説明

微細構造を有する高屈折率製品

オリゴマー状ウレタンマルチ(メタ)アクリレートと、任意成分としてのアクリル系モノマー、スチレン系モノマー及びエチレン性不飽和窒素複素環化合物からなる群から選択される1種以上の他のモノマー、好ましくはポリオールマルチ(メタ)クリレートと、エチレン性不飽和化合物、好ましくは(メタ)アクリル系官能化チタン又はジルコニウム化合物のナノ粒子とのブレンドを、光開始剤と接触させて紫外線照射によって硬化させれば、高屈折率、5%以下のヘイズ及びその他所望の用途に応じて調整し得る性質をもつ光学樹脂製品を製造することができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、微細構造を有する表面の複製に関し、具体的にはかかる複製の可能な一群の樹脂系組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
樹脂表面の微細構造の複製は、キューブコーナーエンボスシートで反射性を与える交通標識の製造、眼科用フレネルレンズ素子及び可撓性ビデオディスクの製造、及び液晶ディスプレイ用の「輝度向上フィルム」又は「調光フィルム」(単に「LMF」ともいう。)の製造のような幅広い技術分野で重要である。複製には、樹脂が、実質的な透明性、保存及び使用時の形状保持に十分な高いガラス点移温度(Tg)、賦形(典型的にはモールディングによる)に適した粘弾性特性、及び賦形品の微細構造の様子も含めた長期形状保持を始めとする最適な物理的性質をもつことが望ましい。適当な粘弾性特性としては、ガラス及びゴム状態での所定範囲内の弾性率、並びにこれらの状態間の適当な転移温度が挙げられる。LMFはポリカーボネートのような基材に接着し、良好な耐摩耗性及び耐擦過性を有することも望ましい。
【0003】
微細構造の複製に適した多数の樹脂組成物が特許文献に開示されている。かかる多種多様な組成物が包括的に開示された特許として、米国特許第4576850号がある。この特許に記載された組成物は、「ハード」及び「ソフト」セグメント(又は部分)と放射線重合性部分との組合せによって特徴付けられる。大抵は、これらの3種類のセグメントはすべて同一分子内に存在する。「ハード」セグメントの重要な特徴は、そのセグメントに環(炭素環又は複素環)基が存在することである。それ以降の特許では、適当なポリマー組成物及びその前駆体の開示内容について米国特許第4576850号を引用することが多い。
【0004】
最適には、LMFは高い屈折率、好ましくは約1.70以上の屈折率を有する。手頃な価格の樹脂材料だけを使用すると、このような高い屈折率を達成するのはほぼ不可能である。ペンタブロモフェニルメタクリレートのような高度臭素化モノマーのポリマーの屈折率は約1.71であるが、かかるポリマーは不都合な物理的性質を有していることがある。
【0005】
米国特許第6291070号には、二酸化チタンのような無機材料を(メタ)アクリル及びエポキシ化合物から誘導されるもののような重合性又は重縮合性表面基と組合せて製造した幅広い屈折率をもつ透明性の高いナノ構造化成形品が開示されている。(メタ)アクリル酸エステルのような他のモノマー種が存在していてもよい。
【0006】
米国特許第6432526号には、高屈折率の組成物が開示されており、二酸化チタン粒子のような高結晶性金属性粒子を有機溶媒及び分散助剤と組合せてコロイド粒子を形成する。かかる粒子を、アクリレート及びメタクリレートから誘導されるもののような有機ポリマーと組合せれば、上記組成物が形成される。
【0007】
しかし、以上の特許その他の刊行物に開示されていない新たな高屈折率樹脂LMF材料を開発することに関心がもたれている。特に、かかる材料を様々な特性プロフィールのものに容易に仕立てることができる手段を提供するに関心がもたれている。
【特許文献1】米国特許第4576850号明細書
【特許文献2】米国特許第6291070号明細書
【特許文献3】米国特許第6432526号明細書
【特許文献4】米国特許第5900287号明細書
【非特許文献1】Encyclopedia of Polymer Technology
【発明の開示】
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明は、屈折率の高い光学製品に放射線硬化できる有機/無機混成組成物に関する。本組成物は微細構造の複製された物品の製造に使用できる。組成物の成分比を変更すれば、幅広い特性プロフィールを得ることができる。
【0009】
本発明は、その一態様において、光学用の複数の実用的不連続部を含む複製微細構造を有する表面をもつ光学樹脂製品へと放射線硬化できる物品であって、当該物品が、ASTM D1003によってビスフェノールAポリカーボネート基板上の厚さ3.2mmのフラットフィルムで測定して5%以下のヘイズ値を有する硬化製品へと硬化できるものであり、
(A)1種以上のオリゴマー状ウレタンマルチ(メタ)アクリレート、又は該オリゴマー状ウレタンマルチ(メタ)アクリレートと粘度の低下、熱機械的性質の向上又は屈折率の増加に有効な1種以上の他のモノマーとの組合せ、
(B)4価チタン及び4価ジルコニウム化合物からなる群から選択される1種以上のエチレン性不飽和金属化合物のナノ粒子、及び
(C)1種以上の光開始剤
を含んでなる物品に関する。
【0010】
本発明の別の態様は、上述の硬化性物品の放射線硬化によって製造される光学樹脂製品である。
【発明を実施するための最良の形態】
【0011】
本発明の光学樹脂製品は、凹凸のような複数の実用的不連続部を備える複製微細構造を有する表面によって特徴付けられるが、この表面は放射線硬化後にモールドの細部を失うことなくモールドから容易に離型でき、しかもそうした細部の複製を幅広い使用条件下で保持する。本物品は、靱性、可撓性、光学的透明性及び均質性、常用溶剤に対する耐性のような様々な望ましい特性を有する。かかる物品の微細構造は、高い熱的寸法安定性、耐摩耗性及び耐衝撃性を有し、物品を180°のように大きく曲げたときでも構造的健全性を保つ。
【0012】
本明細書で用いる「微細構造」という用語は、米国特許第4576850号に定義・記載されている通りであり、その記載内容は援用によって本明細書の内容の一部をなす。従って、この用語は、微細構造を有する物品の所定の望ましい実用目的又は機能を表現又は特徴付ける表面の構成を意味する。上記物品の表面の凸部や凹部のような不連続部はその輪郭が微細構造に引いた平均中心線から変位しており、中心線よりも上の表面輪郭で囲まれる面積の合計は中心線よりも下の面積の合計に等しく、中心線は物品の(微細構造を有する)公称表面に基本的に平行である。かかる変位の高さは、光学顕微鏡又は電子顕微鏡で測定して、表面の典型的な特性長(例えば1〜30cm)で典型的には約±0.005〜±750μmである。上記の平均中心線は平面、凹面、凸面、非球面又はこれらの組合せのいずれでもよい。上記の変位の程度が小さく(例えば±0.005μm〜±0.1μm、好ましくは±0.05μm以下)、しかも変位の発生頻度が稀もしくは最小限である物品、つまり表面に有意な不連続部が存在しない物品は微細構造保有表面が本質的に「平坦」又は「平滑」な表面である物品であり、かかる物品は精密光学素子又は精密光学界面を有する素子、例えば眼科用レンズとして有用である。上記変位の程度が小さく、その発生頻度が高い物品としては、反射防止微細構造を有するものが挙げられる。変位の程度が大きく(例えば±0.1μm〜±750μm)、その変位が複数の実用的不連続部(これらは同一であっても異なっていてもよく、ランダム又は規則的に離隔又は連続している)からなる微細構造に起因する物品は、再帰反射コーナーキューブシート、線形フレネルレンズ、ビデオディスク及びLMFなどの物品である。微細構造保有表面は上述の変位の小さい又は高いいずれの実用的不連続部を有していてもよい。微細構造保有表面は、その量と種類が物品の所定の望ましい実用性を大きく損なったり、悪影響を及ぼさない限り、余分な又は非実用的な不連続部を有していてもよい。硬化時の収縮でかかる妨害性の余分な不連続部を生じない特定のオリゴマー組成物、つまり収縮率が2〜6%にすぎない組成物を選択することが必要又は望ましいことがある。
【0013】
LMFの構成及び形状の詳細は、例えば米国特許第5900287号に開示されており、その開示内容は援用によって本明細書の内容の一部をなす。図面を参照すると、全体を符号10で示すバックライト液晶ディスプレイはLMF11を備えており、LMF11は典型的にはディフューザー12と液晶ディスプレイパネル14の間に配置される。バックライト液晶ディスプレイ10は、蛍光ランプのような光源16、光を伝送し液晶ディスプレイパネル14に向けて反射する導光板18、同じく光を液晶ディスプレイパネル14に向けて反射するホワイトリフレクタ20も備えている。LMF11は導光板18から出た光を平行にして液晶ディスプレイパネル14の輝度を高め、液晶ディスプレイパネルの画像を鮮明にし、また所定の輝度を生成するための光源16の電力を低減する。バックライト液晶ディスプレイにおけるLMF11は、コンピュータ、パーソナルテレビ、ビデオレコーダ、移動通信機器、自動車及び航空機計器ディスプレイなどの機器に有用である。
【0014】
本発明の物品の成分Aは、1種以上のオリゴマー状ウレタンマルチ(メタ)アクリレートである。「(メタ)アクリレート」という用語はアクリル酸及びメタクリル酸のエステルをいい、「マルチ(メタ)アクリレート」は複数の(メタ)アクリル基を含む分子をいい、(メタ)アクリレートポリマーを意味する「ポリ(メタ)アクリレート」とは異なる。マルチ(メタ)アクリレートはほとんどの場合ジ(メタ)アクリレートであるが、トリ(メタ)アクリレート、テトラ(メタ)アクリレートなどの使用も想定される。
【0015】
オリゴマー状ウレタンマルチ(メタ)アクリレートは、市販品として例えばSartomer社から入手できるし、次のようにして製造することもできる。最初に式OCN−R−NCOのアルキレンジイソシアネートとポリオールとを反応させる。ポリオールは大抵は式HO−R−OHのジオールであり、RはC2−100アルキレン又はアリーレン基であり、RはC2−100アルキレン基である。このときの中間生成物はウレタンジオールジイソシアネートであり、これを次いでヒドロキシアルキル(メタ)アクリレートと反応させればよい。適当なジイソシアネートとしては、2,2,4−トリメチルヘキシレンジイソシアネート及びトルエンジイソシアネートが挙げられるが、アルキレンジイソシアネートが概して好ましい。この種の特に好ましい化合物は、2,2,4−トリメチルヘキシレンジイソシアネートとポリ(カプロラクトン)ジオールとメタクリル酸2−ヒドロキシエチルから製造できる。
【0016】
本発明の物品を形成する放射線硬化性組成物は、粘度の低下、熱機械的性質の向上又は屈折率の増大に有効な1種以上の他のモノマーを含んでいてもよい。こうした性質を有するモノマーとしては、アクリル系モノマー(即ち、アクリル酸及びメタクリル酸エステル、アクリルアミド及びメタクリルアミド)、スチレン系モノマー及びエチレン性不飽和窒素複素環化合物が挙げられる。
【0017】
適当なアクリル系モノマーとしては、(メタ)アクリル酸エステルモノマーが挙げられる。具体例として、アクリル酸メチル、アクリル酸エチル、アクリル酸1−プロピル、メタクリル酸メチル、アクリル酸t−ブチルのような(メタ)アクリル酸アルキルが挙げられる。
【0018】
その他の官能基を有する(メタ)アクリル酸エステルも挙げられる。この種の化合物の例としては、(メタ)アクリル酸2−(N−ブチルカルバミル)エチル、アクリル酸2,4−ジクロロフェニル、アクリル酸2,4,6−トリブロモフェニル、アクリル酸t−ブチルフェニル、アクリル酸フェニル、チオアクリル酸フェニル、アクリル酸フェニルチオエチル、アクリル酸アルコキシル化フェニル、アクリル酸イソボルニル及びアクリル酸フェノキシエチルが挙げられる。
【0019】
他のモノマーは、N−置換又はN,N−二置換(メタ)アクリルアミドモノマー、特にアクリルアミドであってもよい。例として、N−アルキルアクリルアミド及びN,N−ジアルキルアクリルアミド、特にC1−4アルキル基を含むものが挙げられる。具体例は、N−イソプロピルアクリルアミド、N−t−ブチルアクリルアミド、N,N−ジメチルアクリルアミド及びN,N−ジエチルアクリルアミドである。
【0020】
他のモノマーはポリオールマルチ(メタ)アクリレートであってもよい。かかる化合物は、典型的には、炭素原子数2〜10の脂肪族ジオール、トリオール及び/又はテトラオールから製造される。適当なポリ(メタ)アクリレートの具体例は、エチレングリコールジアクリレート、1,6−ヘキサンジオールジアクリレート、2−エチル−2−ヒドロキシメチル−1,3−プロパンジオールトリアクリレート(トリメチロールプロパントリアクリレート)、ジ(トリメチロールプロパン)テトラアクリレート、ペンタエリトリトールテトラアクリレート、これらの対応メタクリレート及びポリオールのアルコキシル化(通常はエトキシル化)誘導体の(メタ)アクリレートである。
【0021】
他のモノマーとしての使用に好適なスチレン系化合物としては、スチレン、ジクロロスチレン、2,4,6−トリクロロスチレン、2,4,6−トリブロモスチレン、4−メチルスチレン及び4−フェノキシスチレンが挙げられる。エチレン性不飽和窒素複素環化合物としては、N−ビニルピロリドン及びビニルピリジンが挙げられる。
【0022】
化合物Bは、4価チタン及び4価ジルコニウム化合物からなる群から選択される1種以上のエチレン性不飽和金属化合物であり、価格が妥当で特に適していることから概してチタン化合物が好ましい。不飽和官能基が存在するので、これらの金属化合物を放射線硬化時に生成するポリマーに導入することができる。
【0023】
本発明の物品の製造に当たり、光散乱を最小限にすることが重要である。そこで、成分Bはナノ粒子の形態にある。「ナノ粒子」とは、平均粒径200nm以下の粒子を意味する。好ましくは、粒径は100nm以下、さらに好ましくは70nm以下、最も好ましくは約5〜50nmである。この粒度の粒子は、火炎熱分解、プラズマ法、気相凝縮法、コロイド法、沈殿法、ゾル−ゲル法、核生成成長制御法、MOCVD法及び(ミクロ)エマルジョン法を始めとする当技術分野で公知の技術で製造できる。多くの事例で特に好適なものは、対応アルコキシド(即ちチタン又はジルコニウムテトラアルコキシド)を出発材料とするゾル−ゲル法である。
【0024】
金属含有ナノ粒子の官能化は、アルコキシド又はそれから得られた粒子をエチレン性不飽和化合物(典型的には不飽和トリアルコキシシラン)と接触させることによって、ナノ粒子の形成と同時又はその後に実施できる。エチレン性不飽和化合物は多くの場合(メタ)アクリル系化合物であり、3−メタクリルオキシプロピルトリメトキシシラン(以下、「MPTMS」ともいう。)のような(メタ)アクリルオキシアルキルトリアルコキシシランが好ましいことが多い。MPTMSの官能化は、4−ヒドロキシ−2,2,6,6−テトラメチルピペリジニロキシ(以下、「4−OH TEMPO」ともいう。)で代表される安定ラジカルのようなラジカル捕捉剤の存在下で実施するのが往々にして好ましい。かかる官能化は主にナノ粒子の表面に影響すると考えられるが、本発明はいかなる作用理論にも依存するものではない。
【0025】
かかる官能化には、チタン及び/又はジルコニウムと(メタ)アクリル系化合物は概して約5〜10:1のモル比で用いられる。ラジカル化合物の割合は、反応の促進に有効な触媒量である。反応温度は通例約30〜80℃である。アルカノールのような溶媒が存在していてもよいが、硬化性物品の生成前に真空ストリッピングなどで除去することが条件とされる。ナノ粒子は、プロピレングリコールメチルエーテルアセテートのような適当な分散剤中のゾルとして処方するのが多くの場合好適である。
【0026】
本発明の放射線硬化性物品の成分Cは、紫外線照射時に物品の重合を促進するのに有効な1種以上の光開始剤である。光開始剤としての使用に好適な材料は、上述の米国特許第4576850号及びEncyclopedia of Polymer Technologyなどの刊行物に記載されている。例は、ベンゾインエーテル、ヒドロキシ及びアルコキシアルキルフェニルケトン、チオアルキルフェニルモルホリノアルキルケトン及びアシルホスフィンオキシドである。多くの事例で特に有用なものは「Darocur 4265」という市販材料であり、2−ヒドロキシ−2−プロピルフェニルケトンと(2,4,6−トリメチルベンゾイル)ジフェニルホスフィンオキシドとの混合物からなる。
【0027】
本発明の放射線硬化性物品の成分比は広く変更し得る。一般に、成分Aはオリゴマー状ウレタンマルチ(メタ)アクリレート約30〜100%からなり、残部は(メタ)アクリル系モノマーである。成分Bは多くの場合成分AとBの合計の約5〜90%をなす。百分率はすべて重量基準である。成分Cの光開始剤は紫外線照射時に重合を促進するのに有効な少量で存在し、全重合性成分を基準にして概して約0.005〜3.0%、好ましくは約0.005〜1.0%の範囲で存在する。
【0028】
本発明の硬化製品の重要な特性は、ASTM D1003によってビスフェノールAポリカーボネート基板上の厚さ3.2mmのフラットフィルムで測定して、ヘイズ値が5%以下であることである。別の好ましい特性は、落砂摩耗試験(ASTM D968)で求めた耐摩耗性が20以下、好ましくは10以下であること、及びクロスハッチ接着性試験(ASTM D3359)で求めたビスフェノールAポリカーボネートに対する接着性が5Bであることである。
【0029】
本発明の放射線硬化性物品を製造するには、その成分を単にブレンドし、均質混合物が生ずるように効果的に混合すればよい。
真空の適用などによって気泡を除去するのが好ましいことが多く、混合物が粘稠であれば穏和な加熱を行って、キャスティングその他の方法で所望の表面に上記ブレンドのフィルムを形成する。次に、フィルムを、複製すべき微細構造を有するモールドに装填し、紫外線照射で重合して、上述の特性を有する本発明の硬化光学樹脂製品を製造する。使用すべき表面以外の表面で重合を行った場合には、光学樹脂製品を別の表面に移せばよい。
【0030】
かかる重合プロセスは、溶剤や揮発分が全く又は少量しか発生せず、重合を周囲温度及び圧力で実施できるので、物品の高速大量生産に適しており、環境への悪影響もない。重合プロセスは、凸部や凹部のような実用的不連続部を含む微細構造を有する物品の複製にも適しており、モールドの細部を失うことなくモールドから容易に離型でき、しかもそうした細部の複製を幅広い使用条件下で保持する。本物品は、靱性、可撓性、光学的透明性及び均質性、常用溶剤に対する耐性のような様々な所望の特性をもつように形成でき、かかる物品の微細構造は、高い熱的寸法安定性、耐摩耗性及び耐衝撃性を有し、物品を曲げても構造的健全性を保つ。
【実施例】
【0031】
以下の実施例で本発明を例示する。部及び百分率は、特記しない限り、すべて重量基準である。成分Bを始めとするモノマー成分及び光開始剤の百分率は、モノマー成分の合計を基準とする。
【0032】
実施例1
滴下ロート、温度計及び機械式撹拌機を備えた3口フラスコに、2,2,4−トリメチルへキサン1,6−ジイソシアネート31.2ml及びジブチルスズジラウレート50mgを仕込んだ。滴下ロートに39.75gの温ポリカプトラクトンジオール(Mn:530)を仕込んで、55〜60℃でフラスコの内容物に添加した。次いで混合物を65℃で14時間撹拌した。フラスコを55℃に冷却して、メタクリル酸2−ヒドロキシエチル18.7mlとヒドロキノンモノメチルエーテル100mgの混合物を、温度を54〜58℃の範囲に保ちながら添加した。混合物を55℃で10〜12時間、赤外分光法で反応が完了したことが確認されるまで撹拌した。生成物は所望のオリゴマー状ウレタンジメタクリレート(以下、「ジメタクリレートオリゴマー」ともいう。)であった
実施例2
2−プロパノール1000gと濃塩酸49.05gと蒸留水5.25gの混合物に、チタンテトライソプロポキシド105gを撹拌しながら添加した。得られた混合物を室温で72時間撹拌した後、1−メトキシ−2−プロパノール中の4−OH TEMPOの33%溶液0.23g及び3−メタクリルオキシプロピルトリメトキシシラン13.75gを添加した。溶液を50℃で6.5時間加熱した後、447gの溶液を丸底フラスコに移して、ロータリーエバポレーターを用いて揮発分の大部分をストリッピングした。プロピレングリコールメチルエーテルアセテート140gを加えて、55℃及び全真空でストリッピングを続けた。溶液の重量が171gになったときにストリッピングを中断し、137gのプロピレングリコールメチルエーテルアセテートをフラスコに追加した。溶液の重量が236gになるまで、ストリッピングを続けた。得られたチタン含有ナノ粒子分散液の固形分を、全揮発分をストリッピングすることによって重量測定法で求めたところ、17.4重量%であった。
【0033】
実施例3
Sartomer社から「CN−985B88」という商標で市販されているオリゴマー状ポリエステルウレタンジアクリレート49.5部と、チタン50部となる量の実施例2の生成物との混合物を真空ストリッピングして、0.5部の「Darocur 4265」(1−メトキシ−2−プロパノール中の10%溶液)を添加した。得られた組成物を1−メトキシ−2−プロパノールからビスフェノールAポリカーボネート平板上にスピンコートし、単一の「H」電球からの紫外線照射で硬化させた。得られたコーティングのヘイズは0.43%、摩耗性は25.7、接着性は0Bであった。接着性は少量の多官能性(メタ)アクリレートモノマーの添加によって改良できると予想され、簡単な実験で測定できる。
【0034】
実施例4〜10
実施例1のジメタクリレートオリゴマー、実施例2のナノ粒子分散液、光開始剤としての「Darocur 4265」(0.5%)及び実施例5、6、8及び10ではヘキサンジオールジアクリレート(「HDDA」)からプロピレングリコールメチルエーテルアセテート中で7種類の組成物、硬化性物品及び硬化製品を製造した。
【0035】
得られた組成物のパラメーター及び性質を以下の表に示す。3つのサンプルについて、589.878nmでのエリプソメトリーによって屈折率を測定し、これらの結果も表に示す。
【0036】
【表1】

この表から、本発明の硬化製品が好ましい範囲に近い屈折率(特に実施例9)、5以下のヘイズ及び望ましい範囲内の耐摩耗性を有することが明らかである。実施例8の製品を除いて、適当な接着性も有している。実施例3の製品と同様に、実施例8の製品の接着性は少量の多官能性(メタ)アクリレートモノマーの添加によって改良できると予想され、簡単な実験で測定できる。。
【0037】
例示のため幾つかの典型的な実施形態を開示してきたが、以上の説明及び実施例は、本発明の技術的範囲を制限するものではない。本発明の技術的思想及び範囲内における様々な修正、適合及び代替は当業者には自明であろう。
【図面の簡単な説明】
【0038】
【図1】バックライト液晶ディスプレイにおけるLMFの概略図。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
光学用の複数の実用的不連続部を含む複製微細構造を有する表面をもつ光学樹脂製品へと放射線硬化できる物品であって、当該物品が、ASTM D1003によってビスフェノールAポリカーボネート基板上の厚さ3.2mmのフラットフィルムで測定して5%以下のヘイズ値を有する硬化製品へと硬化できるものであり、
(A)1種以上のオリゴマー状ウレタンマルチ(メタ)アクリレート、又は該オリゴマー状ウレタンマルチ(メタ)アクリレートと粘度の低下、熱機械的性質の向上又は屈折率の増加に有効な1種以上の他のモノマーとの組合せ、
(B)4価チタン及び4価ジルコニウム化合物からなる群から選択される1種以上のエチレン性不飽和金属化合物のナノ粒子、及び
(C)1種以上の光開始剤
を含んでなる物品。
【請求項2】
成分Bがチタン化合物である、請求項1記載の物品。
【請求項3】
成分Bが(メタ)アクリルオキシアルキルトリアルコキシシランで官能化された化合物である、請求項2記載の物品。
【請求項4】
成分Bが3−メタクリルオキシプロピルルトリメトキシシランで官能化されている、請求項3記載の物品。
【請求項5】
成分Aが、2,2,4−トリメチルヘキサン1,6−ジイソシアネートとポリカプロラクトンジオールとメタクリル酸2−ヒドロキシエチルとの反応生成物である、請求項2記載の物品。
【請求項6】
前記他のモノマーも存在する、請求項2記載の物品。
【請求項7】
他のモノマーがアクリル系モノマー、スチレン系モノマー又はエチレン性不飽和窒素複素環化合物である、請求項6記載の物品。
【請求項8】
他のモノマーが、ポリオールマルチ(メタ)アクリレートである、請求項6記載の物品。
【請求項9】
前記ポリオール(メタ)アクリレートがヘキサンジオールジアクリレートである、請求項8記載の物品。
【請求項10】
光学用の複数の実用的不連続部を含む複製微細構造を有する表面をもつ光学樹脂製品に放射線硬化できる物品であって、当該物品が、ASTM D1003によってビスフェノールAポリカーボネート基板上の厚さ3.2mmのフラットフィルムで測定して5%以下のヘイズ値及びASTM D968で測定して20以下の摩耗性を有する硬化製品に硬化できるものであり、
(A)2,2,4−トリメチルヘキサン1,6−ジイソシアネートとポリカプロラクトンジオールとメタクリル酸2−ヒドロキシエチルとの反応生成物、
(B)1種以上の3−メタクリルオキシプロピルトリメトキシシラン官能化チタン化合物のナノ粒子、及び
(C)1種以上の光開始剤
を含んでなる物品。

【図1】
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【公表番号】特表2007−522499(P2007−522499A)
【公表日】平成19年8月9日(2007.8.9)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−551021(P2006−551021)
【出願日】平成16年1月26日(2004.1.26)
【国際出願番号】PCT/US2004/002049
【国際公開番号】WO2005/083476
【国際公開日】平成17年9月9日(2005.9.9)
【出願人】(390041542)ゼネラル・エレクトリック・カンパニイ (6,332)
【氏名又は名称原語表記】GENERAL ELECTRIC COMPANY
【Fターム(参考)】