【0024】
次に、本微小材料試験装置を用いて疲労試験として繰り返し引張り試験を行うときの、本微小材料試験装置の動作を説明する。ここでは、説明を簡単にするために、図1に示したように荷重機構部1の右側にのみ試験片Sが取り付けられているとする。
【0025】
試験片Sに荷重するために、ピエゾアクチュエータ2a、2bに電源から所定の周波数で振動する電圧を印加する。これによって、ピエゾアクチュエータ2a、2bの変位端21a、21bがアーム12に加える力が変化する。このとき、2つのピエゾアクチュエータ2a、2bに印加する電圧は、図5に示すように、互いに極性が反転した電圧である。図5の(a)、(b)は、振幅が同じであり、位相が180度ずれたサイン波を示している。例えば、2つのピエゾアクチュエータ2a、2bのうち、一方に(a)の波形の電圧が印加される場合、他方には(b)の波形の電圧が印加される。これによって、2つのピエゾアクチュエータ2a、2bの変位端の変位方向が逆になる。即ち、一方の変位端が、ピエゾアクチュエータが伸張する方向に変位する場合、他方の変位端は、ピエゾアクチュエータが縮小する方向に変位する。以下、図5に示した第1〜第4期間毎に、本微小材料試験装置の動作を説明する。
【0026】
(第1期間)
先ず、静止した平衡状態から、図1に示した右側のピエゾアクチュエータ2aが、正の電圧(V)が印加されて伸びるとき、左側のピエゾアクチュエータ2bは、絶対値が同じ大きさの負の電圧(−V)が印加されて縮む。従って、アーム12は、ピエゾアクチュエータ2aの変位端21aによって押され、支点部14を支点とし、変位端21aが接している点を力点として左回りのトルクを受ける。このとき、ピエゾアクチュエータ2bの変位端21bは、ピエゾアクチュエータ2aの伸長量に相当する長さだけ縮むので、アーム12は、変位端21bによってほとんど力を受けることなく、ピエゾアクチュエータ2aの伸長量に相当する微小角度だけ回転することができる。従って、振動部13は作用点部18によって力を受け、てこの原理で、ピエゾアクチュエータ2aの伸長量よりも大きく変位する。振動部13が受ける力は、連結部5及び固定部3を介して、試験片Sに伸長力として加えられる。試験片Sへの荷重はロードセル6によって測定される(以下同様)。
【0027】
尚、このとき、右側の振動部13の4つの弾性部15は、上側の2つの弾性部15が縮み、下側の2つの弾性部15が伸びる。逆に、左側の振動部の4つの弾性部は、上側の2つの弾性部が伸び、下側の2つの弾性部が縮む。
【0028】
(第2期間)
次に、右側のピエゾアクチュエータ2aが、負の電圧(−V)が印加されて縮むとき、左側のピエゾアクチュエータ2bは、絶対値が同じ大きさの正の電圧(V)が印加されて伸びる。従って、アーム12は、ピエゾアクチュエータ2aの変位端21aからの力が解放され、8つの弾性部15の復元力を受けて、支点部14を支点として右回りのトルクを受ける。これと同時に、ピエゾアクチュエータ2bの変位端21bも、支点部14を支点とし、変位端21bが接している点を力点としてアーム12に右回りのトルクを与える。即ち、アーム12は、8つの弾性部15の復元力に加えて、ピエゾアクチュエータ2bの変位端21bによって押されるので、右側のピエゾアクチュエータ2aの変位端21aの変位に遅れることなく、速やかに右回りに微小回転することができる。この右回りの回転によって、振動部13は作用点部18によって押され、てこの原理で、ピエゾアクチュエータ2aの縮小量(ピエゾアクチュエータ2bの伸長量)よりも大きく変位する。振動部13が受ける力は、連結部5及び固定部3を介して、試験片Sに圧縮力として加えられる。
【0029】
(第3期間)
第3期間は、再び右側のピエゾアクチュエータ2aが、正の電圧が印加されて伸びる期間である。この期間では、左右一対のピエゾアクチュエータ2a、2bはそれぞれ、上記した第2期間と逆の動作をする。従って、アーム12は、8つの弾性部15の復元力に加えて、ピエゾアクチュエータ2aの変位端21aによって押されるので、左側のピエゾアクチュエータ2bの変位端21bの変位に遅れることなく、速やかに左回りに微小回転することができる。この左回りの回転によって、振動部13は、作用点部18によって引かれ、ピエゾアクチュエータ2bの縮小量(ピエゾアクチュエータ2aの伸長量)よりも大きく変位する。振動部13が受ける力は、連結部5及び固定部3を介して、試験片Sに伸長力として加えられる。
【0030】
(第4期間以降)
第4期間以降は、上記した第2期間及び第3期間の動作が交互に繰り返される。
【0031】
以上によって、本微小材料試験装置は、試験片に与える荷重を安定的に制御することができる。また、本微小材料試験装置は、印加される電圧変化に応じて伸縮するピエゾアクチュエータ2a、2bの変化に遅れることなく、試験片Sに引張力・圧縮力を加えることができる。即ち、本微小材料試験装置は、低周波数はもとより、0.5kHz〜1kHz程度の高周波数で駆動されても追従することができる。従って、アクチュエータの変化に対する応答性、追従性が高い繰り返し引張り試験を行うことができる。
【0032】
上記では、右側のみに試験片Sを取り付けた場合を説明したが、左右両方にそれぞれ試験片を取り付ければ、2つの試験片を同時に試験することができる。
【0033】
また、荷重機構部は、図1〜3に示した形状、構成に限定されない。即ち、荷重機構部は、1つの支点部を挟んで位置する2つの力点部と、2つの作用点部とを備え、支点部及び力点部の間の距離よりも支点部及び作用点部の間の距離が大きく、力点部に荷重された場合に、一端が支点部に対して固定された試験片の他端に荷重することができる構造であればよい。
【0034】
また、上記では、ワイヤーカット加工法によって一体の材料から形成された荷重機構部を用いる場合を説明したが、これに限定されず、荷重機構部は複数の部材を組み合わせて形成されていてもよい。
【0035】
また、弾性変形可能な支点部の形状及び材質は、上記した形状及び材質に限定されず、アームを平行移動させることができるように、弾性変形可能な形状及び材質であればよい。例えば、支点部の形状は、図6の(a)に示すように、スリット17a’を有する2つ以上の矩形の筒部19’が直列に接続された構造であってもよい。また、図6の(b)に示すように断面形状が、所定幅を有する線分を一方向に圧縮した形状19’’であってもよい。また、支点部は、矩形の代わりに多角形の筒状、円筒状、楕円筒状などに形成されていてもよい。
【0036】
また、上記では、アームを平行移動させてピエゾアクチュエータを設置する場合を説明したが、設置されたピエゾアクチュエータに予荷重を安定的に加えることができればよく、ピエゾアクチュエータの設置方法はこれに限定されない。例えば、荷重機構1の空孔部16の長さをアクチュエータ2a、2bの長さよりも長くし、ピエゾアクチュエータ2a、2bの底部に所定の荷重を加えることができる機構をフレーム11に備えてもよい。例えば、ピエゾアクチュエータ2a、2bの底部付近のフレーム11部分にネジ穴及びボルトを設け、ボルトのねじ込み量によって、ピエゾアクチュエータの軸方向に一定の荷重を加えてもよい。このとき、一対のピエゾアクチュエータ2a、2bが均等に予荷重されるような機構であることが望ましい。
【0037】
また、支点部の位置は、図1〜3に示した位置に限定されず、アームの上側、即ち、2つのアクチュエータと反対側に位置してもよい。
【0038】
また、2つのピエゾアクチュエータの配置は、上記した対称な配置に限定されない。図7に示したように、2つのピエゾアクチュエータの第1及び第2変位端が、支点部を挟んで、支点部から等距離でない位置でアームに接するように、2つのピエゾアクチュエータを配置してもよい。その場合、第1及び第2変位端を有するピエゾアクチュエータの各々に印加する電圧の最大値をV1、V2として、これらの電圧V1、V2によってそれぞれ生じる変位端の変位量Δ1、Δ2の比Δ1/Δ2が、対応する変位端と支点部との距離L1、L2の比L1/L2にほぼ等しくなるように、2つのピエゾアクチュエータに電圧を印加すればよい。
【0039】
また、試験片や試験条件によっては、ピエゾアクチュエータに印加する電圧は、サイン波に限定されない。その場合には、第1ピエゾアクチュエータの変位端を周期的に変化させ、第2アクチュエータの変位端を、第1アクチュエータの変位端の平衡状態からの変位方向と逆方向に、第1アクチュエータの変位端の平衡状態からの変位量に応じて変化させることができる電圧を印加すればよい。
【0040】
また、一対のアクチュエータは、ピエゾアクチュエータに限定されず、電気的に制御可能なアクチュエータであればよい。
【0041】
また、ロードセルの設置場所は、上記した固定部4の上に限定されず、試験片に加わる荷重を測定することができる位置であればよい。例えば、固定部4の代わりに固定部3の上にロードセルを設置してもよい。固定部3にロードセルを設置する場合、試験片Sが荷重方向に平行に配置されるように、ロードセルの高さを考慮して、フレーム11の各部の厚さを決定することが望ましい。また、ロードセル以外の荷重測定手段を用いてもよい。
【0042】
上記では、本発明の微小材料試験装置を、試験片の荷重測定に適用する場合を説明したが、試験片の変位測定に適用することもできる。試験片に応力を加えてその変位量を測定する場合には、荷重測定手段(ロードセル)の代わりに、変位測定手段を備える必要がある。試験片の変位測定手段には、公知の手段を使用すればよい。
【図面の簡単な説明】
【0043】
【図1】本発明の実施の形態に係る微小材料試験装置の概要構成を示す図であり、(a)は平面図、(b)は側面図である。
【図2】図1の荷重機構部を示す斜視図である。
【図3】図1の微小材料試験装置の一部を拡大して示す平面図である。
【図4】図3に示した支点部が変位する状態を示す平面図である。
【図5】2つのピエゾアクチュエータに印加する電圧を示すグラフである。
【図6】本発明の実施の形態に係る微小材料試験装置の支点部の別の例を示す平面図である。
【図7】本発明の実施の形態に係る微小材料試験装置において、2つのアクチュエータが非対称な位置に配置される場合を説明するための図である。
【図8】ピエゾアクチュエータの変化に試験片の変化が追随しない現象を示すグラフである。
【符号の説明】
【0044】
1 荷重機構部
2a、2b ピエゾアクチュエータ
3、4 固定部
5 連結部
6 荷重測定手段(ロードセル)
11 フレーム
12 アーム
13 振動部
14 支点部
15 弾性部
16 空孔部
17、17’、17’’、17a、17a’ スリット
18 作用点部
19、19’ 筒部
19a 第1接続部
19b 第2接続部
S 試験片

【特許請求の範囲】
【請求項1】
アームと、
該アームの長手方向の一端に接続され、変形量に応じた復元力を生じる第1弾性部を有する第1振動部と、
前記アームの長手方向の他端に接続され、変形量に応じた復元力を生じる第2弾性部を有する第2振動部と、
前記アームの長手方向に沿った側面に形成された支点部を挟む2つの力点のうち、前記第1振動部が位置する側の第1力点に変位端が接する第1アクチュエータと、
2つの前記力点のうち、前記第2振動部が位置する側の第2力点に変位端が接する第2アクチュエータとを備え、
前記第1アクチュエータの変位端を周期的に変位させ、
前記第1及び第2アクチュエータの変位端が前記アームに接した状態を維持するように、前記第2アクチュエータの変位端を、前記第1アクチュエータの変位端の平衡状態からの変位方向と逆方向に、前記第1アクチュエータの変位端の平衡状態からの変位量に応じて変化させ、
一端が前記支点部に対して変位しないように固定された2つの試験片の他端に、それぞれ前記第1振動部及び前記第2振動部を介して荷重することを特長とする微小材料試験装置。
【請求項2】
2つの前記試験片の各々に加えられる荷重を測定する荷重測定手段をさらに備えることを特徴とする請求項1に記載の微小材料試験装置。
【請求項3】
2つの前記試験片の各々に加えられる荷重による前記試験片の変位を測定する変位測定手段をさらに備えることを特徴とする請求項1又は2に記載の微小材料試験装置。
【請求項4】
前記第1及び第2力点が前記支点部から等距離に位置し、
前記第1及び第2振動部が前記支点部から等距離に位置し、
前記第1及び第2アクチュエータがピエゾアクチュエータであり、
前記第1アクチュエータに周期的に変化する第1電圧を印加し、
前記第2アクチュエータに、前記第1電圧と振幅が同じであり、逆の極性を有する第2電圧を印加することを特長とする請求項1〜3の何れか1項に記載の微小材料試験装置。
【請求項5】
前記第1電圧が、振幅が一定のサイン波であることを特長とする請求項4に記載の微小材料試験装置。
【請求項6】
前記アームと、前記支点部と、前記第1及び第2弾性部と、前記第1及び第2振動部とが、1つの直方体の部材からワイヤーカット加工法によって一体に形成され、
前記第1及び第2アクチュエータの変位端の各々を前記第1及び第2力点に当接させる場合に、前記アームが平行移動可能なように、前記支点部が弾性変形し得る形状であることを特長とする請求項4又は5に記載の微小材料試験装置。
【請求項7】
前記支点部が、
筒状部と、
該筒状部の外壁面の一部を前記アームに接続する第1接続部と、
該筒状部の前記外壁面の前記一部に対向する部分に、一端が接続された第2接続部とを備え、
前記第2接続部の他端が、2つの前記試験片の前記一端に対して変位しないように固定されていることを特長とする請求項6に記載の微小材料試験装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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