説明

微粒子製造装置

【課題】 合成した微粒子が反応空間壁面に凝集・付着しにくい構造を備えた微粒子製造装置を提供する。
【解決手段】 粒子製造原料を流通させる微小な流通空間に原料を流通させて微粒子を製造する装置であって、前記流通空間内壁面は、形成された微粒子が付着しにくい付着防止構造を備えている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ナノ粒子を製造する微粒子製造装置に関する。
【背景技術】
【0002】
昨今、ナノサイズの大きさのナノ粒子を、半導体領域、医療領域、バイオ領域へ適用することが脚光を浴びている。たとえば、半導体領域では、テレビ、プラズマテレビなどに利用される蛍光体への利用、医療領域では、生体吸収性の材料からなるナノ粒子を細胞の微小な足場として利用、バイオ領域では、金ナノ粒子の光学的特性を利用してメタボライトを検出することへの利用などがある。
【0003】
このようなナノ粒子の合成を微小な空間内でひいては一つのチップ上にて実現しようとするマイクロリアクタがある。
マイクロリアクタは、微小空間内で合成を行うことから、温度制御が正確に行えること、並列処理により大量合成が可能(従来一般のスケールアップ時の合成手法の適切化が容易となる)であることなどの特徴があるとされる。ここで、ナノ粒子といっても金属や、酸化金属等の無機系材料からなるもの、ポリマー材料からなる有機系材料からなるものがあり、その上、その形状も、球状、ロッド状、多孔状、多層構造のものなどの様々なものがある。
【0004】
このように幅広い形態に適合するナノ粒子を適切に合成するには、反応条件の制御が幅広い条件に対応した装置が実現されることが重要である。
【特許文献1】特開2004-243308号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
更に、ナノ粒子は、材料によって反応空間壁面への凝集・吸着性が異なる。たとえば、金ナノ粒子をステンレス製の反応器内で合成した場合、容器壁面に吸着してし、回収がうまく行えないか、回収できても回収率が低くなってしまう。また、ナノ粒子合成のおりに塩の析出も大きな問題である。塩が反応空間に残存すると、回収したナノ粒子にこれが混入してしまうことにもなってしまう。
【0006】
本発明は、上記課題を鑑みてなされた発明であって、合成した微粒子が反応空間壁面に凝集・付着しにくい構造を備えた微粒子製造装置を提供することを目的としてなされたものである。更に、合成した微粒子に析出した塩が混入しにくい微粒子製造装置を提供することを目的としてなされたものである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
該目的を達成するために、本発明は、
(1) 粒子製造原料を流通させる微小な流通空間に原料を流通させて微粒子を製造する装置であって、前記流通空間内壁面は、形成された微粒子が付着しにくい付着防止構造を備えている微粒子製造装置。
(2) 前記付着防止構造は、内壁が親水性を備えている(1)に記載の微粒子製造装置。
(3) 前記付着防止構造は、内壁が疎水性を備えている(1)に記載の微粒子製造装置。
(4) 前記付着防止構造は、ステンレス表面に形成された酸化ケイ素幕薄膜である(1)に記載の微粒子製造装置。
である。
【0008】
また、該目的を達成するために、本発明は、
(5) 粒子製造原料を流通させる微小な流通空間に原料を流通させて微粒子を製造する装置であって、
反応の際に析出した塩を洗浄する洗浄手段を備えている微粒子製造装置。
(6) 前記洗浄手段は、水溶性溶剤を前記空間に流通させる手段である(5)に記載の微粒子製造装置。
(7) 前記洗浄手段は、塩を水溶液中で粉砕するために振動を付与する手段である(5)に記載の微粒子製造装置。
(8) 粒子製造原料を流通させる微小な流通空間に原料を流通させて微粒子を製造する装置であって、反応に際して、アルコール系の反応薬剤を投入する手段を備えている微粒子製造装置。
である。
【発明の効果】
【0009】
上記構造を備えることにより、合成された微粒子が反応壁面に付着しにくくなり、回収をうまく行うことが可能となる。たとえば、ポリ乳酸―カプロラクトン共重合体からなるナノ粒子は親水性が高いので、反応壁面を疎水性の材料でコート(フッ素系樹脂など)することにより、壁面への吸着を防ぐことができる。また、たとえば、金ナノ粒子は、疎水性が高いので、反応壁面を親水性の材料でコート(酸化ケイ素など)することにより、壁面への吸着を防ぐことができる。この結果、それぞれの微粒子を効率よく回収することが可能となり、生産性を向上させることができる。
【0010】
更に、上記構造を備えることにより、合成された微粒子中に塩が混入しにくくなり、回収をうまく行うことが可能となる。たとえば、ナノ粒子表面へコーティングした際に生成する塩を、水溶性溶剤にて洗浄、あるいは、超音波を付与して水溶液中で塩を破砕・溶解させることができるので、それぞれの微粒子を効率よく回収することが可能となり、生産性を向上させることができる。更に、そもそも反応剤として塩が生成しない系を選択することによって、上記目的を達成している。
【発明を実施するための最良の形態】
【0011】
以下に、本発明の一実施形態を説明するが、本発明は、下記に限定されるものではないことは言うまでもない。
(実施例1)
(装置構造)
本微粒子製造装置は、複数の原料投入ポートと、投入された原料を一空間内で合流させて反応を行う反応空間と、該反応空間から反応液・反応生成物を取り出す取り出しポートとを備えている。さらに、反応場の温度を制御する加熱部・冷却部なども備える。
【0012】
反応空間は、ステンレス製の容器で形成され、その内壁が、CVD(化学蒸着法)により酸化ケイ素皮膜でコーティングされている。
(金ナノ粒子の合成)
クエン酸により塩化金酸を還元するという手法により合成をする。原料投入ポートから所定の濃度の原料を投入して、加熱した反応空間において金ナノ粒子(数十nm)を合成することができる。このとき、反応空間の壁面には、親水性の酸化ケイ素皮膜が形成されているので、合成された金ナノ粒子が付着されることなく取り出しポートから効率よく回収することができる。
【0013】
(実施例2)
(装置構造)
本微粒子製造装置は、複数の原料投入ポートと、投入された原料を一空間内で合流させて反応を行う反応空間と、該反応空間から反応液・反応生成物を取り出す取り出しポートと、更に、反応空間へアンモニア水を投入する洗浄液投入ポートとを備えている。さらに、反応場の温度を制御する加熱部・冷却部、反応空間に析出した塩に超音波振動を付与する超音波発生手段なども備える。
【0014】
(ナノ粒子表面のコーティング)
原料投入ポートからトルエンに分散させた多孔製シリカナノ粒子を投入して、加熱した後、別な投入ポートから塩素系有機シラン剤を投入し、シリカナノ粒子表面が有機シラン剤でコートされたナノ粒子が合成される。このとき、塩酸が生成するので、反応容器の腐食並びにコート層の劣化をさけるために、アンモニア水を投入する。このアンモニア水の存在によって、アンモニウム塩が析出する。そして、反応終了後に洗浄液を洗浄液投入ポートから所定量投入しつつ、超音波を印加する。この処理により、反応空間に析出していた塩が溶解し、合成されたナノ粒子への混入を防ぐことができる。
【0015】
(実施例3)
本装置では、原料投入ポートからトルエンに分散させた多孔製シリカナノ粒子を投入して、加熱させた後、別な投入ポートからアルコール系有機シラン剤を投入し、シリカナノ粒子表面が有機シラン剤でコートされたナノ粒子が合成される。アルコール系の有機シラン剤を用いるので、塩の析出の問題がそもそもなく、ナノ粒子をより効率よく回収することができ、一層の生産性向上を図ることができる。
【産業上の利用可能性】
【0016】
本発明にかかる微粒子製造装置は、半導体領域、医療領域、バイオ領域などに適用できる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
粒子製造原料を流通させる微小な流通空間に原料を流通させて微粒子を製造する装置であって、前記流通空間内壁面は、形成された微粒子が付着しにくい付着防止構造を備えている微粒子製造装置。
【請求項2】
前記付着防止構造は、内壁が親水性を備えている請求項1に記載の微粒子製造装置。
【請求項3】
前記付着防止構造は、内壁が疎水性を備えている請求項1に記載の微粒子製造装置。
【請求項4】
前記付着防止構造は、ステンレス表面に形成された酸化ケイ素幕薄膜である請求項1に記載の微粒子製造装置。
【請求項5】
粒子製造原料を流通させる微小な流通空間に原料を流通させて微粒子を製造する装置であって、
反応の際に析出した塩を洗浄する洗浄手段を備えている微粒子製造装置。
【請求項6】
前記洗浄手段は、水溶性溶剤を前記空間に流通させる手段である請求項5に記載の微粒子製造装置。
【請求項7】
前記洗浄手段は、塩を水溶液中で粉砕するために振動を付与する手段である請求項5に記載の微粒子製造装置。
【請求項8】
粒子製造原料を流通させる微小な流通空間に原料を流通させて微粒子を製造する装置であって、
反応に際して、アルコール系の反応薬剤を投入する手段を備えている微粒子製造装置。

【公開番号】特開2006−175321(P2006−175321A)
【公開日】平成18年7月6日(2006.7.6)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−369238(P2004−369238)
【出願日】平成16年12月21日(2004.12.21)
【出願人】(390024442)株式会社ワイエムシィ (22)
【Fターム(参考)】