説明

微生物濃縮方法及び装置

検出又は分析のために微生物を捕捉又は濃縮するための方法は、
(a)酸化第二鉄、二酸化チタン、微細ナノスケール金若しくは白金、又はこれらの組み合わせを含む表面改質剤を含む表面処理剤を表面の少なくとも一部の上に担持する珪藻土を含む少なくとも1つの濃縮剤を含む焼結多孔質ポリマーマトリックスを含む濃縮素子を用意する工程と、(b)少なくとも1つの微生物株を含む試料を用意する工程と、(c)濃縮素子を試料と接触させることにより、少なくとも1つの微生物株のうち少なくとも一部が濃縮素子に結合又は捕捉されるようにする工程と、を含む。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
(関連出願の相互参照)
本出願は、内容が本明細書に参考として組み込まれる、米国特許仮出願第61/166,262号(2009年4月3日出願)の優先権を主張する。
【0002】
(発明の分野)
本発明は、微生物が検出又は検査に対して生存可能な状態を保つように、微生物を捕捉又は濃縮するための方法に関するものである。他の態様では、本発明は、また、このような方法の実施において使用する濃縮素子(及びこの素子を含む診断キット)と、素子を作製するための方法と、にも関する。
【背景技術】
【0003】
微生物汚染により生じる食品媒介疾患及び院内感染は、世界中の無数の場所で懸案となっている。したがって、存在する微生物の素性及び/又は量を決定するために、さまざまな医療、食品、環境、又はその他の試料中における、細菌又は他の微生物の存在を検定することがしばしば望ましく、あるいは必要である。
【0004】
例えば、細菌DNA又は細菌RNAを検定して、たとえ他の細菌種の存在においても特定の細菌種の存在又は不在を評価することができる。しかしながら、特定の細菌の存在を検出する能力は、少なくとも部分的に、分析される試料中の細菌の濃度に依存する。細菌試料は、検出に適切な濃度の確保に試料中の細菌の数を増加させるために播種され又は培養されるが、この培養工程はしばしば時間がかかり、評価結果を顕著に遅らせることがある。
【0005】
試料中の細菌を濃縮することで、培養時間を短縮することができ、培養工程の必要性を排除することすら可能になる。このように、菌株に特異的な抗体を使用することによって(例えば、抗体をコーティングした磁性粒子又は非磁性粒子の形態で)、特定の細菌株を分離する(及びこれにより濃縮する)ための方法が開発されている。しかしながらこのような方法は高価であり、少なくとも一部の診断用途に望まれるよりも依然としてやや遅い傾向がある。
【0006】
菌株特異的でない濃縮方法も使用されている(例えば、試料中に存在する微生物のより総合的な評価を得るため)。混合した微生物群を濃縮した後、所望ならば、菌株特異的なプローブを用いることによって特定の菌株の存在を判定することができる。
【0007】
微生物の非特異的な濃縮又は捕捉は、炭水化物とレクチンタンパク質との相互作用に基づいた方法によって達成されている。これまでに非特異的捕捉装置としてキトサンをコーティングした支持体が使用され、微生物の栄養素の役目を果たす物質(例えば、炭水化物、ビタミン、鉄キレート化合物、及びシデロホア)が、微生物の非特異的捕捉を提供するための配位子として有用であることも記述されてきた。
【0008】
さまざまな無機材料(例えばヒドロキシアパタイト及び金属水酸化物)が、細菌を非特異的に結合し濃縮するために使用されてきた。非特異的な捕捉のためには、無機結合剤の使用及び/又は不使用の、物理的な濃縮方法(例えば濾過、クロマトグラフィー、遠心分離、及び重力沈降)も利用されている。このような非特異的濃縮方法は、速度(少なくとも一部の食品試験手順は主な培養増菌段階として少なくとも一夜インキュベーションをなお必要とする)、コスト(少なくとも一部は高価な装置、材料、及び/又は訓練された技能者を必要とする)、試料条件(例えば、試料の性状及び/又は容積制限)、スペースの条件、使用の容易さ(少なくとも一部は複雑な多段階の工程を必要とする)、現場使用への適性、及び/又は有効性の点でさまざまである。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
このように、本発明者らは、病原微生物を迅速に検出するための方法に対する切迫したニーズがあると認識している。このような方法は、好ましくは、迅速なだけでなく、低コストで、単純であり(複雑な機器又は手順の必要がない)、及び/又はさまざまな条件下(例えば、さまざまな種類の試料マトリックス及び/又は病原微生物、さまざまな微生物充填量、及びさまざまな試料容量)で有効である。
【課題を解決するための手段】
【0010】
簡単に言えば、1つの態様では、本発明は、微生物が1つ以上の株の検出又は検定の目的で生存可能な状態を保つように、試料中に存在する微生物株(例えば細菌、真菌類、酵母、原生動物、ウイルス(非エンベロープ型ウイルス及びエンベロープ型ウイルスの両方を含む)、及び細菌内生胞子)を、非特異的に濃縮する方法を提供する。この方法は、(a)酸化第二鉄、二酸化チタン、微細ナノスケール金若しくは白金、又はこれらの組み合わせを含む表面改質剤を含む表面処理剤を珪藻土の表面の少なくとも一部の上に担持する珪藻土を含む少なくとも1つの濃縮剤を含む焼結多孔質ポリマーマトリックスを含む濃縮素子を用意する工程と、(b)少なくとも1つの微生物株を含む試料(好ましくは、流体の形の)を用意する工程と、(c)濃縮素子を試料と接触させることにより(好ましくは、試料を濃縮素子に通すことにより)、少なくとも1つの微生物株のうち少なくとも一部が濃縮素子に結合又は捕捉されるようにする工程と、を含む。
【0011】
好ましくは、この方法は、少なくとも1つの結合した微生物株の存在を検出する(例えば、培養に基づく検出方法、顕微鏡/画像形成による検出方法、遺伝学的検出方法、発光に基づく検出方法、又は免疫学的検出方法により)工程を更に含む。この方法は、場合によっては、試料から濃縮素子を分離すること及び/又は少なくとも1つの結合した微生物株を培養により増菌する(例えば、一般的又は選択的な微生物増菌が所望されるかどうかによって一般的な又は微生物に特異的な培地中で濃縮素子をインキュベーション又は分離することにより)こと及び/又は濃縮素子から捕捉された微生物(又はその1つ以上の構成要素)を試料の接触後分離する(例えば、溶出剤又は溶解剤を濃縮素子に通すことにより)ことを更に含むことができる。
【0012】
本発明の方法は、特定の微生物株を標的とするものではない。むしろ、焼結多孔質ポリマーマトリックス中に特定の比較的安価な無機材料を含む濃縮素子は、さまざまな微生物の捕捉において驚くほど有効であり得るということ(及び無機材料無しの対応する素子と比較して溶出による捕捉された微生物の単離又は分離において驚くほど有効であるということ)が見出された。このような素子を使用して、1つ以上の微生物株(好ましくは、1つ以上の細菌株)をより容易、かつ迅速に検定することができるように、試料(例えば、食品試料)中に存在する微生物株を、非株特異的な方法で濃縮することができる。
【0013】
本発明の方法は、比較的簡便で、低コスト(複雑な装置又は高価な株特異的な材料を必要としない)であり、かつ比較的速い(好ましい実施形態は、濃縮素子との接触を持たない対応する対照試料に対して、比較的均質な流体試料中に存在する微生物の少なくとも約70パーセント(より好ましくは少なくとも約80パーセント、最も好ましくは少なくとも約90パーセント)を約30分未満に捕捉する)。加えて、この方法は、さまざまな微生物(グラム陽性菌とグラム陰性菌の両方などの病原体を含む)及びさまざまな試料(さまざまな試料マトリックスを含み、しかも少なくとも一部の従来技術とは違って、微生物含有量が少ない試料及び/又は大量の試料であっても)に有効であり得る。よって、本発明の方法の少なくともいくつかの実施形態は、さまざまな状況下で病原微生物を迅速に検出するための低コストで単純な方法に対する、上述のような緊迫したニーズに対応することができる。
【0014】
この方法で使用される濃縮素子は、アブソルートミクロンフィルターなどの少なくとも一部の濾過素子よりも少なくとも若干大きな詰まりに対する抵抗性を呈することができるので、本発明の方法は、食品試料(例えば、粒子を含有する食品試料、特に比較的粗い粒子を含むもの)中の微生物の濃縮に特に有利であることができる。このことは、より完璧な試料処理(食品試験において誤った陰性の検定を無くすことにおいて必須である)及び比較的大容積の試料の取り扱い(例えば、野外条件下での)を容易とすることができる。
【0015】
別の態様では、本発明は、また、酸化第二鉄、二酸化チタン、微細ナノスケール金若しくは白金、又はこれらの組み合わせを含む表面改質剤を含む表面処理剤を表面の少なくとも一部の上に担持する珪藻土を含む少なくとも1つの濃縮剤を含む焼結多孔質ポリマーマトリックスを含む濃縮素子も提供する。本発明は、また、(a)少なくとも1つの本発明の上記濃縮素子、及び(b)上述の濃縮工程の実施において使用するための少なくとも1つの試験容器又は試験試薬を含む、本発明の濃縮工程の実施において使用するための診断キットも提供する。
【0016】
更に別の態様では、本発明は、(a)(1)少なくとも1つの粒子状焼結型ポリマー(好ましくは、粉末の形の)と、(2)酸化第二鉄、二酸化チタン、微細ナノスケール金若しくは白金、又はこれらの組み合わせを含む表面改質剤を含む表面処理剤を表面の少なくとも一部の上に担持する珪藻土を含む少なくとも1つの濃縮剤と、を含む混合物を用意する工程と、(b)ポリマーの焼結に充分な温度まで混合物を加熱して、粒子状濃縮剤を含む焼結多孔質ポリマーマトリックスを形成する工程と、を含む濃縮素子の作製方法を提供する。
【0017】
本発明のこれら並びにその他の特徴、態様及び利益は、次の説明、添付した請求項及び添付図面でよりよく理解されるであろう。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【図1】下記の実施例セクションにおいて記述される本発明の方法の実施形態の実施に使用するための濃縮剤を作製するのに使用される装置を、側面断面図で示す。
【図2】図1の装置の透視図。
【0019】
これらの図は、理想化されており、一定の縮尺で描かれてはおらず、単に例証として、かつ非限定的であるように意図されている。
【発明を実施するための形態】
【0020】
以下の「発明を実施するための形態」では、種々の組の数値範囲(例えば、特定の部分における炭素原子の数、又は特定の成分の量など)が記載され、各組内では、範囲の任意の下限を範囲の任意の上限と対にすることができる。
【0021】
定義
本特許出願で使用するとき、
「濃縮剤」は、微生物を濃縮するための組成物を意味する。
「検出」とは、これによりその微生物が存在すると判定させる、微生物の少なくとも構成要素の同定を意味する。
「一般的検出」とは、標的微生物に由来するDNA又はRNAなどの一般的物質の構成要素の同定を意味する。
「免疫学的検出」とは、標的微生物に由来するタンパク質又はプロテオグリカンなどの抗原性物質の同定を意味する。
「微生物」は、分析又は検出に好適な遺伝物質を有する何らかの細胞又は粒子を意味する(例えば、細菌、酵母、ウイルス、及び細菌内生胞子が挙げられる)。
「微生物株」は、検出方法により識別可能な微生物(例えば、異なる属、属内の異なる種、又は種内の異なる隔離体の微生物)の特定のタイプを意味する。
「試料」は、(例えば分析のために)採取される物質又は材料を意味する。
「試料マトリックス」は、試料の微生物以外の構成成分を意味する。
「焼結」(ポリマー粒子体に関連する)は、熱を加えることにより、完全な粒子の融解を起こさずにポリマー粒子の少なくとも一部の粒子間結合又は接着が生成する(例えば、ポリマー粒子体をポリマーのガラス転移温度と融点の間の温度まで加熱して、粒子の軟化を起こさせることにより)ことを意味する。
「焼結型」(ポリマーと関連する)は焼結可能なポリマーを意味する。
「焼結」(マトリックスに関連する)は、焼結により形成されることを意味する。
「標的微生物」は、検出を所望する任意の微生物を意味する。
「貫通細孔」(多孔質マトリックスに関連する)は、マトリックスを通る通路又はチャンネル(別々の入口及び出口を持つ)を含む細孔を意味する。並びに、
「迂回経路マトリックス」は、少なくとも1つの迂回した貫通細孔を有する多孔質マトリックスを意味する。
【0022】
濃縮剤
本発明の方法を実施する際に使用するのに適した濃縮剤には、酸化第二鉄、二酸化チタン、微細ナノスケール金若しくは白金、又はこれらの組み合わせ(好ましくは、二酸化チタン、微細ナノスケール金若しくは白金又はこれらの組み合わせ)を含む表面改質剤を含む表面処理剤を、その表面の少なくとも一部の上に担持する珪藻土を含むものが挙げられる。このような濃縮剤を使用した濃縮又は捕捉は一般的に特定の株、種、又は微生物のタイプに対して特異的ではなく、よって、試料内の微生物の全体的な個体群の濃縮を提供する。次いで、株特異的なプローブによる任意の公知の検出方法を用いて、捕捉された微生物の集団から微生物の特定の株を検出することができる。したがって、この濃縮剤は、臨床試料、食品試料、環境試料、又は他の試料中の汚染微生物又は病原体(特に細菌などの食品によって媒介される病原体)の検出に使用することができる。
【0023】
本発明の方法の実施においては、濃縮剤を、粒子状ポリマーとのブレンドにかけ易い、実質的に任意の粒子状の形(好ましくは、比較的乾燥した又は揮発分を含まない形)で使用して、この方法で使用される濃縮素子を形成することができる。例えば、濃縮剤を粉末の形で使用することができるか、又はビーズなどのような粒子状支持体に塗布することができる。好ましくは、濃縮剤は粉末の形で使用される。
【0024】
無機材料は、水系に分散又は懸濁されると、その物質及び水系のpHに特徴的な表面電荷を示す。物質−水の界面の両側の電位は「ゼータ電位」と呼ばれ、電気泳動における移動度から(すなわち、水系中に置かれた帯電電極間を物質の粒子が移動する速度から)計算することができる。本発明の方法の実施において使用される濃縮剤のうち少なくともいくつかは、未処理の珪藻土に比べて少なくともある程度、正であるゼータ電位を有し、この濃縮剤は、細菌などの微生物の濃縮について、表面が一般に負に帯電している傾向にある、非処理の珪藻土よりも驚くほど顕著に有効であり得る。好ましくは、濃縮剤はpHが約7で負のゼータ電位を有する(より好ましくは、pHが約7でゼータ電位が約−5ミリボルト〜約−20ミリボルトの範囲、更に好ましくは、pHが約7でゼータ電位が約−8ミリボルト〜約−19ミリボルトの範囲、最も好ましくは、pHが約7でゼータ電位が約−10ミリボルト〜約−18ミリボルトの範囲である)。
【0025】
このように、特定の種類の表面処理された又は表面改質珪藻土(すなわち、酸化第二鉄、二酸化チタン、微細ナノスケール金若しくは白金、又はこれらの組み合わせを含む表面改質剤を含む表面処理剤を担持する)を含む濃縮剤は、微生物の濃縮において、非処理の珪藻土よりも驚くほど効果的であり得るということが見出された。表面処理は好ましくは、酸化第二鉄、酸化亜鉛、酸化アルミニウムなど、及びこれらの組み合わせから選択される金属酸化物(より好ましくは酸化第二鉄)を更に含む。金などの貴金属は、抗菌特性を呈することが知られているにもかかわらず、本発明の方法において使用される金含有濃縮剤は、微生物の濃縮に有効なだけでなく、検出又は分析の目的に微生物を生存可能な状態に保つことができる。
【0026】
有用な表面改質剤としては、微細ナノスケール金、微細ナノスケール白金、少なくとも1つの金属酸化物(好ましくは、二酸化チタン、酸化第二鉄、又はこれらの組み合わせ)と組み合わせた微細ナノスケール金、二酸化チタン、少なくとも1つの他の金属酸化物(すなわち二酸化チタン以外)と組み合わせた酸化第二鉄、など、及びこれらの組み合わせが挙げられる。好ましい表面改質剤としては、微細ナノスケール金、微細ナノスケール白金、少なくとも酸化第二鉄又は二酸化チタンと組み合わせた微細ナノスケール金、二酸化チタン、少なくとも酸化第二鉄と組み合わせた二酸化チタン、酸化第二鉄、及びこれらの組み合わせが挙げられる。
【0027】
より好ましい表面改質剤としては、微細ナノスケール金、微細ナノスケール白金、酸化第二鉄又は二酸化チタンと組み合わせた微細ナノスケール金、二酸化チタン、酸化第二鉄と組み合わせた二酸化チタン、及びこれらの組み合わせが挙げられる(更に好ましくは、微細ナノスケール金、酸化第二鉄又は二酸化チタンと組み合わせた微細ナノスケール金、酸化第二鉄と組み合わせた二酸化チタン、及びこれらの組み合わせが挙げられる)。微細ナノスケール金、酸化第二鉄又は二酸化チタンと組み合わせた微細ナノスケール金、及びこれらの組み合わせが最も好ましい。
【0028】
金及び/又は白金
微細ナノスケール金又は白金を含む濃縮剤は、物理蒸着(所望により、酸化雰囲気中での物理蒸着)によって珪藻土に金又は白金を堆積することにより作製することができる。本明細書で使用するとき、用語「微細ナノスケール金又は白金」は、サイズで5ナノメートル(nm)以下の寸法を有する金又は白金の物体(例えば、粒子又は原子クラスタ)を意味する。好ましくは、堆積した金又は白金の少なくとも一部は、最大約10nm(10nm以下)(より好ましくは、最大約5nm、更により好ましくは最大約3nm)の範囲の平均サイズの寸法(例えば、粒子の直径又は原子クラスタの直径)を有する。
【0029】
最も好ましい実施形態において、金の少なくとも一部分は、超ナノスケールである(すなわち、0.5nm未満のサイズの少なくとも2つの寸法、1.5nm未満のサイズの全ての寸法を有する)。個別の金又は白金のナノ粒子のサイズは、当該技術分野において周知であるように、透過電子顕微鏡(TEM)分析によって定量することができる。
【0030】
珪藻土上に供給される金又は白金の量は、広い範囲で変えることができる。金及び白金は高価であるため、望ましい濃縮活性を達成するのに妥当な必要とされる量を超えては使用しないことが望ましい。更に、ナノスケール金又は白金は、PVDを使用して堆積する際、非常に易動性であることがあるため、金又は白金を使用しすぎると、金又は白金の少なくとも一部が融合してより大きな塊になることにより、活性が低下することがある。
【0031】
これらの理由から、珪藻土上の金又は白金の重量の装填量は、珪藻土と金との合計重量を基準として、好ましくは約0.005(より好ましくは0.05)〜約10重量パーセント、より好ましくは約0.005(更に好ましくは0.05)〜約5重量パーセント、及び更に好ましくは約0.005(最も好ましくは0.05)〜約2.5重量パーセントである。
【0032】
金及び白金をPVD法(例えばスパッタリング)により堆積して、支持体表面に濃縮活性を有する微細ナノスケール粒子又は原子クラスタを形成することができる。金属は、他の酸化状態が存在する場合もあるが、主に元素の形で堆積すると考えられる。
【0033】
金及び/又は白金に加えて、同じ珪藻土支持体上に1つ以上の他の金属を供給することもでき、及び/又は、金及び/又は白金を含む支持体と別の支持体とを混合して供給することもできる。このような他の金属の例としては、銀、パラジウム、ロジウム、ルテニウム、オスミウム、銅、イリジウム及び同等物、並びにこれらの組み合わせが挙げられる。使用する場合のには、これらの他の金属を、使用される金又は白金の供給源ターゲットと同一又は異なるターゲット供給源から支持体上に共堆積させることができる。あるいは、このような金属を、金及び/又は白金の堆積の前又は後のいずれかにおいて、支持体上に供給することができる。有利には、活性化のための熱処理を必要とする他の金属を、金及び/又は白金の堆積前に支持体に適用し、熱処理することもできる。
【0034】
物理蒸着は、金属含有供給源又は金属含有ターゲットから支持媒体への金属の物理的な移動を指す。実際の実施では、金属を物体当たり1個以上の原子から構成される超微細体として移動することができるが、物理蒸着は、原子単位での堆積を伴うものとして見ることができる。堆積した金属は、支持媒体の表面と物理的、化学的、イオン的、及び/又は別の方法で相互作用を起こし得る。
【0035】
物理蒸着は、好ましくは、金属が高易動性であり、何らかの方法(例えば、支持体表面上又は非常に近くの場所に付着することにより)で不動化されるまでは、支持媒体の表面上を移動しやすい傾向にある、温度及び真空の条件下で起こる。付着する部位は、表面欠損などの欠陥、段差及び転位などの構造上の不連続性、並びに相又は結晶の間の界面境界、又は小さな金属クラスタのような結晶若しくはその他の金属種を含むことができる。PVDによって堆積した金属は、高レベルの活性を保持することができるのに充分に固定される。これに対して、従来の方法によっては、しばしば、金属が融合して大きな形状になり、活性が低下又は失われることさえあり得る。
【0036】
物理気相堆積は、さまざまな異なる方法で実施可能である。代表的な方法としては、スパッタ堆積法(好ましい方法)、蒸着法、及び陰極アーク堆積法が挙げられる。PVD法の性状は得られる活性に影響を与え得るが、これら又は他のPVDアプローチのいずれかを、本発明の方法の実施に使用する濃縮剤の作製で使用することができる。
【0037】
例えば、物理蒸着法のエネルギーは、堆積する金属の易動性に影響を与え、融合しやすくなる傾向を生じ得る。エネルギーが高くなると、これに応じて金属の融合傾向が増大する傾向がある。融合が増大すると、今度は、活性が低下する傾向がある。通常、堆積種のエネルギーは、蒸着法が最も低く、スパッタ堆積法(衝突金属形態のごく一部はイオン化されており、ある程度のイオン量を含み得る)はより高く、陰極アーク堆積法(イオン含有量は、数10パーセントであり得る)が最も高い。したがって、特定のPVD法が、所望よりも大きな易動性を有する堆積金属を生じる場合、代わりにより少ないエネルギーのPVD法を使用することが有用であり得る。
【0038】
物理気相堆積法は、支持体表面の適切な処理が確実に行われるように、好ましくは、処理対象の支持体媒質が充分に混合された状態(例えば、混転、流動化、粉砕、又は同等の処理)で実施される。PVDによる堆積用の粒子混転方法は、記述が参考として本明細書に組み込まれている、米国特許第4,618,525号(Chamberlainら)に記述されている。
【0039】
微細粒子又は微細粒子凝集塊(例えば、平均直径が約10マイクロメートル未満)にPVDを実施する際、支持体媒体は、好ましくは、PVD工程の少なくとも一部の間に、混合及び微粉砕の両方が行われる(例えば、ある程度まで摩砕又はミル掛けされる)。これは、堆積時の粒子又は凝集塊の分離及び自由な流れを維持するのに役立ち得る。微細な粒子又は微細な粒子凝集塊の場合、金属の制御された堆積をなお維持しながら、できるだけ激しくかつ素早く粒子を混合することが有利であり得る。
【0040】
PVDは、この目的で現在使用されている装置又は今後開発される装置のいずれかのタイプを使用することにより行うことができる。しかしながら、好ましい装置10を図1及び2に示す。装置10は、粒子撹拌器16を備える真空室14を画定する、ハウジング12を含む。ハウジング12は、所望される場合にはアルミニウム合金から作製することができ、垂直に配置された中空シリンダー(例えば、高さ45cm及び直径50cm)である。ベース18は高真空ゲート弁22のためのポート20、高真空ゲート弁22は、それに続く6インチ(15cm)の拡散ポンプ24と、更に粒子撹拌器16のための支持体26を含む。真空槽14は、10−6Torr(0.00013Pa)の範囲で背景圧力に排気することができる。
【0041】
ハウジング12の頂部は、外部搭載の直径7.6cm(3インチ)の直流(dc)マグネトロンスパッタ堆積供給源30(US Gun II,US,INC.(San Jose,CA))と嵌合する、取り外し可能なゴム製Lガスケット密閉プレート28を含む。スパッタ堆積供給源30の中に金又は白金スパッタターゲット32(例えば、直径7.6cm(3.0インチ)×厚さ0.48cm(3/16インチ))を固定する。スパッタ堆積供給源30を、Sparc−le 20アーク抑制システム(Advanced Energy Industries,Inc、Fort Collins)を取り付けた、MDX−10 Magnetron Drive(Advanced Energy Industries,Inc,Fort Collins,CO)により作動する。
【0042】
粒子撹拌機16は、長方形の開口部34(例えば6.5cm×7.5cm)を有する中空円筒(例えば長さ12cm×水平直径9.5cm)である。開口部34は金スパッタターゲット32の表面36のすぐ下約7cmの位置にあって、スパッタリングされた金属原子は撹拌機容積38に入ることができる。撹拌機16は、軸と位置合わせされたシャフト40と嵌合する。シャフト40は、混転する支持体粒子のための撹拌機構又はパドルホイールを形成する4つの長方形状のブレード42がボルトで固定される長方形状の断面(例えば1cm×1cm)を有する。ブレード42は、それぞれ2つの孔44(例えば直径2cm)があり、ブレード42及び粒子撹拌機16によって形成される4区分のそれぞれに収容される粒子容量の間の連通を促進する。ブレード42の寸法を選択して、撹拌器の壁48との間に、それぞれ2.7mm又は1.7mmの側面ギャップ及び末端ギャップ距離を与える。
【0043】
物理気相堆積法は、本質的には、非常に広い範囲にわたって、任意の所望の温度で実施可能である。しかしながら、金属を比較的低い温度(例えば、約150℃未満、好ましくは約50℃未満、より好ましくは室温(例えば約20℃〜約27℃)以下))で堆積すれば、堆積した金はより高い活性を有することができる(おそらくは、より欠陥が多いため、及び/又は易動性と融合性がより低いため)。外周条件下で運転すると、堆積時の加熱又は冷却が不要となり、有効かつ経済的であるため、一般的に好ましい可能性がある。
【0044】
物理蒸着は、不活性スパッタリングガス雰囲気中(例えば、アルゴン、ヘリウム、キセノン、ラドン、又はこれら2つ以上の混合物(好ましくはアルゴン))で実施することができ、場合によっては、物理蒸着は酸化雰囲気中で実施可能である。好ましくは、酸化雰囲気は、少なくとも1つの酸素含有ガスを含む(より好ましくは、酸素含有ガスは、酸素、水、過酸化水素、オゾン、及びこれらの組み合わせから選択され、更により好ましくは、酸素含有ガスは、酸素、水、及びこれらの組み合わせから選択され、最も好ましくは酸素である)。酸化雰囲気は、アルゴン、ヘリウム、キセノン、ラドン、又はこれらの2つ以上の混合物(好ましくはアルゴン)などの不活性スパッタリングガスを更に含む。PVD工程時の真空槽中の総気体圧力(全ガス)は、約1mTorr〜約25mTorr(約0.13Pa〜約3.3Pa)(好ましくは、約5mTorr〜約15mTorr(約0.67Pa〜約1.9Pa)であることができる。酸化雰囲気は、真空槽内の全てのガスの総重量を基準にして、約0.05重量パーセント〜約60重量パーセントの酸素含有ガス(好ましくは、約0.1重量パーセント〜約50重量パーセント、より好ましくは約0.5重量パーセント〜約25重量パーセント)を含み得る。
【0045】
これにより結晶シリカの含有量が増加し得るが、珪藻土支持媒体は、場合によっては、金属堆積の前に焼成可能である。金及び白金は、PVDで堆積するとすぐに活性になるため、他の一部の方法による堆積とは違って、一般に金属堆積後に加熱処理の必要がない。ただし、このような加熱処理又は焼成は、活性を高めるために所望される場合には実行できる。
【0046】
一般に、熱処理は、任意の好適な大気中、例えば、空気、不活性雰囲気(窒素、二酸化炭素、アルゴンなど)、還元性雰囲気(水素など)、及び同等物の中で、約125℃〜約1000℃の範囲の温度で、約1秒間〜約40時間、好ましくは約1分間〜約6時間支持体を加熱することを伴い得る。使用される具体的な熱条件は、支持体の性質を含むさまざまな要素に依存し得る。
【0047】
一般に、熱処理は、支持体の構成要素が分解するか、劣化するか、又は過度の熱により損傷する温度よりも下の温度で実施可能である。支持体の性状、金属の量などの要素に依存して、触媒活性は、系を高すぎる温度で熱処理すると、ある程度低下する可能性がある。
【0048】
二酸化チタン、酸化第二鉄、及び/又は他の金属酸化物
金属酸化物を含む濃縮剤は、加水分解可能な金属酸化物前駆体化合物の加水分解によって、珪藻土上に金属酸化物を堆積させることにより作製され得る。適切な金属酸化物前駆体化合物としては、加水分解して金属酸化物を生成できるような金属錯体及び金属塩が挙げられる。有用な金属錯体としては、アルコキシド配位子、配位子としての過酸化水素、カルボン酸機能配位子など、及びこれらの組み合わせが挙げられる。有用な金属塩としては、金属の硫酸塩、硝酸塩、ハロゲン化物、炭酸塩、シュウ酸塩、水酸化物など及びこれらの組み合わせが挙げられる。
【0049】
過酸化水素又はカルボン酸機能配位子の金属塩又は金属錯体を使用する場合、化学的手段又は熱的手段によって加水分解を引き起こすことができる。化学的に引き起こされる加水分解においては、金属塩は、溶液の形態で、珪藻土の分散液に導入することができ、得られる混合物のpHは、珪藻土上に金属の水酸化物錯体として金属塩が沈殿するまで、塩基溶液を加えることによって上げることができる。適切な塩基としては、アルカリ金属及びアルカリ土類金属の水酸化物及び炭酸塩、アンモニウム及びアルキルアンモニウムの水酸化物又は炭酸塩など、及びこれらの組み合わせが挙げられる。金属塩溶液及び塩基溶液は、通常、約0.1〜約2Mの濃度であり得る。
【0050】
好ましくは、珪藻土への金属塩の添加は、珪藻土分散液を撹拌(好ましくは激しく撹拌)しながら実施される。金属塩溶液及び塩基溶液は、珪藻土分散液に別々に(いずれの順番でも)又は同時に導入可能であって、得られる珪藻土の表面に金属水酸化物錯体を生じる実質的に好ましく均一な反応をもたらす。反応混合物は、場合によっては、反応中に加熱して、反応の速度を加速することができる。一般に、添加される塩基の量は、金属のモル数に、金属塩又は金属錯体の非オキソ及び非ヒドロキソ対イオン数を掛けたものに等しくなり得る。
【0051】
あるいは、チタン又は鉄の塩を使用する場合、金属塩を加熱して加水分解を起こさせて、金属水酸化物錯体を形成し、珪藻土の表面と反応させることができる。この場合、金属塩溶液を一般に、珪藻土の分散液(好ましくは撹拌した分散液)に加え、充分に高温(例えば、約50℃を上回る温度)に加熱して、金属塩の加水分解を促進することができる。反応がオートクレーブ装置内で実施される場合には、より高い温度を使用することができるが、好ましくは、温度は約75℃〜100℃である。
【0052】
金属アルコキシド錯体を使用する場合、金属錯体に加水分解を起こさせ、アルコール溶液中で金属アルコキシドの部分的加水分解により金属の水酸化物錯体を形成させることができる。珪藻土の存在における金属アルコキシド溶液の加水分解により、珪藻土の表面に金属水酸化物種を堆積させることができる。
【0053】
あるいは、珪藻土の存在において気相の金属アルコキシドと水とを反応させることによって、金属アルコキシドを加水分解して、珪藻土の表面に堆積させることができる。この場合、珪藻土を、例えば流動床反応器又は回転ドラム反応器などのいずれかの中で堆積中に撹拌することができる。
【0054】
珪藻土の存在における金属酸化物前駆体化合物の上記の加水分解の後、得られる表面処理された珪藻土を、沈降又は濾過、又はその他の既知の方法によって分離することができる。分離した生成物を水による洗浄により精製し、次いで乾燥させることができる(例えば50℃〜150℃)。
【0055】
表面処理された珪藻土は、通常、乾燥後に機能できるが、場合によっては、焼成して、空気中で約250℃〜650℃に加熱することにより、通常、機能の喪失無しで揮発性の副生成物を除去することができる。この焼成工程は、金属酸化物前駆体化合物として金属アルコキシドを利用した場合に望ましいことがある。
【0056】
一般に、鉄の金属酸化物前駆体化合物を用い、得られる表面処理には、ナノ粒子の酸化鉄が含まれる。珪藻土に対する酸化鉄の重量比が約0.08である場合には、X線回折(XRD)では、酸化鉄材質の存在がはっきりと示されない。むしろ、3.80、3.68、及び2.94Åで更なるX線反射が観察される。この材料のTEM評価は、球形ナノ粒子状酸化鉄材料により比較的不均一にコーティングされている珪藻土表面を示す。酸化鉄材料の結晶子の大きさは約20nm未満であり、結晶の大部分は直径が10nm未満である。珪藻土表面上のこれらの球形結晶の充填は、外観的に密であり、珪藻土の表面がこれら結晶の存在により粗化されているのが見られる。
【0057】
一般に、チタンの金属酸化物前駆体化合物と共に、得られる表面処理は、ナノ粒子チタニアを含む。二酸化チタンを珪藻土上に堆積させる場合、約350℃まで焼成した後の得られる生成物のXRDは、アナターゼ型チタニアの小結晶の存在を示すことができる。チタン/珪藻土の比が比較的低い場合、又はチタン及び鉄の酸化物前駆体の混合物を使用する場合、X線分析によっては、一般に、アナターゼの証拠は観察されない。
【0058】
チタニアは強力な光酸化触媒として周知であるので、本発明のチタニア改質珪藻土濃縮剤を使用して、分析用に微生物を濃縮することができ、次いで場合によっては、残留する微生物を殺菌し、使用後に不要な有機不純物を除去するために、光活性化剤として使用することができる。このように、チタニア改質された珪藻土は、分析のための生体材料を単離することと、次いで再使用のために光化学的にクリーニングすることの両方ができる。これらの材料は、微生物の除去と共に抗菌効果が望ましい場合、濾過用途で使用することもできる。
【0059】
珪藻土
珪藻土(又はキーゼルグール)は、海生微生物類である珪藻の残存物から生じた、天然のシリカ材料である。このように、これは天然資源から取得可能であり、市販もされている(例えば、Alfa Aesar,A Johnson Matthey Company(Ward Hill,MA)から)。珪藻土粒子は、一般に、対称な立方体、円筒形、球形、プレート状、矩形の箱形などの形態の、小さな開放網状構造を含む。これらの粒子の孔構造は、一般に、非常に均一であり得る。
【0060】
珪藻土を、掘り出した原材料として、又は精製され及び場合によっては粉砕された粒子として、本発明の方法の実施に使用することができる。好ましくは、珪藻土は、直径約1マイクロメートル〜約50マイクロメートル(より好ましくは約3マイクロメートル〜約10マイクロメートル)の範囲にある寸法の粉砕粒子形状である。
【0061】
珪藻土は、場合によっては、使用前に加熱処理を行い、有機残留物の痕跡を除去することができる。加熱処理を使用する場合は、高温になるほど好ましくない結晶シリカが高比率で生じ得るため、加熱処理は500℃以下とすることが望ましい。
【0062】
濃縮素子
本発明の方法の実施において使用するのに好適な濃縮素子としては、上述の濃縮剤の少なくとも1つを含む焼結多孔質ポリマーマトリックスを含むものが挙げられる。例えば、少なくとも1つの粒子状焼結型ポリマー(好ましくは、粉末の形の)と少なくとも1つの粒子状濃縮剤を混合又はブレンドし、次いで得られる混合物をポリマーの焼結に充分な温度まで加熱することにより、このような濃縮素子を作製することができる。この方法、並びに他の既知の又は今後開発される焼結方法を使用して、冷却時に粒子状濃縮剤を含む焼結多孔質ポリマーマトリックスを用意することができる。
【0063】
例えば、焼結は、ポリマー粒子の接触点における軟化を引き起こし、次いで以降の冷却は粒子の融解を引き起こすことができる。粒子状濃縮剤を含む固化した又は自己支持性の多孔質ポリマー体が生成させることができる(例えば、濃縮剤がポリマー体の表面中又は上に埋め込まれて)。これは、比較的複雑な細孔構造(好ましくは、迂回経路マトリックスを含む濃縮素子)と比較的良好な機械的強度を有する濃縮素子を用意することができる。
【0064】
濃縮素子の作製における使用に好適なポリマーとしては、焼結型ポリマー及びこれらの組み合わせが挙げられる。好ましい焼結型ポリマーとしては、熱可塑性ポリマー及びこれらの組み合わせが挙げられる。より好ましくは、比較的高い粘度と比較的低いメルトフローレートを有するには、熱可塑性ポリマーを選択することができる。これによって、焼結過程時の粒子の形状保持の促進ができる。
【0065】
有用な焼結型ポリマーとしては、ポリオレフィン(オレフィンホモポリマー及びコポリマー、並びにオレフィンと他のビニルモノマーのコポリマーを含む)、ポリスルホン、ポリエーテルスルホン、ポリフェニレンスルフィドなど、及びこれらの組み合わせが挙げられる。有用なポリマーの代表的な例としては、エチレンビニルアセテート(EVA)ポリマー、エチレンメチルアクリレート(EMA)ポリマー、ポリエチレン(例えば、低密度ポリエチレン(LDPE)、線状低密度ポリエチレン(LLDPE)、高密度ポリエチレン(HDPE)、及び超高分子量ポリエチレン(UHMWPE)を含む)、ポリプロピレン、エチレン−プロピレンゴム、エチレン−プロピレン−ジエンゴム、ポリスチレン、ポリ(1−ブテン)、ポリ(2−ブテン)、ポリ(1−ペンテン)、ポリ(2−ペンテン)、ポリ(3−メチル−1−ペンテン)、ポリ(4−メチル−1−ペンテン)、1,2−ポリ−1,3−ブタジエン、1,4−ポリ−1,3−ブタジエン、ポリイソプレン、ポリクロロプレン、ポリ(ビニルアセテート)、ポリ(ビニリデンクロリド)、ポリ(ビニリデンフルオリド)、ポリ(テトラフルオロエチレン)など、及びこれらの組み合わせが挙げられる。
【0066】
好ましいポリマーとしては、オレフィンホモポリマー及びコポリマー(特に、ポリエチレン、ポリプロピレン、エチレンビニルアセテートポリマー、及びこれらの組み合わせ)が挙げられる。より好ましいポリマーとしては、オレフィンホモポリマー及びこれらの組み合わせ(より好ましくはポリエチレン及びこれらの組み合わせ、最も好ましくは超高分子量ポリエチレン(UHMWPE)及びこれらの組み合わせ)が挙げられる。有用な超高分子量ポリエチレンとしては、少なくとも約750,000(好ましくは少なくとも約1,000,000、より好ましくは少なくとも約2,000,000、最も好ましくは少なくとも約3,000,000)の分子量を有するものが挙げられる。
【0067】
焼結多孔質ポリマーマトリックスで所望される細孔(例えば、穴、くぼみ、又は、好ましくはチャンネル)のサイズによって、広範囲のポリマー粒子サイズを利用することができる。微細粒子ほど焼結マトリックス中に微細な細孔サイズをもたらすことができる。一般に、ポリマー粒子は、マイクロメートル以下のオーダーの細孔サイズを提供するために、微小粒子(例えば、約1マイクロメートル〜約800マイクロメートル、好ましくは、約5マイクロメートル〜約300マイクロメートル、より好ましくは、約5マイクロメートル〜約200マイクロメートル、最も好ましくは、約10マイクロメートル〜約100又は200マイクロメートルの範囲サイズ又は直径)であることができる。さまざまな平均及び/又はメディアン粒子サイズを使用することができる(例えば、約30マイクロメートル〜約70マイクロメートルの平均粒子サイズは有用であることができる)。所望ならば、高及び低メルトフローレートのポリマーのブレンドを使用することにより、焼結マトリックスの多孔度を変動又は制御することもできる。
【0068】
ポリマー粒子と粒子状濃縮剤(及び湿潤剤又は界面活性剤などの任意の随意の添加物)を一体化し、機械的にブレンド(例えば、商用の混合装置を使用して)して、混合物(好ましくは、均質な混合物)を形成することができる。一般に、粒子状濃縮剤は、混合物中の全粒子の全重量基準で約90重量パーセントまで(好ましくは約5〜約85重量パーセント、より好ましくは約10〜約80重量パーセント、最も好ましくは約15〜約75重量パーセント)の濃度で混合物中に存在することができる。所望ならば、混合物中に慣用の添加物(例えば、湿潤剤、界面活性剤など)を少量(例えば、約5重量パーセントまで)含ませることができる。
【0069】
得られる混合物を型又は他の好適な容器又は基材中に入れることができる。有用な型は、炭素鋼、ステンレス鋼、真鍮、アルミニウムなどででき、単一のキャビティ又は多数個のキャビティを有することができる。処理の完結後焼結内容物を型から除去することができるという前提ならば、キャビティは本質的に、任意の所望の形状のものであることができる。好ましくは、商用の粉末取り扱い及び/又は振動装置を使用することにより、型充填を助けることができる。
【0070】
型に熱を導入する(例えば、電気抵抗加熱、電気誘導加熱、又はスチーム加熱により)ことにより、熱処理を行うことができる。型をポリマーの焼結に充分な温度まで加熱する(例えば、ポリマーの融点の若干下の温度まで加熱することにより)ことができる。焼結方法は既知であり、使用されるポリマーの性状及び/又は形に従って選択可能である。場合によっては、加熱工程時に混合物に圧力を加えることができる。熱処理後、型を外周温度(例えば、約23℃の温度)まで自然に又は本質的に任意の好都合な冷却方法又は装置の使用により冷却することができる。
【0071】
粒子及び方法の記述が参照によりこの明細書に組み込まれている、米国特許第7,112,272号、同第7,112,280号、及び同第7,169,304号(Hughesら)に記載されている、ポリマー粒子及び加工方法を使用することにより、好ましい濃縮素子を作製することができる。一方が「ポップコーン形状」(表面渦巻きを有する)であり、他方が実質的に球状である、2つの異なるタイプの超高分子量ポリエチレン(UHMWPE)粒子を一緒にブレンドすることができる。好ましい「ポップコーン形状」及び球状UHMWPEは、Ticona(Celaneseの一部門、Frankfurt,Germanyに本部を置く)からPMX CF−1(0.25〜0.30g/立方センチメートルのかさ密度及び約10マイクロメートル〜約100マイクロメートルの範囲で約30〜40マイクロメートルの平均直径を有する)及びPMX CF−2(0.40〜0.48g/立方センチメートルのかさ密度及び約10マイクロメートル〜約180マイクロメートルの範囲で約55〜65マイクロメートルの平均直径を有する)として入手可能である。相当する形態、かさ密度、及び粒子サイズを有し、かつ約750,000〜約3,000,000の範囲の分子量を有する他のメーカーからのUHMWPEも使用することができる。2つのタイプのUHMWPE粒子を選択して、同一の又は異なる分子量とすることができる(好ましくは、両方とも主張範囲内の同一の分子量を有し、より好ましくは、両方とも約3,000,000の分子量を有する)。
【0072】
2つのタイプのUHMWPE粒子をさまざまな相対量(例えば、等量)で一体化し、次いで上述の比で濃縮剤と更に一体化することができる。濃縮素子の所望の特性によって、UHMWPEのどちらかのタイプを他のタイプよりも少量使用するか、又は混合物から除去することもできる。
【0073】
選択された粒子を一緒にブレンドして、好ましくは均質である混合物を形成することができる。例えば、リボンブレンダーなどを使用することができる。次いで、好ましくは本質的には任意の標準の機械的な振動装置を用いて同時に振動を加えながら、得られる混合物を型キャビティ中に入れることができる。充填及び振動サイクルの終わりに、型をポリマーの焼結に充分な温度(一般に、ポリマーの分子量によって約225°F〜375°F(107℃〜約191℃)以上の範囲の温度)まで加熱することができる。
【0074】
冷却時、自己支持性焼結多孔質ポリマーマトリックスを得ることができる。マトリックスは、さまざまな直径の相互連結した、多方向の貫通細孔を含む複雑な内部構造を呈し、このようにして本発明の濃縮過程における濃縮素子として使用するための好ましい迂回経路マトリックスを含むことができる。所望ならば、濃縮素子は、例えば、1つ以上のプレフィルター(例えば、試料を多孔質マトリックスに通す前に試料から比較的大きい食物粒子を除去するための)、装置に圧力差を加えるためのマニホールド(例えば、試料を多孔質マトリックスに通すのを助けるための)、及び/又は外部ハウジング(例えば、多孔質マトリックスを収め及び/又は保護するための使い捨てカートリッジ)などの1つ以上の他の構成要素を更に含むことができる。
【0075】
試料
本発明の方法は、医療、環境、食品、飼料、臨床、及び検査室の試料、及びこれらの組み合わせを含みこれらに限定されない、さまざまなタイプの試料に適用することができる。医療又は獣医試料としては、例えば、臨床診断のために検査される生物源(例えばヒト又は動物)から得た細胞、組織、又は流体を挙げることができる。環境試料は、例えば、医療機関又は獣医機関、産業用設備、土壌、水源、食品調理領域(食品接触及び非接触領域)、検査室、又はバイオテロリズムの対象になり得る領域から得たものであり得る。食品の加工、取扱い、及び調理領域の試料は、細菌病原菌による食品供給汚染に関する懸念が特にしばしばあるためより好適である。
【0076】
液体の形態で得られる試料、又は液体中の固体の分散液又は懸濁液の形態で得られる試料は、直接使用することができ、あるいは濃縮して(例えば遠心分離により)又は希釈して(例えば緩衝(pH調整された)溶液の追加により)使用することができる。固体又は半固体の試料は、直接使用するか、あるいは例えば、所望であれば、流動体媒質(例えば緩衝液)で洗浄若しくはすすぎ、又は流動体媒質中に懸濁若しくは分散させることにより抽出することができ得る。試料は表面から(例えばスワブによる拭き取り又はすすぎにより)採取することができる。好ましくは、試料は流体の形態で使用される(例えば、液体、気体、又は液体中若しくは気体中の固体若しくは液体の分散物若しくは懸濁物)。
【0077】
本発明の方法を実施するのに使用できる試料の例としては、食品(例えば、生鮮農産物又はそのまま食べる昼食若しくは「調理された」食肉)、飲料(例えばジュース又は炭酸飲料)、飲料水、並びに生物学的流動体(例えば全血、又は血漿、血小板の豊富な血液分画、血小板濃縮物、圧縮した赤血球などの血液構成成分、細胞作製物(例えば細胞分散液、骨髄吸引物、又は脊椎骨髄)、細胞懸濁液、尿、唾液、及びその他の体液、骨髄、肺水、脳液、外傷滲出物、外傷生検試料、眼内液、脊髄液など)が挙げられ、また溶解緩衝液の使用などの手順を使用して形成することができる細胞可溶化物などの溶解調製物が挙げられる。好ましい試料としては、食品、飲料、飲料水、生物学的流動体、及びこれらの組み合わせが挙げられる(食品、飲料、飲料水、及びこれらの組み合わせが更に好ましい)。
【0078】
試料の容積は、特定の用途に応じて異なり得る。例えば、本発明の方法を診断又は研究用途に使用する場合には、試料の容積は、通常、マイクロリットルの範囲であり得る(例えば10マイクロリットル以上)。方法が食品病原体試験検査又は飲料水安全性試験のために使用される場合、試料の量は通常、ミリリットル〜リットルの範囲であり得る(例えば100ミリリットル〜3リットル)。例えばバイオ処理又は製剤処方などの産業用途においては、この量は何万リットルであることがある。
【0079】
本発明の方法は、濃縮状態の試料から微生物を分離し、更に、使用される検出手順を阻害し得る試料マトリックス構成成分から微生物を分離することができる。これら全ての場合において、本発明の方法は、他の微生物濃縮方法に追加して、又はその代わりに、使用することができる。よって、所望により、追加の濃縮が望ましい場合には、本発明の方法実施の前又は後に試料からの培養を行うことができる。このような培養増菌は一般的又は一次的(大部分又は本質的に全ての微生物の濃度を増菌)であるか、あるいは特異的又は選択的(1つ以上の選択された微生物のみの濃度を増菌)であることができる。
【0080】
接触
本発明の方法は、2つの物質の間に接触をもたらす、さまざまな既知の方法又は今後開発される方法のいずれによっても実施可能である。例えば、濃縮素子を試料に加えることができ、又は試料を濃縮素子に加えることができる。濃縮素子を試料中に浸漬することができ、試料を濃縮素子の上に注ぐことができ、試料を濃縮素子を入れた管又はウエルの中に注ぐことができ、又は好ましくは、試料を濃縮素子の上又は中に(好ましくは、中に)通すことができる(又は逆も可)。好ましくは、試料が焼結多孔質ポリマーマトリックスの少なくとも1つの細孔の中を(好ましくは、少なくとも1つの貫通細孔の中を)通るような方法で接触を行う。
【0081】
濃縮素子及び試料をさまざまな容器又はホルダー(場合によっては、キャップ付き、密閉又は密封の容器、好ましくは、カラム、注射器筒、又は本質的に試料の漏洩無しで素子を収めるように設計された他のホルダー)のいずれかの中で一体化する(任意の添加順序を用いて)ことができる。本発明の方法を実施する際の使用に好適な容器は、特定の試料によって決められ、量及び性質により大きく異なり得る。例えば、容器は10マイクロリットル容器(例えば試験管又は注射器)などの小さいものであり得、又は100ミリリットルから3リットル容器(例えば、エルレンマイヤーフラスコ又は環状円筒容器)などの大きいものであり得る。
【0082】
容器、濃縮素子、及び試料に直接接触する任意のその他の器具又は添加物を使用前に滅菌(例えば、制御された熱、エチレンオキシドガス、又は放射線によって)して、検出エラーを起こし得る試料のいかなる汚染も低減又は防止することができる。特定の試料の微生物の捕捉又は濃縮に充分な、検出を成功させる濃縮素子中の濃縮剤の量は、場合によって異なり(例えば、濃縮剤及び素子の性状及び形並びに試料の量に依存する)、当業者によって容易に決定可能である。
【0083】
接触は、所望の時間実施可能である(例えば、約100ミリリットル以下の試料容積に対しては、約60分間まで、好ましくは約15秒〜約10分又はそれ以上、より好ましくは、約15秒〜約5分、最も好ましくは約15秒〜約2分の接触が有用であり得る)。随意であるが、微生物と濃縮素子との接触を増大させるために、好まれる方法であり得る、混合(例えば、撹拌、振盪、又は試料の多孔質マトリックス内の通過を促進するための素子内で圧力差の印加)により及び/又はインキュベーション(例えば、外周温度での)により、接触を増強することができる。
【0084】
好ましくは、試料を少なくとも1回(好ましくは1回のみ)濃縮素子に通す(例えば、ポンプ送液により)ことにより、接触を行うことができる。素子内で圧力差を生じさせるための任意のタイプのポンプ(例えば、蠕動ポンプ)又は他の装置(例えば、注射器又はプランジャー)を使用することができる。1分当り約100ミリリットルまで又はそれ以上の素子を通る試料流速が有効であることができる。好ましくは、1分当り約10〜20ミリリットルの流速を使用することができる。
【0085】
好ましい接触方法としては、試料を濃縮素子に通し(例えば、ポンプ送液により)、次いで微生物含有試料(好ましくは流体)を濃縮素子(例えば、上述の容器の1つの中で)と共にインキュベーションする(例えば、約3時間〜約24時間、好ましくは約4時間〜約20時間)ことが挙げられる。望ましい場合は、1種類以上の添加剤(例えば、溶解試薬)、生物発光検定試薬、核酸捕捉試薬(例えば、磁石ビーズ)、微生物用培地、緩衝液(例えば固体試料を湿らせるための)、微生物染色試薬、洗浄用緩衝液(例えば、結合していない物質を洗い流すための)、溶出試薬(例えば血清アルブミン)、界面活性剤(例えば、Union Carbide Chemicals and Plastics(Houston,TX)から販売されているTriton(商標)X−100非イオン系界面活性剤)、機械的磨耗/溶出試薬(例えば、ガラスビーズ)が)、接触時の濃縮剤及び試薬の組み合わせの中に含まれ得る。
【0086】
本発明の方法は、所望により、得られる微生物結合の濃縮剤と試料の分離を更に含む。分離は、当該技術分野において周知の数多くの方法によって実施可能である(例えば、流体試料を注ぎ出し、デカンテーション、又は吸い上げて、この方法の実施に使用される容器又はホルダー中に微生物と結合した濃縮素子を残すことにより)。濃縮素子から捕捉された微生物(又は1つ以上のその成分)を試料の接触後単離又は分離することも可能である(例えば、溶出剤又は溶解剤を濃縮素子に通すことにより)。
【0087】
本発明の方法は、手動により(例えばバッチ単位による方法で)実施することができ、又は(例えば、連続的又は準連続的処理を実現して)自動化することができる。
【0088】
検出
さまざまな微生物は濃縮可能であるが、場合によっては好ましくは、本発明の方法を用いて検出可能である。この方法には、例えば、細菌、真菌類、酵母、原生動物、ウイルス(非エンベロープ型ウイルス及びエンベロープ型ウイルスの両方を含む)、細菌内生胞子(例えばバチルス(炭疽菌、セレウス菌、及び枯草菌を含む)及びクロストリジウム(ボツリヌス菌、クロストリジウム・ディフィシル、及びウェルシュ菌))など、並びにこれらの組み合わせが挙げられる(好ましくは、細菌、酵母、真菌類、ウイルス、細菌内生胞子、及びこれらの組み合わせであり、更に好ましくは、細菌、酵母、ウイルス、細菌内生胞子、及びこれらの組み合わせであり、最も好ましくは、グラム陰性菌、グラム陽性菌、非エンベロープ型ウイルス(例えばノロウイルス、ポリオウイルス、A型肝炎ウイルス、ライノウイルス、及びこれらの組み合わせ)、細菌内生胞子、及びこれらの組み合わせである)。この方法は、病原体の検出における有用性を有し、これは食品安全性又は医療、環境、若しくはテロ対策の理由から非常に重要であり得る。この方法は、病原菌(例えばグラム陰性菌とグラム陽性菌の両方)、並びにさまざまな酵母、カビ、及びマイコプラズマ(及びこれらの任意の組み合わせ)の検出に特に有用であり得る。
【0089】
検出される標的微生物の属には、リステリア属、大腸菌属、サルモネラ属、カンピロバクター属、クロストリジウム属、ヘリコバクター属、マイコバクテリウム属、シゲラ属、ブドウ球菌属、腸球菌属、バチルス属、ナイセリア属、シゲラ属、連鎖球菌属、ビブリオ属、エルシニア属、ボルデテラ属、ボレリア属、シュードモナス属、サッカロミケス属、カンジダ属、及び同様物、並びにこれらの組み合わせが挙げられる。試料には複数の微生物株が含まれることがあり、任意の株を、他の株と独立に検出することができる。検出の標的となり得る具体的な微生物としては、大腸菌、腸炎エルシニア菌、エルシニア仮性結核菌、コレラ菌、腸炎ビブリオ菌、ビブリオ・バルニフィカス菌、リステリア・モノサイトゲネス、黄色ブドウ球菌、サルモネラ菌、サッカロマイセス・セレヴィシエ、カンジダ・アルビカンス、ブドウ球菌エンテロトキシン亜種、セレウス菌、炭疽菌、バチルス・アトロファエウス、枯草菌、ウェルシュ菌、ボツリヌス菌、クロストリジウム・ディフィシル、エンテロバクター・サカザキ、緑膿菌など、並びにこれらの組み合わせ(好ましくは、黄色ブドウ球菌、サルモネラ菌、サッカロマイセス・セレヴィシエ、バチルス・アトロファエウス、枯草菌、大腸菌、大腸菌バクテリオファージがサロゲートであるヒト感染性非エンベロープ型腸内ウイルス、及びこれらの組み合わせ)が挙げられる。
【0090】
濃縮素子により捕捉又は結合された(例えば、吸着又は篩い分けにより)微生物は、現在知られている、又は今後開発される本質的に任意の所望の方法によって検出可能である。このような方法には、例えば、培養による方法(時間が許す場合は好ましいことがある)、顕微鏡(例えば透過光型顕微鏡又はエピ蛍光顕微鏡(蛍光染料で標識した微生物を可視化するのに使用できる))、及びその他の画像手法、免疫学的検出方法、及び遺伝子学的検出方法が挙げられる。微生物捕捉に続く検出プロセスは、場合によっては、試料マトリックス成分を除去するための洗浄、濃縮素子の焼結多孔質ポリマーマトリックスのスライス又は別法による破砕、染色などを含むことができる。
【0091】
免疫学的検出は、標的生物に由来する抗原物質の検出であり、これは一般的に、細菌又はウイルス粒子の表面にあるマーカーとして作用する生物学的分子(例えばタンパク質又はプロテオグリカン)である。抗原物質の検出は、通常、抗体によるものであることができる。抗体は、例えばファージディスプレイなどの方法によって選択されたポリペプチド、又はスクリーニング方法から得られたアプタマーである。
【0092】
免疫学的検出方法は周知であり、例えば免疫沈降及び酵素結合免疫吸着検定(ELISA)が挙げられる。抗体結合は、さまざまな方法で検出することができる(例えば、一次抗体又は二次抗体のいずれかを、蛍光染料により、量子ドットで、又は化学発光若しくは着色基質を生成できる酵素により標識し、プレートリーダー又はラテラルフロー装置のいずれかを用いる)。
【0093】
検出はまた、遺伝子学的検定法(例えば核酸のハイブリダイゼーション又はプライマーを用いた増幅)によって実行することができ、これがしばしば好ましい方法である。捕捉又は結合された微生物は溶解され、検定に利用できる遺伝子学的物質を供給する。溶解方法は周知であり、これには例えば、音波処理、浸透性ショック、高温処理(例えば約50℃〜約100℃)、及びリゾチーム、グルコラーゼ、チモラーゼ(zymolose)、リチカーゼ、プロテイナーゼK、プロテイナーゼE、及びウイルスエンドリシン(enolysins)などの酵素と共にインキュベーションすることが挙げられる。
【0094】
一般的に使用されている遺伝子学的検出検定法の多くは、DNA及び/又はRNAを含む、具体的な微生物の核酸を検出する。遺伝子学的検出方法に使用される条件の厳密性は、検出される核酸配列の変異レベルに相関する。塩濃度及び温度の条件が非常に厳しいと、標的の正確な核酸配列の検出が制限され得る。このように、標的核酸配列に小さな変異を有する微生物株は、非常に厳しい遺伝子学的検定法を使用して区別することができる。遺伝子学的検出は、核酸ハイブリダイゼーションに基づいて行われ、ここにおいて一本鎖核酸プローブが微生物の変性核酸にハイブリッド化して、プローブ鎖を含む二本鎖核酸が生成される。当業者は、ゲル電気泳動、細管式電気泳動、又はその他の分離方法の後でハイブリッドを検出するための、放射性、蛍光、及び化学発光標識などのプローブ標識について熟知するであろう。
【0095】
特に有用な遺伝子学的検出方法は、プライマーを用いた増幅に基づくものである。プライマーを用いた核酸増幅方法には、例えば、熱サイクル方法(例えばポリメラーゼ連鎖反応(PCR)、逆転写ポリメラーゼ連鎖反応(RT−PCR)、及びリガーゼ連鎖反応(LCR))、並びに等温方法及び鎖置換増幅(SDA)(及びこれらの組み合わせ、好ましくはPCR又はRT−PCR)が挙げられる。増幅された生成物を検出する方法は、例えばゲル電気泳動分離及び臭化エチジウム染色、並びに生成物中に組み込んだ蛍光標識又は放射性標識の検出が含まれ、これらに限定されない。増幅生成物の検出前に分離工程を必要としない方法(例えば、リアルタイムPCR又はホモジニアス検出法)も使用することができる。
【0096】
生物発光検出法は周知であり、例えば、記述が参考として本明細書に組み込まれる、米国特許第7,422,868号(Fanら)に記述されているものを含むアデノシン(adensosine)三リン酸(ATP)検出方法が挙げられる。他の発光に基づく検出方法も使用することができる。
【0097】
本発明の方法は株特異性ではないため、同じ試料内で、複数の微生物株を検定のための標的にすることができる、一般的な捕捉システムを提供する。例えば、食品試料の汚染について検定を行う場合、同じ試料内でリステリア・モノサイトゲネス、大腸菌、及びサルモネラの全部について試験を行うことが望ましいことがあり得る。捕捉工程を1回行い、次に例えば、これら微生物株それぞれの、異なる核酸配列を増幅するための固有プライマーを使用して、PCR又はRT−PCR検定を行うことができる。したがって、それぞれの株について別々の試料取扱い及び作製手順を行う必要性を回避することができる。
【0098】
診断キット
本発明の濃縮工程の実施において使用するための診断キットは、(a)少なくとも1つの上述の濃縮素子、及び(b)本発明の濃縮工程の実施において使用するための少なくとも1つの試験容器又は試験試薬(好ましくは無菌の試験容器又は試験試薬)を含む。好ましくは、診断キットは、方法を実施するための取り扱い説明書を更に含む。
【0099】
有用な試験容器又はホルダーとしては上述のものが挙げられ、これを例えば、接触、インキュベーション、溶出液の捕集、又は他の所望の工程段階に使用することができる。有用な試験試薬としては、微生物培養又は生長媒体、溶解剤、溶出剤、緩衝液、発光検出アッセイ構成要素(例えば、照度計、溶解剤、ルシフェラーゼ酵素、酵素基質、反応緩衝液など)、遺伝子学的検出アッセイ構成要素など、及びこれらの組み合わせが挙げられる。好ましい溶解試薬は、緩衝液中に供給された溶解酵素又は薬品であり、好ましい遺伝子学的検出検定構成要素としては、標的微生物に固有の1つ以上のプライマーが挙げられる。キットは、場合によっては、無菌のピンセットなどを更に含むことができる。
【実施例】
【0100】
本発明の目的及び利点は、以下の実施例によって更に例示されるが、これらの実施例において列挙された特定の材料及びその量は、他の諸条件及び詳細と同様に本発明を過度に制限するものと解釈されるべきではない。微生物培養物をThe American Type Culture Collection(ATCC;Manassas,VA)から購入した。
【0101】
濃縮剤の作製
Alfa Aesar(A Johnson Matthey Company,Ward Hill,MA)から、白色粉末のキーゼルグール(珪藻土)(325メッシュ;粒径が全て44マイクロメートル未満)を購入した。この材料はX線回折(XRD)によって、α−クリストバライト及び石英と共に非晶質シリカを含むことが示された。焼成珪藻土をSolvadis,GmbH(Frankfurt,Germany)から購入した(これは、第一長さが最高約60マイクロメートルの多孔質ディスク状及びディスク破片、第一長さが約3〜約8マイクロメートルの非対称断片と共に、長さ約5〜約80マイクロメートル、幅約3〜約60マイクロメートルの小さなロッドを含んでいることが観察された)。この材料は、主にα−クリストバライトを含んでいることがXRDによって示された。
【0102】
下記に述べる方法で珪藻土を表面処理することによってさまざまな異なる表面改質剤(すなわち、二酸化チタン、酸化第二鉄と組み合わせた二酸化チタン、酸化第二鉄、白金、金、及び酸化第二鉄と組み合わせた金)を含む濃縮剤を作製した。
【0103】
金の堆積
約57〜60gの乾燥した珪藻土又は金属酸化物で改質した珪藻土の担持媒体(容積約300mLの粉末)を、オーブン中150℃で24時間更に乾燥して、残存水を除去した。得られる乾燥した試料を、熱いうちに、ブレード隙間が2.7mmの粒子撹拌機を有する、本明細書で詳述されているPVD装置に入れた。次いで、この装置の真空槽を、約5×10−5Torr(0.0067Pa)の背景圧力まで排気し、アルゴンスパッタリングガスを含む気体をこの真空槽内に約10mTorr(1.3Pa)の圧力で導入した。
【0104】
次いで、0.02kWの制御された電力で、金属のDCマグネトロンスパッタコーティングの間粒子撹拌機シャフト及び穴あきブレードを4rpmで回転させながら、装置のカソードに電力を所定の時間印加することにより、金属堆積方法を行った。スパッタコーティングの時間は5時間であった。スパッタコーティングの完了後、真空槽を周囲環境と通気させ、得られろ金属コーティングされた試料をPVD装置から取り出し、25メッシュ(0.707mm)スクリーンのふるいにかけて、工程時中に生じた微細粒子を除去した。試料上に堆積した金属の量を、使用した金属スパッタリングのターゲットを秤量(堆積工程の前後)することにより決定した。一般に、ターゲットの重量損失の約18パーセントが、試料に堆積した金属の量を表す(誘導結合プラズマ分析に基づく)。この情報から、得られた支持媒体上の金の量は、約0.9重量パーセントと計算された。
【0105】
白金の堆積
使用した7.62cm(3インチ)の金ターゲットを7.62cm(3インチ)の白金ターゲットで置き換え、電力を0.03kWに設定し、蒸着時間を1時間としたことを除いて、上述の金堆積プロセスを本質的に繰り返した。得られる支持媒体上の白金の量は、約0.25重量パーセントと計算された。
【0106】
二酸化チタンの堆積
20.0gのTiO(SO2HO(Noah Technologies Corporation(San Antonio,TX))を80.0gの脱イオン水に撹拌しながら溶解させることにより、20重量パーセントのオキシ硫酸チタン(IV)二水和物溶液を作製した。50.0gのこの溶液を脱イオン水175mLと混合し、二酸化チタン前駆体化合物溶液を形成した。50.0gの珪藻土を大きなビーカー中で急速に撹拌しながら500mLの脱イオン水に分散させることにより、珪藻土の分散液を作製した。この珪藻土分散液を約80℃に加熱した後、急速に撹拌しながら二酸化チタン前駆体化合物溶液を約1時間かけて滴加した。添加後、ビーカーを時計皿で覆い、内容物を加熱して20分間沸騰させた。水酸化アンモニウム溶液をビーカーに加え、内容物のpHを約9にした。洗浄水のpHが中性になるまで沈降/デカンテーションにより、得られた生成物を洗浄した。生成物を濾過によって分離し、100℃で一晩乾燥させた。
【0107】
乾燥生成物の一部を磁器るつぼに入れ、毎分約3℃の加熱速度で室温から350℃まで加熱することによって焼成し、350℃で1時間保持した。
【0108】
酸化鉄の堆積
175mLの脱イオン水に溶解した20.0gのFe(NO9HO(J.T.Baker,Inc.(Phillipsburg,N.J.))を硫酸チタニル溶液に置き換えたことを除いて、本質的に上記の二酸化チタン堆積法を用いて、酸化鉄を珪藻土の上に堆積させた。更なる試験のために、得られる酸化鉄改質珪藻土の一部を同様に350℃で焼成した。
【0109】
酸化鉄及び二酸化チタンの堆積
175mLの脱イオン水に溶解させた、10.0gのFe(NO9HO(J.T.Baker,Inc.(Phillipsburg,N.J.))と25.0gのTiO(SO2HO(Noah Technologies Corporation(San Antonio,TX))の溶液を硫酸チタニル溶液に置き換えたことを除き、本質的に上述の二酸化チタン堆積法を用いることで、酸化鉄と二酸化チタンの混合物を珪藻土上に堆積させた。更なる試験のため、得られた酸化鉄及び二酸化チタン改質珪藻土の一部を350℃まで同様に焼成した。
【0110】
濃縮剤のスクリーニング:微生物濃縮試験方法
単離した微生物コロニーを、5mLのBBL(商標)Trypticase(商標)大豆ブロス(Becton Dickinson(Sparks,MD))に植菌し、37℃で18〜20時間インキュベーションした。1mL当り約10コロニー形成単位のこの一夜培養物を、pH 7.2の吸着緩衝液(5mMのKCl、1mMのCaCl、0.1mMのMgCl、及び1mMのKHPOを含有する)中で希釈して、1mL希釈液当り10の微生物を得た。体積1.1mLの微生物希釈液を、10mgの濃縮剤が入った、分離、ラベル付け、滅菌済みの5mLのポリプロピレン試験管(BD Falcon(商標)(Becton Dickinson(Franklin Lakes,NJ)))に加え、それぞれにキャップをして、Thermolyne Maximix Plus(商標)渦流ミキサー(Barnstead International(Iowa))上で混合した。それぞれのキャップした管を、Thermolyne Vari MiX(商標)シェーカープラットフォーム(Barnstead International,Iowa)上室温(25℃)で15分間インキュベーションした。インキュベーション後、それぞれの管をラボラトリーベンチ上で10分間静置して、濃縮剤を沈降させた。1.1mLの微生物希釈液を濃縮剤無添加で含有する対照試料管を、同様の方法で処理した。次いで、得られる沈降濃縮剤及び/又は上澄み液(及び対照試料)を分析に使用した。
【0111】
沈降した濃縮剤を、1mLの滅菌バターフィールド緩衝液(pH 7.2±0.2、リン酸一カリウム緩衝液、VWRカタログ番号83008−093、VWR(West Chester,PA))に再び懸濁させ、3M(商標)Petrifilm(商標)Aerobic Count Plates培地(乾燥、脱水可能、3M Company(St.Paul.MN))上でメーカーの使用説明書に従って播種した。3M(商標)Petrifilm(商標)プレートリーダー(3M Company(St.Paul.,MN))を使用して、好気性菌計数を定量した。次式を使用して結果を算出した。
【数1】


(式中、CFU=コロニー形成単位であり、これは生存している又は生存可能な微生物の単位である)。
【0112】
次いで、下記の式を用いて濃縮剤による微生物のパーセント捕捉率として結果を報告した。
捕捉効率又はパーセント捕捉率=再懸濁濃縮剤中のCFU/mLのパーセント
【0113】
濃縮剤
比較の目的で、少なくともいくつかの場合において、1mLの上澄み液を取り出し、非希釈で播種するか、又は1:10でバターフィールド緩衝液で希釈し、3M(商標)Petrifilm(商標)Aerobic Count Plates培地上で播種した。3M(商標)Petrifilm(商標)Plate Reader(3M Company(St.Paul.,MN)を使用して、好気性菌計数を定量した。次式を使用して結果を計算した。
【数2】


(式中、CFU=コロニー形成単位であり、これは生存しているか又は生存可能な微生物の単位である)。
【0114】
微生物のコロニーと濃縮剤の色が類似している(プレートリーダーに対して殆どコントラストをもたらさない)場合には、結果は上澄み液を基準とし、下記の式を用いて濃縮剤による微生物のパーセント捕捉率により報告された。
捕捉効率又はパーセント捕捉率=100−上澄み液中のCFU/mLパーセンテージ
【0115】
濃縮剤スクリーニング1〜12及び比較用スクリーニング1及び2
上述の微生物濃縮試験方法を使用して、さまざまな異なる表面処理された珪藻土又は表面処理された焼成珪藻土の10mgの濃縮剤(上述に従って作製)、及び10mgの非処理の珪藻土(以下DEと記載)を、標的微生物であるグラム陰性の菌サルモネラ菌亜種ネズミチフス菌(Salmonella enterica subsp enterica serovar Typhimurium)(ATCC 35987)及びグラム陽性の菌黄色ブドウ球菌(Staphylococcus aureus)(ATCC 6538)の細菌濃縮について、別々に試験した。結果を下記の表1に示す。
【0116】
【表1】

【0117】
濃縮剤スクリーニング14〜19及び比較用スクリーニング3
上述の微生物濃縮試験方法を使用して、さまざまな異なる表面処理された珪藻土又は表面処理された焼成珪藻土の10mgの濃縮剤(上述に従って作製)、及び10mgの非処理の珪藻土(以下DEと記載)を、標的微生物であるSaccharomyces cerevisiae(10CFU/mL、ATCC 201390)の酵母濃縮について、別々に試験した。得られる材料を3M(商標)Petrifilm(商標)Yeast and Mold Count Plate培地(乾燥、再水和可能、3M Company,St.Paul.MN)上で培養し、メーカーの使用説明書に従い5日間インキュベーションした。単離された酵母コロニーを手動で数え、パーセント捕捉率を上述のように計算した。結果を下記の表2に示す(全ての試料に対する標準偏差は10パーセント未満)。
【0118】
【表2】

【0119】
濃縮剤スクリーニング20〜22及び比較用スクリーニング4〜6
食品試料を地元の食料品店(Cub Foods,St.Paul)から購入した。スライスハム、レタス、及びアップルジュースの試料(11g)を滅菌されたガラス皿内で計量し、滅菌されたStomacher(商標)ポリエチレンフィルター袋(Seward Corp(Norfolk,UK))に加えた。サルモネラ菌亜種ネズミチフス菌(ATCC 35987)の18〜20時間の一晩培養物(ストック)を用いて、食品試料に濃度10CFU/mLで菌を加えた。この後に、99mLのバターフィールド緩衝液を、菌を添加した試料に加えた。得られる試料をStomacher(商標)400サーキュレーター(Circulator)実験用ブレンダー(Seward Corp.(Norfolk,UK))で2分間サイクルでブレンドした。ブレンドした試料を滅菌された50mLの円錐形ポリプロピレン製遠心管(BD Falcon(商標)(Becton Dickinson(Franklin Lakes,NJ))に捕集し、毎分2000回転(rpm)で5分間遠心分離(Eppendorf(商標)遠心分離機、5804(Westbury,NY))にかけて、大きな破片を除去した。得られる上澄み液を更なる試験に試料として使用した。
【0120】
上述の細菌濃縮試験方法を用い、上記のように作製した、それぞれの1mLの試験試料を、10mgの表面処理された珪藻土を含んだ試験管、及び10mgの非処理の珪藻土を含んだ対照用試験管に別々に加え、標的微生物であるサルモネラ菌亜種ネズミチフス菌(ATCC 35987)の細菌濃縮について試験した。レタスの試験については、試料を滅菌された100×20組織培養ペトリ皿(Sarstedt(Newton,NC))に入れ、AlphaImager(商標)MultiImage(商標)ライトキャビネット(Alpha Innotech Corporation(San Leandro,CA))中紫外線(UV)光下で1時間インキュベーションし、背景微生物叢を除去した。このようなUV処理試料は、常在微生物叢が存在しないことに対して担保され(本質的に上述のように1mL試料を播種し、計数することにより)、次いで濃縮実験に使用された。結果を下記の表3に示す(全ての試料に対する標準偏差は10パーセント未満)。
【0121】
【表3】

【0122】
濃縮剤スクリーニング23〜24及び比較用スクリーニング7〜8
七面鳥肉試料(25gのスライスした七面鳥肉及び225mLバターフィールド緩衝液を使用)での上記の実施例20〜22及び比較例4〜6の手順に従い、表面処理された珪藻土及び非処理珪藻土を、大量の試料(30mL試料体積当たり濃縮剤300mg)からの標的微生物サルモネラ菌亜種ネズミチフス菌(ATCC 35987)の濃縮について別々に試験した。また、水飲み場の飲料水(100mL)にも試験を行った。これは滅菌された250mLガラス瓶(VWR、ペンシルバニア州ウェストチェスター)に採取し、標的微生物のサルモネラ菌亜種ネズミチフス菌(ATCC 35987)を10CFU/mLで接種した。結果として得られた植菌された水を、手で5回転倒混和し、室温(25℃)で15分間インキュベーションした。
【0123】
上記のように作製した30mLの試料を、300mgの濃縮剤が入った滅菌された50mLの円錐形ポリプロピレン製遠心管(BD Falcon(商標)(Becton Dickinson,Franklin Lakes,NJ))に加え、上述の微生物濃縮試験方法を使用することにより試験した。得られた沈降した濃縮剤を、30mLの滅菌されたバターフィールド緩衝液中に再懸濁させ、3M(商標)Petrifilm(商標)Aerobic Count Plates培地上に播種した。結果を下の表4に示す(全試料の標準偏差は10パーセント未満)。
【0124】
【表4】

【0125】
濃縮剤スクリーニング25〜34
さまざまな異なる表面処理された珪藻土の濃縮剤の10mgの試料(上述に従って作製)を、標的細菌内生胞子であるBacillus atrophaeus(ATCC 9372)、Bacillus subtilis(ATCC 19659)の濃縮について、別々に試験した。次の変更を加えて上述の微生物濃縮試験方法を使用した:一晩の培養物が、1.4×10CFU/mLのBacillus atrophaeus及び6×10CFU/mLのBacillus subtilisをそれぞれ有し、得られる上澄み液を非希釈で播種し、結合した微生物を伴い沈降した濃縮剤を5mLの滅菌されたバターフィールド緩衝液に再懸濁させ、2つ同じものに分けて培養した(各1mL)。捕捉効率を、培養した上澄み液からの計数に基づいて計算し、その結果を下記の表5に示す(全試料に対する標準偏差は10パーセント未満)。
【0126】
【表5】

【0127】
濃縮剤スクリーニング35〜38
2種類の異なる表面処理珪藻土濃縮剤(すなわち、Pt−DE及びAu−Fe−DE)を、標的の非エンベロープ型細菌感染性ウイルスである大腸菌バクテリオファージMS2(さまざまのヒト感染性の非エンベロープ型腸管系ウイルスの代用としてしばしば用いられるATCC 15597−B1)の濃縮について、別々に試験した。二層寒天法(下記に記述)を使用して、大腸菌細菌(ATCC 15597)をホストとして使用し、大腸菌バクテリオファージMS2(ATCC 15597−B1)の捕捉に対して検定した。
【0128】
大腸菌バクテリオファージMS2ストックを、pH 7.2の滅菌された1X吸着緩衝液(5mMのKCl、1mMのCaCl、0.1mMのMgCl、及び1mMのKHPOを含む)中で10倍段階希釈し、1ミリリットル当たり10及び10プラーク形成単位(PFU/mL)の2つの希釈物を得た。得られる容積1.0mLのバクテリオファージ希釈液を、10mgの濃縮剤が入った、ラベル付けされ、滅菌された5mLのポリプロピレン試験管(BD Falcon(商標)、Becton Dickinson(Franklin Lakes,NJ))に加え、Thermolyne MaXimix Plus(商標)渦流ミキサー(Barnstead International,Iowa)上で混合した。キャップをした試験管を、Thermolyne VariMiX(商標)振盪器プラットフォーム(Barnstead International,Iowa)上室温(25℃)で15分間インキュベーションした。インキュベーション後、試験管を10分間実験台の上に静置し、濃縮剤を沈降させた。濃縮剤を含まない1.0mLのバクテリオファージ希釈液が入った対照試料試験管を、同じように処理した。インキュベーション後、試験管を10分間実験台の上に静置し、濃縮剤を沈殿させた。
【0129】
濃縮剤を含まない1.0mLのバクテリオファージ希釈液が入った対照試料試験管を、同じように処理した。追加の800マイクロリットルの上澄み液を取り除き、廃棄した。100マイクロリットルの沈降した濃縮剤も、バクテリオファージの検定を行った。
【0130】
二重層寒天法:
大腸菌細菌(ATCC 15597)の単一コロニーを、25mLの滅菌された3重量パーセントのトリプシン大豆ブロス(Bacto(商標)Tryptic大豆ブロス(Becton Dickinson and Company(Sparks,MD))、メーカーの使用説明書に従って作製)に播種し、振盪インキュベーター(Innova(商標)44、New Brunswick ScientificCo.,Inc.(Edison,NJ))を毎分250回振動(rpm)に設定して一晩、37℃でインキュベーションした。750マイクロリットルのこの一晩培養物を使用して、75mLの滅菌された3重量パーセントのトリプシン大豆ブロスに接種した。得られる培養物37℃を250rpmに設定した振盪インキュベーターで37℃でインキュベーションし、SpectraMax M5分光光度計(Molecular Devices(Sunnyvale,CA))を使用して550nmの吸光度(吸光度値0.3〜0.6)で測定された対数期における大腸菌細胞を得た。分析に使用するまで細胞を氷上でインキュベーションした。
【0131】
100マイクロリットルの上述バクテリオファージ試験試料を、氷上でインキュベーションした大腸菌(ホスト細菌)細胞75マイクロリットルと混合し、室温(25℃)で5分間インキュベーションした。得られる試料を、5mLの滅菌された、溶融した頂部寒天(3重量パーセントのトリプシン大豆ブロス、1.5重量パーセントのNaCl、0.6重量パーセントの寒天で、当日に作製し、48℃水浴中に保管したもの)と混合した。次に、この混合物をペトリ皿内の底部寒天(3質量パーセントのトリプシン大豆ブロス、1.5質量パーセントのNaCl、1.2質量パーセントの寒天)の上に注いだ。混合物の溶融寒天を5分間固まらせてから、ペトリ皿又はプレートを逆さにし、37℃でインキュベーションした。一晩インキュベーションの後、プレートを目視で点検し、これらの沈殿濃縮剤を含むプレートは、(対照プレートと共に)、バクテリオファージプラークの存在を示した。捕捉効率は、培養した上澄み液からの計数に基づいて計算され、Pt−DEについては96パーセント及び97パーセント(それぞれ、10及び10PFU/mL希釈について)であり、Au−Fe−DEについては94パーセント及び95パーセント(それぞれ、10及び10PFU/mL希釈について)であった(標準偏差は10パーセント未満)。
【0132】
濃縮剤スクリーニング39〜41
アップルジュースを地元の食料品店(Cub Foods,St.Paul)から購入した。アップルジュース(11g)を滅菌したガラス皿内で計量し、99mLの滅菌したバターフィールド緩衝液を加えた。加えた液を1分間渦流で混合し、サルモネラ菌亜種ネズミチフス菌(ATCC 35987)及び大腸菌(ATCC 51813)の18〜20時間の一晩培養物(細菌ストック)を用いて、た。これに2つの細菌培養物をそれぞれ1CFU/mLの濃度で添加した。細菌ストックの段階希釈物を上述の1X吸着緩衝液中で作製した。
【0133】
上述の微生物濃縮試験方法を使用して、微生物を添加した10mLのアップルジュース試料を、100mgの表面処理した珪藻土濃縮剤(すなわち、Fe−DE、TiO−DE又はAu−Fe−DE)が入った滅菌された50mLの円錐形ポリプロピレン製遠心管(BD Falcon(商標)、Becton Dickinson(Franklin Lakes,NJ))に加え、15分間インキュベーションして、標的微生物であるサルモネラの細菌捕捉/濃縮(競合微生物である大腸菌の存在下における)について試験を行った。得られる上澄み液を取り出し、沈降した濃縮剤を、2mLの滅菌された3重量パーセントのトリプシン大豆ブロス(Bacto(商標)Tryptic Soy Broth,Becton Dickinson and Company(Sparks,MD);メーカーの使用説明書に従い作製)が入った別の50mLの遠心管に移した。この管にゆるくキャップをし、内容物を混合して、37℃でインキュベーションした。一晩インキュベーションした後、得られるブロス混合物を、SDI(Strategic Diagnostics,Inc.(Newark,DE))から販売されているRapidChek(商標)サルモネラ・ラテラルフロー・イムノアッセイ試験細片を用いて、サルモネラの存在について試験した。試験細片の目視検査は、これがサルモネラに対して陽性であることを示した。
【0134】
この微生物を含む混合物について、ポリメラーゼ連鎖反応(PCR)による核酸検出も実施した。上述の一晩インキュベーションした1mLの濃縮剤含有ブロスを、試験試料として、Applied Biosystems(Foster City,CA)から販売されているTaqMan(商標)ABIサルモネラ菌検出キットを用いて、サルモネラの存在について検定した。対照試料として、サルモネラ菌亜種ネズミチフス菌(ATCC 35987)の18〜20時間一晩培養物(ストック)1mLも検定した。Stratagene Mx3005P(商標)QPCR(定量PCR)システム(Stratagene Corporation,La Jolla,CA)で、45サイクルに対して25℃で30秒間、95℃で10分間、95℃で15秒間、及び60℃の1サイクル当たりのサイクル条件を用いて、PCR試験を実施した。対照試料について、17.71の平均(n=2)サイクル閾値(CT値)を得た。Fe−DE、TiO−DE又はAu−Fe−DEを含む試験試料について、それぞれ18.95、20.44及び16.53の平均(n=2)CT値を得、PCR反応陽性が示され、サルモネラの存在が確認された。
【0135】
濃縮素子の作製
2つの異なる超高分子量ポリエチレン(UHMWPE)粉末を、Ticona(本部をFrankfurt,Germanyに置くCelaneseの一部門)からPMX1(製品番号GUR(商標)2126、不規則形状、50〜100マイクロメートルのサイズ範囲)及びPMX2(製品番号GUR(商標)4150−3,球状で約40マイクロメートルのメディアン粒子サイズ)として入手した。この粉末をPMX1:PMX2の4:1の比で一体化した。得られる組み合わせ物(これ以降、UHMWPE混合物)を使用して、3つのタイプの濃縮素子を作製した。
【0136】
濃縮素子タイプAに対しては、酸化第二鉄を含む40重量パーセントの濃縮剤(本質的に上記のように作製、Fe−DEと表示)と60重量パーセントのUHMWPE混合物との混合物を一体化した。濃縮素子タイプBに対しては、40重量パーセントの二酸化チタンを含む濃縮剤(本質的に上記のように作製、TiO−DEと表示)と60重量パーセントのUHMWPE混合物との混合物を一体化した。濃縮素子タイプC(対照)に対しては、UHMWPE混合物を濃縮剤無添加で使用した。それぞれの濃縮素子に対しては、選択された構成成分を1リットルの円筒容器又はジャーの中に秤りこんだ。次いで、ジャーを低速度(1分当り約10〜15回転(rpm))で回転するローラーミルの上に少なくとも2時間置いて、均質のブレンド又はフロックを製造した。
【0137】
次いで、フロックの一部(約6g)を使用して、5mmの深さを有し、フロックの固着を防止し、型面からの伝熱を遅延させるために、ポリテトラフルオロエチレンを含浸したガラス繊維の0.05mm(2mil)厚の円板を底部及び蓋に配置した、50mm直径の円筒型を充填した。フロックを型の中に圧縮し、次いで型を閉じるための位置に型の蓋を押し込んだ。
【0138】
充填した型を渦流ミキサー(IKA(商標)MS3 Digital Vortexer、VWR Scientific(West Chester,PA)から入手可能)の上に10秒間置いて、内容物中のボイド及びクラックを取り除いた。次いで、型を180〜185℃に設定した通気した対流オーブン(Thelco Precision Model 6555、Thermo Fisher Scientific,Inc.(Waltham,MAから入手可能))中に1時間置いて、フロックを焼結した。室温(約23℃)まで冷却した後、得られた焼結フロックを型から取り出し、パンチングダイを使用して、濃縮素子として使用するための47mmの直径にトリミングした。
【0139】
実施例1〜2及び比較例C−1〜C−4
食品試料(殺菌したオレンジジュース(パルプを含まない)、スライスしたハムランチョンミート、及びスライスしたチキンランチョンミート)を地方の食料品店(Cub Foods,St Paul,MN)から購入した。25mLのオレンジジュース及び25グラムのそれぞれのスライスしたミートを、滅菌したStomacher(商標)ポリエチレンフィルター袋(PE−LD Model 400,Seward Corp(Norfolk,UK))に別々に秤り込んだ。得られた試料に、一夜トリプシン大豆ブロス培養物(見出し「濃縮剤スクリーニング:微生物濃縮試験方法」の下でBacto(商標)トリプシン大豆ブロス(Becton Dickinson(Sparks,MD))を使用することを除いて、本質的に上述のように作製された)からのサルモネラ菌亜種ネズミチフス菌細菌(ATCC 35987)及び大腸菌細菌(ATCC 51813)を約1CFU/mL濃度で植菌した。
【0140】
植菌した試料を室温(約23℃)で約10分間インキュベーションした後、225mLの滅菌したバターフィールド緩衝液(pH 7.2、VWR(West Chester,PA))をそれぞれの植菌した試料に添加して、下記の表6に示す近似的な全試料微生物濃度を提供することにより、試験試料を作製した。得られるオレンジジュースベースの試料(それぞれ約250mLの全容積を有する)を渦流により混合し、次いで試験に使用する。得られるランチョンミートベースの試料(それぞれ約250mLの全容積を有する)を、2分サイクルでStomacher(商標)400回転式実験室ブレンダー(Seward Corp.(Norfolk,UK))中1分当り230回転(rpm)でブレンドし、次いで滅菌した100マイクロメートルのメッシュフィルター(Cell Strainer,BD,San Jose,CA)により試験前に処理した。
【0141】
濃縮素子用にカスタムメイドの試料ホルダー(ホルダーは、47mm直径の濃縮素子用のフリクションフィットをもたらすように機械加工されたプラスチック管付きの上下の流れ分配板からなり、Oリングを使用して、上流及び下流側での漏洩を防止し;通しボルトは閉止圧力を提供した)、蠕動ポンプ(Heidolph(商標)Pump Drive 5201蠕動ポンプ、VWR Scientific(West Chester,PA)から入手可能)、及び3.1mm内径の配管を用いて、試料を、選択された濃縮素子から10mL/分の流速で25分間ポンプ送液した。デジタル圧力センサー(SSI Technologies Model MGI−30−A−9V,Cole−Parmer(VernonHills,Illinois))を試料ホルダーの上流に配置して、圧力低下をモニターした。
【0142】
濃縮素子は、本質的に上述のように作製した、タイプA(Fe−DE)及びC(濃縮剤無し)の素子、並びに比較用の市販のアブソルートミクロンフィルター(Pall Corporation(East Hills,NY)からの0.8マイクロメートルのポリエーテルスルホン及び0.45マイクロメートルのナイロンフィルター膜)を含むものであった。微生物を植菌しない(及び濃縮素子に通さない)、対応する食品試料を、3M(商標)Petrifilm(商標)Aerobic Count Plates(3M Company(St.Paul,MN))の上に非希釈で播種した。播種した試料を37℃で18〜20時間インキュベーションし、翌日に対照として定量(メーカーの取り扱い説明書に従って)したところ、微生物の存在に対して陰性であることが判明した。
【0143】
ポンプ送液後、濃縮素子を、滅菌したピンセットを用いてホルダーから取り外し、25mLの滅菌したBacto(商標)Tryptic大豆ブロス(Becton Dickinson(Sparks,MD))を入れた滅菌したStomacher(商標)ポリエチレンフィルター袋(PE−LD Model 400,Seward Corp(Norfolk,UK))中で一夜インキュベーションした。袋をゴムバンドで閉じ、37℃の振盪インキュベーター(VWR Signature(商標)Benchtop Shaking Incubator Model 1575R、VWR Scientific(West Chester,PA))中75rpmで18〜20時間インキュベーションした。一夜インキュベーション後、市販のイムノアッセイ(例えば、3M(商標)TECRA(商標)Unique Salmonella immunoassay、3M Company(St.Paul,MN)から入手可能、又はRapidChek(商標)サルモネララテラルフローイムノアッセイ試験細片、Strategic Diagnostics,Inc.(SDI)(Newark,DE)から入手可能)を使用することにより、得られる培養物をサルモネラの存在について試験した。結果を下表6に示す。本発明の濃縮素子は、一般に、目詰まりする前に市販のアブソルートミクロンフィルターよりもやや大きい容積の粒子含有試料を処理する能力がある。
【0144】
【表6】

【0145】
(実施例3)
殺菌したアップルジュースを地方の食料品店(Cub Foods,St.Paul,MN)から購入した。25mLのアップルジュースに225mLの滅菌したバターフィールド緩衝液(pH 7.2、VWR,West Chester,PA)と混合し、サルモネラ菌亜種ネズミチフス菌細菌(ATCC 35987)を約100CFU/mLの濃度で植菌した。得られる試料を室温(約23℃)で10分間インキュベーションし、次いでタイプB(TiO−DE)濃縮素子(本質的に上述のように作製される)に10mL/分の流速で25分間ポンプ送液(本質的に上述のように)した。貫流試料区分(1mL)を、ラベルした滅菌した5mLのポリプロピレン管(BD Falcon(商標)、Becton Dickinson(Franklin Lakes,NJ)中に5分毎に25分間捕集し、メーカーの取り扱い説明書に従って3M(商標)Petrifilm(商標)Aerobic CountPlates培養媒体(乾燥、再水和型、3M Company(St.Paul,MN))の上に播種した。
【0146】
試料を濃縮素子に通した後、素子を、100mLの滅菌した3重量パーセントのトリプシン大豆ブロス(メーカーの取り扱い説明書に従って、作製したBacto(商標)Tryptic大豆ブロス(Becton Dickinson and Company(Sparks,MD))を入れた滅菌したStomacher(商標)ポリエチレンフィルター袋(PE−LD Model 400,Seward Corp(Norfolk,UK))の中に配置した(本質的に上述の滅菌したピンセットを用いて)。袋をゆるく結び、37℃で18〜20時間インキュベーションした。6時間のインキュベーションの後、100マイクロリットルを袋から取り出し、希釈せずに3M(商標)Petrifilm(商標)Aerobic Count Plates(3M Company(St.Paul.,MN))上に播種し、37℃で18〜20時間インキュベーションし(貫流試料プレートと共に)、メーカーの取り扱い説明書に従って翌日定量した。
【0147】
下式(式中、CFU=生存している又は生存可能な微生物の単位である、コロニー形成単位)を使用することにより、捕捉効率を貫流試料区分から得られる計数値に基づいて計算した。
【数3】


捕捉効率又はパーセント捕捉=区分中の100−パーセントCFU
【0148】
99パーセント超の捕捉効率を得た。6時間の時点の試料を含むプレート(6時間の濃縮素子のインキュベーションから得られる)を分析したところ、それが計数できないほど多いコロニーを含み、捕捉された細菌が生存可能であることを示すことが判明した。
【0149】
濃縮素子を含む一夜培養されたブロスを、バターフィールド緩衝液中で希釈し、3M(商標)Petrifilm(商標)Aerobic Count Plates(3M Company(St.Paul.,MN))の上に播種し、37℃で18〜20時間インキュベーションし、翌日定量した。プレート計数値は、濃縮素子中の捕捉されたサルモネラの数が約2.7×10CFU/mLの濃度まで増加したことを示した。
【0150】
(実施例4)
サルモネラ菌亜種ネズミチフス菌細菌(ATCC 35987)の単離された細菌コロニーを5mLのBBL(商標)Trypticase(商標)大豆ブロス(BectonDickinson(Sparks,MD))の中に植菌し、37℃で18〜20時間インキュベーションした。約1×10CFU/mLの濃度のこの一夜培養物をバターフィールド緩衝液(pH 7.2±0.2;一塩基性リン酸カリウム緩衝液溶液;VWRカタログ番号83008−093、VWR(West Chester,PA))中で希釈して、ほぼ1×10CFU/mL植菌材料を得た。
【0151】
容積250mLの飲料水(飲用泉からの)にほぼ1×10CFU/mL植菌材料の1:100希釈液を植菌して、約16CFU/mLの濃度を有する試料を得た(250mL試料中合計約4000CFU)。試料をタイプA(Fe−DE)濃縮素子(本質的に上述のように作製した)に10mL/分の流速で25分間ポンプ送液した(本質的に上述のように)。貫流試料区分(1mL)を捕集し、本質的に上述のように播種した。
【0152】
試料を濃縮素子に通した後、濃縮素子を、500微生物/mLのBSA(ウシ血清アルブミン、水中1mg/mLのストック、Sigma Chemicals(St Louis,MO)から購入した粉末)を含む、フィルターで滅菌した20mLのバターフィールド緩衝液により「フラッシュ」して、流れ(5mL/min)を反転することにより細菌を溶出させた。得られる溶出液を滅菌した50mLのポリプロピレン管中に捕集し、本質的に上述のように播種した。
【0153】
濃縮素子を取り出し、袋に入れ、一夜インキュベーションし(播種した貫流試料区分及び播種した溶出液と一緒に)、インキュベーションしたプレートを本質的に上述のように翌日定量した。4.5時間のインキュベーションの後、100マイクロリットル試料を濃縮素子を入れた袋から取り出し、試料を900マイクロリットルのバターフィールド緩衝液中に希釈し、得られた合計1mL容積を本質的に上述のように播種した。
【0154】
捕捉効率を、播種した貫流試料区分から得られる計数値に基づいて計算し(本質的に上述のように)、99パーセント超の捕捉効率を得た。溶出(流れを反転することにより)によって捕捉された植菌材料のほぼ17パーセント(680/4000CFU)が放出された。4.5時間の時点の試料(4.5時間の濃縮素子のインキュベーションで得られる)を含むプレートを分析したところ、平均約1300CFU/mLを含有し、捕捉された細菌が生存可能であることが判明した。
【0155】
SDI(Strategic Diagnostics Inc.(Newark,DE))からのSDI RapidChek(登録商標)サルモネララテラルフローイムノアッセイ細片を用いて、濃縮素子を入れた一夜培養したブロスをサルモネラの存在について試験した。濃縮素子を入れた一夜培養したブロスを希釈、播種し、プレートを一夜インキュベーションし、本質的に上述のように翌日定量した。得られたプレート計数値は、濃縮素子中の捕捉されたサルモネラ数が約2.5×10CFU/mLの濃度まで増加したことを示した。
【0156】
比較例C−5
タイプA(Fe−DE)濃縮素子の代わりにタイプC(対照)濃縮素子(濃縮剤無し)を使用し、約13CFU/mLを有する植菌した飲料水試料(ほぼ250mLの試料中で合計約3300CFU)を使用して、実施例4の手順を本質的に繰り返した。99パーセント超の捕捉効率を得、溶出(流れを反転することにより)によって捕捉された植菌材料のほぼ2.4パーセント(80/3300CFU)が放出された(上記の実施例4の溶出パーセントよりも殆ど1桁少ない)。この溶出結果は、本発明の濃縮素子が捕捉された微生物を単離又は分離して、更なる分析を容易にする点で、比較の素子を超える利点をもたらすことができるということを示唆する。
【0157】
(実施例5)
大腸菌(ATCC 51813)の単離された細菌コロニーを5mLのBBL(商標)Trypticase(商標)大豆ブロス(Becton Dickinson(Sparks,MD))の中に植菌し、37℃で18〜20時間インキュベーションした。約1×10CFU/mLの濃度のこの一夜培養物をバターフィールド緩衝液(pH 7.2±0.2;一塩基性リン酸カリウム緩衝液溶液;VWRカタログ番号83008−093、VWR(WestChester,PA))中で希釈して、ほぼ1×10CFU/mL植菌材料を得た。
【0158】
容積9.6リットルの脱イオン水(18megaohm、Milli−Q(商標)Biocel水精製システム、Millipore,MA)に、ほぼ1×10CFU/mL植菌材料の1:100希釈液を加えて、約140CFU/mLの濃度を有する試料を得た(試料中合計約1.3×10CFU)。試料をタイプA(Fe−DE)の濃縮素子(本質的に上述のように作製した)から20mL/分の流速で約8時間ポンプ送液した(本質的に上述のように)。
【0159】
貫流試料区分(1mL)を最初の1時間については15分毎に、その後、次の7時間については毎時間捕集し、本質的に上述のように播種した。捕捉効率を貫流試料区分から得られる計数値に基づいて計算し(本質的に上述のように)、99パーセント超の捕捉効率を得た。
【0160】
(実施例6)
大腸菌(ATCC 51813)の単離された細菌コロニーを5mLのBBL(商標)Trypticase(商標)大豆ブロス(Becton Dickinson(Sparks,MD))の中に植菌し、37℃で18〜20時間インキュベーションした。約1×10CFU/mLの濃度のこの一夜培養物をバターフィールド緩衝液(pH 7.2±0.2;一塩基性リン酸カリウム緩衝液溶液、VWRカタログ番号83008−093、VWR(West Chester,PA))中で希釈して、ほぼ1×10CFU/mL植菌材料を得た。
【0161】
容積2.7リットルの脱イオン水(18megaohm、Milli−Q(商標)Biocel水精製システム、Millipore,MA)に、ほぼ1×10CFU/mL植菌材料の1:100希釈液を加えて、約120CFU/mL(試料中合計約3.1×10CFU)の濃度を有する試料を得た。試料をタイプB(TiO−DE)濃縮素子(本質的に上述のように作製)に15mL/分の流速で約3時間ポンプ送液した(本質的に上述のように)。
【0162】
貫流試料区分(1mL)を15分毎に捕集し、本質的に上述のように播種した。捕捉効率を貫流試料区分から得られる計数値に基づいて計算し(本質的に上述のように)、97パーセント超の捕捉効率を得た。
【0163】
本明細書で引用した特許、特許文献、及び公報に含有される参照された記述内容は、その全体が、それぞれ個別に組み込まれているかのように、参照として組み込まれる。本発明に対するさまざまな予見できない修正及び変更が、本発明の範囲及び趣旨から逸脱することなく当業者に明らかとなるであろう。本発明は、本明細書に記載した例示的な実施形態及び実施例によって過度に限定されるものではなく、またかかる実施例及び実施形態は、一例として表されているだけであり、ただし、本発明の範囲は、以下のように本明細書に記載した「請求項」によってのみ限定されることを意図するものと理解されるべきである。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
(a)酸化第二鉄、二酸化チタン、微細ナノスケール金若しくは白金、又はこれらの組み合わせを含む表面改質剤を含む表面処理剤を表面の少なくとも一部の上に担持する珪藻土を含む少なくとも1つの濃縮剤を含む焼結多孔質ポリマーマトリックスを含む濃縮素子を用意する工程と、(b)少なくとも1つの微生物株を含む試料を用意する工程と、(c)前記濃縮素子を前記試料と接触させることにより、前記少なくとも1つの微生物株のうち少なくとも一部が前記濃縮素子に結合又は捕捉されるようにする工程と、を含む、方法。
【請求項2】
前記方法が、少なくとも1つの結合した微生物株の存在を検出する工程を更に含む、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記検出が、培養に基づく方法、顕微鏡及びその他の画像形成手法、遺伝子学的検出方法、免疫学的検出方法、生物発光に基づく検出方法、及びこれらの組み合わせから選択される方法によって実施される、請求項2に記載の方法。
【請求項4】
前記方法が、前記試料から前記濃縮素子を分離すること及び/又は少なくとも1つの結合した微生物株を培養により増菌すること及び/又は前記濃縮素子から少なくとも1つの結合した微生物株の少なくとも一部を分離することを更に含む、請求項1に記載の方法。
【請求項5】
前記焼結多孔質ポリマーマトリックスが、少なくとも1つの熱可塑性ポリマーを含む、請求項1に記載の方法。
【請求項6】
前記熱可塑性ポリマーが、オレフィンホモポリマー、オレフィンコポリマー、オレフィンと他のビニルモノマーのコポリマー、及びこれらの組み合わせから選択される、請求項5に記載の方法。
【請求項7】
前記熱可塑性ポリマーが、オレフィンホモポリマー及びこれらの組み合わせから選択される、請求項6に記載の方法。
【請求項8】
前記オレフィンホモポリマーがポリエチレンである、請求項7に記載の方法。
【請求項9】
前記濃縮素子が迂回経路マトリックスを含む、請求項1に記載の方法。
【請求項10】
前記表面改質剤が、微細ナノスケール金、微細ナノスケール白金、少なくとも1つの金属酸化物と組み合わせた微細ナノスケール金、二酸化チタン、少なくとも1つの他の金属酸化物と組み合わせた二酸化チタン、酸化第二鉄、少なくとも1つの金属酸化物と組み合わせた酸化第二鉄、及びこれらの組み合わせから選択される、請求項1に記載の方法。
【請求項11】
前記金属酸化物が、酸化第二鉄、二酸化チタン、酸化亜鉛、酸化アルミニウム、及びこれらの組み合わせから選択される、請求項10に記載の方法。
【請求項12】
前記表面改質剤が、微細ナノスケール金、微細ナノスケール白金、少なくとも酸化第二鉄又は二酸化チタンと組み合わせた微細ナノスケール金、二酸化チタン、少なくとも酸化第二鉄と組み合わせた二酸化チタン、酸化第二鉄、及びこれらの組み合わせから選択される、請求項10に記載の方法。
【請求項13】
前記表面改質剤が、微細ナノスケール金、微細ナノスケール白金、酸化第二鉄又は二酸化チタンと組み合わせた微細ナノスケール金、二酸化チタン、酸化第二鉄と組み合わせた二酸化チタン、及びこれらの組み合わせから選択される、請求項12に記載の方法。
【請求項14】
前記表面改質剤が、微細ナノスケール金、酸化第二鉄又は二酸化チタンと組み合わせた微細ナノスケール金、酸化第二鉄と組み合わせた二酸化チタン、及びこれらの組み合わせから選択される、請求項13に記載の方法。
【請求項15】
前記表面改質剤が、微細ナノスケール金、酸化第二鉄又は二酸化チタンと組み合わせた微細ナノスケール金、及びこれらの組み合わせから選択される、請求項14に記載の方法。
【請求項16】
前記試料が流体の形態である、請求項1に記載の方法。
【請求項17】
前記微生物株が、細菌、真菌、酵母、原生動物、ウイルス、細菌内生胞子、及びこれらの組み合わせから選択される、請求項1に記載の方法。
【請求項18】
前記微生物株が、細菌、酵母、ウイルス、細菌内生胞子、及びこれらの組み合わせから選択される、請求項17に記載の方法。
【請求項19】
前記接触が、前記試料を前記濃縮素子に通すことにより行われる、請求項1に記載の方法。
【請求項20】
(a)微細ナノスケール金、微細ナノスケール白金、少なくとも酸化第二鉄若しくは二酸化チタンと組み合わせた微細ナノスケール金、二酸化チタン、少なくとも酸化第二鉄と組み合わせた二酸化チタン、酸化第二鉄又はこれらの組み合わせから選択される表面改質剤を含む表面処理剤を表面の少なくとも一部の上に担持する珪藻土を含む少なくとも1つの濃縮剤を含む焼結ポリエチレン迂回経路マトリックスを含む濃縮素子を用意する工程と、(b)細菌、酵母、ウイルス、細菌内生胞子、及びこれらの組み合わせから選択される少なくとも1つの微生物株を含む流体試料を用意する工程と、(c)前記流体試料を前記濃縮素子に通すことにより、前記少なくとも1つの微生物株のうち少なくとも一部が前記濃縮素子に結合又は捕捉されるようにする工程と、を含む、方法。
【請求項21】
前記方法が、少なくとも1つの結合した微生物株の存在を検出する工程を更に含む、請求項20に記載の方法。
【請求項22】
酸化第二鉄、二酸化チタン、微細ナノスケール金若しくは白金、又はこれらの組み合わせを含む表面改質剤を含む表面処理剤を表面の少なくとも一部の上にを含む少なくとも1つの濃縮剤を含む焼結ポリマーマトリックスを含む、濃縮素子。
【請求項23】
(a)請求項22に記載の少なくとも1つの濃縮素子と、(b)請求項1に記載の方法の実施において使用するための少なくとも1つの試験容器又は試験試薬と、を含む、キット。
【請求項24】
(a)(1)少なくとも1つの粒子状焼結型ポリマーと、(2)酸化第二鉄、二酸化チタン、微細ナノスケール金若しくは白金、又はこれらの組み合わせを含む表面改質剤を含む表面処理剤を表面の少なくとも一部の上に担持する珪藻土を含む少なくとも1つの粒子状濃縮剤と、を含む混合物を用意する工程と、(b)ポリマーの焼結に充分な温度まで混合物を加熱して、前記粒子状濃縮剤を含む焼結多孔質ポリマーマトリックスを形成する工程と、を含む、濃縮素子の作製方法。

【図1】
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【図2】
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【公表番号】特表2012−522506(P2012−522506A)
【公表日】平成24年9月27日(2012.9.27)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−503489(P2012−503489)
【出願日】平成22年3月22日(2010.3.22)
【国際出願番号】PCT/US2010/028111
【国際公開番号】WO2010/114725
【国際公開日】平成22年10月7日(2010.10.7)
【出願人】(505005049)スリーエム イノベイティブ プロパティズ カンパニー (2,080)
【Fターム(参考)】