説明

微粒子吸入用製剤

【課題】加圧定量投与用吸入器の薬物製品として、ヒドロフルオロアルカンプロペラント中に安定に懸濁されている薬物微粒子からなるエーロゾル製剤の提供。
【解決手段】平均粒径0.1〜10ミクロンの範囲内で、一種または複数種の膜形成性リン脂質と少なくとも一種の界面活性剤の包被で被覆された薬物微粒子が、1,1,1,2-テトラフルオロエタン(HFA 134a)または1,1,1,2,3,3,3-ヘプタフルオロプロパン(HFA 227)プロペラント中に分散されたエーロゾル製剤。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は脂質膜で被覆され、ヒドロフルオロアルカンプロペラント中に懸濁されている薬物微粒子からなるエーロゾル製剤に関する。
【背景技術】
【0002】
加圧した定量投与用吸入器(metered- dose inhalers:MDI)における薬物の送達は現在クロロフルオロカーボンをプロペラントとして使用する。(オゾン層の枯渇可能性のある)クロロフルオロカーボンを徐々に削減させるため、クロロフルオロカーボンを使用して市場化されている製品はヒドロフルオロアルカン(hydrofluoroalkane:HFA)プロペラント、例えば、Du Pont Chemicals社, Wilmington, Delaware, USA により市場化されている1,1,1,2-テトラフルオロエタン (HFA 134a)および1,1,1,2,3,3,3-ヘプタフルオロプロパン (HFA 227)を使用して処方をし直さなければならない。提案されている代替プロペラントの溶媒挙動はクロロフルオロカーボンの挙動と全く異なる。例えば、極性、蒸気圧および密度のような物理化学的特性の相違があり、それにより、プロペラントとしてヒドロフルオロアルカンを使用して肺に送達するための加圧定量投与用吸入器の薬物製品の開発の必要性が生じてきた [Byron等, Resp. Drug Deliv., 4 (1994)]。
【0003】
多数の特許文献が吸入器に対する処方において物理化学特性のこれらの相違に向けられている。米国特許第5,492,688号明細書はMDI製剤に関し、単独のプロペラントとして90重量%を超えるHFA 134a、5重量%未満の微細化した薬物粒子およびポリエチレングリコール300、ジエチレングリコールモノエチルエーテル、ポリオキシエチレン20ソルビタンモノオレエート、プロポキシル化ポリエチレングリコールおよびポリオキシエチレン4ラウリルエーテルからなる群から選択される5重量%未満の極性界面活性剤を利用する。
【0004】
国際特許出願WO 91/04011号明細書は、単一の非過フルオロ化界面活性分散剤で被覆し、エーロゾルプロペラント中(前記分散剤はこのプロペラント中で実質的に不溶性である)に懸濁される微細に分割された予備微細化した固体薬物を含有する自己推進性エーロゾル組成物を記載する。適切な分散剤には、とりわけ、種々の油類、ソルビタンオレエート、ポリオキシエチレンソルビタン、レシチン、およびポリオキシエチレン等がある。使用する界面活性剤の量は粒子の凝集を回避し粒径を増加させることを可及的に少なく保つ。
【0005】
国際特許出願96/19197号明細書は医薬用エーロゾル製剤に関し、当該製剤は(a)ヒドロフルオロアルカンプロペラント、(b)当該プロペラントに分散可能な薬学的に活性なポリペプチドおよび(c) C8-C16脂肪酸もしくはその塩、胆汁酸塩、リン脂質またはアルキルサッカライドである界面活性剤を含み、この界面活性剤は下気道におけるポリペプチドの全身吸収を増強する。同一発明者による国際特許出願96/19198号明細書は医薬用エーロゾル製剤に関し、当該製剤はHFAプロペラント、生理学的に有効な量の吸入用薬剤、C8-C16脂肪酸もしくはその塩、胆汁酸塩、リン脂質またはアルキルサッカライドである界面活性剤を含む。両特許明細書とも、プロペラント中に活性剤および界面活性剤の物理的混合物を記載し、従前のカプセル封入工程が含まれない。
【0006】
国際特許出願96/40089号明細書は医薬用エーロゾル製剤に関し、エーロゾル送達のための医薬用組成物は薬物、ハロゲン化アルカンプロペラント、および生物学的適合性のあるC16+不飽和植物油を含有する。
【0007】
国際特許出願90/11754号明細書はエーロゾル製剤に関し、活性成分としてアゾール抗真菌剤を吸入により投与するのに適切な形態で含有する。
国際特許出願94/21228号明細書は医薬用エーロゾル製剤に関し、分散剤としてジオール/二酸縮合物を、さらにプロペラントおよび治療に有効な量の粒子状の薬物を含有する。
【0008】
国際特許出願96/06598号明細書はエーロゾル送達用の医薬組成物に関し、薬物、非クロロフルオロカーボンプロペラント、およびポリグリコール化グリセリドを含む。
【0009】
国際特許出願92/06675号明細書はエーロゾル製剤に関し、治療に有効な量の17,21ジプロピオン酸ベクロメタゾン、ヒドロフルオロカーボンの1,1,1,2-テトラフルオロエタン (HFA 134a)もしくは1,1,1,2,3,3,3-ヘプタフルオロプロパン (HFA 227)プロペラントまたは混合物および当該プロペラント中に17,21ジプロピオン酸ベクロメタゾンを溶解させるのに有効な量のエタノールを含有する。すべての17,21ジプロピオン酸ベクロメタゾンが製剤中に実質的に溶解し、界面活性剤を実質的に含まない。
【0010】
国際特許出願93/05765号明細書は加圧エーロゾル組成物に関し、液体化ヒドロフルオロアルカン、当該ヒドロフルオロアルカンに分散性の粉末薬物および該液体化ヒドロフルオロアルカンに可溶性のポリマーを含有する。このポリマーは、アミド含有単位またはカルボン酸エステル含有単位を繰り返し構造単位としてを含む。
【0011】
米国特許第4,174,295号明細書はエーロゾルに用いるためのプロペラント組成物に関し、当該組成物は本質的にプロペラント組成物の総重量を基準に5〜60重量%のCH2F2 および CF3-CH3から選択される水素含有フルオロカーボンならびにプロペラント組成物の総重量を基準に40〜95重量%の水素含有クロロフルオロカーボンもしくは水素含有フルオロカーボンから構成され、各水素含有クロロフルオロカーボンもしくは水素含有フルオロカーボンはCF3-CHClF, CF3-CH2Cl, CF3-CH2F, CClF2-CF3 もしくは CHF2-CH3から選択される。
【0012】
米国特許第5,118,494号明細書は懸濁エーロゾル製剤に関し、1,1,1,2-テトラフルオロエタン (HFA134a)もしくは1,1,1,2,3,3,3-ヘプタフルオロプロパン (HFA227)または混合物から選択されるヒドロフルオロカーボンを含むプロペラント、治療有効量の粉末薬物、および製剤の総重量を基準に約0.001〜0.6重量%の界面活性分散剤としての過フッ素化カルボン酸もしくはエステルを含有する。製剤は長期間にわたって薬物の結晶化を実質的に示さず、容易に再分散可能であり、再分散時薬物の再現性のある投与を妨げる程凝集が速くない。
【0013】
米国特許第5,126,123号明細書はエーロゾル吸入薬製剤に関し、当該製剤は生理学的有効量の微細化吸入薬および1,1,1,2-テトラフルオロエタン中に懸濁状態の1,1,1,2-テトラフルオロエタン可溶性、過フッ素化界面活性剤から本質的に構成される。
【0014】
米国特許第5,182,097号明細書は吸入具により患者に薬物を送達するのに使用するエーロゾル製剤に関し、1,1,1,2-テトラフルオロエタン単独で構成されるプロペラントを含む。プロペラントは少なくとも90重量%のエーロゾル製剤、プロペラントに分散または溶解した吸入可能な薬物を含み、吸入可能な薬物の分割寸法は直径100ミクロン未満である。吸入可能な薬物はエーロゾル製剤の5重量%を超える。プロペラント中に吸入可能な薬物が分散するのを補助するために界面活性剤としてオレイン酸を使用し、当該オレイン酸はエーロゾル製剤の0.2%w/v以下である。
【0015】
米国特許第5,202,110号明細書は定量投与用吸入器に使用するためのエーロゾル製剤に関し、薬学的に許容できる吸入可能なプロペラント、プロペラントに分散または溶解した吸入可能な薬物として使用されるジプロピオン酸ベクロメタゾンの包接化合物または分子会合を含む。ジプロピオン酸ベクロメタゾンの包接化合物または分子会合体は、1,1-ジクロロ-2,2,2-トリフルオロエタンまたは1,1-ジクロロ-1-フルオロエタンまたはジメチルエーテルと共に形成され、包接化合物または分子会合体は吸入可能な粒径である。
【0016】
米国特許第5,474,759号明細書はエーロゾル製剤に関し、有効量の薬物、1.1,1,2,3,3,3-ヘプタフルオロプロパン (HFA 227)、場合により、中鎖脂肪酸のプロピレングリコールジエステルまたは中鎖脂肪酸のトリグリセライドエステルから選択される賦形剤から本質的に構成される。場合により、界面活性剤がその他の賦形剤と共に存在する。
【0017】
国際特許出願96/32150は、サルメテロール、または生理学的に許容できるその塩、およびフルオロカーボンプロペラント、場合により、1種以上のその他の薬学的活性剤または1種以上の賦形剤からなる吸入用薬物製剤を投薬するために、1種以上のフルオロカーボンポリマーを用いて、場合により1種以上の非フルオロカーボンポリマーと組み合わせて内部表面の一部またはすべてを被覆した定量投与に関する。
【0018】
国際特許出願96/32151号明細書は、プロピオン酸フルチカゾン、または生理学的に許容できるその溶媒和化合物、およびフルオロカーボンプロペラント、場合により、1種以上のその他の薬学的活性剤または1種以上の賦形剤からなる吸入用薬物製剤を投薬するために、1種以上のフルオロカーボンポリマーを用いて、場合により1種以上の非フルオロカーボンポリマーと組み合わせて内部表面の一部またはすべてを被覆した定量投与吸入剤に関する。
【0019】
国際特許出願96/18384は、プロペラントとして1,1,1,2-テトラフルオロエタン (HFA 134a)、1,1,1,2,3,3,3-ヘプタフルオロプロパン (HFA 227)またはその混合物、コプロペラントとして1,1,2,2,3-ペンタフルオロプロパン、および粒状薬物からなる医薬用エーロゾル製剤に関する。
【0020】
国際特許出願94/03153は、粒子状ジプロピオン酸ベクロメタゾンもしくは許容できる溶媒和化合物と、フルオロカーボンもしくは水素含有クロロフルオロカーボンプロペラントからなり、実質的に界面活性剤を含まない医薬用エーロゾル製剤に関する。
【0021】
国際特許出願96/32099は、アルブテロール、または生理学的に許容できるその塩、およびフルオロカーボンプロペラント、場合により、1種以上のその他の薬学的活性剤または1種以上の賦形剤からなる吸入用薬物製剤を投薬するために、1種以上のフルオロカーボンポリマーを用いて、場合により1種以上の非フルオロカーボンポリマーと組み合わせて内部表面の一部またはすべてを被覆した定量投与用吸入器に関する。
【0022】
国際特許出願93/11745は、粒子状薬物、フルオロカーボンもしくは水素含有クロロフルオロカーボンプロペラントおよびプロペラントを基準に5%w/wまでの極性共溶媒からなり、実質的に界面活性剤を含まない医薬用エーロゾル製剤に関する。
【0023】
国際特許出願93/11743は、サルメテロール、サルブタモール、プロピオン酸フルチカゾーン、ジプロピオン酸ベクロメタゾンからなる粒子状薬物もしくは生理学的に許容できる塩および溶媒和化合物と、フルオロカーボンもしくは水素含有クロロフルオロカーボンプロペラントからなる医薬用エーロゾル製剤に関する。当該製剤は実質的に界面活性剤を含まない。
【0024】
国際特許出願93/15741は、すべての粒径が実質的に20ミクロン未満のジプロピオン酸ベクロメタゾン一水和塩、一水和塩の結晶水に加えて製剤を基準に少なくとも0.015%w/wの水、およびフルオロカーボンもしくは水素含有クロロフルオロカーボンプロペラントからなる医薬用エーロゾル製剤に関する。
【0025】
国際特許出願93/11744は粒子状薬物およびフルオロカーボンもしくは水素含有クロロフルオロカーボンプロペラントからなる医薬用エーロゾル製剤に関し、薬物がサルメテロール、サルブタモール、プロピオン酸フルチカゾーン、ジプロピオン酸ベクロメタゾンもしくは生理学的に許容できるその塩または溶媒和化合物以外の時、製剤は実質的に界面活性剤を含まない。
【発明の開示】
【0026】
本発明では、今や驚いたことに、HFA 134a または HFA 227中の微粒子からなる特に安定な懸濁物が得られることが見出された。これらの微粒子は、リン脂質含有膜で被覆された薬物微粒子から構成される。好ましくは、薬物粒子を、微粒子の外側を包む膜を形成するリン脂質(一種もしくは複数種)と少なくとも一種の界面活性剤との混合物で被覆されている。薬物の平均粒度は、100nm〜10ミクロンに、好ましくは0.1〜10ミクロンに、音波処理、または高せん断および/または衝撃をリン脂質またはその他の膜形成性両親媒脂質、および好ましくは少なくとも一種の界面活性剤の存在下で引き起こすその他の方法により減少させる。次いで、懸濁物を乾燥させることにより乾燥粉末を得る。被覆粒子の乾燥粉末はプロペラント中に都合良く懸濁される。膜形成性成分を、適切な密度、極性および薬物粒子凝集の減少を得るために使用し、こうしてヒドロフルオロカーボンプロペラントHFA 134aまたはHFA 227中で良好な分散性および安定な薬物懸濁をもたらす。
【0027】
本発明の好適な態様では、薬物粒子をリン脂質および少なくとも一種の界面活性剤の混合物で被覆し、同時に得られる平均粒度が0.1〜10ミクロンとなるように寸法を減少させる。これらの賦形剤は、プロペラント中に懸濁する薬物粒子の密度、極性および表面張力を調節するために使用される。密度を調節すると分散粒子がクリームまたは沈降物のいずれかになる傾向を減少させる。製剤の密度は、HFA プロペラントの密度に合致させるように1.0〜1.5g/mlの範囲であるのが好ましい。さらに、粒子の極性と表面張力を適切に調節すると、薬物粒子の凝集を減少させ、易分散性で安定な薬物懸濁物を得る。
【0028】
膜被覆では、界面活性剤(一種または複数種)に対するリン脂質(一種または複数種)の重量割合は、0.01〜100,好ましくは0.02〜50、より好ましくは0.04〜25の範囲内である。使用する界面活性剤および共界面活性剤の種類と量はこれらの成分の相対溶解度および/または極性に基づく。それ故、製剤組成物は各薬物個々に関して最適化される。被覆処理は許容できる製剤を選るのに必要とされる賦形剤の量を可及的に少なくする。
【0029】
重要なことは、リン脂質を含む界面活性剤の総量は、好ましくは薬物の含量を基準に0.1%を超え、200%未満である。
【0030】
製造方法
音波処理方法:
音波処理は、キャビィテーションのプロセスにより超分子薬物およびリン脂質構造の寸法を減少させる。この処理は、高速で一緒に推進する物質を壊し、粉砕と剪断とをもたらす小さな空洞部分を作り出す。これは、同時に成分をミクロン以下のフラグメントに破壊ししかも微粒子の疎水性表面を覆うことが可能である。。本発明では、音波処理は、薬物、リン脂質(一種または複数種)、界面活性剤(一種または複数種)およびその他の追加成分(一種または複数種)を溶媒と混合した後に行う。音波処理は、0.5インチプローブを備えたソニック・ディスメンブレーター・モデル550 (Fisher Scientific)を用いて5〜10℃の制御した温度、出力設定3〜5で5〜60分、平均粒度が0.1〜5ミクロンになるまで行う。温度をよりよく制御するために、音波処理を自動的に10秒のオンオフ周期で行う。
【0031】
次いで、得られた製品を凍結乾燥またはスプレー乾燥により乾燥体に変換し、続いてHFA 134aまたはHFA 227中に懸濁させる粉末を得る。
高剪断および衝撃をもたらす高圧を含む方法:
薬物とその他の適切な成分とを、当業界で公知の高圧均質化および/または微細流動化により均質化させる。微細流動化法では、液体の対向する微細噴射の衝突により高剪断が作り出され、粒子と流動化装置の壁部との間に衝突が生じる。高圧均質化法では、試料を狭いオリフィス中に高圧および高剪断力で強制送りし、試料は壁に対する衝突と大気圧への急速減圧を受ける。次いで、凍結乾燥またはスプレー乾燥により製品を乾燥形態にし、HFA 134a または HFA 227にその後懸濁される粉末を得る。音波処理ならびに高剪断および衝撃法は水性媒体に制限されないばかりでなく、揮発性有機溶媒中で行うこともできる。
【0032】
空気中での寸法減少:
薬物結晶は空気中の高速衝撃によっても寸法を小さくでき、続いて、リン脂質および界面活性剤により被覆できる。次いで、凍結乾燥またはスプレー乾燥により製品を乾燥形態にし、HFA 134a または HFA 227にその後懸濁される粉末を得る。
【0033】
飛行中結晶化による寸法減少:
揮発性溶媒中のリン脂質、界面活性剤(一種または複数種)、薬物および任意の追加成分の溶液を噴霧し、飛行中同時に蒸発により溶媒を除去できる。滑らかな表面上に乾燥粉末を集め、プロペラントの一種中に懸濁させる。
【0034】
制御した結晶化法による寸法減少:
例えば、超臨界流体を使用する結晶化による。
本発明の組成物は、活性物に加えて、少なくとも一種のリン脂質および任意の少なくとも一種の界面活性剤を含有する。
【0035】
適切なリン脂質の例は、飽和または不飽和形態のジアシルホスファチジルコリン、ジアシルホスファチジルグリセロール、ジアシルホスファチジルエタノールアミン、ジアシルホスファチジルイノシトールおよび飽和または不飽和形態のジアシルホスファチジルセリンならびに対応するリゾホスホリピドがある。
【0036】
適切な界面活性剤の例は、1. ポリオキシエチレンソルビタン脂肪酸エステル、例えばモノ−およびトリ−ラウリル、パルミチル、ステアリルおよびオレイルエステル、例えば、ポリソルベートとして公知の種類で商標名"Tween"で入手できる製品。
2. ポリオキシエチレン脂肪酸エステル、例えば、公知の種類でMyrj 52のような商標名Myrjで入手できるポリオキシエチレンステアリン酸エステル。
3. ポリオキシエチレンひまし油誘導体、例えば、Cremophorsとして公知の種類で商業的に入手できる製品である。特に適切なものはポリオキシル35ひまし油(Cremophor EL)およびポリオキシル40水素化ひまし油(Cremophor RH40)がある。
4. ビタミンE またはその誘導体、例えば、D-α-トコフェリルポリエチレングリコール1000 サクシネート (vitamin E TPGS)。
5. PEGグリセリル脂肪酸エステル、例えば、PEG-8グリセリルカプリレート/カプレート(Labrasolとして商業的に知られている)、PEG-4グリセリル カプリレート/カプレート (Labrafac Hydro WL 1219)、 PEG-32グリセリルラウレート (Gelucire 44/14)、PEG-6グリセリルモノオレエート(Labrafil M 1944 CS)、PEG-6グリセリルリノレート(Labrafil M 2125 CS)。
6. プロピレングリコールモノ−およびジ−脂肪酸エステル、例えば、プロピレングリコールラウレート、プロピレングリコールカプリレート/カプレート、さらに、ジエチレングリコールモノエチルエーテル(transcutolとして商業的に知られている)。
7. ソルビタン脂肪酸エステル、例えば、商標名Span (例、Span 20)として知られ入手できる。
8. ポリオキシエチレン−ポリオキシプロピレンコポリマー、例えば、プルロニック(Pluronic)または Poloxamer 188 NFのようなポロキサマー(Poloxamer)として知られ商業的に入手できる製品。
9. グリセロールトリアセテート10. モノグリセライドおよびアセチル化モノグリセライド、例えば、グリセロールモノオレエート、グリセリルモノステアレートならびにモノ−およびジ−アセチル化モノグリセライド。
11. 胆汁酸塩12. ポリエチレングリコール (PEG)、例えば、PEG 300、PEG 400、PEG 600、PEG 1000、PEG 1500、PEG 3400(商標名Carbowax、Lutrol EおよびHodag PEGとして知られ、商業的に入手できる)。
13. 置換セルロース製品、例えば、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、カルボキシメチルセルロースナトリウムおよびヒドロキシプロピルセルロース。
14. カルボマー、例えば、商標Carbopolとして知られ、商業的に入手できる。
【0037】
適切なリン脂質および界面活性剤は上述のものに制限されないが、本発明の製剤のガレヌス特性を向上させうるどのような化合物を含んでもよい。
本発明の組成物は、薬物、リン脂質(一種または複数種)および界面活性剤(一種または複数種)に加えてその他の成分を含有させることができる。例えば、本組成物は、これらに加えて、一種以上の活性成分、添加剤もしくは希釈剤、例えば、薬学的に許容できるまたは無機物質、トレハロースやマンニトールのような凍結保護物質、抗酸化剤ならびに防腐剤等がある。
【0038】
本発明のエーロゾル製剤は疾病の局所または全身治療に有用であり、例えば、局所にまたは点鼻経路による投与を含み、上気道および下気道を介して投与できる。
【実施例】
【0039】
下記は本発明の組成物を例証するが当該組成物を限定するものではない。
下記の実施例では、微粒子製剤(30 ml スケール)を適切な溶媒に所定成分を添加し次いで音波処理により製造した。次いで、例えば、凍結乾燥を使用して溶媒を蒸発させた。
【0040】
次いで、得られた乾燥粉末を適量秤量し、エーロゾル容器中に入れ、次いで、一容器当たり約40 mlのHFA 134aを添加した。次いで、約1分間手により容器を振り、15〜30分間音波処理を水浴音波装置中および/または一夜振とう器上で行った。
【0041】
【表1】

[本発明の態様]
[1]膜形成性両親媒性脂質で被覆され、1,1,1,2-テトラフルオロエタン(HFA 134a)または1,1,1,2,3,3,3-ヘプタフルオロプロパン(HFA 227)プロペラント中に分散されている粒度範囲0.1〜10ミクロンの薬物微粒子の安定化された粒子から本質的に構成されるエーロゾル製剤。
[2]両親媒性脂質がリン脂質である1に記載のエーロゾル製剤。
[3]リン脂質被覆が少なくとも一種の界面活性剤も含有する2に記載のエーロゾル製剤。
[4]一種またはそれ以上の膜形成性リン脂質と少なくとも一種の界面活性剤で被覆され、HFA 134a または HFA 227プロペラント中に分散されている平均粒度範囲0.1〜10ミクロンの薬物微結晶から本質的に構成されるエーロゾル製剤であって、被覆した薬物微粒子の密度がプロペラントの密度と実質的に同じであり、薬物微粒子上の被覆の量が薬物の重量を基準に0.1%を超え200%未満であるエーロゾル製剤。
[5]プロペラントが製剤の少なくとも70重量%の割合を占める1または4に記載のエーロゾル製剤。
[6]プロペラントが製剤の少なくとも90重量%の割合を占める5に記載のエーロゾル製剤。
[7] 薬物が製剤の5重量%未満の割合を占める5に記載のエーロゾル製剤。
[8]界面活性剤に対するリン脂質の重量比が0.04〜25の範囲である3または4に記載のエーロゾル製剤。
[9]界面活性剤に対するリン脂質の重量比が0.02〜50の範囲である3または4に記載のエーロゾル製剤。
[10]界面活性剤に対するリン脂質の比が0.01〜100;好ましくは0.02〜50;より好ましくは0.04〜25の範囲である。
[11]リン脂質が製剤の20重量%未満の割合を占める2または4に記載のエーロゾル。
[12]リン脂質が製剤の5重量%未満の割合を占める2に記載のエーロゾル。
[13]界面活性剤が製剤の20重量%未満の割合を占める3に記載のエーロゾル。
[14]界面活性剤が製剤の5重量%未満の割合を占める3または4に記載のエーロゾル。
[15]HFA134a、HFA227またはそれらの混合物から選択される非水性プロペラント中に懸濁している平均粒度が0.1〜10ミクロンの薬物微粒子からなるエーロゾル製剤を含有する定量投与用吸入器であって、前記薬物微粒子が膜形成性両親媒脂質でおよび場合によりさらに界面活性剤で被覆され、凝集に対し安定化されている定量投与用吸入器。
[16]薬物粒子がリン脂質で被覆される15に記載の吸入器。
[17]リン脂質被覆が界面活性剤も含有する15または16に記載の吸入器。
[18]リン脂質と少なくとも一種の界面活性剤との混合物で被覆され、HFA 134a または HFA 227プロペラント中に分散されている平均粒度範囲0.1〜10ミクロンの薬物微粒子から本質的に構成されるエーロゾル製剤を含有する定量投与用吸入器であって、被覆した薬物微結晶の密度がプロペラントの密度と実質的に同じであり、薬物微粒子上の被覆の量が薬物の重量を基準に0.1%を超え200%未満であるエーロゾル製剤。
[19]膜形成性両親媒脂質と場合により界面活性剤とで被覆され、上気道または低気道に送達するための薬学的に許容できるキャリアー中に分散されている粒度範囲が0.1〜10ミクロンの薬物微粒子。
[20]上気道または下気道に送達するための、膜形成性両親媒脂質と場合により界面活性剤とで被覆され、0.1〜10ミクロンの粒度範囲の薬物微粒子から本質的に構成される乾燥粉末。
[21]少なくとも一種の膜形成性リン脂質と少なくとも一種の界面活性剤の包みで被覆され、1,1,1,2-テトラフルオロエタン(HFA 134a)または1,1,1,2,3,3,3-ヘプタフルオロプロパン(HFA 227)プロペラント中に分散されている平均粒度範囲0.1〜10ミクロンの薬物微結晶から本質的に構成される乾燥懸濁物エーロゾル製剤であって、被覆した薬物微粒子の密度がプロペラントの密度と実質的に同じであり、薬物微粒子上の被覆の量が薬物の重量を基準に0.1%を超え200%未満であるエーロゾル製剤。
[22]リン脂質被覆が少なくとも一種の界面活性剤も含有する1に記載のエーロゾル製剤。
[23]プロペラントが製剤の少なくとも70重量%の割合を占める1に記載のエーロゾル製剤。
[24]プロペラントが製剤の少なくとも90重量%の割合を占める3に記載のエーロゾル製剤。
[25] 薬物が製剤の5重量%未満の割合を占める3に記載のエーロゾル製剤。
[26]界面活性剤に対するリン脂質の重量比が0.04〜25の範囲である1に記載のエーロゾル製剤。
[27]界面活性剤に対するリン脂質の重量比が0.02〜50の範囲である1に記載のエーロゾル製剤。
[28]界面活性剤に対するリン脂質の比が0.01〜100の範囲である1に記載のエーロゾル製剤。
[29]リン脂質が製剤の20重量%未満の割合を占める1に記載のエーロゾル。
[30]リン脂質が製剤の5重量%未満の割合を占める1に記載のエーロゾル。
[31]界面活性剤が製剤の20重量%未満の割合を占める1に記載のエーロゾル。
[32]界面活性剤が製剤の5重量%未満の割合を占める1に記載のエーロゾル。
[33]少なくとも一種の膜形成性リン脂質と少なくとも一種の界面活性剤との混合物で被覆され、1,1,1,2-テトラフルオロエタン(HFA 134a)または1,1,1,2,3,3,3-ヘプタフルオロプロパン(HFA 227)プロペラント中に分散されている平均粒度範囲0.1〜10ミクロンの安定化された薬物微結晶から本質的に構成されるエーロゾル製剤を含有する定量投与用吸入器であって、該製剤が1.0〜1.5g/mlの範囲の密度を有し、被覆した薬物微粒子の密度がプロペラントの密度と実質的に同じであり、薬物微粒子上の被覆の量が薬物の重量を基準に0.1%を超え200%未満である、定量投与用吸入器。
[34]界面活性剤に対するリン脂質の比が0.04〜25の範囲である8に記載のエーロゾル製剤。
[35]少なくとも一種の膜形成性リン脂質と少なくとも一種の界面活性剤の包みで被覆され、上気道または下気道に送達するための、薬学的に許容できるキャリアー中に分散されている粒度範囲が0.1〜10ミクロンの安定化された薬物微粒子から本質的に構成される、1.0〜1.5g/mlの範囲の密度を有する薬物微粒子であって、薬物微粒子上の被覆の量が薬物の重量を基準に0.1%を超え200%未満である、薬物微粒子。
[36]少なくとも一種の膜形成性リン脂質と少なくとも一種の界面活性剤の包みで被覆された、粒度範囲が0.1〜10ミクロンの安定化された薬物微粒子から本質的に構成される、1.0〜1.5g/mlの範囲の密度を有する乾燥粉末であって、薬物微粒子上の被覆の量が薬物の重量を基準に0.1%を超え200%未満である、乾燥粉末。
[37]一種またはそれ以上の膜形成性リン脂質と少なくとも一種の界面活性剤で被覆され、1,1,1,2-テトラフルオロエタン(HFA 134a)または1,1,1,2,3,3,3-ヘプタフルオロプロパン(HFA 227)プロペラント中に分散されている粒度範囲0.1〜10ミクロンの安定化された薬物微粒子から本質的に構成され、
該界面活性剤が、ポリオキシエチレンソルビタン脂肪酸エステル、ポリオキシエチレン脂肪酸エステル、ポリオキシエチレンひまし油誘導体、ビタミンEおよびその誘導体、ポリオキシエチレングルコールグリセリル脂肪酸エステル、プロピレングリコールモノ−およびジ−脂肪酸エステル、ソルビタン脂肪酸エステル、ポリオキシエチレン−ポリオキシプロピレンコポリマー、グリセロールトリアセテート、モノグリセライドおよびアセチル化モノグリセライド、胆汁酸塩、ポリエチレングリコール、置換セルロース製品、カルボマーより成る群から選択され、
被覆した薬物微粒子の密度がプロペラントの密度と実質的に同じであり、
薬物微粒子上の被覆の量が薬物の重量を基準に0.1%を超え200%未満であるエーロゾル製剤。
[38]ポリオキシエチレン脂肪酸エステルがポリオキシエチレンステアリン酸エステルであり、ポリオキシエチレンひまし油誘導体がポリオキシル35ひまし油又はポリオキシル40水素化ひまし油であり、ビタミンE誘導体がD-α-トコフェリルポリエチレングリコール1000 サクシネート であり、置換セルロースがヒドロキシプロピルセルロースである、37のエロゾール製剤。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
一種または複数種の膜形成性リン脂質と少なくとも一種の界面活性剤の包被で被覆され、1,1,1,2-テトラフルオロエタン(HFA 134a)または1,1,1,2,3,3,3-ヘプタフルオロプロパン(HFA 227)プロペラント中に分散されている平均粒度範囲0.1〜10ミクロンの安定化された薬物微結晶から本質的に構成される乾燥懸濁物エーロゾル製剤であって、該製剤が1.0〜1.5g/mlの範囲の密度を有し、被覆された薬物微粒子の密度がプロペラントの密度と実質的に同じであり、薬物微粒子上の被覆の量が薬物の重量を基準に0.1%を超え200%未満であるエーロゾル製剤。

【公開番号】特開2010−248206(P2010−248206A)
【公開日】平成22年11月4日(2010.11.4)
【国際特許分類】
【外国語出願】
【出願番号】特願2010−128713(P2010−128713)
【出願日】平成22年6月4日(2010.6.4)
【分割の表示】特願2000−529227(P2000−529227)の分割
【原出願日】平成10年12月30日(1998.12.30)
【出願人】(502381287)オバン・エナジー・リミテッド (4)
【Fターム(参考)】