説明

微細パターンの形成方法

【課題】基板上に意図どおりの安定な形状を有し、表面粗さの点でも優れた微細パターンの形成方法を提供することを課題とするものである。
【解決手段】基板12、シリコンアルコキシドのオリゴマーを含む有機/無機複合電離放射線硬化性樹脂組成物からなる成形用層13、および所望の深さおよび幅の溝からなる成形用パターン15を有する成形用型14を重ね、成形用型14側から電離放射線17を照射して成形用層を硬化させ、脱型を行ない、その後、加熱、焼成を行なうことにより、微細パターンを形成することができた。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、無機質等で構成された微細パターンの形成方法に関するものである。好ましくは微細パターンは幅が1μm以下で、かつアスペクト比が1以上のガラスライクなものであり、このような微細パターンが形成されたパターン形成体は、記録デバイス、液晶デバイス、光学レンズ用ガラススタンパー、液晶デバイス、光デバイス、もしくは光学レンズ等に利用可能であり、例えば、光導波路に適する。
【背景技術】
【0002】
光導波路や微細な光学部品、もしくはそれらを製造するための複製用型として、無機質で形成された微細パターンが要望されている。光導波路を例にとると、従来は、基板上の薄膜を反応性イオンエッチング法によって形成していたのに替えて、ポリシロキサン系の塗膜をパターン露光し、未硬化部を溶解除去することにより、パターン化することが提案されている。(文献1)。
【特許文献1】特開2004−85646号公報。
【0003】
特許文献1に記載された方法によれば、無機質の微細なパターンの形成そのものは可能であるが、塗膜の厚さが制限される上、溶解除去によって得られるパターンの断面を見ると頂部と側面との接合部、側面と基板との接合部等が丸みを帯びてしまい、意図した精密な形状が得られないことがある。特に、得られたパターンを焼成して、無機質のみの微細パターンを得たいときには、もともと、断面が丸みを帯びたパターンがさらに変形する傾向を有するから、意図した精密な形状を得ることは一層難しくなる。光学用途においては断面形状が意図どおりに、しかも安定的に再現されることや、得られるパターンの表面粗さがごく小さいことが望まれている。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明においては、基板上に意図どおりの安定な形状を有し、表面粗さの点でも優れた微細パターンの形成方法を提供することを課題とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0005】
発明者の検討によれば、塗膜の形成、パターン露光、および溶剤による溶解現像によってパターンを形成するのに替えて、シリコンアルコキシドのオリゴマーを含む有機/無機複合電離放射線硬化性樹脂組成物を微細な型形状を有する成形用型の型面に適用して、電離放射線を照射して剥離し、その後加熱することにより、あるいはさらに焼成することにより、上記の課題を解決し得ることを見い出し、本発明に到達することができた。
【0006】
第1の発明は、有機成分としての電離放射線硬化性樹脂と無機成分としてのシリコンアルコキシドのオリゴマーとを含む有機/無機複合電離放射線硬化性樹脂組成物と、型面に所定の幅および深さの溝で形成された成形用パターンを有する成形用型とを準備し、前記有機/無機複合電離放射線硬化性樹脂組成物を前記成形用型の型面に適用して前記型面に密着した塗膜を形成し、形成された前記塗膜に電離放射線を照射して硬化させ、硬化した前記塗膜を剥離し、剥離後、加熱を行なうことを特徴とする微細パターンの形成方法に関するものである。
【0007】
第2の発明は、第1の発明において、前記有機/無機複合電離放射線硬化性樹脂組成物および前記成形用型に加えて基板を準備し、前記有機/無機複合電離放射線硬化性樹脂組成物を前記基板に適用し、適用された前記有機/無機複合電離放射線硬化性樹脂組成物を前記基板ごと前記成形用型の型面に重ねることにより、前記型面に密着した塗膜を形成することを特徴とする微細パターンの形成方法に関するものである。
【0008】
第3の発明は、第1の発明において、前記有機/無機複合電離放射線硬化性樹脂組成物および前記成形用型に加えて基板を準備し、前記有機/無機複合電離放射線硬化性樹脂組成物を前記成形用型の型面に適用し、適用された前記有機/無機複合電離放射線硬化性樹脂組成物を前記成形用型ごと前記基板に重ねることにより、前記型面に密着した塗膜を形成することを特徴とする微細パターンの形成方法に関するものである。
【0009】
第4の発明は、第1〜第4いずれかの発明において、前記塗膜に電離放射線を照射して硬化させ、硬化した前記塗膜を剥離するのに替えて、前記塗膜に電離放射線を照射して半硬化させ、半硬化した前記塗膜を剥離した後、前記と膜に電離放射線を照射して前記塗膜を硬化させることを特徴とする微細パターンの形成方法に関するものである。
【0010】
第5の発明は、第1〜第4いずれかの発明において、前記の加熱を行なうことに引き続き、焼成を行なうことを特徴とする微細パターンの形成方法に関するものである。
【発明の効果】
【0011】
第1の発明によれば、シリコンアルコキシドのオリゴマーを含む有機/無機複合電離放射線硬化性樹脂組成物を所定の幅および深さの溝で形成された成形用パターンを有する成形用型の型面に適用し、電離放射線を照射して剥離し、その後、加熱することにより、凸条で形成された微細なパターンを、その断面形状を再現性よく形成することが可能な微細パターンの形成方法を提供することができる。
【0012】
第2または第3の発明によれば、第1の発明の効果に加えて、基板を伴なった微細パターンを有する微細パターンの形成方法を提供することができる。
【0013】
第4の発明によれば、第1〜第3いずれかの発明の効果に加えて、電離放射線を照射するのを、剥離前の半硬化のためと剥離後の硬化のための2回に分けて行なうので、剥離の際には塗膜の可撓性があるため、剥離がより確実に行なえることが可能な微細パターンの形成方法を提供することができる。
【0014】
第5の発明によれば、第1〜第4いずれかの発明の効果に加えて、焼成を行なうので、パターンに含まれる有機成分を除去することが可能な微細パターンの形成方法を提供することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0015】
図1は本発明の微細パターンの形成方法の概略を示す図である。
本発明の微細パターンの形成方法においては、まず、(1)有機成分としての電離放射線硬化性樹脂と無機成分としてのシリコンアルコキシドのオリゴマーとを含む有機/無機複合電離放射線硬化性樹脂組成物および(2)型面に所定の幅および深さの溝で形成された成形用パターンを有する成形用型を準備する。さらに(3)基板も準備することが好ましい。
【0016】
次に、(1)の有機/無機複合電離放射線硬化性樹脂組成物を(2)の成形用型の型面に適用して前記型面に密着した塗膜を形成する。
【0017】
この塗膜を形成するやり方としては、大別して二通りの方法がある。第1の方法は、図1(a)および(b)に示すように、(3)の基板12を準備しておき、基板12に有機/無機複合電離放射線硬化性樹脂組成物からなる成形用層13を適用し、適用された有機/無機複合電離放射線硬化性樹脂組成物からなる成形用層13を基板12ごと成形用型14の型面に重ねる方法である。第2の方法は、第1の方法におけるのとは逆に、図示はしないが、成形用型14の型面に有機/無機複合電離放射線硬化性樹脂組成物からなる成形用層13を適用し、適用された有機/無機複合電離放射線硬化性樹脂組成物からなる成形用層13を成形用型14ごと基板12に重ねる方法である。重ね合わせを確実に行なうため、図1(b)に示されるように、ローラ16等の押圧力手段により加圧して密着させてもよい。また、基板12を用いずに、成形用型14の型面に有機/無機複合電離放射線硬化性樹脂組成物からなる成形用層13を適用するだけでもよい。
【0018】
上記のようにして形成された有機/無機複合電離放射線硬化性樹脂組成物の塗膜に電離放射線17を照射する。例えば、電離放射線17を成形用型14側から照射して、塗膜を硬化させる。硬化後、硬化した塗膜を剥離し、剥離後、加熱を行なって微細パターンを形成する。
【0019】
これら電離放射線の照射、剥離、および加熱には、次のような変形態様があり得る。
【0020】
まず、電離放射線の照射および剥離については、電離放射線を照射する工程と、剥離する工程を記載順に行なう二工程からなる場合と、電離放射線の照射により半硬化させる工程、剥離の工程、および電離放射線の照射により硬化させる工程をこれらの記載順に行なう三工程からなる場合とがある。電離放射線の照射は、例えば、波長365nmの紫外線を用い、照度;1〜1000mW/cm2、照射量;0.01〜5000mJ/cm2、好ましくは0.1〜1000mJ/cm2程度になるよう照射して、露光する。なお、電離放射線の照射を半硬化、および完全硬化の両方の目的で、2回に分けて行なうときは、得られる製品の物理的および科学的性状、並びに脱型の作業性を考慮して、1回目と2回目の照射条件を決めることが好ましい。上記の二工程からなる場合には、剥離の前に塗膜が硬化しているため、塗膜の可撓性が乏しく、剥離の際の応力による変形が生じにくいので、塗膜が破損することがある。これに対し、上記の三工程からなる場合には、剥離の前の段階では硬化が完了していない半硬化状態であるため、塗膜の可撓性があり、剥離の際の応力による変形が生じて、剥離が容易である上、剥離後には元の形状に戻るので、剥離がより確実に行なえる利点がある。特にパターンが微細なもので、アスペクト比の大きいものになるほど、三工程で行なう利点が顕著に現れる。
【0021】
また、本発明においては、成形用層13が有機/無機複合電離放射線硬化性樹脂組成物の塗膜からなるので、加熱を行なったのみでは、微細パターン中に有機成分が無機成分と共に残存しているのが普通である。しかし、微細パターンの用途によっては、有機成分が残存せず、無機成分のみであることが好ましいことがあるので、そのような場合には、有機成分を除去できる程度の高温で加熱する、いわゆる焼成を行なうことが好ましい。
【0022】
なお、本発明の微細パターンの形成方法において、成形用層13の厚み、成形用型14の成形用パターン15の溝の深さや幅等を調節することにより、得られる無機質微細パターンの凸条18どうしの間にある、成形用層13が硬化した厚みの薄い部分を無くすか、もしくは厚みをごく薄くすることができる。無機質微細パターンを光導波路として用いる場合等においては、凸条18どうしの間にある部分をより確実に無くすことが望ましい。凸条18の頂面および側面をマスクで覆い、プラズマ処理等を施すことにより、凸条18どうしの間にある部分を確実に無くすことができる。
【0023】
本発明における基板12は、ガラス、石英ガラス、もしくはシリコンウェハー等の無機質板、プラスチック板、もしくはプラスチックフィルムであり、透明であっても不透明であってもよいが、基板12側から電離放射線を照射する場合には、透明であることが好ましい。
【0024】
成形用型14は、得たい微細パターンに対応する成形用パターン15を有するものであり、成形用パターンは、所定の幅と深さを有する溝がパターン状に形成されたもので、溝の幅および深さは、得られる微細パターンの凸条の幅および高さにそれぞれ対応する。ここで凸条とは、幅Wに対し、高さHが比較的大きく、基板(12)より突起したもので、かつ図面の手前側から奥側に向かう方向に長さを有するものであり、好ましくはW/Hで表される比(=アスペクト比)が1もしくは1以上のものである。なお、図面の手前側から奥側に向かう方向に長さを有するとは、直線状でなく、曲線状のものも含む。
本発明の微細パターンの形成方法においては、得られる微細パターンの凸条の頂部は、必ずしも平面でなくてもよく、円弧状や三角形の二辺をなすようなものであってもよい。
【0025】
有機/無機複合電離放射線硬化性樹脂組成物は、有機成分としての電離放射線硬化性樹脂と無機成分としてのシリコンアルコキシドのオリゴマーとを含むものである。
【0026】
シリコンアルキシドとしては、テトラメトキシシラン、テトラエトキシシラン、テトラ−n−プロポキシシラン、テトラ−i−プロポキシシラン、テトラ−n−ブトキシシラン、テトラ−i−ブトキシシラン、テトラ−sec−ブトキシシラン、テトラ−t−ブトキシシラン等のテトラアルコキシシラン類;メチルトリメトキシシラン、メチルトリエトキシシラン、エチルトリメトキシシラン、エチルトリエトキシシラン、n−プロピルトリメトキシシラン、n−プロピルトリエトキシシラン、i−プロピルトリメトキシシラン、i−プロピルトリエトキシシラン、3−クロロプロピルトリメトキシシラン、3−クロロプロピルトリエトキシシラン、3,3,3−トリフロロプロピルトリメトキシシラン、3,3,3−トリフロロプロピルトリエトキシシラン、3−メルカプトプロピルトリメトキシシラン、3−アミノプロピルトリメトキシシラン、3−アミノプロピルトリエトキシシラン、フェニルトリメトキシシラン、フェニルトリエトキシシラン、ベンジルトリメトキシシラン、ベンジルトリエトキシシラン、3−グリシドキシプロピルトリメトキシシラン、3−グリシドキシプロピルトリエトキシシラン、2−(3,4−エポキシシクロヘキシル)エチルトリメトキシシラン、2−(3,4−エポキシシクロヘキシル)エチルトリエトキシシラン、ビニルトリメトキシシラン、ビニルトリエトキシシラン、3−(メタ)アクリルオキシプロピルトリメトキシシラン、3−(メタ)アクリルオキシプロピルトリエトキシシラン等のトリアルコキシシラン類、ジメチルジメトキシシラン、ジメチルジエトキシシラン、ジエチルジメトキシシラン、ジエチルジエトキシシラン、ジ−n−プロピルジメトキシシラン、ジ−n−プロピルジエトキシシラン、ジ−i−プロピルジメトキシシラン、ジ−i−プロピルジエトキシシラン、ジフェニルジメトキシシラン、ジフェニルジエトキシシラン等のジアルコキシシラン類;テトラアセチルオキシシラン、テトラプロピオニルオキシシラン等のテトラアシルオキシシラン類;メチルトリアセチルオキシシラン、エチルトリアセチルオキシシラン等のトリアシルオキシシラン類;ジメチルジアセチルオキシシラン、ジエチルジアセチルオキシシラン等のジアシルオキシシラン類等が好適である。これらの中でも、テトラメトキシシラン、テトラエトキシシラン、メチルトリメトキシシラン、メチルトリエトキシシラン、ジメチルジメトキシシラン、ジメチルジエトキシシランが好ましい。
【0027】
電離放射線硬化性樹脂としては、種々のものが使用できるが、(メタ)アクリロイル基を有するいわゆる(メタ)アクリレート化合物のモノマー、オリゴマー、もしくはポリマーを用いて調製された電離放射線硬化性樹脂組成物が好ましく、電離放射線硬化性樹脂組成物としては、特に水酸基を有するモノマーを含有するものであることが好ましい。
【0028】
水酸基を有するモノマーとしては、ペンタエリスリトールトリアクリレート、ジペンタエリスリトールモノヒドロキシペンタアクリレート、グリセリンモノメタクリレート、グリセリンジメタクリレート、2−ヒドロキシエチルアクリレート、2−ヒドロキシエチルメタクリレート、2−ヒドロキシプロピルアクリレート、2−ヒドロキシプロピルメタクリレート、2−ヒドロキシブチルアクリレート、2−ヒドロキシ−3−フェノキシプロピルアクリレート、もしくは2−ヒドロキシ−3−アクリロイルオキシプロピルメタクリレートを挙げることができる。
【0029】
有機/無機複合電離放射線硬化性樹脂組成物の調製は、無機成分としてのシリコンアルコキシドのオリゴマーと、有機成分としての電離放射線硬化性樹脂とを、必要に応じ溶剤を伴なって混合した後、静置することにより、無機成分の分散が進んだ有機/無機複合電離放射線硬化性樹脂組成物を得ることができる。
【0030】
加水分解縮合物固形分/電離放射線硬化性樹脂組成物は、1/99〜99/1程度の範囲で任意に設定し得るが、最終的に得たい微細パターンとして、無機質もしくは無機質に近い性状のものを希望する場合には、25/75〜99/1であることが好ましい。
【0031】
成形用層13、基板12、および成形用型14の型面を重ねる際には、図1を引用した説明ではローラ16を用いて加圧を行なうとしたが、必要に応じて成形を容易にするため、加圧の際に加熱を伴なってもよい。加圧、または加圧および加熱の手段としては、ローラ16を用いても、あるいは平板状のプレスを用いてもよい。
【0032】
成形用層13の加熱は、例えば、50℃〜300℃の温度範囲で1分〜24時間の条件で行ない、焼成を行なう場合には、200℃〜700℃の温度範囲で1分〜24時間の条件で行なう。ただし、加熱後に焼成を行なう場合には、加熱の温度を有機成分の焼成が進行しない程度の、即ち、焼成の温度よりも低く設定することが好ましい。
【実施例1】
【0033】
微細凹凸原版の作成
150mm×150mmの正方形で、厚さが9mmの石英基板の片方の面の全面に、幅;0.2μm、深さ;0.5μm、ピッチ;0.4μmの溝をドライエッチング法により形成して型面とし、微細凹凸原版Aを作成した。また、同様にして、幅;0.3μm、深さ;0.5μm、ピッチ;0.6μmの溝をドライエッチング法により形成して型面とし、微細凹凸原版Bを作成した。
【0034】
樹脂スタンパーの作成
上記の微細凹凸原版AおよびBの各々の型面に、次段落に示す組成の紫外線硬化型樹脂組成物を滴下し、その上に厚さが0.4mmのポリカーボネートシートを重ねあわせた後、紫外線光源(フュージョンUVシステムズ社製、Hバルブ)を用い、170mJ/cm2(365nm)の条件で紫外線を照射し、紫外線硬化型樹脂組成物を硬化させた。その後、硬化した紫外線硬化型樹脂組成物をポリカーボネートシートごと、型面の溝と平行な方向に剥離したところ、硬化した紫外線硬化型樹脂組成物の表面に、各々の微細凹凸原版の型面の凹凸が再現され、ポリカーボネートシートで裏打ちされた複製物を得た。この複製物の凹凸を有する面側から、さらに3000mJ/cm2(365nm)の紫外線を照射し、樹脂スタンパーを得た。
【0035】
紫外線硬化型樹脂組成物(樹脂スタンパー用)
・ウレタンアクリレート…………………………………………………………………35部
(日本合成化学工業(株)製、ゴーセラックUV−7500B)
・1,6−ヘキサンジオールジアクリレート(日本化薬(株)製)………………35部
・ペンタエリスリトールトリアクリレート(東亞合成(株)製)…………………10部
・ビニルピロリドン(東亞合成(株)製)……………………………………………15部
・1−ヒドロキシシクロヘキシルフェニルケトン………………………………………2部
(チバ・スペシャルティ・ケミカルズ(株)製、「イルガキュア184」を使用)
・ベンゾフェノン(日本化薬(株)製)…………………………………………………2部
・ポリエーテル変性シリコーン……………………………………………………………1部
(GE東芝シリコーン(株)製、TSF4440)
【0036】
以下のようにして、メトキシシリケート系化合物のオリゴマーをさらに加水分解縮合させ、これとは別に樹脂組成物の調製を行ない、得られた加水分解縮合物および樹脂組成物を用いて、成形用の無機/有機複合組成物Aを調製した。
【0037】
まず、下記の配合比により、シリケート主剤(メトキシシリケート系化合物のオリゴマー)およびシリケート硬化剤(金属錯体触媒およびエタノールが主体)を混合し、1日間放置して反応させ、メトキシシリケート系化合物のオリゴマーの加水分解縮合物を調製した。
配合比
・シリケート主剤(三菱化学(株)製、MSH1)…………………………………35部
・シリケート硬化剤(三菱化学(株)製、MSH1)………………………………65部
【0038】
次に、下記の配合比の樹脂組成物を準備した。
紫外線硬化型樹脂組成物(成形用A)
・ウレタンアクリレート…………………………………………………………………35部
(日本合成化学工業(株)製、ゴーセラックUV−7500B)
・ペンタエリスリトールトリアクリレート(東亞合成(株)製)…………………45部
・ビニルピロリドン(東亞合成(株)製)……………………………………………15部
・1−ヒドロキシシクロヘキシルフェニルケトン………………………………………2部
(チバ・スペシャルティ・ケミカルズ(株)、「イルガキュア184」を使用)
・ベンゾフェノン(日本化薬(株)製)…………………………………………………2部
・ポリエーテル変性シリコーン……………………………………………………………1部
(GE東芝シリコーン(株)製、TSF4440)
【0039】
上記で得られたメトキシシリケート系化合物のオリゴマーの加水分解縮合物と紫外線硬化型樹脂組成物(成形用A)とを、加水分解縮合物:紫外線硬化型樹脂組成物=95:5の比(質量基準)で混合し、10日間放置して、成形用の無機/有機複合組成物Aを得た。
なお、加水分解縮合物は液体として得られ、そのうちの固形分は質量基準で16%であるので、加水分解縮合物固形分/紫外線硬化型樹脂組成物=75/25である。
【0040】
上記で得た樹脂スタンパーの凹凸を有する面(型面)に、上記の成形用の無機/有機複合組成物を滴下し、スピンナーにより、300rpmで10秒、1000rpmで10秒、および4000rpmで30秒の各条件で順に回転させ、樹脂スタンパー上に塗膜を形成した。
【0041】
塗膜が形成された樹脂スタンパーの塗膜上に、厚さ;1.1mmのソーダガラス板を重ね、重ねたものを、搬送用テーブル上にプレス用のローラが設置されたロールプレス装置の搬送用テーブル上に置き、硬度80度のゴムローラーで、速度;15mm/s、ロール圧力;5Kg/cm2の条件でロールプレスを行った。
【0042】
ロールプレス後、重ねた状態のまま樹脂スタンパー側から、紫外線光源(フュージョンUVシステムズ社製、Hバルブ)を用い、1500mJ/cm2(365nm)の条件で紫外線を照射し、塗膜を硬化させた後、樹脂スタンパーを型面の溝と平行な方向に剥離した。剥離後、温度;150℃の雰囲気中で1時間加熱し、シリケートを反応させ、さらにその後、温度;500℃のクリーンオーブン中で30分加熱し、無機成分のみを残して有機成分を除去したところ、最初の微細凹凸原版Aの幅;0.2μm、深さ;0.5μm、ピッチ;0.4μmの溝、および微細凹凸原版の幅;0.3μm、深さ;0.5μm、ピッチ;0.6μmの溝が忠実に再現されていた。また、成形物全体の厚さは1μmであった。
【実施例2】
【0043】
以下の樹脂組成物を作成した。
紫外線硬化型樹脂組成物(成形用B)
・ウレタンアクリレート…………………………………………………………………35部
(日本合成化学工業(株)製、ゴーセラックUV−7500B)
・1,6−ヘキサンジオールジアクリレート(日本化薬(株)製)………………35部
・ペンタエリスリトールトリアクリレート(東亞合成(株)製)…………………10部
・ビニルピロリドン(東亞合成(株)製)……………………………………………15部
・1−ヒドロキシシクロヘキシルフェニルケトン………………………………………2部
(チバ・スペシャルティ・ケミカルズ(株)、「イルガキュア184」を使用)
・ベンゾフェノン(日本化薬(株)製)…………………………………………………2部
・ポリエーテル変性シリコーン……………………………………………………………1部
(GE東芝シリコーン(株)製、TSF4440)
【0044】
実施例1で得たのと同じメトキシシリケート系化合物のオリゴマーの加水分解縮合物と上記の紫外線硬化型樹脂組成物(成形用B)とを、加水分解縮合物:紫外線硬化型樹脂組成物=80:20の比(質量基準)で混合し、10日間放置して、成形用の無機/有機複合組成物Bを得た。なお、加水分解縮合物固形分/紫外線硬化型樹脂組成物=39/61である。
【0045】
得られた成形用の無機/有機複合組成物Bを用い、以降は、実施例1と同様に行ない、ただし、スピンナーの条件を500rpmで5秒、および4000rpmで30秒の順に行なうこと、ロールプレス後、紫外線を照射する条件を300mJ/cm2(365nm)とすること、および剥離の後の加熱を温度;150℃の雰囲気中で1時間行なうのみとして、有機成分を除去することは行なわないことからなる変更を行なった。
得られた成形物においては、最初の微細凹凸原版Aの幅;0.2μm、深さ;0.5μm、ピッチ;0.4μmの溝、および微細凹凸原版の幅;0.3μm、深さ;0.5μm、ピッチ;0.6μmの溝が忠実に再現されていた。また、成形物の厚さは3μmであった。
【実施例3】
【0046】
実施例2と同様に行ない、ただし、成形用の無機/有機複合組成物Bの配合比を、加水分解縮合物:紫外線硬化型樹脂組成物=70:30としたところ、実施例2と同様な効果が得られた。なお、加水分解縮合物固形分/紫外線硬化型樹脂組成物=27/73である。
【0047】
(ガラス転移点と曲げ弾性率の測定)
実施例2で用いたのと同じ成形用の無機/有機複合組成物Bを、厚さ;1.1mmのソーダガラス上に滴下し、500rpmで35秒のスピンナー条件で塗布し、常温で5分間置いた後、塗布膜側から、紫外線光源(フュージョンUVシステムズ社製、Hバルブ)を用い、700mJ/cm2(365nm)の条件で紫外線を照射し、塗膜を硬化させた後、塗膜をソーダガラスから剥離し、剥離したものを幅5mmにカットし、カット後、上記と同じ紫外線光源を用い、2000mJ/cm2(365nm)の条件で紫外線を照射し、照射後、さらに温度;150℃の雰囲気中で1時間加熱して試験片Aとした。
また、実施例2で用いたのと同じ成分からなり、加水分解縮合物:紫外線硬化型樹脂組成物=70:30の成形用の無機/有機複合組成物(加水分解縮合物固形分/紫外線硬化型樹脂組成物=27/73である)を用いたもの、および、紫外線硬化型樹脂組成物のみからなるものを用いて、同様に行ない、それぞれ順に試験片B、Cを得た。
【0048】
上記で得られた各試験片を、動的粘弾性測定装置(レオメトリック・サイエンティフィック社製、RSA−II)にて測定を行ない、ガラス転移点と曲げ弾性率とを求めた。求め
た結果を次表1に示す。試験片Cは無機成分を含まず、試験片Bよりも試験片Aの方が無機成分を多く含むが、無機成分の増加に伴ないガラス転移点、曲げ弾性率のいずれもが向上することが確かめられた。
【0049】
【表1】

【図面の簡単な説明】
【0050】
【図1】微細パターン形成体の形成方法を例示する図である。
【符号の説明】
【0051】
12……基板
13……成形用層
14……成形用型
15……成形用パターン
16……ローラ
17……電離放射線
18……凸条


【特許請求の範囲】
【請求項1】
有機成分としての電離放射線硬化性樹脂と無機成分としてのシリコンアルコキシドのオリゴマーとを含む有機/無機複合電離放射線硬化性樹脂組成物と、型面に所定の幅および深さの溝で形成された成形用パターンを有する成形用型とを準備し、前記有機/無機複合電離放射線硬化性樹脂組成物を前記成形用型の型面に適用して前記型面に密着した塗膜を形成し、形成された前記塗膜に電離放射線を照射して硬化させ、硬化した前記塗膜を剥離し、剥離後、加熱を行なうことを特徴とする微細パターンの形成方法。
【請求項2】
前記有機/無機複合電離放射線硬化性樹脂組成物および前記成形用型に加えて基板を準備し、前記有機/無機複合電離放射線硬化性樹脂組成物を前記基板に適用し、適用された前記有機/無機複合電離放射線硬化性樹脂組成物を前記基板ごと前記成形用型の型面に重ねることにより、前記型面に密着した塗膜を形成することを特徴とする請求項1記載の微細パターンの形成方法。
【請求項3】
前記有機/無機複合電離放射線硬化性樹脂組成物および前記成形用型に加えて基板を準備し、前記有機/無機複合電離放射線硬化性樹脂組成物を前記成形用型の型面に適用し、適用された前記有機/無機複合電離放射線硬化性樹脂組成物を前記成形用型ごと前記基板に重ねることにより、前記型面に密着した塗膜を形成することを特徴とする請求項1記載の微細パターンの形成方法。
【請求項4】
前記塗膜に電離放射線を照射して硬化させ、硬化した前記塗膜を剥離するのに替えて、
前記塗膜に電離放射線を照射して半硬化させ、半硬化した前記塗膜を剥離した後、前記塗膜に電離放射線を照射して前記塗膜を硬化させることを特徴とする請求項1〜請求項3いずれか記載の微細パターンの形成方法。
【請求項5】
前記の加熱を行なうことに引き続き、焼成を行なうことを特徴とする請求項1〜請求項4いずれか記載の微細パターンの形成方法。


【図1】
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【公開番号】特開2006−113161(P2006−113161A)
【公開日】平成18年4月27日(2006.4.27)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−298446(P2004−298446)
【出願日】平成16年10月13日(2004.10.13)
【出願人】(000002897)大日本印刷株式会社 (14,506)
【Fターム(参考)】