説明

微細構造化接着剤層を含む再帰反射物品

本発明は、基材に結合された接着剤層の表面において直径500μmの円形領域につき少なくとも103μm3の容積を有する複数の溝を画定する、微細構造化接着剤層を含むシートなどの再帰反射物品に関する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、微細構造化接着剤を含むシートなどの再帰反射物品に関する。
【背景技術】
【0002】
再帰反射シートは一般に公知である。かかるシートは、球面レンズ(例えばガラスビード)またはキューブコーナー微細構造物などの反射要素を含む。再帰反射シートはしばしば、剥離ライナーによって覆われたシートの(例えば非表示)表面の上に感圧接着剤などの接着剤を供給される。剥離ライナーは除去され、シートは、標識バッキングなどの対象基材に付着される。
【0003】
しばしばシートおよび接着剤は透明または半透明である。したがって、接着剤によってシートと対象基材との間に形成された結合部を、シートの表示表面を通して見ることができる。良好な結合部の特性の1つは、シートと対象基材との間のエアーポケットがないことである。エアーポケットは初期には存在しない場合があるが、特に構造体が高温および/または多湿に暴露された時にエアーポケットが後で形成されることもある。この、エアーポケットが後で形成されることは、構造体の材料の少なくとも1つからの気体の放出によるものであると推測される。
【0004】
米国特許第6,197,397号明細書には、微小複製トポグラフィーを有する接着剤が開示されている。接着剤の層と支持基材との間に接着境界面が形成されるとき、接着剤表面のトポグラフィーが、接着境界面の性能を制御する。有効期間の間、流体出口のための微小溝を提供する利点を有する、微小複製接着剤表面を有する物品もまた、開示されている。多数の微小エンボス加工パターンは、流体出口のための微小溝と改良された接着剤性質のためのペグとの両方を有する微小複製接着剤表面を製造する。
【0005】
国際公開第00/22059号パンフレットは、コンクリートまたはモルタルから製造された被着体上に結合される時に膨張を起こさない接着剤シートに関する。接着剤シートは、基材と、前記基材の一方の主表面に配置された接着剤表面に凹部分を有する接着剤層とを含み、接着剤シートが被着体に結合される時に外側と連通状態の通路が形成される。接着剤層は、ゴム系接着剤ポリマーを含有し、プライマー層によって基材の一方の主表面の上に固定される。
【0006】
再帰反射シート上に微小複製接着剤を使用することは一般に記載されているが、業界は、エアーポケットを後に形成する結果として生じる層剥離を低減する改良の利点を見出すであろう。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明者は、特定の構造特性を有する微細構造化接着剤の使用により、再帰反射物品のエアーポケットが後に形成されるのを低減し、避けることを発見した。
【課題を解決するための手段】
【0008】
1つの態様において、本発明は、感圧接着剤層で基材の表面に結合された再帰反射シートを含む再帰反射物品を開示する。基材の表面は、ペイントまたはプラスチック(例えばシート)材料(例えば状態調節されないポリカーボネート)などのポリマー材料を含む。接着剤層が、複数の溝を画定する微細構造物を含み、前記溝が、前記基材に結合された前記接着剤層の表面において直径500μmの円形領域につき少なくとも1.0×103μm3である容積を有する。
【0009】
別の態様において、接着剤層は、基材に結合された接着剤層の表面において約500μmより小さいピッチで配列された複数の微細構造物を含む。
【0010】
本発明はまた、再帰反射シートを提供する工程と、微細構造化接着剤を前記シートに適用する工程であって、接着剤層が、記載された構造特性の1つ以上を有する工程と、気体放出を示す基材を提供する工程と、物品を前記基材に前記接着剤によって結合する工程と、を含む、再帰反射物品の製造方法を開示する。
【0011】
これらの態様の各々において、前記物品は好ましくは、95%の相対湿度および4時間間隔で35°F〜160°Fの温度サイクルにおいて7日間状態調節した後に10%より少ない層剥離を示す。前記溝は好ましくは、前記物品の外面まで延在する。さらに、前記溝は好ましくは、95%の相対湿度および4時間間隔で35°F〜160°Fの温度サイクルにおいて7日間状態調節した後に存在している。微小球型シートおよびキューブコーナー型シートなどの任意の再帰反射シートを使用してよい。基材に結合された接着剤の接触表面積は、約50%〜約98%の範囲、例えば約60%〜約97%の範囲である。接着剤は、場合により約25重量%までの粘着付与剤を含有する架橋アクリル接着剤を含んでもよい。ゲル含有量が60〜85%となるように接着剤を架橋することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0012】
本発明は、微細構造化接着剤を含むシートなどの再帰反射物品に関する。微細構造化接着剤は典型的に、剥離ライナーによって一時的に覆われた感圧接着剤である。使用する間、剥離ライナーが除去され、シートが、接着剤によって対象基材に付着される。典型的に接着剤は、シートの非表示表面の上に配置される。しかしながら、表面粘着性再帰反射ステッカーなどの他の用途において、接着剤が表示表面の上に存在してもよい。
【0013】
本発明の目的のために、この出願において用いられた以下の用語は、次のように定義される。
「再帰反射シート(retroreflective sheeting)」は、再帰反射要素を含むポリマー系シートを指す。
「微視的(microscopic)」は、その形状を確認するために任意の視面(plane of view)から見られる時に裸眼に対して光学補助を必要とするほど小さな寸法の構造物を指す。1つの基準は、W.J.スミス(W.J.Smith)著、Modern Optic Engineering、マグロー・ヒル(McGraw−Hill)、1966年、104〜105ページに見出され、それによって視力は、「識別可能な最も小さな文字の視角度(angular size)を用いて定義および測定される」。標準的な視力は、最も小さい識別可能な文字が網膜上の5分の弧の角高度に対するときであると考えられる。250mm(10インチ)の代表的な作動距離において、これは、この対象に対して0.36mm(0.0145インチ)の横寸法をもたらす。
「微細構造物(microstructure)」は、構造物の少なくとも2つの寸法が微視的である構造物の形状を意味する。構造物の上面図および/または断面図が、微視的でなければならない。
「エンボス加工可能な(embossable)」は、感圧接着剤層またはライナーがその表面の一部を機械的手段などによってレリーフに隆起させることができることを意味する。
「剥離ライナー(release liner)」は、用語「ライナー(liner)」と交換可能に用いられ、感圧接着剤表面と完全に接触して配置された後、次いで接着剤コーティングを損なわずに除去することができる可撓性シートを指す。
「微細構造化ライナー(microstructured liner)」は、接着剤との接触に適している、少なくとも1つの微細構造化表面を有するライナーを指す。
「対象基材(target substrate)」および「基材(substrate)」は、感圧接着剤コーティングが所期の目的のために適用される基材(例えば標識バッキング)または表面を指す。
「コンプライアント(compliant)」は、軟質および可撓性であると共に、伸長された後に十分な非弾性歪みを有し、伸長されるとその元の長さまで戻らないポリマーフィルムを指す。
【0014】
図1に記載されているような本発明の物品10は、対向する表面14、16を有する再帰反射コアーシート12を備える。接着剤18は、再帰反射コアーシート12の表面16に結合される。プライマー(図示せず)を場合により使用して、再帰反射コアーシートと接着剤との間の結合を増強してもよい。接着剤18は、対象基材に結合される表面20を有する。接着剤18は、溝24を画定する構造物22を有する。基材26は、微細構造化接着剤18によって再帰反射コアーシート12に結合される。
【0015】
接着剤は、再帰反射コアーシートの反対側の接着剤の露出面の上に微細構造化表面を備える。微細構造化表面は、接着剤中の溝を画定する。溝は、露出面から接着剤中に延在する連続した開放経路またはグルーブ(groove)である。溝は、接着剤層の外周部分を末端とするか、または物品の外周部分を末端とする他の溝と連通するかのどちらかである。
【0016】
本発明の再帰反射物品は有利には、気体放出によるエアーポケットの形成を低減または避ける改良をもたらす。本発明の接着剤中の溝は、接着剤と基材との間の境界面において閉じ込められた気体または流体の、物品の外面への出口を提供する特定の寸法を有する。溝は好ましくは、少なくとも1年など、製品の耐用年数の間、開放状態のままである。いくつかの実施形態において、製品の耐用年数は、3〜5年である場合がある。いくつかの実施形態において、溝の特性が、適用後に物品の露出面から見られる時に接着剤の微細構造化表面を人の眼にほとんど感知できなくする。
【0017】
1つの態様において、溝は、接着剤の微細構造化表面の任意の所定の面積当たりの比容積を画定する。接着剤の単位面積当たりの最小容積は、基材および接着剤の境界面における十分な出口を確実にする。好ましくは、溝は、接着剤の2次元の平面の直径500μmの任意の円形領域につき少なくとも1×103μm3の容積を画定する。最も好ましくは、溝は、直径500μmの任意の円形領域につき1.0×103μm3〜約1×107μm3を超える範囲の容積を画定する。「任意の(any)」とは、表面積全体にわたってほとんど全ての直径500μmの円形領域が、上述の容積を画定する溝を有することを意味する。溝の寸法をアスペクト比を基準にして記載することができる。アスペクト比は、接着剤の連続層の平面に平行な溝の最大微視的寸法の、接着剤の連続層の平面に垂直な溝の最大微視的寸法に対する比として定義される。アスペクト比は、溝の壁に垂直な角度において溝の断面寸法をとることによって測定される。溝の特定のタイプに応じて、アスペクト比は、約0.1〜約20の範囲であってもよい。いくつかの実施形態について好ましいアスペクト比は好ましくは約5より小さい。
【0018】
代わりにまたは面積当たりの溝容積と組み合わせて、本発明の再帰反射物品は、規則的パターンまたは特定の形状および大きさを有する構造物の群を有する微細構造化接着剤を含む。これらの構造は、500μmより小さいピッチ(隣接構造物の同様な構造点の間の距離の平均値)で配列される(例えば約475μmより小さい、約450μmより小さい、約425μmより小さい)。典型的にピッチは約400μmより小さい(例えば約375μmより小さい、約350μmより小さい、約325μmより小さい)。より典型的にはピッチは約300μmより小さい(例えば約275μmより小さい、約250μmより小さい、約225μmより小さい)。したがって、構造物は、1インチ当たり100線構造物を超えて存在してもよい。ピッチを大きくしすぎると、エアーポケットを後に形成する結果としてかなりの層剥離が、特に下記の実施例において記載された条件下で明らかに存在し続ける。ピッチは典型的に、少なくとも約50μmである。
【0019】
溝の寸法および間隔は、対象基材との境界面において全表面積に対して特定の表面積を有する微細構造化表面をもたらす。適用した時に対象基材との境界面における表面積の、全表面積に対するパーセンテージは、約35%〜約99%の範囲である。パーセンテージが約50%〜約98%の範囲であってもよい。さらに、パーセンテージが約60%〜約97%の範囲であってもよい。いくつかの実施形態において、パーセンテージが約70%〜約96%の範囲であってもよい。典型的に、パーセンテージが約85%〜約95%の範囲であり、基材への接着性に悪影響を及ぼさずに十分な流体出口を提供する。全表面積に対する、相互連結した溝の面積のパーセンテージは、残りである。
【0020】
構造物は、ランダムな配列または規則的パターンのどちらで存在してもよい。単一構造物は少なくとも部分的に、接着剤中の溝の部分を画定する。選択されたパターンには、直線パターン、極性パターンおよび他の従来の規則的パターンなどが挙げられる。複数の構造物が組み合わさり、接着剤の表面の上に連続した溝を形成する。溝の形状は加工方法によって広範囲に変化することができるが、各々が好ましくは、横断方向に観察した時にV形状、U形状、矩形または台形断面を有する。構造物の形状も同様に変化してもよい。構造物の形状の例には、半球、角柱(真四角柱、四角柱、円筒プリズムおよび他の同様な多角形の特徴など)、角錐、または楕円体からなる群から選択される形状などがあるがそれらに限定されない。異なった構造物の形状の組合せを利用することができる。好ましい形状には、半球、角柱、および角錐からなる群から選択される形状がある。
【0021】
各々の単一構造物は典型的に、約3マイクロメータより大きい高さを有するが、接着剤層の全厚さより小さく、好ましくは約3マイクロメータ〜約50マイクロメータである。さらに、構造物のいくつかは、接着剤の接触表面を増大させるように付加的な構造物のための表面を提供するために切頭であってもよい。
【0022】
二機能構造物もまた、本発明の物品に使用するために適している場合がある。さらに、異なった構成または形状を基礎構造物と組み合わせて本発明の望ましい配置性質を達成することができる。
【0023】
接着剤の厚さは、例えば、接着剤組成物、微細構造化表面を形成するために用いられる構造のタイプ、基材のタイプ、およびフィルムの厚さなど、様々な要因に依存する。当業者は、厚さを調節して特定の適用の要因を扱うことができる。概して、接着剤層の厚さは、構造の高さより大きい。好ましくは、接着剤層の厚さは、約25〜約125μmの範囲内である。
【0024】
剥離ライナーまたはバッキングの使用は、微細構造化接着剤を形成するために適した方法の1つである。剥離ライナーは有利には、プラスチック、例えばポリエチレン、ポリプロピレン、ポリエステル、セルロースアセテート、ポリ塩化ビニル、およびポリフッ化ビニリデン、ならびにかかるプラスチックをコーティングまたは積層された紙または他の基材などが挙げられるがそれらに限定されない様々な材料から製造することができる。これらのエンボス加工可能なコーテッドペーパーまたは熱可塑性樹脂フィルムはしばしば、シリコン処理されるかあるいは他の方法で処理されて改良された剥離特性を付与する。剥離ライナーの厚さは、所望の効果に従って広範囲に変化することができる。さらに、米国特許第5,650,215号明細書(マズレク(Mazurek))(本願明細書に参照によって完全に援用された)に開示されているような様々な技術を用いることによって剥離ライナーに構造物をもたらすことが可能である。
【0025】
構造化接着剤および微細構造化接着剤は概して、例えば米国特許第6,197,397号明細書(シャー(Sher))、国際公開第00/22059号パンフレット(ヒデトシ(Hidetoshi))、および国際公開第00/69985号パンフレット(ミカミ(Mikami))から知られる。微細構造化接着剤は好ましくは、当業界で通常に認められたやり方によって微細構造化表面を接着剤層上に付与することによって製造される。この特徴は、成形用具を利用して接着剤を直接エンボス加工することによるかまたは本発明の特徴によって予めエンボス加工されたライナーまたはバッキング上に接着剤をコーティングすることによって付与される。かかる方法およびやり方は、先に参照によって援用された米国特許第5,650,215号明細書に完全に記載されている。エンボス加工用具のトポグラフィーは典型的に、微小複製接着剤と同じトポグラフィーを有し、ライナーが、接着剤表面の上に用具の画像を複製するために逆のトポグラフィーを有する。あるいは逆のエンボス加工用具を用いて、微細構造物を接着剤表面の上に直接付与してもよい。微細構造化接着剤は、他の手段によって同様に製造されてもよい。
【0026】
有用な接着剤には、微細構造化成形用具、バッキングまたはライナーでエンボス加工された後、または微細構造化成形用具、バッキングまたはライナー上にコーティングされた後(後でそれを除去する)など、露出面上に微細構造化特徴を保持することができる接着剤がある。好ましくは、接着剤は感圧接着剤であり、接着剤が、結合部を形成することができるように周囲温度において粘着性であること意味する。あるいは、他の非感圧接着剤組成物を使用してもよい。適した熱活性化可能な接着剤は、80部のイソオクチルアクリレートと20部のアクリル酸とを有するアクリル接着剤である。
【0027】
微細構造化接着剤は、気体放出を可能にするのに十分な時間、それらの微細構造化表面を保持することができる。当業者は、化学的および/または物理的架橋密度の程度を調節することによっておよび/または充填剤を含有するなどによって、耐クリープ性接着剤を選択または調合してもよい。所定の適用のために選択された特定の感圧接着剤は、再帰反射シートの使用目的に依存する。
【0028】
多くの感圧接着剤が本発明に適している。感圧接着剤のクラスには、アクリル樹脂、粘着付与ゴム、粘着付与合成ゴム、エチレンビニルアセテート、シリコーン、などがある。再帰反射物品は典型的に、屋外耐久性を有するように形成されるので、アクリル系接着剤が好ましい。さらに、いくつかのアクリル系接着剤はまた、気体放出を可能にするのに十分な時間、溝が開放状態のままになりやすいレオロジー性質を示す。適したアクリル接着剤は、例えば、米国特許第3,239,478号明細書、米国特許第3,935,338号明細書、米国特許第5,169,727号明細書、米国再発行特許第24,906号明細書、米国特許第4,952,650号明細書、および米国特許第4,181,752号明細書および特に米国特許第5,257,491号明細書に開示されている。感圧接着剤の好ましいクラスは、少なくとも1つのアルキルアクリレートと少なくとも1つの強化コモノマーとの反応生成物である。適したアルキルアクリレートは、約−10℃よりも低いホモポリマーガラス転移温度を有するアルキルアクリレートであり、例えば、n−ブチルアクリレート、2−エチルヘキシルアクリレート、イソクチル(isoctyl)アクリレート、イソノニルアクリレート、オクタデシルアクリレートなどがある。適した強化モノマーは、約20℃よりも高いホモポリマーガラス転移温度を有する強化モノマーであり、例えば、アクリル酸、イタコン酸、イソボルニルアクリレート、N,N−ジメチルアクリルアミド、N−ビニルカプロラクタム、N−ビニルピロリドンなどがある。
【0029】
接着剤は、溶剤または水中に分散されるポリマーであってもよく、剥離ライナー上にコーティングされ、乾燥させられ、場合により架橋される。溶剤系または水系感圧接着剤組成物が使用される場合、接着剤層は、キャリア液体の全てまたは大部分を除去する乾燥工程を受けなければならない。付加的なコーティング工程が、平滑な表面を達成するために必要な場合がある。また、接着剤が、ライナーまたは微細構造化バッキング上にホットメルトコーティングされてもよい。さらに、モノマー予備接着剤組成物をライナー上にコーティングして、熱、紫外線放射線、電子ビーム放射線などのエネルギー源で重合させることができる。
【0030】
感圧接着剤は場合により1つ以上の添加剤を含有することができる。重合方法、コーティング方法、最終用途等に依存して、開始剤、充填剤、可塑剤、粘着付与剤、連鎖移動剤、繊維補強剤、織布および不織布、発泡剤、酸化防止剤、安定剤、難燃剤、粘度増強剤、着色剤およびそれらの混合物からなる群から選択される添加剤を使用することができる。
【0031】
再帰反射コアーシートは概してコンプライアントフィルムであり、当業者によって通常に用いられる1つ以上のプラスチック材料から作製される。再帰反射コアーシート(すなわち微細構造化層)の厚さは広範囲に変化することができるが、通常、約400μm以下であり、好ましくは約25μm〜約100μmの範囲である。
【0032】
様々な再帰反射コアーシートを使用してもよい。かかるコアーシートは本願明細書に記載されたトップコートを適用する前に、単独で再帰反射性である場合があり、またはかかるトップコートと組み合わせられた後にだけ再帰反射性を示す場合がある。再帰反射コアーは典型的に、予備成形シートである。2つの最も一般的なタイプの再帰反射シートは微小球型シートおよびキューブコーナー型シートである。
【0033】
「ビードシート」と称されることもある微小球型シートは当業界で公知であり、バインダー層に典型的に少なくとも部分的に埋め込まれた多数の微小球、および混在された正反射または拡散反射材料(金属蒸気またはスパッタコーティング、金属フレーク、または顔料粒子など)を含有する。微小球型シートの具体例は、米国特許第4,025,159号明細書(マクグラス(McGrath))、米国特許第4,983,436号明細書(ベイリー(Bailey))、米国特許第5,064,272号明細書(ベイリー)、米国特許第5,066,098号明細書(クルト(Kult)、米国特許第5,069,964号明細書(トリバー(Tolliver))、および米国特許第5,262,225号明細書(ウィルソン(Wilson))に開示されている。微小球型シートを使用する実施形態については、正反射材料は典型的に、微細構造化接着剤を適用する前に保護コーティングで覆われる。
【0034】
プリズム、マイクロプリズム、三枚鏡または内部全反射シートと称されることもあるキューブコーナーシートは典型的に、入射光を再帰反射するための多数のキューブコーナー要素を備える。キューブコーナー再帰反射体は典型的に、略平面の前面と、裏面から突き出るキューブコーナー要素の配列とを有するシートを備える。キューブコーナー反射要素は、単一コーナーにおいて出会う3つの略直交する横面を有する略三面構造、すなわちキューブコーナーを備える。使用時に、再帰反射体は、前面をほぼ所期の観察者の予想位置および光源に向かって配置して、配列される。前面に入射する光はシートに入り、シートの本体を通過し、ほぼ光源に向かう方向に前面を出るように、要素の3つの面の各々によって反射される。内部全反射の場合、空気境界面は、夾雑物、水および接着剤を含有しないままでなければならず、このため、封止用フィルムによって密閉される。あるいは、反射コーティングは、横面の裏側に適用されてもよい。キューブコーナーシートのためのポリマーには、ポリ(カーボネート)、ポリ(メチルメタクリレート)、ポリ(エチレンテレフタレート)、脂肪族ポリウレタン、ならびにそれらのエチレンコポリマーおよびイオノマーなどがある。本願明細書に参照によって援用された米国特許第5,691,846号明細書(ベンソン・ジュニア(Benson,Jr.))に記載されているような、キューブコーナーシートは、フィルム上に直接キャストすることによって作製されてもよい。放射線硬化キューブコーナーのためのポリマーには、架橋アクリレート、例えば多官能性アクリレートまたはエポキシ、および一官能性および多官能性モノマーとブレンドされたアクリル化ウレタンなどがある。さらに、より可撓性のキャストキューブコーナーシートのために、先述されたキューブコーナーなどのキューブコーナーを可塑化ポリ塩化ビニルフィルム上にキャストしてもよい。これらのポリマーはしばしば、熱安定性、環境安定性、透明度、用具または型からの優れた離型、および反射コーティングを受容する能力など、1つ以上の理由のために使用されてもよい。
【0035】
典型的にキューブコーナーシートは、下にあるキューブコーナー層に対する保護を与えるトップコート層を使用し、改良されたインク受理性、耐汚れ性、可撓性または剛性、着色などの他の機能性を付加してもよい。本発明のトップコートをキューブコーナーシート上に直接コーティングするか、または代わりに、キューブコーナー層の製造中かまたは後続の作業中かのどちらかで予備成形し、熱積層することができる。キューブコーナーシートのために比較的厚い、強い、厚いポリカーボネート層を用いるとき、トップコートは、シートの物理的性質に寄与するのが最小にとどまり、ポリマーの選択は、ポリカーボネートに対する接着性、耐汚れ性、表面の圧痕に対する耐性、などに基づいて行なうことができる。
【0036】
シートが湿分に暴露される可能性が高い実施形態において、キューブコーナー再帰反射要素は好ましくは、シールフィルムで封入されるか、またはキューブを正反射コーティングおよび裏込めし、耐水性ポリマー中にキューブ層を完全に埋め込むことができる。キューブコーナーシートが再帰反射層として使用される場合、バッキング層が、物品を不透明にするために存在してもよく、それらの耐引っ掻き性および耐傷性(gouge resistance)を改良し、および/またはシールフィルムのブロッキング傾向を除く。キューブコーナーベースの再帰反射シートの具体例は、米国特許第4,588,258号明細書(フープマン(Hoopman))、米国特許第4,775,219号明細書(アプルドーン(Appledorn)ら)、米国特許第4,895,428号明細書(ネルソン(Nelson))、米国特許第5,138,488号明細書(シュチェク(Szczech))、米国特許第5,387,458号明細書(パベルカ(Pavelka))、米国特許第5,450,235号明細書(スミス(Smith))、米国特許第5,605,761号明細書(バーンズ(Burns))、米国特許第5,614,286号明細書(ベーコン・ジュニア(Bacon Jr.))および米国特許第5,691,846号明細書(ベンソン・ジュニア(Benson,Jr.))に開示されている。
【0037】
再帰反射物品は典型的に、0.2°の観察角および−4°の照射角(entrance angle)で、米国防衛出願公告(U.S,Defensive Publication)第T987,003号に記載されたようにレトロルミノメーター(retroluminometer)を用いて測定された時に、少なくとも50カンデラ/ルクス(すなわちルーメン/m2)の再帰反射輝度を示す。キューブコーナーシートについては、再帰反射係数は好ましくは、蛍光橙色について少なくとも約200カンデラ/ルクスおよび白色について少なくとも約550カンデラ/ルクスである。
【0038】
再帰反射シートは、道路標識、ナンバー・プレート、個人用安全用品、自動車の装飾の他、再帰反射広告ディスプレイ、バスラップなどの商業グラフィックスなど、様々な用途のために用いられてもよい。
【0039】
再帰反射物品を様々な対象基材に適用することができる。所望のレベルの接着性を達成するために特定の感圧接着剤を基材に適合させることが重要である。適した基材の例には、ガラス、金属、プラスチック、木材、およびセラミック基材、これらの基材の塗装表面などがある。代表的なプラスチック基材には、ポリ塩化ビニル、エチレン−プロピレン−ジエンモノマーゴム、ポリウレタン、ポリメチルメタクリレート、エンジニアリング熱可塑性樹脂(例えば、ポリフェニレンオキシド、ポリエーテルケトン、ポリカーボネート)、および熱可塑性樹脂エラストマーなどがある。プラスチック基材および特にポリカーボネートは、特に気体放出する傾向がある。これらの基材は概して、流体および気体出口を有する物品の必要性を強める平滑な基材である。
【0040】
この物品の適用は、基材の上に物品を配置することを必要とする。本発明の微細構造化表面は、圧力が加えられて基材の表面の接着剤の接触および接着剤の湿潤を可能にするまで接着剤付き物品を基材の表面の周囲に移動させることを可能にする。適切なレベルの圧力および得られた湿潤性は、溝を潰さずに接着剤および基材との間の結合部を形成する。
【0041】
物品を強く適用した後、溝はいかなる閉じ込められた流体も物品の外面の周りに排出させ、それによって気泡を除去する。本発明の再帰反射シート物品はしばしば、物品が少なくとも1年以上、典型的に少なくとも3年の屋外暴露に耐えることができるように十分に耐久性がある。これは、様々なタイプの再帰反射シートの、初期におよび屋外暴露の後の両方に、適用に依存する最小性能要件について記載する交通制御用の再帰反射シート(Standard Specification of Retroreflective Sheeting for Traffic Control)のASTMD4956−99標準規格によって確認することができる。初期に、反射基材は、最小再帰反射係数を満たすかまたは超える。タイプI白色シート(「工業グレード」)については、最小再帰反射係数は0.2°の観察角および−4°の照射角において70cd/fc/ft2であるのに対して、タイプIII白色シート(「高強度」)については、最小再帰反射係数は0.2°の観察角および−4°の照射角において250cd/fc/ft2である。さらに、収縮、可撓性接着性、耐衝撃性および光沢のための最小規格が典型的に満たされる。12、24、または36ヶ月間、促進屋外暴露した後、シートのタイプおよび適用に応じて、再帰反射シートは典型的に、特定の試験期間の後に測定可能な割れ、スケーリング、点蝕、ふくれ、端縁の浮きまたはカール、もしくは0.8ミリメートルより大きい収縮または膨張を示さない。さらに、屋外暴露された再帰反射物品は典型的に、少なくとも最小再帰反射係数および色彩堅牢度を示す。例えば、前記規格を満たすために、永久標識用途のためのタイプI「工業グレード」再帰反射シートは、24ヶ月の屋外暴露の後に初期の最小再帰反射係数の少なくとも50%を保持し、永久標識用途のためのタイプIII高強度タイプ再帰反射シートは、36ヶ月の屋外暴露の後に初期の最小再帰反射係数の少なくとも80%を保持する。初期におよび屋外暴露の後の両方の再帰反射係数の値は典型的に、画像化された再帰反射基材上の視野において約50%低い。
【0042】
本発明の目的および利点を以下の実施例によってさらに説明するが、実施例に記載されたそれらの特定の材料および量、ならびに他の条件および詳細は、本発明を不当に限定すると解釈されるべきではない。本明細書における全てのパーセンテージおよび比は、特に記載しない限り、重量に基づく。
【実施例】
【0043】
微細構造化ライナーを国際公開第00/69985号パンフレットの実施例3に記載されているようにエンボス技術を用いて作製した。したがって、溝は、上幅(「W1」)20μm、下幅(「W2」)3μm、深さ13μmおよびピッチ197μmであった。さらに、直径500μmの任意の円形について平均容積は、約2.85×105μm3であった。
【0044】
93部のイソオクチルアクリレートと7部のアクリル酸接着剤とを有する接着剤を米国特許第5,257,491号明細書に記載されているように調製した。前記接着剤を回転ロッドダイを用いて175℃の温度において以下の表Iに示された厚さにおいて微細構造化ライナー上に直接ホットメルトコーティングし、以下の表Iに示された用量で電子線架橋し、商品名「3M再帰反射シート3990T(3M Retroreflective Sheeting 3990T)」としてミネソタ州、セントポールの3M社(3M Company,St.Paul,MN)から市販されている再帰反射シートに直接、80psiの圧力において積層した。2つの比較例を同じ接着剤を用いて作製した。比較例A1およびA2のために、非構造化ライナーを使用した。比較例Bについては、ピッチ1.27mm、溝幅90ミクロンおよび溝高さ23ミクロンを有する微細構造化ライナーを使用した。比較例Bの溝の容積は、若干の直径500μm円形領域が溝を有さないので、不確定である。
【0045】
光学顕微鏡下で、接着剤が、再帰反射シートに積層した後にその溝を維持していたことが確認された。接着剤のコーティングされた再帰反射シートおよびライナーを有する試料を6インチ×12インチのシートに切り分けた。ライナーを除去し、次に、接着剤のコーティングされた再帰反射シートを、ワシントン州、シアトルのGEポリマーシェープズ(GE Polymershapes,Seattle,WA)から商品名「レキサン(Lexan)」として市販されているポリカーボネート試験パネルにアプリケータを用いて40psiの圧力で積層した。以下の表Iに示すように、状態調節されたおよび状態調節されないポリカーボネート試験パネルの両方を試験した。状態調節されたポリカーボネート試験パネルを24時間、250°Fにおいて炉乾燥させ、シートを周囲温度に冷却して2時間以内に適用した。
【0046】
基材(すなわちポリカーボネート試験パネル)に結合された再帰反射コアーシートを有する再帰反射物品を7日間、95%の相対湿度および4時間間隔で35°F〜160°Fでサイクル循環させた。各サイクルについて、温度は1時間以内に安定化し、残りの3時間、温度を維持した。試験後に、物品を層剥離について、すなわちポリカーボネート試験パネルとシートの表示表面との間の気泡の形成について検査した。気泡発生された各々にマーカーで輪郭を描き、輪郭を描かれた全表面積を概算した。結果を表Iに以下のように示す。
【0047】
【表1】

【0048】
6つの全ての実施例が、多湿および高温にかけられた後に約10%より少ない層剥離を生じた。非構造化ライナーを使用する比較例A1およびA2は、それぞれ、同じ程度の架橋を行なわれた、実施例1〜3および実施例4〜6よりもかなり多い量の層剥離を示した。実施例を状態調節した後に顕微鏡下で検査した。溝は、まだ開放状態であった。
【0049】
比較例Bは、状態調節する間にシートからの50%を超える層剥離を示した。
【図面の簡単な説明】
【0050】
【図1】本発明の例示的な再帰反射物品の拡大部分断面図である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
接着剤層によって基材の表面に結合された再帰反射シートを含む再帰反射物品であって、前記基材の表面が、ポリマー材料を含み、前記接着剤層が、複数の溝を画定する微細構造物を含み、前記溝が、前記基材に結合された前記接着剤層の表面において、直径500μmの円形領域につき少なくとも1.0×103μm3の容積を有する、再帰反射物品。
【請求項2】
95%の相対湿度および4時間間隔で35°F〜160°Fの温度サイクルにおいて7日間状態調節した後に、10%より少ない層剥離を示す、請求項1に記載の再帰反射物品。
【請求項3】
95%の相対湿度および4時間間隔で35°F〜160°Fの温度サイクルにおいて7日間状態調節した後に、5%より少ない層剥離を示す、請求項1に記載の再帰反射物品。
【請求項4】
前記溝が物品の外面まで延在する、請求項1に記載の再帰反射物品。
【請求項5】
95%の相対湿度および4時間間隔で35°F〜160°Fの温度サイクルにおいて7日間状態調節した後に、前記溝が存在する、請求項1に記載の再帰反射物品。
【請求項6】
前記基材の表面が、ペイントおよびプラスチック材料から選択される、請求項1に記載の方法。
【請求項7】
前記基材が、状態調節されていないポリカーボネートを含む、請求項1に記載の方法。
【請求項8】
前記再帰反射シートが、微小球型シートおよびキューブコーナー型シートから選択される、請求項1に記載の物品。
【請求項9】
前記基材に結合された前記接着剤の表面が、約50%〜約98%の範囲の接触表面積を有する、請求項1に記載の再帰反射物品。
【請求項10】
前記基材に結合された前記接着剤の表面が、約60%〜約97%の範囲の接触表面積を有する、請求項1に記載の再帰反射物品。
【請求項11】
前記接着剤が感圧接着剤である、請求項1に記載の再帰反射物品。
【請求項12】
前記接着剤が架橋アクリル接着剤を含む、請求項1に記載の再帰反射物品。
【請求項13】
前記接着剤が、約25重量%までの粘着付与剤をさらに含む、請求項12に記載の再帰反射物品。
【請求項14】
ゲル含有量が60〜85%となるように、前記接着剤が架橋される、請求項12に記載の再帰反射物品。
【請求項15】
前記微細構造物が複数の溝を画定し、前記溝が、前記基材に結合された前記接着剤層の表面において、直径500μmの円形領域につき少なくとも1.0×103μm3の容積を有する、請求項1に記載の再帰反射物品。
【請求項16】
前記溝が、約1×107μm3までの範囲の容積を画定する、請求項15に記載の再帰反射物品。
【請求項17】
接着剤層によって基材の表面に結合された再帰反射シートを含む再帰反射物品であって、前記基材の表面が、ポリマー材料を含み、前記接着剤層が、前記基材に結合された前記接着剤層の表面において、約500μmより小さいピッチで配列された規則的微細構造物を含む、再帰反射物品。
【請求項18】
前記溝が、約1×107μm3までの範囲の容積を画定する、請求項16に記載の再帰反射物品。
【請求項19】
(a)再帰反射シートを提供する工程と、
(b)微細構造化接着剤を前記シートに適用する工程であって、前記シートに対向する微細構造化接着剤層が、複数の溝を画定する複数の微細構造物を含み、前記溝が、直径500μmの円形領域につき少なくとも1.0×103μm3の容積を有する、工程と、
(c)気体放出を示す基材を提供する工程と、
(d)物品を前記基材に前記接着剤によって結合する工程と、を含む、
再帰反射物品の製造方法。
【請求項20】
前記基材の表面が、ペイントおよびプラスチック材料から選択される、請求項19に記載の方法。
【請求項21】
前記基材が、状態調節されていないポリカーボネートを含む、請求項19に記載の方法。
【請求項22】
前記物品が、95%の相対湿度において7日間状態調節した後に、層剥離をほとんど示さない、請求項19に記載の方法。
【請求項23】
前記物品が、4時間間隔で32°F〜160°Fの温度サイクルにおいて7日間状態調節した後に、層剥離をほとんど示さない、請求項19に記載の方法。

【図1】
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【公表番号】特表2007−503027(P2007−503027A)
【公表日】平成19年2月15日(2007.2.15)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−532379(P2006−532379)
【出願日】平成16年4月5日(2004.4.5)
【国際出願番号】PCT/US2004/010374
【国際公開番号】WO2004/106993
【国際公開日】平成16年12月9日(2004.12.9)
【出願人】(599056437)スリーエム イノベイティブ プロパティズ カンパニー (1,802)
【Fターム(参考)】