説明

微生物数測定装置

【課題】本発明は、微生物数測定装置に関するもので、測定精度をさらに高めることを目的とするものである。
【解決手段】そしてこの目的を達成するために本発明は、測定液2のインピーダンスを測定するインピーダンス測定部14と、このインピーダンス測定部14に接続されたインピーダンス変化検出部15と、このインピーダンス変化検出部15に接続された記憶部19、および減算部16と、この減算部16に接続された微生物数算出部17とを備え、前記記憶部18と減算部16を接続するとともに、モータ制御部23は、攪拌体4を少なくとも2段階の回転速度で回転駆動する構成とした。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、微生物数測定装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来の微生物数測定装置の構成は、以下のような構成となっていた。
【0003】
すなわち、内部の測定液中に、測定電極と攪拌体を浸漬状態で配置した測定容器と、この測定容器外から、前記攪拌体を回転駆動する回転駆動手段と、前記測定電極に集菌信号を供給する集菌信号生成部と、前記測定電極に測定信号を供給する測定信号生成部と、前記測定液のインピーダンスを測定するインピーダンス測定部と、このインピーダンス測定部に接続された微生物数算出部とを備えた構成となっていた。
【0004】
すなわち、インピーダンス測定部で測定したインピーダンスに基づき微生物数算出部により微生物数を算出するようになっていた(例えば下記特許文献1)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2009−207431号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
上記従来例における課題は、測定精度をさらに高くすることであった。
【0007】
すなわち、この微生物数測定装置において、口腔内の微生物(細菌)の数を測定しようとした場合、その測定系に生ずる電気的なドリフトにより、測定精度にばらつきが発生するものとなっていた。
【0008】
そこで本発明は、測定精度をさらに高めることを目的とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
そして、この目的を達成するために本発明は、内部の測定液中に、測定電極と攪拌体を浸漬状態で配置した測定容器と、この測定容器外から、前記攪拌体を回転駆動する回転駆動手段と、前記測定電極に集菌信号を供給する集菌信号生成部と、前記測定電極に測定信号を供給する測定信号生成部と、前記測定液のインピーダンスを測定するインピーダンス測定部と、このインピーダンス測定部に接続されたインピーダンス変化検出部と、このインピーダンス変化検出部に接続された記憶部、および減算部と、この減算部に接続された微生物数算出部とを備え、前記記憶部と減算部を接続するとともに、前記回転駆動手段は、攪拌体を少なくとも2段階の回転速度で回転駆動する構成とし、これにより所期の目的を達成するものである。
【発明の効果】
【0010】
以上のように本発明は、内部の測定液中に、測定電極と攪拌体を浸漬状態で配置した測定容器と、この測定容器外から、前記攪拌体を回転駆動する回転駆動手段と、前記測定電極に集菌信号を供給する集菌信号生成部と、前記測定電極に測定信号を供給する測定信号生成部と、前記測定液のインピーダンスを測定するインピーダンス測定部と、このインピーダンス測定部に接続されたインピーダンス変化検出部と、このインピーダンス変化検出部に接続された記憶部、および減算部と、この減算部に接続された微生物数算出部とを備え、前記記憶部と減算部を接続するとともに、前記回転駆動手段は、攪拌体を少なくとも2段階の回転速度で回転駆動する構成としたものであるので、測定精度をさらに高めることができる。
【0011】
すなわち、本発明においては、測定前に回転駆動手段により、攪拌体を高速回転させることにより、微生物が測定電極間に集菌されない状態で、測定系のドリフト量をインピーダンス変化検出部によって検出し、それを記憶部に記憶させているので、前記回転駆動手段を低速にした測定時において、減算部において、インピーダンス変化検出部で得られた検出値から記憶部に記憶されたドリフト量を減算し、その値で微生物数算出部で微生物数を算出するので、測定系に存在するドリフトの影響を受けることがなく、その結果として、測定精度をさらに高めることができるものである。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【図1】本発明の一実施形態の制御ブロック図
【図2】その動作フローチャート
【図3】その動作状態を示す特性図
【図4】その動作状態を示す特性図
【図5】その動作状態を示す特性図
【図6】従来の動作状態を示す特性図
【発明を実施するための形態】
【0013】
(実施の形態1)
以下、本発明の一実施形態を添付図面を用いて説明する。
【0014】
図1において、1は上面が開口した円筒状の測定容器で、その内部に入れた測定溶液(純水)2内に測定電極3と攪拌体4が浸漬状態で配置されている。
【0015】
なお、前記測定電極3は、上記特許文献1と同様に櫛歯状の電極を所定間隔で対向配置したものである。また、測定容器1の上面開口部からは、採取具5の採取部6が測定液2内に挿入されている。
【0016】
前記採取具5は、その採取部6を、例えば、口腔内に挿入し、唾液を付着させることで、微生物を採取するものであって、この図1に示すように、容器1内の底面上で、攪拌体4による回転力、および衝突力を受けることで、採取した微生物を測定液2内に溶出させるようになっている。
【0017】
さて、測定電極3には、この測定電極3に集菌信号を供給するための集菌信号生成部7と、前記測定電極3に測定信号を供給するための測定信号生成部8が加算器9、出力アンプ10を介して接続されている。つまり、集菌信号生成部7からは、たとえば3MHz、測定信号生成部8からは、たとえば800kHzが加算器9で加算され、それが出力アンプ10を介して測定電極3に供給される。
【0018】
また、この測定電極3には、I/Vアンプ11、ゲイン切り替えアンプ12、A/Dコンバータ13、インピーダンス測定部14、インピーダンス変化検出部15、減算部16を介して、微生物数算出部17が接続されている。なお、I/Vアンプ11とゲイン切り替えアンプ12の間には、図示していないがローパスフィルタが介在させられており、上記800kHzの信号だけがインピーダンス測定部14に向けて出力されることになっている。
【0019】
また、インピーダンス測定部14には、溶液導電率算出部18が接続され、この溶液導電率算出部18には、記憶部19が接続されている。
【0020】
記憶部19には、インピーダンス変化検出部15が接続され、さらに、この記憶部19からは、2方に出力がなされ、その一方は、減算部16に、もう一方は微生物数算出部17に出力がなされる。
【0021】
また、攪拌体4には、回転板20が対向配置され、この回転板20には複数の磁石が配置されている。回転板20は、モータ21により、回転駆動されるようになっており、また、モータ21は、モータ駆動部22を介して、モータ制御部23で回転制御されるようになっている。
【0022】
なお、モータ制御部23は、モータ21を、例えば、高速の3000rpmと低速の1200rpmの複数段で回転駆動することが可能なものとなっている。なお、この図1において、24はモータ制御部23に接続されたタイマーである。また、25は、微生物数算出部17内に設けられた微生物数換算部であり、減算部16からの出力と、記憶部19からの溶液導電率と、相関テーブル26のデータとから微生物数を算出し、その値を表示部27に表示する構成となっている。
【0023】
上記構成において、図2は、制御フローを示している。
【0024】
まず、図2のS1でスタートする。この時、モータ制御部23は、モータ21を3000rpmで回転駆動し、これにより、攪拌体4も3000rpmで回転している。この攪拌体4の強い回転により、測定液2は、強い回転旋回力が与えられ、また、採取部6も強い回転力を受けると共に、攪拌体4の衝突力が加わり、これにより、採取部6から測定液2内に微生物が、どんどん溶出していくことになる。
【0025】
図2のS2で、50秒間の懸濁が行われた状態で、測定液2の導電率の測定が行われる。これは、測定電極3間のインピーダンスをインピーダンス測定部14で測定し、それに基づき、溶液導電率算出部18で溶液導電率を測定し、この時の、溶液導電率は、記憶部19に記憶させられる。
【0026】
一方、インピーダンス変化検出部15では、インピーダンスが時間の経過と共に変化する状態を検出し、それをドリフト量として記憶部に記憶させる。
【0027】
つまり、攪拌体4は、例えば、3000rpmという強い回転駆動が行われているので、採取部6から溶出した細菌は、測定電極3部分に留まることができず、よって、この強い回転時には、測定電極3は、測定液2のインピーダンスを測定することになり、それに、測定系のドリフトが加わった結果、図3に示すごとく、キャパシタンスの値は、時間経過と共に、下方に傾斜する値となり、この変化量がドリフト量として記憶部19に記憶されている(S3)。
【0028】
つづいて、図2のS4では、モータ制御部23により、モータ21の回転数を1200rpmに下げる。この状態になると、測定液2内に溶出した微生物は、誘電泳動により、測定電極3間に集菌されるので、図4にしめすごとく、この微生物の量に応じたキャパシタンスの変化が得られることになる。
【0029】
このキャパシタンスの値は、すなわち、インピーダンスの値であるので、インピーダンス測定部14で測定され、つぎに、インピーダンス変化検出部15でインピーダンス変化量が求められ、このインピーダンス変化の傾斜状態は、減算部16により、記憶部19に記憶されたドリフト量が減算され(S5)、その減算された値、つまり、ドリフトが取り除かれた値が微生物数算出部17に供給される。
【0030】
微生物数算出部17では、その微生物数換算部25により、相関テーブル26のデータと比較することで、微生物数を算出し(S6)、それを表示部27に、その値を、例えば1×10の6乗で、CFU/ml(CFUとは、コロニーを形成している微生物の数)と表示する。
【0031】
本実施形態においては、記憶部19に記憶されたドリフト量を減算部16で減算させることで、測定系に存在するドリフトを小さくすることができるが、さらにその精度を高めるために、微生物数換算部25により行う微生物数の算出は、減算部16からの出力と、相関テーブル26のデータと、記憶部19に記憶された溶液導電率の値から、微生物数を算出する構成とした。
【0032】
すなわち、溶液導電率の変化に伴って、微生物の測定電極3への集菌状態が変化するため、相関テーブル26は、溶液導電率によって複数用意されており、従って、記憶部19から微生物数算出部17に供給された溶液導電率によって、それに対応する相関テーブル26が引き出され、この引き出された相関テーブル26の値と、減算部16によってドリフトが減算された値から、微生物数の算出が行われるようになっているのである。
【0033】
そして、この算出が行われると図2のS7によって、測定が終了することになる。
【0034】
図5、図6は、本実施形態における測定値と、従来例の測定値を示した物である。いずれも、検体を5例用意し、ドリフトによるばらつきが、どの程度有るかを見た物である。
【0035】
図5に示す、本実施形態では、0点の近傍に、この5例の測定結果が集まっており、このことは、測定系のドリフトの影響を受けない測定が行われたことを示している。これに対して、図6では、0点の上方に、全ての測定結果が現れており、予め定めたドリフト量を考慮しただけのドリフト対策では、この図6に示すように、十分なドリフト対策は、講ずることができなかった。
【産業上の利用可能性】
【0036】
以上のように本発明は、内部の測定液中に、測定電極と攪拌体を浸漬状態で配置した測定容器と、この測定容器外から、前記攪拌体を回転駆動する回転駆動手段と、前記測定電極に集菌信号を供給する集菌信号生成部と、前記測定電極に測定信号を供給する測定信号生成部と、前記測定液のインピーダンスを測定するインピーダンス測定部と、このインピーダンス測定部に接続されたインピーダンス変化検出部と、このインピーダンス変化検出部に接続された記憶部、および減算部と、この減算部に接続された微生物数算出部とを備え、前記記憶部と減算部を接続するとともに、前記回転駆動手段は、攪拌体を少なくとも2段階の回転速度で回転駆動する構成としたものであるので、測定精度をさらに高めることができる。
【0037】
すなわち、本発明においては、測定前に回転駆動手段により、攪拌体を高速回転させることにより、微生物が測定電極間に集菌されない状態で、測定系のドリフト量をインピーダンス変化検出部によって検出し、それを記憶部に記憶させているので、前記回転駆動手段を低速にした測定時において、減算部において、インピーダンス変化検出部で得られた検出値から記憶部に記憶されたドリフト量を減算し、その値で微生物数算出部にて微生物数を算出するので、測定系に存在するドリフトの影響を受けることがなく、その結果として、測定精度をさらに高めることができるものである。
【0038】
したがって、微生物数測定装置として、広く活用が期待されるものである。
【符号の説明】
【0039】
1 測定容器
2 測定溶液
3 測定電極
4 攪拌体
5 採取具
6 採取部
7 集菌信号生成部
8 測定信号生成部
9 加算器
10 出力アンプ
11 I/Vアンプ
12 ゲイン切り替えアンプ
13 A/Dコンバータ
14 インピーダンス測定部
15 インピーダンス変化検出部
16 減算部
17 微生物数算出部
18 溶液導電率算出部
19 記憶部
20 回転板
21 モータ
22 モータ駆動部
23 モータ制御部
24 タイマー
25 微生物数換算部
26 相関テーブル
27 表示部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
内部の測定液中に、測定電極と攪拌体を浸漬状態で配置した測定容器と、
この測定容器外から、前記攪拌体を回転駆動する回転駆動手段と、
前記測定電極に集菌信号を供給する集菌信号生成部と、
前記測定電極に測定信号を供給する測定信号生成部と、
前記測定液のインピーダンスを測定するインピーダンス測定部と、
このインピーダンス測定部に接続されたインピーダンス変化検出部と、
このインピーダンス変化検出部に接続された記憶部、および減算部と、
この減算部に接続された微生物数算出部とを備え、
前記記憶部と減算部を接続するとともに、前記回転駆動手段は、攪拌体を少なくとも2段階の回転速度で回転駆動する構成とした微生物数測定装置。
【請求項2】
インピーダンス測定部に溶液導電率算出部を接続し、この溶液導電率算出部を記憶部に接続するとともに、この記憶部は、微生物数算出部に接続した請求項1に記載の微生物数測定装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2011−141181(P2011−141181A)
【公開日】平成23年7月21日(2011.7.21)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−1688(P2010−1688)
【出願日】平成22年1月7日(2010.1.7)
【出願人】(000005821)パナソニック株式会社 (73,050)
【Fターム(参考)】