説明

微粉炭焚きボイラの燃焼効率改善方法およびシステム

【課題】微粉炭焚きボイラから発生する燃焼灰を有効に再利用するための方法およびシステムの提供。
【解決手段】固体燃料を粉砕して微粉にしたものを火炉へ供給して燃焼させる微粉炭焚きボイラを備えたプラント設備において、微粉炭焚きボイラから得られた固体燃料の燃焼生成灰を加湿機で加湿し、固体燃料が搬送されるコンベア上に固体燃料に対して所定の割合で投入した再投入用灰を、微粉炭焚きボイラに投入する微粉炭焚きボイラの燃焼効率改善方法であって、前記微粉炭焚きボイラから得られたクリンカアッシュ、シンダーアッシュおよび/またはフライアッシュを所定の割合で混合した再投入用灰を、前記微粉炭焚きボイラまたは他の微粉炭焚きボイラに投入することを特徴とする微粉炭焚きボイラの燃焼効率改善方法ならびにシステム。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、石炭、コークス、木質バイオマス等の固体燃料を微粉に加工したものを燃焼する微粉炭焚きボイラから発生する燃焼灰を用いた微粉炭焚きボイラの燃焼効率改善方法およびシステムに関する。
【背景技術】
【0002】
火力発電所ボイラの燃料は、重油、LNG、オイルサンドなど、新燃料を含めて種々の選択肢があるが、資源量、経済性、運用容易性などの観点から依然として石炭を選択する場合も多い。
石炭を燃焼させるボイラからは、多量の石炭灰が発生するため、この再利用方法が従来から課題となっていた。例えば、石炭を燃焼すると、約1割の石炭灰が発生する。年間数千万トンの石炭を使用する電力会社には、石炭灰が年間数百万トン発生する計算となる。このような石炭灰は、従来からその特性を生かしたリサイクルが行われており、例えば、コンクリート混和材や土壌・地盤改良材等に利用されている。
【0003】
微粉炭燃焼ボイラから排出される石炭灰は、セメント混和材としての使用が認められているが、一般の微粉炭を燃焼した石炭灰は、3〜6%の未燃分が残留しているので、セメント混和材の品質を低下させるメチレンブルー吸着量が増加し、このままでセメント混和材として使用する場合、セメントに混入されている空気連行材(AE材)をこの未燃分が吸着して空気量の管理が困難になる等の問題があった。
そこで、焼却灰流動層冷却装置が、本体内底部に内装された焼却灰載置手段と、焼却灰載置手段の下方に設けられた空気室と、この空気室に連絡する空気供給手段と、焼却灰載置手段の上方に設けられ本体外部から配管導入して流動冷却層間に蛇行して配設された冷熱手段と、流動上層域の側壁に設けられた焼却灰排出回収手段とを具備し、また、この焼却灰流動層冷却装置Yを石炭灰流動層クーラーとして系内に包含して石炭灰の含有未燃分低減装置が提言されている(特許文献1)。
【0004】
重油や原油を燃焼させるボイラからは粉体状の燃焼生成灰が発生する。従来、この燃焼生成灰は、廃棄物焼却炉において減容化処分(有価)するとともに、一部は「廃棄物の処理および清掃に関する法律」に基づき産業廃棄物として処分しているところもある。
【0005】
特許文献2には、電気集塵機で回収したフライアッシュを捕集して、フライアッシュの一部を固体燃料の石炭に混入し、フライアッシュ中に含まれるFe、Mg系元素の触媒作用を利用して燃焼促進を図ると共に、フライアッシュを再燃焼させることを特徴とする技術が開示されている。
【0006】
液体燃料を燃焼させるボイラから発生するフライアッシュ等の燃焼生成灰は、比重が軽くハンドリングが困難であった。そこで、出願人らは、該燃焼生成灰を、造粒、乾燥して固形物とし、この固形物を固体燃料を燃焼させるボイラに投入して再燃焼させるボイラ燃焼生成灰の処理方法を提言した(特許文献3)。
【0007】
ところで、ボイラ内蒸気管等のような金属材料からなる部材に石炭灰が付着した場合には、蒸気管の伝熱性が低下するため、短期間で定期的に石炭灰を除去する清掃を行わなくてはならず、メンテナンスが面倒であり、また、清掃中は、ボイラの運転を停止しなければならなかった。
そこで、金属からなる部材の表面に、Cr:21〜25重量%、Mo:12〜14重量%、Fe:6重量%以下、W:1〜3重量%、Si:2〜9重量%を含有し、残部が実質的にNiからなるNi−Cr基合金によりコーティング層を形成して、前記部材に未燃炭素からなる灰が付着するのを防止する付着防止方法が提言されている(特許文献4)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】特開平9−178356号公報
【特許文献2】特公平6−15926号公報
【特許文献3】特開平11−101423号公報
【特許文献4】特開2005−146409号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
石炭等の固体燃料を燃焼させるボイラとしては、ストーカボイラと微炭粉焚きボイラが知られている。ストーカボイラとは、石炭を粉砕せずにそのままボイラの中に投入し、ボイラ底部で燃焼させるボイラのことであり、微炭粉焚きボイラとは、石炭等の固体燃料を微粉化装置にて細かくパウダー状に加工した上で、バーナーを用いてボイラ内部の空中で燃焼させるボイラのことをいう。
従来から、ストーカボイラにおいては、燃焼灰をホッパ等で回収して再燃焼が行われていた(特許文献2の第2図参照)。一方、微粉炭焚きボイラはストーカボイラと異なり燃焼性が良く、炉底灰中の未燃分は少ないため、微粉炭焚きボイラには燃焼灰の再燃焼装置を設置しないのが当然のこととされていた。特許文献2の第1図には、微炭粉焚きボイラにおいて電気集塵器で収集したフライアッシュを再燃焼させる方法が開示されるが、炉底灰の再燃焼はされていなかった。
【0010】
上述したように、従来回収された石炭灰は、別途の処理施設に搬送され、コンクリート混和材や土壌・地盤改良材等にリサイクルされていた。しかし、石炭灰に未燃成分が多い場合には、リサイクルに適さず、埋め立て等の処理がされていた。石炭灰中の未燃成分を低減させることも本発明が解決しようとする課題である。
【0011】
本発明は、微粉炭焚きボイラから発生する燃焼灰を有効に再利用するための方法およびシステムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0012】
第1の発明は、固体燃料を粉砕して微粉にしたものを火炉へ供給して燃焼させる微粉炭焚きボイラを備えたプラント設備において、微粉炭焚きボイラから得られた固体燃料の燃焼生成灰を加湿機で加湿し、固体燃料が搬送されるコンベア上に固体燃料に対して所定の割合で投入した再投入用灰を、微粉炭焚きボイラに投入する微粉炭焚きボイラの燃焼効率改善方法であって、前記微粉炭焚きボイラから得られたクリンカアッシュ、シンダーアッシュおよび/またはフライアッシュを所定の割合で混合した再投入用灰を、前記微粉炭焚きボイラまたは他の微粉炭焚きボイラに投入することを特徴とする微粉炭焚きボイラの燃焼効率改善方法である。
第2の発明は、第1の発明において、前記再投入用灰にクリンカアッシュが含まれることを特徴とする。
第3の発明は、第1または2の発明において、前記フライアッシュを前記微粉炭焚きボイラに投入する前工程を有することを特徴とする。
第4の発明は、第1ないし3のいずれかの発明において、前記所定の割合が、固体燃料に対して2〜10%の割合であることを特徴とする。
第5の発明は、第1ないし4のいずれかの発明において、固体燃料および燃焼生成灰の全水分値が所定の値を超える場合に、それより全水分値が低い固体燃料をブレンドすることにより固体燃料および燃焼生成灰の全水分値が所定の値以下とすることを特徴とする。
第6の発明は、第1ないし5のいずれかの発明において、前記固体燃料は、石炭であることを特徴とする。
【0013】
第7の発明は、固体燃料を粉砕して微粉にしたものを火炉へ供給して燃焼させる微粉炭焚きボイラを備えたプラント設備において、微粉炭焚きボイラから得られた固体燃料の燃焼生成灰を加湿機で加湿し、固体燃料が搬送されるコンベア上に固体燃料に対して所定の割合で投入した再投入用灰を、微粉炭焚きボイラに投入する微粉炭焚きボイラの燃焼効率改善システムであって、前記微粉炭焚きボイラから得られたクリンカアッシュ、シンダーアッシュおよび/またはフライアッシュを所定の割合で混合した再投入用灰を、前記微粉炭焚きボイラまたは他の微粉炭焚きボイラに投入することを特徴とする微粉炭焚きボイラの燃焼効率改善システムである。
第8の発明は、第7の発明において、前記再投入用灰にクリンカアッシュが含まれることを特徴とする。
第9の発明は、第7または8の発明において、前記フライアッシュを前記微粉炭焚きボイラに投入する前工程を有することを特徴とする。
第10の発明は、第7ないし9のいずれかの発明において、前記所定の割合が、固体燃料に対して2〜10%の割合であることを特徴とする。
第11の発明は、第7ないし10のいずれかの発明において、固体燃料および燃焼生成灰の全水分値が所定の値を超える場合に、それより全水分値が低い固体燃料をブレンドすることにより固体燃料および燃焼生成灰の全水分値が所定の値以下とすることを特徴とする。
第12の発明は、第7ないし11の発明において、前記固体燃料は、石炭であることを特徴とする。
【発明の効果】
【0014】
本発明によれば、微粉炭焚きボイラにおける燃焼灰のもつエネルギーを有効に活用し、微粉炭焚きボイラの運転コストを低減することができる。
また、微粉炭焚きボイラ用の燃料との混合も極めて容易であり、既存設備への改良も最小限で済むため、導入も容易である。
また、石炭灰中の未燃成分を低減させることができることから、従来産業廃棄物として処分されていたJIS規格外の石炭灰が有価物として有効利用できるため、埋め立て処分の量も少なくなり、環境保全にも大いに貢献することができる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【図1】従来のストーカボイラを備えたプラント設備の概要構成図である。
【図2】実施例1の微粉炭焚きボイラを備えたプラント設備の概要構成図である。
【図3】実施例2の微粉炭焚きボイラを備えたプラント設備の概要構成図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
本発明を実施するための形態を、固体燃料が石炭である場合の例で説明する。
ボイラから発生するアッシュ(灰)には、フライアッシュ、炉底灰およびシンダーアッシュがある。炉底灰については、本明細書では、「ストーカボイラ」における炉底灰を「ボトムアッシュ」と呼び、「微炭粉焚きボイラ」における炉底灰を「クリンカアッシュ」と呼ぶものとする。
ボトムアッシュは、燃料である石炭と燃焼後の灰が混在して燃焼した灰であり、灰中の未燃分が多いため、再燃焼の必要性が高く存在している。
クリンカアッシュは、微粉炭状態の石炭燃料がボイラ空気中でバーナーにより燃焼され、燃焼後の灰がボイラの側壁に融着して堆積し、その後炉底に落下してくる灰であり、灰中の未燃分は一般には少ないとされる。
【0017】
発明者は、微炭粉焚きボイラに的を絞り、燃焼灰の燃焼効率を図る方法を検討した。そして試行錯誤の結果、燃焼灰(混合灰)を、例えば、石炭の重量に対して2〜10%の割合(好ましくは2〜8%の割合、より好ましくは2〜5%の割合)で投入することで、良好な結果が得られることの知見を得た。この割合は、フライアッシュ、シリンダーアッシュおよびクリンカアッシュを混合して投入する場合、或いは、いずれか単体を石炭に投入する場合に共通する割合である。
ちなみに、平成20年度実績値は、下記のとおりである。ここでは、フライアッシュ、クリンカアッシュとも、投入してない期間があるため計画値(フライアッシュ約5%、クリンカアッシュ約0.5%)より合計での実績が少し低い値となっている。
2号機送炭量:559,154t
フライアッシュ投入量 :17,323t(投入率:約3%)
クリンカアッシュ投入量: 1,822t(投入率:約0.3%)
【0018】
また、発明者は各アッシュの特性について、詳細な検討を行った。具体的には、従来は再燃焼されていなかった微炭粉焚きボイラの炉底灰を再燃焼させること、さらに、フライアッシュおよびシンダーアッシュも回収・再燃焼することを試みた。
また、発明者は各アッシュの回収割合についても検討した。微粉炭焚きボイラの燃焼生成灰は、ボイラ炉底から回収されるクリンカアッシュが約10%、ボイラ後部煙道から採取されるシンダー灰が約20%、煙道に設置された電気集塵機で回収されるフライアッシュ約70%に分類される。
【0019】
図1は、従来のストーカボイラ施設における燃焼生成灰(石炭灰)の処理方法を示したものである。従来のストーカボイラ施設では、計量器・給炭機12から未粉砕の固体燃料が未粉砕のまま供給され、ストーカボイラ31で燃焼し、ボトムアッシュ用ホッパ32によりボトムアッシュ(炉底灰)が回収されていた。
また、ストーカボイラ31で発生した燃焼排ガスは、ボイラ31内を上方に流れ、アンモニア注入後に脱硝装置2の有する触媒層を通すことで脱硝され、エアヒーター3により熱交換が行われ、電気集塵装置4で除塵され、ガスヒーター8により熱交換が行われ、除塵塔9および脱硫黄吸収塔10を経て、煙突7から大気中へ放出されていた。電気集塵装置4で収集されたフライアッシュは、フライアッシュ用ホッパ33により回収されていた。
【0020】
図2は、本発明の微粉炭焚きボイラ施設における燃焼生成灰(石炭灰)の処理方法の一例を示したものである。
微粉炭焚きボイラ施設における石炭灰は、収集のタイミングによって、クリンカアッシュ、シンダーアッシュおよびフライアッシュと呼ばれるが、いずれも、主成分は、シリカとアルミナである。
クリンカアッシュは、高温なボイラ内で赤く溶けた状態の灰を、ボイラ底部の水槽に落下・急冷させ、破砕機で破砕、粒の大きさを調整した砂状のものであり、一般に、粒径は25mm程度以下の粒状とされる。図2ではホッパ23により回収される。
シンダーアッシュは、ボイラ後部煙道から採取される灰のことであり、図2ではホッパ24により回収される。
フライアッシュは、クリンカアッシュと比べると粒度が小さく、燃焼排ガス中に漂う微粒子であるため、電気集塵装置4で収集され、図2ではホッパ25により回収される。
一般に、シンダーアッシュの粒径は0.1〜1mm程度であり、フライアッシュの粒径は0.1mm程度以下の粒径であり、両者をまとめてフライアッシュという場合もあるようだが、本発明では別個のものとする。
【0021】
出願人の発電所における測定結果から、ホッパ23〜25で回収した石炭灰は、下記表1のとおりの特徴を有していることが確認できた。但し、石炭灰を再燃焼させて発生する各アッシュの割合は、運転条件、石炭の種類などによりばらつきがあり、例えばクリンカアッシュの割は発生灰の概ね5〜17%となる。
【0022】
【表1】

【0023】
表1を見ると分かるように、クリンカアッシュには比較的発熱量の高いものが含まれていることから、これを積極的に利用するとより効率的である。
また、別の形態の本発明は、ホッパ23〜25で回収した燃焼生成灰を、所定の割合で混ぜ合わせた混合灰を再投入するものであり、混合灰にクリンカアッシュが含まれることが好ましい。
【0024】
以下では、本発明の詳細を実施例で説明するが、本発明は実施例によってなんら限定されるものではない。
【実施例1】
【0025】
出願人の有する発電所に設置された微粉炭焚きボイラにおいて、石炭を燃料として燃焼試験を行った。本実施例の微粉炭焚きボイラにおける燃焼生成灰(石炭灰)の処理方法は、図2に示すとおりである。
【0026】
本実施例に係るプラント設備は、ホッパ24,25で収集したシンダーアッシュおよびフライアッシュを混合するための灰系統を有することを特徴とする。ホッパ24,25で収集した各アッシュは、所定のブレンド比率で貯槽サイロ19に投入され、撹拌される。クリンカアッシュについては、別の投入系統によりバンカ13に投入される。
ブレンド比率は、出願人の有する発電所に設置された微粉炭焚きボイラにおいて、フライアッシュのみを再投入した場合に発生する燃焼生成灰の増加比率と同一の割合となっている。すなわち、フライアッシュの再投入により、フライアッシュが50%増加し、シンダーアッシュが35%増加し、クリンカアッシュが15%増加する。別の言い方をすれば、それぞれの灰中の未燃分が減少する傾向が得られたことに基づくブレンド比率である。このように、本実施例においては、フライアッシュを投入することにより、クリンカアッシュの発生率を高めている。
【0027】
シンダーアッシュは、アッシュ用ポッパ24で収集され、中継タンクを経てサイロ19に投入される。フライアッシュは、集塵装置4(EP)で収集され、フライアッシュ用ホッパ25に投入され、中継タンク(図示せず)を経てサイロ19に投入される。
クリンカアッシュは、クリンカアッシュ用ポッパ23(水槽)で収集され、クラッシャー(図示せず)で破砕処理され、高圧水で脱水槽に集められる。脱水槽には5〜7日分のボイラで発生したクリンカが集められ、脱水された後に一旦別の場所にトラックで仮置きされる。仮置きしたクリンカを再度トラックでクリンカ投入用ホッパ(図示せず)に運搬する。再投入量はトラックに乗った状態で計量され、例えば約8〜9t/週のクリンカをボイラで再燃焼する。
なお、クリンカアッシュについては、貯槽サイロ19ではなく、ヘンタンホッパーに収納される構成としてもよい。
【0028】
貯槽サイロ19で混合された各アッシュは、ロータリーフィーダにより加湿・混練器18に供給される。加湿・混練器18では、加湿された後、混練され、造粒される。本実施例では、混合灰1:水0.2の割合で加湿を行った。
加湿は、一般的な水噴霧装置による加湿方法であり、混練は、水を加えて混ぜる処理である。造粒は、加湿・混練された水分を多く含んだ燃焼生成灰を、燃焼装置などにて乾燥させ固める処理である。
なお、加湿・混練器18は、燃焼生成灰の粉塵飛散防止処理を行う装置であり、粉塵対策が必要なければ、特に設置する必要はない。
【0029】
造粒されたシンダーアッシュおよびフライアッシュの混合灰は、計量器12により計量され、クリンカアッシュについても計量され、それぞれコンベヤ等の搬送手段によりバンカ13に投入される。本実施例では、混合灰の投入比率を石炭の重量に対して約5%の割合とした。
【0030】
バンカ13に格納された石炭と混合灰の混合物は、計量器・給炭器12を経てミル11で粉砕される。微粉炭焚きボイラ1では、ストーカボイラ31と異なり、ミル11で粉砕された微粉燃料が火炉へ投入されて燃焼させられる。そして、燃焼によって生じた排ガスは集塵装置4へ導かれ、排ガス中の固形分が集塵されて、固形分の除かれた排ガスが、誘引ファン5を経て第二熱交換器8に導かれ、除塵塔9および脱硫吸収塔10を経て、煙突7から大気中へ排出される。
【0031】
混合灰を投入しない状態で石炭を燃焼した際の各数値と、得られた燃焼性生成灰から製造した混合灰を投入した場合の各数値を比較することで、助燃効果の検証を行った。
上記石炭灰を投入したところ、次の表2の効果を確認することができた。
【0032】
【表2】

【0033】
(1)は、排ガス損失の低減効果であり、排ガス中の酸素濃度が低下したことから、燃焼効率が向上したことが確認できた。123kg/h(=燃料総発熱量×0.14/石炭発熱量)の燃料減少量の効果を確認することができた。
(2)は、押込ファン6の動力の削減効果である。押込ファン6の動力削減については、実測した結果に基づき算出した。すなわち、定格容量1110kW/3300V/231A/1180rpmの押込ファン6において、電流値が231A→224A(1110kW→1076kW)となったことを確認することができた。電流値が下がった理由としては、低O運転ができることにより、ボイラ1内への空気の押込み量を削減できたことが考えられる。
(3)は、誘引ファン5の動力の削減効果であり、低O運転による助燃効果による。ここで、一般的な微粉炭ボイラのO設定値は2.9〜3.6%であり、これより低いO値による運転を低O運転と呼ぶ。誘引ファン5の動力削減については、実測した結果に基づき算出した。すなわち、西条2号機において、定格容量2220kW/3330V/478A/890rpmの誘引ファン5において、電流値が478A→468A(2220kW→2173kW)となったことを確認することができた。電流値が下がった理由としては、低O運転ができることにより、ボイラ1から誘引するガス量の削減ができたことが考えられる。
(4)は、低O運転による助燃効果により、削減した排ガス中のNOx量である。
NOxの削減は、NOxの生成する条件である高温・高圧下における過剰な空気の削減によるところが大きく、灰混焼時による燃焼改善効果によりボイラ内の低O運転が可能となったことを示すものであり、環境対策にも効果的である。
(5)は、(4)の効果に伴い削減されたアンモニア注入量である。
アンモニア削減量は、排ガス中のNOxを分解脱硝するために注入するアンモニア量がNOXの発生量の低減とともに削減したことを示している。
(6)石炭灰のアッシュカット効果によるものである。ここで、アッシュカット効果とは、エアヒーターの詰りに対して、灰などの粒子を通常よりも多く通過させることによって、詰りを軽減できる(除去する)効果のことである。石炭火力発電所では、排ガスに含まれている熱を回収しプラント熱効率の向上を図るために、エアヒーター(空気予熱器)が設置されているが、運転を長期間継続するとエアヒーターが排ガスの影響で詰り、エアヒーターの差圧上昇を生じる。そのため、定期的に(例えば、年数回)プラントを停止し、エアヒーターの詰りの除去のための洗浄を行う必要があるが、アッシュカット効果によりその間隔より長期にすることができる。本実施例では、国内炭(灰分約15%)の混焼時と同様のアッシュカット効果が確認できた。
【0034】
混合灰の投入により、燃焼効率が向上する理由は、次のとおりであると推測される。
(ア)石炭灰添加による燃焼領域における熱容量の増加。
(イ)石炭灰粒子からの熱輻射の増加。
(ウ)石炭灰中に存在する、Fe,Mg系元素による酸化触媒効果の増加。(因みに、クリンカアッシュには、フライアッシュよりもFe,Mg系元素が多く含まれている。)
【実施例2】
【0035】
実施例2では、出願人の有する発電所に設置された微粉炭焚きボイラにおいて、石炭を燃料として燃焼試験を行った。本実施例の微粉炭焚きボイラにおける燃焼生成灰(石炭灰)の処理方法は、図3に示すとおりである。
【0036】
図3に示すように、1号ボイラの集塵装置(EP)で収集されたフライアッシュ(1号灰)は、ホッパに投入され、中継タンク、FAタンクを経て2号コールバンカー送炭と共に計量コンベアに投入される。コールバンカー本体のサイズは、ボイラの容量にも依存するが、概ね8〜20時間程度の燃焼に利用する量の石炭を貯蔵できる寸法とすることが多い。
計量コンベアに投入される1号灰は加湿機で約10%に加湿されることにより粉塵飛散することが防止される(なお、試運転当初は20%の加湿であったが、同様の効果が得られることから10%に変更した。)。
2号送炭量は約78000t(wet)である。1号灰は、2号送炭量に対し1号灰2%〜5%の割合で合計約2340t(dry)(10%加湿灰で2600t(wet))を投入した。
試運転は、下記表3の2回の期間に分けて行った(実投入日数38日間)。
【0037】
【表3】

【0038】
《試運転結果》
1号灰投入による2号機燃焼状態および脱硫装置への影響は見られなかった。また、2号灰中の未燃分(Igloss)は、1号灰投入後にいずれも減少しており、1号灰未燃分熱量および有価灰回収量の増加が可能となったといえる。
(1)運転状況等
1号灰混焼中の燃焼状態は安定したものであったが、1号灰投入比率が4%以上(2号消費炭全水分約13%時)の場合、燃焼性が低下し、ミル熱空気ダンパが全開となるという問題があった。そこで、炭種をブレンドし消費炭全水分を約11%に調整したところ、1号灰投入比率5%としてもミル熱空気ダンパが全開となるという問題が生じないことを確認できた。最適な消費炭全水分の値はボイラ毎に異なると考えられるが、1号灰投入比率をあげつつ全水分を管理値以下に設定し、熱空気ダンパが全開になり燃焼が不安定にならないようにバランス調整することが肝要である。
クリンカ量および処理時間に変化はなかった。
なお、脱硫装置への影響(脱硫率、除塵塔PH・スラリー濃度等)は見られなかったが、長期にわたる調査・監視が必要であると思われる。
(2)灰性状(表3参照)
有価灰回収の条件である灰中未燃分(Igloss)およびメチレンブルー吸着量(MB)は、灰投入前の性状より若干良くなることが確認できた。なお、メチレンブルーの値は、セメント原料としての指標となる。
(3)経済効果
1号灰未燃分(10%〜20%)が再燃焼されたことにより、投入量約2340tの約80%が有価灰回収量の理論値の最大となる。しかし、以下では、未燃分15%中の14%が再燃焼するとの仮定おき、2号灰中の1号灰発生量を2340t×0.86=2000tとし、炭種変更および灰性状確認等を考慮して有価灰回収量を約1500tとして経済効果を試算した。これにより、次の表4〜表6に示す経済効果が得られることが確認できる。なお、石炭単価は日々変化するものであり、本出願時の石炭単価は1万円/t前後である。
【0039】
(3−1)有利灰処理削減費(表4)
【0040】
【表4】

【0041】
(3−2)燃料削減費(表5)
【0042】
【表5】

【0043】
(3−3)有価灰販売費(表6)
【表6】

【実施例3】
【0044】
実施例3では、実施例2と同じ第1号および第2号微粉炭焚きボイラにおいて、第2号微粉炭焚きボイラに石炭にクリンカアッシュをブレンドしたものを投入した場合の燃焼試験を行った。
(1)クリンカアッシュ払出状況
排炭コンベアによるクリンカアッシュの払出量は、24.5t/h(10.2t/25分)であり、クリンカアッシュは、Aバンカに6.1t、Bバンカに4.1t搬送した(計画時点ではクリンカアッシュの払出量は、10t/hで各バンカに2.5tずつ搬送する予定であったが、落炭処理時の流量調整板の位置で制約を受けることから、流量調整を行なわないこととした。なお、流量増による電流値等、排炭コンベアの運転状況は問題なし)。
【0045】
(2)クリンカアッシュ再燃焼状況
燃焼時のクリンカアッシュ混合比率は、A,Bバンカから同時に消費された状態(最大)で3.3%であり、約4時間かけて燃焼した(Aバンカへのクリンカ払出量6.1t、送炭量92tより算出)。
【0046】
《試験結果》
クリンカアッシュの混入「無し」と「有り」で燃焼試験を行った結果、燃焼性、環境監視、集じん性、灰処理性、総排運転状況および1号クリンカ性状分析の点ではいずれも問題はなく、「有り」の場合にはハンドリング性および石炭灰性状分析の点で軽微な問題が確認された。試験結果を表7および8に示す。
【0047】
【表7】

なお、「石炭灰性状分析」については後日NOXを上昇させ、炭種変更を実施したところ、管理値は2.1に改善した。
【0048】
【表8】

なお、表8の「炭種」において、TBはトウルバインド炭(インドネシア炭)、OEはMtオーエン炭(オーストラリア炭)、DWは大同洗炭(中国炭)、WBはワンボ炭(オーストラリア炭)を意味し、DWWB2はDW:WBが1:2の混炭であることを意味する。
【0049】
【表9】

*( )内は石炭換算S分を示す
【0050】
《経済効果》
表10に示すように、クリンカアッシュ混焼時(「有り」)の全給炭量(石炭+バイオマス+クリンカの混合物)は、「無し」の場合と比べ0.9t/h増加している(89.1→90.0t/h)。しかし、石炭のみ消費量(合計からバイオマスとクリンカを除いた値)を算出すると、「有り」の場合は「無し」の場合と比べ2.6t/hの減少量となる。この減少量は、石炭とクリンカアッシュの発熱量の比(1:0.36)で算出すると1.1t/hとなり、クリンカアッシュ投入量に対して減少量が大きい。バイオマスのように一定の混焼率で投入しないため、時間当たりの燃焼量が正確に把握できないためと考えられる。
【0051】
【表10】

注.( )内は発熱量の比による計算値
【0052】
1号クリンカ再燃焼による2号石炭費用削減量(クリンカ1t当たり)を算出すると次のとおりである。
[算出条件]
・石炭高位発熱量:27,880kj/kg(実績値)
・クリンカ高位発熱量:16,700kj/kg(1号クリンカ実運用値の平均値)
・クリンカの有無によるボイラ効率の変化はないものとする。
[算出]
・石炭低位発熱量:26,700kj/kg
HL=Hh’−2,500(9h+w)
=27,880−2,500(9*0.38+0.122)
=26,700
・クリンカ低位発熱量:14,900kj/kg
HL=Hh’−2,500(9h+w)
=16,700−2,500(9*0.026+0.49)
=14,900
・石炭削減量:0.56石炭t/クリンカt
石炭削減量=クリンカ低位発熱量÷石炭低位発熱量
=14,900÷26,700
=0.56石炭t/クリンカt
【産業上の利用可能性】
【0053】
本発明の混合灰を投入することにより、燃焼促進、ボイラ効率の向上、灰付着防止、高温酸化防止、低温酸化防止、大気汚染物質の抑制、(SOx、NOx、煤塵(黒煙))などの効果を得ることができる。
ここで、高温酸化(高温腐食)とは、高温燃焼ガスに含まれる余剰Oによってボイラが酸化腐食されることをいうが、本発明によれば、低O運転が可能となるため、余剰Oによる高温酸化を抑制することができる。
また、低温酸化(低温腐食)とは、排ガス中に含まれるS分が、燃焼する際に無水硫酸(SO)を発生することをいうが、本発明によれば、灰の量を増やす事によって低O運転が可能となるため、無水硫酸のボイラへの付着量(腐食量)を軽減することで、低温腐食防止を図ることができる。
【符号の説明】
【0054】
1 ボイラ
2 脱硝装置
3 エアヒーター(第一熱交換器)
4 電気集塵装置
5 誘引ファン(IFD)
6 押込ファン(FDF)
7 煙突
8 ガスヒーター(第二熱交換器)
9 除塵塔
10 脱硫吸収塔
11 ミル(微粉炭機)
12 計量器/給炭機
13 バンカ(貯蔵装置)
14 貯炭場
16 アンモニア注入装置
17 タンカー(燃料輸送)
18 加湿機
19 貯槽サイロ
20 ロータリーフィーダ
21 制御手段
22 搬送手段
23 クリンカアッシュ用ホッパ(灰貯蔵装置)
24 シンダーアッシュ用ホッパ(灰貯蔵装置)
25 フライアッシュ用ホッパ(灰貯蔵装置)
31 ストーカボイラ
32 ボトムアッシュ用ホッパ(灰貯蔵装置)
33 フライアッシュ用ホッパ(灰貯蔵装置)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
固体燃料を粉砕して微粉にしたものを火炉へ供給して燃焼させる微粉炭焚きボイラを備えたプラント設備において、微粉炭焚きボイラから得られた固体燃料の燃焼生成灰を加湿機で加湿し、固体燃料が搬送されるコンベア上に固体燃料に対して所定の割合で投入した再投入用灰を、微粉炭焚きボイラに投入する微粉炭焚きボイラの燃焼効率改善方法であって、
前記微粉炭焚きボイラから得られたクリンカアッシュ、シンダーアッシュおよび/またはフライアッシュを所定の割合で混合した再投入用灰を、前記微粉炭焚きボイラまたは他の微粉炭焚きボイラに投入することを特徴とする微粉炭焚きボイラの燃焼効率改善方法。
【請求項2】
前記再投入用灰にクリンカアッシュが含まれることを特徴とする請求項1に記載の微粉炭焚きボイラの燃焼効率改善方法。
【請求項3】
前記フライアッシュを前記微粉炭焚きボイラに投入する前工程を有することを特徴とする請求項1または2に記載の微粉炭焚きボイラの燃焼効率改善方法。
【請求項4】
前記所定の割合が、固体燃料に対して2〜10%の割合であることを特徴とする請求項1ないし3のいずれか一項に記載の微粉炭焚きボイラの燃焼効率改善方法。
【請求項5】
前記固体燃料および燃焼生成灰の全水分値が所定の値を超える場合に、それより全水分値が低い固体燃料をブレンドすることにより固体燃料および燃焼生成灰の全水分値が所定の値以下とすることを特徴とする請求項1ないし4のいずれか一項に記載の微粉炭焚きボイラの燃焼効率改善方法。
【請求項6】
前記固体燃料は、石炭であることを特徴とする請求項1ないし5のいずれか一項に記載の微粉炭焚きボイラの燃焼効率改善方法。
【請求項7】
固体燃料を粉砕して微粉にしたものを火炉へ供給して燃焼させる微粉炭焚きボイラを備えたプラント設備において、微粉炭焚きボイラから得られた固体燃料の燃焼生成灰を加湿機で加湿し、固体燃料が搬送されるコンベア上に固体燃料に対して所定の割合で投入した再投入用灰を、微粉炭焚きボイラに投入する微粉炭焚きボイラの燃焼効率改善システムであって、
前記微粉炭焚きボイラから得られたクリンカアッシュ、シンダーアッシュおよび/またはフライアッシュを所定の割合で混合した再投入用灰を、前記微粉炭焚きボイラまたは他の微粉炭焚きボイラに投入することを特徴とする微粉炭焚きボイラの燃焼効率改善システム。
【請求項8】
前記再投入用灰にクリンカアッシュが含まれることを特徴とする請求項7に記載の微粉炭焚きボイラの燃焼効率改善システム。
【請求項9】
前記フライアッシュを前記微粉炭焚きボイラに投入する前工程を有することを特徴とする請求項7または8に記載の微粉炭焚きボイラの燃焼効率改善システム。
【請求項10】
前記所定の割合が、固体燃料に対して2〜10%の割合であることを特徴とする請求項7ないし9のいずれか一項に記載の微粉炭焚きボイラの燃焼効率改善システム。
【請求項11】
前記固体燃料および燃焼生成灰の全水分値が所定の値を超える場合に、それより全水分値が低い固体燃料をブレンドすることにより固体燃料および燃焼生成灰の全水分値が所定の値以下とすることを特徴とする請求項7ないし10のいずれか一項に記載の微粉炭焚きボイラの燃焼効率改善システム。
【請求項12】
前記固体燃料は、石炭であることを特徴とする請求項7ないし11のいずれか一項に記載の微粉炭焚きボイラの燃焼効率改善システム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2011−52916(P2011−52916A)
【公開日】平成23年3月17日(2011.3.17)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−203239(P2009−203239)
【出願日】平成21年9月3日(2009.9.3)
【出願人】(000180368)四国電力株式会社 (95)
【Fターム(参考)】