説明

微粉炭燃焼用バーナ

【課題】
安価な低品質の微粉炭を燃料とし、而も着火の容易性と、燃焼の安定性を確保する微粉炭燃焼用バーナを提供する。
【解決手段】
炉壁面1に形成された凹孔3と、該凹孔と同心に配設され炉心側先端が開口された有底筒状のチャンバ6と、該チャンバの底部8に開口する第1噴出部9と、前記チャンバと前記凹孔との間に形成されるリング状空間14の第2噴出部12とを具備し、前記炉心側先端は前記炉壁面と同一又は略同一位置であり、前記第1噴出部から微粉炭18と共に第1次燃焼用空気17が噴出され、前記第2噴出部から第2次燃焼用空気21が噴出される様構成された。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は微粉炭ボイラ等に用いられる微粉炭燃焼用バーナ、特に低品質の微粉炭を安定燃焼させ得る微粉炭燃焼用バーナに関するものである。
【背景技術】
【0002】
微粉炭を燃料とする微粉炭ボイラに於いては、従来揮発成分が多く、着火の容易性、火炎の安定性に優れた瀝青炭が用いられていたが、近年では揮発成分が少ない安価な無煙炭、半無煙炭或はオイルコークス等、低品質の微粉炭を燃料とすることが要求されている。
【0003】
微粉炭の着火、燃焼は、微粉炭が加熱されることで揮発成分が発生し、先ず揮発成分に着火され、次に微粉炭本体に着火するという過程を経る。従って、揮発成分の少ない無煙炭、半無煙炭或はオイルコークス等の微粉炭では、着火し難く、又燃焼及び火炎の安定性に欠けるという欠点がある。
【0004】
この為、揮発成分の少ない微粉炭を着火し、安定して自立燃焼させる為には、少ない揮発成分でも着火する様な高温状態で微粉炭を供給する必要がある。従って、揮発成分の少ない微粉炭を燃料とする微粉炭燃焼用バーナでは、微粉炭燃焼用バーナが炉内壁面に直接開口し、炉内からの熱を受けて高温状態となる様な構造となっている。
【0005】
一方で、微粉炭燃焼用バーナが高温となることで、熱膨張による歪みが大きくなり、バーナの形状が変形する。形状の変形は微粉炭、1次空気、2次空気の流動状態に影響を与え、燃焼を不安定にする要因となる。
【0006】
【特許文献1】特表平10−501056号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明は斯かる実情に鑑み、安価な低品質の微粉炭を燃料とし、而も着火の容易性と、燃焼の安定性を確保する微粉炭燃焼用バーナを提供するものである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明は、炉壁面に形成された凹孔と、該凹孔と同心に配設され炉心側先端が開口された有底筒状のチャンバと、該チャンバの底部に開口する第1噴出部と、前記チャンバと前記凹孔との間に形成されるリング状空間の第2噴出部とを具備し、前記炉心側先端は前記炉壁面と同一又は略同一位置であり、前記第1噴出部から微粉炭と共に第1次燃焼用空気が噴出され、前記第2噴出部から第2次燃焼用空気が噴出される様構成された微粉炭燃焼用バーナに係るものである。
【0009】
又本発明は、前記底部に第3噴出部が開口され、該第3噴出部は前記チャンバ内に温度調節用空気を噴出する微粉炭燃焼用バーナに係るものである。
【0010】
又本発明は、前記チャンバの先端部には円周等間隔で複数のスリットが穿設された微粉炭燃焼用バーナに係り、又前記チャンバの先端部は先端に向けて拡径したスカート部となっており、前記スリットの長さSは前記スカート部より基端側方向に延びる様に形成された微粉炭燃焼用バーナに係り、又前記スリットの長さSはチャンバ外径D、チャンバ全長Lに対して、S/D≧0.2、S≦0.1Lである微粉炭燃焼用バーナに係り、更に又前記スリットの長さSは前記凹孔の径の略1/10、又は100mmより大きい微粉炭燃焼用バーナに係るものである。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、炉壁面に形成された凹孔と、該凹孔と同心に配設され炉心側先端が開口された有底筒状のチャンバと、該チャンバの底部に開口する第1噴出部と、前記チャンバと前記凹孔との間に形成されるリング状空間の第2噴出部とを具備し、前記炉心側先端は前記炉壁面と同一又は略同一位置であり、前記第1噴出部から微粉炭と共に第1次燃焼用空気が噴出され、前記第2噴出部から第2次燃焼用空気が噴出される様構成されたので、炉内、火炎からの加熱により、前記第1次燃焼用空気、前記第2次燃焼用空気が加熱されて噴出される微粉炭が高温化され、揮発成分の少ない微粉炭でも安定して自立燃焼することが可能となる。
【0012】
又本発明によれば、前記底部に第3噴出部が開口され、該第3噴出部は前記チャンバ内に温度調節用空気を噴出するので、チャンバ内部の温度調整が可能であり、微粉炭の品質に応じた自立燃焼を可能とする。
【0013】
又本発明によれば、前記チャンバの先端部には円周等間隔で複数のスリットが穿設されたので、チャンバの熱膨張による形状の変更を防止し、前記第1次燃焼用空気、前記第2次燃焼用空気の偏流、流れの乱れを防止し、チャンバが高温となった状態でも、安定した燃焼を可能とする。
【0014】
又本発明によれば、前記チャンバの先端部は先端に向けて拡径したスカート部となっており、前記スリットの長さSは前記スカート部より基端側方向に延びる様に形成されたので、前記第2次燃焼用空気の偏流、流れの乱れに影響を及し易い、スカート部の熱変形が防止され、安定した燃焼を可能とする。
【0015】
又本発明によれば、前記スリットの長さSはチャンバ外径D、チャンバ全長Lに対して、S/D≧0.2、S≦0.1Lであるので、スリットを形成した場合でも、バーナチャンバの剛性が保たれ、安定した燃焼を可能とする。
【0016】
更に又本発明によれば、前記スリットの長さSは前記凹孔の径の略1/10より、又は100mm大きいので、熱変形が生じ易い部分について、効果的に熱歪みの発生を防止できるという優れた効果を発揮する。
【発明を実施するための最良の形態】
【0017】
以下、図面を参照しつつ本発明を実施する為の最良の形態を説明する。
【0018】
先ず、図1、図2に於いて、本発明に係る微粉炭燃焼用バーナについて説明する。
【0019】
図1中、1は微粉炭焚きボイラの炉壁であり、耐火煉瓦又は水冷壁管等の耐熱材料により構成されている。前記炉壁1の所要箇所に、所要数の微粉炭燃焼用バーナ2が設けられる。
【0020】
以下、微粉炭燃焼用バーナ2について説明する。
【0021】
前記炉壁1には該炉壁1を貫通する凹孔3が設けられ、該凹孔3の炉内側周縁部は炉心に向って拡径するテーパ部4が形成されている。
【0022】
前記炉壁1の外周側には該炉壁1の外周面と所要の間隔を隔ててバーナカバー5が設けられ、該バーナカバー5を貫通し、該バーナカバー5に支持されるバーナチャンバ6が前記凹孔3と同心に設けられている。
【0023】
該バーナチャンバ6は概略円筒形状であり、基端部(炉心から離反する側)近傍で前記バーナカバー5に支持されている。前記バーナチャンバ6の先端部には炉心に向って拡径するテーパ形状のスカート部7が形成され、基端部は底部8によって閉塞されている。
【0024】
該底部8には偏心した位置に第1噴出部9が開口され、該第1噴出部9からは微粉炭18と共に所要温度に加熱された第1次燃焼用空気17が噴出される。又前記底部8には偏心した位置に第3噴出部11が開口され、該第3噴出部11からは温度調節用空気10が噴出される(図3参照)。
【0025】
前記スカート部7と前記テーパ部4との間にはリング漏斗状の第2噴出部12が形成される。又、前記炉壁1と前記バーナカバー5との間に形成される空間13、前記バーナチャンバ6と前記凹孔3との間に形成される空間14によって2次空気導通路15が構成され、該2次空気導通路15は前記第2噴出部12に連通している。
【0026】
前記空間13には前記凹孔3の周囲に所要間隔で可変旋回羽根16が配設され、該可変旋回羽根16は前記凹孔3の中心線と平行な回転軸を有し、該回転軸を中心として全ての可変旋回羽根16が同期して回転する様になっている。
【0027】
以下、図3を参照して作動を説明する。
【0028】
前記第1噴出部9より前記第1次燃焼用空気17と共に無煙炭、半無煙炭或はオイルコークス等、揮発成分の少ない前記微粉炭18を噴出すると、前記第1次燃焼用空気17、前記微粉炭18が前記バーナチャンバ6から炉内に向って噴出される。又、前記第1噴出部9は偏心しているので、前記バーナチャンバ6内部に内部循環流19が発生する。
【0029】
前記空間13より第2次燃焼用空気21を導入すると、前記可変旋回羽根16により偏向され、前記バーナチャンバ6の周りを旋回する様に前記空間14を流動し、前記第2噴出部12から炉内に拡大する旋回流として噴出する。又、拡大する旋回流として噴出することから、前記バーナチャンバ6の前方に外部循環流22が発生する。
【0030】
前記第1次燃焼用空気17による前記内部循環流19が形成され、又前記第2次燃焼用空気21による前記外部循環流22が発生することで、前記内部循環流19、前記外部循環流22が炉内の熱、火炎23の熱により加熱され、高温となる。従って、前記内部循環流19、前記外部循環流22を通って噴射される微粉炭が、高温化され、揮発成分が発生して点火、燃焼される。
【0031】
而して、本発明に係る微粉炭燃焼用バーナでは、揮発成分の少ない微粉炭18であっても、安定して点火、燃焼させることができる。
【0032】
尚、前記第3噴出部11から前記温度調節用空気10が噴出されると、該温度調節用空気10は前記内部循環流19の内部、前記外部循環流22の内部を直進して噴出される為、前記内部循環流19を押出し、或は該内部循環流19、前記外部循環流22の循環強さを弱めることとなる。従って、前記温度調節用空気10の噴出の有無、或は流量の調整で、前記バーナチャンバ6内部の温度調整をすることができる。従って、含有される揮発成分に適した燃焼状態を実現することができる。
【0033】
上記した様に、本発明に係る微粉炭燃焼用バーナでは、揮発成分の少ない微粉炭18を安定に燃焼させる為、前記バーナチャンバ6内部を高温化している。従って、該バーナチャンバ6自体の温度も上昇している。この為、該バーナチャンバ6の熱膨張による歪み、即ち該バーナチャンバ6の変形が考慮されなければならない。
【0034】
該バーナチャンバ6、特に先端部は炉内に露出しているので、炉内からの熱、前記外部循環流22からの熱により直接加熱され、歪みによる変形は無視できないものと考えられる。前記スカート部7が変形した場合、前記第2噴出部12の間隙が円周で不均一となり、前記火炎23に供給する前記第2次燃焼用空気21が場所により過不足を生じ、或は拡大する旋回流に乱れを生じ、安定した前記外部循環流22を形成できないという問題を生じる。
【0035】
斯かる問題を解消する為、前記バーナチャンバ6先端部にスリット24を複数本、即ち少なくとも2本刻設する。刻設する位置は円周方向で等間隔とし、好ましくは4本とする。
【0036】
該スリット24は、前記バーナチャンバ6の中心線と平行であり、先端から基端側に延びる長さSを有している。
【0037】
又、前記スリット24の長さSを、少なくとも前記スカート部7より基端側に延びる長さとすると、該スカート部7での円周方向の連続性が前記スリット24によって切断されることで、膨張に対する円周方向に対する拘束がなくなり、又前記バーナチャンバ6の先端は自由端であるので軸心方向の拘束もない。従って、熱膨張が拘束されることがなく、熱歪みの発生が抑制され、変形が防止される。
【0038】
特に、前記スカート部7の部分の熱変形が防止されることで、前記第2噴出部12の形状の変形が防止でき、前記第2次燃焼用空気21の偏流、乱れがなくなり、高温での微粉炭燃焼用バーナによる燃焼が安定する。
【0039】
熱歪みの発生を防止するには、前記スリット24の長さは長い方が好ましいが、該スリット24を必要以上に長くすると、前記バーナチャンバ6単体としての剛性が低下し、熱歪み、熱応力又圧力変動、振動等に対する形状維持力が低下する。従って、前記バーナチャンバ6が前記バーナカバー5に設けられた状態で、例えば圧力変動、振動等に対して必要な剛性を保持する為に、前記スリット24は、長さSについてS/D≧0.2、S≦0.1Lとする。
【0040】
前記バーナチャンバ6で炉内からの熱、前記火炎23の熱の影響を最も受ける部分は、先端部であり、又基部は前記第2次燃焼用空気21によって冷却されているので、前記スリット24は熱影響の大きい部分に設けられていれば充分である。
【0041】
又、熱影響が大きく、歪みが問題となる部分は、経験上、前記バーナチャンバ6の先端から凹孔の径に対して略1/6、又は略100mmであり、従って、前記スリット24の長さSは前記凹孔の径の略1/10、又は100mmより大きくする。
【0042】
上記した様に前記スリット24の長さSは、少なくとも前記スカート部7の長さより長い、又はS/D≧0.2、S≦0.1Lとし、又は前記凹孔の径に対して略1/10、又は100mmより大きくする、の少なくとも1つの条件を満す様にすることで、効果的な変形防止効果が得られる。
【0043】
又、前記スリット24の本数については、前記バーナチャンバ6の直径等を考慮して設定され、該バーナチャンバ6の剛性が低下しない様に、又熱歪みが大きくならない様に設定され、経験的には円周4等分した位置に4本程度設ければ好ましい。又、多数設けても、多くすることに対して、歪み減少の効果は少なく、実用上は最大8本程度とする。
【図面の簡単な説明】
【0044】
【図1】本発明に係る微粉炭燃焼用バーナの概略側断面図である。
【図2】該微粉炭燃焼用バーナの正面図である。
【図3】本発明の実施の形態の作用を示す説明図である。
【符号の説明】
【0045】
1 炉壁
2 微粉炭燃焼用バーナ
3 凹孔
4 テーパ部
5 バーナカバー
6 バーナチャンバ
7 スカート部
8 底部
9 第1噴出部
10 温度調節用空気
11 第3噴出部
12 第2噴出部
14 空間
17 第1次燃焼用空気
18 微粉炭
19 内部循環流
21 第2次燃焼用空気
22 外部循環流
23 火炎
24 スリット

【特許請求の範囲】
【請求項1】
炉壁面に形成された凹孔と、該凹孔と同心に配設され炉心側先端が開口された有底筒状のチャンバと、該チャンバの底部に開口する第1噴出部と、前記チャンバと前記凹孔との間に形成されるリング状空間の第2噴出部とを具備し、前記炉心側先端は前記炉壁面と同一又は略同一位置であり、前記第1噴出部から微粉炭と共に第1次燃焼用空気が噴出され、前記第2噴出部から第2次燃焼用空気が噴出される様構成されたことを特徴とする微粉炭燃焼用バーナ。
【請求項2】
前記底部に第3噴出部が開口され、該第3噴出部は前記チャンバ内に温度調節用空気を噴出する請求項1の微粉炭燃焼用バーナ。
【請求項3】
前記チャンバの先端部には円周等間隔で複数のスリットが穿設された請求項1の微粉炭燃焼用バーナ。
【請求項4】
前記チャンバの先端部は先端に向けて拡径したスカート部となっており、前記スリットの長さSは前記スカート部より基端側方向に延びる様に形成された請求項3の微粉炭燃焼用バーナ。
【請求項5】
前記スリットの長さSはチャンバ外径D、チャンバ全長Lに対して、S/D≧0.2、S≦0.1Lである請求項3の微粉炭燃焼用バーナ。
【請求項6】
前記スリットの長さSは前記凹孔の径の略1/10、又は100mmより大きい請求項3の微粉炭燃焼用バーナ。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2008−145006(P2008−145006A)
【公開日】平成20年6月26日(2008.6.26)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−330754(P2006−330754)
【出願日】平成18年12月7日(2006.12.7)
【出願人】(000000099)株式会社IHI (5,014)
【Fターム(参考)】