説明

微細に堆積されたリチウム金属粉末

本発明は、溶媒の使用を回避する一方で、リチウム金属粉末または薄いリチウム箔を基板の上に微細に堆積させる方法を提供する。この方法には、リチウム金属粉末または薄いリチウム箔をキャリアの上に堆積させる工程、該キャリアの該リチウム金属粉末に対する親和性と比較して、より高い親和性を該リチウム金属粉末に対して有する基板と該キャリアとを接触させる工程、該キャリアと接触している間に、該キャリアの上に堆積された該リチウム金属粉末またはリチウム箔を基板に移動させるのに十分な条件に該基板を供する工程、ならびに、該キャリアと基板とを分離して、該基板の上に堆積された該リチウム金属粉末またはリチウム金属箔を維持する工程が含まれる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
[関連出願の相互参照]
本願は、2009年12月3日出願の米国仮出願番号第61/266,308号に対する優先権を主張し、その開示の全体は、引用することにより本明細書の一部をなすものとする。
【0002】
[発明の分野]
本発明は、リチウム金属粉末を基板の上に微細に堆積させる方法に関する。そのような微細に堆積させたリチウム金属粉末は、例えば、一次電池または二次電池の電極を形成する際に使用することができる。
【背景技術】
【0003】
リチウムおよびリチウムイオンの二次電池または充電式電池は、特定の用途、例えば携帯電話、カムコーダー、およびラップトップコンピュータなどにおいて、さらに最近では、より大型の電力用途、例えば電気自動車およびハイブリッド電気自動車などにおいて使用が見出されている。これらの用途において、二次電池は、できる限り最大の比容量を有するが、それでもなお、高い比容量がその後の再充電および放電サイクルで維持されるように、安全な作動条件および良好なサイクル性を提供することが好ましい。
【0004】
二次電池には様々な構造があるが、各々の構造には、正極(またはカソード)、負極(またはアノード)、カソードとアノードを分離するセパレーター、ならびにカソードおよびアノードとの電気化学的伝達の際の電解質が含まれる。二次リチウム電池に関して、リチウムイオンは、二次電池が放電される場合にアノードからカソードへ電解質を通じて移動し、すなわちその特定の用途に使用される。放電プロセスの間、電子はアノードから集められ、外部回路を通じてカソードに送られる。二次電池が充電または再充電されている場合、リチウムイオンは、カソードからアノードへ電解質を通じて移動する。
【0005】
歴史的に、二次リチウム電池は、高い比容量を有する非リチウム化化合物、例えばTiS、MoS、MnOおよびVなどを、カソード活性材料として用いて製造されていた。これらのカソード活性材料は、リチウム金属アノードと関連していた。二次電池が放電されると、リチウムイオンは、リチウム金属アノードからカソードへ電解質を通じて移動した。残念ながら、このサイクル中、リチウム金属は樹枝状結晶を成長させ、最終的に電池に危険な状況をもたらした。結果として、リチウムイオン電池が好まれるようになり、これらの種類の二次電池の製造は1990年代初期に停止された。
【0006】
リチウムイオン電池では、一般に、LiCoOおよびLiNiOなどのリチウム金属酸化物を、炭素系アノードと関連したカソード活性材料として使用する。これらの電池において、アノードでのリチウム樹枝状結晶の形成は回避され、その結果電池はより安全なものとなる。しかし、その「使用可能な」量が電池容量を決定するリチウムは、完全にカソードから供給される。このことは、カソード活性材料の選定を制限する。なぜなら活性材料は移動可能なリチウムを含有しなければならないためである。また、充電および過充電の間に形成される脱リチウム化生成物は不安定な傾向がある。特に、これらの脱リチウム化生成物は、電解質と反応して発熱する傾向があり、それにより安全上の懸念が生じる。
【0007】
さらに、新しいリチウムイオンセルまたは電池は、最初は放電状態にある。リチウムイオンセルの初回の充電の間、リチウムは、カソード材料、例えばLiCoOまたはLiNiOなどから、アノード材料、例えばグラファイトなどに移動する。アノードで形成するパッシベーション膜は、固体電解質界面またはSEIと呼ばれる。SEI膜は、電極表面の電解質中に存在する種の電気化学的還元に起因する。その後の放電によって、SEIの形成により消費されたリチウムは、カソードに戻されない。この結果、一部のリチウムがSEIの形成によって消費されたために、初期の充電容量と比較して小さい容量を有するリチウムイオンセルとなる。利用可能なリチウムの不可逆性の消費は、リチウムイオンセルの容量を減少させる。この現象は、不可逆容量と呼ばれ、従来のリチウムイオンセルの容量の約10%〜20%を消費することが知られている。従って、リチウムイオンセルの初回の充電の後、リチウムイオンセルはその容量の約10%〜20%を失う。
【0008】
一つの解決法は、安定化リチウム金属粉末(「SLMP(登録商標)」)を用いてアノードを予めリチウム化する(pre−lithiate)ことであった。例えば、引用することによりその開示の全体が本明細書の一部をなすものとする、米国特許第5,567,474号、米国特許第5,776,369号、および米国特許第5,976,403号に記載されるように、リチウム粉末は、COで金属粉末表面を不動態化することにより安定化させることができる。しかし、CO不動態化リチウム金属粉末は、リチウム金属と空気の反応のために、リチウム金属含有量が減衰するまでの限られた時間の間、低い水分レベルの空気中でしか使用することができない。もう一つの解決法は、引用することによりその開示の全体が本明細書の一部をなすものとする、米国特許第7,588,623号に記載されるように、フッ素化コーティングをリチウム金属粉末に適用することである。もう一つの解決法は、引用することによりその開示の全体が本明細書の一部をなすものとする、米国特許出願公開第2009/0035663号に記載されるように、ワックス層を提供することである。しかし、電池を形成するためにリチウム金属粉末を様々な基板に適用するための改良された方法に対する必要性がなお存在する。
【発明の概要】
【0009】
本発明は、溶媒の使用を回避しながら、リチウム金属粉末または薄いリチウム粉末由来の箔を基板の上に微細に堆積させる方法を提供する。この方法は、リチウム金属粉末をキャリアの上に堆積させる工程、該キャリアを、キャリアのリチウム金属粉末に対する親和性と比較して、より高い親和性をリチウム金属粉末に対して有する基板と接触させる工程、該キャリアと接触している間に該基板を、該キャリアの上に堆積させた該リチウム金属粉末を該基板に移動させるのに十分な条件に供する工程、ならびに、該キャリアと該基板とを分離して、該基板の上に微細に堆積した該リチウム金属粉末を維持する工程を含む。任意選択的に、薄いリチウム粉末由来の箔を、リチウム金属粉末の代わりに使用することができる。そのような方法を用いて形成された基板を含む電池も提供される。
【0010】
上記の目的および本発明の利点は、添付の図面を参照して本発明の実施形態をより詳細に説明することにより一層明らかとなる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【図1】実施例7に対応する初回サイクル電圧曲線を示す図である。
【図2】実施例8に対応する初回サイクル電圧曲線を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
本明細書において使用される専門用語は、特定の実施形態を説明する目的のためだけのものであり、本発明を制限することを意図するものではない。本明細書において、用語「および/または」には、関連する列挙項目の1以上のありとあらゆる組合せが含まれる。本明細書において、単数形「a」、「an」および「the」は、文脈上明らかにそうではないことが示されている場合を除き、複数形も同様に含むことを意図する。さらに、用語「含む(comprises)」および/または「含む(comprising)」は、本明細書において使用される場合、述べられる特徴、整数、工程、操作、要素、および/または成分の存在を指定するが、1以上のその他の特徴、整数、工程、操作、要素、成分、および/またはその群の存在または添加を排除しないことが理解される。
【0013】
別に定義されない限り、本明細書において用いられるすべての用語(技術用語および科学用語を含む)は、本発明の属する分野の当業者によって一般に理解されるものと同じ意味を有する。さらに、用語、例えば一般的に使用される辞書で定義される用語などは、従来技術の文脈におけるそれらの意味に一致する意味を有すると解釈されるべきであり、本明細書において明確にそう定義されない限り、理想化されたかまたは過度に形式的な意味で解釈されるものではないことが理解される。
【0014】
本発明によれば、リチウム金属粉末は、溶媒を使用せずに基板の上に微細に堆積される。リチウム金属粉末は、微粉の形態である。リチウム金属粉末は、一般に、平均粒径が約60μm未満であり、多くの場合約40μm未満である。リチウム金属粉末は、例えば、引用することによりその開示の全体が本明細書の一部をなすものとする、米国特許第5,976,403号および米国特許第6,706,447号に記載される、安定化リチウム金属粉末(「SLMP(登録商標)」)の形態であり得る。
【0015】
リチウム粉末由来の薄いリチウム箔を使用する場合、それは約20μm以下の厚さを有し得る。
【0016】
リチウム金属粉末は、最初にキャリアの上に堆積される。キャリアは、合成もしくは半合成の非晶質固体樹脂、セルロース、ガラス、金属(例えば、金属箔)またはセパレーター材料(例えば、ポリプロピレン、ポリエチレンまたは両方の積層品)であり得る。例えば、固体樹脂の例としては、ポリプロピレン(例えば、InteTopp(商標)Type AAフィルム)、ポリエチレン、またはポリエステルフィルムが挙げられる。金属キャリアの例としては、CuまたはCu合金箔が挙げられる。一実施形態では、キャリアの表面には、性能を改良する、コストを削減する、またはリチウム金属粉末に対するキャリアの親和性を変えるための様々な添加剤が含まれ得る。キャリアは、フィルム、箔、メッシュなどの形態であり得る。キャリアは、多くの場合、10μm〜200μmの厚さを有する。キャリアの目的は、リチウム金属粉末を基板の上に堆積させるかまたは移動させることである。キャリアは、リチウム金属粉末に対して親和性を有する。しかし、その親和性は、リチウム金属粉末を堆積させる基板に対する親和性よりも低い。リチウム粉末由来の薄いリチウム箔を使用する場合、それは、リチウム粉末の移動のためのものと同じ手順を用い、適切な圧力を加えて適用または堆積させることができる。あるいは、EVA、SBR、ワックスなどの結合剤を、キャリアに適用することもできる。次に、SLMP(登録商標)を、キャリアの上に静電的に堆積させることができる。
【0017】
リチウム金属粉末は、シービング(sieving)、スプレー、コーティング、印刷、ペインティング、浸漬、などによってキャリアの上に堆積させることができ、その選択は、当業者の技能の範囲内である。また、リチウム金属粉末は、機械力を用いて非常に高率の堆積および溶媒を含まない堆積を可能にする、高圧蒸気流技術、ガス流技術などを用いて堆積させることもできる。
【0018】
基板は、キャリアのリチウム金属粉末に対する親和性と比較してより高い親和性をリチウム金属粉末に対して有する。適した基板としては、炭素質材料、LiTi12およびその他のリチウム挿入材料、Si、Sn、Cu、SiO、酸化錫、錫合金、遷移金属合金、リチウム金属窒化物、およびリチウム金属酸化物、ならびにそれらの混合物および複合材料、ならびにCu箔およびその他の金属合金を挙げることができる。基板は、リチウム金属粉末の基板に対する親和性を促進するために薬剤で処理するかまたは薬剤と接触させることができる。適した親和性促進剤(affinity promoting agent)としては、例えばエチレン酢酸ビニル、スチレンブタジエンゴム、ブタジエンゴム、およびエチレンプロピレンジエンモノマーなどの高分子バインダー、例えば12−ヒドロキシステアリン酸などの天然ワックス、例えば低分子量ポリエチレンなどの合成ワックス、例えばパラフィンワックスなどの石油ワックス、およびマイクロクリスタリンワックスが挙げられる。
【0019】
操作中、キャリアは一般に100〜20,000psiなどの圧力下で、基板の上にプレスされる。リチウム金属粉末の親和性を利用することにより、リチウム金属粉末の不連続な層が基板上に与えられる。さらに、リチウム金属粉末は、その堆積の間に変形され得る。
【0020】
基板は、電極の表面の形態であり得る。リチウム金属粉末を堆積させた後、リチウム金属粉末を基板の上に維持するのに十分な方法でキャリアと基板とを分離することができる。
【0021】
基板は、リチウム金属粉末の特性が求められる幅広い種類の用途で使用され得る。例えば、引用することによりその開示の全体が本明細書の一部をなすものとする、米国特許第6,706,447号に記載されるように、基板を二次電池のアノードに形成することができる。典型的な二次電池は、正極またはカソード、負極またはアノード、正極と負極を分離するためのセパレーター、ならびに正極および負極を電気化学的に連絡する電解質を含む。また、二次電池には、カソードと電気接触している電流コレクタ、およびアノードと電気接触している電流コレクタも含まれる。電流コレクタは、外部回路を通じて相互に電気接触している。二次電池は、当技術分野で公知の任意の構造、例えば「ゼリーロール」または積み重ね構造を有し得る。
【0022】
カソードは、一般に炭素質材料およびバインダーポリマーを組み合わせた活性材料で形成される。カソードで使用される活性材料は、好ましくは有用な電圧(例えば、リチウムに対して2.0〜5.0V)でリチウム化され得る材料である。好ましくは、例えばMnO、V、MoSなどの非リチウム化材料、金属フッ化物、またはそれらの混合物を活性材料として使用することができ、より好ましくは、MnOが使用される。しかし、さらにリチウム化することのできるLiMnなどのリチウム化材料も使用することができる。非リチウム化活性材料は、一般にこの構造においてリチウム化活性材料よりも高い比容量、低いコストおよび広い選択範囲を有し、従ってリチウム化活性材料を含む二次電池よりも増加した電力をもたらすことができるので、好ましい。さらに、下記に考察されるように、アノードにはリチウムが含まれるので、二次電池が動作するためにカソードがリチウム化材料を含む必要はない。カソードに与えられる活性材料の量は、アノードに存在する移動可能なリチウム金属を受け入れるために十分であることが好ましい。
【0023】
このような基板から形成されるアノードは、電気化学系においてリチウムを吸収および脱着する能力がある。
【0024】
基板のその他の使用可能性としては、一次電池の電流コレクタ、中性子検出器の部品を二次加工する際に使用することのでき得る高密度ポリプロピレン表面が挙げられる。
【0025】
以下の実施例は、単に本発明の実例であって、本発明を制限するものではない。
【0026】
[実施例1]
12mgのSLMP(登録商標)を、50cmの面積のポリプロピレンInteTopp(商標)Type AAフィルムの上に堆積させた。次に、粒子をフィルムに付着させるために、SLMPキャリアフィルムを、ポリプロピレン・ジュエラーズ・ローラー(jewelers roller)を用いて軽くロールがけした。次に、キャリアフィルムを、50cmの面積の炭素質電池電極に接触するように置いた。次に、キャリアフィルムおよび電極を積み重ねたものを1500lbsでプレスした。プレスの後に、約8mgのリチウム(約0.16mg/cm)を堆積している電極からフィルムを剥がした。
【0027】
[実施例2]
100mgのSLMPを、284cmの面積のポリプロピレンInteTopp(商標)Type AAフィルムの上に堆積させた。次に、粒子をフィルムに付着させるために、SLMPキャリアフィルムを、ポリプロピレン・ジュエラーズ・ローラーを用いて軽くロールがけした。次に、キャリアフィルムを、284cmの面積の炭素質電池電極に接触するように置いた。次に、キャリアフィルムおよび電極を積み重ねたものを、ハンドローラーを用いてプレスした。プレスの後に、約80mgのリチウム(約0.4mg/cm)を堆積している電極からフィルムを剥がした。
【0028】
[実施例3]
SLMPを、EVA接着促進剤を含有するポリプロピレンInteTopp(商標)Type AAフィルムの上に吹き付ける。次に、キャリアフィルムを負の電池電極と接触するように置く。次に、キャリアフィルムおよび電極を積み重ねたものをプレスする。プレスの後に、負極の上に薄いリチウム箔の層を堆積している電極からフィルムを剥がす。
【0029】
[実施例4]
EVA接着促進コーティングを含むSLMPを、ポリプロピレンInteTopp(商標)Type AAフィルムの上に吹き付ける。次に、キャリアフィルムを負の電池電極と接触するように置く。次に、キャリアフィルムおよび電極を積み重ねたものをプレスする。プレスの後に、負極の上に薄いリチウム箔の層を堆積している電極からフィルムを剥がす。
【0030】
[実施例5]
100mgのSLMPを、トルエン中のスチレン−ブタジエン/BYK−P 104Sにより、SLMP:SBR:BYKの比が100:10:5のスラリーで、249cmの面積のポリプロピレンフィルムInteTopp(商標)Type BAプラスチックフィルムのコロナ処理面の上に堆積させた。溶媒蒸発後、キャリアフィルムを銅箔と接触するように置いた。次に、キャリアフィルムと銅箔を積み重ねたものを圧延した。圧延の後、ポリプロピレンフィルムを、26mmの薄いリチウム箔の層を堆積している銅箔から剥がした。
【0031】
[実施例6]
48mgのSLMPを、トルエン中のスチレン−ブタジエン/BYKスラリーにより、249cmの面積のポリプロピレンフィルムInteTopp(商標)Type BAプラスチックフィルムのコロナ処理面の上に堆積させた。溶媒蒸発後、キャリアフィルムを、249cmのMCMB−25−28(90%)+カーボンブラック(3%)+PVdF(7%)の電極と接触するように置いた。次に、キャリアフィルムおよび電極を積み重ねたものを圧延した。圧延の後、ポリプロピレンフィルムを、47mgの薄いリチウム箔の層を堆積している電極から剥がした。
【0032】
[実施例7]
5mgのSLMPを、トルエン中のスチレン−ブタジエン/BYKスラリーにより、49cmの面積のポリプロピレンフィルムInteTopp(商標)Type BAプラスチックフィルムのコロナ処理面の上に堆積させた。溶媒蒸発後、キャリアフィルムを、49cmのMCMB−25−28(90%)+カーボンブラック(3%)+PVdF(7%)の電極と接触するように置いた。次に、キャリアフィルムおよび電極を積み重ねたものを圧延した。圧延の後、ポリプロピレンフィルムを、薄いリチウム箔の層を堆積している電極から剥がした。次に、MBMB 2528電極を、LiMn(90%)+カーボンブラック(5%)+PVdF(5%)の正極に対してパウチセルに組み立てた。Novolyte製の1MのLiPF/EC+DEC(1:1)を電解質として使用した。SLMPを含まない同じ構成の基準セルを、比較のために組み立てた。組み立て後、パウチセルをMaccorシリーズ4000サイクラーで試験した。用いた試験手順は、CC 12mA−4.3V、10時間のステップ時間までCV(定電圧)、12mA−3.0VでCC(定電流)放電であった。サイクル手順を開始する前に、事前のリチウム化プロセスの時間を完了させるためにセルを5時間休止させた。下記の表1は、実施例7の基準セルおよびSLMP組込みセルのデータを要約する。図1は、代表的な基準セルおよびSLMP組込みセルの初回サイクル電圧曲線を示す。
【0033】
【表1】

【0034】
[実施例8]
5mgのSLMPを、トルエン中のスチレン−ブタジエン/BYKスラリーにより、64cmの面積のCelgard(登録商標)3501セパレーターの上に堆積させた。溶媒蒸発後、セパレーターを、49cmのMCMB−2528(90%)+カーボンブラック(3%)+PVdF(7%)の電極と接触するように置いた。次に、セパレーターおよび電極を積み重ねたものを圧延した。圧延の後、MCMB 2528電極およびセパレーターを、LiMn(90%)+カーボンブラック(5%)+PVdF(5%)の正極に対してパウチセルに組み立てた。Novolyte製の1MのLiPF/EC+DEC(1:1)を電解質として使用した。SLMPを含まない同じ構成の基準セルを、比較のために組み立てた。組み立て後、パウチセルをMaccorシリーズ4000サイクラーで試験した。用いた試験手順は、CC 12mA−4.3V、10時間のステップ時間までCV、12mA−3.0VでのCC放電であった。サイクル手順を開始する前に、事前のリチウム化プロセスの時間を完了させるためにセルを5時間休止させた。図2は、基準セルおよびSLMP組込みセルの初回サイクル電圧曲線を示す。
【0035】
[実施例9]
100mgのSLMPを、トルエン中のスチレン−ブタジエン/BYKスラリーにより、249cmの面積の銅箔の上に堆積させた。溶媒蒸発後、銅箔を圧延し、26mmの薄いリチウム箔の層をCu箔の上に作成した。この結果、銅電流コレクタ+薄いリチウム箔は、電池の負極として使用することができる。
【0036】
このようにして本発明の特定の実施形態を説明したが、添付される特許請求の範囲により定義される本発明は、下記に特許請求されるその精神または範囲から逸脱することなくその多くの明白な変更形態が可能であり、上記の説明に示す特定の詳細により制限されるものでないことは当然理解される。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
リチウム金属粉末を基板の上に溶媒を使用せずに微細に堆積させる方法であって、
a)リチウム金属粉末をキャリアの上に堆積させる工程と、
b)該キャリアの該リチウム金属粉末に対する親和性と比較して、より高い親和性を該リチウム金属粉末に対して有する基板と、該キャリアとを接触させる工程と、
c)該キャリアと接触している間に該基板を、該キャリアの上に堆積された該リチウム金属粉末を該基板に移動させるのに十分な条件に供する工程と、
d)該キャリアと基板とを分離して、該基板の上に微細に堆積された該リチウム金属粉末を維持する工程と
を含む、方法。
【請求項2】
前記リチウム金属粉末が、安定化されたリチウム金属粉末である、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記キャリアが、合成もしくは半合成の非晶質固体樹脂、セルロースまたは金属である、請求項1に記載の方法。
【請求項4】
前記基板を、前記キャリアとの接触よりも前に親和性促進剤と接触させる、請求項1に記載の方法。
【請求項5】
前記基板が、炭素質材料、LiTi12、Si、Sn、Cu、SiO、酸化錫、錫合金、金属箔、導電性ポリマー、導電性セラミック、遷移金属酸化物、リチウム金属窒化物、およびリチウム金属酸化物、ならびにそれらの混合物または複合材料からなる群から選択される材料である、請求項1に記載の方法。
【請求項6】
工程(c)において、前記リチウム金属を移動させるのに十分な前記条件が、前記キャリアと基板とを共にプレスすることを含む、請求項1に記載の方法。
【請求項7】
前記基板が、炭素質材料、LiTi12、Si、Sn、Cu、SiO、酸化錫、錫合金、金属箔、導電性ポリマー、導電性セラミック、遷移金属酸化物、リチウム金属窒化物、およびリチウム金属酸化物、ならびにそれらの混合物または複合材料からなる群から選択される材料である、請求項4に記載の方法。
【請求項8】
リチウム金属粉末を基板の上に溶媒を使用せずに微細に堆積させる方法であって、
a)リチウム金属粉末由来の箔をキャリアの上に堆積させる工程と、
b)該キャリアの該リチウム金属粉末の箔に対する親和性と比較して、より高い親和性を該リチウム金属粉末の箔に対して有する基板と、該キャリアとを接触させる工程と、
c)該キャリアと接触している間に該基板を、該キャリアの上に堆積された該リチウム金属粉末箔を該基板に移動させるのに十分な条件に供する工程と、
d)該キャリアと基板とを分離して、該基板の上に堆積された該リチウム金属粉末箔を維持する工程と
を含む、方法。
【請求項9】
前記リチウム金属粉末が、安定化されたリチウム金属粉末である、請求項8に記載の方法。
【請求項10】
前記キャリアが、合成もしくは半合成の非晶質固体樹脂、セルロースまたは金属である、請求項8に記載の方法。
【請求項11】
前記基板を、前記キャリアとの接触よりも前に親和性促進剤と接触させる、請求項8に記載の方法。
【請求項12】
前記基板が、炭素質材料、LiTi12、Si、Sn、Cu、SiO、酸化錫、錫合金、金属箔、導電性ポリマー、導電性セラミック、遷移金属酸化物、リチウム金属窒化物、およびリチウム金属酸化物、ならびにそれらの混合物または複合材料からなる群から選択される材料である、請求項11に記載の方法。
【請求項13】
工程(c)において、前記リチウム金属を移動させるのに十分な前記条件が、前記キャリアと基板とを共にプレスすることを含む、請求項8に記載の方法。
【請求項14】
リチウム金属粉末を基板の上に溶媒を使用せずに堆積させるためのリチウムキャリアであって、キャリアと、該キャリアの上に堆積されたリチウム金属粉末とを含み、該リチウム金属粉末に対する該キャリアの親和性が、該基板に対する該リチウム金属粉末の親和性よりも小さい、リチウムキャリア。
【請求項15】
前記リチウム金属粉末が、安定化されたリチウム金属粉末である、請求項14に記載のリチウムキャリア。
【請求項16】
リチウム金属粉末を基板の上に溶媒を使用せずに堆積させるためのリチウムキャリアであって、キャリアと、該キャリアの上に堆積された薄いリチウム金属箔とを含み、該薄いリチウム金属箔のリチウム金属に対する該キャリアの親和性が、該基板に対する該リチウム金属の親和性よりも小さい、リチウムキャリア。
【請求項17】
電池を形成するための方法であって、
a)炭素質材料、LiTi12、Si、Sn、SiO、酸化錫、錫合金、金属箔、導電性ポリマー、導電性セラミック、遷移金属合金、リチウム金属窒化物、およびリチウム金属酸化物ならびにそれらの混合物または複合材料からなる群から選択される材料から電極を形成する工程と、
b)該電極の表面と、キャリア材料および該キャリア材料の上に堆積されたリチウム金属を含むリチウムキャリアとを接触させる工程であって、該リチウム金属粉末に対する該キャリアの親和性が、該電極材料に対する該リチウム金属粉末の親和性よりも小さい工程と、
c)該キャリアを該電極から除去する工程であって、該リチウム金属粉末が、該電極の表面に堆積される工程と、
d)該リチウム金属がその上に堆積した該電極を、電池の形成において、負極(アノード)として使用する工程と
を含む、方法。

【図1】
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【図2】
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【公表番号】特表2013−513206(P2013−513206A)
【公表日】平成25年4月18日(2013.4.18)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−542121(P2012−542121)
【出願日】平成22年11月30日(2010.11.30)
【国際出願番号】PCT/US2010/058254
【国際公開番号】WO2011/068767
【国際公開日】平成23年6月9日(2011.6.9)
【出願人】(598076270)エフエムシー・コーポレイション (8)
【Fターム(参考)】