説明

微粒子分離装置および微粒子分離方法

【課題】分離効率が向上した微粒子分離装置等を提供すること。
【解決手段】本発明に係る微粒子分離装置は、第1仮想直線に沿って形成され、第1導入口と、接続口と、を有する第1流路と、前記第1仮想直線と交差する第2仮想直線に沿って形成され、第2導入口と、前記接続口と連続し前記接続口と対向する第1内壁面を有する接続部と、を有する第2流路と、前記接続部と連続する第3流路と、前記第3流路を構成する内壁面のうち、前記第1内壁面と連続する第2内壁面に配置されるフィルタ部と、前記フィルタ部を介して前記第3流路と連続する第4流路と、を含む。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、微粒子分離装置および微粒子分離方法に関する。
【背景技術】
【0002】
液相および固相の混濁液、あるいは液体中に固体粒子が分散した分散液から、所望の固相又は固体粒子を分離するための微粒子分離装置であって、数百マイクロメートル程度の微細なマイクロ流路を備えた微粒子分離装置が知られている。数百マイクロメートル程度の微細なマイクロ流路では、電場・遠心場などの外部操作を行わずとも、流れの体積に比べて表面積が非常に大きくなるため、その中に流体を導入すると、安定的に層流が形成される。このような微粒子分離装置は、例えば、工業的に均一な粒径をもつ合成粒子を製造する場合や、数種類の細胞が混合した細胞混合液(例えば、生体の血液など)から所望の粒径の細胞のみを分離回収する場合などに用いられる。
【0003】
例えば、非特許文献1には、2つの流路が合流するマイクロ流路を備える微粒子分離装置が開示されている。一方の流路には粒子を含む粒子分散液を連続的に導入し、他方の流路には粒子を含まない溶液を連続的に導入し、合流した流路内において、導入された粒子が片方の側壁に押し付けられながら流れる層流(流体が所定の方向に流れ、渦などの不規則な変動がほとんど発生しない状態)を形成し、壁からの粒子の中心位置(直径)の違いに基づいて、粒子を連続的に分離することが開示されている。
【0004】
しかしながら、非特許文献1で開示される分離装置では、例えば変形しやすい細胞のように流路の壁と粒子の中心位置との距離が変動する粒子を分離する場合には、所望のサイズの粒子を精度良く回収することは難しかった。また、回収される粒子のサイズ範囲を明確に決定することも難しく、高い分離精度を確保することは難しかった。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0005】
【非特許文献1】「マイクロ流路を用いた粒子の分級」(山田真澄、関実)、J.Vac.Soc.Jpn(真空)Vol.49、No.7、2006、p.10−p.14
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明は、以上のような問題点に鑑みてなされたものであり、本発明のいくつかの態様によれば、分離効率が向上した微粒子分離装置および微粒子分離方法を提供することができる。
【課題を解決するための手段】
【0007】
(1)本形態に係る微粒子分離装置は、第1仮想直線に沿って形成され、第1導入口と、接続口と、を有する第1流路と、前記第1仮想直線と交差する第2仮想直線に沿って形成され、第2導入口と、前記接続口と連続し前記接続口と対向する第1内壁面を有する接続部と、を有する第2流路と、前記接続部と連続する第3流路と、前記第3流路を構成する内壁面のうち、前記第1内壁面と連続する第2内壁面に配置されるフィルタ部と、前記フィルタ部を介して前記第3流路と連続する第4流路と、を含む。
【0008】
本形態に係る微粒子分離装置は、第3流路の上流側となる接続部において、第2流路と第1流路とが接続する。これによれば、接続部において、第1流路の接続口から流入した液体の圧力によって、第2流路を流れる液体は、第1内壁面側に押し当てられる。したがって、本形態に係る微粒子分離装置によれば、第2流路に粒子を含む液体が導入された場合に、該粒子は接続部において第1内壁面側に押し当てられて第3流路に導入されるため、第3流路の第2内壁面において、フィルタ部と該粒子との接触機会が増加する。したがって、積極的に該粒子をフィルタ部に接触させることができるため、微粒子分離装置の分離効率が向上する。
【0009】
また、本形態に係る微粒子分離装置は、フィルタ部が、第3流路の第2内壁面において、第3流路と第4流路とを連通する。フィルタ部が、第3流路が形成される方向(第3仮想直線)と平行な位置関係にあるため、フィルタ部を通過できない粒子は、フィルタ部に係留されにくく、第3流路の第1排出口側へ容易に流れることができる。したがって、本形態に係る微粒子分離装置は、フィルタ部が流路を塞ぐように設けられる場合(例えば、第3流路内の流れが全てフィルタ部を通過するようにフィルタ部が設けられる場合)と比べて、フィルタ部が詰まりにくい構造を有しているため、微粒子分離装置の分離効率が向上する。
【0010】
(2)本形態に係る微粒子分離装置において、前記第3流路は、前記第2流路の前記第2導入口と連続していてもよい。
【0011】
これによれば、仮に、フィルタ部を通過できる粒子が分離されなかった場合であっても、第3流路が第2導入口と連続しているため、粒子を含む液体が再度導入される。したがって、分離されなかった粒子を循環させてフィルタ部に接触させることでより確実に粒子を分離することができるため、微粒子分離装置の分離精度がさらに向上する。
【0012】
(3)本形態に係る微粒子分離装置において、前記第2流路に前記第1流路が接続する角度は、0度よりも大きく、90度以下であってもよい。
【0013】
これによれば、第1流路および第2流路に液体が導入された場合に、第2流路から導入された液体を、層流を維持しつつ、フィルタ部の側へ寄せることができる。したがって、液体に含まれる粒子とフィルタ部50との接触機会をより増加させることができるため、微粒子分離装置の分離効率がさらに向上する。
【0014】
(4)本形態に係る微粒子分離装置において前記フィルタ部は、さらに、前記第1内壁面に配置され、前記第4流路は、前記フィルタ部を介して前記第2流路と連続してもよい。
【0015】
これによれば、第2流路の接続部においてもフィルタ部が配置されるため、フィルタ部と粒子との接触機会がさらに増加し、微粒子分離装置の分離効率がさらに向上する。
【0016】
(5)本形態に係る微粒子分離装置において、前記第1流路、前記第2流路、および前記第3流路の流路幅は、10μm以上、100μm以下であってもよい。
【0017】
これによれば、本形態に係る微粒子分離装置に導入された液体の流れを容易に層流とすることができる。
【0018】
(6)本形態に係る微粒子分離方法は、微粒子分離装置を用いて微粒子を分離する微粒子分離方法であって、前記微粒子分離装置は、第1仮想直線に沿って形成され、第1導入口と接続口とを有する第1流路と、前記第1仮想直線と交差する第2仮想直線に沿って形成され、第2導入口と、前記接続口と連続し、前記接続口と対向する第1内壁面を有する接続部と、を有する第2流路と、前記接続部と連続する第3流路と、前記第3流路を構成する内壁面のうち、前記第1内壁面と連続する第2内壁面に配置されるフィルタ部と、前記フィルタ部を介して前記第3流路と連続する第4流路と、を含み、前記微粒子分離方法は、分散媒からなる第1溶液を前記第1導入口に導入することと、分散媒に互いに異なる粒径を有する複数の粒子が分散した第2溶液を、前記第2導入口に導入することと、前記接続口から流入する前記第1溶液を用いて、前記第2溶液に含まれる前記粒子を前記接続部の前記第1内壁面側に押し付けることと、前記フィルタ部において、複数の前記粒子のうち、所定の粒径以下の粒子を前記第4流路へ通過させることと、を含む。
【0019】
本形態に係る微粒子分離方法は、第2流路の接続部において、接続口から流入する第1溶液でもって、第2溶液に含まれる粒子を接続部の第1内壁面側に押し付ける工程を有する。これによれば、次の工程である、粒子を分離する工程において、液中を流れる粒子のフィルタ部に対する接触機会を増加させることができる。したがって、微粒子分離方法の分離効率が向上する。
【0020】
また、本形態に係る微粒子分離方法は、粒子を分離する工程において、フィルタを用いて粒子を分離する。これによれば、フィルタを通過できる粒子と、フィルタを通過できない粒子とを精度よく分離することができる。したがって、微粒子分離方法の分離精度が向上する。
【図面の簡単な説明】
【0021】
【図1】第1実施形態に係る微粒子分離装置を模式的に示す断面図。
【図2】第2実施形態に係る微粒子分離装置を模式的に示す断面図。
【図3】第3実施形態に係る微粒子分離装置を模式的に示す断面図。
【図4】第4実施形態に係る微粒子分離装置を模式的に示す断面図。
【図5】第1実施形態に係る微粒子分離装置を適用した微粒子分離方法を模式的に説明する断面図。
【図6】第1〜第4実施形態に係る微粒子分離装置を適用した微粒子分離方法を説明するフローチャート図。
【図7】第1〜第4実施形態に係る微粒子分離装置を適用した微粒子分離システムを説明するブロック図。
【図8】第1実施形態に係る微粒子分離装置のシミュレーションにおけるモデル断面図。
【発明を実施するための形態】
【0022】
以下、本発明の好適な実施形態について図面を用いて詳細に説明する。なお、以下に説明する実施の形態は、特許請求の範囲に記載された本発明の内容を不当に限定するものではない。また以下で説明される構成の全てが本発明の必須構成要件であるとは限らない。
【0023】
1. 第1実施形態に係る微粒子分離装置
図1は、第1実施形態に係る微粒子分離装置100を模式的に表す断面図である。図1に示すように、第1実施形態に係る微粒子分離装置100は、互いに異なる粒径を有する粒子βと粒子γ(図の例では、粒子γの粒径>粒子βの粒径)が分散した溶液が導入された場合に、粒子βと粒子γとを分離することを目的とする。以下、その他の実施形態においても同様である。
【0024】
なお、図1は、微粒子分離装置100の第1仮想直線Aおよび第2仮想直線Bを含む平面における断面を模式的に示している。以下、図2ないし図5においても同様である。
【0025】
また、本実施形態の説明においては、微粒子分離装置100が設置される仮想平面上において第3流路30が形成される方向をX軸方向とし(図1参照)、X軸方向と直交する方向をY軸方向(第3流路30の流路幅方向)とし、X軸およびY軸に直交する方向をZ軸方向(第3流路30の深さ方向)として説明する。以下、その他の実施形態においても同様である。
【0026】
第1実施形態に係る微粒子分離装置100は、図1に示すように、第1導入口11を有し、第1仮想直線Aに沿って形成され、接続口17を有する第1流路10と、第2導入口21を有し、第1仮想直線Aと交差する第2仮想直線Bに沿って形成され、第1流路10の接続口17が連続する接続部28を有する第2流路20と、第2流路20の接続部28と連続し、第3仮想直線Cに沿って形成され、第1排出口31を有する第3流路30と、第4仮想直線Dに沿って形成され、第2排出口41を有する第4流路40と、第3流路0と第4流路40との間に設けられるフィルタ部50と、を含む。
【0027】
第1流路10は、図1に示すように、第1導入口11を有し、第1仮想直線Aに沿って形成され、接続口17を有する。接続口17は、接続部28において後述される第2流路20と接続する。本実施形態において、第1仮想直線Aは、Y軸方向に沿った直線である。図1においては、第1仮想直線Aは、第1流路10の流路幅(X軸方向における幅)の中心位置と重なっている。
【0028】
第1流路10の、Y軸方向に垂直な面で切った断面(以後「第1流路10の垂直断面」と記載する。)の形状は特に限定されない。第1流路10の垂直断面の形状は、例えば、矩形(正方形又は長方形)であってもよい。また、第1流路10の垂直断面の形状は、第1導入口11から接続口17までの間において同一であってもよいし、異なる箇所があってもよい。
【0029】
第1流路10の流路幅(図示の例では、X軸方向の幅)、流路深さ(図示の例では、Z軸方向の幅)および流路長さ(図示の例では、Y軸方向の長さ)は、特に限定されないが、第1流路10の流路幅は、例えば、10μm以上、100μm以下であることが好ましい。第1流路10の流路深さは、例えば、10μm以上、100μm以下であることが好ましい。つまりは、第1流路10は、流路の幅および深さが、マイクロメートルのオーダーとなるように加工されたマイクロ流路であることが好ましい。これによれば、第1流路10に導入された液体の流れの体積に比べて表面積を非常に大きくすることができる。したがって、第1流路10に連続的に導入された液体の流れの状態を、容易に層流状態とすることができる。
【0030】
第1流路10は内壁面15によって構成される。第1流路10の垂直断面の形状が矩形である場合、第1流路10は、4つの内壁面15から構成される(図においては、4つの内壁面15うち2つを図示)。また、図示はされないが、第1流路10の垂直断面の形状が略円形である場合、円筒状に連続した内壁面から構成されていてもよい。
【0031】
第2流路20は、図1に示すように、第2導入口21を有し、第1仮想直線Aと交差する第2仮想直線Bに沿って形成され、第1流路10の接続口17が連続する接続部28を有する。本実施形態において、第2仮想直線Bは、X軸に平行な直線である。すなわち、本実施形態において、第2仮想直線Bは第1仮想線Aと直交している。図1に示すように、第2仮想直線Bは、第2流路20の流路幅(Y軸方向における幅)の中心位置と重なっている。
【0032】
第2流路20の、X軸方向に垂直な面で切った断面(以後「垂直断面」と記載する。)の形状は特に限定されない。第2流路20の垂直断面の形状は、例えば、矩形(正方形又は長方形)であってもよい。また、第2流路20の垂直断面の形状は、第2導入口21から接続部28までの間において同一であってもよいし、異なる箇所があってもよい。
【0033】
第2流路20の流路幅(図示の例では、Y軸方向の幅)、流路深さ(図示の例では、Z軸方向の深さ)および流路長さ(図示の例では、X軸方向の長さ)は、特に限定されない。第2流路20の流路幅および流路深さは、例えば、第1流路10の流路幅および流路深さとそれぞれ同じであってもよい。これにより、第2流路20に連続的に導入された液体の流れの状態を、容易に層流状態とすることができる。
【0034】
第2流路20は流路を区画する内壁面25によって構成される。第2流路20の垂直断面の形状が矩形である場合、第2流路20は、4つの内壁面25から構成される(図示の例では、両側面と底面のみ図示)。
【0035】
接続部28は、図1に示すように、第1流路10の接続口17が第2流路に連続する部分であり、第1仮想直線Aと第2仮想直線Bとが交差する部分である。接続部28は、第2流路20の一部であるため、内壁面25によって構成される。図1に示すように、接続部28を構成する内壁面25は、接続口17(の開口面)と対向する領域である第1内壁面26を有する。第1内壁面26は、内壁面25の内、接続口17が接続した部分とは反対側の内壁面である。
【0036】
本実施形態において、図1に示すように、第2流路20に第1流路10が接続する接続角度αは、90度である。接続角度αは、第1仮想直線Aと第2仮想直線Bとのなす角度のうち第1流路側の角度である。
【0037】
第3流路30は、図1に示すように、第2流路20の下流側において、第2流路20の接続部28と連続し、第3仮想直線Cに沿って形成され、第1排出口31を有する。本実施形態において、第3仮想直線Cは、X軸方向に沿った直線であって、第2仮想線Bと同一直線である。図1に示すように、第3仮想直線Cは、第3流路30の流路幅(Y軸方向における幅)の中心位置と重なっている。
【0038】
第3流路30の、X軸方向に垂直な面で切った断面(以後「垂直断面」と記載する。)の形状は特に限定されない。第3流路30の垂直断面の形状は、例えば、矩形(正方形又は長方形)であってもよい。また、第3流路30の垂直断面の形状は、接続部28と連続する部分から第1排出口31までの間において同一であってもよいし、異なる箇所があってもよい。
【0039】
第3流路30の流路幅(図示の例では、Y軸方向の幅)、流路深さ(図示の例では、Z軸方向の深さ)および流路長さ(図示の例では、X軸方向の長さ)は、特に限定されない。第3流路30の流路幅および流路深さは、例えば、第2流路20の流路幅および流路深さとそれぞれ同じであってもよい。これにより、第3流路30に連続的に導入された液体の流れの状態を、容易に層流状態とすることができる。
【0040】
第3流路30は流路を区画する内壁面35によって構成される。第3流路30の垂直断面の形状が矩形である場合、第3流路30は、4つの内壁面35から構成される(図示の例では、両側面と底面のみ図示)。ここで、図1に示すように、第3流路30を構成する内壁面35のうち、接続部28の第1内壁面26と連続する内壁面を第2内壁面36とする。
【0041】
本実施形態に係る微粒子分離装置100の変形例として、第3流路30の第1排出口31は、第2流路20の第2導入口21と連続した循環経路と接続されていてもよい。つまりは、第2流路20と第3流路30は、連続した循環流路であってもよい。これによれば、後述されるフィルタ部50を通過できる粒子が仮に分離されなかった場合であっても、循環経路から第2流路20へ再度導入される。したがって、分離されなかった粒子を循環させてフィルタ部50に接触させることで確実に分離することができるため、微粒子分離装置100の分離精度をより向上させることができる。
【0042】
第4流路40は、図1に示すように、第4仮想直線Dに沿って形成され、第2排出口41を有する。第4流路40は、後述されるフィルタ部50を介して第3流路30と連通する。本実施形態において、第4仮想直線Dの形成される方向は特に限定されない。例えば、図1に示すように、第4仮想直線DはX軸方向に沿った直線であって、第3仮想線Cと平行な直線であってもよい。図示はされないが、第4仮想直線Dはフィルタ部50からY軸方向に形成される直線であってもよい。図1に示すように、第4仮想直線Dは、第4流路40の流路幅(Y軸方向における幅)の中心位置と重なっている。
【0043】
第4流路40の、Y軸方向に垂直な面で切った断面(以後「垂直断面」と記載する。)の形状は液体を流すことができる限り特に限定されない。第4流路40の垂直断面の形状は、例えば、矩形(正方形又は長方形)であってもよい。また、第4流路40の垂直断面の形状は、フィルタ部50と連続する部分から第2排出口41までの間において同一であってもよいし、異なる箇所があってもよい。
【0044】
第4流路40の流路幅(図示の例では、Y軸方向の幅)、流路深さ(図示の例では、Z軸方向の深さ)および流路長さ(図示の例では、X軸方向の長さ)は、特に限定されない。第4流路40の流路幅および流路深さは、例えば、第3流路30の流路幅および流路深さとそれぞれ同じであってもよい。また、第4流路40の流路幅および流路深さは、例えば、第3流路30の流路幅および流路深さよりも、それぞれ大きくてもよい。
【0045】
フィルタ部50は、図1に示すように、第3流路30と第4流路40との間に設けられる。フィルタ部50は、第3流路30を構成する内壁面35のうち、第1内壁面26と連続する第2内壁面36において、第3流路30と第4流路40とを連通させる。言い換えれば、第3流路30の第2内壁面36の一部は、フィルタ部50から構成されている。
【0046】
フィルタ部50の構成は、所定の粒径以下の粒子を通過させることができる限り、特に限定されない。例えば、フィルタ部50は、複数の通路51(第3流路30と第4流路40とを連通する通路)が一定の間隔で隣り合うように形成されたスリット状のフィルタ部であってもよい。また、フィルタ部50は、複数の通路51(第3流路30と第4流路40とを連通する通路)が一定の間隔で隣り合うように形成されたメッシュ状のフィルタ部であってもよい。
【0047】
フィルタ部50は、第3流路30の第2内壁面36の少なくとも一部領域において、第3流路30と第4流路40とを連通するように設けられていればよい。例えば、図1に示すように、接続部28の第1内壁面26の下流側(第3流路30側)と第2内壁面36に設けられたフィルタ部50とが連続するように設けられていてもよい。また、図示はされないが、第3流路30の第2内壁面36の全面においてフィルタ部50が設けられていてもよい。
【0048】
また、フィルタ部50の通路51の幅は、分離する粒子の大きさに応じて適宜設計することができる。例えば、本実施形態の微粒子分離装置100を用いて生体の血液成分を含む液体から単球を分離する場合、フィルタ部50の通路51の幅は、6.5μm以上16.8μm以下であってもよい。
【0049】
以上の構成により、第1実施形態に係る微粒子分離装置100を構成する。第1流路10、第2流路20および第3流路30が形成される部材の材料は、特に限定されない。材料としては、例えば、ガラス、シリコーンなどの無機材料、ポリメタクリル酸メチル樹脂(PMMA)、ポリカーボネート樹脂(PC)、シリコーン樹脂(PDMS)などの樹脂材料、又はそれらを組み合わせたハイブリッド材料などを挙げることができる。
【0050】
微粒子分離装置100の製造方法は、特に限定されず、公知の成型加工やマイクロマシン微細加工技術(MEMS;Micro Electro Mechanical Systems)によって製造することができる。例えば、公知のフォトリソグラフィー技術などによって溝が形成された基板や穴が形成された基板を適宜組み合わせることによって、第1実施形態に係る微粒子分離装置100を製造してもよい。
【0051】
以上により、第1実施形態に係る微粒子分離装置100を構成することができる。前述のように、第1実施形態に係る微粒子分離装置100は、互いに異なる粒径を有する粒子βと粒子γ(図の例では、粒子γの粒径>粒子βの粒径)が分散した溶液が導入された場合に、粒子βと粒子γとを分離することを目的とする。図1に示すように、液体に分散した粒子βと粒子γは、上流側である第2導入口21から導入され、下流側である第3流路30へと流れる。ここで、接続部28において、第2流路20に第1流路10が接続されているため、粒子βおよび粒子γは、第1流路10の接続口17と対向する第1内壁面26側に押し付けなれながら第3流路30へ流入する。このとき、粒子βおよび粒子γは、第3流路30の第1内壁面26と連続する第2内壁面36に配置されたフィルタ部50に接触する。粒子βおよび粒子γ(粒子γの粒径>粒子βの粒径)を分離する場合、フィルタ部50の通路51の幅は、粒子γよりも小さく、かつ、粒子βよりも大きくなるように選択される。したがって、粒子βはフィルタ部50を通過して第4流路40へ流れ、粒子γはフィルタ部50を通過しないため、粒子βと粒子γとを分離することができる。
【0052】
本実施形態に係る微粒子分離装置100は、例えば、以下の特徴を有する。
【0053】
本形態に係る微粒子分離装置100は、第3流路30の上流側となる接続部28において、第2流路20に第1流路10が接続する。これによれば、接続部28において、第1流路10の接続口17から流入した液体の圧力によって、第2流路20を流れる液体は、第1内壁面26側に押し当てられる。したがって、微粒子分離装置100によれば、第2流路20に粒子を含む液体が導入された場合、該粒子は接続部28において第1内壁面側に押し当てられて第3流路30に導入されるため、第3流路30の第2内壁面36において、フィルタ部50と該粒子との接触機会が増加する。したがって、単に第2流路20に粒子を含む液体を流通させる場合と比較して積極的に該粒子をフィルタ部に接触させることができるため、微粒子分離装置100の分離効率が向上する。
【0054】
また、本形態に係る微粒子分離装置100は、フィルタ部50が、第3流路30の第2内壁面36において、第3流路30と第4流路40とを連通する。フィルタ部50が、第3流路30が形成される方向(第3仮想直線C)と平行な位置関係にあるため、フィルタ部50を通過できない粒子は、フィルタ部50に係留されにくく、第3流路30の第1排出口31側へ容易に流れることができる。したがって、フィルタ部50が詰まりにくい構造を有しているため、微粒子分離装置100の分離効率が向上する。
【0055】
また、本形態に係る微粒子分離装置100では、所定の粒径以下の粒子のみがフィルタ部50を通過することができる。これによれば、フィルタ部50を通過できる粒子と、フィルタ部50を通過できない粒子とを精度よく分離することができる。したがって、微粒子分離装置100の分離精度が向上する。
【0056】
また、本形態に係る微粒子分離装置100では、フィルタ部50の通路51の幅は、例えば、6.5μm以上、16.8μm以下であってもよい。ここで、一般的な単球の直径は、他の血液成分と比べてサイズの大きい13〜20μm程度である。これによれば、単球を通過させず、かつ、その他の血液成分を通過させるように、通路51の幅を選択することで、血液から単球を精度よく分離することができる。したがって、フィルタ部50の通路51の幅は、一般的な単球の直径に対して50〜80%となる6.5μm以上16.8μm以下の範囲から選択されてもよい。
【0057】
2. 第2実施形態に係る微粒子分離装置
図2は、第2実施形態に係る微粒子分離装置200を模式的に表す断面図である。第1実施形態に係る微粒子分離装置100と同様な構成については同一の符号を付し、その詳細な説明を省略する。
【0058】
本実施形態に係る微粒子分離装置200では、図2に示すように、第2流路20に第1流路10が接続する接続角度αは、90度より小さい。第1流路10が沿って形成される第1仮想直線Aは、第2仮想直線Bと直交せず、直交する位置よりも第2流路側に傾斜して形成される。すなわち、本実施形態においては、接続角度αは、0度<α<90度を満たす。より好適には、接続角度αは、20度<α<90度を満たす。例えば、接続角度αは、第1仮想直線Aが、フィルタ部50と交差するように調整されてもよい。
【0059】
第2実施形態に係る微粒子分離装置200においても、第1実施形態に係る微粒子分離装置100と同様な効果を奏する。
【0060】
また、第2実施形態に係る微粒子分離装置200によれば、第1流路10の形成される方向(第1仮想直線A)の延長線上に、フィルタ部50が配置される(図2参照)。これによれば、第1流路10および第2流路20に液体が導入された場合に、第2流路から導入された液体を、フィルタ部50の側へ寄せることができる。言い換えれば、第2実施形態に係る微粒子分離装置200は、第1実施形態に係る微粒子分離装置100に比べて、第1流路10からフィルタ部50(第4流路40)へ向かう流れをより積極的に形成することができる。したがって、液体に含まれる粒子とフィルタ部50との接触機会をより増加させることができるため、微粒子分離装置200の分離効率をより向上させることができる。
【0061】
3. 第3実施形態に係る微粒子分離装置
図3は、第3実施形態に係る微粒子分離装置300を模式的に表す平面図である。第1実施形態に係る微粒子分離装置100と同様な構成については同一の符号を付し、その詳細な説明を省略する。
【0062】
本実施形態に係る微粒子分離装置300では、図3に示すように、フィルタ部50aは、さらに、接続部28と第4流路40との間に連続して設けられる。言い換えれば、フィルタ部50aは、第2流路20の第1内壁面26及び第3流路30の第2内壁面36に形成される。フィルタ部50aは、第1内壁面26の全面に形成されていてもよいし、第1内壁面26の少なくとも一部に形成されていてもよい。
【0063】
第3実施形態に係る微粒子分離装置300においても、第1実施形態に係る微粒子分離装置100と同様な効果を奏する。
【0064】
また、第3実施形態に係る微粒子分離装置300においても、「2.第2実施形態に係る微粒子分離装置」の項で説明した種々の変形と同様の変形が可能であり、第2実施形態と同様の効果を得ることができる。
【0065】
また、第3実施形態に係る微粒子分離装置300によれば、第2流路20の接続部28においてもフィルタ部50aが配置されるため、フィルタ部50aと液体に含まれる粒子との接触機会がさらに増加し、微粒子分離装置の分離効率がさらに向上する。
【0066】
4. 第4実施形態に係る微粒子分離装
図4は、第4実施形態に係る微粒子分離装置400を模式的に表す平面図である。第1実施形態に係る微粒子分離装置100と同様な構成については同一の符号を付し、その詳細な説明を省略する。
【0067】
本実施形態に係る微粒子分離装置400では、図4に示すように、第2仮想直線Bと、第3仮想直線C´とが同一直線上に配置されず、接続部28において互いに交差する直線である。本実施形態において、第1仮想直線A、第2仮想直線Bおよび第3仮想直線C´は、それぞれ異なる方向に形成され、接続部28において互いに交差する直線である。
【0068】
第4実施形態に係る微粒子分離装置400においても、第1実施形態に係る微粒子分離装置100と同様な効果を奏する。
【0069】
また、第4実施形態に係る微粒子分離装置400においても、「2.第2実施形態に係る微粒子分離装置」および「3.第3実施形態の変形例に係る微粒子分離装置」の項で説明した種々の変形と同様の変形が可能である。
【0070】
5. 微粒子分離方法
以下において、微粒子分離方法について図面を参照しながら説明する。なお、以下においては、第1実施形態に係る微粒子分離装置100を適用した場合の微粒子分離方法として説明するが、第2実施形態に係る微粒子分離装置200、第3実施形態に係る微粒子分離装置300および第4実施形態に係る微粒子分離装置400も同様に適用することができる。
【0071】
図5(A)は、本実施形態に係る微粒子分離装置100の接続部28よりも上流側の第2流路20において、液体が流れる状態を説明する図であり、図5(B)は、本実施形態に係る微粒子分離装置100の接続部28周辺において、液体が流れる状態を説明する図である。図6は、微粒子分離方法を説明するフローチャート図である。
【0072】
本実施形態に係る微粒子分離方法は、図6に示すように、微粒子分離装置100(200、300、400)を準備する工程(S1)と、分散媒のみからなる第1溶液と、分散媒に互いに異なる粒径を有する複数の粒子が分散した第2溶液と、を準備する工程(S2)と、第1導入口11に第1溶液を、第2導入口21に第2溶液を、それぞれ導入する工程(S3)と、第2流路20の接続部28において、接続口17から流入する第1溶液でもって、第2溶液に含まれる粒子を接続部28の第1内壁面26側に押し付ける工程(S4)と、フィルタ部50において、複数の粒子の内、所定の粒径以下の粒子を第4流路40へ通過させ、所定粒径より大きい粒子を第1排出口31から排出することで、粒子を粒径によって分離する工程(S5)と、を含む。
【0073】
まず、微粒子分離装置100を準備する(S1)。準備される微粒子分離装置は、第1〜第4実施形態のいずれかに係る微粒子分離装置であってもよいし、それぞれの実施形態を組み合わせた変形例に係る微粒子分離装置であってもよい。
【0074】
次に、第1溶液および第2溶液を準備し、微粒子分離装置100に導入する(S2、S3)。
【0075】
第1流路10の第1導入口11に導入される液体である第1溶液は、固相又は固体粒子などを含まない、分散媒からなる溶液である。図1に示すように、第1導入口11から導入された第1溶液は、第1流路10を流れて、接続口17から接続部28(第2流路20)に流入する。ここで、図示されないポンプを介して、所定の圧力でもって第1溶液を導入してもよい。第1溶液を第1流路10に導入する圧力をP1とする。
【0076】
第2流路20の第2導入口21に導入される液体である第2溶液は、固相又は固体粒子などが分散媒に分散した溶液である。例えば、図5(A)に示すように、第2溶液では、分散媒に互いに異なる粒径を有する複数の粒子(図示の例では、「粒子γ」と「粒子β」であり、「粒子γの粒径>粒子βの粒径」とする)が分散している。図1に示すように、第2溶液は、上流側である第2流路20から接続部28を介して下流側である第3流路30へ流れる。ここで、図示されないポンプを介して、所定の圧力でもって第2溶液を導入してもよい。第2溶液を第2流路20に導入する圧力をP2とする。
【0077】
第2溶液は、例えば、生体の血液成分(リンパ球や単球など)が分散されて含まれている液体であってもよい。第2溶液は、例えば、血液そのものであってもよいし、成分採血した血液や、血液と他の液体との混合液であってもよい。なお、第1溶液と第2溶液の液相は同じ成分を含む液体であっても、異なる成分が含まれてもよい。すなわち、第1溶液は第2溶液から粒子を除いた液体であっても、別途調製された液体であっても良い。例えば、第2溶液が血液成分を含む場合には、第1溶液は生理食塩水等であっても良い。
【0078】
ここで、図5(A)に示すように、第2導入口21から導入された第2溶液は、X軸方向(流路方向)に流れる層流F1を形成する。ここで、図5(A)および図5(B)における矢印は、液体の流れる向きと流速を示す。図5(A)に示すように、層流状態の液体は、流路の中心ほど流速が速く(矢印が長く)、内壁面に近いほど摩擦によって流速が遅い(矢印が短い)。
【0079】
次に、接続部28において、接続口17から流入する第1溶液でもって、第2溶液に含まれる粒子を接続部28の第1内壁面26側に押し付ける(S4)。
【0080】
接続部28には第1流路10と連通した接続口17が設けられている。接続口17からは、Y軸方向に流れる第1溶液が流入し、層流F1(第2溶液)を第1内壁面26側へ押し当てる。したがって、接続部28では、第1内壁面26側に押し当てられた層流F1´が形成される。これに伴い、層流F1´に含まれる複数の粒子(「粒子β」と「粒子γ」)も、接続部28において第1内壁面26側に押し当てられる。
【0081】
次に、フィルタ部50において、複数の粒子の内、所定の粒径以下の粒子を第4流路40へ通過させ、所定粒径より大きい粒子を第1排出口31から排出することで、粒子を粒径によって分離する(S5)。
【0082】
層流F1´は、第1内壁面26側に押し当てられて、第3流路30に導入される。第3流路30の第1内壁面26と連続する第2内壁面36において、第3流路30と第4流路40とを連通するフィルタ部50が設けられているため、層流F1´は、慣性によってフィルタ部50に押し当てられ、異なる粒径を有する複数の粒子は、粒径により分離される。例えば、図5(B)に示すように、フィルタ部50を通過できない粒径を有する粒子γは、そのまま第3流路30を流れ、第1排出口31から排出される。また、例えば、図5(B)に示すように、フィルタ部50を通過できる粒径を有する粒子βは、フィルタ部50を通過して第4流路40へ流れ、第2排出口41から排出される。
【0083】
ここで、第3流路においてフィルタ部50よりも下流の液体を第3溶液とし、第4流路の液体を第4溶液とする。すなわち、第3溶液はフィルタ部50を通過できない粒径を有する粒子γを含み、第4溶液はフィルタ部50を通過した粒子βを含む。この場合、図示されないイジェクターを介して、所定の圧力でもって第3溶液を第1排出口31から排出してもよい。ここで、第3溶液を第3流路30から排出する圧力をP3とする。また、図示されないイジェクターを介して、所定の圧力でもって第4溶液を第2排出口41から排出してもよい。ここで、第4溶液を第4流路40から排出する圧力をP4とする。
【0084】
本実施形態に係る微粒子分離方法において、第1溶液を導入する圧力P1、第2溶液を導入する圧力P2、第3溶液を排出する圧力P3および第4溶液を排出する圧力P4は、同じ圧力に設定してもよい。
【0085】
また、本実施形態に係る微粒子分離方法において、第1溶液を導入する圧力P1が第2溶液を導入する圧力P2よりも大きな圧力となるように設定してもよい。これによれば、第1溶液で粒子を押し付ける工程(S4)において、より確実に粒子を第1内壁面26側へ押し当てることができ、さらには、フィルタ部50で粒子を分離する工程(S5)において、第3流路30から第4流路40側へ向かう流れをより強くすることができるため、分離の確実性を向上させることができる。
【0086】
また、本実施形態に係る微粒子分離方法において、第3溶液を排出する圧力P3が第2溶液を導入する圧力P2よりも大きな圧力となるように設定してもよい。これによれば、含む第3流路30を流れる液体の流速をより速くすることができるため、フィルタ部50周辺からフィルタ部50を通過しなかった粒子を移動させやすい。したがって、フィルタ部50を詰まりにくくすることができる。
【0087】
6. 微粒子分離システム
図7は、微粒子分離システム1000を説明するためのブロック図である。図7において、白矢印は液体の流れおよび配管を示している。
【0088】
微粒子分離システム1000は、微粒子分離装置100(200、300、400)、第1溶液が収容される第1容器110、第2溶液が収容される第2容器112、第1排出口31から排出される溶液を回収する第1回収容器124および第2排出口41から排出される溶液を回収する第2回収容器130を含む。
【0089】
図7に示される例では、微粒子分離システム1000は、上記構成に加えて、ポンプ114、115、バルブ122を含んで構成されている。図示はされないが、微粒子分離システム1000は、CPU(Central Processing Unit)とメモリーとを有するコンピューターなどからなる制御部や、制御部と電気的に接続された圧力センサーなどをさらに含んでいてもよい。制御部は、圧力センサーによる圧力の検出結果に基づいて、バルブの開閉やポンプの動作を制御する。
【0090】
第1容器110には、第1溶液が収容される。第1溶液の例としては、例えば、洗浄液(例えば、生理食塩水、培養液、緩衝液など)を挙げることができる。第2容器112には、第2溶液が収容される。第2溶液の例としては、例えば、生体の血液成分を含む液体を挙げることができる。
【0091】
第1溶液は、ポンプ114によって第1導入口11に導入され、第2溶液は、ポンプ115によって第2導入口21に導入される。
【0092】
バルブ122は、三方弁バルブであり、フィルタ部50を通過しない粒子を含む第3溶液の流れを制御する。バルブ122は、第3溶液を第1回収容器124又は微粒子分離装置100の第2導入口21へ送ることができる。ここで、図示はしないが、バルブ122と第2導入口21との間にポンプが設けられていてもよい。
【0093】
第1回収容器124は、微粒子分離装置100(200、300、400)の第3流路30の第1排出口31から排出される液体を収容する。血液から単球を分離する場合には、第1回収容器124に、フィルタ部50を通過しなかった血液成分として単球が回収されてもよい。
【0094】
第1回収容器124は、単球を樹状細胞に誘導するための試薬を添加したり、培地交換したりするためのバルブが設けられていてもよい。第1回収容器124の内壁面は、樹状細胞が剥離しやすい構造や材質で構成されていることが好ましい。例えば、ポリテトラフルオロエチレン(テフロン(登録商標))などの撥水性材料、親水コート表面を持つ高分子有機化合物又は無機化合物などで構成されていたり、微小凹凸やマイクロポスト状の構造を有していたりしてもよい。
【0095】
第2回収容器130は、微粒子分離装置100(200、300、400)の第4流路40の第2排出口41から排出される液体を収容する。第2回収容器130には、フィルタ部50を通過した血液成分が回収されていてもよい。
【0096】
7. シミュレーション例
次に、シミュレーション例について説明する。シミュレーションソフトには、STAR−LT(株式会社シーディー・アダプコ・ジャパン社製)を用いた。液体の物性条件は水の物性をモデルとし、分子量18、参照温度293.1K、密度998.2kg/m3、体積膨張率0、比熱4183J/kg・K、分子粘性0.001002Pa・s、熱伝導率0.603W/m・K、形成熱−15870000、形成温度298.1Kとした。
【0097】
図8は、シミュレーション例について説明するための微粒子分離装置のモデル断面図である。図8に示されるモデルでは、第1流路10に第1導入口11が設けられ、第2流路20に第2導入口21が設けられている。フィルタ部50は、複数の通路51がスリット状に形成されている。液体の流れる方向から見た第1流路10、第2流路20および第3流路30の断面の形状は長方形、幅は100μm、高さは30μmである。また、フィルタ部50の通路51の幅は5μmである。
【0098】
上記条件において、各流路における液体の速度ベクトル(流れの状態)ついてのシミュレーションを行った。
【0099】
図8の第1流路10、第2流路20、第3流路30およびフィルタ部50内に表示される矢印は、液体の速度ベクトルを表す。
【0100】
図8に示すように。第2流路20において液体は層流状態であった。第1流路から流入した液体の流れによって、第2流路を流れる液体は、第1内壁面26側へ押し付けられており、これによって、フィルタ部50を通過する流れが発生したことがわかった。
【0101】
以上のシミュレーション結果から、微粒子分離装置100(200、300、400)は、第3流路30の上流側となる接続部28において、第2流路20に第1流路10が接続することによって、フィルタ部50へ向かう流れが発生することが確認された。これにより、第2流路20を流れる粒子が、接続部28において、第1内壁面26側へ押し付けられ、フィルタ部50との接触機会が増加することが確認された。
【0102】
なお、上述した実施形態および変形例は一例であって、これらに限定されるわけではない。例えば各実施形態および各変形例は、複数を適宜組み合わせることが可能である。
【0103】
本発明は、上述した実施形態に限定されるものではなく、さらに種々の変形が可能である。例えば、本発明は、実施形態で説明した構成と実質的に同一の構成(例えば、機能、方法および結果が同一の構成、あるいは目的および効果が同一の構成)を含む。また、本発明は、実施形態で説明した構成の本質的でない部分を置き換えた構成を含む。また、本発明は、実施形態で説明した構成と同一の作用効果を奏する構成又は同一の目的を達成することができる構成を含む。また、本発明は、実施形態で説明した構成に公知技術を付加した構成を含む。
【符号の説明】
【0104】
10 第1流路、11 第1導入口、15 内壁面、17 接続口、20 第2流路、
21 第2導入口、25 内壁面、26 第1内壁面、28 接続部、30 第3流路、
31 第1排出口、35 内壁面、36 第2内壁面、40 第4流路、
41 第2排出口、50、50a フィルタ部、51 通路、
100、200、300、400 微粒子分離装置、
110 第1容器、112 第2容器、114、115 ポンプ、122 バルブ、
124 第1回収容器、130 第2回収容器、1000 微粒子分離システム

【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1仮想直線に沿って形成され、第1導入口と、接続口と、を有する第1流路と、
前記第1仮想直線と交差する第2仮想直線に沿って形成され、第2導入口と、前記接続口と連続し前記接続口と対向する第1内壁面を有する接続部と、を有する第2流路と、
前記接続部と連続する第3流路と、
前記第3流路を構成する内壁面のうち、前記第1内壁面と連続する第2内壁面に配置されるフィルタ部と、
前記フィルタ部を介して前記第3流路と連続する第4流路と、
を含む、微粒子分離装置。
【請求項2】
請求項1において、
前記第3流路は、前記第2流路の前記第2導入口と連続する、微粒子分離装置。
【請求項3】
請求項1または2において、
前記第2流路に前記第1流路が接続する角度は、0度よりも大きく、90度以下である、微粒子分離装置。
【請求項4】
請求項1から3のいずれか1項において、
前記フィルタ部は、さらに、前記第1内壁面に配置され、
前記第4流路は、前記フィルタ部を介して前記第2流路と連続する、微粒子分離装置。
【請求項5】
請求項1から4のいずれか1項において、
前記第1流路、前記第2流路、および前記第3流路の流路幅は、10μm以上、100μm以下である、微粒子分離装置。
【請求項6】
微粒子分離装置を用いて微粒子を分離する微粒子分離方法であって、
前記微粒子分離装置は、
第1仮想直線に沿って形成され、第1導入口と接続口とを有する第1流路と、
前記第1仮想直線と交差する第2仮想直線に沿って形成され、第2導入口と、前記接続口と連続し、前記接続口と対向する第1内壁面を有する接続部と、を有する第2流路と、
前記接続部と連続する第3流路と、
前記第3流路を構成する内壁面のうち、前記第1内壁面と連続する第2内壁面に配置されるフィルタ部と、
前記フィルタ部を介して前記第3流路と連続する第4流路と、
を含み、
前記微粒子分離方法は、
分散媒からなる第1溶液を前記第1導入口に導入することと、
分散媒に互いに異なる粒径を有する複数の粒子が分散した第2溶液を、前記第2導入口に導入することと、
前記接続口から流入する前記第1溶液を用いて、前記第2溶液に含まれる前記粒子を前記接続部の前記第1内壁面側に押し付けることと、
前記フィルタ部において、複数の前記粒子のうち、所定の粒径以下の粒子を前記第4流路へ通過させることと、を含む、微粒子分離方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2012−223683(P2012−223683A)
【公開日】平成24年11月15日(2012.11.15)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−91802(P2011−91802)
【出願日】平成23年4月18日(2011.4.18)
【出願人】(000002369)セイコーエプソン株式会社 (51,324)
【Fターム(参考)】