説明

微小球

本発明は、発泡剤が封入されたエチレン性不飽和モノマーから調製されるポリマー殻を含む熱膨張性の熱可塑性微小球であって、前記エチレン性不飽和モノマーは、2つ以上の炭素−炭素二重結合を有する少なくとも1つの第1の架橋モノマーと、2つ以上の炭素−炭素二重結合を有する少なくとも1つの第2の架橋モノマーとを含み、前記少なくとも1つの第1の架橋モノマーが0.2超の反応性Qを有し、前記少なくとも1つの第2の架橋モノマーが0.2未満の反応性Qを有し、該反応性Qは、Alfrey−PriceのQ−eスキームに従って定義され、前記少なくとも1つの第2の架橋モノマーの量がエチレン性不飽和モノマーの全量の0.8モル%未満である熱膨張性の熱可塑性微小球に関する。本発明は、かかる微小球の生成および使用にさらに関する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、熱膨張性の熱可塑性微小球(thermally expandable thermoplastic microspheres)、その生成および使用に関する。
【0002】
発泡剤(a propellant)を封入した熱可塑性ポリマー殻を含む膨張性の熱可塑性微小球は、商標EXPANCEL(登録商標)で市販されており、多数の異なる用途でフォーミング剤(a foaming agent)として使用される。
【0003】
かかる微小球では、発泡剤は、通常、熱可塑性ポリマー殻の軟化温度より沸点が高くない液体である。加熱すると、発泡剤は、殻が軟化すると同時に、蒸発することによって内圧が増加し、微小球が大きく膨張する。膨張が開始される温度は、T開始(Tstart)と呼ばれ、膨張が最大に達する温度はT最大(Tmax)と呼ばれる。膨張性微小球は、多様な形態で、例えば、自由流動性乾燥粒子として、水性スラリーとしてまたは部分脱水湿潤ケーキとして市販されている。
【0004】
膨張性微小球は、発泡剤の存在下でエチレン性不飽和モノマーを重合させることによって生成することができる。通常、モノマーは、2つ以上の炭素−炭素二重結合を有する少量の架橋モノマーと一緒に、1つの炭素−炭素二重結合を有するモノマーを主として含む。多様な膨張性微小球およびその生成の詳細な説明は、例えば、米国特許第3615972号、第3945956号、第4287308号、第5536756号、第6235800号、第6235394号、および第6509384号、第6617363号、および第6984347号において、米国特許出願公開第2004/0176486号、および第2005/0079352号において、欧州特許第486080号、欧州特許第1230975号、欧州特許第1288272号、欧州特許第1598405号、欧州特許第1811007号、および欧州特許第1964903号において、国際公開第2002/096635号、国際公開第2004/072160号、国際公開第2007/091960号、国際公開第2007/091961号、および国際公開第2007/142593号において、ならびに特開1987−286534号および特開2005−272633号において知ることができる。
【0005】
膨張性微小球の1つの重要な用途は、例えば、射出成形、押出成形その他においてポリマー材料を加工するためのフォーミング剤としてのものである。一部の場合、例えば、射出成形、押出成形、熱成形で後ほど使用できるよく混合された配合物を製造するために、微小球が、ポリマーおよび任意選択で多様な添加剤と一緒に予備加工される場合、高すぎないT最大と組み合わせて高いT開始を有する微小球を用意することが望ましい。こうした混合ステップ、例えば、コンパウンド化は、ポリマーが溶融するが微小球の予備膨張はないような十分な高温で行われなければならない。この予備膨張があると、例えば、押出成形機がブロックされ、また最終配合物の膨張能力が顕著に低下する恐れがあると思われる。
【0006】
本発明の目的は、T開始に比較的近い温度での明確な膨張と合わせて、比較的高いT開始と予備膨張に対する高耐性とを備える膨張能力が高い膨張性微小球を提供することである。
【0007】
本発明の別の目的は、熱可塑性材料のフォーミング剤として有用な膨張性微小球を提供することである。
【0008】
驚くべきことに、モノマーが、1種類は高反応性、1種類は低反応性の少なくとも2つの異なる種類の架橋モノマーを含む膨張性微小球を提供することによってこうした目的の達成が可能であることが判明した。
【0009】
したがって、本発明の一態様は、発泡剤が封入されたエチレン性不飽和モノマーから調製されるポリマー殻を含む熱膨張性の熱可塑性微小球であって、前記エチレン性不飽和モノマーは、2つ以上の炭素−炭素二重結合を有する少なくとも1つの第1の架橋モノマーと、2つ以上の炭素−炭素二重結合を有する少なくとも1つの第2の架橋モノマーとを含み、前記少なくとも1つの第1の架橋モノマーが0.2超の反応性Qを有し、前記少なくとも1つの第2の架橋モノマーが0.2未満の反応性Qを有し、該反応性Qは、アルフレイ−プライス(Alfrey−Price)のキュー−イー(Q−e)スキームに従って定義され、前記少なくとも1つの第2の架橋モノマーの量がエチレン性不飽和モノマーの全量の0.8モル%未満である熱膨張性の熱可塑性微小球に関する。
【0010】
モノマーの反応性を定量化する方法としてのAlfrey−Price Q−eスキームは、ポリマー分野では十分確立されており、Robert Z.Greenley、Polymer Handbook、第4版、Brandrup、ImmergutおよびGrulke、John Wiley&Sons、New York、NY、(1999)頁309〜319に記載されている。Q−eスキームでは、Qは、モノマーの反応性を表し、eは、モノマーの極性を表す。Qの高い値は、モノマーの反応性が比較的高いことを示し、Qの低い値は、モノマーの反応性が比較的低いことを示す。上の文献では、数種類のモノマーに対するQ値が、明確に列挙されており、列挙されていないモノマーの場合、Q値は、類似のモノマーに対する値に基づいて推定することができる。
【0011】
好ましくは、少なくとも1つの第1の架橋モノマーは、0.2超〜10または0.4〜2の反応性Qを有する。少なくとも1つの第2の架橋モノマーは、好ましくは、0.001〜0.2未満、または0.002〜0.15の反応性Qを有する。
【0012】
少なくとも1つの第1の架橋モノマー、すなわち、高反応性を有する架橋モノマーの量は、好ましくは、エチレン性不飽和モノマーの全量の0.01〜1.0モル%または0.03〜0.4モル%である。少なくとも1つの第1の架橋モノマーは、高反応性を有する2つ以上のモノマーの混合物であってよい。少なくとも1つの第2の架橋モノマー、すなわち、低反応性を有する架橋モノマーの量は、好ましくは、エチレン性不飽和モノマーの全量の0.01〜0.75モル%または0.03〜0.6モル%である。少なくとも1つの第2の架橋モノマーは、低反応性を有する2つ以上のモノマーの混合物であってよい。第1と第2の架橋モノマーの総量は、好ましくは、エチレン性不飽和モノマーの全量の0.02〜1.75モル%または0.06〜1.0モル%である。第1と第2の架橋モノマーは、通常、2つまたは3つの炭素−炭素二重結合が好ましいが、2つ、3つ、4つまたはそれ以上の炭素−炭素二重結合を有することができる。
【0013】
高反応性を有する(0.2超のQ)有用な架橋モノマーとして、(メタ)アクリル酸エステルまたは(メタ)アクリルアミドまたは2つ以上の炭素−炭素二重結合を有するビニル芳香族モノマーなどのビニルモノマーが挙げられる。本明細書で化学名が「(メタ)アクリル」を含む場合はいつでも、「(メタ)アクリル」は、「メタクリル」と「アクリル」の双方を指すことを理解されたい。
【0014】
高反応性を有する好ましい架橋モノマーの例として、トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、エチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ジ(エチレングリコール)ジ(メタ)アクリレート、1,4−ブタンジオールジ(メタ)アクリレート、ジ(トリメチロールプロパン)テトラ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールペンタ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールヘキサ(メタ)アクリレートおよびトリス[2−アクリロイルオキシ)エチル]イソシアヌレートなどの(メタ)アクリレートの誘導体が挙げられる。特に好ましいのは、トリメチロールプロパントリメタクリレート、エチレングリコールジメタクリレート、ジ(エチレングリコール)ジメタクリレート、1,4−ブタンジオールジメタクリレート、ジ(トリメチロールプロパン)テトラメタクリレート、ペンタエリスリトールトリメタクリレート、ペンタエリスリトールテトラメタクリレート、ジペンタエリスリトールペンタメタクリレート、およびジペンタエリスリトールヘキサメタクリレートなどのメタクリレートの誘導体である。
【0015】
高反応性を有する有用な架橋モノマーの他の例として、トリ(エチレングリコール)ジ(メタ)アクリレート、テトラ(エチレングリコール)ジ(メタ)アクリレート、ポリ(エチレングリコール)ジ(メタ)アクリレート、PEG#200ジ(メタ)アクリレート、PEG#400ジ(メタ)アクリレート、PEG#600ジ(メタ)アクリレート、プロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、ジ(プロピレングリコール)ジ(メタ)アクリレート、トリ(プロピレングリコール)ジ(メタ)アクリレート、テトラ(プロピレングリコール)ジ(メタ)アクリレート、ポリ(プロピレングリコール)ジ(メタ)アクリレート、1,3−プロパンジオールジ(メタ)アクリレート、1,3−ブタンジオールジ(メタ)アクリレート、トリ(ブタンジオール)ジ(メタ)アクリレート、1,6−ヘキサンジオールジ(メタ)アクリレート、1,8−オクタンジオールジ(メタ)アクリレート、1,9−ノナンジオールジ(メタ)アクリレート、1,10−デカンジオールジ(メタ)アクリレート、ネオペンチルグリコールジ(メタ)アクリレート、3−メチル−1,5−ペンタンジオールジ(メタ)アクリレート、2,4−ジエチル−1,5−ペンタンジオールジ(メタ)アクリレート、グリセリンジ(メタ)アクリレート、グリセリントリ(メタ)アクリレート、(メタ)アクリル酸アリル、(メタ)アクリル酸ビニル、トリアクリルホルマール、ジビニルベンゼン、ジビニルトルエン、ジビニルナフタレン、N,N’−エチレンビスアクリルアミドが挙げられる。
【0016】
高反応性を有する架橋モノマーのさらなる例として、3−オキソ−1,6−ヘキサンジオールジ(メタ)アクリレートなどのアルキルエーテルジオールジ(メタ)アクリレート(脂肪族炭素R、Rおよびエーテル結合から構築されている式(−R1−O−R2−)によって表される)およびヒドロキシピバル酸ネオペンチルグリコールジ(メタ)アクリレートなどのアルキルエステルジオールジ(メタ)アクリレート(脂肪族炭素R、Rおよびエステル結合からなる式(−R1−COO−R2−)によって表される)が挙げられる。
【0017】
低反応性を有する(0.2未満のQ)有用な架橋モノマーとして、2つ以上のアリル型二重結合、ビニルエーテル二重結合、ビニルシラン二重結合、または非共役のオレフィン性二重結合、または低反応性を有する他の種類の炭素−炭素二重結合を有するモノマーが挙げられる。低反応性を有する架橋モノマーの例は、エチレングリコール、プロピレングリコール、ジ−、トリ−、テトラ−またはポリ−エチレングリコールおよびプロピレングリコール、グリセリン、ブタンジオール、エリスリトール、ペンタエリスリトール、ジペンタエリスリトール、ヘキサンジオール、オクタンジオール、シクロヘキサンジオール、シクロヘキサントリオール、キシリトール、ソルビトール、マンニトール、グルコース、スクロース、セルロース、ヒドロキシルセルロース、メチルセルロースおよびレゾルシノールのポリビニルまたはポリアリルエーテルである。
【0018】
低反応性を有する架橋モノマーの他の例として、例えば、ポリカルボン酸、炭酸、シアヌル酸およびイソシアヌル酸のポリビニルまたはポリアリルエステルが挙げられる。さらなる例として、ペンタエリスリトールジアリルエーテル、ペンタエリスリトールトリアリルエーテル、ペンタエリスリトールテトラアリルエーテル、トリメチロールプロパンジアリルエーテル、トリメチロールプロパントリアリルエーテル、ポリアリルスクロース、ポリアリルグルコース、p−ジアリルエーテルビスフェノールA、o−ジアリルエーテルビスフェノールA、グリセリンジアリルエーテルおよびテトラ(アリルオキシ)エタンのようなアリルエーテルが挙げられる。さらなる例として、シアヌル酸トリアリル、イソシアヌル酸トリアリル、トリアリルメラミン、イソシアヌル酸ジアリルエステル、イソシアヌル酸ジアリルn−プロピルエステルジアリルカーボネート、ジ(エチレングリコール)ジアリルジカーボネート、トリメシン酸ジ−またはトリ−アリル、メリト酸ジ−またはトリアリル、フタル酸ジアリル、イソフタル酸ジアリル、テレフタル酸ジアリル、マレイン酸ジアリル、フマル酸ジアリル、コハク酸ジアリル、マロン酸ジアリル、ジアリルマロン酸ジエチルエステル、ジアリルマロン酸ジメチルエステル、シュウ酸ジアリル、アジピン酸ジアリル、セバシン酸ジアリル、酒石酸ジアリル、ケイ酸ジアリル、トリカルバリル酸ジ−またはトリ−アリル、クエン酸ジ−またはトリ−アリル、リン酸ジ−またはトリ−アリル、クロレンド酸ジアリル、クロトン酸アリル、ジアリルモノエチレングリコールシトレート、1,1’−ジアリル−2,2’−ビス−イミダゾリン、ジアリルプロピレン尿素、ジアリルエチレン尿素、ジアリル尿素、ジアリルチオ尿素、メチルジアリルアミン、ジ−またはトリ−アリルアミン、N,N−ジアリルエタノールアミン、テトラアリルエチレンジアミン、酒石酸ジアリルアミド、テトラアリルスズ、ジフェニルジアリルスズ、ジアリルホルマール、5,5−ジアリルバルビツル酸、ジアリルフェノール、ジアリルオキシベンゼン、ジアリルベンゼンおよびトリアリルベンゼンのようなアリルモノマーが挙げられる。さらなるモノマーとして、ジ(エチレングリコール)ジビニルエーテル、トリ(エチレングリコール)ジビニルエーテル、テトラ(エチレングリコール)ジビニルエーテル、ポリ(エチレングリコール)ジビニルエーテル、1,4−ブタンジオールジビニルエーテル、ジビニルエーテル、シクロヘキサン−1,4−ジメタノールジビニルエーテル、ポリ(エチレングリコール)ジビニルエーテル、ポリ(プロピレングリコール)ジビニルエーテルおよびポリ(テトラメチレングリコール)ジビニルエーテルなどのジまたはポリビニルエーテルが挙げられる。さらなるモノマーとして、シュウ酸ジビニル、マロン酸ジビニル、コハク酸ジビニル、グルタミン酸ジビニル、アジピン酸ジビニル、セバシン酸ジビニル、マレイン酸ジビニル、フマル酸ジビニル、シトラコン酸ジビニル、酒石酸ジビニルおよびメサコン酸ジビニルなどのジまたはポリビニルエステルが挙げられる。さらなるモノマーとして、エチレングリコールビニルアリルシトレートおよびアリルビニルマレエートなどの混合物化合物が挙げられる。さらなるモノマーとして、トリビニルシクロヘキサン、ジビニルシクロヘキサン、1,4−ペンタジエン、2−メチル−1,4−ペンタジエン、3−メチル−1,4−ペンタジエン、1,4−ヘキサジエン、1,5−ヘキサジエン、2−メチル−1,5−ヘキサジエン、3−メチル−1,5−ヘキサジエン、1,5−ヘキサジエン−3,4−ジオール、1,5−ヘプタジエン、2−メチル−1,6−ヘプタジエン−3−オール、1,6−ヘプタジエン、1,6−ヘプタジエン−4−オール、1,7−オクタジエン、7−メチル−1,6−オクタジエン、1,8−ノナジエン、1,9−デカジエン、1,5,9−デカトリエン、1,10−ウンデカジエン、1,11−ドデカジエン、1,13−テトラデカジエン、1,19−エイコサジエン、シトロネレン、1,5−シクロオクタジエン、ジシクロペンタジエンおよび2,5−ノルボルナジエンならびに対応する置換モノマーなどの非共役アルケン(カルボニル、ニトリルもしくは類似基と、炭素−炭素二重結合と、またはベンゼンなどの芳香族系と共役していない2つ以上の孤立二重結合)が挙げられる。さらなるモノマーとして、1,3−ジビニルテトラメチルジシロキサン、1,3−ジアリルテトラメチルジシロキサン、1,3−ジメチル−1,1,3,3−テトラビニルジシロキサン、1,3−ジビニル−1,3−ジメチル−1,3−ジクロロジシロキサン、1,3−ジビニル−1,3−ジフェニル−1,3−ジメチルジシロキサン、1,3−ジビニルテトラエトキシジシロキサン、ペンタビニルペンタメチルシクロペンタシロキサン、2,4,6,8−テトラメチル−2,4,6,8−テトラビニルシクロテトラシロキサン、2,4,6−トリメチル−2,4,6−トリビニルシクロトリシロキサン、1,3,5−トリビニル−1,1,3,5,5−ペンタメチルトリシロキサン、ジフェニルジビニルシラン、ジメチルジビニルシラン、メチルトリビニルシラン、テトラビニルシラン、1,3−ジビニル−1,1,3,3−テトラメチルジシラザン、1,3−ジビニル−1,3−ジフェニル−1,3−ジメチルジシラザン、ジアリルジメチルシラン、ジアリルジフェニルシラン、ジアリルオキシジメチルシラン、メチルトリアリルシラン、フェニルトリアリルシラン、テトラアリルオキシシラン、テトラアリルシランおよびトリアリルシランなどのシリコーン化合物が挙げられる。さらなるモノマーとして、エチレン、プロピレン、ブチレンおよびその類似体、グリコール、グリセリン、ペンタエリスリトール、ソルビトールのジまたはポリビニルエーテル;グリコール、グリセリンおよびその類似体をベースにした化合物などのジまたはポリアリル化合物;またはビニルアリル脂環式化合物と複素環式化合物の組合せによって代表される群が挙げられる。さらなるモノマーとして、ジビニルプロピレン尿素、ジビニルエチレン尿素および3,9−ジビニル−2,4,8,10−テトラオキサスピロ[5.5]ウンデカンが挙げられる。
【0019】
低反応性を有する好ましい架橋モノマーの例として、シアヌル酸トリアリル、トリビニルシクロヘキサン、1,4−ブタンジオールジビニルエーテル、炭酸ジアリル、ペンタエリスリトールトリアリルエーテル、トリメチロールプロパンジアリルエーテルおよびトリメシン酸トリアリルが挙げられる。
【0020】
エチレン性不飽和モノマーの主要部分は、炭素−炭素二重結合を1つのみ含み、以後、非架橋モノマーと呼称することにする。かかるモノマーの量は、好ましくは、エチレン性不飽和モノマーの全量の98〜99.98モル%または99〜99.94モル%である。
【0021】
非架橋モノマーは、例えば、アクリロニトリル、メタクリロニトリル、α−クロロアクリロニトリル、α−エトキシアクリロニトリル、フマロニトリルまたはクロトニトリルなどのニトリル含有モノマー;アクリル酸メチルやアクリル酸エチルなどのアクリル酸エステル;メタクリル酸メチル、メタクリル酸イソボルニル、メタクリル酸エチルまたはメタクリル酸ヒドロキシエチルなどのメタクリル酸エステル;塩化ビニルなどのハロゲン化ビニル;塩化ビニリデンなどのハロゲン化ビニリデン;ビニルピリジン;酢酸ビニルなどのビニルエステル;スチレン、ハロゲン化スチレンまたはα−メチルスチレンなどのスチレン類;アクリル酸、メタクリル酸およびその塩のような不飽和カルボン酸化合物;あるいはアクリルアミド、メタクリルアミドまたはN−置換マレイミドのような他の不飽和モノマーであってよい。上述のモノマーの任意の混合物もまた使用することができる。
【0022】
好ましくは、非架橋モノマーは、最も好ましくは、多量に、例えば、エチレン性不飽和非架橋モノマーの50〜100モル%または70〜100モル%、好ましくは、80〜100モル%または95〜100モル%でニトリル含有モノマーを含む。
【0023】
ニトリル含有モノマーは、好ましくは、アクリロニトリルおよびメタクリロニトリルの1つまたは複数から主として選択される。他のエチレン性不飽和モノマーが存在する場合、そのモノマーは、好ましくは、アクリル酸エステルまたはメタクリル酸エステルまたはメタクリル酸の1つまたは複数から選択される。ハロゲンを含有しないモノマーのみを使用することも最も好ましい。
【0024】
そのガラス転移温度(T)に通常対応する、ポリマー殻の軟化温度は、好ましくは、50〜250°Cまたは100〜200°Cの範囲内である。
【0025】
好ましくは、ポリマー殻は、全微小球の約50〜約95重量%または約60〜約90重量%を占める。
【0026】
発泡剤は、通常、熱可塑性ポリマー殻の軟化温度より高くない沸点を有する液体であり、n−ペンタン、イソペンタン、ネオペンタン、シクロペンタン、シクロヘキサン、n−ブタン、イソブタン、n−ヘキサン、イソヘキサン、ネオヘキサン、n−ヘプタン、イソヘプタン、n−オクタン、イソオクタン、イソデカン、イソドデカンまたはそれらの混合物などの炭化水素を含むことができる。これらとは別に、石油エーテル;または塩化メチル、塩化メチレン、ジクロロエタン、ジクロロエチレン、トリクロロエタン、トリクロロエチレン、トリクロロフルオロメタン、ペルフルオロ炭化水素などの塩素化もしくはフッ素化炭化水素など他の炭化水素種も使用することができる。特に好ましい発泡剤は、少なくとも1つのイソペンタン、イソオクタンおよびイソドデカンを含む。
【0027】
常圧の発泡剤の沸点は、広い範囲、好ましくは、約−20〜約200°C、最も好ましくは、約−20〜約150°Cであってよい。発泡剤が、沸点または沸点範囲を有することが特に好ましいので、50℃超、より好ましくは、60℃超、最も好ましくは、70℃超であるが、好ましくは、約150℃より高くない温度が、常圧で発泡剤の少なくとも50重量%、好ましくは、少なくとも80重量%を蒸発させるのに必要であろうと思われる。
【0028】
一実施形態では、発泡剤は、好ましくは、例えば、少なくとも25重量%または少なくとも50重量%、好ましくは、少なくとも60重量%または少なくとも70重量%、またはおそらくさらには最大85重量%の量でイソオクタンを含み、あるいは実質的にイソオクタンからなる。発泡剤は、ブタン、ペンタン、ヘキサン、ヘプタン、石油留出物、イソドデカンまたは発泡剤の適切な沸点範囲を与える他の液体の1つまたは複数を、例えば、全体として最大75重量%、または最大50重量%、好ましくは、最大40重量%または最大30重量%または最大15重量%さらに含むことができる。イソオクタンと組み合わせて使用するのに特に好ましい炭化水素は、イソブタン、イソペンタン、イソヘキサン、n−ペンタン、n−ヘキサン、石油エーテル、イソドデカンおよびn−ヘプタンである。一実施形態では、発泡剤は、イソオクタンを85〜99重量%または90〜95重量%、イソペンタンを1〜15または5〜10重量%含む。
【0029】
発泡剤は、例えば、微小球の約5〜約50重量%または約10〜約40重量を占める。
【0030】
ポリマー殻および発泡剤以外に、微小球は、通常、約1〜約20重量%、好ましくは、約2〜約10重量%の量で、その生成中に添加される物質をさらに含むことができる。かかる物質の例は、シリカ、チョーク、ベントナイト、コロイダル粘土、窒化ホウ素、デンプン、ガムアガー、変性ポリサッカリド、例えば、メチルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、カルボキシメチルセルロース、デンプンエーテル、デンプンエステル、架橋ポリマー、ポリマー粒子、例えば、ポリアミド、ポリカーボネート、ポリエーテル、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリスチレン、ポリアクリレートの1つまたは複数、および/またはAl、Ca、Mg、Ba、Fe、Zn、NiおよびMn、Tiのような金属の1つまたは複数の塩、酸化物または水酸化物、例えば、リン酸カルシウム、炭酸カルシウム、水酸化マグネシウム、硫酸バリウム、シュウ酸カルシウム、二酸化チタン、およびアルミニウム、鉄、亜鉛、ニッケルまたはマンガンの水酸化物などの1つまたは複数の固体懸濁剤である。存在する場合、こうした固体懸濁剤は、通常、ポリマー殻の外表面に主に存在する。しかし、懸濁剤が微小球の生成中に添加されたとしても、後の段階で洗い流され、したがって、最終生成物には実質的に存在しないと思われる。
【0031】
好ましくは、組成物の微小球は、比較的高いT開始およびT最大を有する。T開始は、好ましくは、150〜230°C、最も好ましくは、180〜200°Cである。T最大は、好ましくは、170〜260°C、最も好ましくは、200〜240°Cである。
【0032】
膨張性微小球は、好ましくは、体積メジアン径が、1〜500μm、より好ましくは、5〜100μm、最も好ましくは、10〜50μmである。
【0033】
本発明のさらなる態様は、上に記載した膨張性の熱可塑性微小球を生成するための方法に関する。その方法は、発泡剤の存在下で好ましくは水性の懸濁液中で上記のエチレン性不飽和モノマーを重合させることによって、前記発泡剤が封入されたポリマー殻を含む微小球を得るステップを含む。モノマーおよび発泡剤の種類および量に関して、膨張性微小球についての上の説明が参照される。生成は、すでに述べた特許刊行物に記載されたのと同じ原理に従うことができる。
【0034】
本発明の一実施形態では、微小球は、バッチ法で生成し、次いで、重合は、反応槽で以下に記載のように実施することができる。モノマー相100部に対して(適切には、モノマーおよび発泡剤を含み、それらの割合が、ポリマー殻中のモノマーの割合および最終生成物中の発泡剤の量を決める)、例えば、0.1〜5部の量での1つまたは複数の重合開始剤、例えば、100〜800部の量での水性相、および例えば、1〜20部の量での1つまたは複数の好ましくは固体のコロイダル懸濁剤が、混合され、ホモゲナイズされる。得られたモノマー相の液滴の大きさが、例えば、米国特許第3615972号に記載の原理に従って、最終膨張性微小球の大きさを決定し、この原理は、多様な懸濁剤を用いる類似の生成法全てに対して応用することができる。温度は、適切には、40〜90°C、好ましくは、50〜80°Cに維持され、適切なpHは、用いる懸濁剤で決まる。懸濁剤が、Ca、Mg、Ba、Zn、NiおよびMnのような金属の塩、酸化物または水酸化物、例えば、リン酸カルシウム、炭酸カルシウム、水酸化マグネシウム、硫酸バリウム、シュウ酸カルシウム、および亜鉛、ニッケルまたはマンガンの水酸化物の1つまたは複数から選択される場合、例えば、好ましくは、5〜12、最も好ましくは、6〜10の高pHが適切である。懸濁剤が、デンプン、メチルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、カルボキシメチルセルロース、ガムアガー、シリカ、コロイダル粘土、またはアルミニウムもしくは鉄の酸化物もしくは水酸化物から選択される場合、好ましくは、1〜6、最も好ましくは、3〜5の低pHが適切である。上の薬剤のそれぞれが、例えば、溶解度データに応じて多様な最適pHを有する。
【0035】
懸濁剤の効果を強化するために、少量、例えば、0.001〜1重量%の1つまたは複数の促進剤を添加することも可能である。通常、かかる促進剤は、有機材料であり、例えば、水溶性スルホン化ポリスチレン、アルギネート、カルボキシメチルセルロース、テトラメチルアンモニウムヒドロキシドもしくはクロリド、またはジエタノールアミンとアジピン酸の水溶性縮合生成物、エチレンオキシドと尿素とホルムアルデヒドの水溶性縮合生成物、ポリエチレンイミン、ポリビニルアルコール、ポリビニルピロリドン、ポリビニルアミンなどの水溶性複合樹脂状アミン縮合生成物、ゼラチン、にかわ、カゼイン、アルブミン、グルチンなどのようなタンパク質材料などの両性材料、メトキシセルロースのような非イオン性材料、せっけん、硫酸アルキルと硫酸スルホネートなど通常乳化剤として分類されるイオン性材料、および長鎖第4級アンモニウム化合物の1つまたは複数から選択することができる。
【0036】
通常のラジカル重合を使用することができ、開始剤は、適切には、ジアルキル過酸化物、ジアシル過酸化物、ペルオキシエステル、ペルオキシジカーボネートまたはアゾ化合物などの有機過酸化物の1つまたは複数から選択される。適切な開始剤として、ジセチルペルオキシジカーボネート、ジ(4−tert−ブチルシクロヘキシル)ペルオキシジカーボネート、ジオクタノイル過酸化物、ジベンゾイル過酸化物、ジラウロイル過酸化物、ジデカノイル過酸化物、tert−ブチルペルアセテート、tert−ブチルペルラウレート、tert−ブチルペルベンゾエート、tert−ブチルヒドロペルオキシド、クメンヒドロペルオキシド、クメンエチルペルオキシド、ジイソプロピルヒドロキシジカルボキシレート、2,2’−アゾビス(2,4−ジメチルバレロニトリル)、2,2’−アゾビス(イソブチロニトリル)、1,1’−アゾビス(シクロヘキサン−1−カルボニトリル)、ジメチル2,2’−アゾビス(2−メチルプロピオネート)、2,2’−アゾビス[2−メチル−N−(2−ヒドロキシエチル)プロピオンアミド]などが挙げられる。高エネルギーイオン化放射などの放射を用いて重合を開始することも可能である。
【0037】
重合が基本的に完全である場合、微小球は、通常、水性スラリーまたは分散液として得られ、これは、そのまま使用することができ、またいわゆるウエットケーキを得るための床ろ過、フィルタープレス、リーフろ過、ロータリーろ過、ベルトろ過または遠心分離など任意の通常の手段によって脱水される。しかし、スプレー乾燥、シェルフ乾燥、トンネル乾燥、ロータリー乾燥、ドラム乾燥、空気乾燥、ターボシェルフ乾燥、ディスク乾燥、または流動床乾燥など任意の通常の手段によって微小球を乾燥することも可能である。
【0038】
適切であれば、微小球は、残留未反応モノマーの量を低減するために、例えば、すでに述べたWO2004/072160または米国特許第4287308号に記載の手順の任意のものによって、任意の段階で処理することができる。
【0039】
本発明の微小球は、熱可塑性材料向け、特に、高温溶融熱可塑性材料向けなど多様な用途の膨張剤として有用である。
【0040】
本発明の特定の態様は、熱可塑性ポリマーマトリックスと膨張性微小球とを含む膨張性配合物における上記の膨張性微小球の使用に関する。配合物は、着色剤、安定剤、補強剤などのような1つまたは複数の添加剤を任意選択でさらに含む。膨張性配合物の例として、射出成形、押出成形、ブロー成形、回転成形、熱成形などでの使用向けの成形可能な複合シートおよびコンパウンドが挙げられる。膨張性微小球の量は、好ましくは、0.5〜15重量%または1〜5重量%である。ポリマーは、例えば、ポリプロピレン、ポリスチレン、ポリエチレン、熱可塑性ポリウレタン、スチレン−エチレン−ブチレン−スチレンコポリマー、スチレン−ブタジエン−スチレンコポリマー、ポリ塩化ビニル、エチレン−ビニルアセテートコポリマーまたはそれらのコポリマーあるいは融点が類似の別のコポリマーであってよい。
【0041】
本発明はまた、熱可塑性ポリマーマトリックスと、上記の膨張性微小球と、上記の任意選択のさらなる添加剤とを含む上記の膨張性配合物に関する。
【0042】
本発明は、ポリマーの融点より高いが、微小球の膨張温度(T開始)より低い温度で熱可塑性ポリマーを上記の膨張性微小球と上記の温度で、および上述の任意選択のさらなる添加剤と混合するステップを含む、その調製のための方法にさらに関する。
【0043】
本発明は、以下の実施例と連携してさらに説明されることになるが、この実施例は、本発明の範囲を限定するものと解釈すべきではない。別段の指示がない限り、部数および百分率はすべて、重量基準の部数および百分率である。架橋モノマーのモル%は、常に、エチレン性不飽和モノマーの全量に対するモル%を指す。
【0044】
微小球の膨張特性は、20°C/分の加熱速度および0.06Nの荷重(正味)を使用することによってMettler Toledo TMA/SDTA 841で評価した。T開始は、膨張が開始される温度であり、T最大は、最大膨張が得られる温度であり、TMA密度は、T最大における微小球の密度である。
【0045】
膨張温度が高いある種の微小球の耐予備膨張性(pre-expansion resistance)は、表1に記載の段階式温度プロフィルを使用することによってTMAで評価した。温度段階1および2は、耐予備膨張性が良好な微小球の膨張度が全くないまたは非常に小さくあるべきである予備加熱段階であり、温度段階3および4は、微小球が高度に膨張すべきである膨張段階である。Dmax(予備)およびDmax(膨張)は、それぞれ、予備加熱段階(段階1および2)および膨張段階(段階3および4)中に微小球の寸法が変化するための試験体の最大変位である。一部の場合、Dmax(予備)は、膨張が開始される前の微小球の初期収縮のために負の値であることがある。TMA曲線は、微小球の試料量0.70mgに規格化される。
【0046】
【表1】

【0047】
粒径および発泡剤量は、T開始に影響を与えるので、比較はすべて、発泡剤量が基本的に同じで、粒径が類似である粒子について実施された。
【0048】
粒径および粒度分布は、湿潤試料でMalvern Mastersizer Hydro 2000 SM装置によるレーザ光散乱によって求めた。粒径は、体積メジアン径D(0.5)で表す。
【0049】
発泡剤量は、Mettler Toledo TGA/SDTA851eで熱天秤分析(TGA)によって求めた。できるだけ多くの水分および存在すれば残留モノマーを排除するために、試料はすべて、分析前に乾燥した。分析は、30℃で開始し、加熱速度20°C/分を使用することによって窒素雰囲気下で実施した。
【0050】
実施例1
相を混合し、適切な滴径が得られるまで激しく撹拌することによって、水中にMg(OH)安定化有機滴を含む反応混合物を創出した。水分散液は、Mg(OH)5.0部と、水371部とを含んでいた。有機滴は、ジラウロイル過酸化物2.0部と、イソオクタン25部と、アクリロニトリル65部と、メタクリロニトリル35部と、トリメチロールプロパントリメタクリレート0.52部(0.09モル%)とを含んでいた。重合を撹拌下の密封反応器で62°Cで20時間実施した。室温まで冷却した後、得られた微小球スラリーの試料を取り出し、粒径分布を測定した。ろ過、洗浄および乾燥後、粒子をTMAによって分析した。乾燥粒子は、イソオクタンを約22重量%含み、平均粒径は、約37μmであった。TMAの結果を表3および4に示す。
【0051】
実施例2〜10
表3に従って添加された架橋モノマーを除いては実施例1と同様に実施した複数の重合実験で、微小球を調製した。重合を実施例1で記載したのと同様に62°Cで実施した。分析結果を表3および4で知ることができる。
【0052】
【表2】

【0053】
【表3】

【0054】
表3では、異なる種類の2つの架橋モノマー、すなわち、反応性が高いTMPTMAと反応性が低いTACとを合わせることによってT開始が顕著に増加することを理解することができる。TACのみは、高いT開始を与えるが、膨張は非常に少ない。
【0055】
【表4】

【0056】
表4では、架橋モノマーとしてTMPTMAとTACの双方を使用することによって良好な耐予備膨張性と良好な膨張性の双方を実現できることがわかる。
【0057】
実施例11〜18
表5に従って添加された架橋モノマーを除いては実施例1と同様に実施した複数の重合実験で、微小球を調製した。重合を実施例1で記載したのと同様に62°Cで実施した。分析結果を表5および6で知ることができる。
【0058】
【表5】

【0059】
表5から、表3で例示されたように、反応性の低い架橋モノマーも使用するということがなければ、双方が高反応性を有するTMPTMAまたはDEGDMAの量を増加することによってはT開始の増加は、全くか少量しか起こらないと思われる。
【0060】
【表6】

【0061】
上の表6から理解できるように、耐予備膨張性は、やはり表4の架橋モノマーの全量に匹敵する濃度で、架橋モノマーとしてTMPTMAまたはDEGDMAのみを含む微小球では不十分である。高すぎるまたは低すぎる濃度で含む微小球もまた、膨張段階中の膨張が不十分である(Dmaxがより小さい)。
【0062】
実施例19〜21
表7に従って添加された架橋モノマーを除いては実施例1と同様に実施した複数の重合実験で、微小球を調製した。発泡剤として、イソペンタン12.5部とイソオクタン25.5部の混合物を使用した。実施例中の水およびMg(OH)の量は、それぞれ、320部および2.6部であった。重合を実施例1で記載したのと同様に62°Cで実施した。分析結果を表7で知ることができる。
【0063】
【表7】

【0064】
表7では、やはりイソペンタンとイソオクタンの混合物を発泡剤として使用する場合も、TAC量が増加するほどT開始が高くなることが理解できる。
【0065】
実施例22〜33
表8に従って添加された架橋モノマーおよび発泡剤を除いては実施例1と同様に実施した複数の重合実験で、微小球を調製した。実施例で使用された発泡剤は、イソペンタン(IP)、イソオクタン(IO)、およびイソドデカン(ID)であった。重合を実施例1で記載したのと同様に62°Cで実施した。分析結果を表8で知ることができる。
【0066】
【表8】

【0067】
表8では、TMPTMAと組み合わせたTACは、発泡剤として多様な炭化水素混合物を含む微小球のT開始を増加させることが理解できる。より高い沸点を有する発泡剤を使用する場合、T開始に対する効果がより顕著である。
【0068】
実施例34〜57
表9に従って添加された架橋モノマーを除いては実施例1と同様に実施した複数の重合実験で、微小球を調製した。実施例中の水およびMg(OH)の量は、それぞれ、323〜371部および2.1〜5.0部であった。これは、異なる重合反応器における配合が少し相違するためであるが、重合粒子の熱特性には影響を与えない。重合を実施例1で記載したのと同様に62°Cで実施した。分析結果を表9および表10で知ることができる。
【0069】
【表9】

【0070】
【表10】

【0071】
表9および10では、異なる架橋モノマーの組合せの結果を示す。反応性が高い架橋モノマーを反応性が低い架橋モノマーと組み合わせた場合のみに、高膨張性と高耐予備膨張性の双方を実現できると思われる。実施例41および44では、この比較的低温で行われる膨張が低度であったので、T開始に対する値は、期待されたより(表9を参照されたい)低い。これは、恐らくは、こうした実施例の微小球は、粒径が比較的大きく、こうした分析ではより大きい粒子の画分がより低い温度である程度まで膨張するという事実のためである。しかし、予備膨張に対する耐性は、依然として非常に良好であり、これは表10で理解することができる。実施例56および57では、反応性が高い2つの架橋モノマーを組み合わせた場合、耐予備膨張性は不十分である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
発泡剤が封入されたエチレン性不飽和モノマーから調製されるポリマー殻を含む熱膨張性の熱可塑性微小球であって、前記エチレン性不飽和モノマーは、2つ以上の炭素−炭素二重結合を有する少なくとも1つの第1の架橋モノマーと、2つ以上の炭素−炭素二重結合を有する少なくとも1つの第2の架橋モノマーとを含み、前記少なくとも1つの第1の架橋モノマーが0.2超の反応性Qを有し、前記少なくとも1つの第2の架橋モノマーが0.2未満の反応性Qを有し、該反応性Qは、アルフレイ−プライス(Alfrey−Price)のキュー−イー(Q−e)スキームに従って定義され、前記少なくとも1つの第2の架橋モノマーの量がエチレン性不飽和モノマーの全量の0.8モル%未満である熱膨張性の熱可塑性微小球。
【請求項2】
前記少なくとも1つの第1の架橋モノマーが、0.2超〜10の反応性Qを有する、請求項1に記載の微小球。
【請求項3】
前記少なくとも1つの第2の架橋モノマーが、0.001〜0.2未満の反応性Qを有する、請求項1から2のいずれか一項に記載の微小球。
【請求項4】
前記少なくとも1つの第1の架橋モノマーの量が、エチレン性不飽和モノマーの全量の0.01〜1.0モル%である、請求項1から3のいずれか一項に記載の微小球。
【請求項5】
前記少なくとも1つの第2の架橋モノマーの量が、エチレン性不飽和モノマーの全量の0.01〜0.75モル%である、請求項1から4のいずれか一項に記載の微小球。
【請求項6】
前記少なくとも1つの第1の架橋モノマーが、(メタ)アクリル酸エステルまたは(メタ)アクリルアミドまたはビニル芳香族モノマーの1つまたは複数からなる群から選択される、請求項1から5のいずれか一項に記載の微小球。
【請求項7】
前記少なくとも1つの第1の架橋モノマーが、トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、エチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ジ(エチレングリコール)ジ(メタ)アクリレート、1,4−ブタンジオールジ(メタ)アクリレート、ジ(トリメチロールプロパン)テトラ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールペンタ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールヘキサ(メタ)アクリレートおよびトリス[2−アクリロイルオキシ)エチル]イソシアヌレートの1つまたは複数である、請求項6に記載の微小球。
【請求項8】
前記少なくとも1つの第2の架橋モノマーが、2つ以上のアリル型二重結合、ビニルエーテル二重結合、ビニルシラン二重結合、または非共役オレフィン性二重結合を有するモノマーからなる群から選択される、請求項1から7のいずれか一項に記載の微小球。
【請求項9】
前記少なくとも1つの第2の架橋モノマーが、シアヌル酸トリアリル、トリビニルシクロヘキサン、1,4−ブタンジオールジビニルエーテル、炭酸ジアリル、ペンタエリスリトールトリアリルエーテル、トリメチロールプロパンジアリルエーテルおよびトリメシン酸トリアリルの1つまたは複数である、請求項8のいずれか一項に記載の微小球。
【請求項10】
前記エチレン性不飽和モノマーが、エチレン性不飽和モノマーの全量の98〜99.98モル%の量で非架橋モノマーを含む、請求項1から9のいずれか一項に記載の微小球。
【請求項11】
前記非架橋モノマーが、エチレン性不飽和非架橋モノマーの80〜100モル%の量でニトリル含有モノマーを含む、請求項10に記載の微小球。
【請求項12】
前記発泡剤がイソオクタンを含む、請求項1から11のいずれか一項に記載の微小球。
【請求項13】
熱膨張性微小球のT開始が150〜230℃である、請求項1から12のいずれか一項に記載の微小球。
【請求項14】
発泡剤の存在下でエチレン性不飽和モノマーを重合させることによって前記発泡剤が封入されたポリマー殻を含む微小球を得るステップであって、前記エチレン性不飽和モノマーは、2つ以上の炭素−炭素二重結合を有する少なくとも1つの第1の架橋モノマーと、2つ以上の炭素−炭素二重結合を有する少なくとも1つの第2の架橋モノマーとを含み、前記少なくとも1つの第1の架橋モノマーが0.2超の反応性Qを有し、前記少なくとも1つの第2の架橋モノマーが0.2未満の反応性Qを有し、該反応性Qは、アルフレイ−プライス(Alfrey−Price)のキュー−イー(Q−e)スキームに従って定義され、前記少なくとも1つの第2の架橋モノマーの量がエチレン性不飽和モノマーの全量の0.8モル%未満であるステップを含む、請求項1から13のいずれか一項に記載の熱膨張性微小球を生成するための方法。
【請求項15】
熱可塑性ポリマーマトリックスと膨張性微小球とを含む膨張性配合物における、請求項1から13のいずれか一項に記載の熱膨張性微小球の使用。
【請求項16】
請求項1から13のいずれか一項に記載の、熱可塑性ポリマーマトリックスと膨張性微小球とを含む膨張性配合物。
【請求項17】
ポリマーの融点より高いが微小球の膨張温度より低い温度で、熱可塑性ポリマーと、請求項1から13のいずれか一項に記載の膨張性微小球とを混合するステップを含む、請求項14に記載の膨張性配合物を調製するための方法。

【公表番号】特表2012−513487(P2012−513487A)
【公表日】平成24年6月14日(2012.6.14)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−541464(P2011−541464)
【出願日】平成21年12月18日(2009.12.18)
【国際出願番号】PCT/EP2009/067486
【国際公開番号】WO2010/072663
【国際公開日】平成22年7月1日(2010.7.1)
【出願人】(390009612)アクゾ ノーベル ナムローゼ フェンノートシャップ (132)
【氏名又は名称原語表記】Akzo Nobel N.V.
【Fターム(参考)】