説明

微粉炭吹き込み制御装置

【課題】複数のフィードタンクで構成される高炉の微粉炭吹き込み設備において、フィードタンクを順次切り替えて吹き込む際に、吹き込み速度の変動を少なくする。
【解決手段】3基以上のフィードタンク11、21、31、41のうちの2基のフィードタンクを順次選択して吹き込み稼動の状態とし、2基のフィードタンク11、21それぞれの、吹き込み稼動状態に切り替えるタイミングをずらすように順次切り替えるシーケンス切り替え指令部4と、シーケンス切り替え指令部4の吹き込み稼動の指令信号に基づき、フィードタンク11、21のトータル吹き込み速度を設定値Svになるように、吹き込み速度の設定値に基づき各フィードタンク11、21内の搬送気体の圧力を個別に制御して、フィードタンク11、21からの吹き込み速度を制御する吹き込み制御部6とを具備する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、鉄鋼業における高炉への微粉炭吹き込み設備の制御装置であって、特に微粉炭を安定して高炉に吹き込むための微粉炭吹き込み制御装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、高炉では、鉄鉱石とコークスを交互に装入し、羽口から熱風を吹き込んで昇熱し、コークス燃焼生成COガスによる鉄鉱石の還元と溶解を行うことにより溶銑を製造している。しかし、近年、石炭を破砕した微粉炭を羽口から吹き込むことにより、微粉炭より高価なコークスを節減し、溶銑の製造コストを低減することが行われている。この微粉炭の吹き込みを行う場合、微粉炭は燃焼性が高いため、窒素ガスやアルゴンガスなどを搬送気体に用い、吹き込みタンクから気体搬送して羽口内に配置したブローパイプから微粉炭を炉内に吹き込む方法が採用されている。このような高炉の微粉炭吹き込み設備は、微粉炭を収納したフィードタンクを加圧することで微粉炭を高炉へ送る。例えば特許文献1に記載されているような、複数のフィードタンクを順次切り替えて微粉炭を高炉に送る微粉炭吹き込み方法が知られている。
【0003】
図3は、複数のフィードタンク(FTとも記す)を具備する微粉炭吹き込み設備の概略構成の一例である。高炉へ微粉炭を送るために微粉炭を充填し収納する4基のフィードタンク11、21、31、41と、この4基のフィードタンク11、21、31、41内への搬送気体(例えば窒素ガス)を加圧する加圧部1と、フィードタンク11、21、31、41から高炉へ微粉炭を送るための搬送開閉弁17、27、37、47や搬送配管からなる搬送部2とで構成されている。フィードタンク11、21、31、41それぞれには、収納する微粉炭の重量を測定して時々刻々重量信号を出力する微粉炭重量計12、22、32、42、フィードタンク内の搬送気体の圧力を測定するためのFT圧力計13、23、33、43、フィードタンク11、21、31、41内の搬送気体の圧力を調整するためのFT圧力調節弁14、24、34、44、並びに、加圧部1から供給される搬送気体の流量を測定するための搬送気体流量計15、25、35、45、及び搬送気体の流量を調整するための搬送気体流量調節弁16、26、36、46が配設されている。さらに微粉炭重量計12、22、32、42及びFT圧力計13、23、33、43から出力される各測定信号を入力データとして、FT圧力調節弁14、24、34、44、搬送気体流量計15、25、35、45、搬送気体流量調節弁16、26、36、46、及び搬送開閉弁17、27、37,47を制御して微粉炭吹き込み操業を実行するために、前記各測定信号等をデータ処理する制御部3で構成されていることが多い。
【0004】
このような構成からなる従来の高炉の微粉炭吹き込み制御装置では、図4に示すような『吹込』、『排圧』、『充填』、『加圧』、『待機』からなる一連の工程を繰り返す操業フローで、フィードタンクそれぞれから微粉炭を高炉へ吹き込む操業方法が従来から知られている。図4の操業フローでは左から、フィードタンク11に微粉炭を充填し(充填)、充填完了後に高炉へ吹き込むために加圧部1から窒素ガスを送りフィードタンク11を加圧する(加圧)。高炉へ吹き込むための加圧が完了すれば所定の時間待機した後(待機)、フィードタンク11から高炉へ微粉炭を吹き込む(吹込)。次にフィードタンク11から切り替わるフィードタンク21は、フィードタンク11と同様に微粉炭を充填及び加圧を完了し待機しておく。フィードタンク11の微粉炭の重量がある設定重量以下になると、次に待機しているフィードタンク21が吹き込みを開始し(吹込)、フィードタンク21が吹込になったらフィードタンク11は吹き込みを終える。吹き込み終えたフードタンク11は、まだ高圧であるので排圧し(排圧)、排圧完了後に充填及び加圧し、その後次の吹き込みのタイミングまで待機する。また、フィードタンク31、41も同様に順次動作する。以上のようにフィードタンク間でタイミングをずらして、『吹込』、『排圧』、『充填』、『加圧』、『待機』からなる一連の工程を実行し、フィードタンク11からフィードタンク41に、サイクリックに順次切り替えをすることで高炉へ吹き込む微粉炭を連続で吹き込む操業方法が知られている。
【0005】
ところが、図4に示すようにフィードタンク1基ずつで吹き込むと、切り替えのタイミングで吹き込み量の変動が大きくなる。そのため、例えば特許文献1に記載されているように、第1のフィードタンクから第2のフィードタンクの吹き込みに切り替えるときに、常に2基のフィードタンクで吹き込むことで吹き込み量の変動を少なくする微粉炭吹き込み制御方法が知られている。このフィードタンク2基で高炉へ微粉炭を吹き込む方法での操業フローを図5に示す。図5における各設備の構成と各フィードタンクの『充填』、『加圧』、『待機』、『吹込』、『排圧』の切り替え順番は、前記したものと同様である。違いは、常にフィードタンク2基で吹き込みを行なう点であって、例えば図5の操業フローで左端から、フィードタンク21とフィードタンク31の2基が同時に吹き込みを行なっているところである。
【0006】
このようなフィードタンクの2基の切り替えについて説明する。前記のフィードタンク21とフィードタンク31で吹き込みをしている状態で、フィードタンク21の微粉炭の重量が設定値以下になったら、切り替えを開始し、先にフィードタンク41を待機状態から吹込状態にする。フィードタンク41での吹き込みを開始し、次にフィードタンク21を排圧状態にして吹き込みを終了する。これ以後は暫くの間フィードタンク31とフィードタンク41の2基で吹き込みを行なう。なお、吹き込みを終了したフィードタンク21は、その後に『排圧』、『充填』、『加圧』、『待機』までの工程を行ない、次に吹き込みを開始するまで待機状態で待つ。次に、上記と同様にフィードタンク31の微粉炭の重量が設定値以下になったら、フィードタンク11を吹き込みにし、フィードタンク31は、吹き込みを終了し、フィードタンク41とフィードタンク11へ切り替え、さらにその次も同様に、フィードタンク11とフィードタンク12へ切り替えることでサイクリックに順次行なうことで、各フィードタンクの吹込から排圧の切り替え時を除き、常に2基のフィードタンクを使って高炉に微粉炭を連続で吹き込む。
【0007】
上記の常にフィードタンク2基により吹き込むときの吹き込み制御について、図6で説明する。図6の微粉炭吹き込み制御装置の構成図は、フィードタンク11とフィードタンク21との2基で高炉に微粉炭を吹き込んでいるときの微粉炭吹き込み制御装置の構成例である。ただし、上記の図3で説明したものと、同一機能を有す装置・部分には同一の番号を付与してあり、一点鎖線内の部分が制御部3である。
【0008】
図6において、トータル吹き込み速度設定器50は、予め設定された、又は上位の生産制御システム等の指示に基づいて、フィードタンク11とフィードタンク21からの微粉炭の吹き込み速度の和であるトータル吹き込み速度設定値Svを出力し、その1/2の吹き込み速度設定値(Sv/2)を演算器51で求めて、フィードタンク11の吹き込み速度調節器61及びフィードタンク21の吹き込み速度調節器71へ入力する。
【0009】
なお、本願明細書において、吹き込み速度とは、単位時間当たり(例えば毎分又は毎時)の吹き込み量を意味する。
【0010】
次に、フィードタンク11の微粉炭重量計12から時々刻々出力する重量測定値信号を、微粉炭重量指示計60aに入力する。さらに、微粉炭重量指示計60aから時々刻々出力する重量測定値の信号を、吹き込み速度演算器60に入力する。吹き込み速度演算器60は、時々刻々入力される重量測定値信号の差分である変化量を演算して、フィードタンク11からの吹き込み速度の測定値である微粉炭吹き込み速度実績値を出力する。
【0011】
吹き込み速度調節器61は、吹き込み速度演算器60から出力される微粉炭吹き込み速度実績値と吹き込み速度設定値(Sv/2)とに基づき吹き込み速度制御(例えばPID制御)を行ない、FT圧力調節器62に向けて操作量の信号を出力する。
【0012】
FT圧力調節器62は、FT圧力計13が測定して出力したFT圧力実績値を使って、別途入力される圧力設定値に基づき圧力調節弁14を駆動して、フィードタンク11内の圧力を制御(例えばPID制御)する。ここで、別途入力されるFT圧力調節器62の設定値は、上記の吹き込み速度調節器61から出力した操作量と、トータル吹き込み速度設定器50から出力されるトータル吹き込み速度設定値Svを折線演算器62bで演算した量とを加算器62aで加算する。さらに加算器62aから出力された量と送風圧力62d(操作量のオフセット分に相当する)とを加算器62cで加えたものである。なお、折線演算器62bは、予め設定した折線で横軸にトータル吹き込み速度設定値Svで縦軸をFT圧力設定量としている。
【0013】
一方、搬送気体流量調節器63は、搬送気体流量計15から出力した単位時間当たりの搬送気体(窒素ガス)流量実績値を使って搬送気体流量調節弁16で搬送気体(窒素ガス)の単位時間当たりの流量を制御(例えばPID制御)する。なお、この流量制御の基準値である搬送空気流量調節器63の設定値は、トータル吹き込み速度設定器50から出力されたトータル吹き込み速度設定値Svを折線演算器63bで演算した量とFT圧力調節器62の操作出力を折線演算器63aで演算した量と加算器63cで加算したものである。なお、折線演算器63aは、予め設定した折線で横軸にFT圧力調節器62から出力された操作量で縦軸を搬送気体流量の設定量としている。また折線演算器63bは、予め設定した折線で横軸にトータル吹き込み速度設定値Svで縦軸を搬送気体流量設定量としている。
【0014】
以上のフィードタンク11における吹き込み速度の制御と同様に、フィードタンク21の吹き込み速度の制御を吹き込み速度調節器71により行なう。
【0015】
次に、フィードタンクの切り替えについて説明する。フィードタンク11とフィードタンク21との2基を用いて上記の吹き込み制御を行なっている状態で、フィードタンク11の微粉炭重量計12から出力される実績値が設定重量値以下になったら、切り替えを開始し、待機していたフィードタンク31の吹き込みを行なう。フィードタンク21とフィードタンク31で、前述のフィードタンク11とフィードタンク21で説明した制御を行なう。なお、フィードタンク11の吹き込み制御は、吹き込み終了で前記の制御とは切り離され『排圧』、『充填』、『加圧』、『待機』となり、次の『吹込』が来るまで『待機』状態で待つ。このようにしてフィードタンク11〜41をサイクリックに順次切り替えていく。
【0016】
ところが、上述した常時2基のフィードタンクから微粉炭を吹込む微粉炭吹き込み制御では、それぞれのフィードタンクの吹き込み速度がトータル吹き込み速度設定値Svの1/2の吹き込み速度設定値Sv/2になるように、それぞれのフィードタンクで吹込量を制御すると、高炉に送る搬送部2がディスパーサー18において繋がっているため、相手の搬送配管さらにはフィードタンク内の圧力に押し勝ったり押し負けたりするので、それぞれの微粉炭の吹き込み速度実績値も同じように変動する。すなわち、それぞれの吹き込み速度実績値の変動でFT圧力設定値を変更するため、お互いに干渉し合う。このためトータル吹き込み速度の実績値も変動が大きくなり制御性が悪いという問題があった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0017】
【特許文献1】特開2004−43849号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0018】
このような状況に鑑みて、本発明は、3基以上の複数のフィードタンクで構成される高炉の微粉炭吹き込み設備において、フィードタンクを順次切り替えて連続的に微粉炭を吹き込む際に、吹き込み速度の時間的な変動を従来よりも少なくすることができる微粉炭吹き込み制御装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0019】
上記の課題を解決した本発明は、次の通りである。
【0020】
(1)本発明の微粉炭吹き込み制御装置は、高炉に吹き込む微粉炭を収納した3基以上のフィードタンクを備え、各フィードタンクの吹き込み稼動と吹き込み停止を順次切り替えて、前記高炉に連続的に微粉炭を吹き込む微粉炭吹き込み設備の制御装置であって、前記3基以上のフィードタンクのうちの2基のフィードタンクを順次選択して吹き込み稼動の状態とし、且つ、該2基のフィードタンクそれぞれの、吹き込み稼動状態に切り替えるタイミングを互いにずらすようにして、前記3基以上のフィードタンクを順次切り替えて連続的に微粉炭吹き込みを行なう指令信号を出力するシーケンス切り替え指令部と、前記シーケンス切り替え指令部の吹き込み稼動の指令信号に基づき、前記2基のフィードタンクからの吹き込みを、互いにタイミングをずらして開始して、前記2基のフィードタンクからの単位時間当たりの吹き込み量の和であるトータル吹き込み速度を所定の設定値になるように、前記2基のフィードタンクそれぞれの吹き込み速度の設定値が同じになるように算出し、該吹き込み速度の設定値に基づき各フィードタンク内の搬送気体の圧力を個別に制御することにより、前記2基のフィードタンクからの吹き込み速度を制御する吹き込み制御部とを具備し、各フィードタンクの吹き込み稼動状態の切り替えに際して、高炉へのトータルの微粉炭の吹き込み速度の時間的な変動を抑制することを特徴とする。
【0021】
(2)(1)に記載の微粉炭吹き込み制御装置において、前記吹き込み制御部は、前記2基のフィードタンクそれぞれの吹き込み速度の差分に基づき、前記2基のうち一方のフィードタンクの前記吹き込み速度の設定値を補正するバランス制御器を有していることを特徴とする。
【0022】
(3)(1)又は(2)に記載の微粉炭吹き込み制御装置において、前記微粉炭吹き込み設備の各フィードタンクは、収納している微粉炭の重量を測定する重量センサを備えており、前記吹き込み制御部は、さらに、前記2基のフィードタンクそれぞれの重量センサからの重量信号に基づき、それぞれのフィードタンクからの微粉炭の吹き込み速度実績値を算出する吹き込み速度測定器と、該吹き込み速度測定器から出力された前記2基のフィードタンクの吹き込み速度実績値の和と、トータル吹き込み速度の設定値との差分を所定の時間で累積計算して、吹き込み量実績の過不足値を出力する累積誤差補正演算器と、を具備し、前記吹き込み量実績の過不足値に基づいて前記トータル吹き込み速度の前記設定値を補正して、新たな吹き込み速度の設定値とすることを特徴とする。
【発明の効果】
【0023】
本発明によれば、フィードタンク2基ずつで微粉炭を吹き込むようにし、且つ、それぞれのフィードタンクの微粉炭吹き込み開始のタイミングをずらす。そして、2基のフィードタンクによるトータルの吹き込み速度を一定になるように制御するので、以下のような効果を得ることができる。
【0024】
本発明の微粉炭吹き込み制御装置では、高炉へ吹き込む微粉炭の量を安定して送ることができる。また、吹き込み中のいずれかのフィードタンクの吹き込み量がアンバランスになっても、バランスをとるように補正することができる。さらに、フィードタンク切り替え時やアンバランスになって過不足になった微粉炭の吹き込み量に対して補正することができる。
【図面の簡単な説明】
【0025】
【図1】本発明の実施の形態の微粉炭吹き込み制御装置の全体構成図である。
【図2】図1の微粉炭吹き込み制御装置の一部を示すブロック構成図である。
【図3】複数のフィードタンクを具備する微粉炭吹き込み設備の従来例の概略構成図である。
【図4】微粉炭吹き込み設備において1基ずつ順次切り替えて吹き込むときの、従来の切り替え操業フロー図である。
【図5】微粉炭吹き込み設備において常時2基で吹き込むときの、従来の切り替え操業フロー図である。
【図6】微粉炭吹き込み制御装置の従来例の概略を示すブロック構成図である。
【発明を実施するための形態】
【0026】
以下では、本発明の微粉炭吹き込み制御装置の実施の形態を、図面を参照して詳細に説明する。本実施の形態においては、微粉炭吹き込み設備が4つのフィードタンクを具備しているときの例を説明するが、本発明はこれに限ることはない。なお、図中の符号について、他の図に示した機能ブロック、部分、及び装置と同一機能を有するものには、同じ符号をつけて説明の重複を避けた。
【0027】
まず、FTの切り替え制御について説明する。図1は、本発明の微粉炭吹き込み制御装置の全体概略構成図である。図1の一点鎖線内部が制御部3で、その制御部3の中には、フィードタンクを順番に、『排圧』、『充填』、『加圧』、『待機』、『吹込』からなるシーケンスの切り替えを行なうためのシーケンス切り替え指令部4と、『待機』と『吹込』工程以外でのFTの圧力を制御するFT圧力調整部5と、加圧して微粉炭吹き込みを実行する吹き込み制御部6とが備えられている。
【0028】
吹き込み制御部6は、シーケンス切り替え指令部4からの指令で、吹き込みを実施するフィードタンクの切り替えを行なうための、フィードタンク11〜41のスイッチ群(11a〜11f、21a〜21f、31a〜31f、41a〜41f)と、微粉炭重量計、FT圧力計等からの出力される信号を処理する演算器、調節器等とで構成されている。
【0029】
まず、その中のシーケンス切り替え指令部4からの指令で動作するスイッチ群について説明する。スイッチ11a、21a、31a、41aは、各フィードタンクで吹き込みを行なう時にスイッチをオンする。スイッチ11b、21b、31b、41bは、2つのフィードタンクで微粉炭の吹き込みを行なうときに、その内の1つだけスイッチをオンする。例えばスイッチ11bのみがオンされる。
【0030】
スイッチ11c〜11f、21c〜21f、31c〜31f、41c〜41fは、排圧、充填、加圧工程の処理をするために、FT圧力調整部5側へスイッチを切り替える。なお、FT圧力調整部5は、吹込と待機以外の、排圧、充填、加圧の各工程において徐々にフィードタンク内の圧力を下げたり、上げたりする制御を実行する。
【0031】
例えば、フィードタンク11とフィードタンク21の2つで吹き込みを行なっている場合(すなわち吹き込み稼動している状態)、シーケンス切り替え指令部4からの指令で、スイッチ11a、11b、21aをオンにし、フィードタンク11とフィードタンク21それぞれのスイッチ11c〜11f、21c〜21fは、FT圧力調整部5側ではなく、以下で詳細に説明する吹き込み制御側にスイッチをオンにする。また、フィードタンク21の他のスイッチ21bとフィードタンク31、41のスイッチ31a、31b、41a、41bはオフにする。さらに、フィードタンク31、41のスイッチ31c〜31f、41c〜41fは、排圧、充填、
加圧の処理中は、FT圧力調整部5側にスイッチをオンにし、待機状態になったら、FT圧力調整部5側ではない制御側にスイッチをオンにし、次の吹き込みを開始するまでその状態で待ち続ける。このとき、シーケンス切り替え指令部4からの指令で、フィードタンク11とフィードタンク21の搬送開閉弁17、27は開き、フィードタンク31とフィードタンク41の搬送開閉弁37、47は、閉じている。
【0032】
次に、吹き込みを行う2つのフィードタンクの切り替えについて説明する。フィードタンク11の微粉炭重量計12から時々刻々出力する重量測定値信号は、微粉炭重量指示計60aに入力される。微粉炭重量指示計60aの重量信号は、シーケンス切り替え指令部4にも入力されている。この微粉炭重量指示計60aの重量信号が、予め設定した切り替え重量指示値以下に減ったとき、シーケンス切り替え指令部4はフィードタンク11による吹き込みの終了タイミングがきたことを判定し、吹き込みを行っているフィードタンクを、フィードタンク11、21からフィードタンク21、31へ、シーケンス切り替え指令部4の指令で切り替える。この切り替えで、スイッチ11a、11bはオフにし、スイッチ31a、21bはオンにする。また、スイッチ11c〜11fは、排圧、充填、加圧を行なうので、FT圧力調整部5側に切り替える。
【0033】
また、シーケンス切り替え指令部4からの指令で、フィードタンク31からの吹き込みに合わせてフィードタンク31の搬送開閉弁37は、閉から開にし、フィードタンク11の搬送開閉弁17は、開から閉にすることで吹き込みを切り替える。
【0034】
次に、吹き込み量の安定制御、すなわち上記の吹き込み制御部6の機能について、4基のフィードタンクのうち2基のフィードタンク11、21及びその制御部分を記載した図2を用いて詳細に説明する。なお、その他のフィードタンクで吹き込むときも、フィードタンク11、12によるときと同様である。
【0035】
2基のフィードタンク41、11から2基のフィードタンク11、21へ吹き込みに用いるフィードタンクを切り替えて、所定の時間ΔT3(例えば900秒)経過した後のフィードタンク11、21の制御について、具体的に記す。ここで、フィードタンク11、21を、説明のために仮にフィードタンクA、Bとする。
【0036】
図2において、トータル吹き込み速度設定器50は、予め設定された値、又は上位の生産制御システム等(図示せず)の指示に基づいて、フィードタンク11およびフィードタンク21からの単位時間当たりの微粉炭の吹き込み量の和であるトータル吹き込み速度設定値Svを出力する。
【0037】
一方、フィードタンク11内の微粉炭の重量の測定信号である重量信号が、フィードタンク11の微粉炭重量計(センサ)12から時々刻々又は所定の周期で出力され、微粉炭重量指示計60aに入力される。当該重量信号に基づき微粉炭重量指示計60aから時々刻々出力する重量測定値の信号が、第1の吹き込み速度演算器60に入力される。吹き込み量演算器60は、時々刻々又は所定の周期で入力される重量信号の差分である変化量を演算して、フィードタンク11の単位時間当たりの微粉炭吹き込み量である微粉炭吹き込み速度実績値を出力する。なお、微粉炭重量指示計60aと吹き込み速度演算器60とで、吹き込み速度測定器を構成する。同様に、フィードタンク21の微粉炭重量計22から時々刻々又は所定の周期で出力する重量信号に基づいて、フィードタンク21の微粉炭重量指示計70aからの微粉炭吹き込み速度実績値を、第2の吹き込み速度演算器70で演算し出力する。さらに、フィードタンク31に接続された微粉炭重量指示計80a、吹き込み速度演算器80、および、フィードタンク41に接続された微粉炭重量指示計90a、吹き込み速度演算器90も、上記の微粉炭重量指示計60a、吹き込み速度演算器60と同様の機能を有する。
【0038】
フィードタンク11とフィードタンク21は吹き込み稼動状態にあるので、それぞれのスイッチ11a、21aはオンしており、第1の吹き込み速度演算器60から出力されたフィードタンク11の微粉炭吹き込み速度実績値と、第2の吹き込み速度演算器70から出力されたフィードタンク21の微粉炭の吹き込み速度実績値とが、それぞれスイッチ11a、21aを経て第一加算器52へ入力され、第一加算器52で加算した値を吹き込み速度調節器53へ、トータル吹き込み速度実績値Smとして入力する。なお、スイッチ11a、21aのオン・オフは、上記したようにシーケンス切り替え指令部4により切り替えられる。
【0039】
吹き込み速度調節器53は、上記のトータル吹き込み速度設定器50から出力されたトータル吹き込み速度設定値Sv等に基づいて、その操作出力を、フィードタンク11のFT圧力調節器62とフィードタンク21のFT圧力調節器72の圧力設定値として出力とする。すなわち、この圧力設定値は、各フィードタンク11、21の吹き込み速度を実行するための設定値である。
【0040】
なお、この圧力設定値を基にフィードタンク11のFT圧力調節器62でフィードタンク11内の圧力制御を行ない、その結果としてフィードタンク11からの吹き込み速度を調節することができる。同様に、フィードタンク21もフィードタンク11と同じ設定値を用いてFT圧力調節器72でフィードタンク21内の圧力制御を行ない、その結果としてフィードタンク21からの吹き込み速度を調節することができる。
【0041】
次に、図2に示したように、バランス制御器54aは、第1の吹き込み速度演算器60より出力したフィードタンク11の微粉炭吹き込み速度実績値と、第2の吹き込み速度演算器70より出力したフィードタンク21の微粉炭吹き込み速度実績値との差分を、予め設定した時間ΔT1、例えば60秒毎に計算して吹き込み速度差分値Δ1−2を算出する。さらに、バランス制御器54aは、当該吹き込み速度差分値Δ1−2が予め設定した閾値Δ1,2th以上の値となった場合に、吹き込み速度差分値を吹き込み速度差分値信号として出力し、当該吹き込み速度差分値が予め設定した閾値Δ1,2th未満の値となった場合には、吹き込み速度差分値をホールドし且つ吹き込み速度差分値の信号として出力する。
【0042】
そのバランス制御器54aから出力した吹き込み速度差分値信号は、オン状態のスイッチ11bを経て第二加算器55aに入る。なお、フィードタンク21を基準にフィードタンク11の吹き込み量とフィードタンク21の吹き込み量のバランスを調整するので、フィードタンク11のスイッチ11bはオンし、フィードタンク11の吹き込み量設定量を補正する。片やフィードタンク21については、吹き込み量の基準になるので、スイッチ21bはオフとし、吹き込み量設定の補正をしない。
【0043】
図2の第二加算器55aは、上記の吹き込み速度調節器53の操作出力に基づき設定されているFT圧力調節器62の圧力設定値(すなわち各フィードタンク11、21の吹き込み速度を実行するための設定値)に、上記のバランス制御器54aの出力を加算して新たにフィードタンク11のFT圧力調節器62の圧力設定値とする。
【0044】
一方、フィードタンク11の微粉炭吹き込み速度実績値と、フィードタンク21の微粉炭吹き込み速度実績値との和であるトータル吹き込み速度実績値Smを第一加算器52で算出し、累積誤差補正演算器56へ入力する。
【0045】
また、累積誤差補正演算器56は、トータル吹き込み速度設定値Svと実際に吹き込んだトータル吹き込み速度実績値Smとの差分を、所定の時間ΔT毎(例えば1秒毎)にデータを収集し、その収集したデータを予め設定した時間ΔT毎(例えば180秒毎)に差分の平均値を演算し、当該トータル吹き込み速度差分の平均値ΔSvをトータル吹き込み速度設定値Svに第三加算器57で加算することで、トータル吹き込み量の時間的に累積した過不足を補正する。なお、当該トータル吹き込み速度差分の平均値ΔSvは、予め設定した時間ΔT毎(例えば3分毎)に平均値を演算するが、前回設定したトータル吹き込み速度差分の平均値ΔSv(例えば、180秒前に演算したトータル吹き込み速度差分の平均値ΔSv)に、今回設定するトータル吹き込み速度差分の平均値ΔSvを加算している。
【0046】
なお、トータル吹き込み量の時間的に累積した過不足を補正する手法としては、上記の態様のほか、上記トータル吹き込み速度差分の平均値ΔSvを用いて、例えば、(1+ΔSv)をトータル吹き込み速度設定値Svに掛けるような他の態様であってもよい。
【0047】
累積誤差補正演算器56は、シーケンス切り替え指令部4からの指令や操業者の判断で、上記累積した過不足の補正を実行する機能を入れたり切ったりするようにしても良い。
【0048】
なお、その他のFT圧力調節器62、72や搬送気体流量調節器63,73等の調節器については、その機能は、図6を用いて上記した従来の微粉炭吹き込み制御装置と同じであるので説明を省略する。
【0049】
したがって、フィードタンク11およびフィードタンク21において同じ圧力設定値で吹き込みをしていても、それぞれのフィードタンクから微粉炭を同じ量で吹き込めないことがあるためフィードタンクの吹き込み速度実績のバランスに差が有る場合は、本発明によりバランスを整えることができる。すなわち、バランス制御器54aを用いて吹き込み速度のアンバランスを検知して制御することにより、第1の吹き込み速度演算器60の微粉炭吹き込み速度実績値と第2の吹き込み速度演算器70の微粉炭吹き込み速度実績値とから吹き込み速度差分値を導出して、当該吹き込み速度差分値に基づいて圧力補正値を算出して先に吹込んでいるフィードタンク11の圧力設定値に加算あるいは減算し、バランスを整える。
【0050】
また、累積誤差補正演算器56によりトータル吹き込み速度の時間的に累積した過不足を補正するようにして、切り替え時などで変動が起き過不足になったトータル吹き込み量は、過不足分を累積誤差補正演算器56で累積演算し、ある時間毎に補正を加えることで高炉へ送る微粉炭のトータル吹き込み量を確保している。
【0051】
なお、図2に示した実施の形態の微粉炭吹き込み制御装置では、各フィードタンクに吹き込みを制御する1式の制御部を設けて示してあるが、少なくとも2式の制御部それぞれで2基のフィードタンクからの吹き込みを制御する構成であってもよい。この場合には、シーケンス切り替え制御部4により吹き込みを実施するフィードタンクの切り替えに際して、2式の制御部を稼動させるフィードタンクを制御するように接続切り替えを行う。
【0052】
図2中、バランス制御器54b、第二加算器55bは、フィードタンク21に接続されて、上記のバランス制御器54a、第二加算器55aと同様の機能を発揮するものである。
【0053】
本発明の微粉炭吹き込み制御装置は、図2に示すように、トータル吹き込み量に対してフィードタンクの圧力制御を同じ圧力設定で制御している。また、2つのフィードタンクの吹き込み量に差がでたときは、一方のフィードタンクの圧力設定を増減させることでバランスするような補正を加えている。さらに、トータル吹き込み量の実績が、設定に対して過不足があるときには、トータル吹き込み量の補正ができる。
【0054】
本発明によれば、微粉炭吹き込み設備のフィードタンクの吹き込み制御を、図2に示すようにトータル吹き込み量で圧力制御しているので、微粉炭を高炉に安定して供給することができる。
【0055】
以上で説明した微粉炭吹き込み制御装置は、搬送気体の流れや重量センサ等とのインターフェース部を備えたDCSやPLCやパーソナルコンピュータ(PC)等のコンピュータで構成するとよい。その際、上記の各制御部、演算器等は、所定の処理を実行するためのコンピュータソフトウエアを作成して、上記コンピュータに組み込むことにより実施することができる。また、当該コンピュータにはキーボード、マウス等のI/O装置、及び、工場内の他のPCを通信するためのLANボードを具備させると良い。
【産業上の利用可能性】
【0056】
本発明は、鉄鋼業における高炉への微粉炭吹き込み設備の制御装置として適用できる。
【符号の説明】
【0057】
1 加圧部
2 搬送部
3 制御部
4 シーケンス切り替え指令部
5 FT圧力調整部
6 吹き込み制御部
11、21、31、41 フィードタンク(FT)
11a、11b、11c、11d、11e、11f スイッチ
21a、21b、21c、21d、21e、21f スイッチ
31a、31b、31c、31d、31e、31f スイッチ
41a、41b、41c、41d、41e、41f スイッチ
12、22、32、42 微粉炭重量計
13、23、33、43 FT圧力計
14、24、34、44 FT圧力調節弁
15、25、35、45 搬送気体流量計
16、26、36、46 搬送気体流量調節弁
17、27、37,47 搬送開閉弁
18 ディスパーサー
50 トータル吹き込み速度設定器
51 演算器
52 第一加算器
53 吹き込み速度調節器
54a、54b バランス制御器
55a、55b 第二加算器
56 累積誤差補正演算器
57 第三加算器
60 吹き込み速度演算器
60a 微粉炭重量指示計
61 吹き込み速度調節器
62 FT圧力調節器
62a 加算器
62b 折線演算器
62c 加算器
62d 送風圧力
63 搬送気体流量調節器
63a 折線演算器
63b 折線演算器
63c 加算器
70 吹き込み速度演算器
70a 微粉炭重量指示計
71 吹き込み速度調節器
72 FT圧力調節器
73 搬送気体流量調節器
80 吹き込み速度演算器
80a 微粉炭重量指示計
90 吹き込み速度演算器
90a 微粉炭重量指示計

【特許請求の範囲】
【請求項1】
高炉に吹き込む微粉炭を収納した3基以上のフィードタンクを備え、各フィードタンクの吹き込み稼動と吹き込み停止を順次切り替えて、前記高炉に連続的に微粉炭を吹き込む微粉炭吹き込み設備の制御装置であって、
前記3基以上のフィードタンクのうちの2基のフィードタンクを順次選択して吹き込み稼動の状態とし、且つ、該2基のフィードタンクそれぞれの、吹き込み稼動状態に切り替えるタイミングを互いにずらすようにして、前記3基以上のフィードタンクを順次切り替えて連続的に微粉炭吹き込みを行なう指令信号を出力するシーケンス切り替え指令部と、
前記シーケンス切り替え指令部の吹き込み稼動の指令信号に基づき、前記2基のフィードタンクからの吹き込みを、互いにタイミングをずらして開始して、前記2基のフィードタンクからの単位時間当たりの吹き込み量の和であるトータル吹き込み速度を所定の設定値になるように、前記2基のフィードタンクそれぞれの吹き込み速度の設定値が同じになるように算出し、該吹き込み速度の設定値に基づき各フィードタンク内の搬送気体の圧力を個別に制御することにより、前記2基のフィードタンクからの吹き込み速度を制御する吹き込み制御部とを具備し、
各フィードタンクの吹き込み稼動状態の切り替えに際して、高炉へのトータルの微粉炭の吹き込み速度の時間的な変動を抑制することを特徴とする微粉炭吹き込み制御装置。
【請求項2】
前記吹き込み制御部は、前記2基のフィードタンクそれぞれの吹き込み速度の差分に基づき、前記2基のうち一方のフィードタンクの前記吹き込み速度の設定値を補正するバランス制御器を有していることを特徴とする請求項1に記載の微粉炭吹き込み制御装置。
【請求項3】
前記微粉炭吹き込み設備の各フィードタンクは、収納している微粉炭の重量を測定する重量センサを備えており、
前記吹き込み制御部は、さらに、
前記2基のフィードタンクそれぞれの重量センサからの重量信号に基づき、それぞれのフィードタンクからの微粉炭の吹き込み速度実績値を算出する吹き込み速度測定器と、
該吹き込み速度測定器から出力された前記2基のフィードタンクの吹き込み速度実績値の和と、トータル吹き込み速度の設定値との差分を所定の時間で累積計算して、吹き込み量実績の過不足値を出力する累積誤差補正演算器と、を具備し、
前記吹き込み量実績の過不足値に基づいて前記トータル吹き込み速度の前記設定値を補正して、新たな吹き込み速度の設定値とすることを特徴とする請求項1又は請求項2に記載の微粉炭吹き込み制御装置。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate


【公開番号】特開2010−196090(P2010−196090A)
【公開日】平成22年9月9日(2010.9.9)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−40187(P2009−40187)
【出願日】平成21年2月24日(2009.2.24)
【出願人】(000006655)新日本製鐵株式会社 (6,474)
【Fターム(参考)】