説明

微細な酸化スズ粉末とその製造方法および用途

【課題】 高密度なITO焼結体の原料として好適な微細な酸化スズ粉末とその製造方法を提供する。
【手段】 塩化スズ溶液を好ましくは酸化した後にpH1〜2に調整し、次いで、シュウ酸を好ましくはシュウ酸アンモニウムと共にを加えてシュウ酸スズを主体とする沈澱を生成させ、固液分離した沈殿を乾燥し、好ましくは予備焼成した後に本焼成することによって、平均粒径が0.4μm〜2μm、粒径2μm以下の累積重量が60%以上および粒径5μm以下の累積重量が90%以上であって、粒径0.2μm以下および粒径5μm以上の頻度が何れも5%以下の粒度分布を有する酸化スズ粉末を得る。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、高密度なITO焼結体の原料として好適な微細な酸化スズ粉末とその製造方法およびそのITO焼結体に関する。
【背景技術】
【0002】
スパッタリングによって良質なITO膜を形成するために、スパッタリングターゲット用として高密度なITO焼結体が要求されている。この高度ITO焼結体の原料として、従来のものよりも微細でかつ均一な粒径の酸化スズ粉末が必要とされている。
【0003】
高密度ITOターゲット用原料として用いられる微細な酸化スズ粉末の製造方法として、従来は次のような方法が知られている。
(イ)金属スズを硝酸に反応させて水酸化スズを沈澱させ、この沈澱を濾別回収して乾燥した後に焼成して酸化スズ粉末を得る方法。
(ロ)加熱した硝酸アンモニウム溶液に金属スズを加え、さらに硝酸を添加してメタスズを沈澱させ、これを濾別回収し焼成して酸化スズ粉末を得る方法(特許文献1:特開平11−130432号)。
(ハ)塩酸と硝酸の混酸に金属スズを溶解して4価のスズイオンを主体とするスズ塩水溶液とし、これにアルカリ溶液を反応させてpH5以上に中和してスズ化合物を沈殿させ、この沈澱を固液分離して乾操し、焼成して酸化スズ粉末を得る方法(特許文献2:特開2002−29744)。
【0004】
上記(イ)の方法は、金属スズを硝酸に反応させる際に反応速度を調整することができないので、生成した水酸化スズ沈澱を焼成して得た酸化スズ粉末は粒度が不揃いである。また、上記(ロ)の方法はこれを改善したものであり、硝酸アンモニウム溶液を用いてメタスズ酸を沈澱させ、これを焼成して比較的粒度の均一な酸化スズ粉末を得ている。しかし、この方法によって得られる酸化スズ粉末は主に二次粒子のピーク粒径が5〜8μm程度の粉末であり、1μm以下の微細な酸化スズ粉末の割合は少ないので高密度ITOターゲット用原料として適さない。上記(ハ)の方法ではメタスズ酸の沈澱を生成させる際に、粒子がコロイド状になるので沈澱の濾過性が非常に悪く、また残留塩素が多いと云う問題がある。
【0005】
一方、金属スズを溶解した液のpHを調整して沈澱を生成させる従来の上記各方法に代えて、(ニ)金属スズを陽極とし、硝酸アンモニウム水溶液を電解液として、スズの電解を行なうことによってメタスズ酸を沈澱させ、これを回収し焼成して酸化スズ粉末を得る方法(特許文献3:特開平6−199523号〔特許第2829557号〕)が知られている。しかし、この方法によって得られる酸化スズ粉末も上記従来法と同様に粒径が不揃いであり、これを原料とした焼結体の密度を高めるのが難しい。
【特許文献1】特開平11−130432号公報
【特許文献2】特開2002−29744号公報
【特許文献3】特開平6−199523号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明は、従来の製造方法における上記問題を解決したものであり、従来のものよりも微細でかつ均一な粒径の酸化スズ粉末を提供するものであり、また、生成した沈澱の濾過性が良く、上記酸化スズ粉末を容易に製造することができる方法を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明によれば、以下の構成からなる酸化スズ粉末とその製造方法および用途が提供される。
(1) 塩化スズ溶液にアルカリを加えてpHを1〜2に調整した後に、シュウ酸を加えてシュウ酸スズを主体とする沈澱を生成させ、固液分離して回収した沈殿を乾燥し、焼成して酸化スズ粉末を製造することを特徴とする方法。
(2) 塩化スズ溶液を酸化した後に、アルカリを加えてpHを1〜2に調整する上記(1)に記載する酸化スズ粉末の製造方法。
(3)塩化スズ溶液を銀−塩化銀電極基準で−200〜+200mVに酸化した後に、アルカリを加えてpH1〜2に調整する上記(1)または(2)に記載する酸化スズ粉末の製造方法。
(4)塩化スズ溶液をpH1〜2に調整した後に、シュウ酸と共にシュウ酸アンモニウムを加えてシュウ酸スズを主体とする沈澱を生成させる上記(1)〜(3)の何れかに記載する酸化スズ粉末の製造方法。
(5)シュウ酸スズを主体とする沈澱を回収して乾燥し、250〜350℃で予備焼成した後に、550〜850℃で本焼成する上記(1)〜(4)の何れかに記載する酸化スズ粉末の製造方法。
(6) 金属スズを塩酸に溶解して塩化第一スズ溶液を調製する工程、この塩化第一スズ溶液にアンモニアを添加してpHを1〜2に調整する工程、pH調整した塩化第一スズ溶液にシュウ酸を加えてシュウ酸スズ沈澱を生成させる工程、この沈澱を固液分離する工程、分離した沈澱を乾燥して焼成する工程を有する酸化スズ粉末の製造方法。
(7)上記(6)の製造方法において、調製した塩化第一スズ溶液を銀−塩化銀電極基準で−200〜+200mVに酸化する工程、pH調整した塩化第一スズ溶液にシュウ酸と共にシュウ酸アンモニウムを加えてシュウ酸スズ沈澱を生成させる工程、乾燥した沈澱を250〜350℃で予備焼成した後に550〜850℃で本焼成する工程を含む酸化スズ粉末の製造方法。
(8)上記(1)〜(7)に記載する何れかの方法によって製造された酸化スズであって、平均粒径0.4μm〜2μmの酸化スズ粉末。
(9)上記(1)〜(7)に記載する何れかの方法によって製造された酸化スズであって、平均粒径0.4μm〜2μmおよびBET比表面積5m2/g以上である酸化スズ粉末。
(10)粒径2μm以下の累積重量60%以上、および粒径5μm以下の累積重量90%以上であって、粒径0.2μm以下および粒径5μm以上の頻度が何れも5%以下の粒度分布を有する酸化スズ粉末。
(11)上記(8)〜(10)に記載する酸化スズ粉末と、酸化インジウム粉末とを目的の量比に混合し、焼成してなる高密度ITO焼結体。
【0008】
〔具体的な説明〕
本発明の製造方法の基本的な工程を図1に示した。また、基本工程に基づく好ましい工程を図2に示した。図示するように、本発明の製造方法は、塩化スズ溶液にアルカリを加えてpHを1〜2に調整した後に、シュウ酸を加えてシュウ酸スズを主体とする沈澱を生成させ、固液分離して回収した沈殿を乾燥し、焼成して酸化スズ粉末を製造することを特徴とする方法である。
【0009】
上記塩化スズ溶液は、金属スズを塩酸に溶解した液であり、塩化第一スズを主体とする溶液が好ましい。適量の沈澱を生成させるため、塩化スズの濃度は100g/l〜500g/lが適当である。金属スズを硝酸に溶解させるとメタスズ酸(水酸化スズ)がそのまま生成して沈澱するので、目的の粒径を有する酸化スズ粉末を得るのが難しい。一方、金属スズは硫酸には殆ど溶解しない。また、塩酸と硝酸の混酸も好ましくない。先に述べたように、金属スズを塩酸と硝酸の混酸に溶解させるとコロイド状のメタスズ酸の沈澱が生成し、濾過性が著しく低下する。
【0010】
好ましくは、調製した上記塩化スズ溶液を酸化した後にアルカリを添加してpHを調整する。塩化スズ溶液を酸化せずにシュウ酸スズ主体の沈澱を生成させると、所望の微細な酸化スズ粉末を得るのが難しい。酸化の程度は、銀−塩化銀電極基準で、−200〜+200mVの範囲が好ましい。この酸化還元電位が−200mVよりも低いとBET比表面積が5m2/g以上の酸化スズ粉末を得るのが難しく、一方、+200mVより高いと4価のスズイオンが増すため、次工程でこの塩化スズ溶液にシュウ酸を添加しても、シュウ酸と反応しないスズが増加し、シュウ酸スズの回収率が低下する。
【0011】
この塩化スズ溶液にアルカリを添加して溶液のpHを1〜2に調整する。アルカリとしては不純物金属が混入しないようにアンモニアが好ましい。pHが1未満では残留している遊離の酸が多いため、次工程でシュウ酸を添加したときに、シュウ酸スズ沈澱が十分に生成しない。一方、pHが2より高いと加水分解反応が起こり、濾過性が極めて悪いメタスズ酸の沈澱が生成するので好ましくない。本発明の製造方法は塩化スズ溶液のpHを1〜2に調整することによって、メタスズ酸の沈澱を生成させずに次工程でシュウ酸スズ沈澱を生成させる環境を整える。
【0012】
pHを1〜2に調整した塩化スズ溶液にシュウ酸を加えてシュウ酸スズを主体とする沈澱を生成させる。スズが液中に残留しないように、シュウ酸の添加量は塩化スズに対して反応等量より僅かに多い程度が好ましい。シュウ酸の量が多過ぎると未反応のシュウ酸が多くなるので好ましくない。
【0013】
好ましくは、シュウ酸と共にシュウ酸アンモニウムを添加する。シュウ酸アンモニウムを併用することによって、調整したpH範囲の変動を抑制することができる。シュウ酸アンモニウムを併用せずにシュウ酸を単独で用いると、調整したpHが低下してシュウ酸スズの回収率が低下し、また最終的に得られる酸化スズ粉末のBET比表面積が小さく、従って所望の微細な粉末が少なくなる傾向がある。
【0014】
なお、シュウ酸アンモニウムの添加量が過剰で塩化スズ溶液のpHが2を超えると、先に述べたように加水分解によって濾過性が極めて悪いメタスズ酸の沈澱が生成し、また最終的に得られる酸化スズ粉末の平均粒径が大きくなるので好ましくない。塩化スズ溶液のpHを1〜2に維持してシュウ酸スズ主体の沈澱を生成させる。この沈澱は濾過性が良いので短時間で固液分離することができる。
【0015】
生成したシュウ酸スズ主体の沈澱を固液分離して回収し、乾燥後、焼成して酸化スズ粉末にする。焼成は大気下、550℃〜1000℃で行えばよく、焼成時間はシュウ酸スズの焼成量に応じて定めれば良い。
【0016】
この焼成工程は、乾燥した沈澱を250〜350℃で予備焼成した後に、550〜850℃で本焼成すると良い。高温での急激な焼成を行うと、シュウ酸スズが酸化スズに変化する際に、粉体集合体の内部と表面との間に生じる温度差のために焼成が不均一になり、粒径が不揃いになる傾向があるが、最初に予備焼成を行うことによってこのような傾向を防止し、均一な粒径の微細な酸化スズ粉末を得ることができる。
【0017】
本発明の上記製造方法によれば、平均粒径0.4μm〜2μmであって、好ましくはBET比表面積が5m2/g以上の微細な酸化スズ粉末を得ることができる。具体的には、例えば、粒径2μm以下の累積重量が60%以上であって粒径5μm以下の累積重量が90%以上であり、さらに粒径0.2μm以下および粒径5μm以上の頻度が何れも5%以下の粒度分布を有する酸化スズ粉末を得ることができる。
【0018】
本発明の製造方法によって得た酸化スズ粉末を図2〜図5に示す。図示するように、本発明の酸化スズ粉末は、何れも0.4μm〜2μmの間に単一の分布ピークが存在する粒度分布を有しており、図6〜図8に示す従来の酸化スズ粉末よりも微細であり、かつ均一な粒径を有している。
【発明の効果】
【0019】
本発明の酸化スズ粉末は従来のものよりも微細で均一な粒径を有しており、不純物も少ないので、高密度ITO焼結体の原料粉として最適である。酸化インジウム粉末と本発明の酸化スズ粉末とを目的の量比に混合し、焼成することによって、スパッタリングターゲット用として好適な高密度ITO焼結体を得ることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0020】
以下、本発明を実施例および比較例によって具体的に示す。また、各例の製造条件および結果を表1にまとめて示した。
【0021】
〔実施例1〕
35%塩酸480mlに、金属スズショット(粒径2〜3mmφ)80gを投入して60℃で溶解し、スズ濃度170g/lの塩化スズ溶液を得た。これに28%濃度のアンモニア水180mlを添加してpH1に調整した。このpH調整後の塩化スズ溶液に1.5molシュウ酸溶液300mlを添加してシュウ酸スズ沈澱を生成させた。これを濾過し、水濾過洗浄を3回(約800mlづつ)行い、残渣(シュウ酸スズ沈澱)を回収した。これを100℃で乾燥した後に軽く粉砕し、さらに、850℃で4時間焼成してBET比表面積5.5m3/gの酸化スズ粉末を得た。この酸化スズ粉末の粒度分布を図3に示した。
【0022】
図3に示す酸化スズ粉末は、粒径2μm以下の累積重量が60%以上および粒径5μm以下の累積重量が90%以上であって、粒径0.2μm以下および粒径5μm以上の頻度が何れも5%以下であって、0.4μm〜2μmの間に単一の分布ピークが存在する粒度分布を有しており、粒径が微細であり、かつ均一である。
【0023】
〔実施例2〕
35%塩酸200mlに、金属スズショット(粒径2〜3mmφ)60gを投入して90℃で溶解し、スズ濃度300g/lの塩化スズ溶液を得た。これを1日空気中に放置して自然酸化を行い、Ag-AgCl電極基準で0mVの状態に調整した。これに28%濃度のアンモニア水65mlを添加してpH1に調整した。このpH調整後の塩化スズ溶液に0.24molシュウ酸溶液300mlおよび0.85molシュウ酸アンモニウム溶液700mlを添加してシュウ酸スズ沈澱を生成させた。これを濾過し、水濾過洗浄を3回(約800mlづつ)行い、残渣(シュウ酸スズ沈澱)を回収した。これを100℃で乾燥した後に軽く粉砕し、さらに、300℃で4時間予備焼成を行って軽く粉砕した後に、650℃で4時間本焼成を行い、BET比表面積12.3m3/gの酸化スズ粉末を得た。この酸化スズ粉末は、図4に示すように粒径0.1〜10μmの範囲でシャープな粒度分布を有しており、粒径のバラツキが少なく、再現性に優れている。
【0024】
〔実施例3〕
シュウ酸アンモニウムを併用せずに、0.80molシュウ酸溶液650mlのみを添加してシュウ酸スズ沈澱を生成させ、このシュウ酸スズを回収して650℃で直接に本焼成を行った以外は実施例2と同様にして、BET比表面積8.7m3/gの酸化スズ粉末を得た。この酸化スズ粉末は、図5に示すように粒径0.1〜10μmの範囲でシャープな粒度分布を有しており、粒径のバラツキが少なく、再現性に優れている。
【0025】
〔実施例4〕
塩化スズ溶液を酸化せずに、Ag-AgCl電極基準で−300mVの状態でpH調整し、さらに、シュウ酸スズ沈澱を回収して650℃で直接に本焼成を行った以外は実施例2と同様にして、BET比表面積9.0m3/gの酸化スズ粉末を得た。この酸化スズ粉末は、図6に示すように粒径0.1〜10μmの範囲でシャープな粒度分布を有しており、粒径のバラツキが少なく、再現性に優れている。
【0026】
〔実施例5〕
塩化スズ溶液を酸化せずに、Ag-AgCl電極基準で−300mVの状態でpH調整し、さらに、シュウ酸アンモニウムを併用せずにシュウ酸を添加してシュウ酸スズ沈澱を生成させ、これを回収して650℃で直接に本焼成を行った以外は実施例2と同様にして、BET比表面積11.0m3/gの酸化スズ粉末を得た。この酸化スズ粉末は、図7に示すように粒径0.1〜10μmの範囲でシャープな粒度分布を有しており、粒径のバラツキが少なく、再現性に優れている。
【0027】
〔比較例1〕
61%濃硝酸120mlを水380mlで希釈した硝酸溶液に金属スズショット(粒径2〜3mmφ)50gを毎分5gづつ9分間かけて投入し、70℃で2時間反応させて、メタスズ酸の沈澱を生成させた。これを濾過し、水濾過洗浄を3回(約800mlづつ)行い、残渣(メタスズ酸沈澱)を回収した。これを100℃で乾燥した後に軽く粉砕し、さらに、650℃で4時間焼成して酸化スズ粉末を得た。この酸化スズ粉末の粒度分布を図8に示した。
【0028】
〔比較例2〕
濃度160g/lの硝酸アンモニウム3リットルを電解液とし、30gの金属スズ板を陽極とし、SUS板を陰極として、電流密度600A/m2で電解を行い、メタスズ酸の沈澱を得た。これを濾過し、水濾過洗浄を3回(約800mlづつ)行い、残渣(メタスズ酸沈澱)を回収した。これを100℃で乾燥した後に軽く粉砕し、さらに、650℃で4時間焼成して酸化スズ粉末を得た。この酸化スズ粉末の粒度分布を図9に示した。
【0029】
〔比較例3〕
濃硝酸200mlと濃塩酸600mlを混合した混酸に金属スズを溶解して、2価のスズイオン57g/lと、4価のスズイオン12g/lとを含むスズ塩水溶液を調製した。この水溶液800mlに60℃で、25%濃度のアンモニア水を10ml/分の割合で40分間定量添加し(合計400ml)、溶液のpHを2に調整して沈澱を生成させた。これを濾過し、水濾過洗浄を3回(約1000mlづつ)行い、残渣(スズ含有沈澱)を回収した。これを100℃で乾燥した後に軽く粉砕し、さらに、650℃で4時間焼成して酸化スズ粉末を得た。この酸化スズ粉末の粒度分布を図10に示した。
【0030】
〔比較試験〕
実施例1で得たシュウ酸スズ沈澱を含むスラリーと、比較例3で得たメタスズ酸(水酸化スズ)沈澱を含むスラリーについて濾過性を調べた。濾過条件は、スズ量換算で50g/lのスズ化合物を含むスラリー1リットルを用い、濾過面積176.6cm2、5Cの定量濾紙を用い、減圧濾過を行った。さらに蒸留水による洗浄濾過を繰り返した。この水洗3回目に完全に固液分離できた時間と、残留塩素量を表2に示した。
【0031】
【表1】

【0032】
【表2】

【図面の簡単な説明】
【0033】
【図1】本発明の基本的な製造方法を示すフロー図
【図2】本発明の基本工程に基づく好ましい製造方法を示すフロー図
【図3】実施例1の酸化スズ粉末の粒度分布を示すグラフ
【図4】実施例2の酸化スズ粉末の粒度分布を示すグラフ
【図5】実施例3の酸化スズ粉末の粒度分布を示すグラフ
【図6】実施例4の酸化スズ粉末の粒度分布を示すグラフ
【図7】実施例5の酸化スズ粉末の粒度分布を示すグラフ
【図8】比較例1の酸化スズ粉末の粒度分布を示すグラフ
【図9】比較例2の酸化スズ粉末の粒度分布を示すグラフ
【図10】比較例3の酸化スズ粉末の粒度分布を示すグラフ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
塩化スズ溶液にアルカリを加えてpHを1〜2に調整した後に、シュウ酸を加えてシュウ酸スズを主体とする沈澱を生成させ、固液分離して回収した沈殿を乾燥し、焼成して酸化スズ粉末を製造することを特徴とする方法。
【請求項2】
塩化スズ溶液を酸化した後に、アルカリを加えてpHを1〜2に調整する請求項1に記載する酸化スズ粉末の製造方法。
【請求項3】
塩化スズ溶液を銀−塩化銀電極基準で−200〜+200mVに酸化した後に、アルカリを加えてpH1〜2に調整する請求項1または2に記載する酸化スズ粉末の製造方法。
【請求項4】
塩化スズ溶液をpH1〜2に調整した後に、シュウ酸と共にシュウ酸アンモニウムを加えてシュウ酸スズを主体とする沈澱を生成させる請求項1〜3の何れかに記載する酸化スズ粉末の製造方法。
【請求項5】
シュウ酸スズを主体とする沈澱を回収して乾燥し、250〜350℃で予備焼成した後に、550〜850℃で本焼成する請求項1〜4の何れかに記載する酸化スズ粉末の製造方法。
【請求項6】
金属スズを塩酸に溶解して塩化第一スズ溶液を調製する工程、この塩化第一スズ溶液にアンモニアを添加してpHを1〜2に調整する工程、pH調整した塩化第一スズ溶液にシュウ酸を加えてシュウ酸スズ沈澱を生成させる工程、この沈澱を固液分離する工程、分離した沈澱を乾燥して焼成する工程を有する酸化スズ粉末の製造方法。
【請求項7】
請求項6の製造方法において、調製した塩化第一スズ溶液を銀−塩化銀電極基準で−200〜+200mVに酸化する工程、pH調整した塩化第一スズ溶液にシュウ酸と共にシュウ酸アンモニウムを加えてシュウ酸スズ沈澱を生成させる工程、乾燥した沈澱を250〜350℃で予備焼成した後に550〜850℃で本焼成する工程を含む酸化スズ粉末の製造方法。
【請求項8】
請求項1〜7に記載する何れかの方法によって製造された酸化スズであって、平均粒径0.4μm〜2μmの酸化スズ粉末。
【請求項9】
請求項1〜7に記載する何れかの方法によって製造された酸化スズであって、平均粒径0.4μm〜2μmおよびBET比表面積5m2/g以上である酸化スズ粉末。
【請求項10】
粒径2μm以下の累積重量60%以上、および粒径5μm以下の累積重量90%以上であって、粒径0.2μm以下および粒径5μm以上の頻度が何れも5%以下の粒度分布を有する酸化スズ粉末。
【請求項11】
請求項8〜10に記載する酸化スズ粉末と、酸化インジウム粉末とを目的の量比に混合し、焼成してなる高密度ITO焼結体。



【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【公開番号】特開2006−69882(P2006−69882A)
【公開日】平成18年3月16日(2006.3.16)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−174632(P2005−174632)
【出願日】平成17年6月15日(2005.6.15)
【出願人】(000006264)三菱マテリアル株式会社 (4,417)
【Fターム(参考)】