微細構造の形成方法、レーザー照射装置、及び基板
【課題】基板における配置に左右されず、ほぼ一定のエッチング速度で微細孔及び微細溝等の微細構造を形成することができる微細構造の形成方法、該形成方法に使用されるレーザー照射装置、及び該形成方法を用いて製造された基板の提供。
【解決手段】基板1において孔状又は溝状をなす微細構造を設ける領域に、パルス時間幅がピコ秒オーダー以下のパルス幅を有するレーザー光51を照射し、該レーザー光51が集光した焦点56を走査して改質部53を形成する工程Aと、改質部53が形成された基板1に対してエッチング処理を行い、該改質部53を除去して微細構造を形成する工程Bと、を含む微細構造の形成方法であって、前記工程Aにおいて、レーザー光51として円偏光レーザー光を用いることを特徴とする微細構造の形成方法。
【解決手段】基板1において孔状又は溝状をなす微細構造を設ける領域に、パルス時間幅がピコ秒オーダー以下のパルス幅を有するレーザー光51を照射し、該レーザー光51が集光した焦点56を走査して改質部53を形成する工程Aと、改質部53が形成された基板1に対してエッチング処理を行い、該改質部53を除去して微細構造を形成する工程Bと、を含む微細構造の形成方法であって、前記工程Aにおいて、レーザー光51として円偏光レーザー光を用いることを特徴とする微細構造の形成方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、レーザー光を用いて基板に微細構造を形成する方法、該方法で使用されるレーザー照射装置、及び該方法を用いて製造された基板に関する。より詳しくは、本発明は、レーザー光を用いて基板に微細孔を形成する方法、該方法で使用されるレーザー照射装置、及び該方法を用いて製造された基板に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、基板の一方の主面および他方の主面に実装された複数のデバイス間を電気的に接続する方法として、基板の両主面を貫通する微細孔や基板表面近傍に微細溝等の微細構造を形成し、さらに該微細孔や該微細溝に導電性物質を充填した配線を設ける方法が用いられている。例えば、特許文献1には、基板の厚み方向とは異なる方向に延びる部分を有する微細孔に導電性物質を充填してなる貫通配線を備えた貫通配線基板が記載されている。
【0003】
このような配線基板における微細孔及び微細溝等の微細構造を形成する方法としては、レーザーを用いてガラス等の基板の一部を改質した後、改質した部分をエッチングにより除去する方法が挙げられる。具体的には、まず光源としてフェムト秒レーザーを用い、該レーザーを基板に照射して基板内部の改質すべき箇所にレーザー焦点を結び、該焦点を移動させて改質すべき領域を走査することによって、基板内部に所定形状の改質部を形成する。次いで、改質部が形成された基板を所定の薬液に浸漬するウェットエッチング法により、該改質部が基板内から除去されて微細孔及び微細溝等の微細構造が形成される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2006−303360号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
従来方法では、ウェットエッチング法で改質部を基板から除去する際、改質部の形状が同程度の複雑さであっても、基板における配置が相違する個々の微細孔及び微細溝において、エッチングの容易さ(エッチング速度)が異なるという問題があった。例えば、図26に示す基板101では、第一の改質部102は容易にエッチングされるが、第二の改質部103はエッチングされ難く、エッチング時間が長くなってしまうことがあった。このため、改質部103のエッチングが完了するまでに、レーザーが照射されない非改質部のエッチングが過度に進行してしまうという問題があった。
【0006】
本発明は上記事情に鑑みてなされたものであり、基板における配置に左右されず、ほぼ一定のエッチング速度で微細孔等の微細構造を形成することができる微細構造の形成方法、該形成方法に使用されるレーザー照射装置、及び該形成方法を用いて製造された基板を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の請求項1に記載の微細構造の形成方法は、基板において孔状又は溝状をなす微細構造を設ける領域に、パルス時間幅がピコ秒オーダー以下のパルス幅を有するレーザー光を照射し、該レーザー光が集光した焦点を走査して改質部を形成する工程Aと、前記改質部が形成された前記基板に対してエッチング処理を行い、該改質部を除去して微細構造を形成する工程Bと、を含む微細構造の形成方法であって、前記工程Aにおいて、前記レーザー光として円偏光レーザー光を用いることを特徴とする。
本発明の請求項2に記載の微細構造の形成方法は、請求項1において、前記工程Aにおいて、前記レーザー光の光軸の向きを、前記焦点を走査する方向に対して一定の方向に維持しつつレーザー照射することを特徴とする。
本発明の請求項3に記載の微細構造の形成方法は、請求項1又は2において、前記一定の方向を垂直とすることを特徴とする。
本発明の請求項4に記載の微細構造の形成方法は、請求項1〜3のいずれか一項において、前記工程Aにおいて、前記基板の主面側のみからレーザー照射することを特徴とする。
本発明の請求項5に記載の微細構造の形成方法は、請求項1〜4のいずれか一項において、前記微細構造において変曲部を形成することを特徴とする。
本発明の請求項6に記載のレーザー照射装置は、基板において孔状又は溝状をなす微細構造を設ける領域に、パルス時間幅がピコ秒オーダー以下のパルス幅を有する円偏光又は楕円偏光レーザー光を照射し、該レーザー光を集光した焦点を走査して改質部を形成する際、該レーザー光の光軸の向きを、前記焦点を走査する方向に対して一定の方向に維持しつつレーザー照射する手段を備えたことを特徴とする。
本発明の請求項7に記載のレーザー照射装置は、請求項6において、前記手段は基板ステージであり、該基板ステージは、前記焦点の走査方向の変更に応じて、該変更後の走査方向に対する前記レーザー光の光軸の向きを、一定の方向に合わせるように機能することを特徴とする。
本発明の請求項8に記載の基板は、請求項1〜5に記載の微細構造の形成方法を用いて製造されたことを特徴とする。
本発明の請求項9に記載の基板は、請求項8において、前記基板には、さらに流体が流通するための流路が形成されていることを特徴とする。
本発明の請求項10に記載の微細構造の形成方法は、基板において孔状又は溝状をなす微細構造を設ける領域に、パルス時間幅がピコ秒オーダー以下のパルス幅を有するレーザー光を照射し、該レーザー光が集光した焦点を走査して改質部を形成する工程Aと、前記改質部が形成された前記基板に対してエッチング処理を行い、該改質部を除去して微細構造を形成する工程Bと、を含む微細構造の形成方法であって、前記工程Aにおいて、前記レーザー光として楕円偏光レーザー光を用いることを特徴とする。
【発明の効果】
【0008】
本発明の微細構造の形成方法によれば、レーザー光として円偏光又は楕円偏光レーザー光を用いることにより、微細構造となる改質部において、エッチングされやすいエリアとエッチングされにくいエリアとが縞状に形成されることを抑制することができる。その結果、形成された改質部におけるエッチングのされ易さに大きなバラつきが生じず(エッチングのされ易さが異なるエリアが、後述するように、縞状に形成された場合と比べて)、比較的スムーズにエッチングを行うことができる。このため、前記改質部の基板における配置や形状に左右されず、大きなバラつきの無いエッチング速度で微細構造を形成することができるので、微細孔等の微細構造の大きさを精度良く制御することができる。各微細構造となる改質部のエッチング時間は、当該微細構造となる改質部の長さ及び深さに依存するため、微細構造の設計段階でエッチング時間を算出することができ、生産管理が容易になる。
【0009】
前記レーザー光の光軸の向きを、レーザー光の焦点の走査方向に対して一定の方向に維持しつつレーザー照射する場合、微細構造となる改質部において、エッチングされやすいエリアとエッチングされにくいエリアとが縞状に形成されることを抑制することができ、さらに、前記改質部が基板において形成された位置に依存せずに、前記改質部をほぼ均一の状態で改質することができる。すなわち、形成する改質部の全長のうち、レーザー光の焦点の走査方向に対して一定の方向に維持しつつレーザー照射して形成した領域(区間)において、エッチングされ易さを、ほぼ均一にすることができる。このため、前記改質部の基板における配置や形状に左右されず、ほぼ一定のエッチング速度で微細構造を形成することができるので、微細孔等の微細構造の大きさをより精度良く制御することができる。各微細構造となる改質部のエッチング時間は、当該微細構造となる改質部の長さ及び深さに依存するため、微細構造の設計段階でエッチング時間を算出することができ、生産管理がより容易になる。
【0010】
前記レーザー光の光軸の向きを、レーザー光の焦点の走査方向に対して垂直に維持しつつレーザー照射する場合、微細構造となる改質部において、エッチングされやすいエリアとエッチングされにくいエリアとが縞状に形成されることを抑制し、両エリアが不定形で混在したパターンを前記走査方向に沿わせて形成することができる。つまり、前記改質部は、基板において形成された位置に依存せず、何処に形成されてもほぼ同じ状態で、エッチングされやすいエリアとエッチングされにくいエリアとが混在したパターンを、前記走査方向に沿わせて形成することができる。垂直に維持しつつレーザー照射したことによって、形成した改質部のエッチングされ易さをほぼ一定にするとともに、エッチング速度を速めることができる。これは、垂直に維持しつつレーザー照射したことによって、改質部において、エッチングされやすいエリアが前記走査方向に沿って準連続的に形成される傾向があるからである。
したがって、前記改質部の基板における配置や形状に左右されず、ほぼ一定のエッチング速度で微細構造を形成することができるので、微細孔等の微細構造の大きさをより精度良く制御することができる。また、エッチング工程に要する時間を短縮することも可能である。各微細構造となる改質部のエッチング時間は、当該微細構造となる改質部の長さ及び深さに依存するため、微細構造の設計段階でエッチング時間を算出することができ、生産管理がより容易になる。
【0011】
前記基板の主面側のみからレーザー照射する場合、該基板の側面からレーザー照射する場合に比べて容易に前記改質部を形成することができる。つまり、該基板の側面は主面に比べて極めて小さい面積であるため、該側面側からレーザー照射する場合には、該レーザー光を該基板の側面に対してほぼ垂直に照射しなければならず、必ずしも容易ではない。一方、該基板の主面は比較的広い面積を有するため、該主面側からレーザー照射して該基板の任意の位置に該レーザー光の焦点を結ぶ場合は、必ずしも該主面に対して垂直にレーザー照射する必要はなく、容易である。
なお、前記基板の主面とは、平板状の基板を構成する面のうち最も広い面積を有する面のことであり、通常、該基板は対向する2つの主面を有する。本発明では、2つの主面のうち一方の主面からのみレーザー照射してもよく、一方の主面および他方の主面の両方からレーザー照射してもよい。
【0012】
前記微細構造において変曲部を形成する場合、該変曲部となる改質部において、エッチングされやすいエリアとエッチングされにくいエリアとが縞状に形成されることを抑制し、該変曲部に沿った改質部をスムーズに形成することができる。このため、該変曲部となる改質部と、それ以外の直線部となる改質部とのエッチングされ易さを同定度にすることができる。その結果、精度の高い形状で、該変曲部を有する前記微細構造を形成することができる。
【0013】
また、本発明のレーザ照射装置によれば、円偏光又は楕円偏光レーザー光の光軸の向きを、レーザー光の焦点の走査方向に対して一定の方向に維持する手段を有するため、当該基板に所望の形状で形成された改質部において、エッチングされやすいエリアとエッチングされにくいエリアとが縞状に形成されることを抑制することができる。さらに、前記改質部が基板において形成された位置に依存せずに、前記改質部をほぼ均一の状態で改質することができる。この結果、別途行われるウェットエッチング工程において、前記基板における改質部の配置や形状に左右されずに、ほぼ一定のエッチング速度で該改質部を前記基板から除去することができるので、形成される微細孔等の微細構造の大きさを精度良く制御することができる。
【0014】
また、本発明の基板によれば、該基板内に精度の良い形状で形成された微細構造を有する基板を提供することができる。
この微細構造を貫通配線として用いる場合、該微細構造に導電性物質を充填または成膜することによって、高精度の形状を有する配線を備えた配線基板を提供することができる。
また、前記微細構造を流体を流通するための流路として用いる場合、該微細構造(流路)に目的に応じて様々な流体を流通することができる。例えば、前記基板を配線基板として用いる場合、該微細孔(流路)に空気や水等の冷媒を流通するとき、この冷却機能によって、該配線基板に発熱量の大きいデバイスを実装した場合であっても、温度上昇を効果的に低減することが可能になる。その他、前記基板を、マイクロフルイディクス技術を利用したバイオ実験システムを集積化した基板として用いる場合、前記微細孔(流路)には、DNA(核酸)、タンパク質、脂質等の生体高分子溶液を流通させる流路に適用することもできる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【図1】本発明にかかる配線基板の一例を示す図であり、(A)は平面図、(B)は平面図(A)のx−x線に沿った断面図、(C)は平面図(A)のy−y線に沿った断面図である。
【図2】本発明にかかる配線基板の一例を示す図であり、(A)は平面図、(B)は平面図(A)のx−x線に沿った断面図、(C)は平面図(A)のy−y線に沿った断面図である。
【図3】本発明にかかる配線基板の別の一例を示す図であり、(A)は平面図、(B)は平面図(A)のx1−x1線に沿った断面図、(C)は平面図(A)のy−y線に沿った断面図、(D)は平面図(A)のx2−x2線に沿った断面図である。
【図4】本発明にかかる配線基板の他の一例を示す図であり、(A)は平面図、(B)は平面図(A)のx−x線に沿った断面図、(C)は平面図(A)のy−y線に沿った断面図である。
【図5】本発明にかかる配線基板の他の一例を示す図であり、(A)は平面図、(B)は平面図(A)のx−x線に沿った断面図、(C)は平面図(A)のy−y線に沿った断面図である。
【図6】本発明にかかる微細構造の形成方法の一例における基板を示す図であり、(A)は平面図、(B)は平面図(A)のx−x線に沿った断面図、(C)は平面図(A)のy−y線に沿った断面図である。
【図7】本発明で用いるレーザー光が、該レーザー光の焦点の走査方向となす角を説明する図である。
【図8】本発明にかかる微細構造の形成方法の一例における基板の断面図である。
【図9】本発明にかかる微細構造の形成方法の一例における基板の断面図である。
【図10】本発明にかかる微細構造の形成方法の別の一例における基板の断面図である。
【図11】本発明にかかる微細構造の形成方法の一例における基板を示す図であり、(A)は平面図、(B)は平面図(A)のx−x線に沿った断面図、(C)は平面図(A)のy−y線に沿った断面図である。
【図12】本発明にかかる微細構造の形成方法の一例における基板を示す図であり、(A)は平面図、(B)は平面図(A)のx−x線に沿った断面図、(C)は平面図(A)のy−y線に沿った断面図である。
【図13】本発明にかかる微細構造の形成方法の他の一例における基板を示す図であり、(A)は平面図、(B)は平面図(A)のx−x線に沿った断面図、(C)は平面図(A)のy−y線に沿った断面図である。
【図14】本発明にかかる微細構造の形成方法の他の一例における基板を示す図であり、(A)は平面図、(B)は平面図(A)のx−x線に沿った断面図、(C)は平面図(A)のy−y線に沿った断面図である。
【図15】本発明にかかる微細構造の形成方法の他の一例における基板を示す図であり、(A)は平面図、(B)は平面図(A)のx−x線に沿った断面図、(C)は平面図(A)のy−y線に沿った断面図である。
【図16】本発明にかかるレーザー照射装置の一例の概略構成図である。
【図17】本発明にかかるレーザー照射装置を用いた配線基板の製造方法の一例を示すフローチャート図である。
【図18】(A)は基板の平面図、(B)は平面図(A)のx−x線に沿った断面図、(C)は平面図(A)のy1−y1線に沿った断面図、(D)は平面図(A)のy2−y2線に沿った断面図である。
【図19】(A)は基板の平面図、(B)は平面図(A)のx−x線に沿った断面図、(C)は平面図(A)のy1−y1線に沿った断面図、(D)は平面図(A)のy2−y2線に沿った断面図である。
【図20】(A)は図19の断面図(C)における領域F1の拡大図であり、(B)は図19の断面図(D)における領域F2の拡大図である。
【図21】微細構造の形成方法を説明する基板の平面図である。
【図22】(A)は基板の平面図、(B)は平面図(A)のy1−y1線に沿った断面図、(C)は平面図(A)のy2−y2線に沿った断面図である。
【図23】(A)は基板の平面図、(B)及び(C)は拡大図である。
【図24】(A)及び(B)は、図23の平面図(A)におけるy1−y1線及びy2−y2線に沿う断面図であり、(C)及び(D)は拡大図である。
【図25】(A)は基板の平面図、(B)は平面図(A)のy1−y1線に沿った断面図、(C)は平面図(A)のy2−y2線に沿った断面図である。
【図26】微細構造である微細孔が形成された基板の一例である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、好適な実施の形態に基づき、図面を参照して本発明を説明する。なお、以下では基板に微細構造を形成し、該微細構造を貫通配線又は流路として用いる場合を例に挙げて説明しているが、本発明における基板に形成された微細構造の用途はこれに限定されるものではない。
<第一実施形態:貫通配線基板10>
図1は、本発明の微細構造の形成方法によって製造できる配線基板の一例である貫通配線基板10の平面図(A)、断面図(B)及び(C)である。断面図(B)は平面図(A)のx−x線に沿った断面を示し、断面図(C)は平面図(A)のy−y線に沿った断面を示す。
この貫通配線基板10は、基板1を構成する一方の主面2と他方の主面3とを結ぶように第一の微細孔4及び第二の微細孔5を配し、各微細孔中に導電性物質6を充填又は成膜してなる第一の貫通配線7及び第二の貫通配線8を備えている。
【0017】
第一の貫通配線7は、一方の主面2に露呈する開口部9から第一屈曲部11まで基板1の厚み方向に延伸する領域αと、第一屈曲部11から第二屈曲部12まで基板1の主面と平行に、且つ基板1の横方向(X方向)に延伸する領域βと、第二屈曲部12から他方の主面3に露呈する開口部13まで基板1の厚み方向に延伸する領域γとからなる。
第一の貫通配線7の領域α、領域β、及び領域γには、第一の微細孔4の領域α、領域β、及び領域γが対応する。
【0018】
第二の貫通配線8は、一方の主面2に露呈する開口部14から第一屈曲部15まで基板1の厚み方向に延伸する領域αと、第一屈曲部15から第二屈曲部16まで基板1の主面と平行に、且つ基板1の縦方向(Y方向)に延伸する領域βと、第二屈曲部16から他方の主面3に露呈する開口部17まで基板1の厚み方向に延伸する領域γとからなる。
第二の貫通配線8の領域α、領域β、及び領域γには、第二の微細孔5の領域α、領域β、及び領域γが対応する。
【0019】
<第二実施形態:貫通配線基板210>
図2は、本発明の微細構造の形成方法によって製造できる配線基板の他の一例である貫通配線基板210の平面図(A)、断面図(B)及び(C)である。断面図(B)は平面図(A)のx−x線に沿った断面を示し、断面図(C)は平面図(A)のy−y線に沿った断面を示す。
この貫通配線基板210は、基板201を構成する一方の主面202と他方の主面203とを結ぶように第一の微細孔204及び第二の微細孔205を配し、各微細孔中に導電性物質206を充填又は成膜してなる第一の貫通配線207及び第二の貫通配線208を備えている。
【0020】
第一の貫通配線207は、一方の主面202に露呈する開口部209から第一変曲部211まで基板201の厚み方向に延伸する領域α(直線部α)と、第一変曲部211から第二変曲部212まで基板201の二つの主面と平行に、且つ基板201の横方向(X方向)に延伸する領域β(直線部β)と、第二変曲部212から他方の主面203に露呈する開口部213まで基板201の厚み方向に延伸する領域γ(直線部γ)とからなる。
第一の貫通配線207の領域α、領域β、及び領域γには、第一の微細孔204の領域α、領域β、及び領域γが対応する。
【0021】
第一の貫通配線207の中心線に沿った縦断面において、第一変曲部211および第二変曲部212の形状は円弧状である。本例では、第一変曲部211および第二変曲部212において、前記中心線の描く円弧の曲率半径Rは70μmとし、第一の貫通配線207の径を40μmとし、基板201の厚みは300μmとした。
【0022】
前記曲率半径Rとしては、第一の貫通配線207の径及び基板201の厚みにもよるが、10〜1000μmの範囲であることが好ましい。この範囲の曲率半径であると、領域αと領域βとを、及び、領域βと領域γとを、各変曲部211,212を介してより滑らかに接続することができる。
【0023】
第一の貫通配線207が屈曲部の代わりに変曲部を有することによって、高周波信号等の電気信号の伝送損失を低減することができ、且つ、微細孔204から導電性物質206が剥離することによる導通不良を抑制することができる。
【0024】
第二の貫通配線208は、一方の主面202に露呈する開口部214から第一変曲部215まで基板201の厚み方向に延伸する領域α(直線部α)と、第一変曲部215から第二変曲部216まで基板201の主面と平行に、且つ基板1の縦方向(Y方向)に延伸する領域β(直線部β)と、第二変曲部216から他方の主面203に露呈する開口部217まで基板201の厚み方向に延伸する領域γ(直線部γ)とからなる。
第二の貫通配線208の領域α、領域β、及び領域γには、第二の微細孔205の領域α、領域β、及び領域γが対応する。
【0025】
第二の貫通配線208の中心線に沿った縦断面において、第一変曲部214および第二変曲部215の形状は円弧状である。本例では、第一変曲部215および第二変曲部216において、前記中心線の描く円弧の曲率半径Rは70μmとし、第二の貫通配線208の径を40μmとし、基板201の厚みは300μmとした。
【0026】
前記曲率半径Rとしては、第二の貫通配線208の径及び基板201の厚みにもよるが、10〜1000μmの範囲であることが好ましい。この範囲の曲率半径であると、領域αと領域βとを、及び、領域βと領域γとを、各変曲部215,216を介してより滑らかに接続することができる。
【0027】
第二の貫通配線208が屈曲部の代わりに変曲部を有することによって、高周波信号等の電気信号の伝送損失を低減することができ、且つ、微細孔205から導電性物質206が剥離することによる導通不良を抑制することができる。
【0028】
<第三実施形態:貫通配線基板310>
図3は、本発明の微細構造の形成方法によって製造できる配線基板の他の一例である貫通配線基板310の平面図(A)、断面図(B)〜(D)である。断面図(B)は平面図(A)のx1−x1線に沿った断面を示し、断面図(C)は平面図(A)のy−y線に沿った断面を示し、断面図(D)は平面図(A)のx2−x2線に沿った断面を示す。
この貫通配線基板310は、基板301を構成する一方の主面302と他方の主面303とを結ぶように第一の微細孔304及び第二の微細孔305を配し、各微細孔中に導電性物質306を充填又は成膜してなる第一の貫通配線307及び第二の貫通配線308を備え、且つ、第一の微細孔g1からなる第一流路G1が設けられている。
【0029】
第一の貫通配線307は、一方の主面302に露呈する開口部309から第一屈曲部311まで基板301の厚み方向に延伸する領域αと、第一屈曲部311から第二屈曲部312まで基板301の主面と非平行に斜めを成し、且つ基板301の横方向(X方向)に延伸する領域βと、第二屈曲部312から他方の主面303に露呈する開口部313まで基板301の厚み方向に延伸する領域γとからなる。
第一の貫通配線307の領域α、領域β、及び領域γには、第一の微細孔304の領域α、領域β、及び領域γが対応する。
【0030】
第二の貫通配線308は、一方の主面302に露呈する開口部314から第一屈曲部315まで基板301の厚み方向に延伸する領域αと、第一屈曲部315から第二屈曲部316まで基板301の主面と非平行に斜めを成し、且つ基板301の縦方向(Y方向)に延伸する領域βと、第二屈曲部316から他方の主面303に露呈する開口部317まで基板301の厚み方向に延伸する領域γとからなる。
第二の貫通配線308の領域α、領域β、及び領域γには、第二の微細孔305の領域α、領域β、及び領域γが対応する。
【0031】
第一の微細孔g1からなる第一流路G1は、基板301の両主面に沿うように、基板301の横方向(X方向)に延伸して設けられている。第一の微細孔g1は、基板1の対向する二つの側面に、冷媒が出入りするための開口部を有する。
なお、図1及び2では示していないが、微細孔からなる同様の流路は、前述の貫通配線基板10及び210においても設けることができる。
【0032】
<第四実施形態:表面配線基板30>
図4は、本発明の微細構造の形成方法によって製造できる配線基板の別の一例である表面配線基板30の平面図(A)、断面図(B)及び(C)である。断面図(B)は平面図(A)のx−x線に沿った断面を示し、断面図(C)は平面図(A)のy−y線に沿った断面を示す。
この表面配線基板30は、基板31を構成する一方の主面32の表面に形成された第一の微細溝34を配し、その微細溝34に導電性物質36を充填又は成膜してなる第一の表面配線37を備えている。
【0033】
第一の表面配線37は、一端部38から第一屈曲部39まで基板31の横方向(X方向)に延伸する領域ζと、第一屈曲部39から他端部40まで基板31の縦方向(Y方向)に延伸する領域ηとからなる。
第一の表面配線37の領域ζ及び領域η、並びに一端部38、第一屈曲部39、及び他端部40には、第一の微細溝34の領域ζ及び領域η、並びに一端部38及び他端部40が対応する。
【0034】
<第五実施形態:表面配線基板230>
図5は、本発明の微細構造の形成方法によって製造できる配線基板の別の一例である表面配線基板230の平面図(A)、断面図(B)及び(C)である。断面図(B)は平面図(A)のx−x線に沿った断面を示し、断面図(C)は平面図(A)のy−y線に沿った断面を示す。
この表面配線基板230は、基板231を構成する一方の主面232の表面に形成された第一の微細溝234を配し、その微細溝234に導電性物質236を充填又は成膜してなる第一の表面配線237を備えている。
【0035】
第一の表面配線237は、一端部238から第一変曲部239まで基板231の横方向(X方向)に延伸する領域ζ(直線部ζ)と、第一変曲部239から他端部240まで基板231の縦方向(Y方向)に延伸する領域η(直線部η)とからなる。
第一の表面配線237の領域ζ及び領域η、並びに一端部238、第一変曲部239、及び他端部240には、第一の微細溝234の領域ζ及び領域η、並びに一端部238及び他端部240が対応する。
【0036】
第一の表面配線237を基板厚み方向に見たとき、第一変曲部239の形状は円弧状である。本例では、第一変曲部239の描く円弧の曲率半径Rは70μmとし、第一の表面配線237の径を40μmとした。
前記曲率半径Rとしては、第一の貫通配線237の径にもよるが、10〜1000μmの範囲であることが好ましい。この範囲の曲率半径Rであると、領域ζと領域ηとを第一変曲部239を介してより滑らかに接続することができる。
第一の表面配線237が屈曲部の代わりに変曲部を有することによって、高周波信号等の電気信号の伝送損失を低減することができ、且つ、微細溝234から導電性物質236が剥離することによる導通不良を抑制することができる。
【0037】
貫通配線基板10,210,310及び表面配線基板30,230における基板1,201,31,231の材料としては、例えばガラス、サファイア等の絶縁体や、シリコン(Si)等の半導体が挙げられる。これらの材料であれば、半導体デバイスとの線膨張係数差が小さいため、前記貫通配線基板又は前記表面配線基板と半導体デバイスとを、半田等を用いて接続する際に、位置ズレが生じず、精度の高い接続が可能となる。さらに、これらの材料のなかでも、絶縁性のガラスが好ましい。基板材料がガラスであると、微細孔及び微細溝の内壁面に絶縁層を形成する必要がなく、浮遊容量成分の存在等による高速伝送の阻害要因がない等の利点がある。
【0038】
基板1,201,301,31,231の厚さ(一方の主面2,202,302,32,232から他方の主面3,203,303,33,233までの距離)は適宜設定することができ、例えば約150μm〜1mmの範囲が挙げられる。
貫通配線基板10,210,310及び表面配線基板30,230に配された各微細孔7,8,207,208,307,308及び第一の微細溝37,237に充填又は成膜する導電性物質6,206,36,236,306としては、例えば金錫(Au−Sn)、銅(Cu)等が挙げられる。
【0039】
本発明にかかる配線基板に備えられる微細構造の形状、並びに貫通配線、表面配線、及び流路のパターンや断面形状は、以上の例示に限定されるものではなく、適宜設計することが可能である。
【0040】
<貫通配線基板10を製造する方法>
次に、本発明の配線基板における微細孔及び微細溝の形成方法の一例として、貫通配線基板10を製造する方法を、図6〜15に示す。
ここで、図6,11〜15は、貫通配線基板10を製造する基板1の平面図および断面図である。当該図中、(A)は基板1の平面図であり、(B)及び(C)はそれぞれ該平面図のx−x線及びy−y線に沿う基板1の断面図である。
【0041】
[工程A]
まず、図6に示すように、基板1に第一のレーザー光51及び第二のレーザー光52を照射して、基板1内に基板1の材料が改質されてなる第一の改質部53及び第二の改質部54を形成する。各改質部は、第一の貫通配線7及び第二の貫通配線8が設けられる領域にそれぞれ形成される。第一のレーザー光51及び第二のレーザー光52の偏光は、円偏光又は楕円偏光である。
【0042】
基板1の材料としては、例えばガラス、サファイア等の絶縁体や、シリコン(Si)等の半導体が挙げられる。これらの材料であれば、半導体デバイスとの線膨張係数差が小さいため、前記貫通配線基板又は前記表面配線基板と半導体デバイスとを、半田等を用いて接続する際に、位置ズレが生じず、精度の高い接続が可能となる。さらに、これらの材料のなかでも、絶縁性のガラスが好ましい。基板材料がガラスであると、微細孔の内壁面に絶縁層を形成する必要がなく、浮遊容量成分の存在等による高速伝送の阻害要因がない、等の利点がある。
基板1の厚さは適宜設定することができ、例えば約150μm〜1mmの範囲に設定すればよい。
【0043】
第一のレーザー光51及び第二のレーザー光52は、基板1の一方の主面2側から照射され、基板1内の所望の位置で第一の焦点56及び第二の焦点57を結んでいる。各焦点56,57を結んだ位置で、基板1の材料が改質される。
したがって、第一のレーザー光51,第二のレーザー光52を照射しながら、第一の焦点56,第二の焦点57の位置を順次ずらして走査(移動)して、第一の微細孔4,第二の微細孔5が設けられる領域の全部に対して、各焦点56,57を結ぶことによって、第一の改質部53及び第二の改質部54を形成することができる。
【0044】
各レーザー光51,52は、基板1の一方の主面2及び/又は他方の主面3側から照射してもよいし、基板1の側面から照射してもよい。前記両主面2,3側のみからレーザー光を照射する方が容易であるため好ましい。各レーザー光51,52の光軸Eが基板1に入射する角度は所定の角度に設定される。各レーザー光51,52は単一のレーザー光を用いて順に照射してもよいし、複数のレーザー光を用いて同時に照射してもよい。
【0045】
また、各レーザー光51,52の焦点56,57を走査する方向としては、例えば図6に示した各改質部53,54に沿った実線の矢印のように、領域γ,領域β,領域αの順に走査する一筆書きの方向が挙げられる。すなわち、前記矢印は、基板1の他方の主面3の開口部13,17となる部位から、一方の主面2の開口部9,14となる部位まで、該焦点56,57を走査することを表す。このとき、前記矢印の向きで一筆書きの走査を行うことが、製造効率上好ましい。
【0046】
レーザー光の光軸Eが、焦点の走査方向(改質部の延伸方向)に対してなす角度は、図7に示すように、角度θと角度φとで規定できる。つまり、図7のxyzの3軸直交座標系において、x軸の正方向を焦点の走査方向とした場合、当該レーザー光の光軸E(矢印Eで示す)は、該x軸の正方向に対してなす角度θと、z軸の正方向に対してなす角φとで規定される。なお、図7において、矢印eは光軸E(レーザー光の照射方向)のx-y平面への投影を示す。
【0047】
図6(B)において、第一のレーザー光51の光軸Eの向きは、第一の焦点56の走査方向(第一の改質部53の領域βの延伸方向)に対して垂直であり、前記なす角θ及びφは0°である。
同様に、図6(C)において、第二のレーザー光52の光軸Eの向きは、第二の焦点57の走査方向(第二の改質部54の領域βの延伸方向)に対して垂直であり、前記なす角θ及びφは0°である。
【0048】
第一の改質部53を形成するとき、第一のレーザー光51の光軸Eの向きは、第一の焦点56の走査方向に対して一定の方向に維持しつつ、領域α〜γをレーザー照射することが好ましい(図8)。
ここで、「レーザー光の光軸の向きを焦点の走査方向に対して一定の方向に維持する」とは、光軸Eの向きと焦点の走査方向との相対的な位置関係を一定に保つことを意味し、前記なす角θ及びφをそれぞれ任意の特定角度に固定することを意味する。
【0049】
図8に示すように、第一の改質部53を形成する際、第一のレーザー光51の光軸Eの向きを、第一の焦点56の走査方向に対して垂直に維持しつつ、領域γ,領域β,領域αの順に照射した場合、各領域における光軸Eの向きは、順にE1,E2,E3の破線矢印で示される。ここで、図8は、図6(B)と同じ断面を示しており、各領域α〜γの延伸方向に沿った実線矢印は、第一の焦点56の走査方向を示す。
【0050】
図8では、領域α及びγを形成する際は、第一のレーザー光51を基板1の側面に対して垂直に照射し、領域βを形成する際は、第一のレーザー光51を基板1の一方の主面2に対して垂直に照射している。
【0051】
このようにレーザー光の光軸の向きを焦点の走査方向に対して一定の方向(ここでは垂直)に維持しつつレーザー照射することによって、形成された第一の改質部53では、領域α〜γにおいて、エッチングされやすいエリアとエッチングされにくいエリアとが縞状に形成されることを抑制し、両エリアが不定形で混在したパターンを前記走査方向に沿わせて形成することができる。より具体的には、前記領域α〜γの改質部において、エッチングされやすいエリアを、当該レーザー光の光軸が中心となるスパイラル状で、前記走査方向に沿って準連続的に形成しうる。該エッチングされやすいエリアが、後段のエッチング工程において、優先的にエッチングされて、エッチング液が改質部の延伸方向に浸透しやすくなるため、当該改質部のエッチング速度を速めることができる。
また、前記領域α〜γの改質部における改質の状態を均一にすることができるので、後段のエッチング工程において、前記領域α〜γのエッチング速度を均一にすることができる。
【0052】
また、第一のレーザー光51の前記なす角θ及びφと、第二のレーザー光52の前記なす角θ及びφとを同一にすることによって、第一の改質部53の改質の状態と第二の改質部54の改質の状態とを均一にすることができる。この結果、後段のエッチング工程において、第一の改質部53のエッチング速度と第二の改質部54のエッチング速度とを同程度にすることができ、第一の微細孔4及び第二の微細孔5を精度の良い形状で形成することができる。
【0053】
各レーザー光51,52の前記なす角θ及びφは0°に限定されず、なす角θとなす角φとはそれぞれ独立に任意の角度に設定することができる。
例えば、なす角θとなす角φとの組合わせ(θ,φ)を(0°,90°)とした場合、当該レーザー光の光軸Eの向きは、当該焦点の走査方向(改質部の延伸方向)に対して平行である。
【0054】
図9に示すように、第一の改質部53を形成する際、第一のレーザー光51の光軸Eの向きを、第一の焦点56の走査方向に対して平行に維持しつつ、領域γ,領域β,領域αの順に照射した場合、各領域における光軸Eの向きは、順にE4,E5,E6の破線矢印で示される。ここで、図9は、図6(B)と同じ断面を示しており、各領域α〜γの延伸方向に沿った実線矢印は、第一の焦点56の走査方向を示す。
【0055】
図9では、領域α及びγを形成する際は、第一のレーザー光51を基板1の一方の主面2に対して垂直に照射し、領域βを形成する際は、第一のレーザー光51を基板1の側面に対して垂直に照射している。
【0056】
このようにレーザー光の光軸の向きを焦点の走査方向に対して平行に維持しつつレーザー照射することによって、形成された第一の改質部53では、領域α〜γにおいて、エッチングされやすいエリアとエッチングされにくいエリアとが縞状に形成されることを抑制できる。
また、前記領域α〜γの改質部における改質の状態を均一にすることができるので、後段のエッチング工程において、前記領域α〜γのエッチング速度を均一にすることができる。
【0057】
本発明の微細構造の形成方法では、レーザー光の光軸の向きを、焦点の走査方向に対して一定の方向に維持しつつレーザー照射しても良いし、一定の方向に維持せずにレーザー照射しても良い。
当該改質部となる全領域を走査する際に、レーザー光の光軸の向きを焦点の走査方向に対して一定の方向に維持してレーザー照射した場合は、前述のように、当該改質部の全領域に渡って改質の状態を均一にすることができる。
【0058】
一方、前記光軸の向きを一定の方向に維持せずにレーザー照射した場合でも、当該改質部の全領域に渡って、改質の状態は極端には変わらず、均一とは言えないまでも、概ね同じ状態であり、後段のエッチング工程におけるエッチング速度に極端に大きなバラつきは生じない。これは、本発明では円偏光又は楕円偏光レーザー光を使用しているので、直線偏光レーザーを用いて形成された改質部で見られるような、改質部の延伸方向に見て、エッチングされやすいエリアとエッチングされにくいエリアとが交互に縞状で形成されることが抑制されているためである。
なお、前記「エッチング速度の極端に大きなバラつき」とは、直線偏光レーザー光を用いた場合に形成されうる、エッチングされやすいエリアとエッチングされにくいエリアとが交互に形成された改質部におけるエッチング速度のバラつきをいう。直線偏光レーザーを用いた場合の改質部の状態については後述する。
【0059】
本発明の微細構造の形成方法で用いられるレーザー光の偏光は、円偏光又は楕円偏光である。円偏光は右円偏光であっても左円偏光であってもよく、楕円偏光は右楕円偏光であても左楕円偏光であってもよい。楕円偏光は、本発明の効果を十分に発揮するために、円偏光に近い楕円偏光であることが好ましい。
このような円偏光又は楕円偏光レーザー光は、例えばフェムト秒レーザー光を公知の適当な移相子に通すことによって得られる。
【0060】
円偏光又は楕円偏光レーザー光51,52の焦点56,57を改質部53,54となる領域に走査することによって、例えば、径が数μm〜数十μmとした改質部53,54を形成できる。また、焦点56,57を結ぶ位置を制御することにより、所望の形状を有する改質部53,54を形成できる。
【0061】
貫通配線基板10における第一の微細孔4となる改質部53と同様に、貫通配線基板210における第一の微細孔204となる改質部を形成することができる。
貫通配線基板210における貫通配線207,208の変曲部となる改質部を、円偏光又は楕円偏光レーザー光の照射を用いて形成することによって、該変曲部となる改質部において、エッチングされやすいエリアとエッチングされにくいエリアとが縞状に形成されることを抑制し、該変曲部の形状に沿った改質部をスムーズに形成することができる。このため、該変曲部となる改質部と、それ以外の直線部となる改質部とのエッチングされ易さを同程度にすることができる。その結果、精度の高い形状で、該変曲部を有する前記微細構造を形成することができる。
【0062】
貫通配線基板10における微細孔となる改質部と同様に、貫通配線基板310における第一の微細孔304及び第二の微細孔305となる改質部を形成することができる。
また、第一の微細孔304となる改質部を形成するとき、円偏光又は楕円偏光レーザー光を基板301の主面302側からのみ照射する方法を用いることもできる。つまり、以下の方法を用いることができる。
【0063】
図10は、図3(B)と同じ断面を示しており、各領域α〜γの延伸方向に沿った実線矢印は、レーザー光の焦点の走査方向を示す。
図10に示すように、第一の微細孔304となる改質部の領域α及びγを形成するときは、レーザー光の光軸Eの向きE9及びE7を該レーザー光の焦点の走査方向に対して平行に維持する。一方、第一の微細孔304となる改質部の領域βを形成するときは、レーザー光の光軸Eの向きE8を該レーザー光の焦点の走査方向に対して垂直に維持する。
【0064】
このようにレーザー光の光軸Eの向きE7〜9を調整することによって、基板301の主面302側からのみレーザー照射して、貫通配線基板310の微細孔となる改質部を形成することができる。
なお、前記レーザー光の光軸Eの向きE7〜9のなす角θとなす角φとの組み合わせは、E7及びE9では(θ,φ)=(0°,0°)であり、E8では(θ,φ)=(0°,20°)である。
【0065】
このようにレーザー光の光軸Eの向きE7〜9を調整した場合、該レーザー光の焦点の走査方向に対する該レーザー光の光軸の向きは各領域α〜γにおいて異なっているため、前記領域α及びγの改質の程度と前記領域βの改質の程度とは異なる。つまり、前記領域α及びγのエッチング速度と前記領域βのエッチング速度とは異なる。
しかし、前記領域βだけを考慮すればそのエッチング速度はほぼ均一であり、前記領域α及びγだけを考慮すればそのエッチング速度も前記領域βとは独立してほぼ均一である。このため、第一の微細孔304となる改質部のエッチング速度を予め見積もることは容易であり、エッチングの程度を精度良く制御して第一の微細孔304を形成することができる。
【0066】
したがって本発明の微細構造の形成方法における前記工程Aでは、前記改質部を形成する全領域のうち少なくとも一部の領域において、前記レーザー光の焦点の走査方向に対する該レーザー光の光軸の向きを一定に維持しつつレーザー照射することが好ましく、前記改質部を形成する全領域のうち少なくとも半分以上の領域において、前記レーザー光の焦点の走査方向に対する該レーザー光の光軸の向きを一定に維持しつつレーザー照射することがより好ましく、前記改質部を形成する全領域のうち全ての領域において、前記レーザー光の焦点の走査方向に対する該レーザー光の光軸の向きを一定に維持しつつレーザー照射することがさらに好ましい。
【0067】
以下に説明する工程B及びCは、貫通配線基板210,310を製造する場合にも適用可能である。
【0068】
[工程B]
図11に示すように、第一の改質部53及び第二の改質部54を形成した基板1をエッチング液(薬液)59に浸漬して、ウェットエッチングすることによって、各改質部53,54を基板1から除去する。その結果、第一の改質部53及び第二の改質部54が存在した領域に、第一の微細孔4及び第二の微細孔5が形成される(図11)。本実施形態では基板1の材料としてガラスを用い、エッチング液59としてフッ酸(HF)の10質量%溶液を主成分とする溶液を用いた。
【0069】
このエッチングは、基板1の改質されていない部分に比べて、第一の改質部53及び第二の改質部54が非常に速くエッチングされる現象を利用するものであり、結果として各改質部53,54の形状に応じた各微細孔4,5を形成することができる(図12)。
【0070】
前記エッチング液59は特に限定されず、例えばフッ酸(HF)を主成分とする溶液、フッ酸に硝酸等を適量添加したフッ硝酸系の混酸等を用いることができる。また、基板1の材料に応じて、他の薬液を用いることもできる。
【0071】
[工程C]
第一の微細孔4及び第二の微細孔5が形成された基板1において、各微細孔4,5に導電性物質6を充填又は成膜して、第一の貫通配線7及び第二の貫通配線8を形成する。該導電性物質6としては、例えば金錫(Au−Sn)、銅(Cu)等が挙げられる。該導電性物質6の充填又は成膜方法としては、溶融金属吸引法、超臨界成膜法など、適宜用いることができる。
【0072】
以上の工程A〜Cにより、図1に示した貫通配線基板10が得られる。
さらに所望に応じて、各貫通配線7,8の開口部9,13,14,17上にランド部を形成してもよい。ランド部の形成方法は、めっき法、スパッタ法など、適宜用いることができる。
【0073】
<表面配線基板30を製造する方法>
次に、本発明の配線基板における微細孔及び微細溝の形成方法の他の一例として、表面配線基板30を製造する方法を、図11〜13を参照して説明する。
ここで、図13〜15は、表面配線基板30を製造する基板31の平面図および断面図である。当該図中、(A)は基板31の平面図であり、(B)及び(C)はそれぞれ該平面図のx−x線及びy−y線に沿う基板31の断面図である。
【0074】
[工程A]
まず、図13に示すように、基板31に第一のレーザー光71及び第二のレーザー光72を照射して、基板31の一方の主面32の表面近傍に基板31の材料が改質されてなる第一の改質部73を形成する。第一の改質部73は、第一の表面配線37が設けられる領域に形成される。第一のレーザー光71及び第二のレーザー光72の偏光は、円偏光又は楕円偏光である。
【0075】
基板31の材料としては、例えばガラス、サファイア等の絶縁体や、シリコン(Si)等の半導体が挙げられる。これらの材料であれば、半導体デバイスとの線膨張係数差が小さいため、前記貫通配線基板又は前記表面配線基板と半導体デバイスとを、半田等を用いて接続する際に、位置ズレが生じず、精度の高い接続が可能となる。さらに、これらの材料のなかでも、絶縁性のガラスが好ましい。基板材料がガラスであると、微細孔の内壁面に絶縁層を形成する必要がなく、浮遊容量成分の存在等による高速伝送の阻害要因がない、等の利点がある。
基板31の厚さは適宜設定することができ、例えば約150μm〜1mmの範囲に設定すればよい。
【0076】
第一のレーザー光71及び第二のレーザー光72は、基板31の一方の主面32側から照射され、基板31の表面近傍の所望の位置で第一の焦点74及び第二の焦点75を結んでいる。各焦点74,75を結んだ位置で、基板31の材料が改質される。
したがって、各レーザー光71,72を照射しながら、各焦点74,75の位置を順次ずらして走査(移動)して、第一の微細溝34が設けられる領域の全部に対して、各焦点74,75を結ぶことによって、第一の改質部73を形成することができる。
【0077】
各レーザー光71,72は、基板31の一方の主面32及び/又は他方の主面33側から照射してもよいし、基板31の側面から照射してもよい。前記両主面32,33側のみからレーザー光を照射する方が容易であるため好ましい。各レーザー光71,72の光軸Eが基板31に入射する角度は所定の角度に設定される。各レーザー光71,72は単一のレーザー光を用いて順に照射してもよいし、複数のレーザー光を用いて同時に照射してもよい。
【0078】
また、各レーザー光71,72の各焦点74,75を走査する方向としては、例えば図13に示した第一の改質部73に沿った実線の矢印のように、領域ζ,領域ηの順に走査する一筆書きの方向が挙げられる。すなわち、前記矢印は、第一のレーザー光71が第一の改質部73の一端部38となる部位から屈曲部39となる部位まで、第二のレーザー光72が第一の改質部73の屈曲部となる部位から他端部40となる部位まで、各焦点74,75を走査することを表す。このとき、前記矢印の向きで一筆書きの走査を行うことが、製造効率上好ましい。
【0079】
レーザー光の光軸Eが、焦点の走査方向(改質部の延伸方向)に対してなす角度は、図7に示すように、角度θと角度φとで規定できる。つまり、図7のxyzの3軸直交座標系において、x軸の正方向を焦点の走査方向とした場合、当該レーザー光の光軸E(矢印Eで示す)は、該x軸の正方向に対してなす角度θと、z軸の正方向に対してなす角φとで規定される。なお、図7において、矢印eは光軸E(レーザー光の照射方向)のx-y平面への投影を示す。
【0080】
図13(B)において、第一のレーザー光71の光軸Eの向きは、第一の焦点74の走査方向(第一の改質部73の領域ζの延伸方向)に対して垂直であり、前記なす角θ及びφは0°である。
同様に、図13(C)において、第二のレーザー光72の光軸Eの向きは、第二の焦点75の走査方向(第一の改質部73の領域ηの延伸方向)に対して垂直であり、前記なす角θ及びφは0°である。
【0081】
第一の改質部73を形成するとき、各レーザー光71,72の光軸Eの向きは、各焦点74,75の走査方向に対して一定の方向に維持しつつ、領域ζ及びηをレーザー照射することが好ましい。
ここで、「レーザー光の光軸の向きを焦点の走査方向に対して一定の方向に維持する」とは、光軸Eの向きと焦点の走査方向との相対的な位置関係を一定に保つことを意味し、前記なす角θ及びφをそれぞれ任意の特定角度に固定することを意味する。
【0082】
図13(B),(C)における破線矢印Eで示すように、第一の改質部73を形成する際、各レーザー光71,72の光軸Eの向きを、各焦点74,75の走査方向に対して垂直に維持しつつ、領域ζ及び領域ηの順に照射した場合、各レーザー光71,72を基板31の一方の主面32に対して垂直に照射する。
【0083】
このようにレーザー光の光軸の向きを焦点の走査方向に対して一定の方向(例えば、垂直)に維持しつつレーザー照射することによって、形成された第一の改質部73では、領域ζ及びηにおいて、エッチングされやすいエリアとエッチングされにくいエリアとが縞状に形成されることを抑制することができ、且つ、改質の状態を均一にすることができる。この結果、後段のエッチング工程において、領域ζ及びηのエッチング速度を均一にすることができる。
【0084】
また、第一のレーザー光71の前記なす角θ及びφと、第二のレーザー光72の前記なす角θ及びφとを同一にすることによって、第一の改質部73において、領域ζの改質の状態と領域ηの改質の状態とを均一にすることができる。この結果、後段のエッチング工程において、領域ζのエッチング速度と領域ηのエッチング速度とを同程度にすることができ、第一の微細溝34を精度の良い形状で形成することができる。
【0085】
各レーザー光71,72の前記なす角θ及びφは0°に限定されず、なす角θとなす角φとはそれぞれ独立に任意の角度に設定することができる。
例えば、なす角θとなす角φとの組合わせ(θ,φ)を(0°,90°)とした場合、当該レーザー光の光軸Eの向きは、当該焦点の走査方向(改質部の延伸方向)に対して平行である。
【0086】
図13(B),(C)における破線矢印Fで示すように、第一の改質部73を形成する際、各レーザー光71,72の光軸Fの向きを、各焦点74,75の走査方向に対して平行に維持しつつ、領域ζ及び領域ηの順に照射した場合、各レーザー光71,72を基板31の側面に対して垂直に照射する。
【0087】
このようにレーザー光の光軸の向きを焦点の走査方向に対して平行に維持しつつレーザー照射することによって、形成された第一の改質部73では、領域ζ及びηにおいて、エッチングされやすいエリアとエッチングされにくいエリアとが縞状に形成されることを抑制し、両エリアが不定形で混在したパターンを前記走査方向に沿わせて形成することができる。
また、前記領域α〜γの改質部における改質の状態を均一にすることができるので、後段のエッチング工程において、前記領域α〜γのエッチング速度を均一にすることができる。
【0088】
本発明の微細構造の形成方法では、レーザー光の光軸の向きを、焦点の走査方向に対して一定の方向に維持しつつレーザー照射しても良いし、一定の方向に維持せずにレーザー照射しても良い。
当該改質部となる全領域を走査する際に、レーザー光の光軸の向きを焦点の走査方向に対して一定の方向に維持してレーザー照射した場合は、前述のように、当該改質部の全領域に渡って改質の状態を均一にすることができる。
【0089】
一方、前記光軸の向きを一定の方向に維持せずにレーザー照射した場合でも、当該改質部の全領域に渡って、改質の状態は極端には変わらず、均一とは言えないまでも、概ね同じ状態であり、後段のエッチング工程におけるエッチング速度に極端に大きなバラつきは生じない。
【0090】
本発明の微細構造の形成方法で用いられるレーザー光の偏光は、円偏光又は楕円偏光である。円偏光は右円偏光であっても左円偏光であってもよく、楕円偏光は右楕円偏光であても左楕円偏光であってもよい。楕円偏光は、本発明の効果を十分に発揮するために、円偏光に近い楕円偏光であることが好ましい。
このような円偏光又は楕円偏光レーザー光は、例えばフェムト秒レーザー光を公知の適当な偏光子に通すことによって得られる。
【0091】
円偏光又は楕円偏光レーザー光71,72の焦点74,75を改質部73となる領域に走査することによって、例えば、径が数μm〜数十μmとした改質部73を形成できる。また、焦点74,75を結ぶ位置を制御することにより、所望の形状を有する改質部73を形成できる。
【0092】
表面配線基板30における第一の微細溝34となる改質部73と同様に、表面配線基板230における第一の微細孔234となる改質部を同様に形成することができる。
表面配線基板230における表面配線237の変曲部239となる改質部を、円偏光又は楕円偏光レーザー光の照射を用いて形成することによって、該変曲部となる改質部において、エッチングされやすいエリアとエッチングされにくいエリアとが縞状に形成されることを抑制し、該変曲部の形状に沿った改質部をスムーズに形成することができる。このため、該変曲部となる改質部と、それ以外の直線部となる改質部とのエッチングされ易さを同程度にすることができる。その結果、精度の高い形状で、該変曲部を有する前記微細構造を形成することができる。
以下に説明する工程B及びCは、表面配線基板230を製造する場合にも適用可能である。
【0093】
[工程B]
図14に示すように、第一の改質部73を形成した基板31をエッチング液(薬液)77に浸漬して、ウェットエッチングすることによって、第一の改質部73を基板31から除去する。その結果、第一の改質部73が存在した領域に、第一の微細溝34が形成される(図14)。本実施形態では基板31の材料としてガラスを用い、エッチング液77としてフッ酸(HF)の10%溶液を主成分とする溶液を用いた。
【0094】
このエッチングは、基板31の改質されていない部分に比べて、第一の改質部73が非常に速くエッチングされる現象を利用するものであり、結果として第一の改質部73の形状に応じた第一の微細溝34を形成することができる(図15)。
【0095】
前記エッチング液77は特に限定されず、例えばフッ酸(HF)を主成分とする溶液、フッ酸に硝酸等を適量添加したフッ硝酸系の混酸等を用いることができる。また、基板31の材料に応じて、他の薬液を用いることもできる。
【0096】
[工程C]
第一の微細溝34が形成された基板31において、第一の微細溝34に導電性物質36を充填又は成膜して、第一の表面配線37を形成する。該導電性物質36としては、例えば金錫(Au−Sn)、銅(Cu)等が挙げられる。
導電性物質36の充填又は成膜方法としては、まずスパッタ法によって基板31の上面全体に導電性物質36からなる膜を形成して、当該微細溝34内に導電性物質36を充填又は成膜し、次に当該微細溝34の上にレジスト膜を形成してマスキングを行った後、基板31の上面をドライエッチングして非マスキング領域の導電性物質36からなる膜を除き、最後に前記マスキングのレジストを除去する方法が例示できる。
【0097】
以上の工程A〜Cにより、図4に示した表面配線基板30が得られる。
さらに所望に応じて、表面配線34の所定位置(例えば一端部38、他端部40)上にランド部を形成してもよい。ランド部の形成方法は、めっき法、スパッタ法など、適宜用いることができる。
【0098】
<レーザー照射装置>
次に、本発明の配線基板における微細構造の形成方法に使用することのできるレーザー照射装置の一例として、レーザー照射装置80を説明する(図16)。
レーザー照射装置80は、レーザー光源81、シャッター82、偏光子83、ハーフミラー84、対物レンズ85、基板ステージ86、CCDカメラ87、制御用コンピュータ88、及び基板ステージ制御軸93を少なくとも備えている。
【0099】
レーザー照射装置80は、基板91において孔状又は溝状をなす微細構造を設ける領域に、パルス時間幅がピコ秒オーダー以下のパルス幅を有する円偏光又は楕円偏光レーザー光89を照射し、該レーザー光89を集光した焦点を走査して改質部92を形成する際、該レーザー光89の光軸を、前記焦点を走査する方向に対して一定の方向に維持しつつレーザー照射する手段を備えている。
【0100】
図16では、基板ステージ86上に置かれた基板91へレーザー光89が照射されて、改質部92が形成されている。改質部92に沿った矢印の方向がレーザー光89の焦点の走査方向である。レーザー光89の光軸の向き(破線矢印E)は、前記走査方向に対して垂直である。
【0101】
レーザー照射装置80は、パルス時間幅がピコ秒オーダー以下のパルス幅を有するレーザー光89を照射できる公知のものを使用できる。
【0102】
偏光子83は、制御用コンピュータ88によって制御され、照射するレーザー光89の偏光を右円偏光、左円偏光、右楕円偏光、及び左楕円偏光のうち所望の偏光に調整できる。
【0103】
前記手段の一つである基板ステージ86は、該基板ステージ86の下部に接続された基板ステージ制御軸93によって、該基板ステージ86上に固定された基板91の向き、角度、及び移動を任意に調整できる。したがって、該基板ステージ86は、前記焦点の走査方向の変更に応じて、該変更後の走査方向に対するレーザー光83の光軸Eの向きを、一定の方向に合わせるように機能する。
【0104】
基板ステージ制御軸93を備えた基板ステージ86は、前記焦点の走査方向の変更に同期して、基板91の向き、角度、及び移動を任意に調整できる。例えば、レーザー光83の焦点の走査方向を基板91の主面に対して平行な方向から基板91の主面に対して垂直方向(基板91の厚み方向)へ変更する際、レーザー光89の光軸Eの向きは移動せず、基板ステージ86を90°傾けて、レーザー光89が基板91の側面から入射されるように傾斜させる。この方法によって、該変更後においても、レーザー光89の光軸Eの向きを、前記焦点の走査方向に対して一定に維持できる。
また、上記方法に代えて、基板ステージ86を固定しておき、レーザー光89の光路を切り換えて、基板91の側面からレーザー光89を入射させる方法によって、該変更後においても、レーザー光89の光軸Eの向きを、前記焦点の走査方向に対して一定に維持できる。
【0105】
レーザー照射装置80を用いた本発明にかかる配線基板の製造方法の一例を、図17のフローチャート図を参照して、以下に説明する。
まず、基板ステージ86に基板91を固定し、レーザー光89の偏光の種類を偏光子83で調整して、レーザー光89の走査方向や走査領域等の情報を、一連のプロセスを規定するプログラムとして作成する。プロセスを開始すると、前記円偏光又は楕円偏光のレーザー光89の光軸Eの向きが、レーザー光89の焦点の走査方向に対して一定の方向に維持されるように、基板ステージ86の位置や傾斜角度が調整される。その後、シャッター82がOPENし、基板91に対して透明な波長のレーザー光89が基板91の所定位置に所定量だけ照射される。
【0106】
通常は、バンドギャップによって基板91の材料の電子は励起されないため、レーザー光89は基板91を透過する。しかし、レーザー光89の光子数が非常に多くなると、多光子吸収が起こって電子が励起され、改質部が形成される。
【0107】
予めプログラムされた所定のレーザー照射が終了するとシャッター82が閉められる。引き続いてレーザー光89の焦点の走査方向を変えてレーザー描画を継続する場合は、再び基板ステージ86の位置や傾斜角度が調整されて、プロセスが繰り返される。描画を終了する場合は、レーザー照射を終了して、プロセスが完了する。
【0108】
上記の方法では、基板ステージ86を調整することによって、レーザー光89の焦点の走査方向に対する、レーザー光89の光軸Eの相対的な向きを制御した。
別の方法として、前述のように、基板ステージ86の調整は行わずに、別途設けたミラーや対物レンズ(不図示)を用いて、レーザー光89の光路を制御して、所望の入射角でレーザー光89を基板91に照射することによって、レーザー光89の焦点の走査方向に対する、レーザー光89の光軸Eの相対的な向きを所望に制御することができる。
また、基板ステージ86の調整及びレーザー光89の光路の制御の両方を併用して、レーザー光89の焦点の走査方向に対する、レーザー光89の光軸Eの相対的な向きを所望に制御してもよい。
【0109】
<レーザー走査方向に対する直線偏光の向きとエッチング速度との関係>
本発明者らは、従来の微細構造の形成方法では、形成された改質部の基板における位置に依存して、該改質部のエッチング速度が大きくバラツク問題を検討したところ、レーザー光の偏光が直線偏光であることが問題の主因であることを見出した。
すなわち、改質部形成工程(工程A)におけるレーザー光の焦点の走査方向に対するレーザー光の直線偏向の向き(偏波の方向)が、後段のエッチング工程(工程B)におけるウェットエッチング速度に大きく影響することを見出した。
さらなる鋭意研究の結果、レーザーの偏光を円偏光又は楕円偏光とする本発明を完成するに至った。以下に、図面を参照して、直線偏光レーザを用いた場合の問題を説明する。
【0110】
図18,19は、基板111の平面図および断面図である。当該図中、(A)は基板111の平面図であり、(B)、(C)、及び(D)はそれぞれ該平面図のx−x線、y1−y1線、及びy2−y2線に沿う基板111の断面図である。
【0111】
前記改質部形成工程(工程A)において、2本の微細孔となる改質部を、照射レーザーの直線偏光の向きを相違させて形成した(図18)。
なお、基板111はガラス製のものを用い、レーザー光源としてフェムト秒レーザー(直線偏光レーザー)を使用した。
【0112】
まず、基板111において、第一の改質部114を設ける領域に、第一のレーザー光181の焦点185を結びながら走査した。焦点185の走査方向は基板111の縦方向(Y方向)であり、第一の改質部114に沿った矢印で示すように一筆書きで行った。このとき、第一のレーザー光181の直線偏光の向きPをY方向とし、焦点185の走査方向に対して平行に維持して第一の改質部114を形成した。
【0113】
さらに、第二の改質部115を設ける領域に、第二のレーザー光182の焦点186を結びながら走査した。焦点186の走査方向は基板111の縦方向(Y方向)であり、第二の改質部115に沿った矢印で示すように一筆書きで行った。このとき、第二のレーザー光182の直線偏光の向きQを基板111の横方向(X方向)とし、焦点186の走査方向に対して垂直に維持して第二の改質部115を形成した。
なお、図18の(D)に示した第二のレーザー光182の近傍に描いた丸印は、直線偏光の向きQが紙面手前及び奥行き方向であることを表す。
【0114】
つぎに、HF溶液(10質量%)に基板111を浸漬して、所定時間のウェットエッチングを行って、第一の改質部114及び第二の改質部115を基板111から除き、非貫通孔(ビア)である第一の微細孔116及び第二の微細孔117を形成した(図19)。
形成した各微細孔の深さを測定したところ、第一の微細孔116の深さは、第二の微細孔117の深さの約1/2であった。すなわち、第一の微細孔116エッチング速度/第二の微細孔117のエッチング速度は約1/2であった。
【0115】
図19の(C)及び(D)に示した、第一の微細孔116のエッチングされた領域F1、及び第二の微細孔117のエッチングされた領域F2の内壁面を、レーザー光の照射方向である基板111の上面から(矢印V1及び矢印V2の方向から)観察したところ、各々異なる方向の縞状の凹凸プロファイル(筋痕)が形成されていた。
【0116】
第一の微細孔116の縞状の凹凸プロファイルH01が伸びる向きは、第一の微細孔116の延伸方向に対して垂直であり、第一のレーザー光181の直線偏光の向きPに対して垂直であった(図20(A))。
第二の微細孔117の縞状の凹凸プロファイルH02が伸びる向きは、第二の微細孔117の延伸方向に対して平行であり、第二のレーザー光182の直線偏光の向きQに対して垂直であった(図20(B))。
なお、図20で示す凹凸プロファイルの本数は特定の本数に限定されるものではない。該本数は使用するレーザー光の使用条件や直線偏光の程度を制御することによって変更されうる。
【0117】
これらの結果から、エッチング前の基板111に形成された第一の改質部114を、基板111の上面から第一のレーザー光181の照射方向へ見ると、エッチングされやすい(エッチング速度が速い)エリアS1とエッチングされにくい(エッチング速度が遅い)エリアH1とが交互に、第一のレーザー光181の走査方向(Y方向)に対して垂直に、且つ第一のレーザー光181の直線偏光の向きP(Y方向)に対して垂直に、形成されていることがわかった(図21)。
【0118】
また、第二の改質部115を基板111の上面から第二のレーザー光182の照射方向へ見ると、エッチングされやすい(エッチング速度が速い)エリアS2とエッチングされにくい(エッチング速度が遅い)エリアH2とが交互に、第二のレーザー光182の走査方向(Y方向)に対して平行に、且つ第二のレーザー光182の直線偏光の向きQ(X方向)に対して垂直に、形成されていることがわかった(図21)。
なお、図21で示す各エリアの本数は特定の本数に限定されるものではない。該本数は使用するレーザー光の使用条件や直線偏光の程度を制御することによって変更されうる。
【0119】
以上から、次のように理解された。
第一の改質部114において、基板111内部へエッチング液が進行していくとき、複数のエッチングされにくいエリアH1に阻まれる。一方、第二の改質部115においては、基板111内部へエッチング液が進行していくとき、先にエッチングされやすいエリアS2が除かれて、第二の改質部115の奥深くまでエッチング液が到達し、その後エッチングされにくい複数のエリアH2が、既に除かれたエリアS2のあった領域に置き換わったエッチング液によって、同時並行でエッチングされる。
このため、第一の改質部114のエッチング速度は、第二の改質部115のエッチング速度よりも遅くなり、第二の改質部113のエッチング速度は、第一の改質部112のエッチング速度よりも速くなる。
【0120】
次に、図22に示す別の基板101に配された、より複雑な形状の第一の改質部104および第二の改質部105においても、前述の理解が当てはまることを以下に説明する。
図22,25は、基板101の平面図および断面図である。当該図中、(A)は基板101の平面図であり、(B)及び(C)はそれぞれ該平面図のy1−y1線及びy2−y2線に沿う基板101の断面図である。
図23は、基板101の平面図である。当該図中、(A)は基板101の平面図であり、(B)及び(C)はそれぞれ第一の改質部104及び第二の改質部105の拡大図である。
図24は、図23の平面図(A)におけるy1−y1線及びy2−y2線に沿う断面図である。当該図中、(A)は基板101の平面図におけるy1−y1線に沿う断面図であり、(C)は該断面図の拡大図であり、(B)は基板101の平面図におけるy2−y2線に沿う断面図であり、(D)は該断面図の拡大図である。
【0121】
まず、基板101において、第一の改質部104となる領域に、第一のレーザー光181の焦点185を結びつつ基板101の上面から照射した。焦点185の走査の向きは基板101の縦方向(Y方向)及び基板厚み方向であり、第一の改質部104に沿った矢印で示すように、領域γ、領域β、領域αの順に一筆書きで行った。このとき、領域γ及び領域αでは、第一のレーザー光181の直線偏光の向きPを、焦点185の走査方向(基板101の厚み方向)に対して垂直に維持して改質部104を形成した。一方、領域βでは、第一のレーザー光181の直線偏光の向きPを、焦点185の走査方向(Y方向)に対して平行に維持して第一の改質部104を形成した(図22)。
【0122】
この結果、第一の改質部104の領域α及び領域γでは、エッチングされやすいエリアS1とエッチングされにくいエリアH1とが並走して、第一の改質部104の延伸方向(基板厚み方向)に沿って平行に形成された。一方、第一の改質部104の領域βでは、エッチングされやすいエリアS1とエッチングされにくいエリアH1とが、互い違いに、第一の改質部104の延伸方向(Y方向)に対して垂直に形成された(図23,24)。
なお、図24で示す各エリアの本数は特定の本数に限定されるものではない。該本数は使用するレーザー光の使用条件や直線偏光の程度を制御することによって変更されうる。
【0123】
さらに、基板101において、第二の改質部105となる領域に、第二のレーザー光182の焦点186を結びつつ基板101の上面から照射した。焦点186の走査方向は基板101の縦方向(Y方向)及び基板厚み方向であり、第二の改質部105に沿った矢印で示すように、領域γ、領域β、領域αの順に一筆書きでいった。このとき、領域α〜γでは一貫して、第二のレーザー光182の直線偏光の向きQを、焦点186の走査方向(Y方向又は基板厚み方向)に対して垂直に維持して第二の改質部105を形成した(図22)。
なお、図22(C)に示した第二のレーザー光182の近傍に描いた丸印は、直線偏光の向きQが紙面手前及び奥行き方向であることを表す。
【0124】
この結果、第二の改質部105の領域α、領域β、及び領域γでは一貫して、エッチングされやすいエリアS2とエッチングされにくいエリアH2とが並走し、第二の改質部105の延伸方向(Y方向又は基板厚み方向)に沿って平行に形成された(図23,24)。
【0125】
なお、第一の改質部104及び第二の改質部105の形状は同一であり、領域αの長さは50μm、領域βの長さは200μm、領域γの長さは50μm、とした。
また、基板101はガラス製のものを用い、レーザー光源としてフェムト秒レーザー(直線偏光レーザー)を使用した。
【0126】
つぎに、HF溶液(10質量%)に基板101を浸漬してウェットエッチングを行い、第一の改質部104及び第二の改質部105を基板101から除いて貫通させ、第一の微細孔106及び第二の微細孔107を形成した(図25)。このとき、第一の改質部104及び第二の改質部105がウェットエッチングにより除かれて貫通する時間(エッチング速度)をそれぞれ測定したところ、第一の改質部104のエッチング速度/第二の改質部105のエッチング速度は約3/5であった。これは、領域α及び領域γのエッチング速度は、どちらの改質部において同じであるが、領域βのエッチング速度は、第一の改質部104の方が第二の改質部105よりも約2倍速いためである。
【0127】
以上から、微細孔及び微細溝等の微細構造が設けられる領域に改質部を形成する場合、照射するレーザー光が直線偏光であると、当該微細構造の延伸する方向に対する該直線偏光の向きに依存して、エッチング速度の異なる改質部が混在して形成されてしまうことが明らかである。
基板に形成する微細構造を任意の形状にする際、その微細構造を設ける形状に合わせて形成する改質部の延伸方向を様々に変更する必要がある。このとき、該改質部の延伸方向と、照射するレーザー光の直線偏光の向きと、の相対的な関係が様々に変更されることになるので、以上で示したように、エッチング速度が2倍以上も異なるような改質部が当該基板内に混在して形成されてしまう。
一方、本発明では円偏光又は楕円偏光レーザーを用いているので、エッチングされやすいエリアとエッチングされにくいエリアとが、改質部の延伸方向に見て縞状に形成されることを防ぐことができ、当該基板内に形成した改質部のエッチング速度が極端に異なってバラつくことを抑制できることは明らかである。
【産業上の利用可能性】
【0128】
本発明の微細構造の形成方法及び該方法で使用されるレーザー照射装置は、ICや電子部品に用いられる配線基板の製造に好適に利用することができる。
【符号の説明】
【0129】
1…基板、2…一方の主面、3…他方の主面、4…第一の微細孔、5…第二の微細孔、6…導電性物質、7…第一の貫通配線、8…第二の貫通配線、9…開口部、10…貫通配線基板、11…屈曲部、12…屈曲部、13…開口部、14…開口部、15…屈曲部、16…屈曲部、17…開口部、30…貫通配線基板、31…基板、32…一方の主面、33…他方の主面、34…第一の微細溝、36…導電性物質、37…第一の表面配線、38…一端部、39…屈曲部、40…他端部、51…第一のレーザー光、52…第二のレーザー光、53…第一の改質部、53s…エッチングされやすいエリア、53h…エッチングされにくいエリア、54…第二の改質部、56…焦点、57…焦点、59…エッチング液、61…第一の微細孔、62…第二の微細孔、71…第一のレーザー光、72…第二のレーザー光、73…第一の改質部、73s…エッチングされやすいエリア、73h…エッチングされにくいエリア、74…焦点、75…焦点、77…エッチング液、80…レーザー照射装置、81…レーザー光源、82…シャッター、83…移相子、84…ハーフミラー、85…対物レンズ、86…基板ステージ、87…CCDカメラ、88…コンピュータ、89…レーザー光、91…基板、92…改質部、93…基板ステージ制御軸、P…第一のレーザー光の直線偏光の向き、Q…第二のレーザー光の直線偏光の向き、R…レーザー光の直線偏光の向き、101…基板、102…第一の改質部、103…第二の改質部、105…第二の改質部、106…第一の微細孔、107…第二の微細孔、111…基板、114…第一の改質部、115…第二の改質部、116…第一の微細孔、117…第二の微細孔、181…第一のレーザー光、182…第二のレーザ光、185…焦点、186…焦点、S1…エッチングされやすいエリア、H1…エッチングされにくいエリア、201…基板、202…一方の主面、203…他方の主面、204…第一の微細孔、205…第二の微細孔、206…導電性物質、207…第一の貫通配線、208…第二の貫通配線、209…開口部、210…貫通配線基板、211…変曲部、212…変曲部、213…開口部、214…開口部、215…変曲部、216…変曲部、217…開口部、230…貫通配線基板、231…基板、232…一方の主面、233…他方の主面、234…第一の微細溝、236…導電性物質、237…第一の表面配線、238…一端部、239…変曲部、240…他端部、301…基板、302…一方の主面、303…他方の主面、304…第一の微細孔、305…第二の微細孔、306…導電性物質、307…第一の貫通配線、308…第二の貫通配線、309…開口部、310…貫通配線基板、311…屈曲部、312…屈曲部、313…開口部、314…開口部、315…屈曲部、316…屈曲部、317…開口部、g1…第三の微細孔、G1…流路、H01…縞状の凹凸プロファイル、H02…縞状の凹凸プロファイル。
【技術分野】
【0001】
本発明は、レーザー光を用いて基板に微細構造を形成する方法、該方法で使用されるレーザー照射装置、及び該方法を用いて製造された基板に関する。より詳しくは、本発明は、レーザー光を用いて基板に微細孔を形成する方法、該方法で使用されるレーザー照射装置、及び該方法を用いて製造された基板に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、基板の一方の主面および他方の主面に実装された複数のデバイス間を電気的に接続する方法として、基板の両主面を貫通する微細孔や基板表面近傍に微細溝等の微細構造を形成し、さらに該微細孔や該微細溝に導電性物質を充填した配線を設ける方法が用いられている。例えば、特許文献1には、基板の厚み方向とは異なる方向に延びる部分を有する微細孔に導電性物質を充填してなる貫通配線を備えた貫通配線基板が記載されている。
【0003】
このような配線基板における微細孔及び微細溝等の微細構造を形成する方法としては、レーザーを用いてガラス等の基板の一部を改質した後、改質した部分をエッチングにより除去する方法が挙げられる。具体的には、まず光源としてフェムト秒レーザーを用い、該レーザーを基板に照射して基板内部の改質すべき箇所にレーザー焦点を結び、該焦点を移動させて改質すべき領域を走査することによって、基板内部に所定形状の改質部を形成する。次いで、改質部が形成された基板を所定の薬液に浸漬するウェットエッチング法により、該改質部が基板内から除去されて微細孔及び微細溝等の微細構造が形成される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2006−303360号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
従来方法では、ウェットエッチング法で改質部を基板から除去する際、改質部の形状が同程度の複雑さであっても、基板における配置が相違する個々の微細孔及び微細溝において、エッチングの容易さ(エッチング速度)が異なるという問題があった。例えば、図26に示す基板101では、第一の改質部102は容易にエッチングされるが、第二の改質部103はエッチングされ難く、エッチング時間が長くなってしまうことがあった。このため、改質部103のエッチングが完了するまでに、レーザーが照射されない非改質部のエッチングが過度に進行してしまうという問題があった。
【0006】
本発明は上記事情に鑑みてなされたものであり、基板における配置に左右されず、ほぼ一定のエッチング速度で微細孔等の微細構造を形成することができる微細構造の形成方法、該形成方法に使用されるレーザー照射装置、及び該形成方法を用いて製造された基板を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の請求項1に記載の微細構造の形成方法は、基板において孔状又は溝状をなす微細構造を設ける領域に、パルス時間幅がピコ秒オーダー以下のパルス幅を有するレーザー光を照射し、該レーザー光が集光した焦点を走査して改質部を形成する工程Aと、前記改質部が形成された前記基板に対してエッチング処理を行い、該改質部を除去して微細構造を形成する工程Bと、を含む微細構造の形成方法であって、前記工程Aにおいて、前記レーザー光として円偏光レーザー光を用いることを特徴とする。
本発明の請求項2に記載の微細構造の形成方法は、請求項1において、前記工程Aにおいて、前記レーザー光の光軸の向きを、前記焦点を走査する方向に対して一定の方向に維持しつつレーザー照射することを特徴とする。
本発明の請求項3に記載の微細構造の形成方法は、請求項1又は2において、前記一定の方向を垂直とすることを特徴とする。
本発明の請求項4に記載の微細構造の形成方法は、請求項1〜3のいずれか一項において、前記工程Aにおいて、前記基板の主面側のみからレーザー照射することを特徴とする。
本発明の請求項5に記載の微細構造の形成方法は、請求項1〜4のいずれか一項において、前記微細構造において変曲部を形成することを特徴とする。
本発明の請求項6に記載のレーザー照射装置は、基板において孔状又は溝状をなす微細構造を設ける領域に、パルス時間幅がピコ秒オーダー以下のパルス幅を有する円偏光又は楕円偏光レーザー光を照射し、該レーザー光を集光した焦点を走査して改質部を形成する際、該レーザー光の光軸の向きを、前記焦点を走査する方向に対して一定の方向に維持しつつレーザー照射する手段を備えたことを特徴とする。
本発明の請求項7に記載のレーザー照射装置は、請求項6において、前記手段は基板ステージであり、該基板ステージは、前記焦点の走査方向の変更に応じて、該変更後の走査方向に対する前記レーザー光の光軸の向きを、一定の方向に合わせるように機能することを特徴とする。
本発明の請求項8に記載の基板は、請求項1〜5に記載の微細構造の形成方法を用いて製造されたことを特徴とする。
本発明の請求項9に記載の基板は、請求項8において、前記基板には、さらに流体が流通するための流路が形成されていることを特徴とする。
本発明の請求項10に記載の微細構造の形成方法は、基板において孔状又は溝状をなす微細構造を設ける領域に、パルス時間幅がピコ秒オーダー以下のパルス幅を有するレーザー光を照射し、該レーザー光が集光した焦点を走査して改質部を形成する工程Aと、前記改質部が形成された前記基板に対してエッチング処理を行い、該改質部を除去して微細構造を形成する工程Bと、を含む微細構造の形成方法であって、前記工程Aにおいて、前記レーザー光として楕円偏光レーザー光を用いることを特徴とする。
【発明の効果】
【0008】
本発明の微細構造の形成方法によれば、レーザー光として円偏光又は楕円偏光レーザー光を用いることにより、微細構造となる改質部において、エッチングされやすいエリアとエッチングされにくいエリアとが縞状に形成されることを抑制することができる。その結果、形成された改質部におけるエッチングのされ易さに大きなバラつきが生じず(エッチングのされ易さが異なるエリアが、後述するように、縞状に形成された場合と比べて)、比較的スムーズにエッチングを行うことができる。このため、前記改質部の基板における配置や形状に左右されず、大きなバラつきの無いエッチング速度で微細構造を形成することができるので、微細孔等の微細構造の大きさを精度良く制御することができる。各微細構造となる改質部のエッチング時間は、当該微細構造となる改質部の長さ及び深さに依存するため、微細構造の設計段階でエッチング時間を算出することができ、生産管理が容易になる。
【0009】
前記レーザー光の光軸の向きを、レーザー光の焦点の走査方向に対して一定の方向に維持しつつレーザー照射する場合、微細構造となる改質部において、エッチングされやすいエリアとエッチングされにくいエリアとが縞状に形成されることを抑制することができ、さらに、前記改質部が基板において形成された位置に依存せずに、前記改質部をほぼ均一の状態で改質することができる。すなわち、形成する改質部の全長のうち、レーザー光の焦点の走査方向に対して一定の方向に維持しつつレーザー照射して形成した領域(区間)において、エッチングされ易さを、ほぼ均一にすることができる。このため、前記改質部の基板における配置や形状に左右されず、ほぼ一定のエッチング速度で微細構造を形成することができるので、微細孔等の微細構造の大きさをより精度良く制御することができる。各微細構造となる改質部のエッチング時間は、当該微細構造となる改質部の長さ及び深さに依存するため、微細構造の設計段階でエッチング時間を算出することができ、生産管理がより容易になる。
【0010】
前記レーザー光の光軸の向きを、レーザー光の焦点の走査方向に対して垂直に維持しつつレーザー照射する場合、微細構造となる改質部において、エッチングされやすいエリアとエッチングされにくいエリアとが縞状に形成されることを抑制し、両エリアが不定形で混在したパターンを前記走査方向に沿わせて形成することができる。つまり、前記改質部は、基板において形成された位置に依存せず、何処に形成されてもほぼ同じ状態で、エッチングされやすいエリアとエッチングされにくいエリアとが混在したパターンを、前記走査方向に沿わせて形成することができる。垂直に維持しつつレーザー照射したことによって、形成した改質部のエッチングされ易さをほぼ一定にするとともに、エッチング速度を速めることができる。これは、垂直に維持しつつレーザー照射したことによって、改質部において、エッチングされやすいエリアが前記走査方向に沿って準連続的に形成される傾向があるからである。
したがって、前記改質部の基板における配置や形状に左右されず、ほぼ一定のエッチング速度で微細構造を形成することができるので、微細孔等の微細構造の大きさをより精度良く制御することができる。また、エッチング工程に要する時間を短縮することも可能である。各微細構造となる改質部のエッチング時間は、当該微細構造となる改質部の長さ及び深さに依存するため、微細構造の設計段階でエッチング時間を算出することができ、生産管理がより容易になる。
【0011】
前記基板の主面側のみからレーザー照射する場合、該基板の側面からレーザー照射する場合に比べて容易に前記改質部を形成することができる。つまり、該基板の側面は主面に比べて極めて小さい面積であるため、該側面側からレーザー照射する場合には、該レーザー光を該基板の側面に対してほぼ垂直に照射しなければならず、必ずしも容易ではない。一方、該基板の主面は比較的広い面積を有するため、該主面側からレーザー照射して該基板の任意の位置に該レーザー光の焦点を結ぶ場合は、必ずしも該主面に対して垂直にレーザー照射する必要はなく、容易である。
なお、前記基板の主面とは、平板状の基板を構成する面のうち最も広い面積を有する面のことであり、通常、該基板は対向する2つの主面を有する。本発明では、2つの主面のうち一方の主面からのみレーザー照射してもよく、一方の主面および他方の主面の両方からレーザー照射してもよい。
【0012】
前記微細構造において変曲部を形成する場合、該変曲部となる改質部において、エッチングされやすいエリアとエッチングされにくいエリアとが縞状に形成されることを抑制し、該変曲部に沿った改質部をスムーズに形成することができる。このため、該変曲部となる改質部と、それ以外の直線部となる改質部とのエッチングされ易さを同定度にすることができる。その結果、精度の高い形状で、該変曲部を有する前記微細構造を形成することができる。
【0013】
また、本発明のレーザ照射装置によれば、円偏光又は楕円偏光レーザー光の光軸の向きを、レーザー光の焦点の走査方向に対して一定の方向に維持する手段を有するため、当該基板に所望の形状で形成された改質部において、エッチングされやすいエリアとエッチングされにくいエリアとが縞状に形成されることを抑制することができる。さらに、前記改質部が基板において形成された位置に依存せずに、前記改質部をほぼ均一の状態で改質することができる。この結果、別途行われるウェットエッチング工程において、前記基板における改質部の配置や形状に左右されずに、ほぼ一定のエッチング速度で該改質部を前記基板から除去することができるので、形成される微細孔等の微細構造の大きさを精度良く制御することができる。
【0014】
また、本発明の基板によれば、該基板内に精度の良い形状で形成された微細構造を有する基板を提供することができる。
この微細構造を貫通配線として用いる場合、該微細構造に導電性物質を充填または成膜することによって、高精度の形状を有する配線を備えた配線基板を提供することができる。
また、前記微細構造を流体を流通するための流路として用いる場合、該微細構造(流路)に目的に応じて様々な流体を流通することができる。例えば、前記基板を配線基板として用いる場合、該微細孔(流路)に空気や水等の冷媒を流通するとき、この冷却機能によって、該配線基板に発熱量の大きいデバイスを実装した場合であっても、温度上昇を効果的に低減することが可能になる。その他、前記基板を、マイクロフルイディクス技術を利用したバイオ実験システムを集積化した基板として用いる場合、前記微細孔(流路)には、DNA(核酸)、タンパク質、脂質等の生体高分子溶液を流通させる流路に適用することもできる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【図1】本発明にかかる配線基板の一例を示す図であり、(A)は平面図、(B)は平面図(A)のx−x線に沿った断面図、(C)は平面図(A)のy−y線に沿った断面図である。
【図2】本発明にかかる配線基板の一例を示す図であり、(A)は平面図、(B)は平面図(A)のx−x線に沿った断面図、(C)は平面図(A)のy−y線に沿った断面図である。
【図3】本発明にかかる配線基板の別の一例を示す図であり、(A)は平面図、(B)は平面図(A)のx1−x1線に沿った断面図、(C)は平面図(A)のy−y線に沿った断面図、(D)は平面図(A)のx2−x2線に沿った断面図である。
【図4】本発明にかかる配線基板の他の一例を示す図であり、(A)は平面図、(B)は平面図(A)のx−x線に沿った断面図、(C)は平面図(A)のy−y線に沿った断面図である。
【図5】本発明にかかる配線基板の他の一例を示す図であり、(A)は平面図、(B)は平面図(A)のx−x線に沿った断面図、(C)は平面図(A)のy−y線に沿った断面図である。
【図6】本発明にかかる微細構造の形成方法の一例における基板を示す図であり、(A)は平面図、(B)は平面図(A)のx−x線に沿った断面図、(C)は平面図(A)のy−y線に沿った断面図である。
【図7】本発明で用いるレーザー光が、該レーザー光の焦点の走査方向となす角を説明する図である。
【図8】本発明にかかる微細構造の形成方法の一例における基板の断面図である。
【図9】本発明にかかる微細構造の形成方法の一例における基板の断面図である。
【図10】本発明にかかる微細構造の形成方法の別の一例における基板の断面図である。
【図11】本発明にかかる微細構造の形成方法の一例における基板を示す図であり、(A)は平面図、(B)は平面図(A)のx−x線に沿った断面図、(C)は平面図(A)のy−y線に沿った断面図である。
【図12】本発明にかかる微細構造の形成方法の一例における基板を示す図であり、(A)は平面図、(B)は平面図(A)のx−x線に沿った断面図、(C)は平面図(A)のy−y線に沿った断面図である。
【図13】本発明にかかる微細構造の形成方法の他の一例における基板を示す図であり、(A)は平面図、(B)は平面図(A)のx−x線に沿った断面図、(C)は平面図(A)のy−y線に沿った断面図である。
【図14】本発明にかかる微細構造の形成方法の他の一例における基板を示す図であり、(A)は平面図、(B)は平面図(A)のx−x線に沿った断面図、(C)は平面図(A)のy−y線に沿った断面図である。
【図15】本発明にかかる微細構造の形成方法の他の一例における基板を示す図であり、(A)は平面図、(B)は平面図(A)のx−x線に沿った断面図、(C)は平面図(A)のy−y線に沿った断面図である。
【図16】本発明にかかるレーザー照射装置の一例の概略構成図である。
【図17】本発明にかかるレーザー照射装置を用いた配線基板の製造方法の一例を示すフローチャート図である。
【図18】(A)は基板の平面図、(B)は平面図(A)のx−x線に沿った断面図、(C)は平面図(A)のy1−y1線に沿った断面図、(D)は平面図(A)のy2−y2線に沿った断面図である。
【図19】(A)は基板の平面図、(B)は平面図(A)のx−x線に沿った断面図、(C)は平面図(A)のy1−y1線に沿った断面図、(D)は平面図(A)のy2−y2線に沿った断面図である。
【図20】(A)は図19の断面図(C)における領域F1の拡大図であり、(B)は図19の断面図(D)における領域F2の拡大図である。
【図21】微細構造の形成方法を説明する基板の平面図である。
【図22】(A)は基板の平面図、(B)は平面図(A)のy1−y1線に沿った断面図、(C)は平面図(A)のy2−y2線に沿った断面図である。
【図23】(A)は基板の平面図、(B)及び(C)は拡大図である。
【図24】(A)及び(B)は、図23の平面図(A)におけるy1−y1線及びy2−y2線に沿う断面図であり、(C)及び(D)は拡大図である。
【図25】(A)は基板の平面図、(B)は平面図(A)のy1−y1線に沿った断面図、(C)は平面図(A)のy2−y2線に沿った断面図である。
【図26】微細構造である微細孔が形成された基板の一例である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、好適な実施の形態に基づき、図面を参照して本発明を説明する。なお、以下では基板に微細構造を形成し、該微細構造を貫通配線又は流路として用いる場合を例に挙げて説明しているが、本発明における基板に形成された微細構造の用途はこれに限定されるものではない。
<第一実施形態:貫通配線基板10>
図1は、本発明の微細構造の形成方法によって製造できる配線基板の一例である貫通配線基板10の平面図(A)、断面図(B)及び(C)である。断面図(B)は平面図(A)のx−x線に沿った断面を示し、断面図(C)は平面図(A)のy−y線に沿った断面を示す。
この貫通配線基板10は、基板1を構成する一方の主面2と他方の主面3とを結ぶように第一の微細孔4及び第二の微細孔5を配し、各微細孔中に導電性物質6を充填又は成膜してなる第一の貫通配線7及び第二の貫通配線8を備えている。
【0017】
第一の貫通配線7は、一方の主面2に露呈する開口部9から第一屈曲部11まで基板1の厚み方向に延伸する領域αと、第一屈曲部11から第二屈曲部12まで基板1の主面と平行に、且つ基板1の横方向(X方向)に延伸する領域βと、第二屈曲部12から他方の主面3に露呈する開口部13まで基板1の厚み方向に延伸する領域γとからなる。
第一の貫通配線7の領域α、領域β、及び領域γには、第一の微細孔4の領域α、領域β、及び領域γが対応する。
【0018】
第二の貫通配線8は、一方の主面2に露呈する開口部14から第一屈曲部15まで基板1の厚み方向に延伸する領域αと、第一屈曲部15から第二屈曲部16まで基板1の主面と平行に、且つ基板1の縦方向(Y方向)に延伸する領域βと、第二屈曲部16から他方の主面3に露呈する開口部17まで基板1の厚み方向に延伸する領域γとからなる。
第二の貫通配線8の領域α、領域β、及び領域γには、第二の微細孔5の領域α、領域β、及び領域γが対応する。
【0019】
<第二実施形態:貫通配線基板210>
図2は、本発明の微細構造の形成方法によって製造できる配線基板の他の一例である貫通配線基板210の平面図(A)、断面図(B)及び(C)である。断面図(B)は平面図(A)のx−x線に沿った断面を示し、断面図(C)は平面図(A)のy−y線に沿った断面を示す。
この貫通配線基板210は、基板201を構成する一方の主面202と他方の主面203とを結ぶように第一の微細孔204及び第二の微細孔205を配し、各微細孔中に導電性物質206を充填又は成膜してなる第一の貫通配線207及び第二の貫通配線208を備えている。
【0020】
第一の貫通配線207は、一方の主面202に露呈する開口部209から第一変曲部211まで基板201の厚み方向に延伸する領域α(直線部α)と、第一変曲部211から第二変曲部212まで基板201の二つの主面と平行に、且つ基板201の横方向(X方向)に延伸する領域β(直線部β)と、第二変曲部212から他方の主面203に露呈する開口部213まで基板201の厚み方向に延伸する領域γ(直線部γ)とからなる。
第一の貫通配線207の領域α、領域β、及び領域γには、第一の微細孔204の領域α、領域β、及び領域γが対応する。
【0021】
第一の貫通配線207の中心線に沿った縦断面において、第一変曲部211および第二変曲部212の形状は円弧状である。本例では、第一変曲部211および第二変曲部212において、前記中心線の描く円弧の曲率半径Rは70μmとし、第一の貫通配線207の径を40μmとし、基板201の厚みは300μmとした。
【0022】
前記曲率半径Rとしては、第一の貫通配線207の径及び基板201の厚みにもよるが、10〜1000μmの範囲であることが好ましい。この範囲の曲率半径であると、領域αと領域βとを、及び、領域βと領域γとを、各変曲部211,212を介してより滑らかに接続することができる。
【0023】
第一の貫通配線207が屈曲部の代わりに変曲部を有することによって、高周波信号等の電気信号の伝送損失を低減することができ、且つ、微細孔204から導電性物質206が剥離することによる導通不良を抑制することができる。
【0024】
第二の貫通配線208は、一方の主面202に露呈する開口部214から第一変曲部215まで基板201の厚み方向に延伸する領域α(直線部α)と、第一変曲部215から第二変曲部216まで基板201の主面と平行に、且つ基板1の縦方向(Y方向)に延伸する領域β(直線部β)と、第二変曲部216から他方の主面203に露呈する開口部217まで基板201の厚み方向に延伸する領域γ(直線部γ)とからなる。
第二の貫通配線208の領域α、領域β、及び領域γには、第二の微細孔205の領域α、領域β、及び領域γが対応する。
【0025】
第二の貫通配線208の中心線に沿った縦断面において、第一変曲部214および第二変曲部215の形状は円弧状である。本例では、第一変曲部215および第二変曲部216において、前記中心線の描く円弧の曲率半径Rは70μmとし、第二の貫通配線208の径を40μmとし、基板201の厚みは300μmとした。
【0026】
前記曲率半径Rとしては、第二の貫通配線208の径及び基板201の厚みにもよるが、10〜1000μmの範囲であることが好ましい。この範囲の曲率半径であると、領域αと領域βとを、及び、領域βと領域γとを、各変曲部215,216を介してより滑らかに接続することができる。
【0027】
第二の貫通配線208が屈曲部の代わりに変曲部を有することによって、高周波信号等の電気信号の伝送損失を低減することができ、且つ、微細孔205から導電性物質206が剥離することによる導通不良を抑制することができる。
【0028】
<第三実施形態:貫通配線基板310>
図3は、本発明の微細構造の形成方法によって製造できる配線基板の他の一例である貫通配線基板310の平面図(A)、断面図(B)〜(D)である。断面図(B)は平面図(A)のx1−x1線に沿った断面を示し、断面図(C)は平面図(A)のy−y線に沿った断面を示し、断面図(D)は平面図(A)のx2−x2線に沿った断面を示す。
この貫通配線基板310は、基板301を構成する一方の主面302と他方の主面303とを結ぶように第一の微細孔304及び第二の微細孔305を配し、各微細孔中に導電性物質306を充填又は成膜してなる第一の貫通配線307及び第二の貫通配線308を備え、且つ、第一の微細孔g1からなる第一流路G1が設けられている。
【0029】
第一の貫通配線307は、一方の主面302に露呈する開口部309から第一屈曲部311まで基板301の厚み方向に延伸する領域αと、第一屈曲部311から第二屈曲部312まで基板301の主面と非平行に斜めを成し、且つ基板301の横方向(X方向)に延伸する領域βと、第二屈曲部312から他方の主面303に露呈する開口部313まで基板301の厚み方向に延伸する領域γとからなる。
第一の貫通配線307の領域α、領域β、及び領域γには、第一の微細孔304の領域α、領域β、及び領域γが対応する。
【0030】
第二の貫通配線308は、一方の主面302に露呈する開口部314から第一屈曲部315まで基板301の厚み方向に延伸する領域αと、第一屈曲部315から第二屈曲部316まで基板301の主面と非平行に斜めを成し、且つ基板301の縦方向(Y方向)に延伸する領域βと、第二屈曲部316から他方の主面303に露呈する開口部317まで基板301の厚み方向に延伸する領域γとからなる。
第二の貫通配線308の領域α、領域β、及び領域γには、第二の微細孔305の領域α、領域β、及び領域γが対応する。
【0031】
第一の微細孔g1からなる第一流路G1は、基板301の両主面に沿うように、基板301の横方向(X方向)に延伸して設けられている。第一の微細孔g1は、基板1の対向する二つの側面に、冷媒が出入りするための開口部を有する。
なお、図1及び2では示していないが、微細孔からなる同様の流路は、前述の貫通配線基板10及び210においても設けることができる。
【0032】
<第四実施形態:表面配線基板30>
図4は、本発明の微細構造の形成方法によって製造できる配線基板の別の一例である表面配線基板30の平面図(A)、断面図(B)及び(C)である。断面図(B)は平面図(A)のx−x線に沿った断面を示し、断面図(C)は平面図(A)のy−y線に沿った断面を示す。
この表面配線基板30は、基板31を構成する一方の主面32の表面に形成された第一の微細溝34を配し、その微細溝34に導電性物質36を充填又は成膜してなる第一の表面配線37を備えている。
【0033】
第一の表面配線37は、一端部38から第一屈曲部39まで基板31の横方向(X方向)に延伸する領域ζと、第一屈曲部39から他端部40まで基板31の縦方向(Y方向)に延伸する領域ηとからなる。
第一の表面配線37の領域ζ及び領域η、並びに一端部38、第一屈曲部39、及び他端部40には、第一の微細溝34の領域ζ及び領域η、並びに一端部38及び他端部40が対応する。
【0034】
<第五実施形態:表面配線基板230>
図5は、本発明の微細構造の形成方法によって製造できる配線基板の別の一例である表面配線基板230の平面図(A)、断面図(B)及び(C)である。断面図(B)は平面図(A)のx−x線に沿った断面を示し、断面図(C)は平面図(A)のy−y線に沿った断面を示す。
この表面配線基板230は、基板231を構成する一方の主面232の表面に形成された第一の微細溝234を配し、その微細溝234に導電性物質236を充填又は成膜してなる第一の表面配線237を備えている。
【0035】
第一の表面配線237は、一端部238から第一変曲部239まで基板231の横方向(X方向)に延伸する領域ζ(直線部ζ)と、第一変曲部239から他端部240まで基板231の縦方向(Y方向)に延伸する領域η(直線部η)とからなる。
第一の表面配線237の領域ζ及び領域η、並びに一端部238、第一変曲部239、及び他端部240には、第一の微細溝234の領域ζ及び領域η、並びに一端部238及び他端部240が対応する。
【0036】
第一の表面配線237を基板厚み方向に見たとき、第一変曲部239の形状は円弧状である。本例では、第一変曲部239の描く円弧の曲率半径Rは70μmとし、第一の表面配線237の径を40μmとした。
前記曲率半径Rとしては、第一の貫通配線237の径にもよるが、10〜1000μmの範囲であることが好ましい。この範囲の曲率半径Rであると、領域ζと領域ηとを第一変曲部239を介してより滑らかに接続することができる。
第一の表面配線237が屈曲部の代わりに変曲部を有することによって、高周波信号等の電気信号の伝送損失を低減することができ、且つ、微細溝234から導電性物質236が剥離することによる導通不良を抑制することができる。
【0037】
貫通配線基板10,210,310及び表面配線基板30,230における基板1,201,31,231の材料としては、例えばガラス、サファイア等の絶縁体や、シリコン(Si)等の半導体が挙げられる。これらの材料であれば、半導体デバイスとの線膨張係数差が小さいため、前記貫通配線基板又は前記表面配線基板と半導体デバイスとを、半田等を用いて接続する際に、位置ズレが生じず、精度の高い接続が可能となる。さらに、これらの材料のなかでも、絶縁性のガラスが好ましい。基板材料がガラスであると、微細孔及び微細溝の内壁面に絶縁層を形成する必要がなく、浮遊容量成分の存在等による高速伝送の阻害要因がない等の利点がある。
【0038】
基板1,201,301,31,231の厚さ(一方の主面2,202,302,32,232から他方の主面3,203,303,33,233までの距離)は適宜設定することができ、例えば約150μm〜1mmの範囲が挙げられる。
貫通配線基板10,210,310及び表面配線基板30,230に配された各微細孔7,8,207,208,307,308及び第一の微細溝37,237に充填又は成膜する導電性物質6,206,36,236,306としては、例えば金錫(Au−Sn)、銅(Cu)等が挙げられる。
【0039】
本発明にかかる配線基板に備えられる微細構造の形状、並びに貫通配線、表面配線、及び流路のパターンや断面形状は、以上の例示に限定されるものではなく、適宜設計することが可能である。
【0040】
<貫通配線基板10を製造する方法>
次に、本発明の配線基板における微細孔及び微細溝の形成方法の一例として、貫通配線基板10を製造する方法を、図6〜15に示す。
ここで、図6,11〜15は、貫通配線基板10を製造する基板1の平面図および断面図である。当該図中、(A)は基板1の平面図であり、(B)及び(C)はそれぞれ該平面図のx−x線及びy−y線に沿う基板1の断面図である。
【0041】
[工程A]
まず、図6に示すように、基板1に第一のレーザー光51及び第二のレーザー光52を照射して、基板1内に基板1の材料が改質されてなる第一の改質部53及び第二の改質部54を形成する。各改質部は、第一の貫通配線7及び第二の貫通配線8が設けられる領域にそれぞれ形成される。第一のレーザー光51及び第二のレーザー光52の偏光は、円偏光又は楕円偏光である。
【0042】
基板1の材料としては、例えばガラス、サファイア等の絶縁体や、シリコン(Si)等の半導体が挙げられる。これらの材料であれば、半導体デバイスとの線膨張係数差が小さいため、前記貫通配線基板又は前記表面配線基板と半導体デバイスとを、半田等を用いて接続する際に、位置ズレが生じず、精度の高い接続が可能となる。さらに、これらの材料のなかでも、絶縁性のガラスが好ましい。基板材料がガラスであると、微細孔の内壁面に絶縁層を形成する必要がなく、浮遊容量成分の存在等による高速伝送の阻害要因がない、等の利点がある。
基板1の厚さは適宜設定することができ、例えば約150μm〜1mmの範囲に設定すればよい。
【0043】
第一のレーザー光51及び第二のレーザー光52は、基板1の一方の主面2側から照射され、基板1内の所望の位置で第一の焦点56及び第二の焦点57を結んでいる。各焦点56,57を結んだ位置で、基板1の材料が改質される。
したがって、第一のレーザー光51,第二のレーザー光52を照射しながら、第一の焦点56,第二の焦点57の位置を順次ずらして走査(移動)して、第一の微細孔4,第二の微細孔5が設けられる領域の全部に対して、各焦点56,57を結ぶことによって、第一の改質部53及び第二の改質部54を形成することができる。
【0044】
各レーザー光51,52は、基板1の一方の主面2及び/又は他方の主面3側から照射してもよいし、基板1の側面から照射してもよい。前記両主面2,3側のみからレーザー光を照射する方が容易であるため好ましい。各レーザー光51,52の光軸Eが基板1に入射する角度は所定の角度に設定される。各レーザー光51,52は単一のレーザー光を用いて順に照射してもよいし、複数のレーザー光を用いて同時に照射してもよい。
【0045】
また、各レーザー光51,52の焦点56,57を走査する方向としては、例えば図6に示した各改質部53,54に沿った実線の矢印のように、領域γ,領域β,領域αの順に走査する一筆書きの方向が挙げられる。すなわち、前記矢印は、基板1の他方の主面3の開口部13,17となる部位から、一方の主面2の開口部9,14となる部位まで、該焦点56,57を走査することを表す。このとき、前記矢印の向きで一筆書きの走査を行うことが、製造効率上好ましい。
【0046】
レーザー光の光軸Eが、焦点の走査方向(改質部の延伸方向)に対してなす角度は、図7に示すように、角度θと角度φとで規定できる。つまり、図7のxyzの3軸直交座標系において、x軸の正方向を焦点の走査方向とした場合、当該レーザー光の光軸E(矢印Eで示す)は、該x軸の正方向に対してなす角度θと、z軸の正方向に対してなす角φとで規定される。なお、図7において、矢印eは光軸E(レーザー光の照射方向)のx-y平面への投影を示す。
【0047】
図6(B)において、第一のレーザー光51の光軸Eの向きは、第一の焦点56の走査方向(第一の改質部53の領域βの延伸方向)に対して垂直であり、前記なす角θ及びφは0°である。
同様に、図6(C)において、第二のレーザー光52の光軸Eの向きは、第二の焦点57の走査方向(第二の改質部54の領域βの延伸方向)に対して垂直であり、前記なす角θ及びφは0°である。
【0048】
第一の改質部53を形成するとき、第一のレーザー光51の光軸Eの向きは、第一の焦点56の走査方向に対して一定の方向に維持しつつ、領域α〜γをレーザー照射することが好ましい(図8)。
ここで、「レーザー光の光軸の向きを焦点の走査方向に対して一定の方向に維持する」とは、光軸Eの向きと焦点の走査方向との相対的な位置関係を一定に保つことを意味し、前記なす角θ及びφをそれぞれ任意の特定角度に固定することを意味する。
【0049】
図8に示すように、第一の改質部53を形成する際、第一のレーザー光51の光軸Eの向きを、第一の焦点56の走査方向に対して垂直に維持しつつ、領域γ,領域β,領域αの順に照射した場合、各領域における光軸Eの向きは、順にE1,E2,E3の破線矢印で示される。ここで、図8は、図6(B)と同じ断面を示しており、各領域α〜γの延伸方向に沿った実線矢印は、第一の焦点56の走査方向を示す。
【0050】
図8では、領域α及びγを形成する際は、第一のレーザー光51を基板1の側面に対して垂直に照射し、領域βを形成する際は、第一のレーザー光51を基板1の一方の主面2に対して垂直に照射している。
【0051】
このようにレーザー光の光軸の向きを焦点の走査方向に対して一定の方向(ここでは垂直)に維持しつつレーザー照射することによって、形成された第一の改質部53では、領域α〜γにおいて、エッチングされやすいエリアとエッチングされにくいエリアとが縞状に形成されることを抑制し、両エリアが不定形で混在したパターンを前記走査方向に沿わせて形成することができる。より具体的には、前記領域α〜γの改質部において、エッチングされやすいエリアを、当該レーザー光の光軸が中心となるスパイラル状で、前記走査方向に沿って準連続的に形成しうる。該エッチングされやすいエリアが、後段のエッチング工程において、優先的にエッチングされて、エッチング液が改質部の延伸方向に浸透しやすくなるため、当該改質部のエッチング速度を速めることができる。
また、前記領域α〜γの改質部における改質の状態を均一にすることができるので、後段のエッチング工程において、前記領域α〜γのエッチング速度を均一にすることができる。
【0052】
また、第一のレーザー光51の前記なす角θ及びφと、第二のレーザー光52の前記なす角θ及びφとを同一にすることによって、第一の改質部53の改質の状態と第二の改質部54の改質の状態とを均一にすることができる。この結果、後段のエッチング工程において、第一の改質部53のエッチング速度と第二の改質部54のエッチング速度とを同程度にすることができ、第一の微細孔4及び第二の微細孔5を精度の良い形状で形成することができる。
【0053】
各レーザー光51,52の前記なす角θ及びφは0°に限定されず、なす角θとなす角φとはそれぞれ独立に任意の角度に設定することができる。
例えば、なす角θとなす角φとの組合わせ(θ,φ)を(0°,90°)とした場合、当該レーザー光の光軸Eの向きは、当該焦点の走査方向(改質部の延伸方向)に対して平行である。
【0054】
図9に示すように、第一の改質部53を形成する際、第一のレーザー光51の光軸Eの向きを、第一の焦点56の走査方向に対して平行に維持しつつ、領域γ,領域β,領域αの順に照射した場合、各領域における光軸Eの向きは、順にE4,E5,E6の破線矢印で示される。ここで、図9は、図6(B)と同じ断面を示しており、各領域α〜γの延伸方向に沿った実線矢印は、第一の焦点56の走査方向を示す。
【0055】
図9では、領域α及びγを形成する際は、第一のレーザー光51を基板1の一方の主面2に対して垂直に照射し、領域βを形成する際は、第一のレーザー光51を基板1の側面に対して垂直に照射している。
【0056】
このようにレーザー光の光軸の向きを焦点の走査方向に対して平行に維持しつつレーザー照射することによって、形成された第一の改質部53では、領域α〜γにおいて、エッチングされやすいエリアとエッチングされにくいエリアとが縞状に形成されることを抑制できる。
また、前記領域α〜γの改質部における改質の状態を均一にすることができるので、後段のエッチング工程において、前記領域α〜γのエッチング速度を均一にすることができる。
【0057】
本発明の微細構造の形成方法では、レーザー光の光軸の向きを、焦点の走査方向に対して一定の方向に維持しつつレーザー照射しても良いし、一定の方向に維持せずにレーザー照射しても良い。
当該改質部となる全領域を走査する際に、レーザー光の光軸の向きを焦点の走査方向に対して一定の方向に維持してレーザー照射した場合は、前述のように、当該改質部の全領域に渡って改質の状態を均一にすることができる。
【0058】
一方、前記光軸の向きを一定の方向に維持せずにレーザー照射した場合でも、当該改質部の全領域に渡って、改質の状態は極端には変わらず、均一とは言えないまでも、概ね同じ状態であり、後段のエッチング工程におけるエッチング速度に極端に大きなバラつきは生じない。これは、本発明では円偏光又は楕円偏光レーザー光を使用しているので、直線偏光レーザーを用いて形成された改質部で見られるような、改質部の延伸方向に見て、エッチングされやすいエリアとエッチングされにくいエリアとが交互に縞状で形成されることが抑制されているためである。
なお、前記「エッチング速度の極端に大きなバラつき」とは、直線偏光レーザー光を用いた場合に形成されうる、エッチングされやすいエリアとエッチングされにくいエリアとが交互に形成された改質部におけるエッチング速度のバラつきをいう。直線偏光レーザーを用いた場合の改質部の状態については後述する。
【0059】
本発明の微細構造の形成方法で用いられるレーザー光の偏光は、円偏光又は楕円偏光である。円偏光は右円偏光であっても左円偏光であってもよく、楕円偏光は右楕円偏光であても左楕円偏光であってもよい。楕円偏光は、本発明の効果を十分に発揮するために、円偏光に近い楕円偏光であることが好ましい。
このような円偏光又は楕円偏光レーザー光は、例えばフェムト秒レーザー光を公知の適当な移相子に通すことによって得られる。
【0060】
円偏光又は楕円偏光レーザー光51,52の焦点56,57を改質部53,54となる領域に走査することによって、例えば、径が数μm〜数十μmとした改質部53,54を形成できる。また、焦点56,57を結ぶ位置を制御することにより、所望の形状を有する改質部53,54を形成できる。
【0061】
貫通配線基板10における第一の微細孔4となる改質部53と同様に、貫通配線基板210における第一の微細孔204となる改質部を形成することができる。
貫通配線基板210における貫通配線207,208の変曲部となる改質部を、円偏光又は楕円偏光レーザー光の照射を用いて形成することによって、該変曲部となる改質部において、エッチングされやすいエリアとエッチングされにくいエリアとが縞状に形成されることを抑制し、該変曲部の形状に沿った改質部をスムーズに形成することができる。このため、該変曲部となる改質部と、それ以外の直線部となる改質部とのエッチングされ易さを同程度にすることができる。その結果、精度の高い形状で、該変曲部を有する前記微細構造を形成することができる。
【0062】
貫通配線基板10における微細孔となる改質部と同様に、貫通配線基板310における第一の微細孔304及び第二の微細孔305となる改質部を形成することができる。
また、第一の微細孔304となる改質部を形成するとき、円偏光又は楕円偏光レーザー光を基板301の主面302側からのみ照射する方法を用いることもできる。つまり、以下の方法を用いることができる。
【0063】
図10は、図3(B)と同じ断面を示しており、各領域α〜γの延伸方向に沿った実線矢印は、レーザー光の焦点の走査方向を示す。
図10に示すように、第一の微細孔304となる改質部の領域α及びγを形成するときは、レーザー光の光軸Eの向きE9及びE7を該レーザー光の焦点の走査方向に対して平行に維持する。一方、第一の微細孔304となる改質部の領域βを形成するときは、レーザー光の光軸Eの向きE8を該レーザー光の焦点の走査方向に対して垂直に維持する。
【0064】
このようにレーザー光の光軸Eの向きE7〜9を調整することによって、基板301の主面302側からのみレーザー照射して、貫通配線基板310の微細孔となる改質部を形成することができる。
なお、前記レーザー光の光軸Eの向きE7〜9のなす角θとなす角φとの組み合わせは、E7及びE9では(θ,φ)=(0°,0°)であり、E8では(θ,φ)=(0°,20°)である。
【0065】
このようにレーザー光の光軸Eの向きE7〜9を調整した場合、該レーザー光の焦点の走査方向に対する該レーザー光の光軸の向きは各領域α〜γにおいて異なっているため、前記領域α及びγの改質の程度と前記領域βの改質の程度とは異なる。つまり、前記領域α及びγのエッチング速度と前記領域βのエッチング速度とは異なる。
しかし、前記領域βだけを考慮すればそのエッチング速度はほぼ均一であり、前記領域α及びγだけを考慮すればそのエッチング速度も前記領域βとは独立してほぼ均一である。このため、第一の微細孔304となる改質部のエッチング速度を予め見積もることは容易であり、エッチングの程度を精度良く制御して第一の微細孔304を形成することができる。
【0066】
したがって本発明の微細構造の形成方法における前記工程Aでは、前記改質部を形成する全領域のうち少なくとも一部の領域において、前記レーザー光の焦点の走査方向に対する該レーザー光の光軸の向きを一定に維持しつつレーザー照射することが好ましく、前記改質部を形成する全領域のうち少なくとも半分以上の領域において、前記レーザー光の焦点の走査方向に対する該レーザー光の光軸の向きを一定に維持しつつレーザー照射することがより好ましく、前記改質部を形成する全領域のうち全ての領域において、前記レーザー光の焦点の走査方向に対する該レーザー光の光軸の向きを一定に維持しつつレーザー照射することがさらに好ましい。
【0067】
以下に説明する工程B及びCは、貫通配線基板210,310を製造する場合にも適用可能である。
【0068】
[工程B]
図11に示すように、第一の改質部53及び第二の改質部54を形成した基板1をエッチング液(薬液)59に浸漬して、ウェットエッチングすることによって、各改質部53,54を基板1から除去する。その結果、第一の改質部53及び第二の改質部54が存在した領域に、第一の微細孔4及び第二の微細孔5が形成される(図11)。本実施形態では基板1の材料としてガラスを用い、エッチング液59としてフッ酸(HF)の10質量%溶液を主成分とする溶液を用いた。
【0069】
このエッチングは、基板1の改質されていない部分に比べて、第一の改質部53及び第二の改質部54が非常に速くエッチングされる現象を利用するものであり、結果として各改質部53,54の形状に応じた各微細孔4,5を形成することができる(図12)。
【0070】
前記エッチング液59は特に限定されず、例えばフッ酸(HF)を主成分とする溶液、フッ酸に硝酸等を適量添加したフッ硝酸系の混酸等を用いることができる。また、基板1の材料に応じて、他の薬液を用いることもできる。
【0071】
[工程C]
第一の微細孔4及び第二の微細孔5が形成された基板1において、各微細孔4,5に導電性物質6を充填又は成膜して、第一の貫通配線7及び第二の貫通配線8を形成する。該導電性物質6としては、例えば金錫(Au−Sn)、銅(Cu)等が挙げられる。該導電性物質6の充填又は成膜方法としては、溶融金属吸引法、超臨界成膜法など、適宜用いることができる。
【0072】
以上の工程A〜Cにより、図1に示した貫通配線基板10が得られる。
さらに所望に応じて、各貫通配線7,8の開口部9,13,14,17上にランド部を形成してもよい。ランド部の形成方法は、めっき法、スパッタ法など、適宜用いることができる。
【0073】
<表面配線基板30を製造する方法>
次に、本発明の配線基板における微細孔及び微細溝の形成方法の他の一例として、表面配線基板30を製造する方法を、図11〜13を参照して説明する。
ここで、図13〜15は、表面配線基板30を製造する基板31の平面図および断面図である。当該図中、(A)は基板31の平面図であり、(B)及び(C)はそれぞれ該平面図のx−x線及びy−y線に沿う基板31の断面図である。
【0074】
[工程A]
まず、図13に示すように、基板31に第一のレーザー光71及び第二のレーザー光72を照射して、基板31の一方の主面32の表面近傍に基板31の材料が改質されてなる第一の改質部73を形成する。第一の改質部73は、第一の表面配線37が設けられる領域に形成される。第一のレーザー光71及び第二のレーザー光72の偏光は、円偏光又は楕円偏光である。
【0075】
基板31の材料としては、例えばガラス、サファイア等の絶縁体や、シリコン(Si)等の半導体が挙げられる。これらの材料であれば、半導体デバイスとの線膨張係数差が小さいため、前記貫通配線基板又は前記表面配線基板と半導体デバイスとを、半田等を用いて接続する際に、位置ズレが生じず、精度の高い接続が可能となる。さらに、これらの材料のなかでも、絶縁性のガラスが好ましい。基板材料がガラスであると、微細孔の内壁面に絶縁層を形成する必要がなく、浮遊容量成分の存在等による高速伝送の阻害要因がない、等の利点がある。
基板31の厚さは適宜設定することができ、例えば約150μm〜1mmの範囲に設定すればよい。
【0076】
第一のレーザー光71及び第二のレーザー光72は、基板31の一方の主面32側から照射され、基板31の表面近傍の所望の位置で第一の焦点74及び第二の焦点75を結んでいる。各焦点74,75を結んだ位置で、基板31の材料が改質される。
したがって、各レーザー光71,72を照射しながら、各焦点74,75の位置を順次ずらして走査(移動)して、第一の微細溝34が設けられる領域の全部に対して、各焦点74,75を結ぶことによって、第一の改質部73を形成することができる。
【0077】
各レーザー光71,72は、基板31の一方の主面32及び/又は他方の主面33側から照射してもよいし、基板31の側面から照射してもよい。前記両主面32,33側のみからレーザー光を照射する方が容易であるため好ましい。各レーザー光71,72の光軸Eが基板31に入射する角度は所定の角度に設定される。各レーザー光71,72は単一のレーザー光を用いて順に照射してもよいし、複数のレーザー光を用いて同時に照射してもよい。
【0078】
また、各レーザー光71,72の各焦点74,75を走査する方向としては、例えば図13に示した第一の改質部73に沿った実線の矢印のように、領域ζ,領域ηの順に走査する一筆書きの方向が挙げられる。すなわち、前記矢印は、第一のレーザー光71が第一の改質部73の一端部38となる部位から屈曲部39となる部位まで、第二のレーザー光72が第一の改質部73の屈曲部となる部位から他端部40となる部位まで、各焦点74,75を走査することを表す。このとき、前記矢印の向きで一筆書きの走査を行うことが、製造効率上好ましい。
【0079】
レーザー光の光軸Eが、焦点の走査方向(改質部の延伸方向)に対してなす角度は、図7に示すように、角度θと角度φとで規定できる。つまり、図7のxyzの3軸直交座標系において、x軸の正方向を焦点の走査方向とした場合、当該レーザー光の光軸E(矢印Eで示す)は、該x軸の正方向に対してなす角度θと、z軸の正方向に対してなす角φとで規定される。なお、図7において、矢印eは光軸E(レーザー光の照射方向)のx-y平面への投影を示す。
【0080】
図13(B)において、第一のレーザー光71の光軸Eの向きは、第一の焦点74の走査方向(第一の改質部73の領域ζの延伸方向)に対して垂直であり、前記なす角θ及びφは0°である。
同様に、図13(C)において、第二のレーザー光72の光軸Eの向きは、第二の焦点75の走査方向(第一の改質部73の領域ηの延伸方向)に対して垂直であり、前記なす角θ及びφは0°である。
【0081】
第一の改質部73を形成するとき、各レーザー光71,72の光軸Eの向きは、各焦点74,75の走査方向に対して一定の方向に維持しつつ、領域ζ及びηをレーザー照射することが好ましい。
ここで、「レーザー光の光軸の向きを焦点の走査方向に対して一定の方向に維持する」とは、光軸Eの向きと焦点の走査方向との相対的な位置関係を一定に保つことを意味し、前記なす角θ及びφをそれぞれ任意の特定角度に固定することを意味する。
【0082】
図13(B),(C)における破線矢印Eで示すように、第一の改質部73を形成する際、各レーザー光71,72の光軸Eの向きを、各焦点74,75の走査方向に対して垂直に維持しつつ、領域ζ及び領域ηの順に照射した場合、各レーザー光71,72を基板31の一方の主面32に対して垂直に照射する。
【0083】
このようにレーザー光の光軸の向きを焦点の走査方向に対して一定の方向(例えば、垂直)に維持しつつレーザー照射することによって、形成された第一の改質部73では、領域ζ及びηにおいて、エッチングされやすいエリアとエッチングされにくいエリアとが縞状に形成されることを抑制することができ、且つ、改質の状態を均一にすることができる。この結果、後段のエッチング工程において、領域ζ及びηのエッチング速度を均一にすることができる。
【0084】
また、第一のレーザー光71の前記なす角θ及びφと、第二のレーザー光72の前記なす角θ及びφとを同一にすることによって、第一の改質部73において、領域ζの改質の状態と領域ηの改質の状態とを均一にすることができる。この結果、後段のエッチング工程において、領域ζのエッチング速度と領域ηのエッチング速度とを同程度にすることができ、第一の微細溝34を精度の良い形状で形成することができる。
【0085】
各レーザー光71,72の前記なす角θ及びφは0°に限定されず、なす角θとなす角φとはそれぞれ独立に任意の角度に設定することができる。
例えば、なす角θとなす角φとの組合わせ(θ,φ)を(0°,90°)とした場合、当該レーザー光の光軸Eの向きは、当該焦点の走査方向(改質部の延伸方向)に対して平行である。
【0086】
図13(B),(C)における破線矢印Fで示すように、第一の改質部73を形成する際、各レーザー光71,72の光軸Fの向きを、各焦点74,75の走査方向に対して平行に維持しつつ、領域ζ及び領域ηの順に照射した場合、各レーザー光71,72を基板31の側面に対して垂直に照射する。
【0087】
このようにレーザー光の光軸の向きを焦点の走査方向に対して平行に維持しつつレーザー照射することによって、形成された第一の改質部73では、領域ζ及びηにおいて、エッチングされやすいエリアとエッチングされにくいエリアとが縞状に形成されることを抑制し、両エリアが不定形で混在したパターンを前記走査方向に沿わせて形成することができる。
また、前記領域α〜γの改質部における改質の状態を均一にすることができるので、後段のエッチング工程において、前記領域α〜γのエッチング速度を均一にすることができる。
【0088】
本発明の微細構造の形成方法では、レーザー光の光軸の向きを、焦点の走査方向に対して一定の方向に維持しつつレーザー照射しても良いし、一定の方向に維持せずにレーザー照射しても良い。
当該改質部となる全領域を走査する際に、レーザー光の光軸の向きを焦点の走査方向に対して一定の方向に維持してレーザー照射した場合は、前述のように、当該改質部の全領域に渡って改質の状態を均一にすることができる。
【0089】
一方、前記光軸の向きを一定の方向に維持せずにレーザー照射した場合でも、当該改質部の全領域に渡って、改質の状態は極端には変わらず、均一とは言えないまでも、概ね同じ状態であり、後段のエッチング工程におけるエッチング速度に極端に大きなバラつきは生じない。
【0090】
本発明の微細構造の形成方法で用いられるレーザー光の偏光は、円偏光又は楕円偏光である。円偏光は右円偏光であっても左円偏光であってもよく、楕円偏光は右楕円偏光であても左楕円偏光であってもよい。楕円偏光は、本発明の効果を十分に発揮するために、円偏光に近い楕円偏光であることが好ましい。
このような円偏光又は楕円偏光レーザー光は、例えばフェムト秒レーザー光を公知の適当な偏光子に通すことによって得られる。
【0091】
円偏光又は楕円偏光レーザー光71,72の焦点74,75を改質部73となる領域に走査することによって、例えば、径が数μm〜数十μmとした改質部73を形成できる。また、焦点74,75を結ぶ位置を制御することにより、所望の形状を有する改質部73を形成できる。
【0092】
表面配線基板30における第一の微細溝34となる改質部73と同様に、表面配線基板230における第一の微細孔234となる改質部を同様に形成することができる。
表面配線基板230における表面配線237の変曲部239となる改質部を、円偏光又は楕円偏光レーザー光の照射を用いて形成することによって、該変曲部となる改質部において、エッチングされやすいエリアとエッチングされにくいエリアとが縞状に形成されることを抑制し、該変曲部の形状に沿った改質部をスムーズに形成することができる。このため、該変曲部となる改質部と、それ以外の直線部となる改質部とのエッチングされ易さを同程度にすることができる。その結果、精度の高い形状で、該変曲部を有する前記微細構造を形成することができる。
以下に説明する工程B及びCは、表面配線基板230を製造する場合にも適用可能である。
【0093】
[工程B]
図14に示すように、第一の改質部73を形成した基板31をエッチング液(薬液)77に浸漬して、ウェットエッチングすることによって、第一の改質部73を基板31から除去する。その結果、第一の改質部73が存在した領域に、第一の微細溝34が形成される(図14)。本実施形態では基板31の材料としてガラスを用い、エッチング液77としてフッ酸(HF)の10%溶液を主成分とする溶液を用いた。
【0094】
このエッチングは、基板31の改質されていない部分に比べて、第一の改質部73が非常に速くエッチングされる現象を利用するものであり、結果として第一の改質部73の形状に応じた第一の微細溝34を形成することができる(図15)。
【0095】
前記エッチング液77は特に限定されず、例えばフッ酸(HF)を主成分とする溶液、フッ酸に硝酸等を適量添加したフッ硝酸系の混酸等を用いることができる。また、基板31の材料に応じて、他の薬液を用いることもできる。
【0096】
[工程C]
第一の微細溝34が形成された基板31において、第一の微細溝34に導電性物質36を充填又は成膜して、第一の表面配線37を形成する。該導電性物質36としては、例えば金錫(Au−Sn)、銅(Cu)等が挙げられる。
導電性物質36の充填又は成膜方法としては、まずスパッタ法によって基板31の上面全体に導電性物質36からなる膜を形成して、当該微細溝34内に導電性物質36を充填又は成膜し、次に当該微細溝34の上にレジスト膜を形成してマスキングを行った後、基板31の上面をドライエッチングして非マスキング領域の導電性物質36からなる膜を除き、最後に前記マスキングのレジストを除去する方法が例示できる。
【0097】
以上の工程A〜Cにより、図4に示した表面配線基板30が得られる。
さらに所望に応じて、表面配線34の所定位置(例えば一端部38、他端部40)上にランド部を形成してもよい。ランド部の形成方法は、めっき法、スパッタ法など、適宜用いることができる。
【0098】
<レーザー照射装置>
次に、本発明の配線基板における微細構造の形成方法に使用することのできるレーザー照射装置の一例として、レーザー照射装置80を説明する(図16)。
レーザー照射装置80は、レーザー光源81、シャッター82、偏光子83、ハーフミラー84、対物レンズ85、基板ステージ86、CCDカメラ87、制御用コンピュータ88、及び基板ステージ制御軸93を少なくとも備えている。
【0099】
レーザー照射装置80は、基板91において孔状又は溝状をなす微細構造を設ける領域に、パルス時間幅がピコ秒オーダー以下のパルス幅を有する円偏光又は楕円偏光レーザー光89を照射し、該レーザー光89を集光した焦点を走査して改質部92を形成する際、該レーザー光89の光軸を、前記焦点を走査する方向に対して一定の方向に維持しつつレーザー照射する手段を備えている。
【0100】
図16では、基板ステージ86上に置かれた基板91へレーザー光89が照射されて、改質部92が形成されている。改質部92に沿った矢印の方向がレーザー光89の焦点の走査方向である。レーザー光89の光軸の向き(破線矢印E)は、前記走査方向に対して垂直である。
【0101】
レーザー照射装置80は、パルス時間幅がピコ秒オーダー以下のパルス幅を有するレーザー光89を照射できる公知のものを使用できる。
【0102】
偏光子83は、制御用コンピュータ88によって制御され、照射するレーザー光89の偏光を右円偏光、左円偏光、右楕円偏光、及び左楕円偏光のうち所望の偏光に調整できる。
【0103】
前記手段の一つである基板ステージ86は、該基板ステージ86の下部に接続された基板ステージ制御軸93によって、該基板ステージ86上に固定された基板91の向き、角度、及び移動を任意に調整できる。したがって、該基板ステージ86は、前記焦点の走査方向の変更に応じて、該変更後の走査方向に対するレーザー光83の光軸Eの向きを、一定の方向に合わせるように機能する。
【0104】
基板ステージ制御軸93を備えた基板ステージ86は、前記焦点の走査方向の変更に同期して、基板91の向き、角度、及び移動を任意に調整できる。例えば、レーザー光83の焦点の走査方向を基板91の主面に対して平行な方向から基板91の主面に対して垂直方向(基板91の厚み方向)へ変更する際、レーザー光89の光軸Eの向きは移動せず、基板ステージ86を90°傾けて、レーザー光89が基板91の側面から入射されるように傾斜させる。この方法によって、該変更後においても、レーザー光89の光軸Eの向きを、前記焦点の走査方向に対して一定に維持できる。
また、上記方法に代えて、基板ステージ86を固定しておき、レーザー光89の光路を切り換えて、基板91の側面からレーザー光89を入射させる方法によって、該変更後においても、レーザー光89の光軸Eの向きを、前記焦点の走査方向に対して一定に維持できる。
【0105】
レーザー照射装置80を用いた本発明にかかる配線基板の製造方法の一例を、図17のフローチャート図を参照して、以下に説明する。
まず、基板ステージ86に基板91を固定し、レーザー光89の偏光の種類を偏光子83で調整して、レーザー光89の走査方向や走査領域等の情報を、一連のプロセスを規定するプログラムとして作成する。プロセスを開始すると、前記円偏光又は楕円偏光のレーザー光89の光軸Eの向きが、レーザー光89の焦点の走査方向に対して一定の方向に維持されるように、基板ステージ86の位置や傾斜角度が調整される。その後、シャッター82がOPENし、基板91に対して透明な波長のレーザー光89が基板91の所定位置に所定量だけ照射される。
【0106】
通常は、バンドギャップによって基板91の材料の電子は励起されないため、レーザー光89は基板91を透過する。しかし、レーザー光89の光子数が非常に多くなると、多光子吸収が起こって電子が励起され、改質部が形成される。
【0107】
予めプログラムされた所定のレーザー照射が終了するとシャッター82が閉められる。引き続いてレーザー光89の焦点の走査方向を変えてレーザー描画を継続する場合は、再び基板ステージ86の位置や傾斜角度が調整されて、プロセスが繰り返される。描画を終了する場合は、レーザー照射を終了して、プロセスが完了する。
【0108】
上記の方法では、基板ステージ86を調整することによって、レーザー光89の焦点の走査方向に対する、レーザー光89の光軸Eの相対的な向きを制御した。
別の方法として、前述のように、基板ステージ86の調整は行わずに、別途設けたミラーや対物レンズ(不図示)を用いて、レーザー光89の光路を制御して、所望の入射角でレーザー光89を基板91に照射することによって、レーザー光89の焦点の走査方向に対する、レーザー光89の光軸Eの相対的な向きを所望に制御することができる。
また、基板ステージ86の調整及びレーザー光89の光路の制御の両方を併用して、レーザー光89の焦点の走査方向に対する、レーザー光89の光軸Eの相対的な向きを所望に制御してもよい。
【0109】
<レーザー走査方向に対する直線偏光の向きとエッチング速度との関係>
本発明者らは、従来の微細構造の形成方法では、形成された改質部の基板における位置に依存して、該改質部のエッチング速度が大きくバラツク問題を検討したところ、レーザー光の偏光が直線偏光であることが問題の主因であることを見出した。
すなわち、改質部形成工程(工程A)におけるレーザー光の焦点の走査方向に対するレーザー光の直線偏向の向き(偏波の方向)が、後段のエッチング工程(工程B)におけるウェットエッチング速度に大きく影響することを見出した。
さらなる鋭意研究の結果、レーザーの偏光を円偏光又は楕円偏光とする本発明を完成するに至った。以下に、図面を参照して、直線偏光レーザを用いた場合の問題を説明する。
【0110】
図18,19は、基板111の平面図および断面図である。当該図中、(A)は基板111の平面図であり、(B)、(C)、及び(D)はそれぞれ該平面図のx−x線、y1−y1線、及びy2−y2線に沿う基板111の断面図である。
【0111】
前記改質部形成工程(工程A)において、2本の微細孔となる改質部を、照射レーザーの直線偏光の向きを相違させて形成した(図18)。
なお、基板111はガラス製のものを用い、レーザー光源としてフェムト秒レーザー(直線偏光レーザー)を使用した。
【0112】
まず、基板111において、第一の改質部114を設ける領域に、第一のレーザー光181の焦点185を結びながら走査した。焦点185の走査方向は基板111の縦方向(Y方向)であり、第一の改質部114に沿った矢印で示すように一筆書きで行った。このとき、第一のレーザー光181の直線偏光の向きPをY方向とし、焦点185の走査方向に対して平行に維持して第一の改質部114を形成した。
【0113】
さらに、第二の改質部115を設ける領域に、第二のレーザー光182の焦点186を結びながら走査した。焦点186の走査方向は基板111の縦方向(Y方向)であり、第二の改質部115に沿った矢印で示すように一筆書きで行った。このとき、第二のレーザー光182の直線偏光の向きQを基板111の横方向(X方向)とし、焦点186の走査方向に対して垂直に維持して第二の改質部115を形成した。
なお、図18の(D)に示した第二のレーザー光182の近傍に描いた丸印は、直線偏光の向きQが紙面手前及び奥行き方向であることを表す。
【0114】
つぎに、HF溶液(10質量%)に基板111を浸漬して、所定時間のウェットエッチングを行って、第一の改質部114及び第二の改質部115を基板111から除き、非貫通孔(ビア)である第一の微細孔116及び第二の微細孔117を形成した(図19)。
形成した各微細孔の深さを測定したところ、第一の微細孔116の深さは、第二の微細孔117の深さの約1/2であった。すなわち、第一の微細孔116エッチング速度/第二の微細孔117のエッチング速度は約1/2であった。
【0115】
図19の(C)及び(D)に示した、第一の微細孔116のエッチングされた領域F1、及び第二の微細孔117のエッチングされた領域F2の内壁面を、レーザー光の照射方向である基板111の上面から(矢印V1及び矢印V2の方向から)観察したところ、各々異なる方向の縞状の凹凸プロファイル(筋痕)が形成されていた。
【0116】
第一の微細孔116の縞状の凹凸プロファイルH01が伸びる向きは、第一の微細孔116の延伸方向に対して垂直であり、第一のレーザー光181の直線偏光の向きPに対して垂直であった(図20(A))。
第二の微細孔117の縞状の凹凸プロファイルH02が伸びる向きは、第二の微細孔117の延伸方向に対して平行であり、第二のレーザー光182の直線偏光の向きQに対して垂直であった(図20(B))。
なお、図20で示す凹凸プロファイルの本数は特定の本数に限定されるものではない。該本数は使用するレーザー光の使用条件や直線偏光の程度を制御することによって変更されうる。
【0117】
これらの結果から、エッチング前の基板111に形成された第一の改質部114を、基板111の上面から第一のレーザー光181の照射方向へ見ると、エッチングされやすい(エッチング速度が速い)エリアS1とエッチングされにくい(エッチング速度が遅い)エリアH1とが交互に、第一のレーザー光181の走査方向(Y方向)に対して垂直に、且つ第一のレーザー光181の直線偏光の向きP(Y方向)に対して垂直に、形成されていることがわかった(図21)。
【0118】
また、第二の改質部115を基板111の上面から第二のレーザー光182の照射方向へ見ると、エッチングされやすい(エッチング速度が速い)エリアS2とエッチングされにくい(エッチング速度が遅い)エリアH2とが交互に、第二のレーザー光182の走査方向(Y方向)に対して平行に、且つ第二のレーザー光182の直線偏光の向きQ(X方向)に対して垂直に、形成されていることがわかった(図21)。
なお、図21で示す各エリアの本数は特定の本数に限定されるものではない。該本数は使用するレーザー光の使用条件や直線偏光の程度を制御することによって変更されうる。
【0119】
以上から、次のように理解された。
第一の改質部114において、基板111内部へエッチング液が進行していくとき、複数のエッチングされにくいエリアH1に阻まれる。一方、第二の改質部115においては、基板111内部へエッチング液が進行していくとき、先にエッチングされやすいエリアS2が除かれて、第二の改質部115の奥深くまでエッチング液が到達し、その後エッチングされにくい複数のエリアH2が、既に除かれたエリアS2のあった領域に置き換わったエッチング液によって、同時並行でエッチングされる。
このため、第一の改質部114のエッチング速度は、第二の改質部115のエッチング速度よりも遅くなり、第二の改質部113のエッチング速度は、第一の改質部112のエッチング速度よりも速くなる。
【0120】
次に、図22に示す別の基板101に配された、より複雑な形状の第一の改質部104および第二の改質部105においても、前述の理解が当てはまることを以下に説明する。
図22,25は、基板101の平面図および断面図である。当該図中、(A)は基板101の平面図であり、(B)及び(C)はそれぞれ該平面図のy1−y1線及びy2−y2線に沿う基板101の断面図である。
図23は、基板101の平面図である。当該図中、(A)は基板101の平面図であり、(B)及び(C)はそれぞれ第一の改質部104及び第二の改質部105の拡大図である。
図24は、図23の平面図(A)におけるy1−y1線及びy2−y2線に沿う断面図である。当該図中、(A)は基板101の平面図におけるy1−y1線に沿う断面図であり、(C)は該断面図の拡大図であり、(B)は基板101の平面図におけるy2−y2線に沿う断面図であり、(D)は該断面図の拡大図である。
【0121】
まず、基板101において、第一の改質部104となる領域に、第一のレーザー光181の焦点185を結びつつ基板101の上面から照射した。焦点185の走査の向きは基板101の縦方向(Y方向)及び基板厚み方向であり、第一の改質部104に沿った矢印で示すように、領域γ、領域β、領域αの順に一筆書きで行った。このとき、領域γ及び領域αでは、第一のレーザー光181の直線偏光の向きPを、焦点185の走査方向(基板101の厚み方向)に対して垂直に維持して改質部104を形成した。一方、領域βでは、第一のレーザー光181の直線偏光の向きPを、焦点185の走査方向(Y方向)に対して平行に維持して第一の改質部104を形成した(図22)。
【0122】
この結果、第一の改質部104の領域α及び領域γでは、エッチングされやすいエリアS1とエッチングされにくいエリアH1とが並走して、第一の改質部104の延伸方向(基板厚み方向)に沿って平行に形成された。一方、第一の改質部104の領域βでは、エッチングされやすいエリアS1とエッチングされにくいエリアH1とが、互い違いに、第一の改質部104の延伸方向(Y方向)に対して垂直に形成された(図23,24)。
なお、図24で示す各エリアの本数は特定の本数に限定されるものではない。該本数は使用するレーザー光の使用条件や直線偏光の程度を制御することによって変更されうる。
【0123】
さらに、基板101において、第二の改質部105となる領域に、第二のレーザー光182の焦点186を結びつつ基板101の上面から照射した。焦点186の走査方向は基板101の縦方向(Y方向)及び基板厚み方向であり、第二の改質部105に沿った矢印で示すように、領域γ、領域β、領域αの順に一筆書きでいった。このとき、領域α〜γでは一貫して、第二のレーザー光182の直線偏光の向きQを、焦点186の走査方向(Y方向又は基板厚み方向)に対して垂直に維持して第二の改質部105を形成した(図22)。
なお、図22(C)に示した第二のレーザー光182の近傍に描いた丸印は、直線偏光の向きQが紙面手前及び奥行き方向であることを表す。
【0124】
この結果、第二の改質部105の領域α、領域β、及び領域γでは一貫して、エッチングされやすいエリアS2とエッチングされにくいエリアH2とが並走し、第二の改質部105の延伸方向(Y方向又は基板厚み方向)に沿って平行に形成された(図23,24)。
【0125】
なお、第一の改質部104及び第二の改質部105の形状は同一であり、領域αの長さは50μm、領域βの長さは200μm、領域γの長さは50μm、とした。
また、基板101はガラス製のものを用い、レーザー光源としてフェムト秒レーザー(直線偏光レーザー)を使用した。
【0126】
つぎに、HF溶液(10質量%)に基板101を浸漬してウェットエッチングを行い、第一の改質部104及び第二の改質部105を基板101から除いて貫通させ、第一の微細孔106及び第二の微細孔107を形成した(図25)。このとき、第一の改質部104及び第二の改質部105がウェットエッチングにより除かれて貫通する時間(エッチング速度)をそれぞれ測定したところ、第一の改質部104のエッチング速度/第二の改質部105のエッチング速度は約3/5であった。これは、領域α及び領域γのエッチング速度は、どちらの改質部において同じであるが、領域βのエッチング速度は、第一の改質部104の方が第二の改質部105よりも約2倍速いためである。
【0127】
以上から、微細孔及び微細溝等の微細構造が設けられる領域に改質部を形成する場合、照射するレーザー光が直線偏光であると、当該微細構造の延伸する方向に対する該直線偏光の向きに依存して、エッチング速度の異なる改質部が混在して形成されてしまうことが明らかである。
基板に形成する微細構造を任意の形状にする際、その微細構造を設ける形状に合わせて形成する改質部の延伸方向を様々に変更する必要がある。このとき、該改質部の延伸方向と、照射するレーザー光の直線偏光の向きと、の相対的な関係が様々に変更されることになるので、以上で示したように、エッチング速度が2倍以上も異なるような改質部が当該基板内に混在して形成されてしまう。
一方、本発明では円偏光又は楕円偏光レーザーを用いているので、エッチングされやすいエリアとエッチングされにくいエリアとが、改質部の延伸方向に見て縞状に形成されることを防ぐことができ、当該基板内に形成した改質部のエッチング速度が極端に異なってバラつくことを抑制できることは明らかである。
【産業上の利用可能性】
【0128】
本発明の微細構造の形成方法及び該方法で使用されるレーザー照射装置は、ICや電子部品に用いられる配線基板の製造に好適に利用することができる。
【符号の説明】
【0129】
1…基板、2…一方の主面、3…他方の主面、4…第一の微細孔、5…第二の微細孔、6…導電性物質、7…第一の貫通配線、8…第二の貫通配線、9…開口部、10…貫通配線基板、11…屈曲部、12…屈曲部、13…開口部、14…開口部、15…屈曲部、16…屈曲部、17…開口部、30…貫通配線基板、31…基板、32…一方の主面、33…他方の主面、34…第一の微細溝、36…導電性物質、37…第一の表面配線、38…一端部、39…屈曲部、40…他端部、51…第一のレーザー光、52…第二のレーザー光、53…第一の改質部、53s…エッチングされやすいエリア、53h…エッチングされにくいエリア、54…第二の改質部、56…焦点、57…焦点、59…エッチング液、61…第一の微細孔、62…第二の微細孔、71…第一のレーザー光、72…第二のレーザー光、73…第一の改質部、73s…エッチングされやすいエリア、73h…エッチングされにくいエリア、74…焦点、75…焦点、77…エッチング液、80…レーザー照射装置、81…レーザー光源、82…シャッター、83…移相子、84…ハーフミラー、85…対物レンズ、86…基板ステージ、87…CCDカメラ、88…コンピュータ、89…レーザー光、91…基板、92…改質部、93…基板ステージ制御軸、P…第一のレーザー光の直線偏光の向き、Q…第二のレーザー光の直線偏光の向き、R…レーザー光の直線偏光の向き、101…基板、102…第一の改質部、103…第二の改質部、105…第二の改質部、106…第一の微細孔、107…第二の微細孔、111…基板、114…第一の改質部、115…第二の改質部、116…第一の微細孔、117…第二の微細孔、181…第一のレーザー光、182…第二のレーザ光、185…焦点、186…焦点、S1…エッチングされやすいエリア、H1…エッチングされにくいエリア、201…基板、202…一方の主面、203…他方の主面、204…第一の微細孔、205…第二の微細孔、206…導電性物質、207…第一の貫通配線、208…第二の貫通配線、209…開口部、210…貫通配線基板、211…変曲部、212…変曲部、213…開口部、214…開口部、215…変曲部、216…変曲部、217…開口部、230…貫通配線基板、231…基板、232…一方の主面、233…他方の主面、234…第一の微細溝、236…導電性物質、237…第一の表面配線、238…一端部、239…変曲部、240…他端部、301…基板、302…一方の主面、303…他方の主面、304…第一の微細孔、305…第二の微細孔、306…導電性物質、307…第一の貫通配線、308…第二の貫通配線、309…開口部、310…貫通配線基板、311…屈曲部、312…屈曲部、313…開口部、314…開口部、315…屈曲部、316…屈曲部、317…開口部、g1…第三の微細孔、G1…流路、H01…縞状の凹凸プロファイル、H02…縞状の凹凸プロファイル。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
基板において孔状又は溝状をなす微細構造を設ける領域に、パルス時間幅がピコ秒オーダー以下のパルス幅を有するレーザー光を照射し、該レーザー光が集光した焦点を走査して改質部を形成する工程Aと、
前記改質部が形成された前記基板に対してエッチング処理を行い、該改質部を除去して微細構造を形成する工程Bと、を含む微細構造の形成方法であって、
前記工程Aにおいて、前記レーザー光として円偏光レーザー光を用いることを特徴とする微細構造の形成方法。
【請求項2】
前記工程Aにおいて、前記レーザー光の光軸の向きを、前記焦点を走査する方向に対して一定の方向に維持しつつレーザー照射することを特徴とする請求項1に記載の微細構造の形成方法。
【請求項3】
前記一定の方向を垂直とすることを特徴とする請求項2に記載の微細構造の形成方法。
【請求項4】
前記工程Aにおいて、前記基板の主面側のみからレーザー照射することを特徴とする請求項1〜3のいずれか一項に記載の微細構造の形成方法。
【請求項5】
前記微細構造において変曲部を形成することを特徴とする請求項1〜4のいずれか一項に記載の微細構造の形成方法。
【請求項6】
基板において孔状又は溝状をなす微細構造を設ける領域に、パルス時間幅がピコ秒オーダー以下のパルス幅を有する円偏光又は楕円偏光レーザー光を照射し、該レーザー光を集光した焦点を走査して改質部を形成する際、該レーザー光の光軸の向きを、前記焦点を走査する方向に対して一定の方向に維持しつつレーザー照射する手段を備えたことを特徴とするレーザー照射装置。
【請求項7】
前記手段は基板ステージであり、該基板ステージは、前記焦点の走査方向の変更に応じて、該変更後の走査方向に対する前記レーザー光の光軸の向きを、一定の方向に合わせるように機能することを特徴とする請求項6に記載のレーザー照射装置。
【請求項8】
請求項1〜5に記載の微細構造の形成方法を用いて製造されたことを特徴とする基板。
【請求項9】
前記基板には、さらに流体が流通するための流路が形成されていることを特徴とする請求項8に記載の基板。
【請求項10】
基板において孔状又は溝状をなす微細構造を設ける領域に、パルス時間幅がピコ秒オーダー以下のパルス幅を有するレーザー光を照射し、該レーザー光が集光した焦点を走査して改質部を形成する工程Aと、
前記改質部が形成された前記基板に対してエッチング処理を行い、該改質部を除去して微細構造を形成する工程Bと、を含む微細構造の形成方法であって、
前記工程Aにおいて、前記レーザー光として楕円偏光レーザー光を用いることを特徴とする微細構造の形成方法。
【請求項1】
基板において孔状又は溝状をなす微細構造を設ける領域に、パルス時間幅がピコ秒オーダー以下のパルス幅を有するレーザー光を照射し、該レーザー光が集光した焦点を走査して改質部を形成する工程Aと、
前記改質部が形成された前記基板に対してエッチング処理を行い、該改質部を除去して微細構造を形成する工程Bと、を含む微細構造の形成方法であって、
前記工程Aにおいて、前記レーザー光として円偏光レーザー光を用いることを特徴とする微細構造の形成方法。
【請求項2】
前記工程Aにおいて、前記レーザー光の光軸の向きを、前記焦点を走査する方向に対して一定の方向に維持しつつレーザー照射することを特徴とする請求項1に記載の微細構造の形成方法。
【請求項3】
前記一定の方向を垂直とすることを特徴とする請求項2に記載の微細構造の形成方法。
【請求項4】
前記工程Aにおいて、前記基板の主面側のみからレーザー照射することを特徴とする請求項1〜3のいずれか一項に記載の微細構造の形成方法。
【請求項5】
前記微細構造において変曲部を形成することを特徴とする請求項1〜4のいずれか一項に記載の微細構造の形成方法。
【請求項6】
基板において孔状又は溝状をなす微細構造を設ける領域に、パルス時間幅がピコ秒オーダー以下のパルス幅を有する円偏光又は楕円偏光レーザー光を照射し、該レーザー光を集光した焦点を走査して改質部を形成する際、該レーザー光の光軸の向きを、前記焦点を走査する方向に対して一定の方向に維持しつつレーザー照射する手段を備えたことを特徴とするレーザー照射装置。
【請求項7】
前記手段は基板ステージであり、該基板ステージは、前記焦点の走査方向の変更に応じて、該変更後の走査方向に対する前記レーザー光の光軸の向きを、一定の方向に合わせるように機能することを特徴とする請求項6に記載のレーザー照射装置。
【請求項8】
請求項1〜5に記載の微細構造の形成方法を用いて製造されたことを特徴とする基板。
【請求項9】
前記基板には、さらに流体が流通するための流路が形成されていることを特徴とする請求項8に記載の基板。
【請求項10】
基板において孔状又は溝状をなす微細構造を設ける領域に、パルス時間幅がピコ秒オーダー以下のパルス幅を有するレーザー光を照射し、該レーザー光が集光した焦点を走査して改質部を形成する工程Aと、
前記改質部が形成された前記基板に対してエッチング処理を行い、該改質部を除去して微細構造を形成する工程Bと、を含む微細構造の形成方法であって、
前記工程Aにおいて、前記レーザー光として楕円偏光レーザー光を用いることを特徴とする微細構造の形成方法。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【図18】
【図19】
【図20】
【図21】
【図22】
【図23】
【図24】
【図25】
【図26】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【図18】
【図19】
【図20】
【図21】
【図22】
【図23】
【図24】
【図25】
【図26】
【公開番号】特開2011−222700(P2011−222700A)
【公開日】平成23年11月4日(2011.11.4)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−89510(P2010−89510)
【出願日】平成22年4月8日(2010.4.8)
【出願人】(000005186)株式会社フジクラ (4,463)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成23年11月4日(2011.11.4)
【国際特許分類】
【出願日】平成22年4月8日(2010.4.8)
【出願人】(000005186)株式会社フジクラ (4,463)
【Fターム(参考)】
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