説明

微弱光観察顕微鏡及び微弱光取得方法

【課題】撮像素子の露光時間を短縮でき、低倍率のレンズの使用や、観察対象の速い変化の撮影が可能な微弱光観察顕微鏡及び微弱光取得方法を提供する。
【解決手段】対物レンズ1aと結像レンズ1bと撮像素子1cとからなる結像光学系1を有し、結像光学系1を介して観察対象10から発せられる所定の微弱光を取得する微弱光観察顕微鏡であって、第2の対物レンズ2aと第2の結像レンズ2bと観察対象10と共役な位置に配置されるミラー2cとを有する光戻し用光学系2を、観察対象10に対して結像光学系1の反対側に有する。結像光学系1を用いて、観察対象10から第1の対物レンズ1aに入射する所定の微弱光を取得するとともに、光戻し用光学系2を用いて、観察対象10から結像光学系1とは異なる側に発せられた所定の微弱光を観察対象10に戻し、観察対象10から第1の対物レンズ1aに入射させる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、観察対象から発せられる微弱光を取得して観察する微弱光観察顕微鏡及び微弱光取得方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、微弱光の観察として、例えば、発光顕微鏡を用いた細胞や組織の微細構造レベルの変化の長時間観察が行われている。
発光顕微鏡は、例えば、図5に示すように、対物レンズ51aと結像レンズ51bと撮像素子51cからなる撮像光学系51を有する。図5中、60は観察対象としての細胞・組織などのサンプル、60aは観察対象60における発光部、61は図示しないステージ上に載置された、観察対象60を収容するシャーレ、スライドガラス、マイクロプレート等の容器、60a’は撮像素子51で撮像される発光部60a’の像である。そして、発光顕微鏡を用いた観察では、発行試薬等との化学反応によって観察対象から発せられる所定波長の微弱光を所定時間(例えば、15分等)露光し、これを数十回繰り返すことで、組織や細胞の変化を捉える。
従来、この種の発光顕微鏡としては、例えば、次の特許文献1,2に記載のものが提案されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2007−108154号公報
【特許文献2】WO07/074923号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
一般に、発光顕微鏡を用いて観察対象からの発光像を画像化する場合においては、微弱な発光の強度を補うために、撮像素子の露光時間を長くして受光される光量を増加させるといった手法が用いられる。また、微弱な発光像を極力明るく取得するために、対物レンズ及び結像レンズには、高NAのものが用いられる。
【0005】
ここで、対物レンズのNAが大きいほど、明るい発光像が得られる。
しかし、低倍率の対物レンズで広い範囲を観察する場合、NAを高くすることは困難である。また、高倍率の対物レンズを用いてもNAには限界がある。
このため、従来の発光顕微鏡では、上記のように撮像素子の露光時間を長くすることで、明るさ不足を補わざるを得ない。しかし、撮像素子の露光時間が長いと、観察対象の速い変化を撮影することが難しい。
【0006】
ところで、特許文献2には、観察対象に対して、発光画像を撮像するユニットと蛍光画像を撮像するユニットとが対向配置された構成が開示されている。
ここで、本件出願人は、特許文献2に開示の上記構成を応用し、観察対象に対して、2つの発光画像を撮像するユニットを対向配置し、2つのユニットで取得した発光画像を合成することで発光強度を補うことを着想した。
【0007】
しかし、2つの発光画像を撮像するユニットを対向配置しても、夫々のユニットで撮像される発光強度が弱く、夫々のユニットにおける撮像素子の露光時間を短くすることができないため、観察対象の速い変化を撮影することが難しいという問題を解消できない。
【0008】
本発明は、このような従来の問題点に鑑みてなされたものであり、撮像素子の露光時間を短縮でき、低倍率のレンズの使用や、観察対象の速い変化の撮影が可能な微弱光観察顕微鏡及び微弱光取得方法を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記目的を達成するため、本発明による微弱光観察顕微鏡及び微弱光取得方法は、対物レンズと結像レンズと撮像素子とからなる結像光学系を有し、前記結像光学系を介して観察対象から発せられる所定の微弱光を取得する微弱光観察顕微鏡であって、第2の対物レンズと第2の結像レンズと前記観察対象と共役な位置に配置されるミラーとを有する光戻し用光学系を、前記観察対象に対して前記結像光学系の反対側に有することを特徴としている。
【0010】
また、本発明の微弱光観察顕微鏡においては、前記ミラーが、可変形状ミラーからなるのが好ましい。
【0011】
また、本発明の微弱光観察顕微鏡においては、さらに、前記光戻し用光学系の光路中に、前記所定の微弱光の波長を透過させ、前記所定の微弱光の波長以外の波長を反射する光路分割手段を備えるとともに、前記所定の微弱光の波長とは異なる波長からなる照明光を前記光路分割部材に向けて出射する照明光学系を有するのが好ましい。
【0012】
また、本発明の微弱光観察顕微鏡においては、前記光路分割手段が、前記第2の対物レンズと前記第2の結像レンズとの間に備えられ、前記照明光学系が、前記光戻し用光学系の側方に備えられているのが好ましい。
【0013】
また、本発明の微弱光観察顕微鏡においては、前記光路分割手段が、前記ミラーからなり、前記照明光学系が、前記ミラーに対して前記第2の結像レンズとは反対側に備えられているのが好ましい。
【0014】
また、本発明の微弱光観察顕微鏡においては、さらに、前記結像光学系が、前記照明光の波長を遮光し、前記所定の微弱光の波長を透過させる波長選択素子を挿脱可能に備えるのが好ましい。
【0015】
また、本発明の微弱光観察顕微鏡においては、収差補正手段を前記第2の対物レンズの瞳位置に備えるのが好ましい。
【0016】
また、本発明の微弱光観察顕微鏡においては、前記収差補正手段が、補正環であるのが好ましい。
【0017】
また、本発明の微弱光観察顕微鏡においては、前記収差補正手段が、位相変調器であるのが好ましい。
【0018】
また、本発明の微弱光観察顕微鏡においては、前記所定の微弱光が、化学反応により前記観察対象から発せられる発光であるのが好ましい。
【0019】
また、本発明の微弱光観察顕微鏡においては、前記所定の微弱光が、励起波長の照射により前記観察対象から発せられる蛍光であり、前記照明光が、前記観察対象を励起する励起波長からなるのが好ましい。
【0020】
また、本発明による微弱光取得方法は、観察対象から発せられる所定の微弱光を取得する微弱光取得方法であって、第1の対物レンズと第1の結像レンズと撮像素子とからなる結像光学系を用いて、前記観察対象から前記第1の対物レンズに入射する前記所定の微弱光を取得するとともに、第2の対物レンズと第2の結像レンズと前記観察対象と共役な位置に配置されるミラーとを有する光戻し用光学系を用いて、該観察対象から前記結像光学系とは異なる側に発せられた前記所定の微弱光を該観察対象に戻し、該観察対象から前記第1の対物レンズに入射させることを特徴としている。
【発明の効果】
【0021】
本発明によれば、撮像素子の露光時間を短縮でき、低倍率のレンズの使用や、観察対象の速い変化の撮影が可能な微弱光観察顕微鏡及び微弱光取得方法が得られる。
【図面の簡単な説明】
【0022】
【図1】本発明の第1実施形態にかかる微弱光観察顕微鏡の要部構成を示す説明図である。
【図2】本発明の第2実施形態にかかる微弱光観察顕微鏡の要部構成を示す説明図である。
【図3】本発明の第3実施形態にかかる微弱光観察顕微鏡の要部構成を示す説明図である。
【図4】本発明の第4実施形態にかかる微弱光観察顕微鏡の要部構成を示す説明図である。
【図5】従来の発光顕微鏡の一構成例を示す説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0023】
以下、本発明の実施形態について、図面を用いて説明する。
第1実施形態
図1は本発明の第1実施形態にかかる微弱光観察顕微鏡の要部構成を示す説明図である。
本実施形態の微弱光観察顕微鏡は、結像光学系1と、光戻し用光学系2を有する。
結像光学系1は、対物レンズ1aと、結像レンズ1bと、撮像素子1cとで構成されている。
光戻し用光学系2は、第2の対物レンズ2aと、第2の結像レンズ2bと、平面ミラー2cとで構成され、観察対象10に対して結像光学系1の反対側に設けられている。
ミラー2cは、観察対象10と共役な位置に配置されている。
観察対象10には、発光試薬等との化学反応によって所定の微弱光を発光する発光部10aを含んだ細胞・組織等であって、所定の微弱光の波長に対する光透過性のあるサンプルを用いている。なお、観察対象10は、シャーレ、スライドガラス、マイクロプレート等の容器11に収容されている。容器11は、図示しないステージ上に載置されている。
また、対物レンズ1a、第2の対物レンズ2aは、夫々ステージ12との相対的距離を変動させることによって、観察対象10に対してピントを調整することができるようになっている。
【0024】
このように構成された第1実施形態の微弱光観察顕微鏡では、観察対象10の発光部10aから結像光学系1側に向けて発せられた所定の微弱光は、対物レンズ1a、結像レンズ1bを経て、撮像素子1cの撮像面に結像する。図1中、10a’は撮像素子1cの撮像面に結像した発光部10の像である。
一方、観察対象10の発光部10aから光戻し用光学系2側に向けて発せられた所定の微弱光は、第2の対物レンズ2a、第2の結像レンズ2bを経て、ミラー2cの面に結像し、ミラー2cで反射され、第2の結像レンズ2b、第2の対物レンズ2aを経て、観察対象10に戻される。図1中、10a”はミラー2cの面に結像した発光部10aの像である。観察対象10に戻された所定の微弱光は、さらに、観察対象10を結像光学系1側に向けて透過し、対物レンズ1a、結像レンズ1bを経て、撮像素子1cの撮像面に結像する。
これにより、撮像素子1cには、従来の微弱光観察顕微鏡と比べて約2倍の光量の所定の微弱光が入射することになり、撮像素子1cの露光時間を約半分に短縮できる。
その結果、NAを大きくできない低倍率の対物レンズを用いても、発光像を撮像することが可能となり、また、観察対象(における発光部)の速い変化を撮影することができるようになる。
【0025】
第2実施形態
図2は本発明の第2実施形態にかかる微弱光観察顕微鏡の要部構成を示す説明図である。なお、第1実施形態の微弱光観察顕微鏡と同じ構成部材については、同じ符号を付し、詳細な説明を省略する。
本実施形態の微弱光観察顕微鏡は、光戻し用光学系2において観察対象10と共役な位置に配置されるミラーが、可変形状ミラー2c’で構成されている。その他の構成は、第1実施形態の微弱光観察顕微鏡と略同じである。
【0026】
光戻し用光学系2における観察対象10と共役な位置に配置されるミラーとして平面ミラー2cを用いた構成においては、観察対象10の厚みが一定でない場合、観察対象10の一部の発光部10aから結像光学系1側に向けて発せられた所定の微弱光は、平面ミラー2cを前後する位置に結像する。そして、平面ミラー2cで反射された光が、観察対象10における発光部10aの発光点に戻らず、発光点を前後する位置に結像してしまう。その光が、結像光学系側に向けて透過し、対物レンズ1a、結像レンズ1bを経て、撮像素子1cの撮像面に結像しない状態で入射する。その結果、撮像素子1で撮像した像がボケてしまう。
しかるに、第2実施形態の微弱光観察顕微鏡によれば、可変形状ミラー2c’の反射面を観察対象10の厚み又は光路長に合せて変形させることで、可変形状ミラー2c’で反射された所定の微弱光を、観察対象10の発光点の位置に正確に戻すことができる。このため、観察対象10の厚みが一定でない場合であっても、像のボケを防止することができる。
その他の作用効果は、第1実施形態の微弱光観察顕微鏡と略同じである。
【0027】
第3実施形態
図3は本発明の第3実施形態にかかる微弱光観察顕微鏡の要部構成を示す説明図である。なお、第2実施形態の微弱光観察顕微鏡と同じ構成部材については、同じ符号を付し、詳細な説明を省略する。
本実施形態の微弱光観察顕微鏡は、第2実施形態の構成に加えて、さらに、光路分割部材3と、照明光学系4を有している。
光路分割部材3は、所定の微弱光の波長を透過し、所定の微弱光の波長以外の波長を反射する光学特性を持つダイクロイックミラーで構成され、第2の対物レンズ2aと第2の結像レンズ2bとの間に配置されている。
照明光学系4は、所定の微弱光の波長とは異なる波長からなる照明光を光路分割部材3に向けて出射するように構成され、光戻し用光学系2の側方に設けられている。
図3の例では、照明光学系4は、光源4aと、光源からの光を平行光束に変換するコリメートレンズ4bと、バンドパスフィルタ4cを備えている。光源4aは、通常の白色光を出射する。バンドパスフィルタ4cは、所定の微弱光波長を遮光し、所定の微弱光波長以外の波長を透過する光学特性を持っている。また、バンドパスフィルタ4cは、照明光学系4の光路中に挿脱可能に設けられている。
【0028】
また、結像光学系1は、さらに、対物レンズ1aと結像レンズ1bとの間に、照明光カットフィルタ1dを挿脱可能に備えている。照明光カットフィルタ1dは、照明光の波長を遮光し、所定の微弱光の波長を透過する特性を持っている。
その他の構成は、第2実施形態の微弱光観察顕微鏡と略同じである。
【0029】
このように構成された第3実施形態の微弱光観察顕微鏡においては、微弱光観察及び通常光による透過照明観察を次の2つの方法で切替えて行うことができる。
第1の方法は、照明光カットフィルタ1dを、対物レンズ1aと結像レンズ1bとの間に挿入し、かつ、照明光学系4の光源4aをONにした状態で、対物レンズ1aと結像レンズ1bとの間において照明光カットフィルタ1dを挿脱する方法である。
微弱光観察を行う場合には、照明光カットフィルタ1dを挿入する。観察対象10から光戻し用光学系2側に向けて発せられた所定の微弱光は、第2の対物レンズ2aを経て、光路分割部材3を透過し、第2の結像レンズ2bを経て、ミラー2cの面に結像し、ミラー2cで反射され、第2の結像レンズ2bを経て、光路分割部材3を透過し、第2の対物レンズ2aを経て、観察対象10に戻る。また、観察対象10を結像光学系1側に向けて透過した所定の微弱光及び、観察対象10から結像光学系1側に向けて発せられた所定の微弱光は、対物レンズ1aを経て、照明光カットフィルタ1dを透過し、結像レンズ1bを経て、撮像素子1cの撮像面に結像する。なお、照明光学系4からの照明光は、光路分割部材3で反射されて、第2の対物レンズ2a、観察対象10に入射する。観察対象10を透過した光は、対物レンズ1aを経て、照明光カットフィルタ1dに入射するが、照明光カットフィルタ1dで遮光される。
一方、通常光による透過照明観察を行う場合には、照明光カットフィルタ1dを抜き出す。照明光学系4からの照明光は、光路分割部材3で反射され、対物レンズ2aを経て、観察対象10に入射する。観察対象10を透過した光は、対物レンズ1a、結像レンズ1bを経て、撮像素子1cの撮像面に結像する。
【0030】
第2の方法は、照明光カットフィルタ1dを、対物レンズ1aと結像レンズ1bとの間から抜き出した状態で、照明光学系4の光源4aのON/OFFを切り替える方法である。
微弱光観察を行う場合には、照明光学系4の光源4aをOFFにする。観察対象10から光戻し用光学系2側に向けて発せられた所定の微弱光は、第2の対物レンズ2aを経て、光路分割部材3を透過し、第2の結像レンズ2bを経て、ミラー2cの面に結像し、ミラー2cで反射され、第2の結像レンズ2bを経て、光路分割部材3を透過し、第2の対物レンズ2aを経て、観察対象10に戻る。また、観察対象10を結像光学系1側に向けて透過した所定の微弱光及び、観察対象10から結像光学系1側に向けて発せられた所定の微弱光は、対物レンズ1a、結像レンズ1bを経て、撮像素子1cの撮像面に結像する。
一方、通常光による透過照明観察を行う場合には、照明光学系4の光源4aをONにする。照明光学系4からの照明光は、第1の方法と同様の経路を辿り、撮像素子1cの撮像面に結像する。
【0031】
第3実施形態の微弱光観察顕微鏡によれば、微弱光観察と透過照明観察とを切替えることができる上、第1及び第2実施形態の微弱光観察顕微鏡と同様の効果が得られる。即ち、従来の微弱光観察顕微鏡と比べて約2倍の光量の所定の微弱光が入射することになり、撮像素子1cの露光時間を約半分に短縮でき、NAを大きくできない低倍率の対物レンズを用いても、発光像を撮像することが可能となり、また、観察対象(における発光部)の速い変化を撮影することができるようになり、しかも、可変形状ミラー2c’の反射面を観察対象10の厚み又は光路長に合せて変形させることで、可変形状ミラー2c’で反射された所定の微弱光を、観察対象10の発光点の位置に正確に戻すことができ、観察対象10の厚みが一定でない場合であっても、像のボケを防止することができる。
【0032】
なお、図3の例では、所定の微弱波長は、発光試薬等との化学反応によって観察対象から発せられる発光波長として説明したが、所定の微弱波長は、励起波長の照射により観察対象から発せられる蛍光波長であってもよい。
その場合には、バンドパスフィルタ4cは、所定の蛍光波長を遮光し、所定の励起光波長を透過する光学特性を持つものを用いればよい。
また、第3実施形態においては、光戻し用光学系2において観察対象10と共役な位置に配置されるミラーを、可変形状ミラー2c’で構成したが、平面ミラー2cで構成してもよい。
【0033】
第4実施形態
図4は本発明の第4実施形態にかかる微弱光観察顕微鏡の要部構成を示す説明図である。なお、第1実施形態の微弱光観察顕微鏡と同じ構成部材については、同じ符号を付し、詳細な説明を省略する。
本実施形態の微弱光観察顕微鏡は、光戻し用光学系2における観察対象10と共役な位置に配置されるミラーが、所定の微弱光波長を反射し、所定の微弱光波長以外の波長を透過する特性を持つ光路分割部材としての機能を併せ持つ、ダイクロイックミラー2c”で構成されている。
また、本実施形態の微弱光観察顕微鏡は、第1実施形態の構成に加えて、さらに、ダイクロイックミラー2c”に対して第2の結像レンズ2bとは反対側に、照明光学系4’を有している。
図4の例では、照明光学系4’は、光源4a’と、光源4a’からの光をダイクロイックミラー2c”に集光させる集光レンズ4b’を備えている。光源4a’は、所定の微弱光波長とは異なる波長からなる照明光を出射する。なお、照明光学系4’における光源4a’の代わりに、図3の例と同様の通常の白色光を出射する光源4aを用いるとともに、バンドパスフィルタ4cを備えてもよい。
【0034】
また、結像光学系1は、さらに、対物レンズ1aと結像レンズ1bとの間に、照明光カットフィルタ1dを挿脱可能に備えている。照明光カットフィルタ1dは、照明光の波長を遮光し、所定の微弱光の波長を透過する特性を持っている。
その他の構成は、第1実施形態の微弱光観察顕微鏡と略同じである。
【0035】
このように構成された第4実施形態の微弱光観察顕微鏡においては、微弱光観察及び通常光による透過照明観察を次の2つの方法で切替えて行うことができる。
第1の方法は、照明光カットフィルタ1dを、対物レンズ1aと結像レンズ1bとの間に挿入し、かつ、照明光学系4’の光源4a’をONにした状態で、対物レンズ1aと結像レンズ1bとの間において照明光カットフィルタ1dを挿脱する方法である。
微弱光観察を行う場合には、照明光カットフィルタ1dを挿入する。観察対象10から光戻し用光学系2側に向けて発せられた所定の微弱光は、第2の対物レンズ2a、第2の結像レンズ2bを経て、ダイクロイックミラー2c”の面に結像し、ダイクロイックミラー2c”で反射され、第2の結像レンズ2b、第2の対物レンズ2aを経て、観察対象10に戻る。また、観察対象10を結像光学系1側に向けて透過した所定の微弱光及び、観察対象10から結像光学系1側に向けて発せられた所定の微弱光は、対物レンズ1aを経て、照明光カットフィルタ1dを透過し、結像レンズ1bを経て、撮像素子1cの撮像面に結像する。なお、照明光学系4’からの照明光は、ダイクロイックミラー2c”を透過し、第2の結像レンズ2b、第2の対物レンズ2a、観察対象10、対物レンズ1aを経て、照明光カットフィルタ1dに入射するが、照明光カットフィルタ1dで遮光される。
一方、通常光による透過照明観察を行う場合には、照明光カットフィルタ1dを抜き出す。照明光学系4’からの光は、ダイクロイックミラー2c”を透過し、第2の結像レンズ2b、第2の対物レンズ2a、観察対象10、対物レンズ1a、結像レンズ1bを経て、撮像素子1cの撮像面に結像する。
【0036】
第2の方法は、照明光カットフィルタ1dを、対物レンズ1aと結像レンズ1bとの間から抜き出した状態で、照明光学系4’の光源4a’のON/OFFを切り替える方法である。
微弱光観察を行う場合には、照明光学系4’の光源4a’をOFFにする。観察対象10から光戻し用光学系2側に向けて発せられた所定の微弱光は、第2の対物レンズ2a、第2の結像レンズ2bを経て、ダイクロイックミラー2c”の面に結像し、ダイクロイックミラー2c”で反射され、第2の結像レンズ2b、第2の対物レンズ2aを経て、観察対象10に戻る。また、観察対象10を結像光学系1側に向けて透過した所定の微弱光及び、観察対象10から結像光学系1側に向けて発せられた所定の微弱光は、対物レンズ1a、結像レンズ1bを経て、撮像素子1cの撮像面に結像する。
一方、通常光による透過照明観察を行う場合には、照明光学系4’の光源4a’をONにする。照明光学系4’からの照明光は、ダイクロイックミラー2c”の面に集光し、ダイクロイックミラー2c”を透過し、第2の結像レンズ、第2の対物レンズ2aを経て、観察対象10に入射し、観察対象10を透過した光は、対物レンズ1a、結像レンズ1bを経て、撮像素子1cの撮像面に結像する。
【0037】
第4実施形態の微弱光観察顕微鏡によれば、極めて少ない部材点数で微弱光観察と透過照明観察とを切替えることができる上、第1実施形態の微弱光観察顕微鏡と同様の効果が得られる。即ち、従来の微弱光観察顕微鏡と比べて約2倍の光量の所定の微弱光が入射することになり、撮像素子1cの露光時間を約半分に短縮でき、NAを大きくできない低倍率の対物レンズを用いても、発光像を撮像することが可能となり、また、観察対象(における発光部)の速い変化を撮影することができるようになる。
【0038】
なお、図4の例では、所定の微弱波長は、発光試薬等との化学反応によって観察対象から発せられる発光波長として説明したが、所定の微弱波長は、励起波長の照射により観察対象から発せられる蛍光波長であってもよい。
その場合には、光源4a’と集光レンズ4b’との間に、所定の蛍光波長を遮光し、所定の励起光波長を透過する光学特性を持つバンドパスフィルタを挿脱可能に備えるとよい。
また、第4実施形態においては、光戻し用光学系2において観察対象10と共役な位置に配置されるミラーを、平面形状のダイクロイックミラー2c”で構成したが、可変形状のダイクロイックミラーで構成してもよい。
そのようにすれば、可変形状ダイクロイックミラー2c”の反射面を観察対象10の厚み又は光路長に合せて変形させることで、可変形状ダイクロイックミラー2c”で反射された所定の微弱光を、観察対象10の発光点の位置に正確に戻すことができ、観察対象10の厚みが一定でない場合であっても、像のボケを防止することができる。
【0039】
以上、本発明の微弱光観察顕微鏡の実施形態について説明したが、本発明の微弱光観察顕微鏡は、これらの構成に限定されるものではない。
例えば、各実施形態における第2の対物レンズ2aの瞳位置に、補正環や位相変調器などの収差補正手段を備えると好ましい。
観察対象10を収容する容器11が、シャーレやマイクロプレートの場合、容器11中の液面が表面張力で曲がり、収差が発生しうる。第2の対物レンズ2aの瞳位置に収差補正手段を備えれば、液面の曲がりによる収差を補正してミラー2c(2c’,2c”)に結像することができる。
【0040】
また、図1〜図4に示す各実施形態においては、ミラー2c,2c’,2c”が観察対象10と共役な位置に配置されるものであれば、光戻し用光学系2は、どのような倍率で構成してもよい。なお、微弱光の像を極力明るくするためには、第2の対物レンズ2aには、NAが対物レンズ1aよりも大きいものを用いるのが好ましい。
【0041】
また、図1〜図4の例では、光戻し用光学系2が、観察対象10に対して、結像光学系1の反対側に備えたが、本発明の微弱光観察顕微鏡における光戻し用光学系2は、このような配置に限定されるものではない。
例えば、透明なキューブ状の容器に収容された観察対象に対し、観察対象の側方にも光戻し光学系2を設けてもよい。
【産業上の利用可能性】
【0042】
本発明の微弱光観察顕微鏡及び微弱光取得方法は、例えば、発光による細胞や組織の微細構造レベルの変化の長時間観察や、蛍光観察等、非常に微弱な光を発する観察対象を観察することが求められるあらゆる分野に有用である。
【符号の説明】
【0043】
1 結像光学系
1a 対物レンズ
1b 結像レンズ
1c 撮像素子
1d 照明光カットフィルタ
2 光戻し用光学系
2a 第2の対物レンズ
2b 第2の結像レンズ
2c (平面)ミラー
2c’ 可変形状ミラー
2c” ダイクロイックミラー
3 光路分割部材
4、4’ 照明光学系
4a、4a’ 光源
4b コリメートレンズ
4b’ 集光レンズ
4c バンドパスフィルタ
10 観察対象(サンプル)
10a 発光部
10a’、10a” 発光部の像
11 容器
51 撮像光学系
51a 対物レンズ
51b 結像レンズ
51c 撮像素子
60 観察対象(サンプル)
60a 発光部
60a’ 発光部の像
61 容器

【特許請求の範囲】
【請求項1】
対物レンズと結像レンズと撮像素子とからなる結像光学系を有し、前記結像光学系を介して観察対象から発せられる所定の微弱光を取得する微弱光観察顕微鏡であって、
第2の対物レンズと第2の結像レンズと前記観察対象と共役な位置に配置されるミラーとを有する光戻し用光学系を、前記観察対象に対して前記結像光学系の反対側に有することを特徴とする微弱光観察顕微鏡。
【請求項2】
前記ミラーが、可変形状ミラーからなることを特徴とする請求項1に記載の微弱光観察顕微鏡。
【請求項3】
さらに、前記光戻し用光学系の光路中に、前記所定の微弱光の波長を透過させ、前記所定の微弱光の波長以外の波長を反射する光路分割手段を備えるとともに、
前記所定の微弱光の波長とは異なる波長からなる照明光を前記光路分割部材に向けて出射する照明光学系を有することを特徴とする請求項1又は2に記載の微弱光観察顕微鏡。
【請求項4】
前記光路分割手段が、前記第2の対物レンズと前記第2の結像レンズとの間に備えられ、
前記照明光学系が、前記光戻し用光学系の側方に備えられていることを特徴とする請求項3に記載の微弱光観察顕微鏡。
【請求項5】
前記光路分割手段が、前記ミラーからなり、
前記照明光学系が、前記ミラーに対して前記第2の結像レンズとは反対側に備えられていることを特徴とする請求項1に従属する請求項3に記載の微弱光観察顕微鏡。
【請求項6】
さらに、前記結像光学系が、前記照明光の波長を遮光し、前記所定の微弱光の波長を透過させる波長選択素子を挿脱可能に備えることを特徴とする請求項3〜5のいずれかに記載の微弱光観察顕微鏡。
【請求項7】
収差補正手段を前記第2の対物レンズの瞳位置に備えることを特徴とする請求項1〜6のいずれかに記載の微弱光観察顕微鏡。
【請求項8】
前記収差補正手段が、補正環であることを特徴とする請求項7に記載の微弱光観察顕微鏡。
【請求項9】
前記収差補正手段が、位相変調器であることを特徴とする請求項7に記載の微弱光観察顕微鏡。
【請求項10】
前記所定の微弱光が、化学反応により前記観察対象から発せられる発光であることを特徴とする請求項1〜9のいずれかに記載の微弱光観察顕微鏡。
【請求項11】
前記所定の微弱光が、励起波長の照射により前記観察対象から発せられる蛍光であり、
前記照明光が、前記観察対象を励起する励起波長からなることを特徴とする請求項6、請求項6に従属する請求項7〜9のいずれかに記載の微弱光観察顕微鏡。
【請求項12】
観察対象から発せられる所定の微弱光を取得する微弱光取得方法であって、第1の対物レンズと第1の結像レンズと撮像素子とからなる結像光学系を用いて、前記観察対象から前記第1の対物レンズに入射する前記所定の微弱光を取得するとともに、
第2の対物レンズと第2の結像レンズと前記観察対象と共役な位置に配置されるミラーとを有する光戻し用光学系を用いて、該観察対象から前記結像光学系とは異なる側に発せられた前記所定の微弱光を該観察対象に戻し、該観察対象から前記第1の対物レンズに入射させることを特徴とする微弱光取得方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2012−203193(P2012−203193A)
【公開日】平成24年10月22日(2012.10.22)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−67688(P2011−67688)
【出願日】平成23年3月25日(2011.3.25)
【出願人】(000000376)オリンパス株式会社 (11,466)
【Fターム(参考)】