説明

微小針デバイスおよび製造方法ならびにそれらの使用

【課題】微小針デバイスは、組織障壁を介して治療材および生物学的分子を輸送するために提供される。
【解決手段】好適な実施形態において、皮膚または他の組織障壁を介して、損傷、苦痛、または組織への刺激なしに、診断的に適切な速度で、微小針デバイスが薬剤の送達(または除去あるいは体液の検知)を可能にする。微小針を作製するための好ましい方法は、微小針の外面を規定する側壁を有する微小モールドを形成する工程、中空微小針を形成するための側壁を電気めっきする工程、そして微小針から微小モールドを除去する工程、を包含する。使用のための好ましい方法において、この微小針デバイスは、微小針の少なくとも1つと流体接続する、1つ以上のチャンバから生物学的障壁へ、または生物学的障壁を介して流体材料送達するために使用される。このデバイスは、好ましくは微小針を通して材料の流れを制御するための手段をさらに含む。これらの手段の代表的な例は、浸透可能膜、破砕可能不浸透性膜、弁およびポンプの使用を含む。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
(発明の背景)
本発明は、一般的に、組織障壁を通過する治療用分子または生物学的分子の輸送(例えば、薬物送達)のためのデバイスの分野である。
【0002】
多数の薬物および治療剤が、疾患および疾病に対する闘いにおいて開発されてきた。しかし、これらの薬物のよくある制限は、それらの送達である:どのように薬物を、治療的に有用であるかまたは至適である速度では薬物が通常送達されない身体における生物学的障壁(例えば、皮膚、経口粘膜、血液脳関門)を通過させて輸送するか。
【0003】
薬物は、通常、丸剤またはカプセル剤として経口投与される。しかし、多くの薬物は、胃腸管における消化および/または肝臓による排除に起因して、この様式では効果的に送達され得ない。さらに、いくつかの薬物は、腸粘膜を通過して効果的に拡散され得ない。患者のコンプライアンスもまた、例えば、丸剤が長期にわたって特定の間隔で摂取されるという治療的要求において、問題であり得る。
【0004】
薬物が、生物学的障壁を通過して送達させるための別の一般的な技術は、薬物が皮膚を横切って(通過する)輸送するための針(例えば、標準的な注射器またはカテーテルを用いて使用される針)の使用である。この目的のためには効果的であるが、針は一般的に、痛み;挿入部位での皮膚への局所損傷;疾患伝播の危険性を増加する出血;および感染部位となるに十分大きな創傷を生じる。従来の針を使用する体液の取り出し(例えば、診断目的のため)は、これらの同じ欠点を有する。針技術はまた、一般的に、その使用において訓練された人物による投与を必要とする。この針技術はまた、長期間制御された持続性薬物送達のために望ましくない。
【0005】
同様に、生物学的流体をサンプリングする現在の方法は侵襲性であり、そして同じ欠点を受ける。例えば、よくある慣用的な使用(例えば、糖尿病の血中グルコースのサンプリングまたはインスリンの送達)について、針は、穿刺を繰り返すことにより生じる血管の損傷のために、好ましくない。現在使用される代替の方法論は存在しない。針に対する提唱された代替は、レーザーまたは熱を使用して、皮膚に穴を作製することが必要であり、この方法は、簡便ではないか、高価であるか、または反復使用が望めない。
【0006】
代替の送達技術は、経皮パッチであり、これは、通常、皮膚を通過する薬物の拡散に依存する。しかし、この方法は、皮膚の乏しい浸透性(すなわち、効果的な障壁特性)に起因にして、多くの薬物に有用ではない。拡散速度は、薬物分子のサイズおよび親水性ならびに角質を通過する濃度勾配に一部依存する。わずかな薬物が、消極的な拡散によって皮膚を通って効果的に送達されるに必要な生理学的特性を有する。イオン導入、エレクトロポレーション、超音波、および熱(いわゆる、積極的な系)が、送達速度を改善する試みにおいて使用されてきた。増強の程度の変化が提供されるが、これらの技術は、全ての型の薬物に適切であるわけではなく、所望のレベルの送達を提供できない。いくつかの場合において、これらはまた、痛みを伴い、そして簡便ではないか、または数時間または数日間にわたって制御された薬物送達を持続するには非実用的である。皮膚を通る薬物、または測定される分析物の積極的な移入のための代替のデバイスを設計する試みがなされてきた。
【0007】
例えば、Godshallらに対する米国特許第5,879,326号およびSilicon Microdevices,Inc.によるPCT WO96/37256は、経皮薬物送達装置を開示し、この装置は、複数の微小突起(microprotrusion)(まっすぐな側壁(sidewall)を有する)を有し、薬物リザーバーと連絡をとる基板から伸長する、カッター部分を備える。操作において、この微小突起は、基板の停止領域によって制限されるまで皮膚を貫き、次いで、皮膚に対して平行に動かされて切開を作製する。この微小突起は、皮膚を通過して引かれるので、このデバイスは、感染部位となるに十分大きな創傷を作製する。この微小突起に隣接する基板におけるチャネルは、リザーバーからの薬物を、この微小突起によって破壊された領域付近の皮膚に流すことを可能にする。包含されるチャネルを通過させて投与部位中に薬物を搬送する針を使用することよりはむしろ、単に創傷を作製することはまた、投薬量におけるより大きな変動性を作製する。
【0008】
Leeらに対する米国特許第5,250,023号は、経皮薬物送達デバイスを開示する。このデバイスは、50〜400μmの範囲の直径を有する複数の皮膚針を備える。この皮膚針は、薬物溶液が浸透して皮膚の表面と接触する水膨潤性(water−swellable)ポリマー基板に支持される。電流がこのデバイスに印加されて、皮膚針によって作製される経路を開き、続いて、このポリマー基板の膨潤の際に皮膚から取り出される。
【0009】
GrossらによるPCT WO93/17754は、別の経皮薬物送達デバイスを開示する。このデバイスは、流体薬物リザーバーを有するハウジング(housing)、および流体薬物を皮膚に輸送するための複数の管状要素を備える。この管状要素は、1mm未満の内径および1.0mmの外径を有する中空針の形態であり得る。
【0010】
これらのデバイスの各々は潜在的な用途を有するが、より小さな切開を作製し、より大きな効率(適用される量あたりのより多い薬物送達)で薬物を送達し、そして薬物投与の変動性が少なく、そして/または使用がより容易である、より良い薬物送達デバイスの必要性が残存する。
【0011】
それゆえ、本発明の目的は、種々の薬物の、比較的痛みがなく、制御された、安全で簡便な経皮送達のための微小針デバイスを提供することである。
【0012】
本発明の別の目的は、最小の侵襲性で、痛みがなく、かつ簡便な様式で、生物学的流体の制御されたサンプリングのための微小針デバイスを提供することである。
【0013】
本発明のさらに別の目的は、薬物または生物学的流体もしくは分子の送達または感作において使用するための中空微小針アレイを提供することである。
【0014】
(発明の要旨)
組織を通過する分子(薬物および生物学的分子を含む)の輸送のための微小針デバイス、およびこのデバイスを製造するための方法が提供される。この微小針デバイスは、皮膚または他の組織障壁を通過する臨床的に適切な速度で、損傷、痛み、または組織への刺激作用が最小であるか全く伴わずに、薬物の送達または体液の除去を可能にする。微小針は、種々の材料(生分解性もしくは非生分解性のポリマー材料または金属を含む)から形成され得る。1つの好ましい実施態様において、このデバイスは、この微小針デバイスを生物学的障壁に一時的に確保して、輸送を促進するための手段を備える。このデバイスは、好ましくはさらに、微小針を通る材料の流れを制御するための手段を備える。これらの手段の代表的な例としては、浸透性膜、破砕可能な非浸透性膜、弁、およびポンプ、ならびに電気的手段の使用が挙げられる。
【0015】
中実、有孔性、または好ましくは中空性の微小針を作製するための方法が提供される。微小針を作製するための好ましい方法は、この微小針の外部表面を規定する側壁を有する微小モールドを形成する工程を包含する。この微小モールドは例えば、基板において1つ以上の穴をリソグラフィーで規定することによって、またはレーザーベースのカッティング(連続的にか、またはリソグラフィー投射を使用することによってかのいずれか)、あるいはモールド挿入を使用することによって形成され得る。好ましい実施態様において、この方法は、側壁を電気めっきして中空微小針を形成し、次いでこの微小針から微小モールドを除去する工程を包含する。
【0016】
この微小針デバイスは、流体材料を、皮膚のような生物学的障壁に、またはこの生物学的障壁を通過して、流体材料を送達するに有用であり、ここでこの流体材料は、少なくとも1つの微小針との流体接続における1つ以上のチャンバーから送達される。
【0017】
(発明の詳細な説明)
(1.生物学的障壁)
本明細書中に開示されるデバイスは、以下を含む生物学的障壁中に、またはそれを通過して材料を輸送する際に有用である:皮膚(またはその部分);血液脳関門;粘膜組織(例えば、経口、鼻腔、眼、膣、尿道、胃腸、呼吸);血管;リンパ管;または細胞膜(例えば、細胞の内部に材料を導入するため)。生物学的障壁は、ヒトまたは他の型の動物、ならびに植物、昆虫、または他の生物(細菌、酵母、真菌、および胚子を含む)中に存在し得る。
【0018】
微小針デバイスは、カテーテルまたは腹腔鏡の補助とともに組織内部に適用され得る。特定の適用のために(例えば、内部組織への薬物送達のために)、このデバイスは、外科的に移植され得る。
【0019】
本明細書中に開示される微小針デバイスは、代表的には、皮膚に適用される。角質は外層であり、一般的には、10細胞と50細胞との間、すなわち10μmと20μmとの間の厚さである。身体中の他の組織とは異なり、角質は、脂質の細胞外マトリックスによって囲まれる架橋ケラチンおよびケラトヒアリンの束で満たされた「細胞」(ケラチノサイトと呼ばれる)を含む。この構造は、皮膚にその障壁特徴を与えると考えられており、多くの薬物の治療的経皮投与を阻害する。角質の下は、生存表皮であり、これは、50μmと100μmとの間の厚さである。この生存表皮は、血管を含まず、そして真皮から真皮への拡散によって代謝物を交換する。生存表皮の下は真皮であり、これは、1mmと3mmとの間の厚さであり、そして血管、リンパ、および神経を含む。
【0020】
(2.微小針デバイス)
本明細書中に開示される微小針デバイスは、以下を備える:基板;1つ以上の微小針;および必要に応じて、薬物の送達または分析物の収集のためのリザーバー、ならびに前述の相互作用を制御するためのポンプ、センサ、および/または微小プロセッサ。
【0021】
(a.基板)
デバイスの基板は、種々の材料から構築され得、この材料としては、金属、セラミック、半導体、有機物質、ポリマー、および複合体が挙げられる。この基板は、微小針が装着されるかまたは完全に形成される基部を備える。リザーバーもまた、この基板に装着され得る。
【0022】
(b.微小針)
デバイスの微小針は、種々の材料から構築され得、この材料としては、金属、セラミック、半導体、有機物質、ポリマー、および複合体が挙げられる。構築の好ましい材料としては、以下が挙げられる:医薬品グレードのステンレス鋼、金、チタン、ニッケル、鉄、金、スズ、クロム、銅、これらまたは他の材料の合金、シリコン、二酸化ケイ素、およびポリマー。代表的な生分解性ポリマーとしては、以下が上げられる:ヒドロキシ酸(例えば、乳酸およびグリコール酸ポリ乳酸)のポリマー、ポリグリコリド、ポリ乳酸−co−グリコリド、ならびにPEG、ポリ無水物、ポリ(オルソ)エステル、ポリウレタン、ポリ(酪酸)、ポリ吉草酸、およびポリ(乳酸−co−カプロラクトン)との共重合体。代表的な非生分解性ポリマーとしては、以下が挙げられる:ポリカルボネート、ポリメタクリル酸、エチレンビニルアセテート、ポリテトラフルオロエチレン(TEFLONTM)、およびポリエステル。
【0023】
一般に、微小針は、皮膚に挿入される間、多くの日数まで配置したままにする間、そして除去される間、薬物の送達のためにインタクトなままにするために、機械的強度を有するか、または生物学的流体の収集のための導管として作用するべきである。しかし、微小針が生分解性ポリマーから形成される実施態様において、この機械的要求は、あまり厳密ではない。なぜなら、微小針またはその先端は、例えば、皮膚中で崩壊し得、そして生分解するからである。にもかかわらず、その意図された目的(例えば、その導管機能)を提供する微小針を少なくとも十分長くインタクトなままにする生分解性微小針が依然として必要である。それゆえ、生分解性微小針は、非生分解性のものに比べて、増加したレベルの安全性を提供し得る。この微小針は、標準的な方法を用いて滅菌されるべきである。
【0024】
微小針は、有孔性中実(密封されたコーティングまたは外部部分を伴ってかまたは伴わずに)または中空から形成される。本明細書中使用される場合、用語「有孔性」は、少なくとも一部の微小針構造全体に、流体および/または中実材料が微小針を通過することが可能であるに十分大きくかつ十分相互接続される、細孔または間隙を有することを意味する。本明細書中で使用される場合、用語「中空」は、微小針構造の内部全体に実質的に1つ以上の環状の孔またはチャネルを有し、流体および/または中実材料が微小針を通過することが可能であるに十分大きな直径を有することを意味する。この環状の孔は、先端の方向でこの針の全部または一部を通して基部まで伸長し得、適切なように、この針の方向に平行に伸長するか、またはこの針の側面に分岐するかもしくは抜け出す。中実または有孔性の微小針は、中空であり得る。当業者は、特定の適用に必要な孔隙率および/または孔の特徴を選択し得る。例えば、細孔のサイズまたは孔の直径を調整して、輸送される特定の材料が微小針デバイスを通過することを可能にし得る。
【0025】
微小針は、まっすぐまたはテーパー状のシャフトを有し得る。実質的に均一の直径を有する中空微小針(この針は、尖点テーパー状にならない)は、本明細書中で「微小管」といわれる。本明細書中で使用される場合、用語「微小針」は、他に示されない限り、微小管およびテーパー状の針の両方を含む。好ましい実施態様において、この微小針の直径は、微小針の基端で最大であり、そしてこの基部の遠位にある端部で尖点へテーパー状になる。この微小針はまた、まっすぐ(テーパー状になっていない)部分およびテーパー状の部分両方を含む軸を有するように製作され得る。
【0026】
この微小針は、垂直に環状断面を有するか、またはこの断面が非環状であり得るシャフトとともに形成され得る。例えば、この微小針の断面は、多角形(例えば、星型、四角、三角)、長方形、または別の形状であり得る。このシャフトは、1つ以上の孔を有し得る。この断面の寸法は、代表的には、約10nmと1mmとの間、好ましくは1ミクロンと200ミクロンとの間、およびより好ましくは10μmと100μmとの間である。外径は、代表的には、約10μmと約100μmとの間であり、そして内径は、代表的には、約3μmと約80μmとの間である。
【0027】
この微小針の長さは、代表的には、約1μmと1mmとの間、好ましくは10ミクロンと500ミクロンとの間、およびより好ましくは30μmと200μmとの間である。この長さは、特定の適用のために、挿入される部分と挿入されない部分の両方を考慮して選択される。微小針のアレイは、例えば、様々な長さ、外径、内径、断面の形状、およびこの微小針間の空間を有する微小針の混合を含み得る。
【0028】
この微小針は、基板に対して垂直またはある角度で配向され得る。好ましくは、この微小針は、基板に対して垂直に配向され、その結果、基板の単位面積当たりの微小針のよい大きな密度が提供される。微小針のアレイは、配向、高さ、または他のパラメーターを有する微小針の混合を含み得る。
【0029】
このデバイスの好ましい実施態様において、基板および/または微小針、ならびに他の構成要素は、可撓性の材料から形成されて、このデバイスが、このデバイスが適用される生物学的障壁(例えば、皮膚、脈管壁、または目)の輪郭に適合することを可能にする。可撓性デバイスは、使用の間のより一貫した貫入を容易にする。なぜなら、貫入は、装着表面における偏向により制限され得るからである。例えば、ヒトの皮膚の表面は、皮膚紋理(すなわち、小さなしわ)および毛に起因にして平坦ではない。
【0030】
(c.リザーバー)
微小針デバイスは、微小針と連絡するリザーバーを備え得る。このリザーバーは、任意の適切な手段によって基板に装着され得る。好ましい実施態様において、このリザーバーは、接着剤(例えば、グルー)を用いて、周縁部の周りの基板の後ろ(微小針の反対側)に装着される。ガスケットもまた、流体密封シールの形成を促進するために使用され得る。
【0031】
好ましい実施態様において、このリザーバーは、微小針を通じて送達するための薬物を含む。このリザーバーは、そこから輸送される薬物を含む、中空容器、有孔性マトリックス、または中実形態であり得る。このリザーバーは、そこに含まれる薬物または生物学的流体と適合性の種々の材料から形成され得る。好ましい材料としては、天然および合成のポリマー、金属、セラミックス、半導体、有機物質および複合体が挙げられる。
【0032】
この微小針デバイスは、送達される材料を選別するための、1つまたは複数のチャンバーを備え得る。複数のチャンバーを有する実施態様において、各々は、デバイスアレイの全てまたは一部の微小針との流体接続中にあり得る。1つの実施態様において、少なくとも2つのチャンバーは、保存中の分解を防止するかまたは最小化するために、薬物(例えば、ワクチンのような凍結乾燥した薬物)および投与ビヒクル(例えば、生理食塩水)を別々に含むように使用される。使用の直前に、チャンバーの内容物は混合される。混合は、任意の手段によって誘発され得、この手段としては、例えば、機械的破壊(すなわち、穿孔または破断)、孔隙率の変更、またはチャンバーを分離する壁もしくは膜の電気化学的分解が挙げられる。別の実施態様において、単一のデバイスが使用されて、異なる薬物が送達され、この薬物は、異なるチャンバー内で別々に保存される。この実施態様において、各薬物の送達速度は、独立して制御され得る。
【0033】
好ましい実施態様において、このリザーバーは、微小針に直接接触するべきであり、かつ薬物がリザーバーを出て中空または有孔性微小針の内部に流れ得る穴を有するべきである。別の好ましい実施態様において、このリザーバーは、薬物をリザーバーから輸送しそして皮膚表面上に輸送することを可能にする穴を有する。そこから、薬物は、中空または有孔性微小針のいずれかを通って、中実の微小針の側面に沿って皮膚に輸送されるか、または微小針によって皮膚に作製された経路を通って皮膚に輸送される。
【0034】
(d.輸送制御構成要素)
微小針デバイスはまた、有用な速度で障壁を通過して材料を輸送し得なければならない。例えば、この微小デバイスは、治療的に有用であるに十分な速度で、皮膚を通過して薬物を送達し得なければならない。このデバイスは、プログラムされたスケジュールに従ってか、または患者、保健医療専門者、もしくはバイオセンサとの能動的なインターフェースを通じてかのいずれかで送達速度を制御する、マイクロエレクトロニクスおよび他の微細機械加工構造を有するハウジングを備え得る。この速度は、種々の要因を操作する事によって制御され得、この要因としては、以下が挙げられる:送達される薬物処方の特徴(例えば、その粘度、電荷、および化学組成);各微小針の寸法(例えば、その外径および有孔性開口部または中空開口部の面積);デバイス中の微小針の数;駆動力の適用(例えば、濃度勾配、電圧勾配、圧力勾配);ならびに弁の使用。
【0035】
この速度はまた、リザーバー中の薬物と、微小針の基端の開口部との間にそれらの拡散特徴について選択されたポリマーまたは他の材料を置くことによって制御され得る。例えば、材料の組成および層の厚さは、当該分野で公知の方法を使用して操作されて、その材料を通る目的の薬物の拡散速度を変化させ、それにより、薬物がリザーバーから微小針を通り、そして組織に流れる速度を制御し得る。
【0036】
微小針を通る分子の輸送は、例えば、弁、ポンプ、センサー、作動装置、およびマイクロプロセッサーの様々な組み合わせを用いて制御またはモニターされ得る。これらの構成要素は、標準的な製造または微小製作技術を用いて生産され得る。本明細書中に開示される微小針デバイスに有用であり得る作動装置としては、微小ポンプ、微小弁、およびポジショナーが挙げられる。好ましい実施態様において、マイクロプロセッサーは、ポンプまたは弁を制御し、それにより送達速度を制御するようにプログラムされる。
【0037】
微小針を通る分子の流れは、拡散、毛細管作用に基づいて生じ得るか、または従来の機械的ポンプもしくは非機械的駆動力(例えば、電気浸透もしくは電気泳動)または対流を使用して誘導され得る。例えば、電気浸透において、電極は、生物学的障壁表面、1つ以上の微小針、および/またはこの微小針に隣接する基板上に配置されて、反対荷電のイオン種および/または中性分子を、生物学的障壁に向かって、またはその中へ運ぶ、対流を作製する。好ましい実施態様において、微小針デバイスは、電場、超音波、化学増強剤、減圧ウイルス、pH、熱、および/または光を用いて、例えば、細胞の取り込みもしくは膜の破壊を増加させることによって、生物学的障壁の浸透性を増強する別の機構と組み合わせて使用される。
【0038】
微小針の通過、またはこの微小針を介して輸送される薬物は、微小針表面を成形することによって、または微小針表面を形成する材料の選択によって操作され得る(これは、微小針自体よりはむしろコーティングであり得る)。例えば、微小針の外表面上の1つ以上の溝は、特に流体状態の薬物の通過を指向するように使用され得る。あるいは、この微小針の物理的な表面特徴は、例えば、親水性または疎水性を制御することによって、この微小針の表面にそった物質の輸送を促進するかまたは阻害するかのいずれかのように操作され得る。
【0039】
分子の流れは、広範な種々の弁またはゲートを用いて調節され得る。これらの弁は、選択的かつ反復的に開口かつ閉口される型であり得るか、またはそれらは単回使用型であり得る。例えば、使い捨ての単回使用薬物送達デバイス、破砕可能な障壁、または一方向ゲートは、リザーバーと微小針の開口部との間でデバイスに挿入され得る。使用の準備時に、この障壁が破壊されるかまたはゲートが開口されて、微小針を通る流れを可能にし得る。微小針デバイスに使用される他の弁またはゲートは、熱的に、電気化学的に、機械的に、または磁性的に活性化されて、この針を通る分子の流れを、選択的に開始するか、調節するか、また停止し得る。好ましい実施態様において、流れは、「弁」として速度制限膜を使用することによって制御される。
【0040】
微小針デバイスはさらに、微小針を通過する流れをモニターし、そしてポンプおよび弁の使用を同調させるためのフローメーターまたは他の手段を供え得る。
【0041】
(e.センサー)
有用なセンサーとしては、圧力、温度、化学物質、および/または電磁場のセンサーが挙げられ得る。バイオセンサーは、微小針の表面上、中空もしくは有孔性微小針の内側、または微小針(中実、中空、または有孔性)を介して身体組織と連絡するデバイスの内側に配置され得る。これらの微小針バイオセンサーは、4つのクラスの主な変換器(principal transducer)(電位測定、電流滴定、光学、および物理化学)を備え得る。電流滴定センサーは、電子が、生物学的系と電極との間で交換されるときに生成される電流をモニターする。血中グルコースセンサーは、このよくある型である。
【0042】
微小針は、流体、溶質、電荷、光、または他の材料の導管として機能し得る。1つの実施態様において、中空微小針は、それと関連する感知機能を有する物質(例えば、ゲル)を充填され得る。基質への結合または酵素によって媒介される反応に基づいて感知するための適用において、この基質または酵素は、この針の内部に固定化され得、これは、一体型針/センサーを作製する有孔性針において特に有用である。
【0043】
導波管は、光を特定の位置に指向させるように、または例えば、色の評価のためのpH色素のような手段を用いる検出のために、微小針デバイスに取り込まれ得る。同様に、熱、電気、光、または他のエネルギー形態は、特定の組織を直接刺激、損傷、または治癒するために、あるいは間接的に(例えば、褐色肌の人物のための刺青の除去)、または診断目的(例えば、IRスペクトルに基づくかまたはクロマトグラフィー手段(適切な基質と組み合わせて、固定化した酸化グルコースの存在下の色変化を測定する)による血中グルコースの測定)のために、正確に伝達され得る。
【0044】
(f.付着特性)
襟部およびフランジはまた、このデバイスに、例えば、その基板または基部の周囲に提供され得る。これは好ましくは、デバイスに付着するが、代替的には、例えば「オーバーサイズ」基板の中心のごく近くに微小針を形成することによって、基板の一体型部分として形成され得る。襟部はまた、デバイスの他の部分から生じ得る。襟部は、デバイスの残部に対して微小針アレイを装着するための界面を提供し、そしてより小型のデバイスの操作を容易にし得る。
【0045】
好ましい実施態様において、微小針デバイスは、生物学的障壁の表面にデバイスを一時的に固定するような接着剤を含む。この接着剤は、この生物学的障壁との接触を容易にするために、本質的にデバイス上の任意の場所にあり得る。例えば、接着剤は、襟部の表面(微小針と同側)上にあり得るか、微小針間の基板表面(微小針の基部の近く)上にあり得るか、またはそれらの組み合わせであり得る。
【図面の簡単な説明】
【0046】
【図1】図1は、ヒト皮膚に挿入された微小針デバイスの好ましい実施態様の側立面図である。
【図2A】図2Aは、微小針を作製するための方法の側面断面図である。
【図2B】図2Bは、微小針を作製するための方法の側面断面図である。
【図2C】図2Cは、微小針を作製するための方法の側面断面図である。
【図2D】図2Dは、微小針を作製するための方法の側面断面図である。
【図2E】図2Eは、微小針を作製するための方法の側面断面図である。
【図3A】図3Aは、中空微小針を作製するための方法の側面断面図である。
【図3B】図3Bは、中空微小針を作製するための方法の側面断面図である。
【図3C】図3Cは、中空微小針を作製するための方法の側面断面図である。
【図3D】図3Dは、中空微小針を作製するための方法の側面断面図である。
【図3E】図3Eは、中空微小針を作製するための方法の側面断面図である。
【図3F】図3Fは、中空微小針を作製するための方法の側面断面図である。
【図3G】図3Gは、中空微小針を作製するための方法の側面断面図である。
【図4A】図4Aは、中空微小針を作製するための好ましい方法を例示する側面断面図である。
【図4B】図4Bは、中空微小針を作製するための好ましい方法を例示する側面断面図である。
【図4C】図4Cは、中空微小針を作製するための好ましい方法を例示する側面断面図である。
【図4D】図4Dは、中空微小針を作製するための好ましい方法を例示する側面断面図である。
【図5】図5A〜Dは、中空シリコン微小管を作製するための好ましい方法を例示する側面断面図である。
【図6】図6A〜Eは、中空金属微小管を作製するための好ましい方法を例示する側面断面図である。
【図7A】図7Aは、テーパー状の金属微小管を作製するための好ましい方法を例示する側面断面図である。
【図7B】図7Bは、テーパー状の金属微小管を作製するための好ましい方法を例示する側面断面図である。
【図7C】図7Cは、テーパー状の金属微小管を作製するための好ましい方法を例示する側面断面図である。
【図7D】図7Dは、テーパー状の金属微小管を作製するための好ましい方法を例示する側面断面図である。
【図8A】図8Aは、レーザーによって形成されたモールドを使用してテーパー状の微小針を作製するための方法を例示する側面断面図である。
【図8B】図8Bは、レーザーによって形成されたモールドを使用してテーパー状の微小針を作製するための方法を例示する側面断面図である。
【図8C】図8Cは、レーザーによって形成されたモールドを使用してテーパー状の微小針を作製するための方法を例示する側面断面図である。
【図8D】図8Dは、レーザーによって形成されたモールドを使用してテーパー状の微小針を作製するための方法を例示する側面断面図である。
【図9A】図9Aは、レーザーによって形成されたモールドを使用してテーパー状の微小針を作製するための第2の方法を例示する側面断面図である。
【図9B】図9Bは、レーザーによって形成されたモールドを使用してテーパー状の微小針を作製するための第2の方法を例示する側面断面図である。
【図9C】図9Cは、レーザーによって形成されたモールドを使用してテーパー状の微小針を作製するための第2の方法を例示する側面断面図である。
【図9D】図9Dは、レーザーによって形成されたモールドを使用してテーパー状の微小針を作製するための第2の方法を例示する側面断面図である。
【図9E】図9Eは、レーザーによって形成されたモールドを使用してテーパー状の微小針を作製するための第2の方法を例示する側面断面図である。
【図9F】図9Fは、レーザーによって形成されたモールドを使用してテーパー状の微小針を作製するための第2の方法を例示する側面断面図である。
【0047】
(g.経皮微小針デバイス)
図1は、皮膚内に挿入された微小針デバイスの好ましい実施態様の例示の側面立面図である。デバイス10は、複数の微小針12が突出する上部または基板11を備える。上部11の高さは、約1μmと1cmとの間であり、そしてこの上部の幅は、約1mmと10cmとの間である。このデバイスの上部11は、中実または中空であり得、そして複数の区画を備え得る。薬物送達のための好ましい実施態様において、上部11は送達される1以上の薬物を含む。この上部が、薬物または他の分子の輸送を駆動(その動力を提供/指示)する1以上のセンサーおよび/または装置(例えば、ポンプまたは電極)を備えることも、または好ましい。
【0048】
微小針12の高さ(または長さ)は、ほぼ約1μmと1mmとの間である。直径および長さの両方が、この針の痛みおよび機能特性に影響する。経皮適用において、微小針12の「挿入の深さ」は、好ましくは約100μm未満、より好ましくは約30μmであり、その結果、角質層14を経る皮膚内への微小針12の挿入は、(以下に議論されるように)表皮16を通って真皮18に貫入せず、それにより、これは神経との接触を回避し、かつ痛みの発生の可能性を減少する。このような適用において、先端から遠位の微小針部分が皮膚内に挿入され得ないために、微小針の実際の長さはより長くあり得;その非挿入部の長さは、特定のデバイスの設計および形態に依存する。微小針12の実際(全体)の高さまたは長さは、挿入の深さプラス非挿入部の長さに等しくあるべきである。
【0049】
各微小針12の直径は、ほぼ約10nmと1mmとの間であり、好ましくは、(微小針の挿入および引き抜きの後)少なくとも約1μm未満の穴の残存を残し、細菌がその貫入部の創傷に入り込むのを可能にする穴を作製することを回避する。実際の微小針直径は、1μmより大きいはずである。なぜなら、その穴は、微小針を引き抜いた後におそらく収縮するからである。微小針12の直径は、より好ましくは約1μm〜100μmである。より長い直径およびより長い微小針は、微小針が所望の深さまで生物学的障壁に貫入し、そして微小針を引きぬいた後に皮膚または他の組織に残存する穴が、十分に小さい、好ましくは細菌の侵入を排除するのに十分に小さい限り、受容可能である。微小針12は、中実または有孔性であり得、そして上部11に接続される1以上の孔を備え得る。
【0050】
(3.微小針デバイスを作製する方法)
微小針デバイスは、微細製作プロセスによって、シリコン、金属、ポリマー、および他の材料で小型機械構造を作製することによって、作製される。これらの微細製作プロセスは、微細機械加工の分野で使用されるさらなる方法によって増強された、集積回路、エレクトロニックパッケージングおよび他のマイクロエレクトロニックデバイスを作製するために使用される十分に確立された方法に基づく。微小針デバイスは、数ナノメーター程度に小さい寸法を有し、そして低い1ユニットあたりのコストで、大量生産され得る。
【0051】
(a.微小製作プロセス)
本明細書中に開示される微小針を作製する際に使用され得る微細製作プロセスとしては、リソグラフィー;エッチング技術(例えば、湿式化学、ドライ、およびフォトレジスト除去);シリコンの熱酸化;電気めっきおよび非電気めっき;拡散プロセス(例えば、ボロン、リン、砒素、およびアンチモンの拡散);イオン注入;フィルム蒸着(例えば、エバポレーション(フィラメント、電子ビーム、フラッシュならびにシャドーイングおよびステップカバレッジ)、スパッタリング、化学蒸着(CVD)、エピタキシー(蒸気相、液相、および分子ビーム)、電気めっき、スクリーン印刷、ラミネーション、ステレオリソグラフィー、レーザー加工、およびレーザー切除(投射削摩を含む))が挙げられる。一般に、Jaeger,Introduction to Microelectronic Fabrication(Addison−Wesley Publishing Co.,Reading MA 1988);Runyan,ら、Semiconductor Integrated Circuit Processing Technology(Addison−Wesley Publishing Co.,Reading MA 1990);Proceedings of the IEEE Micro Electro Mechanical Systems Conference 1987−1998;Rai−Choudhury編、Handbook of Microlithography,Micromachining & Microfabrication(SSPIE Optical Engineering Press,Bellingham,WA 1997)を参照のこと。
【0052】
以下の方法は、微小針を作製するために好ましい。
【0053】
(i シリコンの電気化学的エッチング)
この方法において、固体のシリコンの有孔性シリコンへの電気化学的エッチングを使用して、穿孔構造として使用され得る極微細な(0.01μmオーダーの)シリコン網を作製する。この方法は、フッ化水素酸水溶液中での、強力に光と組合せたシリコンの電解アノード酸化を使用して、チャネルをシリコン内にエッチングする。エッチングさせるシリコンウェーハのドーピング濃度、エッチング中の電解電位、入射光強度、および電解質濃度を変化させることによって、最終的な細孔構造の制御が達成され得る。エッチングされない材料(すなわち、残ったシリコン)は、微小針を形成する。この方法は、数十ナノメーター幅のを計測する不規則な針型構造を作製するために使用されている。
【0054】
(ii プラズマエッチング)
この処理は、シリコンの深いプラズマエッチングを使用して、0.1μm以上のオーダーの直径を有する微小針を作製する。針は、電圧(電気化学的エッチングの場合のような)を制御することによって間接的にパターン形成するよりむしろ、リソグラフィーを使用して直接的にパターン形成して、従って、最終的な微小針形状のさらなる制御を提供する。
【0055】
この処理において、適切なマスキング材料(例えば、金属)を、シリコンウェーハ基板上に体積し、そして所望の微小針の直径を有するドットへパターン形成する。次いで、ウェーハを、フッ素/酸素化学に基づいた注意深く制御されたプラズマに供し、非常に深い、高いアスペクト比の溝をシリコンにエッチングする。例えば、Jansen,ら、「The Black Silicon Method IV:The Fabrication of Three−Dimensional Structures in Silicon with High Aspect Ratios for Scanning Probe Microscopy and Other Applications」IEEE Proceedings of Micro Electro Mechanical Systems Conference 88−93頁(1995)を参照のこと。金属マスクに保護されたこれらの領域は、針を維持および形成する。この方法は、以下の実施例1にさらに記載する。
【0056】
(iii 電気めっき)
この処理において、金属層を、最初に平面構造上にエバポレートする。次いで、フォトレジストの層をこの金属上に堆積させて、針の形状において露出された金属領域を残すようにパターン形成したモールドを形成する。金属シード層の露出された領域上への電気めっきによって、フォトレジストによって区画されたモールドは、電気めっき材料で満たされ得る。最終的に、基板およびフォトレジストモールドを取り除き、最終的な微小針アレイを残す。この処理によって作製された微小針はほぼ、1μm以上のオーダーの直径を有する。例えば、Frazier,ら、「Two Dimensional metallic microelectrode arrays for extracellular stimulation and recording of neurons」IEEE Proceeding of the Micro Electro Mechanical Systems Conference 195−200頁(1993)を参照のこと。
【0057】
(iv 他の処理)
シリコンまたは他の材料から作製される微小針を形成するための別の方法は、成形フォームを作製するためのリソグラフィー、プラズマエッチング、またはレーザー切除のような微細製作技術の使用(A)、エンボスまたは射出成形のような標準的な移送成形技術を使用する、この成形フォームの他の材料への移送(B)、および最終的な微小針を作製するための新しく作製されたモールド(B)を使用する、元の成形フォーム(A)の形状の再生(C)である。あるいは、成形フォームの作製(A)を省略し得、そしてモールド(B)を直接的に微細製作し得、次いで、これを最終的な微小針(C)を作製するために使用し得る。
【0058】
中実のシリコン微小針を形成する別の方法は、Containerless Research,Inc.(Evanston,Illinois,USA)がこの製品に利用するような、シリコン基板上でのエピタキシャル生長を使用することによる。
【0059】
(b.中空または有孔性微小針)
好ましい実施態様において、材料が輸送され得る、細孔または他の経路を有する微小針が、作製される。以下の記載は、有孔性または中空の微小針のいずれかを製作するための代表的な方法を概略する。
【0060】
(i 有孔性微小針)
針の長さにわたって単一の、厳密に規定された穴を有するよりむしろ、有孔性の針は、針のシャフトを通って流体またはエネルギーの伝達を可能にする、チャネルまたは孔の網で満たされる。シリコンの適切な電気化学的酸化によって、高いアスペクト比および異なる孔サイズレジームの範囲を有する孔アレイが形成され得;これらの孔レジームは、(1)2nm未満の平均の孔寸法を有する細孔性レジーム、(2)2nm〜50nmの間の平均の孔サイズを有する中間細孔性レジーム、および50nmより大きい細孔を有するマクロ孔性レジーム(3)として定義されることが示されている。中間細孔性およびマクロ孔性レジームは、薬物送達に最も有用であると予想される。有孔性の針に対して2つのアプローチが、一般的に利用可能であり、これらは、(a)シリコンウェーハを最初に有孔性にして、次いで針を形成するために上記のようにエッチングするか、または(b)中実の微小針をエッチングして、次いで例えば、電気化学的酸化(例えば、フッ化水素酸電解質中でのシリコン基板のアノード酸化による)によって有孔性にするかのいずれかである。エッチングされた有孔構造のサイズ分布は、いくつかの変因(ドーピングの種類および照明条件を含む)に高度に依存し、これはLehmann、「Porous Silicon−−A New Material for MEMS」、IEEE Proceeding of Micro Electro Mechanical Systems Conference 1−6(1996)に詳述される。有孔性のポリマー性または金属性微小針は、例えば、そのポリマーまたは金属中に分散された揮発性または浸出性材料(例えば、揮発性塩)を含むポリマーの微小モールディング、次いで、この分散された材料の揮発または浸出、微小針の形状中へのこの有孔性ポリマーマトリックスの残存によって形成され得る。
【0061】
(ii 中空針)
中空微小針の三次元アレイは、例えば、乾燥エッチング処理(Laermerら、「Bosch Deep Silicon Etching:Improving Uniformity and Etch Rate for Advanced MEMS Applications,」Micro Electro Mechanical Systems,Orland,Fl,USA(Jan,17−21,1999);Despontら、「High−Aspect−Ratio,Ultrathick,Negative−Tone Near−UV Photoresist for MEMS」Proc.of IEEE 10th Annual International Workshop on MEMS,Nagoya,Japan,、518−522頁(Jan.26−30,1997));リソグラフィー規定および/またはレーザー切除されたポリマーにおける微小モールドの作製および選択的な側壁電気めっき;またはエポキシ移送成形を使用する直接的な微小モールディング技術を使用して、製作される。
【0062】
1以上の直接かつ連続した経路は、微小針の内部を通って作製される。好ましい実施態様において、微小針は、微小針の中軸に沿った単一の環状空間経路を有する。この経路は、最初に材料中の穴の化学的または物理的エッチング、次いでこの穴の周辺の微小針のエッチングによって達成され得る。あるいは、微小針およびこれらの穴は同時に作製され得るか、または穴は、既存の微小針内にエッチングされ得る。別の選択枝として、微小針の形態またはモールドが作製され、次いで被覆され、次いでエッチングされて、これによって中空の微小針を形成するための外部被覆のみを残存し得る。被覆は、フィルムの堆積または特定の厚さのシリコン微小針の酸化のいずれか、その後の内部シリコンの除去によって形成され得る。また、ウェーハの背面から中空針の下側までの穴は、前面から背面への赤外線による位置合わせの使用、それに続くウェーハの背面のエッチングによって作製され得る。
【0063】
(a シリコン微小針)
中空の針の製作のための1つの方法は、中実の針の形成において使用された中実のマスクの、除去された中実形状の1以上のその内部領域を有する中実形状を含むマスクによる置換である。1つの例は、「ドーナツ形状」マスクである。この型のマスクを使用して、針の内部領域を、その側壁と同時にエッチングする。針の内側壁の側面のエッチングに起因して、これは、十分にシャープな壁を作製しないかもしれない。この場合において、2つのプラズマエッチングが利用され得、一方は微小針の外壁を形成し(すなわち、「標準的」エッチング)、そして一方は内部の中空のコアを形成する(これは、極めて異方性のエッチングである(例えば、誘導結合プラズマ「ICP」エッチング))。例えば、ICPエッチングを使用して、針の内部領域を形成し、次いで、第二のリソグラフィー工程および標準的エッチングによって針の外壁を形成し得る。図2aは、シリコンウェーハ82を示し、これは、このウェーハ82の頂部にパターン形成されたフォトレジスト層84を有する。ウェーハ82は、異方的にエッチングされ(図2b)、その厚さ全体を通る空洞86を形成する(図2c)。次いで、ウェーハ82は、クロム層88で被覆され、次いで第二のフォトレジスト層90が、空洞86を覆い、そして引き続くエッチングのための円形マスクを形成するようにパターン形成される(図2d)。次いで、ウェーハ82は、標準的エッチングによってエッチングされ、微小針のテーパー状外壁92を形成する(図2e)。
【0064】
あるいは、この構造は、実施例1に記載の中実の微小針のために使用されたクロムマスクを、(図3aに示されるように堆積して、そして図3bに示されるようにパターン形成した)クロム96を被覆したシリコン基板95上の窒化ケイ素層94で置換することによって達成され得る。次いで、中実の微小針を図3cに示すように実施例1に記載のようにエッチングし、クロム96をストリップし(図3d)、そしてシリコン95を酸化して、全ての露出されたシリコン表面上の二酸化ケイ素の薄層97を形成する(図3e)。窒化ケイ素層94は針の先端の酸化を防止する。次いで、窒化ケイ素層94をストリップし(図3f)、これによって、針の先端で露出したシリコンが、および他の全ての領域で酸化被覆ケイ素97が残存する。次いで、針をICPプラズマに対して曝露する。これは、高度に異方性の様式でシリコンの内部側壁95を選択的にエッチングして、針の内部の穴を形成する(図3g)。
【0065】
別の方法は、「形態」として以前に記載された中実のシリコン針を使用する。これは、この周囲に実際の針構造が堆積される。堆積後、この形態は、エッチングされ、中空の構造を生じる。シリカ針または金属針は、異なる方法を使用して形成され得る。シリカ針は、上記の酸化前に上記のICP針と類似の針構造を作製することによって形成され得る。次いで、ウェーハは、制御された厚さに酸化され、これは、最終的に中空の微小針になる針形態のシャフト上の層を形成する。次いで、窒化ケイ素をストリップし、そしてシリコンコアを選択的にエッチングして(例えば、湿潤アルカリ溶液中で)、中空のシリカ微小針を形成する。
【0066】
好ましい実施態様において、中空のシリコン微小管のアレイを、以下の実施例3に記載のような、従来の反応性イオンエッチング機に改変黒色シリコン処理を組合せた、反応性イオンマクロエッチング(deep reactive ion etching)を使用して作製される。最初に、円形穴のアレイを、SiO2(例えば、シリコンウェーハ上の)内にフォトレジストによってパターン形成する。次いで、シリコンを、誘導結合プラズマ(ICP)反応機中で反応性イオンマクロエッチング(DRIE)を使用してエッチングし、深い垂直方向の穴をエッチングし得る。次いで、フォトレジストを除去する。次に、第二のリソグラフィー工程によって、残存するSiO2層を穴に対して同心の円にパターン形成し、これは、穴の周辺に環形状の酸化物マスクを生じる。次いで、フォトレジストを除去し、そしてシリコンウェーハを再度、シリコンマクロエッチングして、この結果、この穴はウェーハ(SiO2環の内部)全体に完全にエッチングされ、そして同時にシリコンは、SiO2環の周囲にエッチングされて円柱状を残す。
【0067】
後者の処理を改変して、中空のテーパ状の微小針を作製し得る。穴のアレイが上記のように製作された後、フォトレジストおよびSiO2層を、等角DCスパッタリングに供したクロム環と置換する。第二のICPエッチングは、反応性イオンエッチング機(RIE)においてSF6/O2プラズマエッチングと置換する。これは、正に傾く外側面を生じる。Henryら,「Micromachined Needles for the Transdermal Delivery of Drugs」、Micro Electro Mechanical Systems,Heidelberg,Germany,494−498頁(Jan.26−29,1998)。
【0068】
(b.金属微小針)
金属針は、中実の針形態上に適切な金属層の物理的蒸着によって形成され得る。この針形態は、上記の技術を使用してシリコンから作製され得るか、またはエンボスまたは射出成形のような他の標準的な成形技術を使用して形成され得る。金属は、電気的研磨技術を使用して針の先端から選択的に除去され、この技術において、電解質溶液中で印加されたアノード電位は、先鋭点での電場線の濃度に起因して、その先鋭点でより迅速な金属の溶解を生じる。一旦基本となるシリコン針形態がその先端で露出されると、シリコンが選択的にエッチングされて、中空の金属針構造を形成する。この処理をまた使用して、針形態上の金属以外の材料の堆積、および上記の手順に従って、他の材料から形成される中空の針を作製し得る。
【0069】
中空の金属微小針を製作する好ましい方法は、以下および実施例4および5に記載のような、微小モールド平版技術を利用する。乾燥シリコンエッチングを必要としない、金属微小管を作製するための方法において、光規定された(photo−defined)モールドが、最初に作製され、これは、例えば、エポキシ(例えば、SU−8)厚層(代表的には150μm)の、薄い犠牲層(代表的には、約10〜50nm)でコートされた基板上への、スピンキャスティングによる。次いで、円柱状の穴のアレイを、エポキシ層(代表的には、約150μm厚である)全体にリソグラフィー的に規定する(Despontら、「High−Aspect−Ratio,Ultrathick,Negative−Tone Near−UV Photoresist for MEMS」Proc.of IEEE 10th Annual International Workshop on MEMS,Nagoya,Japan,518−522頁(Jan.26−30,1997))。これらの円柱状の穴の直径は、管の外側の直径を規定する。次いで、基板の上面である、犠牲層を、フォトレジストの円柱状の穴の底部で部分的に除去する。選択される正確な方法は、基板の選択に依存する。例えば、この処理はシリコンおよびガラス基板上(ここにおいて、上面が等方性の湿潤または乾燥エッチング技術を使用してエッチングされる)ならびに銅被覆がプリントされた制御盤基板で首尾よく実施される。後者の場合、銅積層は、湿潤エッチングを使用して選択的に除去される。次いで、シード層(例えば、Ti/Cu/Ti(例えば、30nm/200nm/30nm))が、エポキシモールドの上面および円柱状の穴の側壁上に立体的にDCスパッタリング堆積される。このシード層は、基板から電気的に分離されるべきである。続いて、1以上の電気めっき金属または合金(例えば、Ni、NiFe、Au、Cu、またはTi)は、シード層上に電気めっきされる。次いで、周囲のエポキシが除去され、これによって、管の周辺の基部金属全体に広がる内部の環状の穴を各々有する微小管が残る。電気めっきの速度および継続時間は、微小管の壁の厚さおよび内径を規定するために制御される。1つの実施態様において、この方法を使用して、約150と250μmとの間の高さ、約40と120μmとの間の外径、および約30と110μmとの間の内径(すなわち、10μmの壁厚)を有する微小管を作製した。代表的なアレイにおいて、微小管は、約150μmの中心間間隔の管を有するが、所望の針密度に依存して変化し得る。
【0070】
この方法の改変は、テーパ状微小針を形成するのに好ましい。上記のように、リソグラフィーによって、垂直側壁を有する穴がエポキシに生じ、この結果、微小針の生じたシャフトは、直線であり、テーパ状ではない。この垂直側壁の制限は、既存の3D構造をモールディングすること(すなわち、モールドインサート)によって克服され得る。この後のモールドインサートの除去によってモールドを生じ、これは、上記のリソグラフィーによって作製された穴と同様に平面がめっきされ得る。
【0071】
あるいは、非垂直側壁は、電気めっきを行うポリマーモールドに直接的に作製され得る。例えば、当業者に公知の従来のフォトレジストは、マスクにすぐ隣接する表面を他の表面よりも広くするための方法と同じ方法で、露出および現像され得る。グレースケールマスクと組合せた特異化されたグレースケールフォトレジストは、同じ効果を達成し得る。レーザー切除去されたモールドは、例えば、ビームの光学的調整(連続的な穴の製作の場合)あるいは切除の間のレチクルまたはモールドの光学的調整(投射切除の場合)によって、テーパ状の側壁を用いて作製され得る。
【0072】
中空のテーパ状の微小針を形成するために、モールドインサートは、中実のシリコン微小針のアレイである。これは、Henryら,「Micromachined Needles for the Transdermal Delivery of Drugs」、Micro Electro Mechanical Systems,Heidelberg,Germany,Jan.26−29,494−498頁(1998)に記載されるように形成される。最初に、材料(例えば、エポキシ(例えば、SU−8またはポリジメチルシロキサン(「PDMS」))の層は、シリコン微小針のアレイ上にスピンキャスティングされ、完全にアレイ全体を覆う。エポキシは、予備ベーキング(pre−bake)の間静置し、シリコン針先端上に平面表面を作製し;次いで、この材料を完全に予備ベーキングして、リソグラフィー的に架橋し、そして後ベーキング(post−bake)する。
【0073】
次いで、エポキシの上面を、例えばO2/CHF3プラズマを用いて、針先端が露出され、好ましくは、エポキシから約1〜5μmの先端突出を生じるまで、エッチングする。次いで、シリコンを、例えば、SF6プラズマまたはHNO3/HF溶液を使用することによって、選択的に除去する。残存するエポキシ微小モールドは、微小針のネガであり、そして微小針の先端が以前に突出していた小さい直径の穴を有する。
【0074】
シリコンの除去後、シード層(例えば、Ti−Cu−Ti)を、エポキシ微小モールド上に立体的にスパッタリング堆積する。中空の金属微小管について記載される同じ処理手順に従って、1以上の電気めっき金属または合金(例えば、Ni、NiFe、Au、またはCu)がシード層上に電気めっきされる。最後に、エポキシを、例えばO2/CHF3プラズマを用いて除去し、中空の金属微小針のアレイを生じる。本出願におけるPDMSを使用する利点は、微小モールドが、機械的手段(例えば、ピーリング)によってシリコンモールドインサートを損傷することなくシリコンモールドインサートから物理的に除去され得、従って、シリコンモールドインサートの再利用もまた可能となる。さらに、電気めっきした微小針は、機械的手段(例えば、ピーリング)によってPDMSモールドから除去され得、それにより、PDMSの再利用が可能となる。好ましい実施態様において、この方法を使用して、約150と250μmとの間の高さ、約40と120μmとの間の外径、および約50と100μmとの間の内径を有する微小針を作製する。代表的なアレイにおいて、微小管は、約150μmの中心間間隔の管を有するが、所望の針密度に依存して変化し得る。この微小針は、高さ150μmであり、80μmの基部直径、10μmの先端直径、および150μmの針間間隔を有する。
【0075】
(c.二酸化ケイ素微小針)
二酸化ケイ素から形成された中空の微小針は、金属を堆積させるよりはむしろ、シリコン微小針形態(上記のような)の表面を酸化して、次いで中実の針形態をエッチングして中空の二酸化ケイ素構造を形成することによって作製され得る。この方法を、図4a〜4dに例示する。図4aは、先端にマスク28を有する針形態26のアレイ24を示す。図4bにおいて、この針形態26は、金属、二酸化ケイ素または他の材料の層30で被覆されている。図4cは、マスク28が除去された被覆された針形態26を示す。最後に、図4dにおいて、針形態26はエッチングされ、金属、二酸化ケイ素または他の材料から作製された、中空の層30を生じる。
【0076】
1つの実施態様において、中空、有孔性、または中実の微小針が、微小針の外表面に対して長手方向の溝または他の改変を有して提供される。例えば、溝は、微小針の外側に沿った分子の流れを指向するのに有効であるはずである。
【0077】
(d.ポリマー微小針)
好ましい方法において、ポリマー微小針は、微細製作モールドを使用して作製される。例えば、エポキシモールドは、上記のように作製され得、そして射出成形技術を適用して、そのモールドの微小針を形成し得る(Weberら、「Micromolding−a powerful tool for the large scale production of precise microstructures」,Proc.SPIE−International Soc.Optical Engineer.2879,156−167(1996);Schiftら、「Fabrication of replicated high precision insert elements for micro−optical bench arrangements」Proc.SPIE−International Soc.Optical Engineer.3513,122−134(1998))。これらの微小モールディング技術は、本明細書に記載の他の技術を超えて好ましい。なぜなら、これらは、それほど高価でない複製(すなわち、低コストの大量生産)を提供するからである。好ましい実施態様において、ポリマーは生分解性である。
【0078】
(4.微小針デバイス適用)
このデバイスは、生物学的障壁を横切って迅速に輸送するための、単一または複数の用途のために使用され得るか、または分子の長期間輸送のために長時間(例えば、数時間または数日)設置され得る。デバイスの寸法、適用部位、およびデバイスが生物学的障壁中(またはその上に)導入される経路に依存して、デバイスが使用されて、特定の位置で分子を導入または取り除き得る。
【0079】
上記のように、図1は、経皮適用における微小針デバイス10の好ましい実施態様の概略図の側面立面図を示す。このデバイス10は、微小針12が、角質層を貫通し、そして生存表皮に侵入するように皮膚に適用され、その結果、微小針の先端部は、少なくとも生存表皮に貫入する。好ましい実施態様において、上部11内のリザーバーにおける薬剤分子が、微小針を通って、または微小針の周囲に流れ、そして生存表皮中に流れ、次いで薬剤分子が局所処置または身体中に輸送するために真皮中に拡散する。
【0080】
微小針を通したデバイスからまたはデバイスへの物質の輸送を制御するために、種々の力または機構が利用され得る。これらには、圧力勾配、濃度勾配、電気、超音波、レセプター結合、熱、化学薬品および化学反応が挙げられる。機械的ゲートまたは上記の力および機構と組み合わせた他のゲートが使用され、物質の輸送を選択的に制御し得る。
【0081】
特定の実施態様において、このデバイスは、「使い勝手が良い」べきである。例えば、いくつかの経皮的適用において、このデバイスの皮膚への貼付は、比較的簡単にかつ特別な技術を必要としない。この微小針の実施態様は、内部のリザーバー中に薬物を含むハウジングへ付着させた微小針のアレイを含み得る。ここで、このハウジングは、微小針の周囲に生体接着性コーティングを有する。患者は、接着性コーティングを露出するために剥ぎ取り式の裏打ちを取り除き得、次いで、皮膚の清潔な部分上にデバイスを押し付け、例えば、数日の経過にわたって薬物を投与するためにそれを放置する。
【0082】
(a.薬物送達)
本質的に任意の薬物または他の生物活性薬剤を、これらのデバイスを使用して送達し得る。薬物は、タンパク質、酵素、ポリサッカライド、ポリヌクレオドの分子および合成の有機または無機の化合物であり得る。代表的な薬剤には、抗感染性薬剤、ホルモン(例えば、インスリン)、増殖調節因子、心臓の機能または血流を調節する薬物、ならびに痛みを制御する薬物があげられる。この薬物は、局所的処置または領域性もしくは全身性治療のためであり得る。以下は、代表的な例および処置に使用される障害である: カルシトニン、骨粗鬆症;エノキサプリン(Enoxaprin)、抗凝固薬;エタネルセプト(Etanercept)、慢性関節リウマチ;エリトロポイエチン、貧血;フェンタニール、術後痛および慢性痛;フィルグラスティン(Filgrastin)、化学療法からの低白血球;ヘパリン、抗凝固薬;インスリン、ヒト糖尿病;インターフェロン β 1a、多発性硬化症;リドカイン、局所麻酔;ソマトロピン、成長ホルモン;ならびにスマトリプタン、片頭痛。
【0083】
この方法において、多くの薬物が、種々の治療速度で送達され得る。この速度は、多くの設計要素(微小針の外径、各微小針の細孔またはチャネルの数およびサイズ、アレイ中の微小針の数、微小針を通る薬物を送達(driving)する力の適用の大きさおよび頻度、ならびに/あるいは微小針により作製される穴を含む)の変化により制御され得る。例えば、異なる速度で薬物を送達するように設計されたデバイスは、より早急な送達ためにより多くの微小針を有してもよいし、そしてより緩慢な送達のためにより少ない微小針を有しても良い。別の例として、種々の速度で薬物を送達するように設計されたデバイスは、例えば、使用者または担当医により予めプログラムされたか、または制御されたスケジュールに従って、輸送するために駆動力(例えば、ポンプにより制御された圧力勾配)を変化させ得る。このデバイスは、皮膚または他の組織に貼りつけられ、数秒から数時間もしくは数日にわたる治療期間の間、持続的にまたは断続的に薬物を送達し得る。
【0084】
当業者は、当該分野で公知のインビトロおよびインビボ方法を使用する特定の微小針デバイスについて薬物の送達の速度を測定し得る。例えば、経皮的薬物送達の速度を測定するために、標準的な拡散チャンバー上に載せたヒト死体の皮膚を使用して、先の実際の速度を予想し得る。HadgraftおよびGuy編、Transdermal Drug Delivery:Developmental Issues and Research Initiatives(Marcel Dekker、New York 1989);BronaughおよびMaibach、Percutaneous Absorption、Mechanisms−−Methodology−−Drug Delivery(Marcel Dekker、New York 1989)。生理食塩水で拡散チャンバーの真皮側の区画を満たした後、微小針アレイは、角質層中に挿入され;薬物溶液は、微小針デバイスのリザーバーに配置され;そして生理食塩水溶液のサンプルは、長時間採取され、そして薬物輸送の速度を決定するためにアッセイされる。
【0085】
代替の実施態様において、生分解性の微小針または非生分解性の微小針が、完全な薬物送達デバイスとして使用され得、ここで生分解性の微小針は、好ましい実施態様である。例えば、微小針は、局所または全身送達のための活性薬剤の分散を含む生分解性のポリマーから構成され得る。薬剤は、微小針の組成および形状、薬物および他の因子の濃度により決定されるプロフィールにより長時間放出され得る。この方法において、薬物リザーバは、微小針の一つ以上のマトリクス内に存在する。
【0086】
別の代替的な実施態様において、これらの微小針は、生物学的障壁を貫通した後、基板から故意に分割され得る。この方法において、微小針の一部は、生物学的障壁内またはその向こう側に残り得、そして微小針の一部およびそれらの基板は生物学的障壁から取り除かれ得る。皮膚の場合、これは、皮膚へアレイを挿入し、手でまたは他の方法で微小針の先端を折ることを含み得、次いで微小針の基部を取り除き得る。次いで、皮膚に、または別の生物学的障壁中かもしくはそれを横切って残ったままの微小針の部分は、微小針の組成および形状、薬物および他の因子の濃度により決定されるプロフィールによる時間の間、薬物を放出し得る。好ましい実施態様において、微小針は、生分解性ポリマーから作製され得る。生分解性微小針先端からの薬物の放出は、ポリマー分解の速度により制御され得る。微小針先端は、局所または全身性効果のための薬物、あるいは他の薬剤(例えば、芳香、昆虫忌避薬および日焼け止め)を放出し得る。
【0087】
微小針の形状および含有量は、微小針の破損を制御するように設計され得る。例えば、切り欠きが、製造時または続く工程としてのいずれかで微小針中に導入され得る。この方法において、微小針は、切り欠きの部位で優先的に破損する。さらに、微小針の折れる部分のサイズおよび形状は、特定の薬物放出パターンだけでなく、身体中の細胞との特定の相互作用に制御され得る。例えば、数ミクロンのサイズの目的物は、マクロファージにより取り込まれることが公知である。微小針の折れる部分は、マクロファージにより取り込まれるのを防ぐために、それよりもより大きいかもしくは小さいものであるよう制御され得るか、またはワクチンの送達のために望ましくあり得るマクロファージによる取り込みを促進するサイズであり得る。
【0088】
(b.体液の診断検知(バイオセンサー))
本明細書中に記載のデバイスの1つの実施態様を使用して、生物学的障壁を横切って身体から物質を取り除き得る(すなわち、最小侵襲性診断検知)。例えば、体液を組織の間質液からデバイス上部のリザーバ中へ輸送し得る。次いで、体液をリザーバ中でアッセイし得るか、または体液をリザーバから取りだし、診断または他の目的のためにアッセイし得る。例えば、間質液を、角質層を横切って表皮から取り出し、糖尿病の補助において、それらの必要とされるインスリン用量の決定の際に有用であるはずであるグルコース濃度についてアッセイし得る。検出に望ましい他の物質または特性は、乳酸(運動に重要である)、酸素、pH、アルコール、タバコ代謝産物および不法な薬物(医学的診断および法的執行の両方に重要である)を含む。
【0089】
検知デバイスは、一つ以上の微小針の中に存在するかもしくは一つ以上の微小針に取りつけられるか、または基板に適合されたハウジングの中に位置され得る。検知情報またはシグナルは、光学的に(例えば、屈折率)または電気的に(例えば、電気インピーダンス、電気抵抗、電流、電圧、またはそれらの組み合わせの変化を測定して)伝達され得る。例えば、電流または電圧に対する組織の抵抗の関数としての変化、またはチャネル結合もしくは他の判断基準(例えば、光学的変化)に対する応答の変化を測定することが有用であり得る。ここで、異なる抵抗は、より多いかまたは少ない薬物の流れが必要とされるというシグナルか、または送達が完了したというシグナルに較正される。
【0090】
一つの実施態様において、一つ以上の微小針デバイスは(1)間質液の回収、(2)体液のアッセイ、および/または(3)アッセイの結果に基づく適切な量の治療薬剤の、自動的または人的介入によるかのいずれかでの送達のために有用であり得る。例えば、センサー送達系は、例えば、体液を回収し、そのグルコース含量を測定し、そして適切な量のインスリンを送達する系を形成するために組み合わせられ得る。検知または送達工程はまた、微小針デバイスの使用と統合された従来技術を使用して実施され得る。例えば、微小針デバイスを使用して、回収し、そしてグルコースをアッセイし得、そしてインスリンの投与のために通常のシリンジおよび針を使用し得る(または、逆も真なり)。
【0091】
代替的な実施態様において、微小針は、上記のように生物学的障壁を貫通した後、意図的に基板から分離され得る。生物学的障壁の内部またはその向こう側に残ったままの微小針の部分は、一つ以上のバイオセンサーを含み得る。例えば、このセンサーは、その出力として色を変化させ得る。皮膚中に分離された微小針について、この色の変化は、視覚的な視診によるかまたは光学的装置の助けを借りて皮膚を通して観察され得る。
【0092】
薬物および生物学的分子の輸送の他に、微小針を使用して、他の物質またはエネルギー形態(例えば、光、電気、熱または圧力)を伝送または伝達し得る。例えば、この微小針を使用して、体内の特定の位置に光を指向させ得る。これは、光が、組織または中間物(例えば、光力学治療における光感受性分子)に対して、直接作用し得るためである。微小針をまた、例えば、鼻または頬の領域の粘膜表面もしくは肺系へのエアロゾル投与または直接的送達のために使用し得る。
【0093】
本明細書中に開示されるこの微小針デバイスはまた、皮膚以外の組織を横切る輸送を制御するために有用であるはずである。例えば、微小針を、例えば、結膜、強膜および/または角膜を横切って、眼への薬物の送達を促進するように眼の中へ挿入し得る。同様に、眼へ挿入される微小針は、眼からの体液の搬出を促進し得、このことは、緑内障の治療に有益であり得る。微小針をまた、頬粘膜(経口)、鼻粘膜、膣粘膜または他の接触可能な粘膜中に、それらの組織の中に、それらの組織からまたはそれらの組織を横切る輸送を促進するように、挿入し得る。例えば、薬物を口の中の局所処置のために、または全身的な取り込みおよび送達のために頬の粘膜を横切って送達され得る。別の例として、微小針デバイスを、例えば、経口的に摂取された薬物の取り込みを促進するように胃腸管の管壁(lining)または血管壁への薬物の浸透を促進するように血管の管壁上の身体内で内部的に使用され得る。例えば、心臓血管適用は、ステントと同様に、血管の拡大または固定化を促進するために微小針デバイスを使用することを含む。ここで、微小針/基板は、異なる組織セグメントへ貫入させるために「ステップルのような」デバイスとして機能し、そして組織の再生が可能になるまでの時間の間その相対的な位置を保持し得る。この適用は、生分解性デバイスを用いて特に有用であり得る。これらの使用は、微小針デバイスを身体内へ導入する侵襲的手順を含み得るか、または非侵襲的もしくは最小限の侵襲的様式でデバイスを飲み込こと、吸引すること、注入すること、または他の方法で導入することを含み得る。
【0094】
本発明は、以下の非限定的な実施例への参照を伴ってさらに理解される。
【0095】
(実施例1:中実シリコン微小針の製作)
クロムマスキング材料を、シリコンウェーハー上に堆積させ、そして所望の微小針の基部にほぼ等しい直径を有するドットにパターン化される。次いで、ウェーハーを反応性のイオンエッチング機(etcher)上に装填し、そしてフルオリン(fluorine)/酸素化学に基づく、注意深く制御されたプラズマに供され、シリコン中に非常に深い、高いアスペクト比の溝をエッチングする。金属マスクにより保護されたこれらの領域が残り、そして微小針を形成する。
【0096】
<100>−配向された、プライムグレードの、450〜550μmの厚さの
、10〜15Ω−cmシリコンウェーハー(Nova Electronic Materials Inc.、Richardson、TX)を開始物質として使用した。ウェーハーを、5部の容量の脱イオン水、1部の30%過酸化水素水、および1部の30%のアンモニウムヒドロオキシド(J.T.Baker、Phillipsburg、NJ)の溶液において約80℃にて15分間洗浄し、次いで炉(Blue M Electric,Watertown、WI)にて、150℃で10分間乾燥させた。約1000Åのクロム(Mat−Vac Technology、Flagler Beach、FL)を、DCスパッター(601Sputtering System、CVC Products、Rochester、NY)を使用してウェーハー上に堆積させた。クロム層を、以下に記載するリソグラフィーック処置を使用して、150μmの中心間間隔を有する直径80μmのドットの20×20のアレイにパターン化した。
【0097】
感光性物質の層(1827フォトレジスト、Shipley、Marlborough、MA)をシリコンウェーハーを覆うクロム層上に堆積させた。適切なドットアレイパターンを有する標準的リソグラフィックマスク(Telic、Santa Monica、CA)を、フォトレジスト層の頂部に位置付けた。次いで、ウェーハーおよびフォトレジストを、光学マスクアライナー(Hybralign Series 500、Optical Associates、Inc.、Milpitas、CA)によりマスクを通して紫外線(UV)光に露光させた。露光されたフォトレジストを、液体ディベロッパー(354ディベロッパー、Shipley、Marlborough、MA)中でウェハーを浸漬することにより取り除き、クロム層上の所望のドットアレイのフォトレジストを残した。続いて、ウェーハーをクロムエッチング液(etchant)(CR−75;Cyanteck Fremont、CA)中に浸漬して、フォトリソグラフィー工程の間中露光されたクロムをエッチングし、クロムのドットアレイ(フォトレジストで覆われた)をシリコンウェーハーの表面上に残す。クロムドット上になお存在するフォトレジストは、以下に記載の微小針の製作に必要なマスクを形成した。
【0098】
微小針は、University of Twenteで開発されたBlack Silicon Methodに基づく反応性イオンエッチング技術を使用して製作された。パターン化されたウェーハーを、ウェーハーとその基盤をなすプラテン(Apiezon N、K.J.Lesker、Clairton、PA)との間の良好な熱接触を保証するための手段を有する反応性イオンエッチャー(700シリーズウェーハー/バッチPlasma Processing System、Plasma Therm、St.Petersburg、FL)中でエッチングした。ウェーハーを、以下の気体および条件を用いてエッチングした:150mTorrの圧力、および約250分の実行時間中150Wの電力にて、SF6(20標準cm3/分)およびO2(15標準cm3/分)。これらの条件は、深い垂直方向のエッチングおよびわずかに横方向の予備エッチング(underetching)の両方を生じた。プラズマの形成に使用したSF6およびO2の気体の流速の比を制御することにより、微小針のアスペクト比を調整した。クロムマスクにより保護された領域が残り、そして微小針を形成した。エッチングは、予備エッチングに起因してマスクが剥がれるまで処理することを可能にし、鋭いシリコンスパイクのアレイを生じた。
【0099】
(実施例2:中実微小針を使用する経皮輸送)
微細製作された微小針を使用して、経皮薬物送達を増強し得るかどうかを決定するために、微小針のアレイを、深いプラズマエッチング技術を使用して作製した。それらの破壊することなくヒトの皮膚を貫く能力を試験し、そして経皮輸送において生じた変化を測定した。
【0100】
微小針のアレイを、極めて鋭い先端(曲率半径1μm未満)を有するように製作し、そして長さは約150μmである。皮膚表面が、皮膚紋理および毛に起因して平坦ではないため、これらの微小針の全長は、皮膚を貫かない。全ての実験は、室温で行なった(23±2℃)。
【0101】
次いで、微小針の皮膚を壊さずに貫く能力を試験した。皮膚へのアレイの挿入は、やさしく押すことのみを必要とする。光学顕微鏡および電子顕微鏡による検査は、アレイ中の95%より多くの微小針が、表皮サンプルの角質層を横切って貫いたことを示した。さらに、本質的に表皮を貫いた全ての微小針は、無傷のままだった。わずかに破壊したのもは、頂部の5〜10μmのみを損傷した。微小針アレイをまた、困難またはさらなる損傷もなく取り除き、そして複数回皮膚に再挿入し得た。
【0102】
経皮輸送を増加させる微小針の能力を定量的に評価するために、微小針アレイの挿入を伴ってか、または伴わずに、ヒト表皮のカルセイン(calcein)浸透性を測定した。正常な状況下での皮膚を横切るカルセインは非常に乏しく、従って、特に送達に困難な化合物であることを示す。予想どおり、無変更な皮膚を横切るカルセインの受動的浸透性は非常に低く、このことは、表皮サンプルが無傷であったことを示す。
【0103】
皮膚への微小針の挿入は、カルセインに対する浸透性を劇的に増加し得た。微小針を挿入し、皮膚に包埋したまま放置した場合、カルセインの浸透性は、1000倍を超えて増加した。10の微小針の挿入、続くそれらの除去により、ほぼ10,000倍の増加を生じた。最後に、1時間の微小針アレイの挿入、続くそれらの除去により、約25,000倍まで皮膚の浸透性が増加した。挿入、次いで除去された微小針での皮膚の浸透性は、包埋したまま残した微小針での皮膚に対する浸透性よりも高い。これは、おそらく微小針自体またはアレイを支えるシリコンプレートが、皮膚に作製された微小針の穴への接近をブロックし得るためである。光学顕微鏡は、微小針を取り除いた後に皮膚に残った穴が、約1μmの大きさであったことを示した。
【0104】
インビトロ実験において、皮膚の浸透性が、微小針により有意に増加され得ることを示したことを確認するために、ヒトボランティアを用いて研究を行なった。これらは、微小針が、前腕または手の皮膚に容易に挿入され得ることを示した。さらに、微小針アレイの挿入は、有痛性であることは全く報告されなかったが、時折、弱い圧力または皮膚に固定されたテープの一部の感覚として記載される軽い「磨耗(wearing)」感を誘発した。輸送実験は、インビボで行なわなかったが、皮膚の電気抵抗を、微小針の挿入前と挿入後に測定した。微小針は、皮膚の抵抗性に50倍の低下を生じ、この低下は、30ゲージの「大きな針」の挿入により引き起こされるのと類似であった。微小針の挿入直後の部位の検査は、光学顕微鏡により見ることのできる穴を示さなかった。微小針に対する紅斑、水腫または他の反応は、経過後の時間および日にわたって観察されなかった。これは、微小針アレイが、ヒト被験体において、痛みがなく、そして安全な様式において皮膚を透過させ得ることを示した。
【0105】
(実施例3:シリコン微小管の製作)
微小管の三次元アレイを、従来のリアクティブイオンエッチング剤における改変された黒シリコンプロセスと組み合わせた深いリアクティブイオンエッチングを使用して、シリコンから製作した。この製作プロセスを図5a〜dに例示する。初めに、40μmの直径の環状穴32のアレイを、フォトレジスト34を通じて、2インチのシリコンウェーハ38上の1μm厚のSiO2層36中にパターン化した(図5a)。次いで、このウェーハ38を、深い垂直穴40をエッチングする誘導結合プラズマ(ICP)リアクターにおいて、深いリアクティブイオンエッチング(DRIE)(Laermerら、「Bosch Deep Silicon Etching:Improving Uniformity and Etch Rate for Advanced MEMS Applications」Micro Electro Mechanical Systems、Orlando、Florida、USA(1999年1月17〜21日)を使用してエッチングした。深いシリコンエッチングを、穴40がシリコン基板38中におよそ200μmの深さにした後に停止し(図5b)、そしてフォトレジスト34を除去した。第2のフォトリソグラフィー工程は、その穴に同心性の丸中に残っているSIO2層36をパターン化し、それによってこの穴の周囲の環形状酸化マスク34を残した(図5c)。次いで、このフォトレジスト34を、除去し、そしてウェーハ38を再度深くシリコンエッチングし、一方同時に穴40を、ウェーハ38(SiO2リング内部)を通して完全にエッチングし、このシリコンをシリンダー42を残すSIO2環38の回りにエッチングした(図5d)。得られた管は、150μmの高さであり、80μmの外部直径、40μmの内部直径、および300μmの管の中心間の空間であった。
【0106】
(実施例4:金属微小管の微小モールド製作)
中空金属微小管を、エポキシの厚い光規定したモールドを使用して、ドライシリコンエッチングなしに調製した。この順序を図6a〜eに例示する。初めに、SU−8エポキシ44の厚層を、30nmのチタン48(犠牲層)でコーティングされたシリコンまたはガラス基板46上に回転鋳造した。次いで、円柱穴49のアレイを、エポキシ層44を通じて、代表的には150μmの厚さで光リソグラフィーで規定した(図6a)。次いで、犠牲層を、SU−8フォトレジスト46中の円柱穴の底にフッ化水素酸および水を含む湿式エッチング溶液を使用して部分的に取り外した(図6b)。次いで、Ti/Cu/Ti(30nm/200nm/30nm)39のシード層を、エポキシモールドの上方表面上に、および円柱穴49の側壁上に、一致してDCスパッター堆積した(図6c)。図6cに示されるように、このシード層39を、基板から電気的に単離した。引き続いて、NiFeを、シード層39上に電気めっきし(図6d)、エポキシ44を基板から除去し、そして周囲のエポキシ44が除去された(図6e)。得られた微小管は、200μmの高さで、80μmの外部直径、60μmの内部直径、および150μmの管の中心管の空間である。微小管の内側の穴は、この管を支持する基部金属を通じて押し出す。
【0107】
(実施例5:テーパ状の微小針の微小モールド製作)
テーパ状の壁を有する微小モールドを、既存の3−Dアレイ(すなわち、モールド挿入物)を鋳造すること、および続いてモールド挿入物を除去することによって製作した。次いで、この微小モールドを、実施例4に記載される微小管についての様式と同様の様式にて、表面めっきした。この製作の順序を図7a〜7dに例示する。
【0108】
初めに、中実シリコン微小針50のアレイを、Henryら、「Micromachined Needles for the Transdermal Delivery of Drugs」Micro Electro Mechanical Systems、Heidelberg、Germany、1月26〜29、494〜498頁(1998)に記載されるように調製した。次いで、エポキシ52(SU−8)の層を、微小針アレイ上に回転鋳造し、このアレイを完全に覆った(図7a)。エポキシ52を、微小針50の先端よりも上に平坦表面を生成するため予備的なベーキング中に置いた。次いで、エポキシ52を予め十分にベーキングし、光リソグラフィーで架橋し、そして後ベーキングした。
【0109】
次いで、エポキシ52の上方表面を、およそ1〜2μmの針の先端54が露出するまで、O2/CHF3プラズマを使用してどんどんエッチングし、エポキシ52から突出させた(図7b)。次いで、シリコンを、SF6プラズマを使用して選択的に除去した(図7c)。残っているエポキシモールド52は、シリコンの先端が突出した小さい直径の穴を有するネガティブな微小針を提供した。シリコンを除去した後に、Ti−Cu−Ti54のシード層を、エポキシ微小モールド52の頂部および側壁上に一致してスパッター堆積した。実施例4に記載されるような同じプロセスの順序の後に、次いで、NiFeをシード層54上に電気めっきした(図7c)。最後に、エポキシを、O2/CH3Fプラズマを使用して除去し、このことは、NiFe中空金属微小針54の20×20アレイを残した(図7d)。微小針54は、150μmの高さで80μmの基部直径、10μmの先端直径、および150μmの針から針の空間であった。
【0110】
微小モールドベースの微小針はまた、エポキシモールド材料がPDMSで置換されるプロセスを使用して首尾よく製造されている。この場合、唯一の物理的技術(例えば、ピーリング)を使用してモールド挿入物からモールドを、ならびにモールドから微小針を除去することが可能であった。このアプローチは、有利なことに、ドライエッチングを必要とせず、そしてモールドおよびモールド挿入物の両方をレスキューすることを可能にする。
【0111】
(実施例6:レーザーで形成されたモールドを使用するテーパ状の微小針の微小モールド製作)
テーパ状の壁を有する微小モールドを、レーザー切除技術の使用によって、図8a〜dに示されるように製作した。レーザーで切除可能なポリマーシート60(例えば、KAPTON登録商標ポリイミド、およそ150ミクロン厚)を、必要に応じて薄い(10〜30ミクロン)金属シート62(例えば、チタン)に積層した(図8a)。テーパ状の穴64を、レーザー技術(例えば、エキシマーレーザー切除)を使用して、金属/ポリマー積層60/62中に形成した(図8b)。レーザースポットのエントリー穴は、金属側部62上であり、そして貫通穴を、金属シートおよびポリマーフィルムの両方を通して作製した。この貫通穴64は、テーパを生成する集束しないまたは適切な基板動作のいずれかと組み合せてテーパ状であり、その結果、穴64の広い端(代表的には40〜50ミクロン)は、金属側62上であり、そして穴64の狭い端(代表的には10〜20)は、ポリマー60側上であった。次いで、厚さ0.1ミクロンの金属66(例えば、チタン)の薄層を、例えば、スパッター堆積技術を使用して、金属66が金属フィルム側面上に堆積し、そしてポリマー側壁をコーティングするが、積層のポリマー6側面をコーティングしないような方法において、堆積した(図8c)。次いで、1〜5ミクロンの厚さでの金属68(例えば、金)の電着を、チタンでコーティングした金属表面66、および64の隣の60のポリマー側壁湾曲セクション上で実行した。最後に、ポリマー60を、例えば、酸素プラズマを使用して除去し、完成した微小針を形成した(図8d)。
【0112】
代替ポリマー除去方法(例えば、熱、溶媒、水性、または光分解、続いて溶媒または水性の除去)はまた、ポリマー材料が適切に選択される場合(例えば、フォトレジスト樹脂)に可能である。
【0113】
(実施例7;エンボスによる微小針の形成)
エンボスによる微小針の形成を、図9a〜9fに示す。ポリマー層70(図9a)を、中実微小針または微小針アレイ72によって打ち出す。アレイ72を、除去し(図9c)、そして層70を、打ち出しされた空洞76を露出するまで、打ち出しされない側面74からエッチングする(図9d)。次いで、金属層78を、打ち出しされた側面および側壁上に堆積させるが、打ち出しされない側面74上に堆積させない(図9e)。この層78を、必要に応じて、金属層78の上にさらなる金属層80を電着させることによって厚くする(図9e)。次いで、ポリマー層70を、取り外し、微小針78/80を形成する(図9f)。
【0114】
(実施例8:中空微小針の経皮適用)
中空微小針の孔は、例えば、経皮薬物送達において、物質を輸送するために適切であるために、最小の詰まりで流体の流れを提供しなければならない。従って、微小針および微小管を、これらの機能にそれらが適切なことを決定するために評価した。
【0115】
実施例3〜5に記載されるように作られた中空金属およびシリコン微小針を、針の孔の見かけの詰まりがない状態でヒト皮膚表皮を通して挿入した。ヒト表皮の裏側まで貫通する中空金属(NiFe)微小針の電子顕微鏡の走査は、先端には片がなく微小針がインタクトなままであることを示す。同様に、シリコン微小針、金属微小針、および金属微小管を、ヒト皮膚を通して首尾よく挿入した。また、中空微小針は、それらの孔を通る水の流れを許容することが示された。
【0116】
(実施例9:皮膚に挿入した微小針を通る薬物輸送)
研究を、中実微小針および中空微小針を用いて実行し、分子および流体の輸送を実証した。表1に示されるように、皮膚を横切る、多数の異なる化合物の輸送は、微小針を使用して可能である。これらの研究を、本特許に記載される方法によってなされた中実シリコン微小針を使用してか、または中空シリコン微小針を使用して実行した。ヒトの死体の表皮を横切る輸送を、Franz拡散チャンバーを37℃で使用して、S.Henry、D.McAllister、M.G.Allen、およびM.R.Prausnitz「Microfabricated Microneedles:A novel method to increase transdermal drug delivery」J.Pharm.Sci.87:922〜25(1998)に記載の方法を使用してインビトロで測定した。
【0117】
カルセイン(calcein)、インスリン、ウシ血清アルブミンおよびナノ粒子の経皮送達を測定した。送達は、これらの化合物が表皮の角質層側から生存する表皮側に輸送される能力をいう。これは、身体中への薬物の送達と関連する輸送の方向である。カルセインの除去もまた測定した。除去は、表皮の生存する表皮から角質層側にカルセインの輸送する能力をいう。これは、身体中に見出される身体の化合物(例えば、グルコース)からの除去と関連する輸送の方向である。
【0118】
表1に示される全ての場合において、皮膚を横切るこれらの化合物の輸送は、針を皮膚へと挿入されない場合、本発明者らの検出限界未満のレベルで生じた。インタクトな皮膚は、これらの化合物を送達する優れた障壁を提供する。試験された全ての場合、中実微小針を、皮膚に挿入し、そして適所に残し、大きな皮膚浸透性を測定した。このことは、この微小針が皮膚を横切る輸送のために経路を作り出したことを示す。さらに、全ての場合において、中実微小針を皮膚に挿入し、次いで引き抜いた場合、さらにより大きな浸透性が得られた。最後に、中空微小針を、皮膚に挿入し、そして適所に残した場合、なおより大きい皮膚浸透性が、試験された化合物に対して得られた。これらの研究は、微小針が皮膚浸透性を劇的に増大させ得、それによって多くの異なる薬物の皮膚を横切る輸送を増大させ得ることを示す。中実微小針を使用する場合、好ましい実施態様は、微小針を挿入すること、次いで微小針を適所に残すことではなく引き抜くことを含むことを示す。それはまた、中空微小針の使用は、中実微小針の使用に対して好ましい実施態様であることを示す。
【0119】
表2において、中空シリコン微小針を通る水の流れの速度を、加えた圧力の関数として示す。これらのデータは、微小針を通る水のかなりの流速が、適度な圧力で達成され得ることを実証する。
【0120】
【表1】

【0121】
【表2】


【特許請求の範囲】
【請求項1】
生物学的障壁を横切る分子またはエネルギーの輸送のためのデバイスであって、該デバイスは、
(a)100μmと1mmとの間の長さを有する、複数の中空微小針または有孔微小針であって、該微小針のシャフトの少なくとも一部が約1μmと200μmとの間の幅を有する、複数の中空微小針または有孔微小針と、
(b)該微小針が付着されるかまたは一体化形成される基板であって、該微小針が該基板の表面からある角度で延びる、基板とを含み、
前記基板および/または微小針は可撓性の材料から形成され、これにより該デバイスが前記生物学的障壁の輪郭に適合することを可能にするデバイス。

【図1】
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【図2A】
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【図2B】
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【図2C】
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【図2D】
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【図2E】
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【図3A】
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【図3B】
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【図3C】
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【図3D】
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【図3E】
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【図3F】
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【図3G】
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【図4A】
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【図4B】
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【図4C】
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【図4D】
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【図5】
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【図6】
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【図7A】
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【図7B】
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【図7C】
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【図7D】
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【図8A】
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【図8B】
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【図8C】
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【図8D】
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【図9A】
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【図9B】
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【図9C】
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【図9D】
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【図9E】
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【図9F】
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【公開番号】特開2009−119296(P2009−119296A)
【公開日】平成21年6月4日(2009.6.4)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−55747(P2009−55747)
【出願日】平成21年3月9日(2009.3.9)
【分割の表示】特願2000−553570(P2000−553570)の分割
【原出願日】平成11年6月10日(1999.6.10)
【出願人】(500020357)ジョージア テック リサーチ コーポレイション (39)
【Fターム(参考)】