微小電気機械システムベースのスイッチにおけるアーク形成を抑制するための回路を有するシステム
【課題】微小電気機械システムスイッチング回路(206)を含むシステムを提供する。
【解決手段】システムは、ターンオン事象などの第1のスイッチング事象時に、微小電気機械システムスイッチング回路(206)の接点の両端の電圧レベルを抑制するために、微小電気機械システムスイッチング回路(206)と並列回路にて接続された第1の過電流保護回路(2061)を含むことができる。システムは、さらに、ターンオフ事象などの第2のスイッチング事象時に、微小電気機械システムスイッチング回路(206)の接点を通る電流(0)の流れを抑制するために、微小電気機械システムスイッチング回路(206)と並列回路にて接続された第2の過電流保護回路(2062)を含むことができる。
【解決手段】システムは、ターンオン事象などの第1のスイッチング事象時に、微小電気機械システムスイッチング回路(206)の接点の両端の電圧レベルを抑制するために、微小電気機械システムスイッチング回路(206)と並列回路にて接続された第1の過電流保護回路(2061)を含むことができる。システムは、さらに、ターンオフ事象などの第2のスイッチング事象時に、微小電気機械システムスイッチング回路(206)の接点を通る電流(0)の流れを抑制するために、微小電気機械システムスイッチング回路(206)と並列回路にて接続された第2の過電流保護回路(2062)を含むことができる。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願
本発明の実施形態は、一般に電気回路に関し、より具体的には微小電気機械システム(MEMS)ベースのスイッチングデバイスに関し、さらにより具体的には、MEMSスイッチングデバイスのターンオンおよび/またはターンオフ時などのスイッチング事象時にアーク形成を抑制するための回路を有するシステムに関する。
【背景技術】
【0002】
回路遮断器は、回路内の障害によって生じる損傷から電気機器を保護するように設計された電気デバイスである。通常、ほとんどの従来の回路遮断器は、嵩張る電気機械スイッチを含む。残念ながら、これらの従来の回路遮断器は、サイズが大きく、それによりスイッチング機構を活動化するのに大きな力を用いることが必要になる。さらに、一般にこれらの回路遮断器のスイッチは、比較的低速で動作する。さらに、これらの回路遮断器は、不利な点として組み立てが複雑であり、したがって製造に費用がかかる。加えて、従来の回路遮断器内のスイッチング機構の接点が物理的に分離するとき、通常、そこにアークが形成され、回路内の電流が途絶えるまで、その間で電流を伝送し続ける。さらに、アークに伴うエネルギーは、接点を著しく損傷し、かつ/または人員に火傷の危険を及ぼす。
【0003】
低速の電気機械スイッチの代替として、高速スイッチング用途では、比較的高速な固体スイッチが用いることが知られている。理解されるように、これらの固体スイッチは、電圧すなわちバイアスの制御された印加によって、導通状態と非導通状態の間を切り換える。たとえば、固体スイッチを逆バイアスすることによって、スイッチを非導通状態に遷移させることができる。
【特許文献1】米国特許出願第11/621,623号公報
【特許文献2】米国特許出願第11/314,336号公報
【特許文献3】米国特許第5,341,080号
【特許文献4】米国特許出願第11/314,879号
【特許文献5】米国特許出願公開第2005/0146814号公報
【特許文献6】米国特許出願公開第2005/0146404号公報
【特許文献7】米国特許第6,760,202号公報
【特許文献8】米国特許第6,738,246号公報
【特許文献9】米国特許出願公開第2003/0183838号公報
【特許文献10】米国特許第6,563,683号公報
【特許文献11】米国特許第5,430,597号公報
【特許文献12】米国特許第4,723,187号公報
【特許文献13】米国特許第4,700,256号公報
【特許文献14】米国特許第4,500,934号公報
【特許文献15】米国特許第5,164,872号公報
【特許文献16】米国特許第3,809,959号公報
【特許文献17】米国特許第5,374,792号公報
【特許文献18】米国特許出願公開第2007/0139829号公報
【特許文献19】米国特許出願公開第2007/0139830号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかし固体スイッチは、非導通状態に切り換えられるとき、接点間に物理的な空隙を生じないので、リーク電流の影響を受ける。さらに、固体スイッチが導通状態で動作するとき、内部抵抗によって電圧降下を生じる。通常の動作状況において、電圧降下およびリーク電流は、共に過大な熱の発生の要因となり、スイッチの性能および寿命に対して有害となり得る。
【課題を解決するための手段】
【0005】
一般に、本発明の態様は、微小電気機械システムスイッチング回路を含むシステムを提供する。第1の過電流保護回路は、微小電気機械システムスイッチング回路と並列回路にて接続される。第1の過電流保護回路は、微小電気機械システムスイッチング回路の第1のスイッチング事象に応答して瞬間的に導電路を形成するように構成される。この導電路は、第1のスイッチング事象時に、微小電気機械システムスイッチング回路の接点の両端の電圧レベルを抑制するために、微小電気機械システムスイッチング回路との並列回路を形成する。第2の過電流保護回路は、微小電気機械システムスイッチング回路および第1の過電流保護回路と並列回路にて接続される。第2の過電流保護回路は、微小電気機械システムスイッチング回路の第2のスイッチング事象に応答して瞬間的に導電路を形成するように構成される。導電路は、第2のスイッチング事象時に、微小電気機械システムスイッチング回路の接点を通る電流の流れを抑制するために微小電気機械システムスイッチング回路との並列回路を形成する。
【0006】
本発明の他の態様は、微小電気機械システムスイッチング回路を含むシステムを提供する。微小電気機械システムスイッチング回路と並列回路にて、少なくとも第1の過電流保護回路を接続することができる。第1の過電流保護回路は、微小電気機械システムスイッチング回路の第1のスイッチング事象に応答して瞬間的に導電路を形成するように構成することができる。導電路は、第1のスイッチング事象時に微小電気機械システムスイッチング回路の接点の両端の電圧を抑制するために微小電気機械システムスイッチング回路との並列回路を形成する。
【0007】
本発明の上記その他の特徴、態様、および利点は、各図面を通して同様な文字は同様な部分を表している添付の図面を参照して、以下の詳細な説明を読めば、より良く理解されよう。
【発明を実施するための最良の形態】
【0008】
本発明の1つまたは複数の実施形態による、微小電気機械システム(MEMS)スイッチング回路を含むシステムについて説明する。以下の詳細な説明では、本発明の様々な実施形態の十分な理解を得るために、数多くの特定の詳細が記載される。しかし当業者には、本発明の実施形態はこれらの特定の詳細がなくとも実施することができ、本発明は示された実施形態に限定されず、本発明は様々な代替実施形態で実施できることが理解されよう。その他の場合、良く知られた方法、手順、および構成部品については、詳細には説明されない。
【0009】
さらに、様々な動作を、本発明の実施形態の理解に役立つように行われる複数の個別の段階として説明する場合がある。しかし説明の順序は、これらの動作が説明された順序で行われる必要があると理解されるべきではなく、さらにはそれらが順序に依存すると理解されるべきではない。さらに、繰り返し用いられる「一実施形態」の語句は、その場合もあり得るが、必ずしも同じ実施形態を指すものではない。最後に、本出願で用いられる「備える」、「含む」、「有する」などの用語は、特に明記しない限り同義であるものとする。
【0010】
図1は、本発明の態様による、例示の微小電気機械システム(MEMS)ベースのスイッチングシステム10を示すブロック図である。現在、MEMSは、たとえば、機能的に異なる複数の要素、たとえば機械要素、電気機械要素、センサ、アクチュエータ、および電子回路部を、微細加工技術によって共通の基板上に集積することができるミクロンスケールの構造を指す。しかし、MEMSデバイスにおいて現在利用可能な多くの技法および構造は、数年後にはナノテクノロジーベースのデバイス、たとえば大きさを100nm未満とすることができる構造を用いて、利用可能になると考えられる。したがって、本文書全体で説明される例示の実施形態はMEMSベースのスイッチングシステムと呼ばれるが、本発明の態様は広く解釈されるべきであり、ミクロンサイズのデバイスに限定されるべきでないと考えられる。
【0011】
図1に示されるように、MEMSベースのスイッチングシステム10は、MEMSベースのスイッチング回路12と、過電流保護回路14を含んで示され、過電流保護回路14は、MEMSベースのスイッチング回路12と動作可能に結合される。一部の実施形態では、MEMSベースのスイッチング回路12は、その全体を過電流保護回路14と共に、たとえば単一のパッケージ16内に集積化することができる。他の実施形態では、MEMSベースのスイッチング回路12の一部分または一部の構成部品のみを、過電流保護回路14と共に集積化することができる。
【0012】
図2〜5を参照して詳細に説明されるように、現在考えられる構成では、MEMSベースのスイッチング回路12は、1つまたは複数のMEMSスイッチを含むことができる。さらに、過電流保護回路14は、平衡ダイオードブリッジと、パルス回路を含むことができる。さらに、過電流保護回路14は、1つまたは複数のMEMSスイッチの接点間のアーク形成の抑制を容易にするように構成することができる。過電流保護回路14は、交流(AC)または直流(DC)に応答して、アーク形成の抑制を容易にするように構成できることに留意されたい。
【0013】
アーク形成の抑制に関連する基礎情報を望む読者には、参照により本明細書に組み込まれる2005年12月20日出願の米国特許出願第11/314,336号(整理番号162711−1)を参照されたい。上記の出願には、微小電気機械システムの接点間のアーク形成を抑制するように適合された回路およびパルス技法を含む、高速の微小電気機械システム(MEMS)をベースとするスイッチングデバイスが記載されている。このような用途では、アーク形成の抑制は、そのような接点を通って流れる電流を実効的に分流することによって得られる。
【0014】
次に図2を参照すると、一実施形態による、図1に示された例示のMEMSベースのスイッチングシステムの概略図18が示される。図1に関連して述べたように、MEMSベースのスイッチング回路12は、1つまたは複数のMEMSスイッチを含むことができる。図示の実施形態では、第1のMEMSスイッチ20は、第1の接点22、第2の接点24、および第3の接点26を有するものとして示される。一実施形態では、第1の接点22はドレインとして構成することができ、第2の接点24はソースとして構成することができ、第3の接点26はゲートとして構成することができる。さらに図2に示されるように、電圧スナバ回路33をMEMSスイッチ20と並列に結合し、以下でより詳細に説明するように、高速での接点分離時の電圧オーバシュートを制限するように構成することができる。一部の実施形態ではスナバ回路33は、スナバ抵抗器(図示せず)と直列に結合されたスナバコンデンサ(図示せず)を含むことができる。スナバコンデンサは、MEMSスイッチ20の開路のシーケンス時に、過度電圧の共有の改善を容易にすることができる。さらにスナバ抵抗器は、MEMSスイッチ20の閉路動作時の、スナバコンデンサによって生ずる電流パルスを抑制することができる。例示の一実施形態では、スナバ33は、1つまたは複数のタイプの回路、たとえばR/Cスナバ、および/または固体スナバ(金属酸化物バリスタ(MOV)など)、または他の適当な過電圧保護回路、たとえばコンデンサに給電するように結合された整流器などを含むことができる。好ましくは、スナバコンデンサは、インダクタンスの問題を避けるために各ダイ上に構成されるべきである。
【0015】
本技法の他の態様によれば、電動機またはモータなどの負荷回路40を、第1のMEMSスイッチ20と直列に結合することができる。負荷回路40は、交流電圧(AC)または直流電圧(DC)44などの適当な電圧源VBUSに接続することができる。さらに負荷回路40は、負荷インダクタンスLLOAD 46を含むことができ、負荷インダクタンスLLOAD 46は、負荷回路40から見た総合の負荷インダクタンスおよびバスインダクタンスを表す。負荷回路40はまた、負荷回路40から見た総合の負荷抵抗を表す負荷抵抗RLOAD 48を含むことができる。参照番号50は、負荷回路40および第1のMEMSスイッチ20を通って流れることができる負荷回路電流ILOADを表す。
【0016】
さらに、図1に関連して述べたように、過電流保護回路14は、平衡ダイオードブリッジを含むことができる。図示の実施形態では、平衡ダイオードブリッジ28は、第1の枝路29および第2の枝路31を有するものとして示される。ここで用いられる「平衡ダイオードブリッジ」の用語は、第1および第2の枝路29、31の両方の両端の電圧降下が共にほぼ等しいように構成されたダイオードブリッジを表すのに用いられる。平衡ダイオードブリッジ28の第1の枝路29は、互いに結合されて第1の直列回路を形成する第1のダイオードD1 30と、第2のダイオードD2 32を含むことができる。同様にして、平衡ダイオードブリッジ28の第2の枝路31は、互いに動作可能に結合されて第2の直列回路を形成する第3のダイオードD3 34と、第4のダイオードD4 36を含むことができる。
【0017】
一実施形態では、第1のMEMSスイッチ20は、平衡ダイオードブリッジ28の中点の両端と並列に結合することができる。平衡ダイオードブリッジの中点は、第1および第2のダイオード30と32の間にある第1の中点、および第3および第4のダイオード34と36の間にある第2の中点を含むことができる。さらに、第1のMEMSスイッチ20および平衡ダイオードブリッジ28は、平衡ダイオードブリッジ28、および特にMEMSスイッチ20への接続によって生ずる寄生インダクタンスの最小化を容易にするために、密にパッケージングすることができる。本技法の例示的態様によれば、第1のMEMSスイッチ20および平衡ダイオードブリッジ28は、Lが寄生インピーダンスを表すものとして、第1のMEMSスイッチ20と平衡ダイオードブリッジ28の間の固有インダクタンスが、L×di/dtの電圧を生ずるように、互いに配置されることに留意されたい。発生する電圧は、MEMSスイッチ20のターンオフ時にダイオードブリッジ28への負荷電流の移転を伝送するとき、MEMSスイッチ20のドレイン22とソース24の両端の電圧の数パーセント未満とすることができ、これは以下でより詳細に説明する。一実施形態では、第1のMEMSスイッチ20は、平衡ダイオードブリッジ28と共に単一のパッケージ38内に、または適宜MEMSスイッチ20とダイオードブリッジ28を相互接続するインダクタンスを最小にする目的で同じダイ内に、集積化することができる。
【0018】
さらに、過電流保護回路14は、平衡ダイオードブリッジ28に関連して動作可能に結合されたパルス回路52を含むことができる。パルス回路52は、スイッチ状態を検出し、スイッチ状態に応答してMEMSスイッチ20の開路を開始するように構成することができる。ここで用いられる「スイッチ状態」の用語は、MEMSスイッチ20の現在の動作状態の変化をトリガする状態を指す。たとえばスイッチ状態は、その結果としてMEMSスイッチ20の第1の閉路状態から第2の開路状態へ、またはMEMSスイッチ20第1の開路状態から第2の閉路状態への変化を生じ得る。スイッチ状態は、回路障害、回路過負荷、またはスイッチオン/オフ要求を含みそれらに限定されない複数の動作に応答して生じ得る。
【0019】
パルス回路52は、パルススイッチ54、およびパルススイッチ54に直列結合されたパルスコンデンサCPULSE 56を含むことができる。さらに、パルス回路はまた、パルススイッチ54と直列に結合されたパルスインダクタンスLPULSE 58、および第1のダイオードDP 60を含むことができる。パルスインダクタンスLPULSE 58、ダイオードDP 60、パルススイッチ54、およびパルスコンデンサCPULSE 56は、パルス回路52の第1の枝路を形成するように直列に結合することができ、第1の枝路の構成部品は、パルス電流の整形およびタイミングを容易にするように構成することができる。また参照番号62は、パルス回路52を通って流れることができるパルス回路電流IPULSEを表す。
【0020】
以下でより詳細に説明するように、本発明の態様によれば、MEMSスイッチ20は、ゼロまたはほぼゼロの電流を伝送しながら、第1の閉路状態から第2の開路状態へ、高速(たとえばピコ秒またはナノ秒程度)にスイッチすることができる。これは、負荷回路40、およびMEMSスイッチ20の接点の両端に並列に結合された平衡ダイオードブリッジ28を含むパルス回路52の総合動作により達成することができる。
【0021】
図3〜5は、図2に示されるMEMSベースのスイッチングシステム18の例示の動作を示すための概略フローチャートとして用いられる。引き続き図2を参照すると、MEMSベースのスイッチングシステム18の例示の動作の初期状態が示される。MEMSスイッチ20は、第1の閉路状態で開始するものとして示される。また図示のように、負荷電流ILOAD 50が存在する。
【0022】
さらに、このMEMSベースのスイッチングシステム18の例示の動作を論じるために、MEMSスイッチ20に付随する抵抗は十分小さく、それにより、パルス動作するとき、MEMSスイッチ20の抵抗を通る負荷電流によって生ずる電圧が、ダイオードブリッジ28の中点の間のほぼゼロの電圧に及ぼす影響は無視できるものになると見なすことができる。たとえばMEMSスイッチ20に付随する抵抗は、十分小さく、最大予想負荷電流によって生ずる電圧降下は数ミリボルト未満であると見なすことができる。
【0023】
このMEMSベースのスイッチングシステム18の初期状態では、パルススイッチ54は、第1の開路状態にあることに留意されたい。さらにパルス回路52内には、パルス回路電流はない。またパルス回路52内では、コンデンサCPULSE 56は、予め電圧VPULSEに充電することができ、VPULSEは、負荷電流の移転期間の際、予想される負荷電流ILOAD 50より大幅に大きな(たとえば10倍の)ピークの大きさを有する正弦半波パルス電流を生ずることができる電圧である。CPULSE 56およびLPULSE 58は直列共振回路を構成することに留意されたい。
【0024】
図3は、パルス回路52をトリガするプロセスを表す概略図64である。パルス回路52には、検出回路(図示せず)を結合できることに留意されたい。検出回路は、たとえば負荷回路電流ILOAD 50のレベル、および/または電圧源VBUS 44の電圧レベルを感知するように構成された感知回路(図示せず)を含むことができる。さらに検出回路は、上述のようにスイッチ状態を検出するように構成することができる。一実施形態では、スイッチ状態は、所定の閾値を超える電流レベルおよび/または電圧レベルによって生じ得る。
【0025】
パルス回路52は、MEMSスイッチ20の現在の閉路状態から第2の開路状態への切換えを容易にするためにスイッチ状態を検出するように構成することができる。一実施形態では、スイッチ状態は、所定の閾値レベルを超える電圧レベルまたは負荷回路40内の負荷電流によって発生する障害状態とすることができる。しかし以下で理解されるように、スイッチ状態はまた、MEMSスイッチ20に対する所与のシステムに依存しないオン時間を実現するために、ランプ電圧の監視を含むことができる。
【0026】
一実施形態では、パルススイッチ54は、検出されたスイッチング状態の結果としてのトリガ信号の受信に応答して、正弦波パルスを発生することができる。パルススイッチ54をトリガすることにより、パルス回路52内に共振正弦波電流が開始される。パルス回路電流の電流方向は、参照番号66および68により表され得る。さらに、平衡ダイオードブリッジ28の第1の枝路29の第1のダイオード30および第2のダイオード32を通るパルス回路電流の電流方向および相対的な大きさは、それぞれ電流ベクトル72および70で表される。同様に電流ベクトル76および74は、それぞれ第3のダイオード34および第4のダイオード36を通るパルス回路電流の電流方向および相対的な大きさを表す。
【0027】
正弦波ブリッジパルス電流のピーク値は、パルスコンデンサCPULSE 56の初期電圧、パルスコンデンサCPULSE 56の値、およびパルスインダクタンスLPULSE 58の値から求めることができる。またパルスインダクタンスLPULSE 58およびパルスコンデンサCPULSE 56の値により、パルス電流の正弦半波のパルス幅が決まる。ブリッジ電流パルス幅は、負荷電流の変化率(VBUS/LLOAD)および負荷障害状態時の所望のピーク通過電流を前提として、システム負荷電流ターンオフ用件を満たすように調整することができる。本発明の態様によれば、パルススイッチ54は、MEMSスイッチ20の開路の前に、導通状態となるように構成することができる。
【0028】
パルススイッチ54のトリガは、開路期間において、MEMSスイッチ20の接点を通る経路のインピーダンスに比べて、低インピーダンスの経路を生成するのを容易にするための、平衡ダイオードブリッジ28を通るパルス回路電流IPULSE 62のタイミングの制御を含み得ることに留意されたい。さらに、パルススイッチ54は、MEMSスイッチ20の接点の両端に所望の電圧降下を呈するように、トリガすることができる。
【0029】
一実施形態では、パルススイッチ54は、スイッチング速度がたとえばナノ秒からマイクロ秒程度の範囲となるように構成し得る固体スイッチとすることができる。パルススイッチ54のスイッチング速度は、障害状態における負荷電流の予想される上昇時間に比べて、比較的高速とするべきである。MEMSスイッチ20に必要な電流定格は、負荷電流の上昇率に依存したものとすることができ、これは前述のように、負荷回路40内のインダクタンスLLOAD 46およびバス供給電圧VBUS 44に依存する。MEMSスイッチ20は、負荷電流ILOAD 50がブリッジパルス回路の速度能力に比べて急速に上昇し得る場合は、より大きな負荷電流ILOAD 50を取り扱うのに適当な定格にすることができる。
【0030】
パルス回路電流IPULSE 62は、ゼロの値から増加し、平衡ダイオードブリッジ28の第1および第2の枝路29、31の間で等しく分割される。一実施形態によれば、前述のように、平衡ダイオードブリッジ28の枝路29、31の両端の電圧降下の差は、無視し得るように設計することができる。さらに前述のように、ダイオードブリッジ28は、ダイオードブリッジ28の第1および第2の枝路の両端の電圧降下が、ほぼ等しくなるように平衡する。さらに、現在の閉路状態におけるMEMSスイッチ20の抵抗は比較的低く、MEMSスイッチ20の両端には比較的小さな電圧降下が存在する。しかしMEMSスイッチ20の両端の電圧降下が、(たとえばMEMSスイッチの固有の設計により)たまたま大きい場合は、ダイオードブリッジ28がMEMSスイッチ20と並列に動作可能に結合されているので、ダイオードブリッジ28の平衡が影響を受け得る。本発明の態様によれば、MEMSスイッチ20の抵抗によってMEMSスイッチ20の両端に大幅な電圧降下を生ずる場合は、ダイオードブリッジ28は、その結果生じるパルスブリッジの不平衡に対して、ブリッジパルス電流のピークの大きさを増加させることによって適応することができる。
【0031】
次に図4を参照すると、MEMSスイッチ20の開路が開始される場合の、概略図78が示される。前述のように、パルス回路52内のパルススイッチ54は、MEMSスイッチ20の開路の前にトリガされる。パルス電流IPULSE 62が増加するにつれて、パルス回路52の共振動作により、パルスコンデンサCPULSE 56の両端の電圧は減少する。スイッチが閉じて導通しているオン状態では、MEMSスイッチ20は、負荷回路電流ILOAD 50に対して比較的低インピーダンスの経路を呈する。
【0032】
パルス回路電流IPULSE 62の振幅が、(たとえばパルス回路52の共振作用により)負荷回路電流ILOAD 50の振幅よりも大きくなると、MEMSスイッチ20のゲート接点26に印加される電圧は、MEMSスイッチ20の現在の動作状態を、第1の閉路で導通状態から、抵抗が増大する状態に切り換えるように適切にバイアスすることができ、ここでMEMSスイッチ20はターンオフを開始し(ここではたとえば、接点は依然として閉じているが、スイッチの開路プロセスにより接点圧力は低下する)、それによりスイッチ抵抗が増加し、さらに負荷電流をMEMSスイッチ20からダイオードブリッジ28内へ迂回させる。
【0033】
この現在の状態においては、平衡ダイオードブリッジ28は、増大する接点抵抗を示すMEMSスイッチ20を通る経路に比べて、比較的低インピーダンスの経路を、負荷回路電流ILOAD 50に対して呈する。このMEMSスイッチ20を通る負荷回路電流ILOAD 50の迂回は、負荷回路電流ILOAD 50の変化率に比べて極めて高速であることに留意されたい。前述のように、MEMSスイッチ20と平衡ダイオードブリッジ28の間の接続に付随するインダクタンスL1 84およびL2 88の値は、高速な電流の迂回が阻害されるのを避けるために非常に小さいことが望ましい。
【0034】
MEMSスイッチ20からパルスブリッジへの電流移転のプロセスは、継続して第1のダイオード30および第4のダイオード36の電流を増加させ、同時に第2のダイオード32および第3のダイオード34の電流は低下する。移転プロセスは、MEMSスイッチ20の機械接点22、24が分離して物理的空隙を形成したときに完了し、すべての負荷電流は、第1のダイオード30および第4のダイオード36によって伝送される。
【0035】
負荷回路電流ILOADが、方向86にて、MEMSスイッチ20からダイオードブリッジ28に迂回される結果、ダイオードブリッジ28の第1および第2の枝路29、31の両端に不平衡が生じる。さらに、パルス回路電流が減衰するに従って、引き続いてパルスコンデンサCPULSE 56の両端の電圧は反転し(たとえば「逆起電力」として働く。)、負荷回路電流ILOADを最終的にゼロに減少させる。ダイオードブリッジ28内の第2のダイオード32および第3のダイオード34は、逆バイアスとなり、その結果、負荷回路は、パルスインダクタLPULSE 58およびブリッジパルスコンデンサCPULSE 56を含むようになり、直列共振回路となる。
【0036】
次に図5を参照すると、減少する負荷電流のプロセスのために接続された回路要素の概略図94が示される。上記で触れたように、MEMSスイッチ20の接点が離れる瞬間に、接点抵抗が無限大に達する。さらに、もはやダイオードブリッジ28は、MEMSスイッチ20の接点の両端のインピーダンスのほぼゼロの電圧を維持しない。また負荷回路電流ILOADは、第1のダイオード30および第4のダイオード36を通る電流に等しい。前述のように、ダイオードブリッジ28の第2のダイオード32および第3のダイオード34を通る電流はない。
【0037】
さらに、MEMSスイッチ20のドレイン24からソース26までのスイッチ接点の大幅な電圧差は、今度はパルスインダクタLPULSE 58、パルスコンデンサCPULSE 56、負荷回路インダクタLLOAD 46、および負荷抵抗器RLOAD 48および回路損失によるダンピングを含む、正味の共振回路によって決まる率で、最大でVBUS電圧の約2倍まで上昇し得る。さらに、ある時点で負荷回路電流ILOAD 50と等しかったパルス回路電流IPULSE 62は、共振によってゼロの値まで減少し、このようなゼロの値は、ダイオードブリッジ28およびダイオードDP 60の逆方向阻止作用によって維持される。共振によるパルスコンデンサCPULSE 56の両端の電圧は、負のピークに向かって極性が反転し、このような負のピークは、パルスコンデンサCPULSE 56が再充電されるまで維持されることになる。
【0038】
ダイオードブリッジ28は、接点が分離してMEMSスイッチ20を開くまで、MEMSスイッチ20の接点の両端にほぼゼロの電圧を維持し、それにより、開路時にMEMSスイッチ20の接点間に形成されやすいアークを抑制することによって損傷を防止するように構成することができる。さらに、MEMSスイッチ20の接点は、MEMSスイッチ20を通る接点電流がずっと減少された状態で、開路状態に近づく。また、回路インダクタンス、負荷インダクタンス、および電源に蓄えられたエネルギーは、パルス回路コンデンサCPULSE 56へ移転することができ、かつ電圧消費回路(図示せず)によって吸収することができる。電圧スナバ回路33は、高速の接点分離時に、ブリッジとMEMSスイッチの間のインタフェースのインダクタンス中に残存する誘導性エネルギーによる、電圧オーバシュートを制限するように構成することができる。さらに、開路時のMEMSスイッチ20の接点の両端に再印加されうる電圧の増加率は、スナバ回路(図示せず)を用いることによって制御することができる。
【0039】
また、開路状態では、MEMSスイッチ20の接点間には空隙が形成されるとはいえ、MEMSスイッチ20の周りの、負荷回路40とダイオードブリッジ回路28の間にリーク電流が存在し得ることに留意されたい。(MOVおよび/またはR/Cスナバ回路を通る経路も形成され得る。)このリーク電流は、物理的な空隙を生ずるように、負荷回路40と直列接続された二次的機械スイッチ(図示せず)を導入することによって抑制することができる。一部の実施形態では、機械スイッチは、第2のMEMSスイッチを含むことができる。
【0040】
図6Aは、スイッチング回路12(図1を参照)が、たとえば直列または直並列アレイに構成された複数のMEMSスイッチを含むことができる、例示的実施形態96を示す。さらに、図6に示されるように、MEMSスイッチ20は、電気的に直列回路に結合された、第1の組の2つ以上のMEMSスイッチ98、100によって置き換えることができる。一実施形態では、第1の組のMEMSスイッチ98、100の少なくとも1つは、さらに並列回路に結合することができ、並列回路には、第2の組の2つ以上のMEMSスイッチ(たとえば参照記号100、102)を含むことができる。本発明の態様によれば、MEMSスイッチの第1または第2の組の少なくとも1つと並列に、静的勾配緩和抵抗器および動的勾配緩和コンデンサを結合することができる。
【0041】
図6Bおよび6Cはそれぞれ、2つ以上のMEMSスイッチを直列回路にて接続するための例示の実施形態の概略図を示し、直列に接続された各MEMSスイッチのドレイン(D)とソース(S)の間に接続された、それぞれのコンデンサCsを示している。実験テスト時に、一般にMEMSスイッチに付随する、ゲートドライバ速度に関する制約は、機械的問題ではなく電気的問題が主導的であることが分かった。たとえば、ゲートからドレインへの望ましくない容量性結合は、ゲートドライバ速度に影響を及ぼし得る(例えば遅くし得る)。本発明者らは、このような影響は、図6Bおよび6Cに示されるように、各MEMSスイッチのソースからドレインにコンデンサCsを接続することによって軽減し得ることを認識した。同じコンデンサCsは、スナバ回路33(図2)に関連して述べたように、スナバコンデンサ機能も行う。
【0042】
図6Bおよび6Cはさらに、各スイッチのゲート(G)に対して直列回路にて接続されたそれぞれのゲート抵抗器Rgを示す。このようなゲート抵抗器は、スイッチのゲートに短絡が生じ、ゲートドライバが動作不能になり、潜在的に、ゲートドライバに接続され得るスイッチングアレイの他のスイッチが動作不能になるのを防止するのに役立つ。好ましい集積化の一技法は、ゲート速度を遅くし得る容量値が導入されるのをさけるために、ゲート抵抗器をスイッチと一体化することである。
【0043】
次に図7を参照すると、勾配緩和型(graded)MEMSスイッチ回路の例示的実施形態104が示される。勾配緩和型スイッチ回路104は、少なくとも1つのMEMSスイッチ106、勾配緩和抵抗器108、および勾配緩和コンデンサ110を含むことができる。勾配緩和型スイッチ回路104は、たとえば図6に示されるような、直列または直並列アレイに構成された複数のMEMSスイッチを含むことができる。勾配緩和抵抗器108は、スイッチアレイに対して電圧勾配の緩和をもたらすために、少なくとも1つのMEMSスイッチ106と並列に結合することができる。例示的実施形態では、勾配緩和抵抗器108は、特定の用途向けに許容し得る漏洩を生じながら、直列スイッチの間で適当な定常状態の電圧バランス(分割)をもたらすような大きさとすることができる。さらに、スイッチング時に動的に、オフ状態において静的に共有を実現するために、アレイの各MEMSスイッチ106に並列に、勾配緩和コンデンサ110と勾配緩和抵抗器108の両方を設けることができる。追加の勾配緩和抵抗器、または勾配緩和コンデンサ、またはその両方をスイッチアレイ内の各MEMSスイッチに追加できることに留意されたい。一部の他の実施形態では、勾配緩和回路104は、金属酸化物バリスタ(MOV)(図示せず)を含むことができる。
【0044】
図8は、MEMSベースのスイッチングシステムを現在の動作状態から第2の状態に切り換えるための、例示のロジック112のフローチャートを示す。本技法の例示的態様による、切換えのための方法が示される。前述のように検出回路は、過電流保護回路と動作可能に結合し、スイッチ状態を検出するように構成することができる。さらに検出回路は、電流レベルおよび/または電圧レベルを感知するように構成された感知回路を含むことができる。
【0045】
ブロック114によって示されるように、たとえば感知回路によって、負荷回路40(図2を参照)などの負荷回路内の電流レベル、および/または電圧レベルを感知することができる。さらに、判断ブロック116によって示されるように、感知された電流レベルまたは感知された電圧レベルが、期待値から変化し、その値を超えたかどうかの判定を行うことができる。一実施形態では、感知された電流レベルまたは感知された電圧レベルが、それぞれの所定の閾値レベルを超えたかどうかの判定を、(たとえば検出回路により)行うことができる。別法として、障害が実際に生じていなくても、スイッチ状態を検出するために、電圧または電流のランプ率を監視することができる。
【0046】
感知された電流レベルまたは感知された電圧レベルが期待値から変化または逸脱した場合は、ブロック118によって示されるようにスイッチ状態を発生することができる。前述のように、「スイッチ状態」の用語は、MEMSスイッチの現在の動作状態の変化をトリガする状態を指す。一部の実施形態では、スイッチ状態は、障害信号に応答して発生することができ、MEMSスイッチの開路を容易にするために使用することができる。ブロック114〜118は、スイッチ状態の発生の一実施例を表すことに留意されたい。しかし以下で理解されるように、本発明の態様による、スイッチ状態を発生する他の方法も想定される。
【0047】
ブロック120によって示されるように、スイッチ状態に応答してパルス回路電流を開始するために、パルス回路をトリガすることができる。パルス回路の共振作用によって、パルス回路電流レベルは増加し続けることができる。パルス回路電流の瞬時振幅が負荷回路電流の瞬時振幅よりも大幅に大きければ、少なくとも部分的にはダイオードブリッジ28により、MEMSスイッチの接点の両端にほぼゼロの電圧降下を維持することができる。さらに、ブロック122によって示されるように、MEMSスイッチを通る負荷回路電流を、MEMSスイッチからパルス回路に迂回させることができる。前述のように、MEMSスイッチの接点が離れ始めるのに従って比較的高インピーダンスが増大するMEMSスイッチを通る経路に反して、ダイオードブリッジは比較的低インピーダンスの経路を呈する。次いでブロック124によって示されるように、MEMSスイッチを無アーク式に開路することができる。
【0048】
前述のように、MEMSスイッチの接点の両端のほぼゼロの電圧降下は、パルス回路電流の瞬時振幅が負荷回路電流の瞬時振幅より大幅に大きい間は維持することができ、それにより、MEMSスイッチの開路を容易にし、MEMSスイッチの接点間のアークの形成が抑制される。したがって、上記に説明したように、MEMSスイッチは、MEMSスイッチの接点の両端の電圧がほぼゼロの状態で、かつMEMSスイッチを通る電流が大幅に低減された状態で開路することができる。
【0049】
図9は、本技法の態様による、MEMSベースのスイッチングシステムのMEMSスイッチに関連するターンオフスイッチング事象を表す実験結果のグラフ130である。図9に示されるように、時間134の変化に対する、振幅132の変化がプロットされている。また参照番号136、138、および140は、グラフ表示130の第1の区間、第2の区間、および第3の区間を表す。
【0050】
応答曲線142は、負荷回路電流の振幅変化を時間の関数として表す。時間の関数としてのパルス回路電流の振幅変化は、応答曲線144で表される。同様にして、時間の関数としてのゲート電圧の振幅変化は、応答曲線146で表される。応答曲線148は、ゼロのゲート電圧基準を表し、応答曲線150は、ターンオフの前の負荷電流の基準レベルを表す。
【0051】
さらに、参照番号152は、スイッチ開路プロセスが生じる、応答曲線142上の領域を表す。同様に参照番号154は、MEMSスイッチの接点が分離して開路状態である、応答曲線142上の領域を表す。また、グラフ表示130の第2の区間138から分かるように、ゲート電圧は、MEMSスイッチの開路の開始を容易にするために、ローに引き下げられる。さらに、グラフ表示130の第3の区間140から分かるように、平衡ダイオードブリッジの導通している半分において、負荷回路電流142およびパルス回路電流144は減衰していることが分かる。
【0052】
図17および18は、本技法の態様による、MEMSベースのスイッチングシステムのMEMSスイッチに関連するターンオンスイッチング事象を表す実験結果のグラフ400である。図17および18に示されるように、時間404の変化に対して、振幅402の変化がプロットされている。
【0053】
応答曲線406は、時間の関数としての負荷回路電流の振幅変化を表す。時間の関数としてのパルス回路電流の振幅変化は、応答曲線408で表される。同様にして、時間の関数としてのゲート電圧の振幅変化は、応答曲線410で表される。それぞれのプロットに関連する振幅のスケールは異なることに注意されたい。
【0054】
図18は、図17内の差し込み図412に対応し、ターンオンスイッチング事象に関連する最初の数マイクロ秒の間のシステム初期応答に対応する。応答曲線414は、MEMSスイッチの両端の電圧を表し、ターンオンの前のスイッチの両端の電圧レベルを部分的に示している。図18に示される時間間隔の間では、ゲート電圧レベルは未だ、スイッチを導通状態に作動するようには設定されていないことに留意されたい。動作の際には、パルスに応答して、(スイッチが導通状態になるように作動される前の)負荷電流を迂回するための導電路が、平衡ダイオードブリッジを通じて形成される。
【0055】
以下に、固体(たとえば半導体ベースの)スイッチング回路を用いて、スイッチングシステムが高信頼度でコスト効率よく、(たとえば始動事象時、または過渡状態時の)サージ電流に耐えることを可能にし、一方ではたとえば、定常状態の動作用に、かつ起こり得る障害状態に対処するようにMEMSベースのスイッチング回路を使用することができる回路および/または技法について説明する。
【0056】
サージ電流は、モータまたは他のタイプの電気機器などの電気的負荷を始動するときに起こり、または過度状態時に起こり得る。始動事象時のサージ電流の値は、しばしば定常負荷電流の値の数倍(たとえば6倍以上)を含み、10秒程度など、数秒間持続し得る。
【0057】
図10は、MEMSベースのスイッチング回路202、固体スイッチング回路204、および例示の一実施形態では図1〜9に示されかつ/またはそれらに関連して説明したパルス回路52および平衡ダイオードブリッジ31を備えることができるような過電流保護回路206を並列回路にて接続するスイッチングシステム200のブロック図表示である。
【0058】
コントローラ208は、MEMSベースのスイッチング回路202、固体スイッチング回路204、および過電流保護回路206に結合することができる。コントローラ208は、スイッチング回路のそれぞれの1つの電流伝送能力に適した負荷電流状態に応答して実行する、かつ/またはスイッチングシステムに影響を及ぼし得る障害状態時に実行することができるような、いつ過電流保護回路206を作動するべきか、かつまたいつそれぞれのスイッチング回路を開路および閉路すべきかを判断するように構成された制御方式を実行することによって、MEMSベースのスイッチング回路と固体スイッチング回路の間を行き来して選択的に電流を移転するように構成することができる。このような制御方式では、それぞれのスイッチング回路202および204の間を行き来して電流を移転している際に、障害電流制限を行い、かつ負荷電流がいずれかのスイッチング回路の最大電流処理能力に近づく場合は常に電流制限および負荷の消勢を行うように用意されていることが望ましいことに留意されたい。
【0059】
上記の例示の回路を実施したシステムは、サージ電流がMEMSベースのスイッチング回路202によって伝送されるのではなく、代わりに固体スイッチング回路204によって伝送されるように制御することができる。定常電流はMEMSベースのスイッチング回路202によって伝送され、システム動作時には過電流保護回路206によって過電流および/または障害保護が利用可能となる。提案の概念は、その広い態様において、MEMSベースのスイッチング回路に限定する必要はないことが理解されよう。たとえば、1つまたは複数の固体スイッチに並列の1つまたは複数の標準の(すなわちMEMSベースの電気機械スイッチング回路ではない)電気機械スイッチと適当なコントローラを備えるシステムは、同様に本発明の態様によって得られる利点の恩恵を受けることができる。
【0060】
下記は、システムに接続された負荷がモータであると仮定した、スイッチング状態の例示のシーケンス、およびモータ起動事象が生じてすぐのスイッチングシステム内の例示の電流値である。数字の隣の文字Xは、定常状態での通常の電流値の倍数に相当する例示の電流値を示す。したがって6Xは、定常状態での通常の電流値の6倍に相当する電流値を表す。
1.固体スイッチング回路−−開路
MEMSベースのスイッチング回路−−開路
電流0
2.固体スイッチング回路−−閉路
MEMSベースのスイッチング回路−−開路
電流−−6X
3.固体スイッチング回路−−閉路
MEMSベースのスイッチング回路−−閉路
電流−−1X
4.固体スイッチング回路−−開路
MEMSベースのスイッチング回路−−閉路
電流−−1X
図11は、例示の一実施形態を示し、スイッチングシステム200内の固体スイッチング回路204は、過電流保護回路206とMEMSベースのスイッチング回路202に並列回路にて接続された、2つのFET(電界効果トランジスタ)スイッチ210および212(AC電流の導通を可能にするために、ダイオード214および216を用いて逆並列構成に接続される)を備える。電気的負荷(図示せず)は、FETスイッチ210および212をターンオンすることによって活動化することができ、それにより始動電流(「Istart」として示される)が負荷に流れ始めることが可能となり、負荷の始動時にFETスイッチ210および212がこの電流を伝送することが可能になる。固体スイッチング回路204は、図11に示される回路構成に限定されず、FETスイッチにも限定されないことが理解されよう。たとえば、双方向性の電流導通能力をもたらす任意の固体または半導体電力スイッチングデバイスは、TRIAC、RCTなどの所与のAC用途に対して同じく有効に動作することができ、あるいはIGBT、FET、SCR、MOSFETなど、少なくとも2つのこのようなデバイスの適当な構成によって実現できることが理解されよう。
【0061】
図16は、固体スイッチング回路204が、逆直列回路構成に接続された1対のMOSFETスイッチ240および242を含む、例示の一実施形態を示す。ダイオード244および246は、ボディダイオードを含むことに留意されたい。すなわち、このようなダイオードは、それらのそれぞれのMOSFETスイッチの一体部分を含む。ゲート駆動電圧がゼロの状態では、各スイッチはターンオフされ、したがってそれぞれのスイッチは交流電圧の反対極性を阻止し、他方のスイッチの対応する各ダイオードは順方向バイアスされる。ゲート駆動回路222から適当なゲート駆動電圧が印加されるとすぐに各MOSFETは、スイッチング端子に存在するAC電圧の極性に関わらず、低抵抗状態に戻る。
【0062】
逆直列接続された1対のMOSFETの両端の電圧降下は、逆並列構成の場合のような1つのスイッチのRdson(オン状態抵抗)値に基づくIR降下とダイオードの比較的大きな電圧降下の和ではなく、2つのスイッチのRdson値に基づくIR降下だけであることに留意されたい。したがって、例示の一実施形態においてMOSFETの逆直列構成は、比較的低い電圧降下、したがって低い電力消費、発熱、およびエネルギー損失を実現する能力があるので望ましい。
【0063】
さらに理解されるように、固体スイッチング回路204が双方向性サイリスタ(または1対の逆並列サイリスタ)を含む例示の一実施形態では、この構成は低電流で比較的損失が大きいが、このような構成は大電流での比較的電圧降下が小さいことおよび過渡熱応答特性のため、比較的大きな短時間の電流サージに耐えられることが利点となり得る。
【0064】
例示の一実施形態では、固体スイッチング回路204は、電流パルスを制御することによってモータなどの負荷のソフト起動(または停止)を行うために用いることができると考えられる。交流電源電圧または交流負荷電流の可変の位相角に対応して固体回路をスイッチングすることにより、モータに印加される電流パルスの流れの結果として生ずる電気エネルギーを調整することができる。たとえば最初にモータが付勢される場合、電圧がゼロに近づくとき、電圧ゼロの近くで固体スイッチング回路204をターンオンすることができる。これにより、小さな電流パルスが生じるだけとなる。電流は、上昇してほぼ電圧がゼロに達する時点でピークに達し、次いで電圧が反転するのに従ってゼロに低下する。点弧(位相)角は、電流が定格負荷の3倍などの所望の値に達するまで、より大きな電流パルスを生じるように、徐々に進められる。最終的には、モータが起動し電流振幅が減衰し続けるのに従って、点弧角は、最終的にモータに全ライン電圧が連続的に印加されるまでさらに進められる。固体スイッチング回路を用いた例示のソフト起動技法に関する一般的な基礎情報を望む読者には、本発明と同じ譲受人に共に譲渡され、“Apparatus and Three Phase Induction Motor Starting and Stopping Control Method”という名称の米国特許第5,341,080号を参照されたい。
【0065】
始動電流が適当なレベルまでおさまった後、MEMSベースのスイッチング回路202は、適当なMEMSに適合可能なスイッチング技法を用いて、または電圧降下が比較的小さい電圧であれば、固体スイッチング回路の両端に生じている電圧で閉じることによってターンオンすることができる。この時点で、FETスイッチ210および219はターンオフすることができる。図12は、定常電流(「Iss」で示される)がMEMSベースのスイッチング回路202によって伝送される、スイッチングシステム200の状態を示す。
【0066】
MEMSベースのスイッチング回路は、そのスイッチ接点の両端に電圧があるときに導通スイッチング状態に閉路されるべきでなく、またこのような回路は、そのような接点に電流が通過しているときに非導通スイッチング状態に開路されるべきではないことに留意されたい。MEMSに適合可能なスイッチング技法の一実施例は、図1〜9に示されかつ/またはそれらに関連して説明したパルス生成技法でよい。
【0067】
スイッチングシステムを、ソフトスイッチングまたはポイントオンウェーブスイッチングを行い、それによってスイッチング回路202内の1つまたは複数のMEMSスイッチを、スイッチング回路202の両端の電圧がゼロまたはゼロに非常に近いときに閉路し、スイッチング回路202を通る電流がゼロまたはゼロに近いときに開路するように構成することにより、MEMSに適合可能なスイッチング技法の別の実施例を実現することができる。このような技法に関する基礎的な情報を望む読者には、2005年12月20日出願の米国特許出願第11/314,879号(整理番号162191−1)の“Micro-Electromechanical System Based Soft Switching”という名称の特許出願を参照されたい。
【0068】
スイッチング回路202の両端の電圧がゼロまたはゼロに非常に近い時点でスイッチを閉じることにより、1つまたは複数のMEMSスイッチが閉じるときにそれらの接点間の電界を低く保つことによって、複数のスイッチがすべて同時に閉じない場合でも、接点が接触する前のアーク発生を防止することができる。上記で触れたように、制御回路は、スイッチング回路202内の1つまたは複数のMEMSスイッチの開路と閉路を、交流電源電圧または交流負荷回路電流のゼロクロス発生に同期させるように構成することができる。過電流保護回路206は、始動事象時に障害が発生したとき、下流側の負荷およびそれぞれのスイッチング回路を保護するように構成することができる。図13に示されるように、この保護は、障害電流(Ifault)を過電流保護回路206へ移転させることによって達成される。
【0069】
最上位レベルから見たとき、電気機械および固体スイッチング回路は概念的には互いにほぼ同様な挙動をするように見えるが、実際にはこのようなスイッチング回路は大きく異なる物理的原理に基づいているので、これらはそれぞれ異なる動作特性を示し、したがって過電流保護回路は、このような特性を考慮しつつスイッチング回路を適切に作動させるように、適切に構成しなければならない場合があることに留意されたい。たとえば、MEMSスイッチは、接点を切断するために片持ち梁の機械的な動きを必要とし、電界効果固体スイッチは一般に、電圧によって誘起されるチャネル内の電荷キャリアの移動を必要とし、バイポーラ固体スイッチは逆バイアスされた接合内の電荷キャリアの注入を必要とすることがある。キャリアを取り除くのにかかる時間は回復時間と呼ばれ、この回復時間は1マイクロ秒より短い時間から100マイクロ秒より長い時間の範囲となり得る。たとえば、固体スイッチが障害状態に閉路される場合は、過電流保護回路206は、スイッチのチャネルが完全にクリアされてスイッチが完全に開路となるまで、障害電流を吸収し、固体スイッチおよび下流側の負荷を保護することができなければならない。過電流保護回路206がパルス回路52および平衡ダイオードブリッジ31を含む場合は、パルス特性(パルス回路によって生成されるパルスの幅および/または高さ)が、下流側の保護に影響を及ぼし得ることを示すことができる。たとえば過電流保護回路206は、並列固体スイッチング回路の回復時間に適応し、かつMEMSベースのスイッチング回路の障害保護に適応するように十分な幅および/または高さを有するパルスを発生することができるべきである。
【0070】
障害電流遮断に関して、2つの一般的な部類の固体スイッチング回路があることに留意されたい。一部の固体スイッチ(FETなど)は、ターンオフされると本来的に電流ゼロの状態が強制される。その他(SCRなど)は、電流ゼロの状態を強制することができない。電流ゼロの状態を強制することができる固体スイッチング回路は、障害時に電流制限を行うのに過電流保護回路206の補助が不要となり得る。電流ゼロの状態を強制できない固体スイッチング回路は、一般に過電流保護回路206が必要になる。
【0071】
前述のように、MEMSベースのスイッチング回路と固体スイッチング回路の間を行き来して選択的に電流を移転させるために、適切な制御技法が実施されなければならない。例示の一実施形態では、このような制御技法は、各スイッチング回路のそれぞれの電気的損失モデルに基づくものとすることができる。たとえば、MEMSベースのスイッチング回路での電気的損失(および付随する温度上昇)は一般に負荷電流の2乗に比例し、一方、固体スイッチング回路での損失(および付随する温度上昇)は一般に負荷電流の絶対値に比例する。また固体デバイスの熱容量は、一般にMEMSベースのスイッチング回路の熱容量よりも大きい。したがって負荷電流の正常値に対してはMEMSベースのスイッチング回路が電流を伝送することが考えられ、一時的な過負荷電流に対しては固体スイッチング回路が電流を伝送することが考えられる。したがって過渡的な過負荷状況のときは、行き来して電流を移転させることが考えられる。
【0072】
以下では、MEMSベースのスイッチング回路と固体スイッチング回路の間を行き来して選択的に負荷電流を移転させるための、3つの例示の技法について述べる。例示の一技法では、図14に示されるような二重の過電流保護回路の使用を考えるもので、移転を補助するために、第1の過電流保護回路2061と、第2の過電流保護回路2062が、MEMSベースのスイッチング回路および固体スイッチング回路に並列回路にて接続される(例示の一実施形態では、この第2の過電流保護回路も、図1〜9に示されかつ/またはそれらに関連して説明したようなパルス回路52および平衡ダイオードブリッジ31を備えることができる。)。
【0073】
スイッチングシステムが単一の過電流保護回路206のみを用いる場合、このような単一の過電流保護回路は、MEMSベースのスイッチング回路に関連するスイッチング事象が生じるとすぐに、活動化されることになることに留意されたい。しかし、その後間もなく障害が起きた場合は、単一の過電流保護回路206は、スイッチング回路を保護するために再び活動化する準備が整わないことがあり得る。上述のように過電流保護回路206は、パルス技法に基づいて動作し、したがってこのような回路は、点弧してすぐに動作するように瞬時には準備が整わなくなる。たとえば、パルス回路52内のパルスコンデンサを再充電するために、ある時間待たなければならないことになる。
【0074】
冗長型の過電流保護回路を使用する技法は、一方の過電流保護回路(たとえば回路2062)を、他方の過電流保護回路2061が正常なスイッチング事象(障害駆動でないスイッチング事象)に関連してパルス利用型スイッチングを丁度行ったときでも、自由であり、障害の場合に電流制限を支援する準備が整った状態にあることを確実にする。この技法は、比較的単純な制御により大きな設計融通性をもたらすと考えられるが、単一の過電流保護回路の代わりに二重の過電流保護回路を必要とする。この技法は、任意のタイプの固体スイッチング回路に適合可能であることに留意されたい。
【0075】
冗長型の過電流保護回路を備える例示の一実施形態では、このような回路は二重のパルス回路を含むべきであるが、二重の平衡ダイオードブリッジ31を含む必要はないことが理解されよう。たとえば、第1の過電流保護回路が個別のパルス回路52と個別の平衡ダイオードブリッジ31を備える場合は、第2の過電流保護回路は、第1の過電流保護回路の平衡ダイオードブリッジ31に適当なパルス電流を(必要なときに)印加するように構成された個別のパルス回路52を備えるだけでよい。逆に、第2の過電流保護回路が個別のパルス回路52と個別の平衡ダイオードブリッジ31を備える場合は、第1の過電流保護回路は、第2の過電流保護回路の平衡ダイオードブリッジ31に適当なパルス電流を(必要なときに)印加するように構成された個別のパルス回路52を備えるだけでよい。
【0076】
第2の例示の技法は、移転の実行を、電流ゼロに合わせるものである。これは、第2の過電流保護回路を不要にし、また任意のタイプの固体スイッチング回路に適合可能である。しかしこの技法は、より複雑な制御が必要になり、ある場合にはシステムの完全停止が必要になり得る。第3の例示の技法は、MEMSスイッチング回路および固体スイッチング回路の開路と閉路を連携させることによって電流移転を行うものである。当業者には理解されるように、この技法は、固体スイッチング回路の電圧降下が比較的小さければ用いることができる。
【0077】
いずれの場合も、制御方式は、スイッチング回路のそれぞれ1つの電流伝送能力に適した負荷電流状態に応答するなどして、過電流保護回路(単一または二重過電流保護回路)をいつ動作させるべきかを判断し、かつそれぞれのスイッチング回路をいつ開路および閉路すべきかを判断するように構成できることが理解されるべきである。一般的な概念としては、交互の電流路の間を行き来して電流を移転しながら障害電流制限を行うように準備されており、かつ負荷電流がいずれかの負荷電流伝送経路の最大能力に近づいたときに電流制限および回路の消勢を行うことである。1つの例示の制御方式は、以下のようなものとすることできる。
【0078】
大きな初期電流が生ずることを予想して、負荷を付勢するために固体スイッチング回路を使用する。電流がMEMSベースのスイッチング回路の定格内に低下した後、負荷をMEMSベースのスイッチング回路に移転する。
【0079】
正常状態において負荷を消勢する必要がある場合は、その時点でどのスイッチング回路が電流を伝送していたとしても、そうする。それがMEMSベースのスイッチング回路であれば、電流ゼロでターンオフするようにポイントオンウェーブスイッチングを用いる。
【0080】
シミュレートしたまたは感知した温度に基づいて、MEMSベースのスイッチング回路および固体スイッチング回路の両方の温度を求める。このような温度のいずれかがそれぞれの温度定格限界に近づいていると判断される場合、または負荷電流がそれぞれの最大電流伝送能力に近づいている場合(障害状態または厳しい過負荷など)、(過電流保護回路の補助により)瞬時の電流遮断を行い、MEMSベースのスイッチング回路と固体スイッチング回路の両方を開路する。この動作は、他のどの制御動作よりも先行することになる。再閉路のスイッチング動作を可能とする前に、リセットを待つ。
【0081】
正常動作時は、電流を、MEMSベースのスイッチング回路を通過させるか、固体スイッチング回路を通過させるかを判断するのに、各スイッチング回路のそれぞれの温度状態を用いることができる。一方のスイッチング回路がその温度または電流限界に近づいており、他方のスイッチング回路は依然として温度余裕がある場合は、移転は自動的に行われる。正確なタイミングは、移転の技法に依存することになる。たとえばパルス利用型移転では、移転は、移転が必要になるとすぐにほぼ瞬時に生じ得る。ポイントオンウェーブスイッチングに基づく移転では、このような移転は、次に利用可能な電流のゼロクロスが発生するまでの間に行われる(たとえば遅延される)ことになる。遅延型移転に対しては、移転が次の電流ゼロまで正しく遅延される可能性を高めるために、移転の決定に対する設定に一定の余裕が与えられるべきである。
【0082】
図15は、スイッチングシステムの例示の一実施形態の回路の詳細を示す。たとえば図15は、MEMSベースのスイッチング回路206、固体スイッチング回路204、第1のパルススイッチ54、および第2のパルススイッチ229を、それぞれ駆動するためのコントローラ208からの制御信号に応答するそれぞれのドライバ220、222、224、および228を示す。例示の一実施形態では、第1のパルススイッチ54は、個別のパルスコンデンサ56とパルスインダクタ58に結合され、これらは動作の際には同調共振回路を構成し、図1〜9に関連して述べたように、MEMSベースのスイッチング回路のターンオン事象に関連してブリッジダイオード28にパルスを印加するように構成することができる。これは、MEMSベースのスイッチング回路が閉じるときに、MEMSベースのスイッチング回路の端子の両端の電圧がゼロに等しい(またはほぼゼロに近い)ことを確実にするように適切に選ばれた時点でパルスを生成するためである。基本的にパルス信号は、微小電気機械システムスイッチング回路の導通状態へのターンオンに関連して発生される。
【0083】
この例示の実施形態では、第2のパルススイッチ229は、動作に際して同調共振回路を構成する個別のパルスインダクタ230およびパルスコンデンサ234に結合され、MEMSベースのスイッチング回路のターンオフ事象に関連してブリッジダイオード28にパルスを印加するように構成することができる。これは、MEMSベースのスイッチング回路が開くときに、MEMSベースのスイッチング回路を通る電流がゼロに等しい(またはほぼゼロに近い)ことを確実にするように適切に選ばれた時点でパルスを生成するためである。基本的にパルス信号は、微小電気機械システムスイッチング回路の非導通状態へのターンオフに関連して発生される。これは、先に触れたポイントオンウェーブ(POW)技法と組み合わせて実現することができ、それによりスイッチングシステム設計の頑健さのレベルの向上が得られる。たとえば、このパルス利用型ターンオン技法により、本発明の態様を実施したスイッチングシステムを、供給電圧の品質が、POWスイッチングのみを用いて常に高信頼度で動作させるのには適さない場合の用途に用いることが可能になると考えられる。第3のパルス回路により、第1および第2のパルス回路が正常なスイッチング事象(障害駆動でないスイッチング事象)に関連してパルス利用型スイッチングを丁度行ったときでも、1つの回路を自由で障害の場合に電流制限を支援する準備が整った状態に保つことが確実になり得ることに留意されたい。これは、図14に関連して述べた、冗長型の過電流保護の概念の延長である。
【0084】
図15はさらに、それぞれのスイッチング回路の電流伝送能力に適した負荷電流状態、およびスイッチングシステムに影響を及ぼす障害状態を、判定するために用いることできるような、電流を感知するためにコントローラ208に接続された電流センサ226を示す。
【0085】
例示の一実施形態では、モジュール間制御により、たとえば電圧スケーリングが可能なMEMSスイッチング回路モジュールのアレイ用に電気的に分離された制御信号を供給するなど、主入力コマンドを中継することができる。
【0086】
MEMSベースのスイッチング回路と並列に、電圧勾配緩和回路網と過電流保護回路がある場合、オフ状態で、ある程度のリーク電流があり得る。したがって、トリップ状態で漏洩をゼロとする必要がある用途には、分離接触器を追加することができる。このような分離接触器は、大きなレベルの負荷電流を遮断するように設計する必要はなく、したがって定格電流を伝送し印加可能な誘電電圧に耐えるように設計するだけでよく、サイズが大幅に小さくなることが理解されよう。
【0087】
以上の説明で開示されるような本発明の態様を実施した回路は、回路遮断器が必要とし得る、各要素および/または動作機能を、高信頼度でコスト効率良く実現できることが明らかであろう。たとえば、回路遮断器を特徴付けるのに有用な逆の時間関係、たとえば、I2×t=K(ここで過負荷の許容持続時間については、時間(t)と電流(I)の2乗が一定(K)となる。)で定義される過電流曲線などは、慣例的に、電流の大きさに基づいて3つの区域に分けられる。たとえば、長時間(たとえば大きなK)、短時間(たとえば小さなK)、および瞬時である。長時間および短時間の区域は共に、一般に半サイクルよりずっと長い時間に関係し、したがってポイントオンウェーブスイッチングになじみやすいことに留意されたい。しかしまた瞬時区域は、それが激しい結果を伴い1ミリ秒未満で数キロアンペアの潜在的電流に達する場合がある短絡の結果であり得るので、一般にMEMSベースのスイッチング回路によって得られるような、大幅に高速な半サイクル未満のスイッチングが必要となることに留意されたい。したがって動作の際には、本発明の態様を実施した回路は、回路遮断器において、たとえば上記の動作区域のそれぞれにわたる動作要件に合致するために必要となり得るような、各要素および/または動作機能を革新的に満たす。
【0088】
付録1および2は、本発明の態様を実施した過電流保護回路に関連する実用上の考察に関する、いくつかの実験結果および解析的基盤について説明する。
【0089】
以上、ここでは本発明の一部の特徴のみについて図示し説明してきたが、当業者なら多くの変形および変更を思いつくであろう。したがって、すべてのそのような変形および変更は、本発明の真の趣旨の範囲に含まれるものとして、添付の特許請求の範囲によって包含されると理解されるものとする。また、図面の符号に対応する特許請求の範囲中の符号は、単に本願発明の理解をより容易にするために用いられているものであり、本願発明の範囲を狭める意図で用いられたものではない。そして、本願の特許請求の範囲に記載した事項は、明細書に組み込まれ、明細書の記載事項の一部となる。
(付録1)
本発明の態様を実施した過電流保護回路は、開路時および閉路時共に、電源スイッチング動作時に、関連するMEMSベースのスイッチング回路の保護をもたらす。ダイオードブリッジを用いないと、MEMSマイクロスイッチのアレイなどのMEMSベースのスイッチング回路は、マイクロスイッチが、ある電圧に閉路される、またはある負荷電流のもとで開路される場合に損傷を受け得る。
【0090】
概念的には、閉路事象時に最初に閉じるマイクロスイッチおよび、開路事象に最後に開くマイクロスイッチが、スイッチング動作の負担の全体を担わなければならないことになり、個々のマイクロスイッチには耐えることができないものとなり得る。ダイオードブリッジは、スイッチング事象時にマイクロスイッチを保護するように、低抵抗の並列経路をもたらす。閉路時には、第1の過電流保護回路は、スイッチのアレイが閉じる前にそれらの両端の電圧を衰退させるように構成される。開路時には、第2の過電流保護回路は、スイッチのアレイが開く間、それらから電流を分流する。
【0091】
理想化された条件下では、スイッチアレイを分路するダイオードブリッジの2つの枝路は、完全な短絡として動作することになり、迂回されている電流の大きさに関わらず、2つの枝路の間にはゼロの電圧降下を確立することになる。理想的にはスイッチは、それらが開くときにそれらを通って流れる電流がない、コールドスイッチングを行うことになる。しかし、実際の回路ではダイオードは必ずしも厳密に整合していないことがあるので、ダイオードはいくらかの電圧降下を有することになり、スイッチが開くときにそれらの両端にいくらかの残留電圧が存在する場合があり、それによってウォームスイッチングを構成する。電圧が十分に大きい場合は、ホットスイッチング条件下において接点の腐食および/または溶着が生じ得る。実際、ダイオードブリッジの枝路の両端の残留電圧のレベルが、実質的に動作の限界を規定することになる。
【0092】
同様に、アレイ内の最後のスイッチが開くときは、それを通って流れる比較的少量の電流が存在することがあり、これは瞬時に第2のダイオードブリッジへ迂回され、対応する小さな誘導電圧キックを生じる。付録1では、残留ブリッジ電圧の影響について述べ、ダイオードブリッジおよびスナバ回路の解析および設計に用いることができる式を示す。結果は、この付録1にまとめられる。
【0093】
この解析は、一般にターンオン動作よりも、ターンオフ動作の方がスイッチにストレスを与えるのでターンオフ動作に焦点を合わせる。ターンオフ動作時には、関心が持たれる一続きの事象の例としては、以下が含まれる。
【0094】
・ ターンオフパルスを発生する前には、MEMSマイクロスイッチの並列アレイ内の各スイッチは閉じており、したがってそれらが全負荷電流を伝送していると仮定する。アレイの両端には、負荷電流にアレイの正味の抵抗を乗じたものに等しい、通常十分の数ボルトの電圧が存在し得る。変化するアレイ電圧に応答した、アレイ内のスイッチのホットスポット温度の上昇および低下は、スイッチの適切な熱モデルから得ることができる。スイッチのアレイの両端の電圧のrms値に依存する平均温度と、変化する電圧および熱モデルに依存する温度変動が存在することになる。基本的事項は、ターンオフパルスをトリガする前では、接点が高温であり得ることである。
【0095】
・ 例示の一実施形態では、ターンオフパルス回路は、それぞれのインダクタとコンデンサの共振周波数のほぼ半サイクルの間続くほぼ正弦波の電流パルスを形成することができる。ターンオフ電流が負荷電流を超える時間間隔の間、ダイオードブリッジ内の4つすべてのダイオードは順方向に電流を導通し、結果としてMEMSマイクロスイッチアレイの両端で低い電圧となる。電圧の値は比較的小さくなり得るが、ゼロではない可能性が高く、かつ時間と共に変化する。特定の挙動は、どれだけブリッジが良く平衡しているか、ダイオード特性、負荷電流、およびターンオフパルスの特性などの要因に依存する。
【0096】
・ ターンオフ動作時のMEMSスイッチの両端の電圧の波形の詳細は、ダイオード特性、それらのパラメータ変動、瞬時ターンオフ電流、および瞬時負荷電流に依存し得る。ワーストケース電圧は、ターンオフパルスの開始時および終了時、または中間で生じ得る。ブリッジが良く平衡している場合は、ターンオフパルスのピークにて電圧が最低となる。逆に、ダイオードブリッジの平衡が良くない場合は、ターンオフパルスのピークにて電圧が最高となる。ダイオード電圧の主要部分をダイオード抵抗が占める場合は、残留電圧は主に負荷電流に依存し、ターンオフパルスの持続時間を通して非常に大きくは変化しない。
【0097】
・ ターンオフパルスの開始時に、各スイッチが依然として閉じている間、負荷電流の一部はスイッチアレイからダイオードブリッジへ迂回して、アレイの両端の電圧を低下させる。しかし迂回される電流の大きさは、比較的小さい。これは、一般にスイッチのアレイは、ダイオードブリッジを通る経路よりもずっと低い抵抗の経路をもたらすことによる。
【0098】
・ プロセスのある時点で、スイッチは開き始める。実際の回路では、このようなスイッチは、必ずしも全く同時には開かない。主として機械的ばらつきに依存する時間上の分布が存在し、最初に開くスイッチと最後に開くスイッチの間の時間間隔は、約数百ナノ秒となる。このような分布を、所与の用途に対して求めることが望ましくなり得る。
【0099】
・ それぞれの個々のスイッチが開くにつれて、アレイ抵抗の値のステップ状の増加が徐々に生じる。スイッチが開き始めるとき、それが時間分布の最後のスイッチでないと仮定すると、全負荷電流のうちのその分担は、最初に、アレイ内の残りの閉じているスイッチに迂回され、アレイ電圧を上昇させ、結果としてアレイ電圧とダイオードブリッジ電圧の間に電圧不平衡を生じる。ブリッジループインダクタンスの両端に電圧の不平衡が現れ、次のスイッチが開く前に、ブリッジとアレイの間の電流共有を再平衡させるL−R過渡現象を駆動する。
【0100】
・ 最初の少数のスイッチが開く間、負荷電流の大部分は、アレイ内の残りの閉じているスイッチを通って流れる。さらに多くのスイッチが開き、アレイの抵抗が上昇するにつれて、負荷電流はダイオードブリッジ内へ迂回する。最後の少数のスイッチが開く間は、負荷電流の大部分はダイオードブリッジを通って流れ、この解析の焦点であるブリッジ電圧を生成する。最後の少数のスイッチを通る電流は、ブリッジ電圧をスイッチ抵抗、すなわち導通している経路が最終的に遮断されるときに、電流を導通している少数の閉じたスイッチの直並列回路網が存在する構成に対する等価スイッチ抵抗で除した値に等しい。
【0101】
・ MEMSスイッチを通る残留電流が遮断され、ダイオードブリッジ内へ迂回される時点が来ることになり、これによりウォームスイッチングが構成される。遮断される電流の大きさは、スイッチの抵抗、およびダイオードブリッジの電気的特性に依存する。電流は、ターンオフ動作の前にスイッチを通って流れる電流よりも大幅に小さくあるいは大きくなる場合があり、この電流はスイッチのウォームスイッチング能力より大幅に小さくあるいは大きくなり得る。さらに、最後のスイッチの接点が低抵抗から開路へ移行するのにかかる時間間隔(たとえば比較的小さな、1ナノ秒のうちのわずかな時間)において、電流を最後のスイッチから、(ターンオフ用に構成された)過電流保護回路へ迂回させるために必要な、小さな誘導電圧キックが生じることになる。実際、実用的な観点からは、時間間隔はゼロにもなり得る。その場合には、誘導性キックを制御するのに比較的小さなスナバコンデンサを設けることができる。
【0102】
上記に示唆されたように、一続きの事象における最後のステップの間のウォームスイッチングおよび誘導電圧キックは、接点の固着、溶着、溶融、および/またはアーク発生になり得る。著しい接点の損傷がない場合でも、最終的に接点の使用寿命を制限し得るわずかな接点の腐食を生じ得る。
【0103】
ターンオン時にも、接点を損傷することがあり得る。ターンオン時に適用可能なステップの多くは、そのようなステップが逆の順序となり得ることを除いて、ターンオフ時のものと同じであることに留意されたい。したがって、以下の解析の多くは、いずれの状況にも当てはまる。いくつかの注目すべき差異は、以下の通りである。
【0104】
・ ターンオンの開始時では、負荷電流は流れていない。電流は、特に障害がある場合は、急速に上昇し得るが、ゼロから始まるので、ターンオフ動作時に流れ得る電流ほど大きくなるとは予想されない。
【0105】
・ ターンオフ動作のような誘導電圧キックは、予想されない。この問題の別の見方としては、スイッチ電圧が衰退するにつれて、スナバコンデンサが電流を供給するということである。ただし、スナバコンデンサの放電電流は、MEMSスイッチを通ってではなく、ダイオードブリッジを通って流れる。
【0106】
ターンオフ動作時は、電流をダイオードブリッジへ迂回する最後のスイッチは、数百ナノ秒程度の短い時間、追加の電流を導通し得ることが予想され、その電流のウォームスイッチングを行うことが予想される。電流の大きさは、ダイオードブリッジによって発生される残留電圧をスイッチの抵抗で除した値にほぼ等しい。スイッチング時には、スイッチにて誘導性キックが短い持続時間の高電圧パルスを生成することがあり、これは接点空隙の電気的降伏電圧が増大する速度よりも速く上昇し、これが非常に短い時間の間、アーク発生を引き起こし得る。
【0107】
理想的には、ダイオードブリッジが導通している間、MEMSスイッチのアレイの両端の電圧がゼロであることが望まれる。これは、MEMSスイッチに対するコールドスイッチング条件となる。しかし、結果として「ウォームスイッチング」条件、および場合によってさらには「ホットスイッチング」条件を生ずる残留電圧が存在することになる。この電圧になり得る、以下の2つの効果がある。
【0108】
1.ブリッジ内の各ダイオードの両端の順方向電圧は、理想化されたゼロの値ではない。そうではなく、各ダイオードは、それを通る電流に応じた小さな電圧を発生する。アレイ内の最後のスイッチが開くとき、その時点では、負荷電流の大部分はダイオードブリッジを通って流れる。したがって各ダイオードが伝送する電流は、全く同じではない。ブリッジ内の4つすべてのダイオードが厳密に同一であったとしても、ブリッジは負荷電流によって不平衡となり、最後に開くMEMSスイッチの両端に電圧を生じる。
【0109】
2.ブリッジ内の4つのダイオードの電気的特性は、同一ではない。これは、追加のブリッジ不平衡を生じ得る。
【0110】
これら2つの効果の理論的基盤は、添付の付録2に含まれる回路解析において解析される。結果を以下にまとめる。電流移転の最終段階の間の例示の等価回路は、説明図E1に示される。電圧
【0111】
【数1】
【0112】
は、公称ダイオード電圧および不平衡変化による、ダイオードブリッジの枝路の両端の残留電圧である。
【0113】
【数2】
【0114】
は、電圧をスイッチ抵抗で除した値に基づいて、最後のスイッチを通る電流を確立し、またスナバコンデンサ上に小さな電圧を確立する。パルス形成インダクタ(LHALT)およびスナバインダクタ(LSNUB)は、それぞれ移転に関係するインダクタンスを表す。パルス形成インダクタのインダクタンスは、スイッチから過電流保護回路への電流の移転を完成するのに必要なループ電流のインダクタンスを表し、数十ナノヘンリー程度となり得る。スナバインダクタンスは、スナバコンデンサのスイッチアレイへの接続の浮遊インダクタンスを表す。接続は、このインダクタンスの値を小さくするように可能な限り詰めるべきである。スナバ接続の浮遊インダクタンスを数ナノヘンリーに制限することは可能である。スナバ抵抗は、スナバコンデンサと直列に接続し得る抵抗器である。
【0115】
最後に開くスイッチは、理想化されたスイッチと直列の、接点抵抗としてモデル化される。スイッチが実際にどれだけ速く開くかに応じて、このようなスイッチを、接点圧力がゼロになるのにかかる時間間隔、例えば0.01から10ナノ秒程度の期間にわたって、閉路接点抵抗から開始して無限大まで上昇する、時間的に変化する抵抗としてモデル化するのが適切であることが理解されよう。
【0116】
【表1】
【0117】
残留ブリッジ電圧の効果
式(1)により、最後に開くスイッチの両端の電圧
【0118】
【数3】
【0119】
は、2つの効果によって生じる電圧の和に等しく、電流は、その電圧を1組の接点の接点抵抗で除した値に等しい。
【0120】
【数4】
【0121】
絶対値演算子を用いているのは、電圧の符号には関心がなく、2つの効果が反対の符号をもつ電圧を生じることは期待できないことを強調するためであることが理解されよう。効果の大きさ、および全体の大きさのみに関心がある。
【0122】
ダイオードブリッジ回路に用いることができるタイプの半導体ダイオードの、順方向導通時の、電圧−電流特性の例示のモデルは、式(2)で与えられる。
【0123】
【数5】
【0124】
式(2)のモデルから始めて、第1の効果による、ターンオフパルス電流、負荷電流、およびダイオードモデルパラメータで表した、最後に開くスイッチの両端の電圧に対する閉じた形の数式を得ることができる。詳細は付録2を参照されたい。公称ダイオード電圧による残留電圧に対する正確な近似は、式(3)で与えられ、ここでダイオードパラメータは式(2)からのものである。
【0125】
【数6】
【0126】
式(3)に入るのは、ターンオフパルス電流のピークではなく、「最後のスイッチが開く時点で」流れているパルス電流であることに留意されたい。式(3)はまた、時間の関数としてのターンオフパルス電流と負荷電流で表した、時間の関数としての可能な公称残留電圧を表していると見なすとができる。
【0127】
典型的な状況に注目することが有益である。まず、例示のダイオードパラメータを用いることにする。付録2で説明されるように、発明者らの実験テストに用いた、ダイオードタイプPDU540などのタイプのダイオードの1つの電圧−電流特性は、摂氏25°において式(4)で与えられるモデルパラメータを有する。
【0128】
【数7】
【0129】
発明者らのテストの1つでは、4つのPDU540ダイオードを用いたダイオードブリッジを通る40アンペアのパルス電流により、10アンペアの負荷電流を迂回させることを試みた。これらの値およびダイオードパラメータを式(3)に代入すると、1オームの接点抵抗を有する、最後に開き、かつ電流がホットスイッチングされるべきスイッチの両端の電圧は、次式で与えられることが分かる。
【0130】
【数8】
【0131】
式(3)は、並列スイッチの単一のアレイ、4つのダイオードを備える単一のダイオードブリッジ、および単一のターンオフパルス回路に当てはまる。式は、他の構成にも容易に拡張することができる。たとえば、ブリッジの4辺のそれぞれに、並列なN個のダイオードがあることを除いて、すべてが同じであると仮定する。この場合は、残留電圧は次式で与えられる。
【0132】
【数9】
【0133】
式(6)は、予想し得るように、ダイオードを並列に配置することで、ダイオード抵抗の影響が低減されることを示している。おそらく、より直感的ではないが、解析によって裏付けられることは、ダイオードの半導体接合による、残留電圧への寄与は変わらないという結果である。ダイオードを並列にすることで、各ダイオードを通る電流も低減されることに留意されたい。
【0134】
ダイオードを直列に配置することは、式(3)の両方の項を増加させ、推奨されない。ブリッジの各辺にN個の直列のダイオードを有する構成に対する電圧は、次式で与えられる。
【0135】
【数10】
【0136】
もう1つの例示の構成は、単一のダイオードブリッジによって保護される直並列スイッチアレイである。公称残留ターンオフ電圧を求めるのに、式(3)は依然として当てはまるが、「ホットスイッチング」される電流の最大の大きさを求めるのには、式(1)は修正されるべきである。スイッチの直並列アレイの開路時に、並列モジュールの1つの中の最後のスイッチが開く時点が来ることになる。このスイッチは、開くときに、直並列アレイを通る残りの電流のすべてをアレイからダイオードブリッジへ迂回させるので、このスイッチは、最も大きな「ホットスイッチング」ストレスを受ける。その時点で、他のモジュール内には依然として閉じている少数のスイッチが存在するので、最悪ストレスを受けるスイッチを通る電流は、ダイオードブリッジの残留電圧を、依然として閉じている残りのスイッチの直並列接続の等価抵抗で除した値に等しい。ワーストケースのシナリオでは、1つのモジュールが、他のすべての直列モジュールよりも大幅に早く開き得る。その場合は、最後のスイッチに対するホットスイッチング電流は、残留電圧を1つのスイッチの抵抗で除した値に等しくなる。ベストケースでは、他の直列モジュールのそれぞれにちょうど1つの依然として閉じたスイッチが存在するように、モジュールのすべてがほぼ同時に開く。その場合は、最後に開くスイッチのホットスイッチング電流は、残留電圧を直列の複数のスイッチの抵抗で除した値に等しい。
【0137】
他の例示の構成は、各直列モジュールに対して、別のターンオフ回路およびブリッジを設けるものである。その場合は、直列モジュールは減結合されるようになり、やはり式(1)および(3)を直接適用することができる。
【0138】
式(1)および(3)は、ターンオフ用に構成された過電流保護回路、およびMEMSスイッチアレイを、電流および電圧に対してどのようにスケーリングすることができるかを示唆している。一般には、たとえどれだけ多くのスイッチが並列になっていようとも、最後に開くスイッチが常に存在することになる。最後のスイッチが開くときに、それがホットスイッチングすることになる電流の大きさは、残留電圧を1つの接点の抵抗で除した値に等しい。したがって、スケーラビリティを実現するためには、いったん、あるレベルの負荷電流で動作する構成を開発し、より高いレベルの負荷電流を達成するには、式(3)で与えられるものと同じ公称残留電圧を生成しなければならない。これは、ターンオフパルス電流を、負荷電流とほぼ同じ率だけスケーリングすべきであることを意味し、ダイオード抵抗を、その率の逆数だけ低減しなければならない。所与のダイオードタイプを用いて、これを行う1つの方法は、倍率と同じ数のダイオードを並列に用いることである。たとえば、40アンペアのターンオフパルス電流と、ブリッジの各辺に、あるタイプの単一のダイオードを用いて、10アンペアの負荷をスイッチングするのに適用可能な第1の設計から、100アンペアの負荷をスイッチングするのに適用可能な第2の設計へ移行するには、400アンペアのターンオフパルス電流と、並列の10個のダイオードが必要となり得る。式(2)および(3)内の抵抗パラメータは、ダイオード抵抗、および回路基板内のターンオフ電流および負荷電流を伝送する導電性トレースの抵抗の両方を含み、したがって実際には、負荷電流と同じ率だけトレースの厚さもスケーリングして増すべきであることに留意されたい。
【0139】
式(3)はまた、電圧に対してスケーリングする1つの例示の方法は、各直列モジュールに対してそれぞれダイオードブリッジを含む、(ターンオフ用に構成された)別の過電流保護回路を設けることを示唆している。すなわち各モジュールは、すべての部品と回路に関して自己完結型であるべきである。その場合は、そのような自己完結型のモジュールを積み重ねることによって高電圧を達成することができる。システム全体に対して、単一のダイオードブリッジ内に、ダイオードを直列に配置することは、スケーラビリティに対して不利になると考えられる。
【0140】
次に、第2の効果の解析へ進む。すなわち、ダイオードパラメータの変動による残留電圧への寄与である。式(3)を導くために用いられた仮定の1つは、ダイオードが同一であるということである。実際は、実用的な回路では、それらは同一ではない。たとえば、PDU540ダイオードの場合は、電圧−電流特性は温度に強く依存する。各ダイオードが異なる温度となる、いくつかの例がある。たとえば、それらがスイッチ自体などの熱源の近くに置かれることがあり得る。ターンオフ回路の動作時に、それらは不均一な加熱を受け得る。したがって、ブリッジ内の4つのダイオードが、同じ温度にならない場合があり、追加の残留電圧を生じることを考慮すべきである。式(3)で与えられる電圧に加えて、ダイオードパラメータのわずかなシフトで表されるダイオードブリッジ内部の不平衡による追加の電圧寄与が生じ得る。別紙内で導かれる以下の式は、ダイオードパラメータの変動による追加の残留電圧に関するワーストケースのシナリオを計算している。電圧は、公称値からのパラメータの変動によって表される。
【0141】
【数11】
【0142】
数値的な例として、前項での例について、PDU540ダイオードの公称値から5%のダイオードパラメータの変動があると仮定する。その場合は、追加の残留電圧は次のように計算される。
【0143】
【数12】
【0144】
これは5%のダイオードパラメータの変動を受けることになることを示唆しているのではなく、その影響がどうなるかを示しているに過ぎないことに留意すべきである。百分率で言えば、最も大きく影響を受けやすいのは、ダイオード電圧パラメータの変動によるものであり、これは温度に強く依存する。温度効果を精査することによって、予想され得る実際のパラメータ変動の正確な推定を求め、次いで式(8)を用いて残留電圧を推定することが有用であることが示唆される。この例では総残留電圧は、ダイオード公称電圧による0.38ボルトにダイオード不平衡電圧による0.156ボルトを加え、全体で0.536ボルトに等しくなり、これはおそらく単一の1組の接点の能力を超える。
【0145】
式(3)と(8)を組み合わせることにより、ダイオードブリッジへの電流の最終的な移転の瞬間での総残留電圧に対する数式が得られ、ただし、IHおよびILは、移転の時点でのターンオフパルス電流および負荷電流の値である。
【0146】
【数13】
【0147】
式(10)は、電流をダイオードブリッジへ移転する最後のスイッチの両端の総残留電圧を推定するために用いることができる。式(10)は、いくつかの例示的な設計トレードオフをはっきりと示している。たとえば、ターンオフパルス電流が、どのように残留電圧に影響を及ぼすかに注目すべきである。式(10)の最初の項は、ターンオフパルス電流が増加されるのに従って減少し続けるが、式の最後の項は、ターンオフ電流に比例する。式(10)のターンオフ電流に対するプロットは、その位置が、負荷電流を含む他のすべてのパラメータに依存する、幅の広い最大値が明らかになるであろう。式(10)は、所与の用途、MEMSスイッチ特性、MEMSアレイ構成、および他のターンオフパラメータの要件を満たすダイオードブリッジを設計するための基準として用いることができる。
(付録2)
公称ダイオード電圧にパラメータ変動を加えたものによる残留ブリッジ電圧を求めるために、説明図A1内の回路図を解析することができる。
【0148】
【表2】
【0149】
【数14】
【0150】
を求める場合の解析の焦点は、ダイオードの電圧−電流特性から生じる残留ブリッジ電圧である。電流ILは、MEMSマイクロスイッチアレイから分流される負荷電流である。電流IHは、すべてのダイオードに対して順方向バイアスを維持するために用いられるターンオフパルス電流である。
【0151】
妥当な理論的根拠を有し、順方向バイアスされたダイオードの電圧−電流特性に密接に適合する、3個のパラメータのダイオードモデルは、式(A1)により与えられる。
【0152】
【数15】
【0153】
式(A1)におけるモデルに対するパラメータは、通常、様々な温度での電圧に対する電流の対数としてプロットされる、公開された電圧−電流曲線から推定することができる。電流および電圧の小さな値に対しては、式(A1)の最初の項が主要部分を占め、したがってVDはプロットの傾きから推定することができ、次いでIDは、直線上の点の1つにフィットさせることによって求めることができる。次いでRDは、より高い電流でのプロットされた電圧と直線近似の差によって推定することができる。PDU540ダイオードについては、以下の表が様々な温度でのパラメータ値を示す。
【0154】
【表3】
【0155】
説明図A1内の4つすべてのダイオードが、式A1によって与えられる同一のモデルを有すると仮定して解析を始める。それぞれのダイオードの両端の順方向電圧を、V1、V2、V3、およびV4として表す。それらを通る順方向電流を、I1、I2、I3、およびI4として表す。式(A2)で与えられる電気回路網の制約のもとで、
【0156】
【数16】
【0157】
を求めることが望まれる。
【0158】
【数17】
【0159】
電流は、式(A1)を式(A2)に代入し、結果として得られる非線形方程式の系を解くことによって求めることができる。結果は、式(A3)および(A4)によって与えられ、これらは直接代入することによって検証することができる。
【0160】
【数18】
【0161】
【数19】
【0162】
式(A4)を(A2)内の電圧の式に代入することによって、式(A5)を生ずる。
【0163】
【数20】
【0164】
実際には、IDは、IHおよびILに比べると比較的小さい。たとえばPDU540ダイオードの場合は、IDはダイオードの全定格温度範囲にわたって1マイクロアンペアののうちのわずかな大きさを超えることはなく、一方、IHおよびILは数十アンペアである。したがって、式(A5)内のIDは無視することができ、式(A6)で与えられる近似式を生ずる。
【0165】
【数21】
【0166】
式(A6)は、4つすべてのダイオードが同一の電流−電圧特性を有するという理想的な仮定に基づいており、より完全な解析の出発点に過ぎない。ダイオードブリッジ内にわずかな不平衡を生じ、それによって追加の残留ブリッジ電圧を生じる、ダイオードの電気的モデルパラメータのわずかな変動が生ずる可能性があり、これは以下のように解析することができる。
【0167】
・ 追加の残留電圧は小さく、十分の1ボルト程度である。したがってダイオードパラメータの変動は小さく、実際の状況を式(A3)および(A4)からのわずかな偏移として表すように、テーラー展開を用いることができる。
【0168】
・ 各ダイオードの両端の電圧は、式(A4)によって与えられる基底電圧に、ダイオードモデルパラメータの変動およびそれによるダイオード電流の変化によるテーラー展開の1次項を加算した値として表される。
【0169】
・ ダイオード電流自体は、式(A3)により与えられる基底電流に、ループ不平衡電流を加えたものによって表すことができる。
【0170】
・ 回路網の制約を適用することにより、結果として、ループ不平衡電流とダイオード電圧シフトに対して解くことができる線形方程式の系を得る。
【0171】
・ 追加の残留電圧は、ダイオード電圧シフトによって表される。
【0172】
まず、式(A7)によって与えられる近似ダイオードモデルを用いることによって解析を簡略化することができる。近似は、ダイオード電流がIDよりも数桁大きくなるという事実によって正当化される。
【0173】
【数22】
【0174】
モデルパラメータのわずかなシフト、モデルパラメータ、およびダイオード電流によって表されるダイオード電圧における変化を表すテーラー展開は、次式で与えられる。
【0175】
【数23】
【0176】
式(A8)は、各ダイオードに別々に適用されることになる。これは2つの部分、すなわちパラメータシフトによる電圧シフトを表す一方の部分と、電流シフトによる電圧シフトを表す他方の項とに分解することができる。
【0177】
【数24】
【0178】
パラメータシフトは上方向にも下方向にもなり得るので、式(A9)の第2項の負号は、実際には重要ではないことに留意されたい。関心があるのは、パラメータシフトが最悪状況を生じる方向であるときの電圧シフトの大きさである。
【0179】
【数25】
【0180】
各ダイオードに対する電流シフトは関係しており、なぜならそれらが図A1の回路網の各ノードでは加算されてゼロになるべきであるからである。各ダイオードにおける総電流は、式(A11)により、電流シフトおよびHALT電流および負荷電流によって表すことができる。
【0181】
【数26】
【0182】
各ダイオードでの電圧シフトは、式(A12)によって表される。
【0183】
【数27】
【0184】
ダイオードループを一巡した電圧シフトの総和は、ゼロとなるべきである。
【0185】
【数28】
【0186】
(A13)を(A12)と組み合わせて、次式となる。
【0187】
【数29】
【0188】
式(A3)を式(A14)に代入して解くことにより、ループ電流シフトに対する以下の数式となる。
【0189】
【数30】
【0190】
スイッチでの残留電圧に関する限り、式(A16)で表される、ダイオードの対の間の変動の差に関心がある。
【0191】
【数31】
【0192】
式(A15)および式(A3)を式(A16)に代入すると、かなり興味深い、直感的で簡単な結果を生ずる。
【0193】
【数32】
【0194】
式(A17)に対しては、直感的に説明される。分子内の項は、ダイオードブリッジが閉ループでなかったなら生ずるであろうパラメータシフトによる、ダイオード電圧シフトである。ループ内の4つのダイオードは、ブリッジの枝路にて各寄与を事実上半分に分割する分圧器を形成するので、各項の半分だけが残留電圧として現れる。ダイオードD1とD2の直列接続の抵抗増加量は、対称性の理由によりダイオードD3とD4の直列接続の抵抗増加量と全く同じである。ダイオードD1またはD4の順方向降下の増加は、残留電圧を正方向に増加させ、一方、ダイオードD2またはD3の順方向降下の増加は、残留電圧を負方向に増加させる。
【0195】
式(A10)および式(A17)は、ダイオードパラメータシフトの任意の特定の構成による追加の残留電圧を推定するために、共に用いることができる。式(A10)は各ダイオードに適用され、ダイオードのパラメータの公称値からのシフトによるその寄与が計算される。次いでスイッチにおける全体の効果を計算するために、式(A17)が用いられる。
【0196】
式(A10)および式(A17)はまた、ワーストケースのシナリオによる影響を推定するのに用いることができる。ワーストケースでは、個々の項の符号は、すべてが互いに強め合うようになり、ダイオード変動によるワーストケースの追加の残留電圧に対する、以下の近似式となる。
【0197】
【数33】
【図面の簡単な説明】
【0198】
【図1】本技法の態様による、例示のMEMSベースのスイッチングシステムのブロック図である。
【図2】図1に示されるMEMSベースのスイッチングシステムを示す概略図である。
【図3】図2に示されるMEMSベースのスイッチングシステムの例示の動作を示す概略フローチャートである。
【図4】図2に示されるMEMSベースのスイッチングシステムの例示の動作を示す概略フローチャートである。
【図5】図2に示されるMEMSベースのスイッチングシステムの例示の動作を示す概略フローチャートである。
【図6A】MEMSスイッチの直並列アレイを示す概略図である。
【図6B】2つ以上のMEMSスイッチを直列回路にて接続するための例示の実施形態の概略図である。
【図6C】2つ以上のMEMSスイッチを直列回路にて接続するための例示の実施形態の概略図である。
【図7】勾配緩和型MEMSスイッチを示す概略図である。
【図8】図1のMEMSベースのスイッチングシステムを有するシステムの動作フローを示すフロー図である。
【図9】スイッチングシステムのターンオフを表す、実験結果のグラフである。
【図10】本発明の態様による例示のスイッチングシステムを示すブロック図である。
【図11】負荷開始事象時などの、それぞれの固体スイッチング回路を通る電流路を示す、図10のスイッチングシステムの例示の一実施形態の回路詳細を示す図である。
【図12】定常動作時などの、それぞれのMEMSベースのスイッチング回路を通る電流路を示す、図10のスイッチングシステムの例示の一実施形態の回路詳細を示す図である。
【図13】障害状態時などの、過電流保護回路を通る電流路を示す、図10のスイッチングシステムの例示の一実施形態の回路詳細を示す図である。
【図14】二重過電流保護回路を有する、スイッチングシステムの例示の一実施形態の概略図である。
【図15】図10のスイッチングシステムの例示の一実施形態の、回路の詳細を示す図である。
【図16】固体スイッチング回路が、逆直列回路構成に接続された1対の固体スイッチを含む、例示の一実施形態を示す図である。
【図17】スイッチングシステムのターンオンを表す実験結果のグラフである。
【図18】スイッチングシステムのターンオンを表す実験結果のグラフである。
【符号の説明】
【0199】
28 平衡ダイオードブリッジ
50 負荷電流
54 第1のパルススイッチ
56 コンデンサ
58 インダクタ
204 固体スイッチング回路
206 微小電気機械システムスイッチング回路
208 コントローラ
229 第2のパルススイッチ
230 インダクタ
234 コンデンサ
2061 第1の過電流保護回路
2062 第2の過電流保護回路
【技術分野】
【0001】
関連出願
本発明の実施形態は、一般に電気回路に関し、より具体的には微小電気機械システム(MEMS)ベースのスイッチングデバイスに関し、さらにより具体的には、MEMSスイッチングデバイスのターンオンおよび/またはターンオフ時などのスイッチング事象時にアーク形成を抑制するための回路を有するシステムに関する。
【背景技術】
【0002】
回路遮断器は、回路内の障害によって生じる損傷から電気機器を保護するように設計された電気デバイスである。通常、ほとんどの従来の回路遮断器は、嵩張る電気機械スイッチを含む。残念ながら、これらの従来の回路遮断器は、サイズが大きく、それによりスイッチング機構を活動化するのに大きな力を用いることが必要になる。さらに、一般にこれらの回路遮断器のスイッチは、比較的低速で動作する。さらに、これらの回路遮断器は、不利な点として組み立てが複雑であり、したがって製造に費用がかかる。加えて、従来の回路遮断器内のスイッチング機構の接点が物理的に分離するとき、通常、そこにアークが形成され、回路内の電流が途絶えるまで、その間で電流を伝送し続ける。さらに、アークに伴うエネルギーは、接点を著しく損傷し、かつ/または人員に火傷の危険を及ぼす。
【0003】
低速の電気機械スイッチの代替として、高速スイッチング用途では、比較的高速な固体スイッチが用いることが知られている。理解されるように、これらの固体スイッチは、電圧すなわちバイアスの制御された印加によって、導通状態と非導通状態の間を切り換える。たとえば、固体スイッチを逆バイアスすることによって、スイッチを非導通状態に遷移させることができる。
【特許文献1】米国特許出願第11/621,623号公報
【特許文献2】米国特許出願第11/314,336号公報
【特許文献3】米国特許第5,341,080号
【特許文献4】米国特許出願第11/314,879号
【特許文献5】米国特許出願公開第2005/0146814号公報
【特許文献6】米国特許出願公開第2005/0146404号公報
【特許文献7】米国特許第6,760,202号公報
【特許文献8】米国特許第6,738,246号公報
【特許文献9】米国特許出願公開第2003/0183838号公報
【特許文献10】米国特許第6,563,683号公報
【特許文献11】米国特許第5,430,597号公報
【特許文献12】米国特許第4,723,187号公報
【特許文献13】米国特許第4,700,256号公報
【特許文献14】米国特許第4,500,934号公報
【特許文献15】米国特許第5,164,872号公報
【特許文献16】米国特許第3,809,959号公報
【特許文献17】米国特許第5,374,792号公報
【特許文献18】米国特許出願公開第2007/0139829号公報
【特許文献19】米国特許出願公開第2007/0139830号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかし固体スイッチは、非導通状態に切り換えられるとき、接点間に物理的な空隙を生じないので、リーク電流の影響を受ける。さらに、固体スイッチが導通状態で動作するとき、内部抵抗によって電圧降下を生じる。通常の動作状況において、電圧降下およびリーク電流は、共に過大な熱の発生の要因となり、スイッチの性能および寿命に対して有害となり得る。
【課題を解決するための手段】
【0005】
一般に、本発明の態様は、微小電気機械システムスイッチング回路を含むシステムを提供する。第1の過電流保護回路は、微小電気機械システムスイッチング回路と並列回路にて接続される。第1の過電流保護回路は、微小電気機械システムスイッチング回路の第1のスイッチング事象に応答して瞬間的に導電路を形成するように構成される。この導電路は、第1のスイッチング事象時に、微小電気機械システムスイッチング回路の接点の両端の電圧レベルを抑制するために、微小電気機械システムスイッチング回路との並列回路を形成する。第2の過電流保護回路は、微小電気機械システムスイッチング回路および第1の過電流保護回路と並列回路にて接続される。第2の過電流保護回路は、微小電気機械システムスイッチング回路の第2のスイッチング事象に応答して瞬間的に導電路を形成するように構成される。導電路は、第2のスイッチング事象時に、微小電気機械システムスイッチング回路の接点を通る電流の流れを抑制するために微小電気機械システムスイッチング回路との並列回路を形成する。
【0006】
本発明の他の態様は、微小電気機械システムスイッチング回路を含むシステムを提供する。微小電気機械システムスイッチング回路と並列回路にて、少なくとも第1の過電流保護回路を接続することができる。第1の過電流保護回路は、微小電気機械システムスイッチング回路の第1のスイッチング事象に応答して瞬間的に導電路を形成するように構成することができる。導電路は、第1のスイッチング事象時に微小電気機械システムスイッチング回路の接点の両端の電圧を抑制するために微小電気機械システムスイッチング回路との並列回路を形成する。
【0007】
本発明の上記その他の特徴、態様、および利点は、各図面を通して同様な文字は同様な部分を表している添付の図面を参照して、以下の詳細な説明を読めば、より良く理解されよう。
【発明を実施するための最良の形態】
【0008】
本発明の1つまたは複数の実施形態による、微小電気機械システム(MEMS)スイッチング回路を含むシステムについて説明する。以下の詳細な説明では、本発明の様々な実施形態の十分な理解を得るために、数多くの特定の詳細が記載される。しかし当業者には、本発明の実施形態はこれらの特定の詳細がなくとも実施することができ、本発明は示された実施形態に限定されず、本発明は様々な代替実施形態で実施できることが理解されよう。その他の場合、良く知られた方法、手順、および構成部品については、詳細には説明されない。
【0009】
さらに、様々な動作を、本発明の実施形態の理解に役立つように行われる複数の個別の段階として説明する場合がある。しかし説明の順序は、これらの動作が説明された順序で行われる必要があると理解されるべきではなく、さらにはそれらが順序に依存すると理解されるべきではない。さらに、繰り返し用いられる「一実施形態」の語句は、その場合もあり得るが、必ずしも同じ実施形態を指すものではない。最後に、本出願で用いられる「備える」、「含む」、「有する」などの用語は、特に明記しない限り同義であるものとする。
【0010】
図1は、本発明の態様による、例示の微小電気機械システム(MEMS)ベースのスイッチングシステム10を示すブロック図である。現在、MEMSは、たとえば、機能的に異なる複数の要素、たとえば機械要素、電気機械要素、センサ、アクチュエータ、および電子回路部を、微細加工技術によって共通の基板上に集積することができるミクロンスケールの構造を指す。しかし、MEMSデバイスにおいて現在利用可能な多くの技法および構造は、数年後にはナノテクノロジーベースのデバイス、たとえば大きさを100nm未満とすることができる構造を用いて、利用可能になると考えられる。したがって、本文書全体で説明される例示の実施形態はMEMSベースのスイッチングシステムと呼ばれるが、本発明の態様は広く解釈されるべきであり、ミクロンサイズのデバイスに限定されるべきでないと考えられる。
【0011】
図1に示されるように、MEMSベースのスイッチングシステム10は、MEMSベースのスイッチング回路12と、過電流保護回路14を含んで示され、過電流保護回路14は、MEMSベースのスイッチング回路12と動作可能に結合される。一部の実施形態では、MEMSベースのスイッチング回路12は、その全体を過電流保護回路14と共に、たとえば単一のパッケージ16内に集積化することができる。他の実施形態では、MEMSベースのスイッチング回路12の一部分または一部の構成部品のみを、過電流保護回路14と共に集積化することができる。
【0012】
図2〜5を参照して詳細に説明されるように、現在考えられる構成では、MEMSベースのスイッチング回路12は、1つまたは複数のMEMSスイッチを含むことができる。さらに、過電流保護回路14は、平衡ダイオードブリッジと、パルス回路を含むことができる。さらに、過電流保護回路14は、1つまたは複数のMEMSスイッチの接点間のアーク形成の抑制を容易にするように構成することができる。過電流保護回路14は、交流(AC)または直流(DC)に応答して、アーク形成の抑制を容易にするように構成できることに留意されたい。
【0013】
アーク形成の抑制に関連する基礎情報を望む読者には、参照により本明細書に組み込まれる2005年12月20日出願の米国特許出願第11/314,336号(整理番号162711−1)を参照されたい。上記の出願には、微小電気機械システムの接点間のアーク形成を抑制するように適合された回路およびパルス技法を含む、高速の微小電気機械システム(MEMS)をベースとするスイッチングデバイスが記載されている。このような用途では、アーク形成の抑制は、そのような接点を通って流れる電流を実効的に分流することによって得られる。
【0014】
次に図2を参照すると、一実施形態による、図1に示された例示のMEMSベースのスイッチングシステムの概略図18が示される。図1に関連して述べたように、MEMSベースのスイッチング回路12は、1つまたは複数のMEMSスイッチを含むことができる。図示の実施形態では、第1のMEMSスイッチ20は、第1の接点22、第2の接点24、および第3の接点26を有するものとして示される。一実施形態では、第1の接点22はドレインとして構成することができ、第2の接点24はソースとして構成することができ、第3の接点26はゲートとして構成することができる。さらに図2に示されるように、電圧スナバ回路33をMEMSスイッチ20と並列に結合し、以下でより詳細に説明するように、高速での接点分離時の電圧オーバシュートを制限するように構成することができる。一部の実施形態ではスナバ回路33は、スナバ抵抗器(図示せず)と直列に結合されたスナバコンデンサ(図示せず)を含むことができる。スナバコンデンサは、MEMSスイッチ20の開路のシーケンス時に、過度電圧の共有の改善を容易にすることができる。さらにスナバ抵抗器は、MEMSスイッチ20の閉路動作時の、スナバコンデンサによって生ずる電流パルスを抑制することができる。例示の一実施形態では、スナバ33は、1つまたは複数のタイプの回路、たとえばR/Cスナバ、および/または固体スナバ(金属酸化物バリスタ(MOV)など)、または他の適当な過電圧保護回路、たとえばコンデンサに給電するように結合された整流器などを含むことができる。好ましくは、スナバコンデンサは、インダクタンスの問題を避けるために各ダイ上に構成されるべきである。
【0015】
本技法の他の態様によれば、電動機またはモータなどの負荷回路40を、第1のMEMSスイッチ20と直列に結合することができる。負荷回路40は、交流電圧(AC)または直流電圧(DC)44などの適当な電圧源VBUSに接続することができる。さらに負荷回路40は、負荷インダクタンスLLOAD 46を含むことができ、負荷インダクタンスLLOAD 46は、負荷回路40から見た総合の負荷インダクタンスおよびバスインダクタンスを表す。負荷回路40はまた、負荷回路40から見た総合の負荷抵抗を表す負荷抵抗RLOAD 48を含むことができる。参照番号50は、負荷回路40および第1のMEMSスイッチ20を通って流れることができる負荷回路電流ILOADを表す。
【0016】
さらに、図1に関連して述べたように、過電流保護回路14は、平衡ダイオードブリッジを含むことができる。図示の実施形態では、平衡ダイオードブリッジ28は、第1の枝路29および第2の枝路31を有するものとして示される。ここで用いられる「平衡ダイオードブリッジ」の用語は、第1および第2の枝路29、31の両方の両端の電圧降下が共にほぼ等しいように構成されたダイオードブリッジを表すのに用いられる。平衡ダイオードブリッジ28の第1の枝路29は、互いに結合されて第1の直列回路を形成する第1のダイオードD1 30と、第2のダイオードD2 32を含むことができる。同様にして、平衡ダイオードブリッジ28の第2の枝路31は、互いに動作可能に結合されて第2の直列回路を形成する第3のダイオードD3 34と、第4のダイオードD4 36を含むことができる。
【0017】
一実施形態では、第1のMEMSスイッチ20は、平衡ダイオードブリッジ28の中点の両端と並列に結合することができる。平衡ダイオードブリッジの中点は、第1および第2のダイオード30と32の間にある第1の中点、および第3および第4のダイオード34と36の間にある第2の中点を含むことができる。さらに、第1のMEMSスイッチ20および平衡ダイオードブリッジ28は、平衡ダイオードブリッジ28、および特にMEMSスイッチ20への接続によって生ずる寄生インダクタンスの最小化を容易にするために、密にパッケージングすることができる。本技法の例示的態様によれば、第1のMEMSスイッチ20および平衡ダイオードブリッジ28は、Lが寄生インピーダンスを表すものとして、第1のMEMSスイッチ20と平衡ダイオードブリッジ28の間の固有インダクタンスが、L×di/dtの電圧を生ずるように、互いに配置されることに留意されたい。発生する電圧は、MEMSスイッチ20のターンオフ時にダイオードブリッジ28への負荷電流の移転を伝送するとき、MEMSスイッチ20のドレイン22とソース24の両端の電圧の数パーセント未満とすることができ、これは以下でより詳細に説明する。一実施形態では、第1のMEMSスイッチ20は、平衡ダイオードブリッジ28と共に単一のパッケージ38内に、または適宜MEMSスイッチ20とダイオードブリッジ28を相互接続するインダクタンスを最小にする目的で同じダイ内に、集積化することができる。
【0018】
さらに、過電流保護回路14は、平衡ダイオードブリッジ28に関連して動作可能に結合されたパルス回路52を含むことができる。パルス回路52は、スイッチ状態を検出し、スイッチ状態に応答してMEMSスイッチ20の開路を開始するように構成することができる。ここで用いられる「スイッチ状態」の用語は、MEMSスイッチ20の現在の動作状態の変化をトリガする状態を指す。たとえばスイッチ状態は、その結果としてMEMSスイッチ20の第1の閉路状態から第2の開路状態へ、またはMEMSスイッチ20第1の開路状態から第2の閉路状態への変化を生じ得る。スイッチ状態は、回路障害、回路過負荷、またはスイッチオン/オフ要求を含みそれらに限定されない複数の動作に応答して生じ得る。
【0019】
パルス回路52は、パルススイッチ54、およびパルススイッチ54に直列結合されたパルスコンデンサCPULSE 56を含むことができる。さらに、パルス回路はまた、パルススイッチ54と直列に結合されたパルスインダクタンスLPULSE 58、および第1のダイオードDP 60を含むことができる。パルスインダクタンスLPULSE 58、ダイオードDP 60、パルススイッチ54、およびパルスコンデンサCPULSE 56は、パルス回路52の第1の枝路を形成するように直列に結合することができ、第1の枝路の構成部品は、パルス電流の整形およびタイミングを容易にするように構成することができる。また参照番号62は、パルス回路52を通って流れることができるパルス回路電流IPULSEを表す。
【0020】
以下でより詳細に説明するように、本発明の態様によれば、MEMSスイッチ20は、ゼロまたはほぼゼロの電流を伝送しながら、第1の閉路状態から第2の開路状態へ、高速(たとえばピコ秒またはナノ秒程度)にスイッチすることができる。これは、負荷回路40、およびMEMSスイッチ20の接点の両端に並列に結合された平衡ダイオードブリッジ28を含むパルス回路52の総合動作により達成することができる。
【0021】
図3〜5は、図2に示されるMEMSベースのスイッチングシステム18の例示の動作を示すための概略フローチャートとして用いられる。引き続き図2を参照すると、MEMSベースのスイッチングシステム18の例示の動作の初期状態が示される。MEMSスイッチ20は、第1の閉路状態で開始するものとして示される。また図示のように、負荷電流ILOAD 50が存在する。
【0022】
さらに、このMEMSベースのスイッチングシステム18の例示の動作を論じるために、MEMSスイッチ20に付随する抵抗は十分小さく、それにより、パルス動作するとき、MEMSスイッチ20の抵抗を通る負荷電流によって生ずる電圧が、ダイオードブリッジ28の中点の間のほぼゼロの電圧に及ぼす影響は無視できるものになると見なすことができる。たとえばMEMSスイッチ20に付随する抵抗は、十分小さく、最大予想負荷電流によって生ずる電圧降下は数ミリボルト未満であると見なすことができる。
【0023】
このMEMSベースのスイッチングシステム18の初期状態では、パルススイッチ54は、第1の開路状態にあることに留意されたい。さらにパルス回路52内には、パルス回路電流はない。またパルス回路52内では、コンデンサCPULSE 56は、予め電圧VPULSEに充電することができ、VPULSEは、負荷電流の移転期間の際、予想される負荷電流ILOAD 50より大幅に大きな(たとえば10倍の)ピークの大きさを有する正弦半波パルス電流を生ずることができる電圧である。CPULSE 56およびLPULSE 58は直列共振回路を構成することに留意されたい。
【0024】
図3は、パルス回路52をトリガするプロセスを表す概略図64である。パルス回路52には、検出回路(図示せず)を結合できることに留意されたい。検出回路は、たとえば負荷回路電流ILOAD 50のレベル、および/または電圧源VBUS 44の電圧レベルを感知するように構成された感知回路(図示せず)を含むことができる。さらに検出回路は、上述のようにスイッチ状態を検出するように構成することができる。一実施形態では、スイッチ状態は、所定の閾値を超える電流レベルおよび/または電圧レベルによって生じ得る。
【0025】
パルス回路52は、MEMSスイッチ20の現在の閉路状態から第2の開路状態への切換えを容易にするためにスイッチ状態を検出するように構成することができる。一実施形態では、スイッチ状態は、所定の閾値レベルを超える電圧レベルまたは負荷回路40内の負荷電流によって発生する障害状態とすることができる。しかし以下で理解されるように、スイッチ状態はまた、MEMSスイッチ20に対する所与のシステムに依存しないオン時間を実現するために、ランプ電圧の監視を含むことができる。
【0026】
一実施形態では、パルススイッチ54は、検出されたスイッチング状態の結果としてのトリガ信号の受信に応答して、正弦波パルスを発生することができる。パルススイッチ54をトリガすることにより、パルス回路52内に共振正弦波電流が開始される。パルス回路電流の電流方向は、参照番号66および68により表され得る。さらに、平衡ダイオードブリッジ28の第1の枝路29の第1のダイオード30および第2のダイオード32を通るパルス回路電流の電流方向および相対的な大きさは、それぞれ電流ベクトル72および70で表される。同様に電流ベクトル76および74は、それぞれ第3のダイオード34および第4のダイオード36を通るパルス回路電流の電流方向および相対的な大きさを表す。
【0027】
正弦波ブリッジパルス電流のピーク値は、パルスコンデンサCPULSE 56の初期電圧、パルスコンデンサCPULSE 56の値、およびパルスインダクタンスLPULSE 58の値から求めることができる。またパルスインダクタンスLPULSE 58およびパルスコンデンサCPULSE 56の値により、パルス電流の正弦半波のパルス幅が決まる。ブリッジ電流パルス幅は、負荷電流の変化率(VBUS/LLOAD)および負荷障害状態時の所望のピーク通過電流を前提として、システム負荷電流ターンオフ用件を満たすように調整することができる。本発明の態様によれば、パルススイッチ54は、MEMSスイッチ20の開路の前に、導通状態となるように構成することができる。
【0028】
パルススイッチ54のトリガは、開路期間において、MEMSスイッチ20の接点を通る経路のインピーダンスに比べて、低インピーダンスの経路を生成するのを容易にするための、平衡ダイオードブリッジ28を通るパルス回路電流IPULSE 62のタイミングの制御を含み得ることに留意されたい。さらに、パルススイッチ54は、MEMSスイッチ20の接点の両端に所望の電圧降下を呈するように、トリガすることができる。
【0029】
一実施形態では、パルススイッチ54は、スイッチング速度がたとえばナノ秒からマイクロ秒程度の範囲となるように構成し得る固体スイッチとすることができる。パルススイッチ54のスイッチング速度は、障害状態における負荷電流の予想される上昇時間に比べて、比較的高速とするべきである。MEMSスイッチ20に必要な電流定格は、負荷電流の上昇率に依存したものとすることができ、これは前述のように、負荷回路40内のインダクタンスLLOAD 46およびバス供給電圧VBUS 44に依存する。MEMSスイッチ20は、負荷電流ILOAD 50がブリッジパルス回路の速度能力に比べて急速に上昇し得る場合は、より大きな負荷電流ILOAD 50を取り扱うのに適当な定格にすることができる。
【0030】
パルス回路電流IPULSE 62は、ゼロの値から増加し、平衡ダイオードブリッジ28の第1および第2の枝路29、31の間で等しく分割される。一実施形態によれば、前述のように、平衡ダイオードブリッジ28の枝路29、31の両端の電圧降下の差は、無視し得るように設計することができる。さらに前述のように、ダイオードブリッジ28は、ダイオードブリッジ28の第1および第2の枝路の両端の電圧降下が、ほぼ等しくなるように平衡する。さらに、現在の閉路状態におけるMEMSスイッチ20の抵抗は比較的低く、MEMSスイッチ20の両端には比較的小さな電圧降下が存在する。しかしMEMSスイッチ20の両端の電圧降下が、(たとえばMEMSスイッチの固有の設計により)たまたま大きい場合は、ダイオードブリッジ28がMEMSスイッチ20と並列に動作可能に結合されているので、ダイオードブリッジ28の平衡が影響を受け得る。本発明の態様によれば、MEMSスイッチ20の抵抗によってMEMSスイッチ20の両端に大幅な電圧降下を生ずる場合は、ダイオードブリッジ28は、その結果生じるパルスブリッジの不平衡に対して、ブリッジパルス電流のピークの大きさを増加させることによって適応することができる。
【0031】
次に図4を参照すると、MEMSスイッチ20の開路が開始される場合の、概略図78が示される。前述のように、パルス回路52内のパルススイッチ54は、MEMSスイッチ20の開路の前にトリガされる。パルス電流IPULSE 62が増加するにつれて、パルス回路52の共振動作により、パルスコンデンサCPULSE 56の両端の電圧は減少する。スイッチが閉じて導通しているオン状態では、MEMSスイッチ20は、負荷回路電流ILOAD 50に対して比較的低インピーダンスの経路を呈する。
【0032】
パルス回路電流IPULSE 62の振幅が、(たとえばパルス回路52の共振作用により)負荷回路電流ILOAD 50の振幅よりも大きくなると、MEMSスイッチ20のゲート接点26に印加される電圧は、MEMSスイッチ20の現在の動作状態を、第1の閉路で導通状態から、抵抗が増大する状態に切り換えるように適切にバイアスすることができ、ここでMEMSスイッチ20はターンオフを開始し(ここではたとえば、接点は依然として閉じているが、スイッチの開路プロセスにより接点圧力は低下する)、それによりスイッチ抵抗が増加し、さらに負荷電流をMEMSスイッチ20からダイオードブリッジ28内へ迂回させる。
【0033】
この現在の状態においては、平衡ダイオードブリッジ28は、増大する接点抵抗を示すMEMSスイッチ20を通る経路に比べて、比較的低インピーダンスの経路を、負荷回路電流ILOAD 50に対して呈する。このMEMSスイッチ20を通る負荷回路電流ILOAD 50の迂回は、負荷回路電流ILOAD 50の変化率に比べて極めて高速であることに留意されたい。前述のように、MEMSスイッチ20と平衡ダイオードブリッジ28の間の接続に付随するインダクタンスL1 84およびL2 88の値は、高速な電流の迂回が阻害されるのを避けるために非常に小さいことが望ましい。
【0034】
MEMSスイッチ20からパルスブリッジへの電流移転のプロセスは、継続して第1のダイオード30および第4のダイオード36の電流を増加させ、同時に第2のダイオード32および第3のダイオード34の電流は低下する。移転プロセスは、MEMSスイッチ20の機械接点22、24が分離して物理的空隙を形成したときに完了し、すべての負荷電流は、第1のダイオード30および第4のダイオード36によって伝送される。
【0035】
負荷回路電流ILOADが、方向86にて、MEMSスイッチ20からダイオードブリッジ28に迂回される結果、ダイオードブリッジ28の第1および第2の枝路29、31の両端に不平衡が生じる。さらに、パルス回路電流が減衰するに従って、引き続いてパルスコンデンサCPULSE 56の両端の電圧は反転し(たとえば「逆起電力」として働く。)、負荷回路電流ILOADを最終的にゼロに減少させる。ダイオードブリッジ28内の第2のダイオード32および第3のダイオード34は、逆バイアスとなり、その結果、負荷回路は、パルスインダクタLPULSE 58およびブリッジパルスコンデンサCPULSE 56を含むようになり、直列共振回路となる。
【0036】
次に図5を参照すると、減少する負荷電流のプロセスのために接続された回路要素の概略図94が示される。上記で触れたように、MEMSスイッチ20の接点が離れる瞬間に、接点抵抗が無限大に達する。さらに、もはやダイオードブリッジ28は、MEMSスイッチ20の接点の両端のインピーダンスのほぼゼロの電圧を維持しない。また負荷回路電流ILOADは、第1のダイオード30および第4のダイオード36を通る電流に等しい。前述のように、ダイオードブリッジ28の第2のダイオード32および第3のダイオード34を通る電流はない。
【0037】
さらに、MEMSスイッチ20のドレイン24からソース26までのスイッチ接点の大幅な電圧差は、今度はパルスインダクタLPULSE 58、パルスコンデンサCPULSE 56、負荷回路インダクタLLOAD 46、および負荷抵抗器RLOAD 48および回路損失によるダンピングを含む、正味の共振回路によって決まる率で、最大でVBUS電圧の約2倍まで上昇し得る。さらに、ある時点で負荷回路電流ILOAD 50と等しかったパルス回路電流IPULSE 62は、共振によってゼロの値まで減少し、このようなゼロの値は、ダイオードブリッジ28およびダイオードDP 60の逆方向阻止作用によって維持される。共振によるパルスコンデンサCPULSE 56の両端の電圧は、負のピークに向かって極性が反転し、このような負のピークは、パルスコンデンサCPULSE 56が再充電されるまで維持されることになる。
【0038】
ダイオードブリッジ28は、接点が分離してMEMSスイッチ20を開くまで、MEMSスイッチ20の接点の両端にほぼゼロの電圧を維持し、それにより、開路時にMEMSスイッチ20の接点間に形成されやすいアークを抑制することによって損傷を防止するように構成することができる。さらに、MEMSスイッチ20の接点は、MEMSスイッチ20を通る接点電流がずっと減少された状態で、開路状態に近づく。また、回路インダクタンス、負荷インダクタンス、および電源に蓄えられたエネルギーは、パルス回路コンデンサCPULSE 56へ移転することができ、かつ電圧消費回路(図示せず)によって吸収することができる。電圧スナバ回路33は、高速の接点分離時に、ブリッジとMEMSスイッチの間のインタフェースのインダクタンス中に残存する誘導性エネルギーによる、電圧オーバシュートを制限するように構成することができる。さらに、開路時のMEMSスイッチ20の接点の両端に再印加されうる電圧の増加率は、スナバ回路(図示せず)を用いることによって制御することができる。
【0039】
また、開路状態では、MEMSスイッチ20の接点間には空隙が形成されるとはいえ、MEMSスイッチ20の周りの、負荷回路40とダイオードブリッジ回路28の間にリーク電流が存在し得ることに留意されたい。(MOVおよび/またはR/Cスナバ回路を通る経路も形成され得る。)このリーク電流は、物理的な空隙を生ずるように、負荷回路40と直列接続された二次的機械スイッチ(図示せず)を導入することによって抑制することができる。一部の実施形態では、機械スイッチは、第2のMEMSスイッチを含むことができる。
【0040】
図6Aは、スイッチング回路12(図1を参照)が、たとえば直列または直並列アレイに構成された複数のMEMSスイッチを含むことができる、例示的実施形態96を示す。さらに、図6に示されるように、MEMSスイッチ20は、電気的に直列回路に結合された、第1の組の2つ以上のMEMSスイッチ98、100によって置き換えることができる。一実施形態では、第1の組のMEMSスイッチ98、100の少なくとも1つは、さらに並列回路に結合することができ、並列回路には、第2の組の2つ以上のMEMSスイッチ(たとえば参照記号100、102)を含むことができる。本発明の態様によれば、MEMSスイッチの第1または第2の組の少なくとも1つと並列に、静的勾配緩和抵抗器および動的勾配緩和コンデンサを結合することができる。
【0041】
図6Bおよび6Cはそれぞれ、2つ以上のMEMSスイッチを直列回路にて接続するための例示の実施形態の概略図を示し、直列に接続された各MEMSスイッチのドレイン(D)とソース(S)の間に接続された、それぞれのコンデンサCsを示している。実験テスト時に、一般にMEMSスイッチに付随する、ゲートドライバ速度に関する制約は、機械的問題ではなく電気的問題が主導的であることが分かった。たとえば、ゲートからドレインへの望ましくない容量性結合は、ゲートドライバ速度に影響を及ぼし得る(例えば遅くし得る)。本発明者らは、このような影響は、図6Bおよび6Cに示されるように、各MEMSスイッチのソースからドレインにコンデンサCsを接続することによって軽減し得ることを認識した。同じコンデンサCsは、スナバ回路33(図2)に関連して述べたように、スナバコンデンサ機能も行う。
【0042】
図6Bおよび6Cはさらに、各スイッチのゲート(G)に対して直列回路にて接続されたそれぞれのゲート抵抗器Rgを示す。このようなゲート抵抗器は、スイッチのゲートに短絡が生じ、ゲートドライバが動作不能になり、潜在的に、ゲートドライバに接続され得るスイッチングアレイの他のスイッチが動作不能になるのを防止するのに役立つ。好ましい集積化の一技法は、ゲート速度を遅くし得る容量値が導入されるのをさけるために、ゲート抵抗器をスイッチと一体化することである。
【0043】
次に図7を参照すると、勾配緩和型(graded)MEMSスイッチ回路の例示的実施形態104が示される。勾配緩和型スイッチ回路104は、少なくとも1つのMEMSスイッチ106、勾配緩和抵抗器108、および勾配緩和コンデンサ110を含むことができる。勾配緩和型スイッチ回路104は、たとえば図6に示されるような、直列または直並列アレイに構成された複数のMEMSスイッチを含むことができる。勾配緩和抵抗器108は、スイッチアレイに対して電圧勾配の緩和をもたらすために、少なくとも1つのMEMSスイッチ106と並列に結合することができる。例示的実施形態では、勾配緩和抵抗器108は、特定の用途向けに許容し得る漏洩を生じながら、直列スイッチの間で適当な定常状態の電圧バランス(分割)をもたらすような大きさとすることができる。さらに、スイッチング時に動的に、オフ状態において静的に共有を実現するために、アレイの各MEMSスイッチ106に並列に、勾配緩和コンデンサ110と勾配緩和抵抗器108の両方を設けることができる。追加の勾配緩和抵抗器、または勾配緩和コンデンサ、またはその両方をスイッチアレイ内の各MEMSスイッチに追加できることに留意されたい。一部の他の実施形態では、勾配緩和回路104は、金属酸化物バリスタ(MOV)(図示せず)を含むことができる。
【0044】
図8は、MEMSベースのスイッチングシステムを現在の動作状態から第2の状態に切り換えるための、例示のロジック112のフローチャートを示す。本技法の例示的態様による、切換えのための方法が示される。前述のように検出回路は、過電流保護回路と動作可能に結合し、スイッチ状態を検出するように構成することができる。さらに検出回路は、電流レベルおよび/または電圧レベルを感知するように構成された感知回路を含むことができる。
【0045】
ブロック114によって示されるように、たとえば感知回路によって、負荷回路40(図2を参照)などの負荷回路内の電流レベル、および/または電圧レベルを感知することができる。さらに、判断ブロック116によって示されるように、感知された電流レベルまたは感知された電圧レベルが、期待値から変化し、その値を超えたかどうかの判定を行うことができる。一実施形態では、感知された電流レベルまたは感知された電圧レベルが、それぞれの所定の閾値レベルを超えたかどうかの判定を、(たとえば検出回路により)行うことができる。別法として、障害が実際に生じていなくても、スイッチ状態を検出するために、電圧または電流のランプ率を監視することができる。
【0046】
感知された電流レベルまたは感知された電圧レベルが期待値から変化または逸脱した場合は、ブロック118によって示されるようにスイッチ状態を発生することができる。前述のように、「スイッチ状態」の用語は、MEMSスイッチの現在の動作状態の変化をトリガする状態を指す。一部の実施形態では、スイッチ状態は、障害信号に応答して発生することができ、MEMSスイッチの開路を容易にするために使用することができる。ブロック114〜118は、スイッチ状態の発生の一実施例を表すことに留意されたい。しかし以下で理解されるように、本発明の態様による、スイッチ状態を発生する他の方法も想定される。
【0047】
ブロック120によって示されるように、スイッチ状態に応答してパルス回路電流を開始するために、パルス回路をトリガすることができる。パルス回路の共振作用によって、パルス回路電流レベルは増加し続けることができる。パルス回路電流の瞬時振幅が負荷回路電流の瞬時振幅よりも大幅に大きければ、少なくとも部分的にはダイオードブリッジ28により、MEMSスイッチの接点の両端にほぼゼロの電圧降下を維持することができる。さらに、ブロック122によって示されるように、MEMSスイッチを通る負荷回路電流を、MEMSスイッチからパルス回路に迂回させることができる。前述のように、MEMSスイッチの接点が離れ始めるのに従って比較的高インピーダンスが増大するMEMSスイッチを通る経路に反して、ダイオードブリッジは比較的低インピーダンスの経路を呈する。次いでブロック124によって示されるように、MEMSスイッチを無アーク式に開路することができる。
【0048】
前述のように、MEMSスイッチの接点の両端のほぼゼロの電圧降下は、パルス回路電流の瞬時振幅が負荷回路電流の瞬時振幅より大幅に大きい間は維持することができ、それにより、MEMSスイッチの開路を容易にし、MEMSスイッチの接点間のアークの形成が抑制される。したがって、上記に説明したように、MEMSスイッチは、MEMSスイッチの接点の両端の電圧がほぼゼロの状態で、かつMEMSスイッチを通る電流が大幅に低減された状態で開路することができる。
【0049】
図9は、本技法の態様による、MEMSベースのスイッチングシステムのMEMSスイッチに関連するターンオフスイッチング事象を表す実験結果のグラフ130である。図9に示されるように、時間134の変化に対する、振幅132の変化がプロットされている。また参照番号136、138、および140は、グラフ表示130の第1の区間、第2の区間、および第3の区間を表す。
【0050】
応答曲線142は、負荷回路電流の振幅変化を時間の関数として表す。時間の関数としてのパルス回路電流の振幅変化は、応答曲線144で表される。同様にして、時間の関数としてのゲート電圧の振幅変化は、応答曲線146で表される。応答曲線148は、ゼロのゲート電圧基準を表し、応答曲線150は、ターンオフの前の負荷電流の基準レベルを表す。
【0051】
さらに、参照番号152は、スイッチ開路プロセスが生じる、応答曲線142上の領域を表す。同様に参照番号154は、MEMSスイッチの接点が分離して開路状態である、応答曲線142上の領域を表す。また、グラフ表示130の第2の区間138から分かるように、ゲート電圧は、MEMSスイッチの開路の開始を容易にするために、ローに引き下げられる。さらに、グラフ表示130の第3の区間140から分かるように、平衡ダイオードブリッジの導通している半分において、負荷回路電流142およびパルス回路電流144は減衰していることが分かる。
【0052】
図17および18は、本技法の態様による、MEMSベースのスイッチングシステムのMEMSスイッチに関連するターンオンスイッチング事象を表す実験結果のグラフ400である。図17および18に示されるように、時間404の変化に対して、振幅402の変化がプロットされている。
【0053】
応答曲線406は、時間の関数としての負荷回路電流の振幅変化を表す。時間の関数としてのパルス回路電流の振幅変化は、応答曲線408で表される。同様にして、時間の関数としてのゲート電圧の振幅変化は、応答曲線410で表される。それぞれのプロットに関連する振幅のスケールは異なることに注意されたい。
【0054】
図18は、図17内の差し込み図412に対応し、ターンオンスイッチング事象に関連する最初の数マイクロ秒の間のシステム初期応答に対応する。応答曲線414は、MEMSスイッチの両端の電圧を表し、ターンオンの前のスイッチの両端の電圧レベルを部分的に示している。図18に示される時間間隔の間では、ゲート電圧レベルは未だ、スイッチを導通状態に作動するようには設定されていないことに留意されたい。動作の際には、パルスに応答して、(スイッチが導通状態になるように作動される前の)負荷電流を迂回するための導電路が、平衡ダイオードブリッジを通じて形成される。
【0055】
以下に、固体(たとえば半導体ベースの)スイッチング回路を用いて、スイッチングシステムが高信頼度でコスト効率よく、(たとえば始動事象時、または過渡状態時の)サージ電流に耐えることを可能にし、一方ではたとえば、定常状態の動作用に、かつ起こり得る障害状態に対処するようにMEMSベースのスイッチング回路を使用することができる回路および/または技法について説明する。
【0056】
サージ電流は、モータまたは他のタイプの電気機器などの電気的負荷を始動するときに起こり、または過度状態時に起こり得る。始動事象時のサージ電流の値は、しばしば定常負荷電流の値の数倍(たとえば6倍以上)を含み、10秒程度など、数秒間持続し得る。
【0057】
図10は、MEMSベースのスイッチング回路202、固体スイッチング回路204、および例示の一実施形態では図1〜9に示されかつ/またはそれらに関連して説明したパルス回路52および平衡ダイオードブリッジ31を備えることができるような過電流保護回路206を並列回路にて接続するスイッチングシステム200のブロック図表示である。
【0058】
コントローラ208は、MEMSベースのスイッチング回路202、固体スイッチング回路204、および過電流保護回路206に結合することができる。コントローラ208は、スイッチング回路のそれぞれの1つの電流伝送能力に適した負荷電流状態に応答して実行する、かつ/またはスイッチングシステムに影響を及ぼし得る障害状態時に実行することができるような、いつ過電流保護回路206を作動するべきか、かつまたいつそれぞれのスイッチング回路を開路および閉路すべきかを判断するように構成された制御方式を実行することによって、MEMSベースのスイッチング回路と固体スイッチング回路の間を行き来して選択的に電流を移転するように構成することができる。このような制御方式では、それぞれのスイッチング回路202および204の間を行き来して電流を移転している際に、障害電流制限を行い、かつ負荷電流がいずれかのスイッチング回路の最大電流処理能力に近づく場合は常に電流制限および負荷の消勢を行うように用意されていることが望ましいことに留意されたい。
【0059】
上記の例示の回路を実施したシステムは、サージ電流がMEMSベースのスイッチング回路202によって伝送されるのではなく、代わりに固体スイッチング回路204によって伝送されるように制御することができる。定常電流はMEMSベースのスイッチング回路202によって伝送され、システム動作時には過電流保護回路206によって過電流および/または障害保護が利用可能となる。提案の概念は、その広い態様において、MEMSベースのスイッチング回路に限定する必要はないことが理解されよう。たとえば、1つまたは複数の固体スイッチに並列の1つまたは複数の標準の(すなわちMEMSベースの電気機械スイッチング回路ではない)電気機械スイッチと適当なコントローラを備えるシステムは、同様に本発明の態様によって得られる利点の恩恵を受けることができる。
【0060】
下記は、システムに接続された負荷がモータであると仮定した、スイッチング状態の例示のシーケンス、およびモータ起動事象が生じてすぐのスイッチングシステム内の例示の電流値である。数字の隣の文字Xは、定常状態での通常の電流値の倍数に相当する例示の電流値を示す。したがって6Xは、定常状態での通常の電流値の6倍に相当する電流値を表す。
1.固体スイッチング回路−−開路
MEMSベースのスイッチング回路−−開路
電流0
2.固体スイッチング回路−−閉路
MEMSベースのスイッチング回路−−開路
電流−−6X
3.固体スイッチング回路−−閉路
MEMSベースのスイッチング回路−−閉路
電流−−1X
4.固体スイッチング回路−−開路
MEMSベースのスイッチング回路−−閉路
電流−−1X
図11は、例示の一実施形態を示し、スイッチングシステム200内の固体スイッチング回路204は、過電流保護回路206とMEMSベースのスイッチング回路202に並列回路にて接続された、2つのFET(電界効果トランジスタ)スイッチ210および212(AC電流の導通を可能にするために、ダイオード214および216を用いて逆並列構成に接続される)を備える。電気的負荷(図示せず)は、FETスイッチ210および212をターンオンすることによって活動化することができ、それにより始動電流(「Istart」として示される)が負荷に流れ始めることが可能となり、負荷の始動時にFETスイッチ210および212がこの電流を伝送することが可能になる。固体スイッチング回路204は、図11に示される回路構成に限定されず、FETスイッチにも限定されないことが理解されよう。たとえば、双方向性の電流導通能力をもたらす任意の固体または半導体電力スイッチングデバイスは、TRIAC、RCTなどの所与のAC用途に対して同じく有効に動作することができ、あるいはIGBT、FET、SCR、MOSFETなど、少なくとも2つのこのようなデバイスの適当な構成によって実現できることが理解されよう。
【0061】
図16は、固体スイッチング回路204が、逆直列回路構成に接続された1対のMOSFETスイッチ240および242を含む、例示の一実施形態を示す。ダイオード244および246は、ボディダイオードを含むことに留意されたい。すなわち、このようなダイオードは、それらのそれぞれのMOSFETスイッチの一体部分を含む。ゲート駆動電圧がゼロの状態では、各スイッチはターンオフされ、したがってそれぞれのスイッチは交流電圧の反対極性を阻止し、他方のスイッチの対応する各ダイオードは順方向バイアスされる。ゲート駆動回路222から適当なゲート駆動電圧が印加されるとすぐに各MOSFETは、スイッチング端子に存在するAC電圧の極性に関わらず、低抵抗状態に戻る。
【0062】
逆直列接続された1対のMOSFETの両端の電圧降下は、逆並列構成の場合のような1つのスイッチのRdson(オン状態抵抗)値に基づくIR降下とダイオードの比較的大きな電圧降下の和ではなく、2つのスイッチのRdson値に基づくIR降下だけであることに留意されたい。したがって、例示の一実施形態においてMOSFETの逆直列構成は、比較的低い電圧降下、したがって低い電力消費、発熱、およびエネルギー損失を実現する能力があるので望ましい。
【0063】
さらに理解されるように、固体スイッチング回路204が双方向性サイリスタ(または1対の逆並列サイリスタ)を含む例示の一実施形態では、この構成は低電流で比較的損失が大きいが、このような構成は大電流での比較的電圧降下が小さいことおよび過渡熱応答特性のため、比較的大きな短時間の電流サージに耐えられることが利点となり得る。
【0064】
例示の一実施形態では、固体スイッチング回路204は、電流パルスを制御することによってモータなどの負荷のソフト起動(または停止)を行うために用いることができると考えられる。交流電源電圧または交流負荷電流の可変の位相角に対応して固体回路をスイッチングすることにより、モータに印加される電流パルスの流れの結果として生ずる電気エネルギーを調整することができる。たとえば最初にモータが付勢される場合、電圧がゼロに近づくとき、電圧ゼロの近くで固体スイッチング回路204をターンオンすることができる。これにより、小さな電流パルスが生じるだけとなる。電流は、上昇してほぼ電圧がゼロに達する時点でピークに達し、次いで電圧が反転するのに従ってゼロに低下する。点弧(位相)角は、電流が定格負荷の3倍などの所望の値に達するまで、より大きな電流パルスを生じるように、徐々に進められる。最終的には、モータが起動し電流振幅が減衰し続けるのに従って、点弧角は、最終的にモータに全ライン電圧が連続的に印加されるまでさらに進められる。固体スイッチング回路を用いた例示のソフト起動技法に関する一般的な基礎情報を望む読者には、本発明と同じ譲受人に共に譲渡され、“Apparatus and Three Phase Induction Motor Starting and Stopping Control Method”という名称の米国特許第5,341,080号を参照されたい。
【0065】
始動電流が適当なレベルまでおさまった後、MEMSベースのスイッチング回路202は、適当なMEMSに適合可能なスイッチング技法を用いて、または電圧降下が比較的小さい電圧であれば、固体スイッチング回路の両端に生じている電圧で閉じることによってターンオンすることができる。この時点で、FETスイッチ210および219はターンオフすることができる。図12は、定常電流(「Iss」で示される)がMEMSベースのスイッチング回路202によって伝送される、スイッチングシステム200の状態を示す。
【0066】
MEMSベースのスイッチング回路は、そのスイッチ接点の両端に電圧があるときに導通スイッチング状態に閉路されるべきでなく、またこのような回路は、そのような接点に電流が通過しているときに非導通スイッチング状態に開路されるべきではないことに留意されたい。MEMSに適合可能なスイッチング技法の一実施例は、図1〜9に示されかつ/またはそれらに関連して説明したパルス生成技法でよい。
【0067】
スイッチングシステムを、ソフトスイッチングまたはポイントオンウェーブスイッチングを行い、それによってスイッチング回路202内の1つまたは複数のMEMSスイッチを、スイッチング回路202の両端の電圧がゼロまたはゼロに非常に近いときに閉路し、スイッチング回路202を通る電流がゼロまたはゼロに近いときに開路するように構成することにより、MEMSに適合可能なスイッチング技法の別の実施例を実現することができる。このような技法に関する基礎的な情報を望む読者には、2005年12月20日出願の米国特許出願第11/314,879号(整理番号162191−1)の“Micro-Electromechanical System Based Soft Switching”という名称の特許出願を参照されたい。
【0068】
スイッチング回路202の両端の電圧がゼロまたはゼロに非常に近い時点でスイッチを閉じることにより、1つまたは複数のMEMSスイッチが閉じるときにそれらの接点間の電界を低く保つことによって、複数のスイッチがすべて同時に閉じない場合でも、接点が接触する前のアーク発生を防止することができる。上記で触れたように、制御回路は、スイッチング回路202内の1つまたは複数のMEMSスイッチの開路と閉路を、交流電源電圧または交流負荷回路電流のゼロクロス発生に同期させるように構成することができる。過電流保護回路206は、始動事象時に障害が発生したとき、下流側の負荷およびそれぞれのスイッチング回路を保護するように構成することができる。図13に示されるように、この保護は、障害電流(Ifault)を過電流保護回路206へ移転させることによって達成される。
【0069】
最上位レベルから見たとき、電気機械および固体スイッチング回路は概念的には互いにほぼ同様な挙動をするように見えるが、実際にはこのようなスイッチング回路は大きく異なる物理的原理に基づいているので、これらはそれぞれ異なる動作特性を示し、したがって過電流保護回路は、このような特性を考慮しつつスイッチング回路を適切に作動させるように、適切に構成しなければならない場合があることに留意されたい。たとえば、MEMSスイッチは、接点を切断するために片持ち梁の機械的な動きを必要とし、電界効果固体スイッチは一般に、電圧によって誘起されるチャネル内の電荷キャリアの移動を必要とし、バイポーラ固体スイッチは逆バイアスされた接合内の電荷キャリアの注入を必要とすることがある。キャリアを取り除くのにかかる時間は回復時間と呼ばれ、この回復時間は1マイクロ秒より短い時間から100マイクロ秒より長い時間の範囲となり得る。たとえば、固体スイッチが障害状態に閉路される場合は、過電流保護回路206は、スイッチのチャネルが完全にクリアされてスイッチが完全に開路となるまで、障害電流を吸収し、固体スイッチおよび下流側の負荷を保護することができなければならない。過電流保護回路206がパルス回路52および平衡ダイオードブリッジ31を含む場合は、パルス特性(パルス回路によって生成されるパルスの幅および/または高さ)が、下流側の保護に影響を及ぼし得ることを示すことができる。たとえば過電流保護回路206は、並列固体スイッチング回路の回復時間に適応し、かつMEMSベースのスイッチング回路の障害保護に適応するように十分な幅および/または高さを有するパルスを発生することができるべきである。
【0070】
障害電流遮断に関して、2つの一般的な部類の固体スイッチング回路があることに留意されたい。一部の固体スイッチ(FETなど)は、ターンオフされると本来的に電流ゼロの状態が強制される。その他(SCRなど)は、電流ゼロの状態を強制することができない。電流ゼロの状態を強制することができる固体スイッチング回路は、障害時に電流制限を行うのに過電流保護回路206の補助が不要となり得る。電流ゼロの状態を強制できない固体スイッチング回路は、一般に過電流保護回路206が必要になる。
【0071】
前述のように、MEMSベースのスイッチング回路と固体スイッチング回路の間を行き来して選択的に電流を移転させるために、適切な制御技法が実施されなければならない。例示の一実施形態では、このような制御技法は、各スイッチング回路のそれぞれの電気的損失モデルに基づくものとすることができる。たとえば、MEMSベースのスイッチング回路での電気的損失(および付随する温度上昇)は一般に負荷電流の2乗に比例し、一方、固体スイッチング回路での損失(および付随する温度上昇)は一般に負荷電流の絶対値に比例する。また固体デバイスの熱容量は、一般にMEMSベースのスイッチング回路の熱容量よりも大きい。したがって負荷電流の正常値に対してはMEMSベースのスイッチング回路が電流を伝送することが考えられ、一時的な過負荷電流に対しては固体スイッチング回路が電流を伝送することが考えられる。したがって過渡的な過負荷状況のときは、行き来して電流を移転させることが考えられる。
【0072】
以下では、MEMSベースのスイッチング回路と固体スイッチング回路の間を行き来して選択的に負荷電流を移転させるための、3つの例示の技法について述べる。例示の一技法では、図14に示されるような二重の過電流保護回路の使用を考えるもので、移転を補助するために、第1の過電流保護回路2061と、第2の過電流保護回路2062が、MEMSベースのスイッチング回路および固体スイッチング回路に並列回路にて接続される(例示の一実施形態では、この第2の過電流保護回路も、図1〜9に示されかつ/またはそれらに関連して説明したようなパルス回路52および平衡ダイオードブリッジ31を備えることができる。)。
【0073】
スイッチングシステムが単一の過電流保護回路206のみを用いる場合、このような単一の過電流保護回路は、MEMSベースのスイッチング回路に関連するスイッチング事象が生じるとすぐに、活動化されることになることに留意されたい。しかし、その後間もなく障害が起きた場合は、単一の過電流保護回路206は、スイッチング回路を保護するために再び活動化する準備が整わないことがあり得る。上述のように過電流保護回路206は、パルス技法に基づいて動作し、したがってこのような回路は、点弧してすぐに動作するように瞬時には準備が整わなくなる。たとえば、パルス回路52内のパルスコンデンサを再充電するために、ある時間待たなければならないことになる。
【0074】
冗長型の過電流保護回路を使用する技法は、一方の過電流保護回路(たとえば回路2062)を、他方の過電流保護回路2061が正常なスイッチング事象(障害駆動でないスイッチング事象)に関連してパルス利用型スイッチングを丁度行ったときでも、自由であり、障害の場合に電流制限を支援する準備が整った状態にあることを確実にする。この技法は、比較的単純な制御により大きな設計融通性をもたらすと考えられるが、単一の過電流保護回路の代わりに二重の過電流保護回路を必要とする。この技法は、任意のタイプの固体スイッチング回路に適合可能であることに留意されたい。
【0075】
冗長型の過電流保護回路を備える例示の一実施形態では、このような回路は二重のパルス回路を含むべきであるが、二重の平衡ダイオードブリッジ31を含む必要はないことが理解されよう。たとえば、第1の過電流保護回路が個別のパルス回路52と個別の平衡ダイオードブリッジ31を備える場合は、第2の過電流保護回路は、第1の過電流保護回路の平衡ダイオードブリッジ31に適当なパルス電流を(必要なときに)印加するように構成された個別のパルス回路52を備えるだけでよい。逆に、第2の過電流保護回路が個別のパルス回路52と個別の平衡ダイオードブリッジ31を備える場合は、第1の過電流保護回路は、第2の過電流保護回路の平衡ダイオードブリッジ31に適当なパルス電流を(必要なときに)印加するように構成された個別のパルス回路52を備えるだけでよい。
【0076】
第2の例示の技法は、移転の実行を、電流ゼロに合わせるものである。これは、第2の過電流保護回路を不要にし、また任意のタイプの固体スイッチング回路に適合可能である。しかしこの技法は、より複雑な制御が必要になり、ある場合にはシステムの完全停止が必要になり得る。第3の例示の技法は、MEMSスイッチング回路および固体スイッチング回路の開路と閉路を連携させることによって電流移転を行うものである。当業者には理解されるように、この技法は、固体スイッチング回路の電圧降下が比較的小さければ用いることができる。
【0077】
いずれの場合も、制御方式は、スイッチング回路のそれぞれ1つの電流伝送能力に適した負荷電流状態に応答するなどして、過電流保護回路(単一または二重過電流保護回路)をいつ動作させるべきかを判断し、かつそれぞれのスイッチング回路をいつ開路および閉路すべきかを判断するように構成できることが理解されるべきである。一般的な概念としては、交互の電流路の間を行き来して電流を移転しながら障害電流制限を行うように準備されており、かつ負荷電流がいずれかの負荷電流伝送経路の最大能力に近づいたときに電流制限および回路の消勢を行うことである。1つの例示の制御方式は、以下のようなものとすることできる。
【0078】
大きな初期電流が生ずることを予想して、負荷を付勢するために固体スイッチング回路を使用する。電流がMEMSベースのスイッチング回路の定格内に低下した後、負荷をMEMSベースのスイッチング回路に移転する。
【0079】
正常状態において負荷を消勢する必要がある場合は、その時点でどのスイッチング回路が電流を伝送していたとしても、そうする。それがMEMSベースのスイッチング回路であれば、電流ゼロでターンオフするようにポイントオンウェーブスイッチングを用いる。
【0080】
シミュレートしたまたは感知した温度に基づいて、MEMSベースのスイッチング回路および固体スイッチング回路の両方の温度を求める。このような温度のいずれかがそれぞれの温度定格限界に近づいていると判断される場合、または負荷電流がそれぞれの最大電流伝送能力に近づいている場合(障害状態または厳しい過負荷など)、(過電流保護回路の補助により)瞬時の電流遮断を行い、MEMSベースのスイッチング回路と固体スイッチング回路の両方を開路する。この動作は、他のどの制御動作よりも先行することになる。再閉路のスイッチング動作を可能とする前に、リセットを待つ。
【0081】
正常動作時は、電流を、MEMSベースのスイッチング回路を通過させるか、固体スイッチング回路を通過させるかを判断するのに、各スイッチング回路のそれぞれの温度状態を用いることができる。一方のスイッチング回路がその温度または電流限界に近づいており、他方のスイッチング回路は依然として温度余裕がある場合は、移転は自動的に行われる。正確なタイミングは、移転の技法に依存することになる。たとえばパルス利用型移転では、移転は、移転が必要になるとすぐにほぼ瞬時に生じ得る。ポイントオンウェーブスイッチングに基づく移転では、このような移転は、次に利用可能な電流のゼロクロスが発生するまでの間に行われる(たとえば遅延される)ことになる。遅延型移転に対しては、移転が次の電流ゼロまで正しく遅延される可能性を高めるために、移転の決定に対する設定に一定の余裕が与えられるべきである。
【0082】
図15は、スイッチングシステムの例示の一実施形態の回路の詳細を示す。たとえば図15は、MEMSベースのスイッチング回路206、固体スイッチング回路204、第1のパルススイッチ54、および第2のパルススイッチ229を、それぞれ駆動するためのコントローラ208からの制御信号に応答するそれぞれのドライバ220、222、224、および228を示す。例示の一実施形態では、第1のパルススイッチ54は、個別のパルスコンデンサ56とパルスインダクタ58に結合され、これらは動作の際には同調共振回路を構成し、図1〜9に関連して述べたように、MEMSベースのスイッチング回路のターンオン事象に関連してブリッジダイオード28にパルスを印加するように構成することができる。これは、MEMSベースのスイッチング回路が閉じるときに、MEMSベースのスイッチング回路の端子の両端の電圧がゼロに等しい(またはほぼゼロに近い)ことを確実にするように適切に選ばれた時点でパルスを生成するためである。基本的にパルス信号は、微小電気機械システムスイッチング回路の導通状態へのターンオンに関連して発生される。
【0083】
この例示の実施形態では、第2のパルススイッチ229は、動作に際して同調共振回路を構成する個別のパルスインダクタ230およびパルスコンデンサ234に結合され、MEMSベースのスイッチング回路のターンオフ事象に関連してブリッジダイオード28にパルスを印加するように構成することができる。これは、MEMSベースのスイッチング回路が開くときに、MEMSベースのスイッチング回路を通る電流がゼロに等しい(またはほぼゼロに近い)ことを確実にするように適切に選ばれた時点でパルスを生成するためである。基本的にパルス信号は、微小電気機械システムスイッチング回路の非導通状態へのターンオフに関連して発生される。これは、先に触れたポイントオンウェーブ(POW)技法と組み合わせて実現することができ、それによりスイッチングシステム設計の頑健さのレベルの向上が得られる。たとえば、このパルス利用型ターンオン技法により、本発明の態様を実施したスイッチングシステムを、供給電圧の品質が、POWスイッチングのみを用いて常に高信頼度で動作させるのには適さない場合の用途に用いることが可能になると考えられる。第3のパルス回路により、第1および第2のパルス回路が正常なスイッチング事象(障害駆動でないスイッチング事象)に関連してパルス利用型スイッチングを丁度行ったときでも、1つの回路を自由で障害の場合に電流制限を支援する準備が整った状態に保つことが確実になり得ることに留意されたい。これは、図14に関連して述べた、冗長型の過電流保護の概念の延長である。
【0084】
図15はさらに、それぞれのスイッチング回路の電流伝送能力に適した負荷電流状態、およびスイッチングシステムに影響を及ぼす障害状態を、判定するために用いることできるような、電流を感知するためにコントローラ208に接続された電流センサ226を示す。
【0085】
例示の一実施形態では、モジュール間制御により、たとえば電圧スケーリングが可能なMEMSスイッチング回路モジュールのアレイ用に電気的に分離された制御信号を供給するなど、主入力コマンドを中継することができる。
【0086】
MEMSベースのスイッチング回路と並列に、電圧勾配緩和回路網と過電流保護回路がある場合、オフ状態で、ある程度のリーク電流があり得る。したがって、トリップ状態で漏洩をゼロとする必要がある用途には、分離接触器を追加することができる。このような分離接触器は、大きなレベルの負荷電流を遮断するように設計する必要はなく、したがって定格電流を伝送し印加可能な誘電電圧に耐えるように設計するだけでよく、サイズが大幅に小さくなることが理解されよう。
【0087】
以上の説明で開示されるような本発明の態様を実施した回路は、回路遮断器が必要とし得る、各要素および/または動作機能を、高信頼度でコスト効率良く実現できることが明らかであろう。たとえば、回路遮断器を特徴付けるのに有用な逆の時間関係、たとえば、I2×t=K(ここで過負荷の許容持続時間については、時間(t)と電流(I)の2乗が一定(K)となる。)で定義される過電流曲線などは、慣例的に、電流の大きさに基づいて3つの区域に分けられる。たとえば、長時間(たとえば大きなK)、短時間(たとえば小さなK)、および瞬時である。長時間および短時間の区域は共に、一般に半サイクルよりずっと長い時間に関係し、したがってポイントオンウェーブスイッチングになじみやすいことに留意されたい。しかしまた瞬時区域は、それが激しい結果を伴い1ミリ秒未満で数キロアンペアの潜在的電流に達する場合がある短絡の結果であり得るので、一般にMEMSベースのスイッチング回路によって得られるような、大幅に高速な半サイクル未満のスイッチングが必要となることに留意されたい。したがって動作の際には、本発明の態様を実施した回路は、回路遮断器において、たとえば上記の動作区域のそれぞれにわたる動作要件に合致するために必要となり得るような、各要素および/または動作機能を革新的に満たす。
【0088】
付録1および2は、本発明の態様を実施した過電流保護回路に関連する実用上の考察に関する、いくつかの実験結果および解析的基盤について説明する。
【0089】
以上、ここでは本発明の一部の特徴のみについて図示し説明してきたが、当業者なら多くの変形および変更を思いつくであろう。したがって、すべてのそのような変形および変更は、本発明の真の趣旨の範囲に含まれるものとして、添付の特許請求の範囲によって包含されると理解されるものとする。また、図面の符号に対応する特許請求の範囲中の符号は、単に本願発明の理解をより容易にするために用いられているものであり、本願発明の範囲を狭める意図で用いられたものではない。そして、本願の特許請求の範囲に記載した事項は、明細書に組み込まれ、明細書の記載事項の一部となる。
(付録1)
本発明の態様を実施した過電流保護回路は、開路時および閉路時共に、電源スイッチング動作時に、関連するMEMSベースのスイッチング回路の保護をもたらす。ダイオードブリッジを用いないと、MEMSマイクロスイッチのアレイなどのMEMSベースのスイッチング回路は、マイクロスイッチが、ある電圧に閉路される、またはある負荷電流のもとで開路される場合に損傷を受け得る。
【0090】
概念的には、閉路事象時に最初に閉じるマイクロスイッチおよび、開路事象に最後に開くマイクロスイッチが、スイッチング動作の負担の全体を担わなければならないことになり、個々のマイクロスイッチには耐えることができないものとなり得る。ダイオードブリッジは、スイッチング事象時にマイクロスイッチを保護するように、低抵抗の並列経路をもたらす。閉路時には、第1の過電流保護回路は、スイッチのアレイが閉じる前にそれらの両端の電圧を衰退させるように構成される。開路時には、第2の過電流保護回路は、スイッチのアレイが開く間、それらから電流を分流する。
【0091】
理想化された条件下では、スイッチアレイを分路するダイオードブリッジの2つの枝路は、完全な短絡として動作することになり、迂回されている電流の大きさに関わらず、2つの枝路の間にはゼロの電圧降下を確立することになる。理想的にはスイッチは、それらが開くときにそれらを通って流れる電流がない、コールドスイッチングを行うことになる。しかし、実際の回路ではダイオードは必ずしも厳密に整合していないことがあるので、ダイオードはいくらかの電圧降下を有することになり、スイッチが開くときにそれらの両端にいくらかの残留電圧が存在する場合があり、それによってウォームスイッチングを構成する。電圧が十分に大きい場合は、ホットスイッチング条件下において接点の腐食および/または溶着が生じ得る。実際、ダイオードブリッジの枝路の両端の残留電圧のレベルが、実質的に動作の限界を規定することになる。
【0092】
同様に、アレイ内の最後のスイッチが開くときは、それを通って流れる比較的少量の電流が存在することがあり、これは瞬時に第2のダイオードブリッジへ迂回され、対応する小さな誘導電圧キックを生じる。付録1では、残留ブリッジ電圧の影響について述べ、ダイオードブリッジおよびスナバ回路の解析および設計に用いることができる式を示す。結果は、この付録1にまとめられる。
【0093】
この解析は、一般にターンオン動作よりも、ターンオフ動作の方がスイッチにストレスを与えるのでターンオフ動作に焦点を合わせる。ターンオフ動作時には、関心が持たれる一続きの事象の例としては、以下が含まれる。
【0094】
・ ターンオフパルスを発生する前には、MEMSマイクロスイッチの並列アレイ内の各スイッチは閉じており、したがってそれらが全負荷電流を伝送していると仮定する。アレイの両端には、負荷電流にアレイの正味の抵抗を乗じたものに等しい、通常十分の数ボルトの電圧が存在し得る。変化するアレイ電圧に応答した、アレイ内のスイッチのホットスポット温度の上昇および低下は、スイッチの適切な熱モデルから得ることができる。スイッチのアレイの両端の電圧のrms値に依存する平均温度と、変化する電圧および熱モデルに依存する温度変動が存在することになる。基本的事項は、ターンオフパルスをトリガする前では、接点が高温であり得ることである。
【0095】
・ 例示の一実施形態では、ターンオフパルス回路は、それぞれのインダクタとコンデンサの共振周波数のほぼ半サイクルの間続くほぼ正弦波の電流パルスを形成することができる。ターンオフ電流が負荷電流を超える時間間隔の間、ダイオードブリッジ内の4つすべてのダイオードは順方向に電流を導通し、結果としてMEMSマイクロスイッチアレイの両端で低い電圧となる。電圧の値は比較的小さくなり得るが、ゼロではない可能性が高く、かつ時間と共に変化する。特定の挙動は、どれだけブリッジが良く平衡しているか、ダイオード特性、負荷電流、およびターンオフパルスの特性などの要因に依存する。
【0096】
・ ターンオフ動作時のMEMSスイッチの両端の電圧の波形の詳細は、ダイオード特性、それらのパラメータ変動、瞬時ターンオフ電流、および瞬時負荷電流に依存し得る。ワーストケース電圧は、ターンオフパルスの開始時および終了時、または中間で生じ得る。ブリッジが良く平衡している場合は、ターンオフパルスのピークにて電圧が最低となる。逆に、ダイオードブリッジの平衡が良くない場合は、ターンオフパルスのピークにて電圧が最高となる。ダイオード電圧の主要部分をダイオード抵抗が占める場合は、残留電圧は主に負荷電流に依存し、ターンオフパルスの持続時間を通して非常に大きくは変化しない。
【0097】
・ ターンオフパルスの開始時に、各スイッチが依然として閉じている間、負荷電流の一部はスイッチアレイからダイオードブリッジへ迂回して、アレイの両端の電圧を低下させる。しかし迂回される電流の大きさは、比較的小さい。これは、一般にスイッチのアレイは、ダイオードブリッジを通る経路よりもずっと低い抵抗の経路をもたらすことによる。
【0098】
・ プロセスのある時点で、スイッチは開き始める。実際の回路では、このようなスイッチは、必ずしも全く同時には開かない。主として機械的ばらつきに依存する時間上の分布が存在し、最初に開くスイッチと最後に開くスイッチの間の時間間隔は、約数百ナノ秒となる。このような分布を、所与の用途に対して求めることが望ましくなり得る。
【0099】
・ それぞれの個々のスイッチが開くにつれて、アレイ抵抗の値のステップ状の増加が徐々に生じる。スイッチが開き始めるとき、それが時間分布の最後のスイッチでないと仮定すると、全負荷電流のうちのその分担は、最初に、アレイ内の残りの閉じているスイッチに迂回され、アレイ電圧を上昇させ、結果としてアレイ電圧とダイオードブリッジ電圧の間に電圧不平衡を生じる。ブリッジループインダクタンスの両端に電圧の不平衡が現れ、次のスイッチが開く前に、ブリッジとアレイの間の電流共有を再平衡させるL−R過渡現象を駆動する。
【0100】
・ 最初の少数のスイッチが開く間、負荷電流の大部分は、アレイ内の残りの閉じているスイッチを通って流れる。さらに多くのスイッチが開き、アレイの抵抗が上昇するにつれて、負荷電流はダイオードブリッジ内へ迂回する。最後の少数のスイッチが開く間は、負荷電流の大部分はダイオードブリッジを通って流れ、この解析の焦点であるブリッジ電圧を生成する。最後の少数のスイッチを通る電流は、ブリッジ電圧をスイッチ抵抗、すなわち導通している経路が最終的に遮断されるときに、電流を導通している少数の閉じたスイッチの直並列回路網が存在する構成に対する等価スイッチ抵抗で除した値に等しい。
【0101】
・ MEMSスイッチを通る残留電流が遮断され、ダイオードブリッジ内へ迂回される時点が来ることになり、これによりウォームスイッチングが構成される。遮断される電流の大きさは、スイッチの抵抗、およびダイオードブリッジの電気的特性に依存する。電流は、ターンオフ動作の前にスイッチを通って流れる電流よりも大幅に小さくあるいは大きくなる場合があり、この電流はスイッチのウォームスイッチング能力より大幅に小さくあるいは大きくなり得る。さらに、最後のスイッチの接点が低抵抗から開路へ移行するのにかかる時間間隔(たとえば比較的小さな、1ナノ秒のうちのわずかな時間)において、電流を最後のスイッチから、(ターンオフ用に構成された)過電流保護回路へ迂回させるために必要な、小さな誘導電圧キックが生じることになる。実際、実用的な観点からは、時間間隔はゼロにもなり得る。その場合には、誘導性キックを制御するのに比較的小さなスナバコンデンサを設けることができる。
【0102】
上記に示唆されたように、一続きの事象における最後のステップの間のウォームスイッチングおよび誘導電圧キックは、接点の固着、溶着、溶融、および/またはアーク発生になり得る。著しい接点の損傷がない場合でも、最終的に接点の使用寿命を制限し得るわずかな接点の腐食を生じ得る。
【0103】
ターンオン時にも、接点を損傷することがあり得る。ターンオン時に適用可能なステップの多くは、そのようなステップが逆の順序となり得ることを除いて、ターンオフ時のものと同じであることに留意されたい。したがって、以下の解析の多くは、いずれの状況にも当てはまる。いくつかの注目すべき差異は、以下の通りである。
【0104】
・ ターンオンの開始時では、負荷電流は流れていない。電流は、特に障害がある場合は、急速に上昇し得るが、ゼロから始まるので、ターンオフ動作時に流れ得る電流ほど大きくなるとは予想されない。
【0105】
・ ターンオフ動作のような誘導電圧キックは、予想されない。この問題の別の見方としては、スイッチ電圧が衰退するにつれて、スナバコンデンサが電流を供給するということである。ただし、スナバコンデンサの放電電流は、MEMSスイッチを通ってではなく、ダイオードブリッジを通って流れる。
【0106】
ターンオフ動作時は、電流をダイオードブリッジへ迂回する最後のスイッチは、数百ナノ秒程度の短い時間、追加の電流を導通し得ることが予想され、その電流のウォームスイッチングを行うことが予想される。電流の大きさは、ダイオードブリッジによって発生される残留電圧をスイッチの抵抗で除した値にほぼ等しい。スイッチング時には、スイッチにて誘導性キックが短い持続時間の高電圧パルスを生成することがあり、これは接点空隙の電気的降伏電圧が増大する速度よりも速く上昇し、これが非常に短い時間の間、アーク発生を引き起こし得る。
【0107】
理想的には、ダイオードブリッジが導通している間、MEMSスイッチのアレイの両端の電圧がゼロであることが望まれる。これは、MEMSスイッチに対するコールドスイッチング条件となる。しかし、結果として「ウォームスイッチング」条件、および場合によってさらには「ホットスイッチング」条件を生ずる残留電圧が存在することになる。この電圧になり得る、以下の2つの効果がある。
【0108】
1.ブリッジ内の各ダイオードの両端の順方向電圧は、理想化されたゼロの値ではない。そうではなく、各ダイオードは、それを通る電流に応じた小さな電圧を発生する。アレイ内の最後のスイッチが開くとき、その時点では、負荷電流の大部分はダイオードブリッジを通って流れる。したがって各ダイオードが伝送する電流は、全く同じではない。ブリッジ内の4つすべてのダイオードが厳密に同一であったとしても、ブリッジは負荷電流によって不平衡となり、最後に開くMEMSスイッチの両端に電圧を生じる。
【0109】
2.ブリッジ内の4つのダイオードの電気的特性は、同一ではない。これは、追加のブリッジ不平衡を生じ得る。
【0110】
これら2つの効果の理論的基盤は、添付の付録2に含まれる回路解析において解析される。結果を以下にまとめる。電流移転の最終段階の間の例示の等価回路は、説明図E1に示される。電圧
【0111】
【数1】
【0112】
は、公称ダイオード電圧および不平衡変化による、ダイオードブリッジの枝路の両端の残留電圧である。
【0113】
【数2】
【0114】
は、電圧をスイッチ抵抗で除した値に基づいて、最後のスイッチを通る電流を確立し、またスナバコンデンサ上に小さな電圧を確立する。パルス形成インダクタ(LHALT)およびスナバインダクタ(LSNUB)は、それぞれ移転に関係するインダクタンスを表す。パルス形成インダクタのインダクタンスは、スイッチから過電流保護回路への電流の移転を完成するのに必要なループ電流のインダクタンスを表し、数十ナノヘンリー程度となり得る。スナバインダクタンスは、スナバコンデンサのスイッチアレイへの接続の浮遊インダクタンスを表す。接続は、このインダクタンスの値を小さくするように可能な限り詰めるべきである。スナバ接続の浮遊インダクタンスを数ナノヘンリーに制限することは可能である。スナバ抵抗は、スナバコンデンサと直列に接続し得る抵抗器である。
【0115】
最後に開くスイッチは、理想化されたスイッチと直列の、接点抵抗としてモデル化される。スイッチが実際にどれだけ速く開くかに応じて、このようなスイッチを、接点圧力がゼロになるのにかかる時間間隔、例えば0.01から10ナノ秒程度の期間にわたって、閉路接点抵抗から開始して無限大まで上昇する、時間的に変化する抵抗としてモデル化するのが適切であることが理解されよう。
【0116】
【表1】
【0117】
残留ブリッジ電圧の効果
式(1)により、最後に開くスイッチの両端の電圧
【0118】
【数3】
【0119】
は、2つの効果によって生じる電圧の和に等しく、電流は、その電圧を1組の接点の接点抵抗で除した値に等しい。
【0120】
【数4】
【0121】
絶対値演算子を用いているのは、電圧の符号には関心がなく、2つの効果が反対の符号をもつ電圧を生じることは期待できないことを強調するためであることが理解されよう。効果の大きさ、および全体の大きさのみに関心がある。
【0122】
ダイオードブリッジ回路に用いることができるタイプの半導体ダイオードの、順方向導通時の、電圧−電流特性の例示のモデルは、式(2)で与えられる。
【0123】
【数5】
【0124】
式(2)のモデルから始めて、第1の効果による、ターンオフパルス電流、負荷電流、およびダイオードモデルパラメータで表した、最後に開くスイッチの両端の電圧に対する閉じた形の数式を得ることができる。詳細は付録2を参照されたい。公称ダイオード電圧による残留電圧に対する正確な近似は、式(3)で与えられ、ここでダイオードパラメータは式(2)からのものである。
【0125】
【数6】
【0126】
式(3)に入るのは、ターンオフパルス電流のピークではなく、「最後のスイッチが開く時点で」流れているパルス電流であることに留意されたい。式(3)はまた、時間の関数としてのターンオフパルス電流と負荷電流で表した、時間の関数としての可能な公称残留電圧を表していると見なすとができる。
【0127】
典型的な状況に注目することが有益である。まず、例示のダイオードパラメータを用いることにする。付録2で説明されるように、発明者らの実験テストに用いた、ダイオードタイプPDU540などのタイプのダイオードの1つの電圧−電流特性は、摂氏25°において式(4)で与えられるモデルパラメータを有する。
【0128】
【数7】
【0129】
発明者らのテストの1つでは、4つのPDU540ダイオードを用いたダイオードブリッジを通る40アンペアのパルス電流により、10アンペアの負荷電流を迂回させることを試みた。これらの値およびダイオードパラメータを式(3)に代入すると、1オームの接点抵抗を有する、最後に開き、かつ電流がホットスイッチングされるべきスイッチの両端の電圧は、次式で与えられることが分かる。
【0130】
【数8】
【0131】
式(3)は、並列スイッチの単一のアレイ、4つのダイオードを備える単一のダイオードブリッジ、および単一のターンオフパルス回路に当てはまる。式は、他の構成にも容易に拡張することができる。たとえば、ブリッジの4辺のそれぞれに、並列なN個のダイオードがあることを除いて、すべてが同じであると仮定する。この場合は、残留電圧は次式で与えられる。
【0132】
【数9】
【0133】
式(6)は、予想し得るように、ダイオードを並列に配置することで、ダイオード抵抗の影響が低減されることを示している。おそらく、より直感的ではないが、解析によって裏付けられることは、ダイオードの半導体接合による、残留電圧への寄与は変わらないという結果である。ダイオードを並列にすることで、各ダイオードを通る電流も低減されることに留意されたい。
【0134】
ダイオードを直列に配置することは、式(3)の両方の項を増加させ、推奨されない。ブリッジの各辺にN個の直列のダイオードを有する構成に対する電圧は、次式で与えられる。
【0135】
【数10】
【0136】
もう1つの例示の構成は、単一のダイオードブリッジによって保護される直並列スイッチアレイである。公称残留ターンオフ電圧を求めるのに、式(3)は依然として当てはまるが、「ホットスイッチング」される電流の最大の大きさを求めるのには、式(1)は修正されるべきである。スイッチの直並列アレイの開路時に、並列モジュールの1つの中の最後のスイッチが開く時点が来ることになる。このスイッチは、開くときに、直並列アレイを通る残りの電流のすべてをアレイからダイオードブリッジへ迂回させるので、このスイッチは、最も大きな「ホットスイッチング」ストレスを受ける。その時点で、他のモジュール内には依然として閉じている少数のスイッチが存在するので、最悪ストレスを受けるスイッチを通る電流は、ダイオードブリッジの残留電圧を、依然として閉じている残りのスイッチの直並列接続の等価抵抗で除した値に等しい。ワーストケースのシナリオでは、1つのモジュールが、他のすべての直列モジュールよりも大幅に早く開き得る。その場合は、最後のスイッチに対するホットスイッチング電流は、残留電圧を1つのスイッチの抵抗で除した値に等しくなる。ベストケースでは、他の直列モジュールのそれぞれにちょうど1つの依然として閉じたスイッチが存在するように、モジュールのすべてがほぼ同時に開く。その場合は、最後に開くスイッチのホットスイッチング電流は、残留電圧を直列の複数のスイッチの抵抗で除した値に等しい。
【0137】
他の例示の構成は、各直列モジュールに対して、別のターンオフ回路およびブリッジを設けるものである。その場合は、直列モジュールは減結合されるようになり、やはり式(1)および(3)を直接適用することができる。
【0138】
式(1)および(3)は、ターンオフ用に構成された過電流保護回路、およびMEMSスイッチアレイを、電流および電圧に対してどのようにスケーリングすることができるかを示唆している。一般には、たとえどれだけ多くのスイッチが並列になっていようとも、最後に開くスイッチが常に存在することになる。最後のスイッチが開くときに、それがホットスイッチングすることになる電流の大きさは、残留電圧を1つの接点の抵抗で除した値に等しい。したがって、スケーラビリティを実現するためには、いったん、あるレベルの負荷電流で動作する構成を開発し、より高いレベルの負荷電流を達成するには、式(3)で与えられるものと同じ公称残留電圧を生成しなければならない。これは、ターンオフパルス電流を、負荷電流とほぼ同じ率だけスケーリングすべきであることを意味し、ダイオード抵抗を、その率の逆数だけ低減しなければならない。所与のダイオードタイプを用いて、これを行う1つの方法は、倍率と同じ数のダイオードを並列に用いることである。たとえば、40アンペアのターンオフパルス電流と、ブリッジの各辺に、あるタイプの単一のダイオードを用いて、10アンペアの負荷をスイッチングするのに適用可能な第1の設計から、100アンペアの負荷をスイッチングするのに適用可能な第2の設計へ移行するには、400アンペアのターンオフパルス電流と、並列の10個のダイオードが必要となり得る。式(2)および(3)内の抵抗パラメータは、ダイオード抵抗、および回路基板内のターンオフ電流および負荷電流を伝送する導電性トレースの抵抗の両方を含み、したがって実際には、負荷電流と同じ率だけトレースの厚さもスケーリングして増すべきであることに留意されたい。
【0139】
式(3)はまた、電圧に対してスケーリングする1つの例示の方法は、各直列モジュールに対してそれぞれダイオードブリッジを含む、(ターンオフ用に構成された)別の過電流保護回路を設けることを示唆している。すなわち各モジュールは、すべての部品と回路に関して自己完結型であるべきである。その場合は、そのような自己完結型のモジュールを積み重ねることによって高電圧を達成することができる。システム全体に対して、単一のダイオードブリッジ内に、ダイオードを直列に配置することは、スケーラビリティに対して不利になると考えられる。
【0140】
次に、第2の効果の解析へ進む。すなわち、ダイオードパラメータの変動による残留電圧への寄与である。式(3)を導くために用いられた仮定の1つは、ダイオードが同一であるということである。実際は、実用的な回路では、それらは同一ではない。たとえば、PDU540ダイオードの場合は、電圧−電流特性は温度に強く依存する。各ダイオードが異なる温度となる、いくつかの例がある。たとえば、それらがスイッチ自体などの熱源の近くに置かれることがあり得る。ターンオフ回路の動作時に、それらは不均一な加熱を受け得る。したがって、ブリッジ内の4つのダイオードが、同じ温度にならない場合があり、追加の残留電圧を生じることを考慮すべきである。式(3)で与えられる電圧に加えて、ダイオードパラメータのわずかなシフトで表されるダイオードブリッジ内部の不平衡による追加の電圧寄与が生じ得る。別紙内で導かれる以下の式は、ダイオードパラメータの変動による追加の残留電圧に関するワーストケースのシナリオを計算している。電圧は、公称値からのパラメータの変動によって表される。
【0141】
【数11】
【0142】
数値的な例として、前項での例について、PDU540ダイオードの公称値から5%のダイオードパラメータの変動があると仮定する。その場合は、追加の残留電圧は次のように計算される。
【0143】
【数12】
【0144】
これは5%のダイオードパラメータの変動を受けることになることを示唆しているのではなく、その影響がどうなるかを示しているに過ぎないことに留意すべきである。百分率で言えば、最も大きく影響を受けやすいのは、ダイオード電圧パラメータの変動によるものであり、これは温度に強く依存する。温度効果を精査することによって、予想され得る実際のパラメータ変動の正確な推定を求め、次いで式(8)を用いて残留電圧を推定することが有用であることが示唆される。この例では総残留電圧は、ダイオード公称電圧による0.38ボルトにダイオード不平衡電圧による0.156ボルトを加え、全体で0.536ボルトに等しくなり、これはおそらく単一の1組の接点の能力を超える。
【0145】
式(3)と(8)を組み合わせることにより、ダイオードブリッジへの電流の最終的な移転の瞬間での総残留電圧に対する数式が得られ、ただし、IHおよびILは、移転の時点でのターンオフパルス電流および負荷電流の値である。
【0146】
【数13】
【0147】
式(10)は、電流をダイオードブリッジへ移転する最後のスイッチの両端の総残留電圧を推定するために用いることができる。式(10)は、いくつかの例示的な設計トレードオフをはっきりと示している。たとえば、ターンオフパルス電流が、どのように残留電圧に影響を及ぼすかに注目すべきである。式(10)の最初の項は、ターンオフパルス電流が増加されるのに従って減少し続けるが、式の最後の項は、ターンオフ電流に比例する。式(10)のターンオフ電流に対するプロットは、その位置が、負荷電流を含む他のすべてのパラメータに依存する、幅の広い最大値が明らかになるであろう。式(10)は、所与の用途、MEMSスイッチ特性、MEMSアレイ構成、および他のターンオフパラメータの要件を満たすダイオードブリッジを設計するための基準として用いることができる。
(付録2)
公称ダイオード電圧にパラメータ変動を加えたものによる残留ブリッジ電圧を求めるために、説明図A1内の回路図を解析することができる。
【0148】
【表2】
【0149】
【数14】
【0150】
を求める場合の解析の焦点は、ダイオードの電圧−電流特性から生じる残留ブリッジ電圧である。電流ILは、MEMSマイクロスイッチアレイから分流される負荷電流である。電流IHは、すべてのダイオードに対して順方向バイアスを維持するために用いられるターンオフパルス電流である。
【0151】
妥当な理論的根拠を有し、順方向バイアスされたダイオードの電圧−電流特性に密接に適合する、3個のパラメータのダイオードモデルは、式(A1)により与えられる。
【0152】
【数15】
【0153】
式(A1)におけるモデルに対するパラメータは、通常、様々な温度での電圧に対する電流の対数としてプロットされる、公開された電圧−電流曲線から推定することができる。電流および電圧の小さな値に対しては、式(A1)の最初の項が主要部分を占め、したがってVDはプロットの傾きから推定することができ、次いでIDは、直線上の点の1つにフィットさせることによって求めることができる。次いでRDは、より高い電流でのプロットされた電圧と直線近似の差によって推定することができる。PDU540ダイオードについては、以下の表が様々な温度でのパラメータ値を示す。
【0154】
【表3】
【0155】
説明図A1内の4つすべてのダイオードが、式A1によって与えられる同一のモデルを有すると仮定して解析を始める。それぞれのダイオードの両端の順方向電圧を、V1、V2、V3、およびV4として表す。それらを通る順方向電流を、I1、I2、I3、およびI4として表す。式(A2)で与えられる電気回路網の制約のもとで、
【0156】
【数16】
【0157】
を求めることが望まれる。
【0158】
【数17】
【0159】
電流は、式(A1)を式(A2)に代入し、結果として得られる非線形方程式の系を解くことによって求めることができる。結果は、式(A3)および(A4)によって与えられ、これらは直接代入することによって検証することができる。
【0160】
【数18】
【0161】
【数19】
【0162】
式(A4)を(A2)内の電圧の式に代入することによって、式(A5)を生ずる。
【0163】
【数20】
【0164】
実際には、IDは、IHおよびILに比べると比較的小さい。たとえばPDU540ダイオードの場合は、IDはダイオードの全定格温度範囲にわたって1マイクロアンペアののうちのわずかな大きさを超えることはなく、一方、IHおよびILは数十アンペアである。したがって、式(A5)内のIDは無視することができ、式(A6)で与えられる近似式を生ずる。
【0165】
【数21】
【0166】
式(A6)は、4つすべてのダイオードが同一の電流−電圧特性を有するという理想的な仮定に基づいており、より完全な解析の出発点に過ぎない。ダイオードブリッジ内にわずかな不平衡を生じ、それによって追加の残留ブリッジ電圧を生じる、ダイオードの電気的モデルパラメータのわずかな変動が生ずる可能性があり、これは以下のように解析することができる。
【0167】
・ 追加の残留電圧は小さく、十分の1ボルト程度である。したがってダイオードパラメータの変動は小さく、実際の状況を式(A3)および(A4)からのわずかな偏移として表すように、テーラー展開を用いることができる。
【0168】
・ 各ダイオードの両端の電圧は、式(A4)によって与えられる基底電圧に、ダイオードモデルパラメータの変動およびそれによるダイオード電流の変化によるテーラー展開の1次項を加算した値として表される。
【0169】
・ ダイオード電流自体は、式(A3)により与えられる基底電流に、ループ不平衡電流を加えたものによって表すことができる。
【0170】
・ 回路網の制約を適用することにより、結果として、ループ不平衡電流とダイオード電圧シフトに対して解くことができる線形方程式の系を得る。
【0171】
・ 追加の残留電圧は、ダイオード電圧シフトによって表される。
【0172】
まず、式(A7)によって与えられる近似ダイオードモデルを用いることによって解析を簡略化することができる。近似は、ダイオード電流がIDよりも数桁大きくなるという事実によって正当化される。
【0173】
【数22】
【0174】
モデルパラメータのわずかなシフト、モデルパラメータ、およびダイオード電流によって表されるダイオード電圧における変化を表すテーラー展開は、次式で与えられる。
【0175】
【数23】
【0176】
式(A8)は、各ダイオードに別々に適用されることになる。これは2つの部分、すなわちパラメータシフトによる電圧シフトを表す一方の部分と、電流シフトによる電圧シフトを表す他方の項とに分解することができる。
【0177】
【数24】
【0178】
パラメータシフトは上方向にも下方向にもなり得るので、式(A9)の第2項の負号は、実際には重要ではないことに留意されたい。関心があるのは、パラメータシフトが最悪状況を生じる方向であるときの電圧シフトの大きさである。
【0179】
【数25】
【0180】
各ダイオードに対する電流シフトは関係しており、なぜならそれらが図A1の回路網の各ノードでは加算されてゼロになるべきであるからである。各ダイオードにおける総電流は、式(A11)により、電流シフトおよびHALT電流および負荷電流によって表すことができる。
【0181】
【数26】
【0182】
各ダイオードでの電圧シフトは、式(A12)によって表される。
【0183】
【数27】
【0184】
ダイオードループを一巡した電圧シフトの総和は、ゼロとなるべきである。
【0185】
【数28】
【0186】
(A13)を(A12)と組み合わせて、次式となる。
【0187】
【数29】
【0188】
式(A3)を式(A14)に代入して解くことにより、ループ電流シフトに対する以下の数式となる。
【0189】
【数30】
【0190】
スイッチでの残留電圧に関する限り、式(A16)で表される、ダイオードの対の間の変動の差に関心がある。
【0191】
【数31】
【0192】
式(A15)および式(A3)を式(A16)に代入すると、かなり興味深い、直感的で簡単な結果を生ずる。
【0193】
【数32】
【0194】
式(A17)に対しては、直感的に説明される。分子内の項は、ダイオードブリッジが閉ループでなかったなら生ずるであろうパラメータシフトによる、ダイオード電圧シフトである。ループ内の4つのダイオードは、ブリッジの枝路にて各寄与を事実上半分に分割する分圧器を形成するので、各項の半分だけが残留電圧として現れる。ダイオードD1とD2の直列接続の抵抗増加量は、対称性の理由によりダイオードD3とD4の直列接続の抵抗増加量と全く同じである。ダイオードD1またはD4の順方向降下の増加は、残留電圧を正方向に増加させ、一方、ダイオードD2またはD3の順方向降下の増加は、残留電圧を負方向に増加させる。
【0195】
式(A10)および式(A17)は、ダイオードパラメータシフトの任意の特定の構成による追加の残留電圧を推定するために、共に用いることができる。式(A10)は各ダイオードに適用され、ダイオードのパラメータの公称値からのシフトによるその寄与が計算される。次いでスイッチにおける全体の効果を計算するために、式(A17)が用いられる。
【0196】
式(A10)および式(A17)はまた、ワーストケースのシナリオによる影響を推定するのに用いることができる。ワーストケースでは、個々の項の符号は、すべてが互いに強め合うようになり、ダイオード変動によるワーストケースの追加の残留電圧に対する、以下の近似式となる。
【0197】
【数33】
【図面の簡単な説明】
【0198】
【図1】本技法の態様による、例示のMEMSベースのスイッチングシステムのブロック図である。
【図2】図1に示されるMEMSベースのスイッチングシステムを示す概略図である。
【図3】図2に示されるMEMSベースのスイッチングシステムの例示の動作を示す概略フローチャートである。
【図4】図2に示されるMEMSベースのスイッチングシステムの例示の動作を示す概略フローチャートである。
【図5】図2に示されるMEMSベースのスイッチングシステムの例示の動作を示す概略フローチャートである。
【図6A】MEMSスイッチの直並列アレイを示す概略図である。
【図6B】2つ以上のMEMSスイッチを直列回路にて接続するための例示の実施形態の概略図である。
【図6C】2つ以上のMEMSスイッチを直列回路にて接続するための例示の実施形態の概略図である。
【図7】勾配緩和型MEMSスイッチを示す概略図である。
【図8】図1のMEMSベースのスイッチングシステムを有するシステムの動作フローを示すフロー図である。
【図9】スイッチングシステムのターンオフを表す、実験結果のグラフである。
【図10】本発明の態様による例示のスイッチングシステムを示すブロック図である。
【図11】負荷開始事象時などの、それぞれの固体スイッチング回路を通る電流路を示す、図10のスイッチングシステムの例示の一実施形態の回路詳細を示す図である。
【図12】定常動作時などの、それぞれのMEMSベースのスイッチング回路を通る電流路を示す、図10のスイッチングシステムの例示の一実施形態の回路詳細を示す図である。
【図13】障害状態時などの、過電流保護回路を通る電流路を示す、図10のスイッチングシステムの例示の一実施形態の回路詳細を示す図である。
【図14】二重過電流保護回路を有する、スイッチングシステムの例示の一実施形態の概略図である。
【図15】図10のスイッチングシステムの例示の一実施形態の、回路の詳細を示す図である。
【図16】固体スイッチング回路が、逆直列回路構成に接続された1対の固体スイッチを含む、例示の一実施形態を示す図である。
【図17】スイッチングシステムのターンオンを表す実験結果のグラフである。
【図18】スイッチングシステムのターンオンを表す実験結果のグラフである。
【符号の説明】
【0199】
28 平衡ダイオードブリッジ
50 負荷電流
54 第1のパルススイッチ
56 コンデンサ
58 インダクタ
204 固体スイッチング回路
206 微小電気機械システムスイッチング回路
208 コントローラ
229 第2のパルススイッチ
230 インダクタ
234 コンデンサ
2061 第1の過電流保護回路
2062 第2の過電流保護回路
【特許請求の範囲】
【請求項1】
システムであって、
微小電気機械システムスイッチング回路(206)と、
前記微小電気機械システムスイッチング回路(206)と並列回路にて接続された第1の過電流保護回路(54、56、58)であって、前記第1の過電流保護回路は、前記微小電気機械システムスイッチング回路(206)の第1のスイッチング事象に応答して、瞬間的に導電路を形成するように構成され、前記微小電気機械システムスイッチング回路(206)との並列回路の前記導電路は、前記第1のスイッチング事象時に前記微小電気機械システムスイッチング回路(206)の接点の両端の電圧レベルを抑制するためである、第1の過電流保護回路と、
前記微小電気機械システムスイッチング回路(206)および前記第1の過電流保護回路(2061)に並列回路にて接続された第2の過電流保護回路(229、230、234)であって、前記第2の過電流保護回路(2062)は、前記微小電気機械システムスイッチング回路(206)の第2のスイッチング事象に応答して瞬間的に導電路を形成するように構成され、前記微小電気機械システムスイッチング回路(206)との並列回路の前記導電路は、前記第2のスイッチング事象時に前記微小電気機械システムスイッチング回路(206)の接点を通る電流(0)の流れを抑制するためである、第2の過電流保護回路と
を備えるシステム。
【請求項2】
前記導電路が、平衡ダイオードブリッジ(28)によって形成される、請求項1記載のシステム。
【請求項3】
前記平衡ダイオードブリッジ(28)に結合された第1のパルス回路(54)をさらに備え、前記第1のパルス回路は、コンデンサ(56)とインダクタ(58)の間に同調共振回路を備え、前記共振回路は、前記微小電気機械システムスイッチング回路(206)の接点の両端の電圧レベルを抑制するためのパルス信号を形成するように適合され、前記パルス信号は、前記微小電気機械システムスイッチング回路(206)の導通状態へのターンオンに関連して発生され、前記ターンオンは前記第1のスイッチング事象を構成する、請求項2記載のシステム。
【請求項4】
前記平衡ダイオードブリッジ(28)に結合された第2のパルス回路(229)をさらに備え、前記第2のパルス回路は、コンデンサ(234)とインダクタ(230)の間に同調共振回路を備え、前記共振回路は、前記微小電気機械システムの接点を通る電流の流れ抑制するためのパルス信号を形成するように適合され、前記パルス信号は、前記微小電気機械システムスイッチング回路(206)の非導通状態へのターンオフに関連して発生され、前記ターンオフは前記第2のスイッチング事象を構成する、請求項2記載のシステム。
【請求項5】
前記微小電気機械システムスイッチング回路(206)および前記第1の過電流保護回路に並列回路にて結合された、固体スイッチング回路(204)をさらに備える、請求項1記載のシステム。
【請求項6】
前記電気機械スイッチング回路(206)および前記固体スイッチング回路(204)に結合されたコントローラ(208)をさらに備え、前記コントローラ(208)は、スイッチングシステムに接続された負荷からの負荷電流(50)の選択的切換えを行うように構成され、前記選択的切換えは、前記スイッチング回路のそれぞれ1つの動作能力に適した負荷電流(50)の状態に応答して、前記電気機械スイッチング回路(206)と前記固体スイッチング回路(204)の間で行われる、請求項5記載のシステム。
【請求項7】
前記コントローラ(208)が、交流電源電圧または交流負荷電流の検出されたゼロクロスに応答して、前記微小電気機械システムスイッチング回路(206)の無アークスイッチングを行うように構成される、請求項6記載のシステム。
【請求項8】
システムであって、
微小電気機械システムスイッチング回路(206)と、
前記微小電気機械システムスイッチング回路(206)と並列回路にて接続された少なくとも第1の過電流保護回路(2061)であって、前記第1の過電流保護回路(2061)は、前記微小電気機械システムスイッチング回路(206)の第1のスイッチング事象に応答して瞬間的に導電路を形成するように構成され、前記微小電気機械システムスイッチング回路(206)との並列回路の前記導電路は、前記第1のスイッチング事象時に前記微小電気機械システムスイッチング回路(206)の接点の両端の電圧を抑制するためである、第1の過電流保護回路と
を備えるシステム。
【請求項9】
前記微小電気機械システムスイッチング回路(206)および前記第1の過電流保護回路(2061)に並列回路にて接続された第2の過電流保護回路(2062)であって、前記第2の過電流保護回路(2062)は、前記微小電気機械システムスイッチング回路(206)の第2のスイッチング事象に応答して瞬間的に導電路を形成するように構成され、前記微小電気機械システムスイッチング回路(206)との並列回路の前記導電路は、前記第2のスイッチング事象時に前記微小電気機械システムスイッチング回路(206)の接点を通る電流の流れを抑制するためである、第2の過電流保護回路をさらに備える、請求項8記載のシステム。
【請求項10】
前記導電路が、平衡ダイオードブリッジ(28)によって形成される、請求項9記載のシステム。
【請求項1】
システムであって、
微小電気機械システムスイッチング回路(206)と、
前記微小電気機械システムスイッチング回路(206)と並列回路にて接続された第1の過電流保護回路(54、56、58)であって、前記第1の過電流保護回路は、前記微小電気機械システムスイッチング回路(206)の第1のスイッチング事象に応答して、瞬間的に導電路を形成するように構成され、前記微小電気機械システムスイッチング回路(206)との並列回路の前記導電路は、前記第1のスイッチング事象時に前記微小電気機械システムスイッチング回路(206)の接点の両端の電圧レベルを抑制するためである、第1の過電流保護回路と、
前記微小電気機械システムスイッチング回路(206)および前記第1の過電流保護回路(2061)に並列回路にて接続された第2の過電流保護回路(229、230、234)であって、前記第2の過電流保護回路(2062)は、前記微小電気機械システムスイッチング回路(206)の第2のスイッチング事象に応答して瞬間的に導電路を形成するように構成され、前記微小電気機械システムスイッチング回路(206)との並列回路の前記導電路は、前記第2のスイッチング事象時に前記微小電気機械システムスイッチング回路(206)の接点を通る電流(0)の流れを抑制するためである、第2の過電流保護回路と
を備えるシステム。
【請求項2】
前記導電路が、平衡ダイオードブリッジ(28)によって形成される、請求項1記載のシステム。
【請求項3】
前記平衡ダイオードブリッジ(28)に結合された第1のパルス回路(54)をさらに備え、前記第1のパルス回路は、コンデンサ(56)とインダクタ(58)の間に同調共振回路を備え、前記共振回路は、前記微小電気機械システムスイッチング回路(206)の接点の両端の電圧レベルを抑制するためのパルス信号を形成するように適合され、前記パルス信号は、前記微小電気機械システムスイッチング回路(206)の導通状態へのターンオンに関連して発生され、前記ターンオンは前記第1のスイッチング事象を構成する、請求項2記載のシステム。
【請求項4】
前記平衡ダイオードブリッジ(28)に結合された第2のパルス回路(229)をさらに備え、前記第2のパルス回路は、コンデンサ(234)とインダクタ(230)の間に同調共振回路を備え、前記共振回路は、前記微小電気機械システムの接点を通る電流の流れ抑制するためのパルス信号を形成するように適合され、前記パルス信号は、前記微小電気機械システムスイッチング回路(206)の非導通状態へのターンオフに関連して発生され、前記ターンオフは前記第2のスイッチング事象を構成する、請求項2記載のシステム。
【請求項5】
前記微小電気機械システムスイッチング回路(206)および前記第1の過電流保護回路に並列回路にて結合された、固体スイッチング回路(204)をさらに備える、請求項1記載のシステム。
【請求項6】
前記電気機械スイッチング回路(206)および前記固体スイッチング回路(204)に結合されたコントローラ(208)をさらに備え、前記コントローラ(208)は、スイッチングシステムに接続された負荷からの負荷電流(50)の選択的切換えを行うように構成され、前記選択的切換えは、前記スイッチング回路のそれぞれ1つの動作能力に適した負荷電流(50)の状態に応答して、前記電気機械スイッチング回路(206)と前記固体スイッチング回路(204)の間で行われる、請求項5記載のシステム。
【請求項7】
前記コントローラ(208)が、交流電源電圧または交流負荷電流の検出されたゼロクロスに応答して、前記微小電気機械システムスイッチング回路(206)の無アークスイッチングを行うように構成される、請求項6記載のシステム。
【請求項8】
システムであって、
微小電気機械システムスイッチング回路(206)と、
前記微小電気機械システムスイッチング回路(206)と並列回路にて接続された少なくとも第1の過電流保護回路(2061)であって、前記第1の過電流保護回路(2061)は、前記微小電気機械システムスイッチング回路(206)の第1のスイッチング事象に応答して瞬間的に導電路を形成するように構成され、前記微小電気機械システムスイッチング回路(206)との並列回路の前記導電路は、前記第1のスイッチング事象時に前記微小電気機械システムスイッチング回路(206)の接点の両端の電圧を抑制するためである、第1の過電流保護回路と
を備えるシステム。
【請求項9】
前記微小電気機械システムスイッチング回路(206)および前記第1の過電流保護回路(2061)に並列回路にて接続された第2の過電流保護回路(2062)であって、前記第2の過電流保護回路(2062)は、前記微小電気機械システムスイッチング回路(206)の第2のスイッチング事象に応答して瞬間的に導電路を形成するように構成され、前記微小電気機械システムスイッチング回路(206)との並列回路の前記導電路は、前記第2のスイッチング事象時に前記微小電気機械システムスイッチング回路(206)の接点を通る電流の流れを抑制するためである、第2の過電流保護回路をさらに備える、請求項8記載のシステム。
【請求項10】
前記導電路が、平衡ダイオードブリッジ(28)によって形成される、請求項9記載のシステム。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6A】
【図6B】
【図6C】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【図18】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6A】
【図6B】
【図6C】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【図18】
【公開番号】特開2009−95225(P2009−95225A)
【公開日】平成21年4月30日(2009.4.30)
【国際特許分類】
【外国語出願】
【出願番号】特願2008−191824(P2008−191824)
【出願日】平成20年7月25日(2008.7.25)
【出願人】(390041542)ゼネラル・エレクトリック・カンパニイ (6,332)
【氏名又は名称原語表記】GENERAL ELECTRIC COMPANY
【Fターム(参考)】
【公開日】平成21年4月30日(2009.4.30)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−191824(P2008−191824)
【出願日】平成20年7月25日(2008.7.25)
【出願人】(390041542)ゼネラル・エレクトリック・カンパニイ (6,332)
【氏名又は名称原語表記】GENERAL ELECTRIC COMPANY
【Fターム(参考)】
[ Back to top ]