説明

微生物検出方法及び溶菌試薬

【課題】 極微量の微生物であっても十分に検出できる微生物検出方法及び溶菌試薬を提供すること。
【解決手段】 本発明は、微生物の細胞を溶菌試薬と接触させて微生物の細胞から細胞内ATPを抽出する抽出工程と、抽出した細胞内ATPを増幅させる増幅工程と、増幅させた細胞内ATP、ルシフェリン及びルシフェラーゼを接触させて発光させる発光工程と、を備え、溶菌試薬が、溶菌酵素、非イオン性界面活性剤、及びキレート剤を含むことを特徴とする微生物検出方法である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、微生物検出方法及び溶菌試薬に関する。
【背景技術】
【0002】
生肉や乳製品を取り扱う食品産業等においては、食中毒予防の観点から迅速かつ高感度で微生物を検出する方法が求められている。近年では微生物の検出方法として、生物に存在するATP(アデノシン三リン酸)を指標とし、ATPと、ルシフェリン及びルシフェラーゼとの反応で発生する生物化学発光を測定することによって微生物を検出するという方法が用いられている。
【0003】
この方法を用いて細胞内ATPを測定するためには、細胞中に含まれるATPを抽出する必要がある。細胞中のATPを抽出する方法としては、トリクロロ酢酸水溶液に微生物を加えて抽出する方法(TCA法)、界面活性剤水溶液に細胞を加えて抽出する方法(界面活性剤法)、90℃位に熱したトリス緩衝液に細胞を加えて抽出する方法(トリス緩衝液法)、エタノールを用いる方法(エタノール法)、リゾチームなどの溶菌酵素を用いる方法(酵素法)等が知られている。しかしながら、上記TCA法及びトリス緩衝液法では中和処理を行ったり、試料を高温にしたりする必要がある。すなわち、pHや温度を調製する必要があり、安定した量のATPを迅速に抽出することが困難である。一方、界面活性剤法及びエタノール法では、界面活性剤やエタノールによって生物化学発光させるための酵素が阻害される場合があり、生物化学発光の感度が低下する傾向にある。他方、酵素法は細胞内ATPの抽出に時間がかかるという問題点を有している。
【0004】
このように、上記いずれのATP抽出方法にも一長一短があり、場合に応じて使い分けているのが現状である。この中でも酵素を阻害する場合があるが、微生物から有効にATPを抽出できる陽イオン界面活性剤を溶菌試薬として用いる界面活性剤法がよく用いられている。例えば、下記特許文献1では、細胞を含む試料の細胞内ATPを生物化学発光法によって測定する方法において、当該試料を、陽イオン性界面活性剤を含むATP抽出試薬と、陽イオン性界面活性剤による酵素反応阻害を抑制するための蛋白質又は配糖体を含む酵素反応阻害抑制試薬と、に接触させる細胞内ATPの測定方法が開示されている。この方法によれば、陽イオン性界面活性剤による発光阻害が抑制されるという効果が得られる。
【特許文献1】特許第3175018号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで、細胞内ATPと、ルシフェリン及びルシフェラーゼとの反応で発生する生物化学発光を測定し、微生物を検出する方法においては、微生物が極微量のとき、細胞内ATPを増幅させる方法が効果的であり、この増幅は、増幅試薬を用いて行われ、増幅試薬としては、一般に増幅酵素と増幅基質が用いられる。
【0006】
しかしながら、前述した特許文献1記載の検出方法は、例えばポリリン酸化合物などの陰イオン性化合物で構成される増幅基質が存在すると、陽イオン界面活性剤と当該陰イオン性化合物が不溶性の塩を形成してしまい、その結果、溶菌効果が著しく低下する傾向にあり、微生物を十分に検出することができない。また、溶菌反応を開始した後に、陰イオン性化合物および細菌由来のATPを基質として含む酵素反応を行う場合においても、溶菌反応を維持することが困難となる傾向にある。この場合、発光量が経時的に低下するため、測定する時刻によって発光量が大きく異なることがあり、微生物を再現性よく検出することができない。
【0007】
なお、界面活性剤として、陽イオン界面活性剤に代えて陰イオン界面活性剤を用いた場合は、酵素自体が変性される傾向にあり、溶菌反応自体が進まず、微生物を殆ど検出することができない。一方、界面活性剤として、非イオン界面活性剤を用いた場合は、溶菌反応が遅く、発光量が微量の場合は検出できないという問題がある。
【0008】
本発明は、上記事情に鑑みてなされたものであり、極微量の微生物であっても十分に検出できる微生物検出方法及び溶菌試薬を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記課題を解決するため、本発明の微生物検出方法は、微生物の細胞を溶菌試薬と接触させて前記微生物の細胞から細胞内ATPを抽出する抽出工程と、抽出した細胞内ATPを増幅させる増幅工程と、増幅させた細胞内ATP、ルシフェリン及びルシフェラーゼを接触させて発光させる発光工程と、を備え、溶菌試薬が、溶菌酵素、非イオン性界面活性剤、及びキレート剤を含むことを特徴とする。
【0010】
本発明の微生物検出方法では、微生物の細胞を溶菌試薬と接触させると、細胞内ATPが抽出される。このとき、溶菌試薬に含まれる界面活性剤として、非イオン界面活性剤を用いることにより、界面活性剤が溶菌酵素を阻害することが十分に抑制される。また、上記溶菌試薬が、キレート剤を含有すると、溶菌反応が促進される。
【0011】
さらに、上記溶菌試薬は上記非イオン界面活性剤及びキレート剤に加え、溶菌酵素を含有すると、細胞が十分に溶菌され細胞内ATPが十分に抽出される。そして、抽出された細胞内ATPは、増幅されるため、微生物が微量であってもルシフェリン及びルシフェラーゼとの発光反応により十分な発光量を短時間で得ることができる。また、本発明の微生物検出方法では、上述したように、溶菌反応において溶菌酵素の阻害が十分に抑制される。加えて、上述したように界面活性剤として非イオン性界面活性剤が用いられることで、増幅試薬に用いられるポリリン酸等の陰イオン性化合物が存在しても不溶性の塩の形成が十分に防止される。従って、発光量の時間的な低下が十分に抑えられ、微生物の検出結果の再現性を高めることができる。
【0012】
なお、キレート剤が溶菌反応を促進させることができる理由については、明らかとなってはいないが、キレート剤は、界面活性剤が細胞から細胞内ATPを抽出する工程を促進する、いわゆる触媒の働きをするためであると推測される。
【0013】
上記微生物検出方法において、上記溶菌酵素が細胞壁を加水分解する酵素であることが好ましい。この場合、生物化学発光において、発光量の低下がより十分に抑制される。
【0014】
上記微生物検出方法において、上記溶菌試薬が更に糖類を含むことが好ましい。この場合は、溶菌酵素の活性低下がより十分に抑制され、発光量をより増加させることができる。
【0015】
上記微生物検出方法において、非イオン界面活性剤の濃度が溶菌試薬全量に対して0.1質量%〜1.0質量%であり、溶菌酵素の濃度が溶菌試薬全量に対して1.0×10units/ml〜1.0×10units/mlであり、キレート剤の濃度が溶菌試薬全量に対して5mM〜10mMであることが好ましい。ここで、1unitとは、Micrococcuslysodeikticus 乾燥菌体のリン酸バッファー懸濁液を基質としてリゾチームを作用させたとき、吸光度(640nm)を1分間あたり0.001減少させる酵素量をいう。
【0016】
溶菌試薬に含まれる非イオン性界面活性剤、溶菌酵素、及びキレート剤の濃度が上記範囲であると、上記範囲外である場合に比べて、細胞内ATPの抽出がより促進され、より十分な発光量を短時間で得ることができ、発光量の時間的な低下をより十分に抑制できる。
【0017】
本発明の溶菌試薬は、溶菌酵素、非イオン性界面活性剤、及びキレート剤を含むことを特徴とする。この溶菌試薬によれば、微生物と接触させると、微生物の細胞から細胞内ATPを短時間で十分に抽出することができる。なお、上記溶菌試薬は、溶菌の対象となる微生物に制限されずに用いることが可能である。
【発明の効果】
【0018】
本発明の微生物検出方法によれば、生物化学発光において、極微量の微生物であっても十分に検出できる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0019】
以下、本発明の好適な実施形態について更に詳細に説明する。
【0020】
本実施形態に係る微生物検出方法は、生物の細胞から溶菌酵素、非イオン性界面活性剤、及びキレート剤を含む溶菌試薬を用いて細胞内ATPを抽出する抽出工程と、抽出した細胞内ATPを増幅させる増幅工程と、増幅させた細胞内ATPと、ルシフェリン及びルシフェラーゼとを反応させる発光工程とを備える。
【0021】
[抽出工程]
抽出工程は、微生物の細胞から細胞内ATPを抽出する工程である。
【0022】
微生物の細胞から細胞内ATPを抽出する場合は、界面活性剤法を用いる。すなわち、抽出工程では、溶菌酵素、非イオン界面活性剤、及びキレート剤を含む溶菌試薬が用いられる。このような溶菌試薬を用いることにより、微生物の細胞から細胞内ATPを短時間で十分に抽出することができる。
【0023】
上記溶菌酵素としては、特に限定されないが、例えば、リゾチーム、キチナーゼ、キトサナーゼ、アクロモペプチダーゼ、β−1,3−グルカナーゼ、ヘキソサミニダーゼ等が挙げられる。これらの中でもリゾチーム等の細胞壁を加水分解する溶菌酵素が好ましい。これらの溶菌酵素は細胞壁を加水分解することができる。この場合、生物化学発光において、発光量の低下がより十分に抑制される。なお、リゾチームは、比較的安価で入手が容易であるため、より有用である。
【0024】
上記溶菌試薬には、非イオン界面活性剤が含まれる。この非イオン界面活性剤により、界面活性剤が溶菌試薬中に含まれる溶菌酵素を阻害することを抑制することができる。さらに、本実施形態のように後述する抽出した細胞内ATPの増幅が行われる場合は、界面活性剤と増幅試薬とで不溶性の塩が形成されることを防止することができる。
【0025】
上記溶菌試薬には、キレート剤が含まれる。キレート剤は溶菌反応を促進させる役割を果たす。
【0026】
上記キレート剤としては、特に限定されないが、例えば、EDTA、EGTA、CyDTA、DTPA 、NTA、TTHA、IDA、NTPO、BAPTA等が挙げられる。
【0027】
これらの中でも、EDTA、EGTA、CyDTA、DTPA 、TTHAが好ましい。キレート剤が上記化合物であると、溶菌反応がより促進される効果がある。
【0028】
上記溶菌試薬は、更に糖類を含むことが好ましい。この場合の溶菌試薬は、溶菌速度を速め、溶菌酵素の活性低下をより抑制することができる。従って、発光量の経時的低下をより十分に抑制することができ、微生物の検出結果の再現性をより高めることができる。
【0029】
上記糖類としては、特に限定されないが、例えば、スクロース、グルコース、フルクトース、マルトース、ガラクトース、ラクトース、トレハロース、マンノース等が挙げられる。
【0030】
これらの中でも、スクロース、トレハロースが好ましい。糖類が上記化合物であると、酵素活性の低下がより抑制されるという利点がある。
【0031】
なお、上記溶菌試薬は、上述した溶菌酵素活性を阻害するものでなければ、エチレングリコール、グリセロール、2−メルカプトエタノール、ジチオトレイトール等の試薬を更に含んでいてもよい。さらに、上記溶菌試薬は、溶菌の対象となる微生物に特に制限されずに用いることが可能である。
【0032】
また、本実施形態に係る微生物検出方法において、対象となる微生物としては、特に限定されないが、例えば、大腸菌、大腸菌群、サルモネラ、黄色ブドウ球菌等が挙げられる。
【0033】
次に上述した溶菌試薬に含まれる溶菌酵素、非イオン界面活性剤、キレート剤の好適な濃度範囲について説明する。
【0034】
溶菌酵素の濃度は、溶菌試薬全量に対して1.0×10units/ml〜1.0×10units/mlであることが好ましく、1.0×10units/ml〜1.0×10units/mlであることが更に好ましい。溶菌酵素の濃度が1.0×10units/ml未満であると、濃度が上記範囲にある場合と比べて、溶菌酵素の働きが不十分となり、細胞内ATPの抽出に時間がかかる傾向にあり、溶菌酵素の濃度が1.0×10units/mlを超えると、濃度が上記範囲にある場合と比べて、溶菌酵素の働きに差は生じないため、無駄に溶菌酵素が使用されることとなる。
【0035】
界面活性剤は、一般に酵素を阻害する傾向にあるが、その阻害度合は界面活性剤濃度が高いほど大きくなる。また、抽出能力は界面活性剤濃度が高いほど大きくなり、低いと阻害が小さくなる代わりに、抽出能力が不十分になる。したがって、本実施形態において用いる非イオン界面活性剤の濃度は重要である。すなわち、非イオン界面活性剤の濃度は、溶菌試薬全量に対して0.01質量%〜5.0質量%であることが好ましく、0.1質量%〜1.0質量%であることが更に好ましい。非イオン界面活性剤の濃度が0.1質量%未満であると、濃度が上記範囲にある場合と比べて、溶菌の速度が遅くなる傾向にあり、非イオン界面活性剤の濃度が1.0質量%を超えると、非イオン界面活性剤が酵素(溶菌酵素等)の酵素反応を阻害する傾向にある。
【0036】
キレート剤の濃度は、溶菌試薬全量に対して1mM以上であることが好ましく、5mM〜10mMであることが更に好ましい。キレート剤の濃度が5mM未満であると、濃度が上記範囲にある場合と比べて、溶菌反応が遅くなる傾向にあり、キレート剤の濃度が10mMを超えると、濃度が上記範囲にある場合と比べて、酵素反応(特に発光反応)が阻害されてしまう傾向にある。
【0037】
また、上記溶菌試薬が糖類を含む場合において、当該糖類の濃度は、溶菌試薬全量に対して0.1質量%以上であることが好ましく、0.5質量%〜10質量%であることが更に好ましい。糖類の濃度が0.5質量%未満であると、濃度が上記範囲にある場合と比べて、溶菌速度を早める効果が得られ難くなり、糖類の濃度が10質量%を超えると、濃度が上記範囲にある場合と比べて、溶菌酵素の活性を阻害する度合いが大きくなる傾向にある。
【0038】
上記溶菌試薬において、非イオン界面活性剤の濃度が溶菌試薬全量に対して0.1質量%〜1.0質量%であり、溶菌酵素の濃度が溶菌試薬全量に対して1.0×10units/ml〜1.0×10units/mlであり、キレート剤の濃度が溶菌試薬全量に対して5mM〜10mMであることが好ましい。
【0039】
溶菌試薬に含まれる非イオン性界面活性剤、溶菌酵素、及びキレート剤の濃度がいずれも上記範囲であると、いずれかが上記範囲外である場合に比べて、細胞内ATPの抽出がより促進され、より十分な発光量を短時間で得ることができ、発光量の時間的な低下をより十分に抑制できる。
【0040】
[増幅工程]
増幅工程は、抽出工程で抽出された細胞内ATPを増幅させる工程である。
【0041】
増幅試薬には、増幅基質と増幅酵素が含まれるが、増幅基質として、ポリリン酸を用い、増幅酵素として、アデニレートキナーゼ及びポリリン酸キナーゼを用いた場合、ATPの増幅メカニズムは、次のとおりである。すなわち、ATPの存在下に、AMP(アデノシン一リン酸)をアデニレートキナーゼと反応させて2分子のADP(アデノシン二リン酸)とし、ポリリン酸化合物の存在下で、当該2分子のADPをポリリン酸キナーゼと反応させて2分子のATPとポリリン酸化合物とする。こうして、1分子のATPを2分子のATPとすることができ、更にこの反応を繰り返すことにより、ATPを更に増幅させることができる。
【0042】
ATPを増幅させるための増幅試薬は、増幅基質および増幅酵素で構成されるが、増幅試薬は、増幅基質としてのポリリン酸と、増幅酵素としてのアデニレートキナーゼ及びポリリン酸キナーゼで構成される。また、上記ポリリン酸キナーゼの代わりにピルビン酸キナーゼを用いることもできる。この中でも増幅基質としてポリリン酸、増幅酵素としてアデニレートキナーゼ及びポリリン酸キナーゼを用いるものが好ましい。この場合、ポリリン酸がリン酸供与基質として作用することとなるので、特に鎖長の長いポリリン酸を用いることで反応効率を向上させることができるという利点がある。
【0043】
[発光工程]
発光工程は、増幅させたATPと、ルシフェリン及びルシフェラーゼとを接触させて生物化学発光を生じさせる工程である。この発光工程は、ATPとルシフェリン及びルシフェラーゼとを混合させることにより、行うことができる。
【0044】
そして、この発光を光検出装置等で検出することにより、微生物を検出することが可能となる。上記光検出装置としては、公知のものを用いることができ、例えばCCD、フォトダイオードや光電子増倍管を用いることができる。
【0045】
なお、本発明の微生物検出方法は、抽出工程、増幅工程、及び発光工程を備えていれば、他の工程をさらに含んでいてもよい。
【0046】
上記他の工程としては、微生物から細胞内ATPを抽出する前に細菌のフロックを分解させる分解工程、微生物によらない不要なATPを除去液を用いて除去する除去工程、この除去液を不活性化させる不活性化工程等のうち少なくとも1つの工程が挙げられる。
【実施例】
【0047】
以下、実施例により本発明を更に具体的に説明するが、本発明はこれらの実施例に限定されるものではない。
【0048】
(溶菌試薬Aの調製)
以下の方法により、溶菌試薬Aを調製した。
【0049】
リゾチーム(Lysozyme)が8mg/ml(鶏卵白由来、溶菌酵素)、Triton X−100(登録商標)が0.1重量%(非イオン界面活性剤)、スクロースが0.8重量%(糖類)、EDTAが50mM(キレート剤)となるように、10mMトリス緩衝液(pH8.0)を混合し、溶菌試薬Aとした。
【0050】
(溶菌試薬B)
以下の製品を溶菌試薬Bとした。
【0051】
ATP抽出試薬(ルシフェール250+、キッコーマン(株)社製)
【0052】
(増幅基質及び発光増幅酵素の調製)
以下の方法により、増幅基質及び発光増幅酵素を調製した。
【0053】
AMPが4×10−5M、ポリリン酸が1mMとなるように、50mMトリス緩衝液(pH7.4)を混合し、増幅基質とした。また、PPK−ADK(増幅酵素)を濃度が40μg/mlとなるようにルシフェール250+(発光試薬、キッコーマン社製)を混合し、発光増幅酵素とした。
【0054】
[実施例1]
およそ100cells/mlの大腸菌(E.coli JM109)を含むPBS溶液25μlに対し、溶菌試薬Aを25μl加えた後、増幅基質を50μl、発光増幅酵素を100μl加えることによって得られる発光量の経時変化を、Perkin-Elmer社製 Wallac 1420ARVOMXマルチラベルマイクロプレートカウンターを用いて測定した。得られた結果を図1に示す。
【0055】
[比較例1]
溶菌試薬Aの代わりに溶菌試薬Bを用いたこと以外は、実施例1に準じて発光量を測定した。
【0056】
溶菌試薬Bを用いた場合、増幅基質と混和すると直ちに反応溶液が白濁し、発光増幅酵素を用いても発光増幅を行うことが不可能であった。すなわち、溶菌試薬Bは増幅発光反応に適用することができないことが分かった。また、図1より、実施例1によれば、溶菌試薬Aおよび増幅発光反応を組み合わせることによって、極微量(数個/測定)の微生物の存在を検出できることが示された。
【0057】
以上より、本発明によれば、極微量の微生物であっても十分に検出できる微生物検出方法及び溶菌試薬を提供できることが確認された。
【図面の簡単な説明】
【0058】
【図1】図1は実施例1における発光量の時間変化を示すグラフである。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
微生物の細胞を溶菌試薬と接触させて前記微生物の細胞から細胞内ATPを抽出する抽出工程と、
抽出した前記細胞内ATPを増幅させる増幅工程と、
増幅させた前記細胞内ATP、ルシフェリン及びルシフェラーゼを接触させて発光させる発光工程とを備え、
前記溶菌試薬が、溶菌酵素、非イオン性界面活性剤、及びキレート剤を含むことを特徴とする微生物検出方法。
【請求項2】
前記溶菌酵素が細胞壁を加水分解する酵素である、請求項1記載の微生物検出方法。
【請求項3】
前記溶菌試薬が更に糖類を含む、請求項1又は2に記載の微生物検出方法。
【請求項4】
前記非イオン界面活性剤の濃度が前記溶菌試薬全量に対して0.1質量%〜1.0質量%であり、前記溶菌酵素の濃度が前記溶菌試薬全量に対して1.0×10units/ml〜1.0×10units/mlであり、キレート剤の濃度が前記溶菌試薬全量に対して5mM〜10mMである、請求項1〜3のうちのいずれか一項に記載の微生物検出方法。
【請求項5】
溶菌酵素、非イオン性界面活性剤、及びキレート剤を含むことを特徴とする溶菌試薬。


【図1】
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【公開番号】特開2006−246792(P2006−246792A)
【公開日】平成18年9月21日(2006.9.21)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−67998(P2005−67998)
【出願日】平成17年3月10日(2005.3.10)
【出願人】(502205145)株式会社物産ナノテク研究所 (101)
【出願人】(504136568)国立大学法人広島大学 (924)
【Fターム(参考)】